1スレ
少年「ボクが世界を変えてみせる」
http://llike-2ch.sakura.ne.jp/bbs/test/mread.cgi/2ch5/1356265301/l10
2スレ
カロル「ボクが世界を変えてみせる」
http://llike-2ch.sakura.ne.jp/bbss/test/mread.cgi/ryu/1385288769/l10
―――あらすじ―――
それは遠い昔のお話
人と人は長い長い争いに身を投じ、互いを許せないまま30年もの月日を互いの血を流すことに費やしました
しかし長い争いはいつまでもいつまでも終わる気配もなく
人を傷付け、愛を蝕み、心は枯れて、命は絶えて、いつしか疲れ果てて……やがては目的さえ見失ってしまいました
そんな終わらない争いの果てに一つのきっかけが巡るのです
それは人と人との争いに無関心だったホビット族に原因があると唱える迷信でした
その迷信はあまりにも唐突で、あまりにも不自然な内容でしたが痩せ細って震える人々、争いに疲れきった国々はホビットに全てを擦り付けて争いを終わらせようと決めたのです
戦争が鎮まった後、各国に迷信を掲げた王国は大規模な宗教団体を立ち上げました
その団体は教団と呼ばれ、戦争を納めた功労者であるノワール・バントン司祭を筆頭に教徒達による布教活動が開始されました
布教の内容はホビット族が人間から゙癒しの力゙と呼ばれる特別な能力を奪ったというもので……
これを軸に様々な悪評を並べ立てて人々の心にホビット族への憎しみを焼き付けます
ありもしない神の作り話にいざなわれ、人々は信者へと洗脳されていきました
それから約40年の間、教団による布教活動は続き、思惑通り人々は順調にホビット族を差別していました
人間はことごとくホビット族の住み処を侵略し、奴隷にしてみたり、愛玩用に飼い慣らしてみたり、時には残酷な拷問を加えて見世物にしたり、罪深き種族と罵って横暴の限りを尽くします
263: ◆WEmWDvOgzo:2014/12/30(火) 01:00:37 ID:IHQ0bs/URY
―――西の国(貧しい村)―――
ザシュッ ドバッ ガシュッ
ギャアアアアアア
将軍「ヌハハハ!他愛もない…」ピシュッ
西兵1「当然にございましょう?彼奴らは剣も知らぬ飢えた生ゴミ?
将軍殿の圧倒的な軍略の前にはちっぽけ、ちっぽけ?」
将軍「なにが軍略か?我輩はただ兵を率い、武器を持たせ、皆殺しにするよう命じただけぞ?」
参謀「お見事、お見事、将軍殿の才に敵うものなどありましょうや?」パカラッパカラッ
将軍「……」
参謀「長年、自国の狼藉者を始末して参りました故、我が軍の兵らは殺しの味をよぉく知っておりまする。
しかしかつての"終わらない争い"を存じてらっしゃる猛将はカカドゥーラ様、ただ一人…?」ニィィッ
将軍「…地獄絵図とはまさにあの事」
妊婦「ひ、ひあぁあ」ガクガク
西兵1「おや、まだ生き残りが?」
参謀「身籠っておりまするな」
妊婦「ど、どどどうかお助けを…!?このお腹には命が宿って…!?」ガクガク
将軍「命…か」ジロッ
妊婦「……!」フーッフーッ
将軍「はたしてその命…いかほどの価値がある?」
妊婦「え…?」
将軍「月に一度の税も賄えぬ農村で生まれ育った女が…今、滅びようとする村で子を生んだとして、この国に利はあるのかと問うておる?」
妊婦「そ…れは!」
将軍「お前のような価値なき女子の腹に収まったガキにこそ見る目が無かったのだ?」ブォンッ
バシュッ
ゴロン
将軍「腹を引き裂き、中のゴミを引きずり出して踏み潰せ?今回の目的は皆殺しだ?」
西兵1「ははぁっ!!」
264: ◆WEmWDvOgzo:2014/12/30(火) 01:04:01 ID:9v4P6Xr0tU
ヒエエエエエ ギャアアアアアア
ブバッ ガシュッ ゴロン
ダダダダダダッ
将軍「クク…ヌハハハ!?なんと愚かしい?
我輩の気分次第で弱き者共が鼻水を垂らし、涙を流し、見るに耐えぬ醜態を繰り返す?」ニタァァ
将軍「それでこそ楽しめる…?だからこそ面白い?侵略とは…弱き者を惨めに死なせる武人の遊戯よ?」ニタニタ
参謀「実に同感」ウンウン
将軍「楽しみだのう?もうすぐそこに戦争の日が迫っておる?」
参謀「平和を手にして何十年……短い歴史でございました」
将軍「平和、平和ではつまらんよ…。我輩はなぁ…偽善的な王国の弱き民を……これでもかとなぶり殺してやりたいのだ?」グフフ
参謀「お二人次第…でしょうな」
西兵2「将軍!」
将軍「なんだ?」
西兵2「納屋の米俵に赤子が隠されておりました!」
赤子「ぎゃあああ!あああん!」ベーベー
将軍「ほう?これはまさしく…玉のように愛らしいではないか?我輩にも抱かせろ?」スッ
参謀「」ジーッ
赤子「ぎゃあああ……きゃ?」パチクリ
将軍「ふふ…かわいいなぁ。それ、たかいたかーい」グオッ
赤子「えへー!えへへー」キャッキャッ
将軍「たかいたかーい、たかいたかーい……」パッ
赤子「へ……」ブワッ
ゴンッ
赤子「ぃ…ぎやあああああ!ああああああ!」ベーベー
西兵2「」ビクッ
265: ◆WEmWDvOgzo:2014/12/30(火) 01:07:28 ID:9v4P6Xr0tU
将軍「抱くのは飽きた」シラー
西兵2「……!?」
将軍「お前」
西兵2「は……はっ!」ピシィッ
将軍「赤子の指を潰せ」
西兵2「は…!?」
オギャアアアア オギャアアアア
西兵2「っ……」
将軍「どうした?こうすればよいのだ?」ガッ
西兵2「えっ」グイッ
将軍「親しき友と握手するように…こうして」ギュウッ
西兵2「あがっ!?」グキィッ
メキィッ ベキベキ クシャッ
西兵2「ぐっ!きぃいいいい!?」ジタバタ
将軍「参謀よ、手解きは必要か?」
参謀「…この僕が未だかつて将軍の命に躊躇した事などございましょうか?」
将軍「よくぞ言った?」ニタァァ
参謀「赤子の爪を剥がし、指を潰し、産毛も歯も抜いた上で焼き殺し…野良犬たちへのもてなしにしましょう」ザッ
オギャアアアア オギャアアアア
266: ◆WEmWDvOgzo:2014/12/30(火) 01:10:15 ID:IHQ0bs/URY
将軍「あの赤子も残念だった…。我輩にも慈悲はある…。親が生きていれば、な」
参謀「えぇ、目の前で子の死をご覧いただけたのに残念です」
将軍「うむ。看取らせてやるぐらいの配慮はしたんだが…」
参謀「お優しいですな」
将軍「あぁ…戦争が待ち遠しい。パカラゥロとシャルウィンが目的に達すれば、すぐにでも始められるというのに」
参謀「楽しみになされてるのは陛下も同じ事では?」
将軍「…うむ。陛下の目の奥に輝きを見たのは皇帝一族暗殺を実行した日以来だ」
参謀「……」
将軍「永遠の命…不朽の美……あぁ、愛する陛下に捧げたい。そして願わくは我輩の妻として……」
参謀「口が過ぎます」ムスッ
将軍「…うぉほん!聞かなかった事にしてくれ」
参謀「かしこまりました」スッ
将軍「(陛下……)」ションボリ
参謀「裾が汚れました故、お先に城へ戻らせていただきまする。はっ!」パシンッ
パカラッパカラッ パカラッパカラッ
将軍「…さて、食糧と金品を回収して次なる狼藉者共を成敗しに参るか」ハァ
267: ◆WEmWDvOgzo:2014/12/31(水) 14:36:23 ID:g4lCkLBiEw
―――南の領土(バンブルの港)―――
ワイワイガヤガヤ
漁師「さぁさ揚がった!月の満ち欠けに逸らされんなぃ!
おまんま食いたきゃ魚買え!んで足らねぇなら稲穂刈れ!今月の築地は見逃しちゃならねぇ!
魚はもちろん蟹に海老、貝に烏賊、蛸と目白押しだ!」
カロル「わぁー!お魚いっぱい?」マジマジ
母「この街では漁が盛んなのね?」
カロル「あはは!箱の中でお魚さんが泳いでるよ?」
母「鮮度を保つ為に生け簀に入れてあるのよ?」
マルク「」ジュルリ
カロル「飼って育てるの?」
母「ううん、後で切り刻んで食べるの」
カロル「!?」ガビーン
漁師「おぉ、嬢ちゃん、坊っちゃん、見ていきなぃ!これがバンブルの商売だ!
新鮮な魚をすぐさま味わいてぇなら遠慮しちゃならねぇ!欲張って欲張って買い漁んな!」
母「そうしたいのは山々ですけど、生憎手持ちがありませんの…」
漁師「なんでぃ!なんでぃ!親子二人の食う分も稼げねぇたぁロクな旦那じゃねぇな!」
母「おほほ…。夫はだいぶ前に他界してまして…今は坊やと二人で旅してるんです」
漁師「……す、すまねぇ」
母「お気になさらず?もう吹っ切れてますから?」
漁師「…」グイッ
漁師「持ってけ?」つ【魚】
母「まぁ!いいんですか?」
漁師「おう、知らねぇにしろ未亡人にゃ言っちゃならねぇこと言った。詫びだ?」
母「そ、そんな…同情してほしかった訳じゃ…?」オロオロ
漁師「昔から生命豊かな水面には魚たちの泳ぎ遊ぶ陰翳が映るんだ。
この地に網が掛かるのは、つまり母なる海に愛されている証拠だ?」
漁師「海鳴りの景色を西へ西へと進めればごっそり獲れる漁場がある。一匹渡したって俺達の商いは尽きやしねぇ?」ニコッ
268: 投稿するたび改行制限に悩まされる、短くまとめる文才が欲しいorz ◆WEmWDvOgzo:2014/12/31(水) 14:42:07 ID:g4lCkLBiEw
母「本当にいいんですか…?」
漁師「おう!海の男は嘘言わん!坊っちゃんも新鮮な魚食いてぇべ!」
カロル「うん!」キラキラ
チンピラ「おっ!青臭い匂いがすんなぁ!」スタスタ
漁師「げっ!」
チンピラ「げってなんだ、ひでぇな?」
漁師「どうせ金ねぇんだろ?失せな!」
チンピラ「そりゃ言いっこなしだぜ?みすぼらしいホビットにはタダで魚をやるのに俺には無しか?」
カロル「……」モジモジ
漁師「この街はまだホビットと馴染みねぇだろ。来月には教団が連れてくる30のホビットを迎えるってんで街上げて祝福するんだ。
その為に今から大量に魚獲って準備してんだよ。そん中の余った一匹をくれてやっただけだ?」
チンピラ「ならよ、もう一匹くらい余ってんだろ?」
漁師「働きもしねぇ野郎にやる魚はねぇよ。この怠けもんが…」
チンピラ「働く気になるまで温存してんのさ?健康じゃねぇと働きようがねぇかんな?」
漁師「腹空かした女房と子供がいんのに何考えてんだ…?」
チンピラ「そんなん言うなら仕事くれよ?あったらやるぜ?」
漁師「腐るほどあらぁな!斡旋所に走ってこいよ!」
チンピラ「遠いとこで働きたかぁねぇ?重労働もまっぴらだ?」
漁師「んじゃせめて釣竿持って沖に出ろ!女房に内職さして冷や麦食うよか食卓に亭主の釣った魚がありゃチビたちも誇らしいわな!」
チンピラ「へへ!じゃあ竿をくれ?」
漁師「"くれ"だぁ?」ビキィッ
チンピラ「おうよ!一等でけぇの釣ってやらぁ?ついでに船も貸せ?小舟でいいぜ?」
漁師「銛で突っ殺すぞガキぃ!?竿なんざてめぇで作れ!?船が欲しきゃ働いて買えや!?」ガァーッ
チンピラ「とと…?んな怒らんでもよ?」
269: ◆WEmWDvOgzo:2014/12/31(水) 14:44:48 ID:g4lCkLBiEw
母「あ、あの…坊やも怯えてますので…そろそろおいとまします…?」オロオロ
カロル「……」ブルブル
漁師「あ、あぁこりゃいかん!すまんすまん!坊っちゃん怖がらんでな?
ほれ!おまけしてやる?二尾もありゃ刺身に叩きに煮浸し、鍋物、なんでもござれだ?
今日は楽しみが増えたなぁ?そうだろう?」グイッ
チンピラ「けっ!働かねぇで親切されるなんて楽でいいよな?」ジロジロ
カロル「……」ズーン
カロル「…ごめんなさい。やっぱりいらないです」シュン
漁師「え?」
チンピラ「お!じゃあ俺が……」ヒョイッ
バチコンシャタッ!!
チンピラ「」ピクピク
漁師「ふざけんじゃねぇ!」パッパッ
カロル「」ブルッ
母「」ポンポン
マルク「クゥン…」
漁師「わりぃな。さぁ持ってけ?楽しい旅になるといいな?」
カロル「で、でも…」
漁師「そいつの言うこたぁ気にすんな?
ご近所に借りた金踏み倒して博打ばっかやってるロクデナシだ?」
母「ありがとうございます」スイッ
カロル「あ…!」
母「もらっていきましょ?親切に応じないのは失礼な行いよ?」
漁師「おう!出されたモンは頂くのが礼儀だ!スッと出してパッと受け取る!
出した方は気分がいいし、受け取った方は棚ぼた降りたと笑い飛ばす!誰も傷付かんだろう?」
チンピラ「じゃあ俺も……」
漁師「あん?」ポキッポキッ
チンピラ「」ススーッ
270: ◆WEmWDvOgzo:2014/12/31(水) 14:47:08 ID:o6D2/o4bEU
母「ほら、お礼は?」
カロル「ありがと…ございます?」ニコッ
漁師「…ほれ、見ぃ?かわいい笑顔だろ?おめぇの子もこうやって笑えんだぞ?」
チンピラ「は?」
漁師「見てらんねぇよ…。着る物もなくチンチンぶら下げて歩き回るザマをよ…。
いつもおめぇの家から女房の怒鳴り声とひもじそうな泣き声が聞こえんし…深夜から船出に向けた足取りもしょんぼりすらぁな?」
チンピラ「誰のおかげで飯が食えると……」
漁師「おめぇの女房のおかげだろうが?」
チンピラ「ちっ!居心地わりーし帰るぜ!」
漁師「おう、帰れ、帰れ。どうせ捨てる部分でもつまみに来たんだろ。うざってぇから消えちまえ」
チンピラ「……!」ギリッ
漁師「悔しそうなツラすんなら、とっととてめぇで稼げ?
そうすりゃ誰にだって一端に見られんだ?」
チンピラ「」スタスタ
漁師「……」
母「なんだかんだと言いながら、あの方のこと気にかけてらっしゃるんですのね?」ニコッ
漁師「おうよ。海の男は義理人情に厚いんだ」
カロル「あの人間…本当にお金に困ってそう」
母「あら、どうしてそう思うの?」
カロル「なんとなく…」
母「本当に困ってたら、あんな風に遊び歩いていられないわ?」
カロル「…違うと思う」
母「へ?」
カロル「焦って不安になるから好きなことをして紛れさせたくなるのかも…」
漁師「……」
母「それじゃダメじゃない?自業自得よ?」
271: ◆WEmWDvOgzo:2014/12/31(水) 14:50:53 ID:o6D2/o4bEU
漁師「実を言うとあいつんとこは借金してっし…もう三度も納税を怠ってる」
母「…納税?」
漁師「お国に差し出す金だ。それを払わねぇと民の生活は保障されんと…まぁ丸っきりカツアゲだがな。一体、何に使うやら分からん?」
母「払わなかったら…どうなるんです?」
漁師「前までは見せしめに惨殺されるか、街ごと焼き滅ぼされてたが…国王が変わってからは今んとこむごい噂は聞いてねぇ」
カロル「(王子さま…)」パァァ
漁師「だが…義務は義務だ。命は取らんでも憲兵に捕まっちまうのがオチだな」
母「…ますます分からないわ?そんなに追い込まれているのなら、なぜ働こうとしないの?」
漁師「わかんねぇ…。だから俺も口酸っぱく言ってんだがよ」
母「……何か働けない理由でもあるのかしら」
カロル「理由なんてないんじゃないかな」
母「え?」
カロル「あの山賊の人間もそうだったけど…」
漁師「…なにがだ?」
カロル「分からないけど…理由がある人は、ちゃんとした理由を話すと思う」
漁師「……?」
母「…どうなのかしらね。よそ様のことだから悪し様には言えないけど奥さんと子供がかわいそうよ!」
漁師「ま、そりゃそうだな。おっと客が並んだ。ちょいと横に」
母「あ、すみません」ススーッ
客1「あ、いえ」スッ
272: ◆WEmWDvOgzo:2014/12/31(水) 14:52:55 ID:o6D2/o4bEU
客1「お話中悪いね。これくれや」ビッ
漁師「あ、はいはい!こいつですと、ちょいと網にもがいて身を引っ掻いてんで、こっちにしときましょうか?」グイッ
客1「ありがとよ。いくらだい?」ニコッ
漁師「銅貨480枚になります!」
客1「はいよ」ゴソッ ジャラッ
漁師「はいはい!ちょうど頂きます!毎度どうも!」ヘコヘコ
客の子供2「パパ!これっ?」キャッキャッ
客2「高いよ…。こっちの下ろしてある鯵で十分だ」
漁師「はいはい!鯵ですね?いくつ?」
客2「4尾でいいかな…。そんな高くないだろ?」
漁師「4尾ですと…652枚ですね。取れたてなもんで?」
客2「……じゃあ一匹減らしてくれ」
漁師「はいはい!489枚になります!」
客の子供2「やだー!桃色のがいいのー!」
客2「……うるさいな。みんな見てるぞ?」
客の子供2「やだー!やだー!やだー!やーだー!」ジタバタ
客2「……!?」イラァッ
漁師「……」オロオロ
273: ◆WEmWDvOgzo:2014/12/31(水) 14:54:37 ID:g4lCkLBiEw
カロル「」ポンポン
客2「わあっ!?」バッ
カロル「怒らないであげて?」ジッ
客2「な、なんだ、お前…ホビットのクセに…!」
カロル「……」シュン
客2「うっ…」タジッ
カロル「おいしそうなお魚がいっぱいあるんだもの。お腹空いちゃうよね?」ニコッ
客2「……だ、だからお前はなんなんだ?」
カロル「マルク!泣き止ましてあげて!」
マルク「わんっ!」トトトッ
客の子供2「ふえ?」グズッ
マルク「あぅん?」ペロペロ
客の子供2「ふえ〜?えへへー!」パァァ
マルク「あんっ!」シッポフリフリ
客2「……」
カロル「おじさま!これっ?」つ【魚×1】
客2「なっ…」
母「坊や…」
漁師「あ、それは…」
カロル「あげる?」ニコニコ
客2「…な、なんで初めて会ったお前に…しかもホビットなんかに…同情されなくちゃ」ググッ
カロル「同情じゃないよ?二匹もらったけどボクとお母さまだけじゃ食べきれないの?」
母「(ホビットなんかに…?)」ピクッ
274: ◆WEmWDvOgzo:2014/12/31(水) 14:56:28 ID:g4lCkLBiEw
客2「……い、いら」
客の子供2「」グゥゥッ
客2「」ハッ
客の子供2「ぼくん家ね?夕ごはんだけなんだ?パパは少食でママは痩せたいんだってさ?」ナデナデ
マルク「あう?」
客の子供2「領主様の家のトールくんはパンとお肉、スープにサラダ、豆コーヒーもあるんだよ?」ギュッ
客の子供2「ぼくだって、もっとたくさん食べたいよ…。今日で8歳になるんだもん」シュン
母「お誕生日、だったのね…」
客2「っ…くく…!?」ワナワナ
客2「(お、俺だって…!俺だって必死なんだ…!まだ王政の変化が整いきってないじり貧生活で暮らしはまったく楽にならないんだぞ!)」
客2「(だから今日は築地に入って新鮮なうまい魚食わして…お祝いに新しい靴でも買ってやろうと寝る間も惜しんで働いてきた…!)」ググッ
客2「(けど…僅かな賃金に見合わねぇ労働量で…やっと貯めた金を、この目で見ると……やっぱり惜しい…!)」ジャラッ
客2「(この金があれば…明日からの暮らしがほんの少しだけ楽になる…!この調子で働き続ければ蓄えも出来る…!
今日を我慢して明日に繋げれば…きっと来年にはもっと贅沢に祝ってやれる…!)」
客2「(そんなこと…今日を楽しみに待ち望んでた子供にはわからない…。
なにより子供の笑顔をさておいて保身に揺らぐ自分が馬鹿馬鹿しい)」
客2「(…それでも、その日の辛く悲しい出来事がいつか…微かな笑顔になれば報われるんだと。
今は恨まれても時間が経てば分かってくれるさ)」フッ
客2「(俺たちの必死な暮らしを…こんなホビット程度に同情されてたまるか!)」ジロッ
カロル「(お魚重たいなぁ…。差し出したまんまだもん……)」プルプル
275: ◆WEmWDvOgzo:2014/12/31(水) 14:59:38 ID:o6D2/o4bEU
客の子供2「」ナデナデ
マルク「くぅ…」スリスリ
客の子供2「…あーあ、お金持ちの家だったらなぁ」ボソッ
客2「なんっ…だと!?」プチィッ
漁師「あ、ちょっ…お客さん!」アタフタ
カロル「だ、だめっ…」ビクッ
バッ バシィンッ!
客の子供2「……!?」ドギマギ
客2「…!」ハァッハァッ
母「っ…!」ヒリヒリ
カロル「お母さまぁ!?大丈夫!?」バッ
母「うん、なんともないわよ?」ニコッ
客2「あ、あんた…なにしてんだ!?」
母「あなたこそ何をなさるんですか?ここは往来の場ですわよ?」キッ
客2「お、俺の勝手だ!他人の事情に口出しすんな!」
母「いいえ!同じ子を持つ親として言わせてもらうわ!」ピシャリ
客2「な…な…!?」
母「いくら親が苦しんでいても子供には理解できないんです!」
客2「は…!?」
母「なぜ自分たちだけがひもじいのか…どうして我慢を強いられるのか…他の子たちと何が違うのか…家が貧乏な理由すら分かりっこないでしょう!?」
客2「う…くっ!」
母「…多少は運命を呪いますよ。悲しい言葉をかけられるのはやりきれないわ…?」
母「でも…それでもあたし達は親である以上…そんな想いをさせないように頑張るしかないじゃない!?」カッ
カロル「……」
276: ◆WEmWDvOgzo:2014/12/31(水) 15:01:38 ID:o6D2/o4bEU
客2「き、気ままに暮らすホビットに何が分かる…!?」
母「気ままになんか暮らしてません。こっちだって生活に追われる毎日です!」
客2「う、嘘を言うな!?人間ってのは金に縛られる生き物だ!そんな概念のないお前らが…!」
母「…なに言ってるのよ」
客2「あ!?」
母「あたし達に言わせれば、お金でなんでもやり取りできるあなた達が羨ましいわよ…」
客2「羨ましい!?羨ましいだ!?」
母「雨風に打たれながら泥濘に横たわったことがある?」
客2「は!?」
母「その手で殺した獣や鳥を生でかじったことがある?」
客2「……!」タジッ
母「誰も助けてくれない状況下で本気で必死になって家族を守ろうとしたことがある!?
生き延びる為に身を磨り減らして駆け回って、それでも守れなかったことがあるの!?」
客2「っ……」オロオロ
母「お金で買えない物はない…なんて贅沢なのかしら?働けばお金がもらえる…何が不満なの!?
辛くても、やりきれなくても、ほんの少しでも報われるあなた達の暮らしが羨ましくてたまらないわよ!?」
客2「な、なんだよ…なんなんだよぉ…?」ブルブル
母「……」ジッ
客2「…俺だって…辛いよ…!あんたに何が分かんだよぉ…!?」
母「ホビットなんかに同情されたくないんでしょう?だったら、その甘えた考えを打ちのめしてあげるわよ!」
客2「ひっ…ひっ…」ビクビク
客の子供2「パパをいじめるな!」ダッ
客2「えっ」
277: ◆WEmWDvOgzo:2014/12/31(水) 15:04:58 ID:g4lCkLBiEw
客の子供2「いじめるな!いじめるな!いじめるな!」ポコポコ
母「…うふふ」クスッ
客2「……」ボーッ
母「…小さくて柔らかい体にも大好きな人の為なら精一杯になれる気持ちが宿ってる?」
客2「」ハッ
母「頼りなく見えても…意外とたくましいんですよ。子供って?」ニコッ
客の子供2「うるさい!いじめるな!泣かすぞー!」ポコポコ
客2「……!」ジワァ
母「弱気になってはいけませんよ?暮らしはもちろん大事ですけどお子さんとの思い出も大切になさってください?」ジッ
客2「もう…大丈夫」ガッ
客の子供2「え…?」キョトン
客2「パパ…大丈夫だから」
客の子供2「……」
母「」ニコニコ
漁師「…坊っちゃんの母親、何かあったのか?」ヒソヒソ
カロル「うん…。お婆さまが早くに病気しちゃってお爺さまも旅の途中で病に苦しんでいなくなっちゃったの」コショコショ
漁師「…旦那さんも病で?」
カロル「ううん。殺されたんだ?」フルフル
漁師「え!?」
カロル「王国がね…。住んでた集落と一緒に焼き滅ぼしたんだって…?」
漁師「……!」ゾォッ
カロル「…お母さまはね、誰よりも家族想いなんだ?
失う怖さを知ってるから…とても大事にしてくれるの…」
漁師「……」オロオロ
278: ◆WEmWDvOgzo:2014/12/31(水) 15:09:12 ID:o6D2/o4bEU
客2「……」
客の子供2「ぱ、パパぁ……?」
客2「…代金だ」ジャラッ
漁師「は、はぁ…毎度どうも?品は袋詰めしときましたんで…」スッ
客2「」パシッ
客2「帰るぞ?」ジロッ
客の子供2「…桃色のは?」ウルッ
客2「靴、買いに行くぞ?」
客の子供2「……」シュン
客2「靴だけじゃ不満か?」
客の子供2「……」コクッ
客2「…うまいモン食いたいか?」
客の子供2「食いたぁい…」
客2「…安い魚もな、工夫次第だ」
客の子供2「……?」
客2「安物も工夫すれば一流に近付けるんだ…。俺たちは、まだ貧乏な安物だが……。
家族みんなで一生懸命に支え合えば…きっと、どこよりも幸せな家庭に育つ?」
客2「貧しくても幸せなら…上流層の奴らを妬まずに胸を張って生きてける。
…そのくらいがちょうどいいんだ。だから今はまだ…我慢してくれないか」
客の子供2「……」チンプンカンプン
客2「……分からないか」カクッ
母「そういうものですよ?」ニコッ
客2「…難しいな。親って?」
母「子供は詭弁に惑わされませんから、わがままが減らないんですよね?」ニコニコ
カロル「…ボクってわがまま?」ショボン
母「……ちょびっと?」ウインク
カロル「!?」ガーン
279: ◆WEmWDvOgzo:2014/12/31(水) 15:11:51 ID:g4lCkLBiEw
客2「……見下したりして悪かったね。気が立ってたんだ」
母「いえ……あら」キョロキョロ
客2「?」
野次馬's「」ジロジロ ジロジロ
客2「あ…おぉ……!?」ギョギョッ
カロル「結構前から人だかりだったよね?」
漁師「おう、俺の店の辺りが混みゃ宣伝になるからほっといたが」
母「あらあら…」クスクス
客2「か、か、帰るぞ!?」ガシッ
客の子供2「う、うん?」オロオロ
カロル「あ、待って!これっ!」つ【魚】
客2「い、いいよ!同情はいらん!恥ずかしいとこ見せちまったし、早く帰りたいんだ!?」カァァ
カロル「同情じゃなくって贈り物!はいっ!」スッ
客の子供2「え?」パシッ
カロル「お誕生日おめでとう?」ニコッ
客の子供2「……」
客2「はは…お礼言いなさい」ポンッ
客の子供2「犬……」ジーッ
カロル「へ?」
マルク「きゃうん?」キョトン
客の子供2「犬ほし…むぐっ」パッ
客2「あ、ありがとな!ホビットの少年!さぁ帰るぞ!はっはっは!」ダダダダッ
客の子供2「むぐーっ!むぐーっ!」ジタバタ
ダダダダッ
カロル「……」ポカーン
漁師「ははっ!子供ってのはわがままで正直だ?」ケラケラ
280: ◆WEmWDvOgzo:2014/12/31(水) 15:15:10 ID:o6D2/o4bEU
母「ぼ・う・やぁ……」ヌラァリ
カロル「なぁに?おかあさ……!?」ギョギョッ
母「お魚、二匹とも渡しちゃったの…?」ゴゴゴゴゴ
カロル「あえっ!?あ、あ、あぁっ!?笊ごと渡しちゃった!?」アタフタ
漁師「悪いがうちも商いだから、さっきのチンピラじゃないが、あんま商品をタダでホイホイやれねぇんだ?」
カロル「あうっ…お、おか…さま?」チラッ
母「…なんてね?」テヘペロ
カロル「……?」
母「苦労も無しに得た物なんて、すぐに手放してしまうものよ?
また街の外に出て食べられそうな虫や葉を探しましょ?」
カロル「う…うん!」パァァ
漁師「む、虫…?聞き間違え、か?」
野次馬's「」パチパチ パチパチ
母「え?」クルッ
カロル「な、なに…?」ビクッ
漁師2「いやーお前ら、いいもん見してもらった!」パチパチ
漁師3「おうよ!ホビットってのも、なかなか男気溢れんじゃねぇか?」
漁師4「俺っちの船で取れた鯛持ってけ?」グイッ
カロル「あ、えと…?」パシッ
漁師5「あんたの啖呵キレてたぜ!女なのに大したもんだ!魚油の瓶だ!丸々くれてやるぜ!」グッグッ
母「ど、どうも…?」パシッ
漁師6「これも持ってけ!持ってけ!」グッグッ
漁師7「海の男は威勢のいいのが好きなんだ!酒も振る舞ってやらぁ!グイッといきな!?」ズイッ
母「い、いえ!結構です!お気持ちだけありがたく……」アワアワ
カロル「こ、こんなにいっぱい持てっこないよ〜!」アタフタ
281: ◆WEmWDvOgzo:2014/12/31(水) 15:19:37 ID:o6D2/o4bEU
ワイワイギャーギャー
漁師「ちっ…同業者かよ。客じゃねぇなら宣伝になりゃしねぇ」
母「そ、そんな事より…どうにかしてください!?」ワチャワチャ
カロル「マルク〜!背中に乗っけれる?」ワチャワチャ
マルク「ハッ!ハッ!」シッポフリフリ
漁師「……なんか」
漁師「(身内の死を背負ってるとは思えねぇほど…底抜けに明るい親子だな)」
ワチャワチャ ギャーギャー
漁師「(……なんでかねぇ。苦しいことを避けて生きる奴より、苦しいことに耐えてきた奴のが強いってぇなぁ)」
漁師「(傷付くたびに壊れそうになるから、なるべく避けて通る奴もいりゃ傷付くたびに強くなる奴もいるんだから不思議だよなぁ)」
〜〜〜回想(漁師)〜〜〜
漁師「金なら貸さねぇぞ」ザッ
チンピラ「そ、そう冷たくすんなって!友達は大事にしようぜ?」アセアセ
漁師「…また博打か?」
チンピラ「ま、まぁな…。ちょいと小金が入ったもんでダイス親分とこ遊び行ったらすっかり搾られてよ?」ヘラヘラ
漁師「お前みたいな遊び人がどうやって金を用意したんだ?義理のオヤっさんの手伝いか?」
チンピラ「バカだねぇ?誰があんな小料理屋手伝うかよ?油と酢の違いも分からねぇってのに?」
漁師「…じゃあどうやって?」
チンピラ「なぁんでもいいだろ?それよかアレだ?金貸してくれよ。倍にして返すぜ!」
漁師「何度も言わすな。まともに働け!」
チンピラ「かぁ〜?まぁた説教ですか?やだねぇ?」
漁師「あぁ?」ギロッ
282: ◆WEmWDvOgzo:2014/12/31(水) 15:21:33 ID:g4lCkLBiEw
チンピラ「必死こいて働いて何がある?この貧乏生活がちったぁマシになるくらいだぁな?
馬鹿馬鹿しくていけねぇよ。人生ってのは楽して、ちゃっかりおいしいとこだけ頂けば幸せってもんさ!」
チンピラ「…その為にゃ博打だ。短い寿命なんだから有り余る時間でバンバン賭けに出ねぇと割りを食うばかりさ。
あくせく体使った結果が1日と引き換えに安い賃金だろ?
毎朝、早起きして荒波にもがいて危なげな上に獲れねぇ時は獲れねぇし季節や天気にも阻害されるってなぁ?」
チンピラ「俺っちにゃまったく分からねぇや。クソ面白くもねぇ?」
漁師「はぁぁ…その体たらくで妻子はどうすんだ。養ってけんのか?」シラー
チンピラ「…いいさ。愛も情けも、とうに枯れた仲だ。向こうの親父がスゲェ剣幕で迫りやがるから孕ました責任取っただけだ」
漁師「ここがまだ…こじんまりした漁村だった頃、仲間と集まって岸辺の洞穴にゴザ敷いて飲み明かしたの覚えてっか?」
チンピラ「…覚えてらぁ。バカがバカ話してバカ騒ぎ。夢だなんだと語り合ったもんだ?」ケッ
漁師「…もう戻れねぇんだよ。ガキの時期は感じてたより、ずっと短い」
漁師「頭がガキでも自然と体は成長する。髪も白くなってハゲ散らかるし、シワも増えて肌も渇いてく」
漁師「衰えるのもあっという間だよ。だからそれまでに…自分と伴侶を守ってけるだけの器量を身に付けんだろが?」
漁師「…バカな夢はもう捨てろよ。いつまでもガキのままでいるんじゃねぇ?」ギロッ
チンピラ「あーそーですか?ご立派ですこと?」ホジホジ
漁師「…幼なじみとして、こんなんなっちまったお前を見たくなかったよ」
チンピラ「……」
漁師「働く気になったら、いつでも訪ねてこい。俺が口添えして大将の船に乗せてやるよ」スタスタ
チンピラ「いーらね」ピンッ
スタスタ スタスタ……
チンピラ「…楽して生きるのも難しいね。こりゃ苦労を重ねると、もっとヤバそうだ。あぁ〜ゾッとするね!」
………………
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