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カロル「ボクが世界を変えてみせる」【完結編】
[8] -25 -50 

1: ゆったりペースになりますが! ◆WEmWDvOgzo:2014/11/16(日) 20:09:52 ID:N4jwCkModw
1スレ

少年「ボクが世界を変えてみせる」

http://llike-2ch.sakura.ne.jp/bbs/test/mread.cgi/2ch5/1356265301/l10

2スレ

カロル「ボクが世界を変えてみせる」

http://llike-2ch.sakura.ne.jp/bbss/test/mread.cgi/ryu/1385288769/l10

―――あらすじ―――

それは遠い昔のお話
人と人は長い長い争いに身を投じ、互いを許せないまま30年もの月日を互いの血を流すことに費やしました

しかし長い争いはいつまでもいつまでも終わる気配もなく
人を傷付け、愛を蝕み、心は枯れて、命は絶えて、いつしか疲れ果てて……やがては目的さえ見失ってしまいました

そんな終わらない争いの果てに一つのきっかけが巡るのです
それは人と人との争いに無関心だったホビット族に原因があると唱える迷信でした
その迷信はあまりにも唐突で、あまりにも不自然な内容でしたが痩せ細って震える人々、争いに疲れきった国々はホビットに全てを擦り付けて争いを終わらせようと決めたのです

戦争が鎮まった後、各国に迷信を掲げた王国は大規模な宗教団体を立ち上げました
その団体は教団と呼ばれ、戦争を納めた功労者であるノワール・バントン司祭を筆頭に教徒達による布教活動が開始されました

布教の内容はホビット族が人間から゙癒しの力゙と呼ばれる特別な能力を奪ったというもので……
これを軸に様々な悪評を並べ立てて人々の心にホビット族への憎しみを焼き付けます
ありもしない神の作り話にいざなわれ、人々は信者へと洗脳されていきました

それから約40年の間、教団による布教活動は続き、思惑通り人々は順調にホビット族を差別していました
人間はことごとくホビット族の住み処を侵略し、奴隷にしてみたり、愛玩用に飼い慣らしてみたり、時には残酷な拷問を加えて見世物にしたり、罪深き種族と罵って横暴の限りを尽くします


241: ◆WEmWDvOgzo:2014/12/21(日) 17:41:41 ID:GH7i5DEIyQ
―――領主邸―――

ホルウィ「ヴァージスぅぅう!!てめぇどうなってんだぁ!!あぁん!?」ギロッ

ヴァージス「……」

ホルウィ「ビビって棄権したらしいじゃねぇか!?俺は奴らの仲間を殺せと言ったよなぁ!?」

司会「賞金もまるごとかっさらわれるし…これじゃ次回の大会開催も危ういっすよ」

ホルウィ「んなこたぁ分かってんだよ!?それどころか宿の建設も当分見送りだぁ!?」ダンッ

女「えー!?宿が出来たらあたしにオーナーやらせてくれる約束だったのに?ホルウィちゃんの嘘つき!」

ホルウィ「い、いや…そりゃまぁ…なぁ?また別のでいいだろ?」ポンッ

女「やだー!あたしは宿がやりたいの!」

ホルウィ「お、おめぇなぁ…?宿ったってそんな楽じゃねぇんだぜ?名義だけで実権は俺が預かんだからよ…?」

女「可愛いキラキラのお部屋デザインしたかったんだもーん!」プクー

ホルウィ「わ、分かった、分かった?じゃあまた今度な?」ナデナデ

女「今度っていつ!?」

ホルウィ「うっ……」タジタジ

女「今度っていつなのよー!?」

ホルウィ「…お、おい!ヴァージス!てめぇのせいだろうが!?なんとか言えや!?」

ヴァージス「……」

女「うわっ?開き直ってんですけど?キモッ!」

ホルウィ「ちっ…てめぇはクビだ!」

ヴァージス「」ピクッ

ホルウィ「なぁにが騎士だ?そこらへんの剣術家にぼろ負けしやがって…使えねぇ?」グチグチ

司会「どうすんすか?せっかくの儲け話がパァーになっちゃって?」

ホルウィ「けっ!こうなりゃ構いやしねぇ!
町のごろつき連中を雇って孤児院の金食い虫共を無理くり追い出しちまえ!」

司会「荒っぽいっすねぇー」
242: ◆WEmWDvOgzo:2014/12/21(日) 17:43:48 ID:dqvzbTqV8Y
ホルウィ「あぁん?てめぇはいつまで、ここにいんだ?貧乏人に跨がせる敷居はねぇよ!失せろ!」シッシッ

ヴァージス「…手切れ金を頂こうか?」

ホルウィ「はぁ?なに言ってんだ、お前?」

司会「役立たずにやる金はねぇってよ?」

ヴァージス「」チャキッ

ホルウィ「な、なんだよ?脅しか?ヘボ剣士が柄に手ぇ添えたって怖かねぇぞ?」ビクッ

司会「お前さぁ…失せろってのが……」スッ

ヴァージス「」シュバッ

ガシュッ

司会「わか……?」プシャアアアアア

ホルウィ「……!?」ビクビクゥゥッ

司会「ん…ね……っ」バタッ

ヴァージス「」ピシャッピシャッ

女「……キャアアアアアアア!!!!」ダッ

ヴァージス「」ブンッ

ドバッ

女「べふっ!?」ブシャッ

ホルウィ「あ、あいやぁいぃいあぁあぁああ……?」ガタガタ

ヴァージス「旦那……」ジャキッ

ホルウィ「よ、よせっ!よせぇっ!?」ズザザザ

ヴァージス「」スッ

ホルウィ「い、いくらだ!?いくら払えばいい!?」ガタガタ

ヴァージス「金の保管場所に案内しろ…?」

ホルウィ「……!?」

ヴァージス「それとも命と引き換えに金を守るか…?商売人としちゃ…その方が箔が付きそうだな?」クククッ

ホルウィ「わ、かり…ました」ガクッ
243: ◆WEmWDvOgzo:2014/12/21(日) 17:46:34 ID:GH7i5DEIyQ
―――領主邸(金蔵)―――

ホルウィ「(くそっ…!くそぅっ!!今まで貯めに貯めてきた俺様の財産が……)」ワナワナ

チョンッ

ホルウィ「ひぃっ!?」ビクビクゥゥッ

ヴァージス「……」ギロッ

ホルウィ「わ、分かってますよぉ?あ、開けますから…背中に切っ先を当てないでください…!?」ガチャガチャ

カチャッ

ホルウィ「…あ、開きまし…」クルッ

ヒュッ

ホルウィ「んぐぅっ!?」ドスッ

ヴァージス「この金蔵に眠る金銀財宝を失ったお前の命はいくらだ?」グイッ

ホルウィ「んぼぉ!!」ブシュッ

ヴァージス「…生きてる価値さえねぇよ?」クククッ

ドサッ

ヴァージス「ふっ…くふふふ!」プルプル

ヴァージス「クハハハハハハハ!!!」ゲラゲラ

ザッ

ヴァージス「!?」ピクッ

団長「貴様、何をしている!?」ジャキッ

ヴァージス「ルフィアス……」クルッ

団長「答えろ!?」

ヴァージス「見てたのか?」

団長「…5分ほど前に訪れたところ、中から血の匂いが漏れていたんでな!
怪しんで邸内に入ってみれば使用人から下男、下女、料理人に飼い犬まで物の見事に惨殺されていた…!」

団長「町の憲兵に報せようとも考えたが…なにやら話し声が聴こえたので急いで来てみれば…貴様が領主の喉元を突き刺した場面に出くわしたという訳だ!?」

ヴァージス「ふ〜ん…そうか?」
244: ◆WEmWDvOgzo:2014/12/21(日) 17:50:39 ID:dqvzbTqV8Y
団長「大人しく武器を捨てて出頭しろ!事情はそこで聞かせてもらう!」

ヴァージス「お断りだ…?」

団長「ならば容赦せん!切り伏せるまでだ!」ジャキッ

ヴァージス「まぁ待てよ…。お前、本気で俺を覚えてないのか?」

団長「……あぁ、思い出せん」

ヴァージス「ふっ…ククッ!そうか……」

団長「……?」

ヴァージス「俺はお前を忘れた事はねぇぜ…?成り上がりのルフィアス?」

団長「!?」ピクッ

ヴァージス「…そうか、そうか?それくらいはさすがに覚えてたか?」

団長「貴様…なぜ…!?」ワナワナ

ヴァージス「20年前だったか…。
王都の剣術大会で優勝した実績を買われ、城に仕えた平民出身のお前を揶揄したアダ名だったよな?」

団長「まさか…!?」

ヴァージス「…思い出したか?」

団長「ウッド伯爵家のヴァージスか!?」

ヴァージス「くっ…ふっふっ……ようやく気付いたか」

団長「髪を伸ばして無精髭など生やして…物乞い同然の薄汚い身形では気付きようがあるまい?
その蛇のような威圧感漂う目付きだけは変わっておらんがな…」

ヴァージス「…いろいろあったんだよ。こうなっちまうまでに?」クククッ

団長「…18年も姿を眩ませて何をしておったのだ。栄光ある王国騎士団に所属していたお前が?」

ヴァージス「白々しく言ってくれるな?俺の人生を狂わせた張本人の分際で…?」ギロッ

団長「……」
245: ◆WEmWDvOgzo:2014/12/21(日) 17:53:06 ID:dqvzbTqV8Y
ヴァージス「それとも…そんなどうでもいい過去は忘れちまったか?」

団長「…いや、覚えているとも。近衛師団と騎士団の合同演習で行われた親善試合での事だろう?」

ヴァージス「そうさ…?例年通りなら王族、高官、貴族が揃って見守る中で噛ませ犬の平民を高潔なる騎士族が蹂躙する一種のパフォーマンス行事だ?」

団長「…ケダモノ染みた発想だな」フンッ

ヴァージス「近衛は平民からなる下級の志願兵だが…騎士団は名門の家柄から優秀な者のみが選出される誉れ高き精鋭部隊だった!
物心付く前から教育を受け、剣術を極めた高位の剣士だけが入団を許される…選ばれし人間こそが騎士だ!!」カッ

団長「……」

ヴァージス「だがあの日…18年前のあの日に……我々は……」ワナワナ

団長「仕方なかろう?互いに本気で臨んだ結果なのだ?」

ヴァージス「仕方ない…!?仕方ないで済むと思ってるのか!?」

団長「確かにあの日を機に騎士団は解散を命じられ、近衛に吸収されたが…それはワシが決めたのではない。
当時の高官が勝手に話し合い、決定してしまった事だ」

ヴァージス「……!」グッ

団長「騎士団の人間が爵位を剥奪され、御家を取り潰されたのも…全ては恥を隠そうとした高位の貴族供の見栄に他ならん。ワシら近衛を恨むのは筋違いだ?」

ヴァージス「…元はと言えばお前があんな事を言い出さなければ…!」

団長「む…あれか、まぁそれは若気の至りとしか言えんな?」ポリポリ
246: ◆WEmWDvOgzo:2014/12/21(日) 17:57:03 ID:GH7i5DEIyQ
〜〜〜回想(ヴァージス)〜〜〜

キンッキンッ ガキンッ

大臣「ぐふふ!やはり有象無象の平民では騎士の相手にはなりませんな?」

貴族「互いに5人選出し、1人ずつ闘わせる試合方式ですが…まるで歯が立たない?」ニヤニヤ

ヴァージス「」ビュンッ

近衛兵1「ぐわっ!」ガスッ

見届け人「そこまで!勝者、騎士ヴァージス!」バッ

ヴァージス「ククッ!」

オオオオオオォォッ

大臣「いやはやなんとも頼りないですなぁ?
やはり安物の近衛と高級な騎士では刃の重味が違いまする?ねぇ、陛下?」

国王「うむ…」

見届け人「3対0!この試合、騎士団の見事な勝利と……」

団長「待たれよ!!」ザッ

見届け人「!?」

団長「まだ私を含め、2名の雌雄が決しておりません!」

ザワザワ ザワザワ

騎士長「ほざくな!すでに勝敗は決まっている!」

団長「そこで一つ提案がござる!」

見届け人「……?」

団長「この場で私が騎士団の選出兵5名と1度ずつ試合をし、一人残らず敗った暁には…この親善試合、近衛師団の勝利としていただきたく存じます!」

騎士長「なっ…!?」

ヴァージス「……!」
247: ◆WEmWDvOgzo:2014/12/21(日) 17:59:23 ID:GH7i5DEIyQ
大臣「んぅ〜?物言いですか?」

団長「いかがでございましょうか?」

騎士長「わ、我らを侮辱しているのか…!?」ワナワナ

大臣「おもしろいですねぇ〜?その申し出、受け入れて差し上げなさい?」

騎士長「だ、大臣殿!?」

大臣「陛下も異存ありませんよねぇ?」

国王「……」

見届け人「で、では改めて騎士団は代表者5名、近衛はルフィアス一人…ということで」

ヴァージス「…成り上がりの分際でなに考えてんだ?」

騎士長「ぬぬぬ…!」ギリギリ

団長「ご理解くださり、感謝致す。それではどなたからでも参られよ?」

ヴァージス「成り上がりが……」ザッ

騎士長「待て!」ガッ

ヴァージス「は…?」

騎士長「私が行く…!あんなひよっこにナメられてたまるか…!」ビキビキィッ

ヴァージス「はっ!」スッ

団長「…一人目が騎士長殿でよろしいのか?」

騎士長「なにぃ!?」

団長「先に大将が敗れれば残りの士気は大幅に割かれますぞ?」

騎士長「き、き…貴様ぁあああ!!もう我慢ならん!?」スラッ
248: ◆WEmWDvOgzo:2014/12/21(日) 18:00:55 ID:GH7i5DEIyQ
見届け人「き、騎士長殿!?真剣は試合の意に反します!お納めください!」

騎士長「知ったことかぁ!!そこに直れ、ルフィアスぅうううう!!!」ダッ

団長「ぬんっ!」ブォンッ

騎士長「いぐぅ!?」ガゴッ

バタッ

見届け人「」ポカーン

ザワザワ ザワザワ

ヴァージス「(真剣を翳して突進する騎士長に怯む事なく頭頂部を捉え、降りおろしざま一刀の下に打ち伏せた…!)」

大臣「ほほぉ〜!これはまた予想外な?」マジマジ

国王「……!」

団長「次!!」

オロオロ オロオロ

ヴァージス「…まぐれとはいえ勝ち星を上げたか。運のいい男だ?」ザッ

団長「まぐれかどうかは己が目で確かめよ」ジャッ

ヴァージス「平民上がりが調子付くでないわ?騎士団は王国最強の部隊だ…!」

団長「……どこからでも掛かってくるがいい?」

ヴァージス「くっ…!」ギリッ
249: ◆WEmWDvOgzo:2014/12/21(日) 18:02:30 ID:dqvzbTqV8Y
ヴァージス「」ハッ

騎士「ぶぐっ!?」バコンッ

ズシャアッ

ヴァージス「(な、なにがどうなって…!?)」ムクッ

見届け人「勝者ルフィアス!この試合、近衛師団の勝利とする!」バッ

団長「」ペコリ

ヴァージス「(ま、ま、まさか……気を失って無様に倒れていたのか!?この私が!?)」

国王「大義であった!近衛師団にはこれからも誇り高き王国兵として責務を全うし、国の守護に励んでもらおう!」パチパチ

大臣「」パチパチ

貴族's「」パチパチ

ヴァージス「そん…な…バカなぁ!?」

団長「」スッ

ヴァージス「」ピクッ

団長「いい試合だった。来年の対抗戦でもまた……」

ヴァージス「ふざけるなぁっ!?」バシッ

団長「……?」

ヴァージス「近衛の平民が…!高貴な騎士に屈辱を与えて満足か!?」

団長「あぁ、満足のいく試合だった。たとえ相手が平民であろうが強者との闘いは武人として胸奮わせる物がある」

ヴァージス「武人…?元は下僕の薪割りが武人か!ハハハ!泥臭さもここまでくれば傑作だな!」

団長「…昔は昔、今は今だ。武人を名乗って何が悪い?」

ヴァージス「私は格式高いウッド家の子息だ!貴様などまた下僕に降格させてやるさ!」

団長「負け惜しみにしろみっともない…。もう少しマシな言い分はないのか?」

大臣「まったく同意見ですよぉ〜?」

ザワッ
250: ◆WEmWDvOgzo:2014/12/21(日) 18:05:39 ID:dqvzbTqV8Y
大臣「騎士と近衛の違いが身分?それはなんとも幼稚じゃございませんか?」

ヴァージス「だぃ…じん…どの?」

大臣「騎士とはすなわち王国最強の称号…それゆえに近衛とは一線を画する存在なのですよぉ〜?」

ヴァージス「ぐっ…」

大臣「しかし結果はどうです?たった一人の近衛に騎士長を含め、5人があえなく敗れましたねぇ〜?」

ヴァージス「さ、再試合を申し出る!先程は油断していたが次こそは……」

大臣「いぃ〜え、結構?敗因はただ一つ、貴方が弱いからです?」ニヤァァ

大臣「恥の上塗りはおよしなさい?潔く退くのもまた騎士道?」

ヴァージス「……!」ガクッ

政務官「しかし幼少より英才教育を受けてきた騎士が下僕上がりの平民に成す術もなく敗れ去るとは…?
これは一度、軍の制度を見直してみる必要がありそうだ?」

大臣「んぅ〜?いっそのこと騎士とかいう名ばかりの称号を剥奪しますか?」

騎士団's「」ビクッ

ヴァージス「ま、待ってくれ!それだけは……」バッ

貴族「黙れ!お前たちが敗れた事で我ら貴族の面子も潰されたのだ!」

ヴァージス「し、しかし……」

貴族「平民に遅れを取るとは貴族らしからぬ過ちよ!こうなれば取るべき手段は一つ!爵位を返上せよ!」

ヴァージス「なっ…」

貴族「平民が平民に敗れたのであれば問題ない?これ以上、我らに恥をかかせてくれるな?」

ヴァージス「〜〜〜!」ワナワナ

団長「お待ち願おう!」

貴族「なんだ、ルフィアス?」

団長「これは剣術家の試合であって身分は関係ござらん!同じ国の民同士で貶め合うなど言語道断!」

貴族「愚かな…これだから平民は?」

大臣「まぁまぁ、ルフィアスの意見も一理ありますよ?この場は幕を閉じましょうか?ねぇ、陛下?」

国王「…うむ」
251: ◆WEmWDvOgzo:2014/12/21(日) 18:07:54 ID:GH7i5DEIyQ
国王「何はともあれ両雄、共に素晴らしい健闘ぶりであった。誉めて遣わそう!」

近衛's「」ハハーッ!!

国王「特にルフィアス…貴殿の剣技の冴えは目を見張るものがあった。
無理を押して迎え入れた余の判断は間違いではなかったな」

団長「ありがたき幸せ!」ザッ

ヴァージス「ぐ…くきき…!」ギリギリ

国王「騎士団も今回は残念だったが…この敗北を期により一層、己の剣に磨きをかけるといい」

騎士団's「ははーっ!」ザッ

国王「高みを目指すには更なる高みを登る人物に教えを乞うのがよかろう」

ヴァージス「」ピクッ

国王「同国の士としてルフィアスに教えを賜るのはどうだろうか?」

ヴァージス「ルフィアスに…!?」

国王「平民の出であろうが持って生まれた才覚はそなたらを上回っておる。
つまらぬ意地は捨て、互いを高め合える程の信頼を築いてみせろ?」

ヴァージス「」プルプル

国王「余はそなたらにも期待しておるぞ?」

ヴァージス「も、もったいのう…ございます…!」ビキビキィッ

………………
252: ◆WEmWDvOgzo:2014/12/21(日) 18:09:26 ID:GH7i5DEIyQ
―――領主邸(金蔵)―――

ヴァージス「くっ…ふふ!あんなに情けない想いをさせられたのは後にも先にもあの一度きりだ…!」

団長「……」

ヴァージス「分かるか!?お前に俺の苦しみが!?」

団長「…分からん」

ヴァージス「だろうな!?平民の!しかも下僕の成り上がり風情に分かる訳がない!?」

団長「やれやれ…お前たち貴族はなぜそうまでして見栄を張りたがるのだ?」

ヴァージス「なにぃ!?」

団長「つまらん自尊心に囚われなければ今も共に剣士として働けたであろうに?」

ヴァージス「騎士の誇りは平民と違って安くないんだ!貴様の下で働くぐらいなら自害するさ!」

団長「ふん…我々の責務は国の守護であって自尊心を守る事ではない」

ヴァージス「黙れ!誇る物もない哀れな下僕が!?」

団長「国への忠誠がワシの誇りだ」

ヴァージス「抜かすな!」ジャキッ

団長「武器を捨てろと言った筈だ」

ヴァージス「貴様の指図は受けぬ!!」ジリッ

団長「…刃向かうのであれば斬らねばならなくなる」ジャキッ

ヴァージス「ほざけっ!?」ブンッ

団長「」サッ

ヴァージス「小癪な…!」ビュンッ

団長「……」ギィンッ

ヴァージス「守るばかりが貴様の剣か!臆病者め!?」ギギギッ

団長「……ぬん!」ガキンッ

ヴァージス「ぐっ…!」ザッ
253: ◆WEmWDvOgzo:2014/12/21(日) 18:15:23 ID:GH7i5DEIyQ
団長「…堕ちたな。ヴァージスよ?」

ヴァージス「なおも侮辱するか!?」イラァッ

団長「身のこなしが雑になった。剣も大振りだ?」

ヴァージス「……!」

団長「騎士だった頃の貴様の剣は飛燕の如く俊敏で…かわす事すら困難であったが……」

団長「今の貴様にはあの頃の面影がない」

ヴァージス「……!?」

団長「城を抜け、様々な地を転々とし、金で買われてきた剣では錆び付いてしまうのも当然か」

ヴァージス「黙れ…!黙れぇっ!?」ビュンッ

ギャリィンッ

団長「っ…ほう?少しはマシになったじゃないか?」ビリビリ

ヴァージス「上から物を言うなぁ!平民がぁ!?」ビュンッ

団長「はぁっ!!」ザッ

パキィィィン!

ポトッ

ヴァージス「……?」スカッ

団長「ふん…勝負は付いた。刃を折られても、まだ続けるのか?」チャキッ

ヴァージス「くっ…そぉ…!?」ブンッ

カンッカンッ

団長「貴様の愛用していた自慢の剣も主人の堕落ぶりに愛想を尽かしたのだろう…」

ヴァージス「誇りばかりでなく…剣をも…!」
254: ◆WEmWDvOgzo:2014/12/21(日) 18:17:00 ID:dqvzbTqV8Y
ヴァージス「貴様はどこまでも……憎らしい男だ…!」ワナワナ

団長「…その憎しみをワシにぶつけたくば何故、城に残らなかった!」

ヴァージス「何度も言わせるな!貴様の下でなど……」

団長「兵として鍛練を積み重ね、ワシを超えればよかろうが!?」

ヴァージス「ぐっ…!?」

団長「誇りがどうだとのたくるが…貴様はワシに敗れ、自棄になり、その誇りをホルウィのような小悪党に安売りした!!」

ヴァージス「」ハッ

団長「その時点で貴様は完全に誇りを失ったのだ!ヴァージス!!」

ヴァージス「く…く……くぅ…!」ググッ

団長「敗北を認め、罪を償え!悪あがきすれば堕落する一方だぞ!」

ヴァージス「お、俺は…確かに誇りを捨てた!だがそれは…誇りを取り戻す為だ!」

団長「……!」

ヴァージス「貴様に砕かれた誇りの欠片を広い集め、ばらまいて金を手にしてきた!
いずれまた爵位を買い、騎士として返り咲く為にな!?」

団長「もうやめにしないか…」

ヴァージス「黙れ!お前の戯れ言に屈してなるものか!
この金蔵に眠る金銀財宝を手土産に私は再び蘇る!!」

ヴァージス「邪魔をするのなら切り捨てるまでだ!」スチャッ

団長「ナイフか…。そんなチンピラの得物でワシを斬れると思うか?」

ヴァージス「死ねぇ!!ルフィアスぅぅぅ!!!」バッ

団長「むんっ!!」ビュンッ

ドバッ
255: ◆WEmWDvOgzo:2014/12/21(日) 18:19:03 ID:GH7i5DEIyQ
プシャアアアアアアアア

ヴァージス「う……かっ…」ドサッ

団長「……」ピシュッ

ヴァージス「おの……れ…」ググッ

団長「…何が騎士だ、くだらん」

ヴァージス「あがっ…ぐっ…」ズルッ

団長「名誉に浮わつくのは高官や貴族だけで十分だ。
兵である以上、ワシらの誇りは君主に捧ぐべき物……」

団長「そして剣術家の誇りは…己の剣で守ってこそ、だ。
いつまでもお坊っちゃん気分で甘ったれるな!!」カッ

ヴァージス「っ…!?」

ヴァージス「ゲハァッ!?」ブバッ

ヴァージス「……!」ピクピク

ヴァージス「」フッ

団長「……騒ぎになる前に報せるか」

団長「」スタスタ

スタスタ スタスタ………
256: ◆WEmWDvOgzo:2014/12/22(月) 21:36:59 ID:gTRPXbGnWE
〜〜〜朝〜〜〜

―――教会―――

院長8「すべて司祭様達のおかげです!本当にありがとうございました!」ペコッ

宣教師「いえいえ…院長さんが一生懸命に子供たちを守ろうとなさった結果ですよ?」

院長8「いやぁ…!そんなぁ…!自分なんて仮装して大恥かいただけですもん?」テレテレ

神父2「いやいや、実に立派な行いでした?
普段は引っ込み思案で頼りなく見えましたが…」

院長8「う……」ズーン

宣教師「町中を駆けずり回って院を残そうと呼び掛けていた貴方は、まるで悪に立ち向かう勇敢な騎士のようでしたよ?」ニコッ

院長8「……!そ、そうですかぁ!?」パァァ

神父2「ハハハ…さながらおとぎ話の主人公ですね?」

院長8「あ、あはは…おとぎ話に例えてもらえるなんて嬉しいなぁ。実は自分、こう見えて昔は物書きをしてまして…?」

宣教師「おや、作家さんだったんですか!」

修道女「すごーい!」

院長8「そ、そんなぁ?作家だなんて…そんないいもんじゃないです?」テレテレ

教徒「どんな本を出版されたんですか!」

修道女「興味津々だね?」

教徒「いいだろ?本が好きなんだから?」
257: ◆WEmWDvOgzo:2014/12/22(月) 21:38:11 ID:gTRPXbGnWE
院長8「か、カケフ地方の文学協会に送っていくつか出版しただけなんですけどね?」

神父2「カケフ地方なら丁度、ここ南の領土の主要都市部じゃないですか?」

宣教師「となると多くの人に読まれていたのでは?」

院長8「それが子供向けのおとぎ話ばかりなもんで読書好きの方々にウケなくて…すぐ廃版になっちゃいました」

神父2「それは残念ですね…」

教徒「へぇ…!見てみたいなぁ?」

院長8「あ、なんでしたら見ていきますか…?」オソルオソル

宣教師「あるんですか?」

院長8「は、はい…。当時の売れ残った在庫はほとんど各地の図書館に寄付したんですが…。
原本は院内の図書室に保管してありまして…こ、子供たちが自由に読めるように…してありまして?」モジモジ

教徒「読みたいです!」ガタッ

修道女「私も!?」ガタッ

院長8「そ、そう…ですか!で、ではご案内します!」パァァ

宣教師「…それでは孤児院に立ち寄ってから出発しましょうか?」ニコニコ

教徒&修道女「はいっ!!」
258: ◆WEmWDvOgzo:2014/12/22(月) 21:44:06 ID:Rbp1gb8IvI
―――孤児院(図書室)―――

教徒「」パラパラ

修道女「へぇ…!」パラパラ

院長8「」ドキドキ

修道女「面白い!どこがとか具体的に言えないけど…とにかく面白かったです!」パタンッ

教徒「ほのぼのとした雰囲気で挿し絵も可愛らしいし、読みやすいよね?」

修道女「そうそう!」

教徒「旅立ちの場面はワクワクしましたし!」

修道女「そうだよ!」

教徒「最後の勇者が悪いドラゴンを説得して仲良くなっちゃうのも素敵でした!」

修道女「そうなんだよね!」

教徒「そうしか言ってなくない?」

修道女「だ、だって…うまく言えないんだもん?」ゴニョゴニョ

院長8「感無量です…!」フルフル

教徒「そ、そんな大げさですよ?僕らは専門家じゃありませんし?
あ、そうだ?司祭様はどうでした?」

宣教師「大人向けの話ではないですが私は好きですよ?」パタンッ

院長8「う…」ガクッ

宣教師「落ち込まなくても…?童話なのですから元より子供たちに向けて書かれた本なのでしょう?」

院長8「は、はい…。でも読者層が文学好きの大人ばかりで…」

宣教師「子供たちはこれらの本を読んでなんとおっしゃいますか?」

院長8「好きとか…面白いと…?」オズオズ

宣教師「そうでしょうね?」ニコッ

院長8「……?」

宣教師「この本は子供たちに読まれて初めて光り輝くのでしょう。
営利目的であれば望み薄かもしれませんが…孤児院に置かれる本としてはこの上なく最適です?」ニコニコ

院長8「あ、あ、ありがとうございます!」ペコッ
259: ◆WEmWDvOgzo:2014/12/22(月) 21:55:58 ID:Rbp1gb8IvI
―――ホルウィの町(正門前)―――

修道女「院長さん、感激してましたよ!」スタスタ

教徒「今回を機にまた書いてくれるといいですね?」スタスタ

宣教師「誰しも趣味は必要ですからね。なにか楽しみがないとやる気も起こらないですし」スタスタ

修道女「子供たちもいい子ばっかりでしたよ!あれなら、すぐに里親が見つかりますよね!」

宣教師「そうですね。子供たちが幸福を得る為にも院長さんや職員の方々に頑張っていただかなければなりません」

司教「おぉ!司祭様、待ちわびましたよ?既に馬車の用意は済んでおりますぞ!」

宣教師「すみません、少し寄り道しまして?」

修道女「子供たちにホビットと仲良くしましょうねーって言ってきました!」

教徒「この町にホビットが来たら仲良くするって約束してくれましたよ!」

司教「そうでしたか。そういえば憲兵さんから伝言を承りましたよ。
団長様は昨夜の事件の後処理で身動きが取れないので代わりにと」

宣教師「領主邸は凄絶だったそうですしね…。私も団長さんにお礼をしたかったのですが…」
260: ◆WEmWDvOgzo:2014/12/22(月) 21:56:32 ID:gTRPXbGnWE
司教「肝心の伝言なのですが……『偽の王国兵に気を付けるように』との事です」

宣教師「偽の王国兵?」

司教「どうやら手配書を改竄して各地に流した人物がいるそうで…救い主様に懸賞金が懸かっているというデマが広まっているんだとか」

宣教師「なっ…!なぜカロルくんに懸賞金が!?
そんな事をすればお金目当ての悪党に付け狙われてしまいますよ!?」

司教「詳しくは聞いておりませんが…また何か不穏な空気が漂ってますな。
王国の内部に救い主様を始末しようとする動きが見られると」

宣教師「……!アントリア神官を封じたというのに…まだ無益な争いを繰り返したい人物がいるのですか!」

修道女「…私達が早く見つけないと救い主様が悪人の手に渡ってしまうかも?」

教徒「た、大変だ!最近になって、やっとホビットと人で共存する町も増えてきたのに!」

司教「救い主様が王国に始末されてしまったら…今度こそホビットと人間は共存出来なくなるな」

宣教師「……!司教さん、申し訳ございませんが…一度、大聖堂に戻っていただけますか?」

司教「構いませんが…私は何をすれば?」

宣教師「全教団員に報せ、偽の手配書の事実を国中に伝えさせるのです!
そして同時に不審な王国兵の情報も探らせなさい!」

司教「承りました!」

宣教師「どなたの仕業か知りませんが…カロルくんとお母様の無事は私達、教団が何に代えても死守してみせます!いいですね!?」

司教&修道女&教徒「はいっ!!!」
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