1スレ
少年「ボクが世界を変えてみせる」
http://llike-2ch.sakura.ne.jp/bbs/test/mread.cgi/2ch5/1356265301/l10
2スレ
カロル「ボクが世界を変えてみせる」
http://llike-2ch.sakura.ne.jp/bbss/test/mread.cgi/ryu/1385288769/l10
―――あらすじ―――
それは遠い昔のお話
人と人は長い長い争いに身を投じ、互いを許せないまま30年もの月日を互いの血を流すことに費やしました
しかし長い争いはいつまでもいつまでも終わる気配もなく
人を傷付け、愛を蝕み、心は枯れて、命は絶えて、いつしか疲れ果てて……やがては目的さえ見失ってしまいました
そんな終わらない争いの果てに一つのきっかけが巡るのです
それは人と人との争いに無関心だったホビット族に原因があると唱える迷信でした
その迷信はあまりにも唐突で、あまりにも不自然な内容でしたが痩せ細って震える人々、争いに疲れきった国々はホビットに全てを擦り付けて争いを終わらせようと決めたのです
戦争が鎮まった後、各国に迷信を掲げた王国は大規模な宗教団体を立ち上げました
その団体は教団と呼ばれ、戦争を納めた功労者であるノワール・バントン司祭を筆頭に教徒達による布教活動が開始されました
布教の内容はホビット族が人間から゙癒しの力゙と呼ばれる特別な能力を奪ったというもので……
これを軸に様々な悪評を並べ立てて人々の心にホビット族への憎しみを焼き付けます
ありもしない神の作り話にいざなわれ、人々は信者へと洗脳されていきました
それから約40年の間、教団による布教活動は続き、思惑通り人々は順調にホビット族を差別していました
人間はことごとくホビット族の住み処を侵略し、奴隷にしてみたり、愛玩用に飼い慣らしてみたり、時には残酷な拷問を加えて見世物にしたり、罪深き種族と罵って横暴の限りを尽くします
221: ◆WEmWDvOgzo:2014/12/17(水) 23:05:01 ID:.ni3VxVP3g
―――町役場―――
受付「あぁ……ダメですね。もう申請が通ってるんで?」
院長8「え!?」
受付「この書類をご確認ください」ペラッ
院長8「……!」マジマジ
受付「手続きも無事に済んでますし」
院長8「し、しかし自分はサインなんてしてませんよ!」
受付「(めんどくせぇなぁ)」
院長8「お、お願いします!このままでは預かってる子供たちも一生懸命働いてる職員も路頭に迷ってしまうんです!」
受付「無理なもんは無理です。お帰りください」
院長8「そんなぁ…!」ウルッ
222: ◆WEmWDvOgzo:2014/12/17(水) 23:05:54 ID:02Flk6/uEY
―――ホルウィの町(住宅地)―――
町人1「はぁ?孤児院を残したいから署名してくれ?」
院長8「み、皆様の一筆が子供たちを救うんです!どうかお願いします!」ペコペコ
町人1「嫌だね!あそこのガキんちょがうるさくて昼寝出来ないんだよ!」
院長8「そ、そんなぁ…お昼以外はお勉強や教本の読み聞かせ、お祈りに食事に就寝と院内に籠ってますし…」
町人1「うるせぇもんはうるせぇんだよ!」
町人2「ふん…あんたらが変な規律を作るからウチの子は孤児院の前を通れないんだよ!
おかげで毎回、遠回りして修道院に通ってんだぞ?」
院長8「そ、それは…前に町の子たちが柵越しに集団で院の子供をからかったので…立ち入りを禁じないと」
町人2「からかった!?ウチの子がからかったってか!?」
院長8「あ、いや…その…」マゴマゴ
町人3「大体よ!あんたらは俺達の税金で運営してんだろ!?
なんで俺達が働いた金でどこの誰だか分からん他人のガキを養ってやんなきゃなんねぇんだ!?」
院長8「い、いや、あの…た、助け合い……」シドロモドロ
町人4「助け合いかぁ。じゃあ俺達、生活苦しいし金に困ってるから院を潰してくれよ。そうすりゃ負担が減るから」
町人1「そうだよ!それがいいよ!」
町人3「でかい宿が出来れば観光客も増えるし町全体が活気立つよな!」
町人2「金ばっか掛かる孤児院なんかいらねぇよ!領主様に任せりゃいいんだ!」
院長8「そ、そんなぁ〜…!?」ウルウル
223: ◆WEmWDvOgzo:2014/12/17(水) 23:06:39 ID:.ni3VxVP3g
〜〜〜夜〜〜〜
―――ホルウィの町(教会)―――
院長8「ダメでしたぁ…!」グスッ
神父2「まぁまぁ?気を落とさずに?」
院長8「自分が優柔不断だから…!もっと早くに対応してたら…!」グズグズ
神父2「そんなことないですよ?
いつも散歩がてら拝見してますが院長として、しっかりやってるじゃないですか?」
院長8「でも…!全然…なんにもできなくて…!」ヒーン
ガチャッ
神父2「おや、司祭様。おかえりなさい」
院長8「ひぃっ!?すみません!すみません!ダメダメですみません!」ペコペコ
宣教師「え?ど、どうしたんですか?」オロオロ
神父2「駆けずり回ってみたそうなんですが…あまり芳しくなかったようで」
院長8「自分のせいで子供たちがぁ!職員がぁ…!もうおしまいだぁ!?」ヒーン
宣教師「…薄情な方ばかりですね。『自分が良ければそれでいい』ホルウィの精神が根付いてしまってますよ」
神父2「かわいそうですが…このままでは本当に……」
院長8「言わないでくださいぃ…!お願いだからぁ…!」ウワーン
宣教師「……」
ガチャッ
司教「ただいま戻りました」
修道女「遅くなってすみません!」
教徒「言われた通り、町の方々に聞いて回りましたよ!」
宣教師「ご苦労様です。ではお茶を入れて一息付きましょうか?」ニコッ
院長8「え…?」ポカン
224: ◆WEmWDvOgzo:2014/12/17(水) 23:08:25 ID:.ni3VxVP3g
院長8「そ、そういえば皆さん…今までどちらに?」オロオロ
神父2「町民の皆様に領主の話を伺っていたそうですよ」
院長8「そ、そうなんですか?」
宣教師「言いましたよね?徹底抗戦すると?」
院長8「は、はぁ」
宣教師「何か分かりましたか?」
司教「それがもう…」
修道女「じゃんじゃん出てきましたよ?」
教徒「黒い噂があちこちに散らばってましたね」
宣教師「やはりそうですか。あのような人柄で慕われている訳がありませんよね」
司教「あくまで噂なのですが…毎月行われる様々な大会。
町民の間では領主が勝敗を操作してるんじゃないかと疑われているようで」
宣教師「と言いますと?」
司教「…仮装大賞も舞踊コンテストも審査員は領主の息が掛かった連中だそうで。
剣術大会は審査員こそいませんが毎回、ウッド・ヴァージスという猛者が優勝しており、そのヴァージスが領主邸に出入りするのを何度か目撃してる町民もいると」
宣教師「あぁ…決め付けはよくありませんが絶対にやってそうですね」シラー
教徒「お金に物を言わせて女の人を取っ替えひっかえしたり、高級な装飾品や衣類を買い与えてるとも聞きました」
宣教師「これはまた想像通りな……」シラー
修道女「あと外の方の情報ですと元は北の領土で商いをしてたみたいで…ごろつき崩れを率いて押し売りをしたり、安物の果実酒などを言葉巧みに高額な値で売り付けたり悪質な商売をしてたそうです」
宣教師「…詐欺師じゃないですか。お金を稼ぐ努力が聞いて呆れますね……」シラー
院長8「そんな奴に自分の孤児院が潰されるなんてぇ…!?」ワシャワシャ
神父2「まぁまぁ?司祭様がなんとかしてくださいますよ?」
宣教師「えぇ、とりあえず有力な情報も得ましたし、なんとかしてみましょう」
院長8「ほ、本当ですか!?」
宣教師「えぇ。先ほど手紙を送って強力な助っ人も呼びましたので」
院長8「じ、自分よりお若いのになんて頼もしい…!」
宣教師「まずは三日後…取り壊しをさせないように交渉しなければなりませんね」
225: ◆WEmWDvOgzo:2014/12/17(水) 23:11:00 ID:.ni3VxVP3g
〜〜〜朝〜〜〜
―――ホルウィの町(領主邸)―――
ホルウィ「なぁにもこんな早朝に訪れずとも…」ムニャムニャ
宣教師「……」
院長8「……」
ホルウィ「先日のお詫びでしたら床に這いつくばってあたくしの足の指の汚れを一本ずつ丁寧に舐め取っていただくだけで結構ですよ?
そうすれば協賛金の寄付も、もう一度だけ考えて差し上げても……」フフン
宣教師「あなたバカですか?」
ホルウィ「は…!?」ビキィッ
宣教師「協賛金はいらないと申し上げた筈です。今日は折り入って相談があって来ました」
ホルウィ「ん、んだと…このアマァ…!?」ビキビキ
宣教師「孤児院の取り壊し計画を中止していただきます」
ホルウィ「はぁ!?」
宣教師「孤児院の運営に関しては教団でも資金提供しておりますので例え町の資産であっても私を通さなければいけませんよね?」
ホルウィ「ぐむっ…!だ、だがあくまで運営者の意向が重要だろ!」
院長8「じ、自分は反対です!孤児院を続けたいです!」
ホルウィ「誓約書にサインしたじゃないか!?」
院長8「してません!勝手に書かれたんです!」
ホルウィ「ひ、開き直りか?見苦しい奴だ!」
宣教師「見苦しいのはあなたです。おおかた町役場の役員も手懐けているのでしょう?」
ホルウィ「し、しし知らんなぁ?なんのこっちゃ分からん?」
宣教師「いけませんよ。ズルは?
私は憲兵団とも親しくしてますので、いざとなれば偽の誓約書を暴いてあなたを牢屋送りに出来ますからね?」
ホルウィ「むぐぐ…!」ギリギリ
226: ◆WEmWDvOgzo:2014/12/17(水) 23:13:49 ID:.ni3VxVP3g
院長8「決して保身的になってる訳じゃありません!子供たちの為に必要なんです!」
ホルウィ「だ、黙れ!ガキたちが必要でも町には要らないんだよ!」
院長8「どうか御慈悲を!この通りです!」ガバッ
ホルウィ「土下座したって一銭にもならないんだよ!そんなに残したきゃ教団だけで運営しろ!」
宣教師「そうしたいのは山々なのですが生憎、こちらもそこまでの余裕はありません」
ホルウィ「じゃあ諦めろ!どっちみち俺が金を出してやらなきゃ潰れんだからよ!」
宣教師「そこでもう一つ相談です」
ホルウィ「は…!?」
宣教師「毎月、開催されている大会…あれに私達も出たいのですが?」
ホルウィ「なんだとぉ…!?」
宣教師「特に参加制限はありませんよね?」
ホルウィ「勝手にしろ!どうせ優勝なんか出来ねぇよ!」
宣教師「そこで私達が勝ったら…孤児院の取り壊しを撤回してください」
ホルウィ「あぁん!?」
宣教師「おやおや?それは自信の無さから来る虚勢ですかね?」ニコッ
ホルウィ「…だ、誰が!?」
宣教師「いえいえ、いいのですよ。こちらが出場して賞金を総取りされては叶いませんもんね?」ニコニコ
ホルウィ「だぁぁ!うるっせ小娘がぁ!?やれるもんならやってみろ!?」
宣教師「ではその方向で?」ニコニコ
227: ◆WEmWDvOgzo:2014/12/17(水) 23:15:29 ID:02Flk6/uEY
ホルウィ「(審査員は俺の手下だし、剣の部門にはヴァージスが控えてるんだ…。こいつらの優勝はありえねぇ!)」ニヤリ
院長8「だ、大丈夫…なんですか?」オロオロ
宣教師「余裕ですよ。この肉まんをぎゃふんと言わせましょう?」ビッ
ホルウィ「誰が肉まんじゃボケおらぁ!?」ガァーッ
宣教師「あなたですけど?」
ホルウィ「くぁwせdrftgyふじこlp!!!!」ビキビキ
院長8「ひぃっ!やめましょ?もう帰りましょうよ!」アワアワ
宣教師「やーい、肉まん」
ホルウィ「ウボロロロロ!!!!!」ガシッガシッ
院長8「とうとう鈍器を持ち始めましたよ!?まずいですって!?」
宣教師「逃げましょうか。それでは1ヶ月後にまたお会いしましょう?」ガタッ
ホルウィ「卯がぁららららからカラカラ!!!!!」ブンッ
ドンッ
院長8「ひぃっ!?カップとか灰皿投げてきてますよ!?」タタタッ
宣教師「オチャメが過ぎましたね」テヘッ
ガチャッ バタンッ ドンッ ドンッ
228: ◆WEmWDvOgzo:2014/12/17(水) 23:16:40 ID:.ni3VxVP3g
〜〜〜夜〜〜〜
ヴァージス「わざわざ呼びつけて…どうしたんです?」
ホルウィ「ふーっ…ふーっ…!」イライラ
司会「」カチャカチャ
メイド「」カチャカチャ
ヴァージス「ずいぶん荒れてますねぇ、旦那?使用人総出で片付けですか?」キョロキョロ
ホルウィ「殺せ…!」
ヴァージス「…は?」
ホルウィ「来月の大会に教団の連中が出場する…!殺しちまえ!?」
ヴァージス「…お断りだ?いくらなんでも殺しは出来ねぇよ?」
ホルウィ「優勝賞金…やる!お前に!」
ヴァージス「……?」
ホルウィ「来月の賞金は返さなくていい!まるごとくれてやる!」ギョロリ
ヴァージス「目が血走ってますぜ?」クククッ
ホルウィ「試合とはいえ決闘だ…!不慮の事故は仕方ねぇだろ!誰も殺したなんて思わねぇよ!?」
ヴァージス「……」
ホルウィ「どうすんだよ!?おぅ!?」
ヴァージス「……金と引き換えに人殺し、か」
ホルウィ「出来ねぇたぁ言わせねぇぞ!?今までどんだけ金を積んできたと…!?」
ヴァージス「引き受けよう」
ホルウィ「…お、おう?そ、そっかぁ!だよなぁ?うんうん!」アセアセ
ヴァージス「大金積まれちゃ断り切れませんわ?人の命は金に劣りますからねぇ…?」クククッ
ホルウィ「やっぱりお前は分かってるよぉ…!」ニタァァ
229: ◆WEmWDvOgzo:2014/12/17(水) 23:18:08 ID:02Flk6/uEY
〜〜〜大会当日〜〜〜
―――ホルウィの町(広場)―――
司会「さぁあああああお待たせしましたぁああああああああ!!!!
今月も各部門毎に大会を開催したいと思いますぅうううううう!!!!!」
ワーワー キャーキャー
司会「まぁずは恒例の仮装大賞!!今月はどんなおもしろ爆笑びっくりドッキリな仮装を拝めるのでしょおおおおおおぉぉか!!!!」
ワーワー キャーキャー
司会「では早速いってみましょおおおお!!!エントリーナンバー1番!パッパラパーさん!!!どおおおぅぞおおぉぉ!!!!」
バッ
パッパラパー「」ジャーン
司会「おおおお!!髪の毛を毛糸のカツラで真緑にし、上から下まで赤い物を着飾ってる!!これはトマトかニンジンかあああ!!何はともあれ爆笑間違いなしいいいい!!!!!」
シーン
宣教師「(フリがあまりにもひどすぎる)」パチパチ
パッパラパー「うわーん!」ダッ
司会「はい逃げましたね!失格です!優勝なし!賞金よりも羞恥心!この大会に腰抜けは入りません!
来月まで後ろ指差されながらみじめに明日を生き抜いていただきたいと思います!
それではエントリーナンバー2番!ポップティスさん!」
宣教師「(なんかもういろいろひどい)」
ジャーン
シーン
ウワーン
ダダダダダダダッ
ハイ ツギノカター
宣教師「(もうやめてあげてと言ってしまいたい)」
230: ◆WEmWDvOgzo:2014/12/17(水) 23:19:28 ID:02Flk6/uEY
〜〜〜夜〜〜〜
―――教会―――
院長8「ひっく…ぐすっ…ダメダメだぁ…!自分なんか…自分なんか…!」グズグズ
神父2「まぁまぁ?しょうがないですよ?仮装のおもしろさなんて好みに左右されるんですから?」
司教「あの空気の中、よくやったと思いますぞ?」
修道女「もうお嫁にいけない…!」シクシク
宣教師「大丈夫ですよ。あなた程の器量良しなら選り取り見取りです」ナデナデ
教徒「はぁ…カラスの衣装を着てモノマネまでしたのに…」ズーン
宣教師「モノマネは少し余計だったかもしれませんね」
教徒「!?」ガーン
宣教師「まだ明日の舞踊コンテストがありますから?」
司教「し、しかし踊りなど誰も……」
宣教師「ご安心を?私に秘策があります?」ニコッ
司教「ひ、秘策…?」
宣教師「明日が楽しみです!」ニコニコ
231: ◆WEmWDvOgzo:2014/12/17(水) 23:20:40 ID:02Flk6/uEY
―――領主邸―――
ホルウィ「ぶははっ!やっぱりダメだったか?」ゲラゲラ
司会「いやひどいもんでしたよ?
まあ最初から公平に審査なんかしてませんから関係ないっすけどね?」
女「超ウケる〜!はい、ホルウィちゃん?」トクトク
ホルウィ「おう!んっ…」グビグビ
ホルウィ「ブハーッ!酒がうめぇなぁ、おい!?」ダンッ
女「あたしも飲みた〜い?」トクトク
ホルウィ「飲め飲め!瓶一本で牛3頭は買える高級葡萄酒だぜ!ぶははっ!」ゲラゲラ
女「やたっ!愛してる〜!」チュッ
司会「この調子じゃ明日も同じでしょうね?」
ホルウィ「ヒッヒッヒ!大口叩いた割にゃザコだったなぁ?相手になりゃしねぇ?」グビグビ
司会「最初っから勝ち目なんかなかったんすよ?」
ホルウィ「そりゃあそうか!?ぶはははは!!」ゲラゲラ
232: ◆WEmWDvOgzo:2014/12/17(水) 23:21:48 ID:.ni3VxVP3g
〜〜〜朝〜〜〜
―――ホルウィの町(広場)―――
司会「さぁあああああ!!!今日は舞踊コンテストだぁぁ!!どいつもこいつもヒップホップステップジャンプぅうううううう!!!
床を鳴らせぇええええ!!!大地を揺らせぇええええ!!!歓声の嵐を雄叫びやがれぇええええ!!!!!」
ワーワー キャーキャー ヒューヒュー
宣教師「…エントリーナンバーは21番、中途半端な位置ですね」
司教「し、司祭様…昨夜は秘策があるとおっしゃいましたが誰もエントリーしていませんよ?」
宣教師「いえ、してますよ。すでに舞台裏で待機させてます」
司教「は…?し、しかし…」キョロキョロ
院長8「自分はしてないです…」ズーン
修道女「私も……」ズーン
教徒「昨日の今日だと精神的にキツい……」ズーン
神父2「おやおや、皆さん疲れが見えますな?」
司教「やはり誰も……」
宣教師「まぁ見ていてください」
司教「……」
233: ◆WEmWDvOgzo:2014/12/17(水) 23:23:00 ID:02Flk6/uEY
タンッ クルッ パッ
司会「はーい。エントリーナンバー20番、ガーネットおばさんの準備体操…じゃなくて素敵なダンスでしたぁー。皆さん惜しみ無い拍手をー」ボーヨミ
パチパチ パチパチ
司会「さて、お次はエントリーナンバー21番!おぉ!なんと大会初のお二人での参加になります!
それでは出てきてもらいましょう!ライオネル&リッチーさんです!どうぞ!!」
シャッ シャッ
オオオオオオオオオオオオ
ライオネル「あぁ…なんてことなの?ダーリン?まさかあたくし達がこんな素人に混じって踊らされるなんて!」タタンッ カッカッ
リッチー「僕も同じ気持ちさ、ハニー?だが国王に頼まれたんだ。セレブとお近付きになれるチャンスだよ?」クルルッ シュタッ
ワアアアアアアアアア
ライオネル「そうね、ダーリン?いずれは世界を制するエンターテイナーとして…地べたに足を付くのも経験かしら」シュッ バババッ
リッチー「」スッ パシッ
グルグルグルグル バッ ババッ
ヒューヒュー ブラボー!!
リッチー「そうさ、ハニー?一流の舞踊家たる者、彼らのように地の底で蠢く哀れな亡者たちにも真剣に向き合わないとね?」ヒュッ カカンッ カッカッ
ライオネル「えぇ。さながらあたくし達は地の底に舞い降りし神の化身!」タッ タンタタタンッ
リッチー「貧しく弱々しく愚かしく生臭い有象無象の群れにすら愛を落とす悪戯な堕天使!!」バッ バババッ
ライオネル「手を握って!ダーリン?」ヒュッ クルルッ スッ
リッチー「観客に最高の瞬間をプレゼントしよう!ハニー?」パシッ グワッ
グルグルグルグル パッ ピョンッ
ウオオオオオオ!!
ライオネル「フィ……」シュタッ
リッチー「ナーレ!!」シュタッ
ワアアアアアアアアア!!! ウオオオオオオ!! ヒューヒュー!! キャーキャー!!!
パチパチ パチパチ パチパチ パチパチ
234: ◆WEmWDvOgzo:2014/12/17(水) 23:25:04 ID:02Flk6/uEY
司会「」ポカーン
司会「」ハッ
司会「す、すみません!あまりに魅入ってしまい、我を忘れてました!
それでは審査していただきましょう!ライオネル&リッチーの点数ははたして!?」
審査員's「」ババッ
司会「……!?で、出たああああああああああ!!!
なんと史上初の最高得点、全員一致で満点!1000入りましたあああああああああ!!!!」
ライオネル「当然よね、ダーリン?」ダキッ
リッチー「当然さ、ハニー?」ギュッ
司会「(こ、こいつら素人じゃねぇだろ、絶対……てかまずいなぁ。なにやってんだよ審査員共!)」アセアセ
宣教師「予想以上でしたね?」パチパチ
司教「いやぁ人間技とは思えませんよ」パチパチ
院長8「感涙してしまいました…!」ボロボロ
修道女「あとでサインもらっちゃお!」キラキラ
教徒「司祭様のお知り合いなんですか?」
宣教師「いえ、まったく知りません。私は国王に手紙で助っ人をお願いしただけですので?」
教徒「へぇ…全然知らないけど、あんなすごい人達がいるんだなぁ」
宣教師「知名度の割にお忙しいようでして…大会が終わったらすぐに王都へ戻るみたいですよ」
司会「さ、さぁ…続いてはエントリーナンバー22番……あれ?棄権ですか?じ、じゃあ…その次も棄権?えーっ!?」
235: ◆WEmWDvOgzo:2014/12/17(水) 23:26:30 ID:.ni3VxVP3g
〜〜〜夜〜〜〜
―――領主邸―――
ホルウィ「はぁ〜!?なんじゃ、そりゃあ!?」
司会「し、審査員共が点数を操作すんの忘れて満点出しちゃいまして」アセアセ
ホルウィ「バキャロー!?なにやってんだ!このクソバカが!?」
司会「す、すんません!」
ホルウィ「チキショー!あのアマァ〜…!まさか本物の舞踊家を持ってくるたぁな…町の催しなのに何考えてんだか!?」
司会「も、もしかしたら明日の剣術大会もスッゲーのを呼んでくるんじゃ…?」
ホルウィ「くそっ!あり得るな…!ヴァージス!大丈夫なのか!?」
ヴァージス「ふ〜ん…?助っ人ねぇ…?」キュッキュッ
ホルウィ「剣の手入れなんかしてる場合か!?」
ヴァージス「」ギラッ
ホルウィ「」ビクッ
ヴァージス「楽しませてくれんのかねぇ?」クククッ
ホルウィ「お、おぉ…!なんか頼もしいな!」
司会「ご主人様!ヴァージスさんは元王国兵の中でも優秀な剣術家にだけ与えられる騎士の称号を持った剣士っすよ!」
ホルウィ「そ、そうだよなぁ!楽勝だな!うん!」
ヴァージス「遊びばっかじゃつまらねぇからなぁ…?たまには昔の感覚で切り結びたいものだぜ…?」ギラッ
ホルウィ「ぶははっ!これなら小娘が誰を連れてこようがお構い無しだ!」
236: ◆WEmWDvOgzo:2014/12/17(水) 23:27:50 ID:02Flk6/uEY
〜〜〜朝〜〜〜
―――ホルウィの町(広場)―――
司会「さあさあさぁあああああ!来ましたあああああああああ!!!
皆様お待ちかねの超超超白熱の剣術大会いいいいいい!!!!!」
ウオオオオオオ!!!!!
司会「この場に数多の強者共が凌ぎを削り、己の闘志をぶつけ合うぅうううううう!!!
今回のエントリーはなんと大会史上最高の81人!!!まずはいつも通り8組同時対戦形式の予選会から始めたいと思いますぅうううううう!!!!」
ワアアアアアアアアア!!!!
ザザザザザザッ
ヴァージス「……相変わらず弱そうなのが集まってんな?」クククッ
???「……」
ヴァージス「ん…?見間違えか…?あれは確か…いや、そんな筈は……」ゴシゴシ
司会「さあさあ!出場者が出揃いましたぁああ!!!
それでは始めていただきましょう!!!大予選会、開始ぃいいいいいい!!!!!」
???「」ダッ
ヴァージス「…まぁいい。こんな所にいる訳がねぇさ」ダッ
ドドドドドドッ
237: ◆WEmWDvOgzo:2014/12/17(水) 23:29:08 ID:.ni3VxVP3g
ガンッ カンッカンッ ボコッ バシッ ビシィッ
司教「す、すごいですな…?」オロオロ
宣教師「巡礼での争いを思わせる嫌な光景ですよ…」
教徒「今日も助っ人が?」
宣教師「はい。私の知る限りでとびっきり最強の方をお呼びしました」
修道女「えぇ?どこにいるんですか?」キョロキョロ
宣教師「探さずとも間違いなく決勝の舞台に上がってきますので?」
院長8「す、すごい信頼されてるんですね…?」
宣教師「えぇ。多分ですけど、あの方と1対1で戦って勝てる方はこの世にいないと思います」
司教「……!」ゴクッ
教徒「な、なんかそこまで言い切られると怖い…」
院長8「堅気の人…ですよね?」オソルオソル
修道女「というより、ちゃんと人間なんですよね…?」ビクビク
神父2「ハハハ…司祭様は交友関係が幅広くていらっしゃいますな」
宣教師「ふふふ?」クスッ
238: ◆WEmWDvOgzo:2014/12/17(水) 23:30:17 ID:.ni3VxVP3g
司会「さぁあああああ始まりますよ決勝戦!呼んで字の如く真の勝者が決まります!!!!」
司会「決勝の舞台に上がった栄えある二名はこちら!エントリーナンバー1番!
その立ち振舞いは圧倒的!!もはや闘神と言っても過言ではない!!!!」
司会「我らがホルウィの町の英傑!!!ウッド・ヴァージスぅうううううう!!!!!!」
ワアアアアアアアアア!! キャーキャー!!
ヴァージス「……」ザッ
司会「続きましてエントリーナンバー52番!大会初出場ながら次々と強敵を薙ぎ倒し、決勝へと駆け上がりました!!
はたしてこの勢いで英雄ヴァージスを破って優勝してしまうのか!?
なんとも謎多き武人、ダパーシ・ルフィアスぅうううううう!!!!!」
オオオオオオオオオオオオ!!!!
???「」ザッ
ヴァージス「……ルフィアス!?」ギョギョッ
団長(ルフィアス)「正々堂々、己に恥じぬ戦いにしよう」スッ
ヴァージス「み、見間違いじゃなかったのか…!?」ワナワナ
団長「む?ワシを知っているのか?」キョトン
ヴァージス「あぁ…!?」
団長「すまんが…どこかでお会いしただろうか?」
ヴァージス「お、おぼ…覚えてないのか…!この俺を…!?」
団長「………」ジーッ
ヴァージス「よく見ろ!知ってんだろうが!?」
団長「……め、面目ない」アセアセ
ヴァージス「きぃさぁまぁぁぁあああ………!!!」ビキビキ
司会「それでは始めていただきましょう!決勝戦、開始ぃいいいいいい!!!!」
239: ◆WEmWDvOgzo:2014/12/17(水) 23:31:59 ID:02Flk6/uEY
ヴァージス「もう昔の俺じゃねぇぞ…!やってやる…やってやるよぉ…!」グッ
団長「本当に申し訳ない。歳のせいか記憶力が、な…」アセアセ
ヴァージス「ざけんじゃねぇえええ!!!」バッ
オオオオオオ!!!
団長「」ペシッ
ポトッ
ヴァージス「えぇぇぇ………あれ?」スカッ
シーン
司会「…は、はたき落とした?」
団長「……?い、いや…あまりに遅い剣だったので軽くいなしてみたんだが…反則なのか?」キョトン
ヴァージス「あ、あぁあま…あまりに遅い…!?」ワナワナ
司会「あ、いや…そうですね。木剣とはいえ、はたき落とした方は初なんで……」オロオロ
団長「そ、そうか…?では仕切り直そう?どうぞ得物を拾ってくれ?」スッ
ヴァージス「……!」プルプル
団長「……?」
ヴァージス「棄権、する」ボソッ
司会「えっ」
団長「えっ」
ヴァージス「俺の敗けだ」クルッ スタスタ
司会「」アゼン
団長「わ、ワシの勝ちでいいのか…?」
シーン
司会「え、えー…じゃあルフィアス選手の優勝です」オロオロ
ワアアアアアアアアア!!!!!!
パチパチ パチパチ パチパチ パチパチ
240: ◆WEmWDvOgzo:2014/12/21(日) 17:39:59 ID:dqvzbTqV8Y
〜〜〜夜〜〜〜
―――ホルウィの町(教会)―――
神父2「なんとかなって良かったですね?」
院長8「は、はい!」
修道女「これで子供たちの居場所が失われなくて済みますよ!」
教徒「本当に良かったですよ!あんなにたくさんの子供たちが野ざらしにされたらどうなってたか!」
院長8「で、ですが…本当に約束は守られるんでしょうか…?」マゴマゴ
宣教師「後の事は団長さんにお任せしてありますのでご安心ください?」
院長8「だ、団長さんが…?」ブルッ
司教「あ、あの方なら確かに安心だな…」ゾクッ
教徒「すごかったですよね…。相手の木剣をペシッと平手打ちしただけではたき落としちゃいましたもんね…?」
修道女「相手の人、すごく強そうに見えたのに…あんなにあっさり……」
宣教師「団長さんは王国軍と憲兵団を束ねる国王直属の私兵ですからね。
お金に目の眩んだ剣士など相手にはなりませんよ」
神父2「そんな大物がよくこんな小さな大会に参加してくださいましたね?」
宣教師「ふふふ。あの方は正義感が人一倍強く、国王の命令に忠実ですから?」
院長8「し、司祭様ほどになれば王族にも頼み事が出来るんですねぇ…」アセアセ
宣教師「そりゃそうですよ…。半ば強引に教団を任されたんですから、これくらいしてもらわないと…」ブツブツ
院長8「…し、司祭様?」
修道女「王族の話になると途端に機嫌が悪くなりますね…?」
司教「そ、そうだな…?何かあったんだろうか…?」
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