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カロル「ボクが世界を変えてみせる」【完結編】
[8] -25 -50 

1: ゆったりペースになりますが! ◆WEmWDvOgzo:2014/11/16(日) 20:09:52 ID:N4jwCkModw
1スレ

少年「ボクが世界を変えてみせる」

http://llike-2ch.sakura.ne.jp/bbs/test/mread.cgi/2ch5/1356265301/l10

2スレ

カロル「ボクが世界を変えてみせる」

http://llike-2ch.sakura.ne.jp/bbss/test/mread.cgi/ryu/1385288769/l10

―――あらすじ―――

それは遠い昔のお話
人と人は長い長い争いに身を投じ、互いを許せないまま30年もの月日を互いの血を流すことに費やしました

しかし長い争いはいつまでもいつまでも終わる気配もなく
人を傷付け、愛を蝕み、心は枯れて、命は絶えて、いつしか疲れ果てて……やがては目的さえ見失ってしまいました

そんな終わらない争いの果てに一つのきっかけが巡るのです
それは人と人との争いに無関心だったホビット族に原因があると唱える迷信でした
その迷信はあまりにも唐突で、あまりにも不自然な内容でしたが痩せ細って震える人々、争いに疲れきった国々はホビットに全てを擦り付けて争いを終わらせようと決めたのです

戦争が鎮まった後、各国に迷信を掲げた王国は大規模な宗教団体を立ち上げました
その団体は教団と呼ばれ、戦争を納めた功労者であるノワール・バントン司祭を筆頭に教徒達による布教活動が開始されました

布教の内容はホビット族が人間から゙癒しの力゙と呼ばれる特別な能力を奪ったというもので……
これを軸に様々な悪評を並べ立てて人々の心にホビット族への憎しみを焼き付けます
ありもしない神の作り話にいざなわれ、人々は信者へと洗脳されていきました

それから約40年の間、教団による布教活動は続き、思惑通り人々は順調にホビット族を差別していました
人間はことごとくホビット族の住み処を侵略し、奴隷にしてみたり、愛玩用に飼い慣らしてみたり、時には残酷な拷問を加えて見世物にしたり、罪深き種族と罵って横暴の限りを尽くします


121: ◆WEmWDvOgzo:2014/12/1(月) 00:38:47 ID:gUlMLlO5yg
ルーラララー ルーラララー

ファルージャ「舞子達も政務官殿に舞踊を御披露目出来て、さぞ光栄に思っているでしょう?」

政務官「は、はぁ…」

ファルージャ「どうかなされまして?」ピトッ

政務官「ふおっ!」ピクンッ

側近「(へ、陛下の清く柔らかな手が太ももを流れるように這って…!う、羨ましすぎるぞおま)」ワナワナ

ファルージャ「クスス……?」ススー

政務官「(な、なんだ、この女……て、手付きがいやらしいとかいう次元ではないぞ…!?)」ゾクゾク

ファルージャ「おや…?舞踊どころでは無さそうな?」チョンッ

政務官「た、戯れが過ぎますぞ…!」ピクンッ

ファルージャ「クスス……そなたがここへ来た目的が変わってしまわれるか……」クスクス

政務官「(よ、妖艶だ…噂は伊達じゃないな。"魔性のファルージャ"……!)」

ファルージャ「余興を眺めながらで結構です。妾の問いに答えていただけまするか?」ジッ

政務官「…む、無論にございます」ドキドキ

ファルージャ「そうか…。では…?」ニタァァ

政務官「……!」

ファルージャ「教えてたもれ?癒しの力はどこにおる?」

政務官「っ…!」
122: ◆WEmWDvOgzo:2014/12/1(月) 00:39:59 ID:MvVpHIxlN.
ファルージャ「ん?まさか知らぬとは言うまいな?」

政務官「癒しの力…と言われましても」

ファルージャ「忌まわしき歴史を覆してまでホビットを受け入れるそなたらの不可思議な素振り…見抜けぬ妾と思うなよ?」

政務官「教団の布教内容には悪意ある改竄が施されていると判明したもので…」

ファルージャ「はぁん…?40年も伝え続けた伝承に誤りがあったとな?」

政務官「…誠に申し訳なく思っております」

ファルージャ「改竄とは…はてさて、どのように?」

政務官「癒しの力などありはしなかった…ということです」

ファルージャ「…ない?」キョトン

政務官「えぇ、ヒメ国王が即位なされて間もなく…ホビットについて調査した結果、癒しの力など存在しないと解りました」

ファルージャ「…それはそれは」

政務官「どなたに聞かされたか存じませぬが…女王陛下の知る情報は全てガセだと思われます」

ファルージャ「…困ったわネェ?」トンッ

政務官「おそらくその者の狙いは我ら王国とそちら西の国の衝突でしょう。決して踊らされてはなりませんぞ」

ファルージャ「……ふぅん」
123: ◆WEmWDvOgzo:2014/12/1(月) 00:44:44 ID:MvVpHIxlN.
ファルージャ「ま、よかろう」

政務官「ご理解いただけて何よりです」

ファルージャ「時に…この西の国では黒魔術が盛んでな?」

政務官「…そのようで」

ファルージャ「儀式には生きた血肉が必要じゃと…市民が拐かされる事件がいくつもあった?」

政務官「…前帝の方針にございましょう?」

ファルージャ「そなたは物を知っているな?我が国の歴史を語れるとは…いやはや感心したものよ?」

政務官「恐縮にございます…」

ファルージャ「そうさな…?
前皇帝は醜い男じゃった……黒魔術に憑りつかれ、幾多の民草を刈り取った紛れもなき罪人よ?」

政務官「…現在でも黒魔術の研究は続けられていると伺いましたが」

ファルージャ「…妾は人の命を何より重んじる人格者じゃ?民草を使った儀式は廃止させた?」

政務官「つまりホビットを使って研究してきた訳ですな…」

ファルージャ「あれらはまことに美しい種族よな?
絹糸のように細く柔らかな髪…透けそうな程に白い肌…琥珀にも似た金色の眼差し……どれも人間とは異なる特徴じゃ?」

政務官「…あまり思うところもございませんな」

ファルージャ「クスス……」

政務官「……?」
124: ◆WEmWDvOgzo:2014/12/1(月) 00:46:22 ID:gUlMLlO5yg
ファルージャ「妾に仕える魔導師が申すには…ホビットという素材は非常に素晴らしいと?」

政務官「…何故ホビットが黒魔術に役立つのです?」

ファルージャ「さぁの…?過程にはこだわらぬ…?妾の興味を引くのは結果のみよ?」

政務官「…まさか黒魔術が実在するとでも?」

ファルージャ「クスス……可能性はある、というだけじゃ?」

政務官「……」

ファルージャ「可能性を秘めておるのであれば…追求する他あるまいて?」

政務官「…陛下は何を望んでおられる?
癒しの力も…黒魔術も…あったとして争いの火種にしかなりますまい?」

ファルージャ「政務官殿は国想いよなぁ?魅力的な力の在処を知りながら欲張ろうとはなさらぬか?」

政務官「…私は役人だ。個人的な感情は持ち出さないよう心掛けております」

ファルージャ「立派も立派?素晴らしい愛国精神よ?」

政務官「役人として忠告致しますが…あまり多くを求めすぎれば破滅へと追い込まれますぞ?」

ファルージャ「ほう?知ったような口振りネェ?」クスリ

政務官「えぇ、そういう方を一度、この目で見ておりますからな」

ファルージャ「フゥ〜…なるほど?しからばなおのこと追求せざるを得なくなってしもうたわ?」

政務官「は?」

ファルージャ「愛国心に勝る真実の愛を教えてあげましょうか…?」ニヤリ
125: ◆WEmWDvOgzo:2014/12/1(月) 00:51:36 ID:gUlMLlO5yg
ファルージャ「妾こそ唯一無二…他の支配者気取りになど代えられぬ絶対的な統治者よ?」

政務官「(…客人に色仕掛けする統治者がいるか)」

ファルージャ「妾は物事に関心のない快楽主義者。政治など全くもって分からぬ?
この口調も適当に見よう見まねで喋っておるだけじゃ?
しかし妾には何一つ必要ない。なぜなら妾が言葉を発すれば可愛い配下たちはそのように動く?」

ファルージャ「側近よ?妾の為に死ねるかえ?」

側近「死ねます!!」

政務官「(忠誠の程を見せたいのか?くだらない…?)」

ファルージャ「フゥ〜?では死んでみせるがいい?」

側近「喜んで!!……っ!」カジッ

政務官「は…!?」

側近「ぐぐ…ぎぎぎ…!がぐぅぅ…!」タラー

ファルージャ「なかなか死なぬなぁ…?衛兵よ?」

衛兵1「ははぁっ!どうぞお使いくださいませ!」つ【剣】

側近「ひ、ひゅあんあ」パシッ

政務官「ば、バカなまねはよせ!」アタフタ

側近「ぅんっ!!」ズブッ

ファルージャ「」ニタァァ

政務官「……!?」

側近「んぐほっ!?んぅんぅ!?」ゴボッ

ビタビタ ビタビタ

側近「ひゅっひゅっ!ひゅっひゅっ…!ひゅっ…ひゅっ……」ゼェハァ

ファルージャ「そなたの忠誠心…しかと見たぞ?お前のような配下を持って妾は誇らしい?」

側近「ふ…ふっ…!」ニコッ

ファルージャ「ゆるりと休め?そして来世でもこのファルージャに尽くしておくれな?」

側近「よろ…ご…んぶはぁっ!?」ブバァッ

バタッ
126: ◆WEmWDvOgzo:2014/12/1(月) 00:55:59 ID:MvVpHIxlN.
ファルージャ「…こういうことじゃ?」ニヤニヤ

政務官「(な、なんなんだ、これは!?まるで正気の沙汰じゃない…!)」

ファルージャ「妾の要求に応える為ならば自害も辞さぬ忠義者らよ?
なればこそ妾は治世を顧みず、好きなように生きられる?」

政務官「か、彼は貴女様の側近なのでは?何ゆえ無意味に死なせ……」

ファルージャ「意味?」

政務官「重要な役職に就く人材を失うのは多大な損失だ…!そんな事も……」

ファルージャ「妾への忠誠を確かめる……この上なく意味があろう?」

政務官「……!?」

ファルージャ「それに…代わりなどいる?有り余るガラクタを使い捨てて何が悪い?」クスッ

政務官「ほ、本気で言っておられるのですか…!?」

ファルージャ「クスス…ほんに従順で愛らしい?
死ねと言われ、その場で自害してしまうのだから…ぷっ」

ファルージャ「アハハハハハハハ!!」ケラケラ

政務官「(な、なんなんだ、この女は……仮にも一国の王じゃないのか!?)」

政務官「あ、貴女には…血も涙もないのか!?」

ファルージャ「はぁん?血も涙も流した事はないが…流すとなれば、さぞ辛く苦しいのであろうなぁ?」ニヤニヤ

政務官「(こんなにも下品で…醜悪なまでに卑しいというのに……)」ジーッ

ファルージャ「誰ぞ?ハニーベリーを?」チョイチョイ

官吏1「」ススッ

ファルージャ「うむ…」パシッ

官吏「」チッチッ シュボッ

ファルージャ「……フゥゥ」スパー

政務官「(所作の一つ一つ、魅せる表情が艶やかで……美しいと思わずにいられない!)」ギリッ
127: ◆WEmWDvOgzo:2014/12/1(月) 00:57:52 ID:gUlMLlO5yg
ファルージャ「このハニーベリーなる香料…なんでもそなたらの国で生産された物らしいぞ?」

政務官「…お気に召したようで何より」

ファルージャ「フゥゥ……貿易をしましょうか」スパー

政務官「……?」

ファルージャ「西国と王国、互いの協力関係を築きましょう?」

政務官「…それはつまり同盟に加入すると?」

ファルージャ「クスス…馬鹿を申すな?堅苦しいのは好ましくなかろう?」

政務官「ではどのように?」

ファルージャ「そちらのハニーベリーを大量に頂きたい。もちろん正式な手順を踏まえてな?」

政務官「……?」

ファルージャ「悪い話ではあるまい?」

政務官「こちらとしましても交易はこれからの重要課題…是非ともお願い致します」

ファルージャ「フゥゥ…よいとも?」スパー

ジュッ

ファルージャ「そうなれば…これからは我が西国の人間も気掛かりなくそちらにお邪魔させていただけますネェ?」ニタァァ

政務官「は、はぁ…そうな…っ!?」

政務官「(ま、まさか…!)」

ファルージャ「ハニーベリーならずとも王国の文化に触れれば視野が広まりましょうな?
貿易の際は人手が多くなりまするが…どうかご容赦願おう?」ニヤニヤ

政務官「(や、やはり…開けっ広げに癒しの力の捜索隊を派遣する口実か…!?)」

ファルージャ「共に平穏と繁栄を願って協力していきましょう?」ニヤニヤ

政務官「…い、一度国王に話を通さねばなりません。少々時間をいただけますか?」

ファルージャ「それは構わぬが…我が西の国は友情に篤い民族じゃ?
早速、そちらに祝福の品を送りたい?
配下が代わって足を運ぶかも分からぬが…まさか無下にはしますまいな?」ジッ

政務官「……も、もちろん…です、とも」

ファルージャ「…よろしい?」ニィィッ
128: ◆WEmWDvOgzo:2014/12/1(月) 21:28:35 ID:h173FRh8P2
〜〜〜夜〜〜〜

―――南の山脈(清流の川)―――

ボォォォォオ

カロル「…ん、くっ」ゴクゴク

母「」スッスッ

カロル「ぷあっ…はむっ…くむ……」パクパク

マルク「」ガッガッ

母「…できた!」スッ

カロル「んっ…わぁ!すごーい?」

母「うふふ!オイールの果汁を炙って山兎の皮と蛇の脱け殻を接着した帽子よ!被ってごらんなさい?」つ【皮帽子】

カロル「うん!」カブリ

母「…どう?」

カロル「えへへ…毛がふわふわしててあったかいよ?」ニコッ

母「そう?よかったわ?この辺りは標高が高くて風も冷たいから…少しでも暖かくしないとね?」

カロル「うん…。そういえば山道を歩いてもう2週間くらい経ったけど…意外と辛くないね?」

母「そうねぇ…。元々はあてもなく旅をしながら生活してたから慣れてるのかも」

カロル「ふふ!懐かしいや?昔はよくこうやって枯れ木をくべて焚き火したもんね?」

母「そうそう。地面に木の葉を敷き詰めて寝床を用意したり…獣の食べ散らかした死骸の皮を剥いで毛布を作ったり…亡くなったお父様が教えてくれた知恵のおかげで生活には事欠かないわね…?」

カロル「それに今はマルクがいてくれるから怖い獣に会わないし、遭難もしないよ?」ナデッ

マルク「クゥン?」

母「…そうね。このままでも十分やっていける気がするわ?」

カロル「……うん!そうだね?」ニコッ

マルク「」ガッガッ
129: ◆WEmWDvOgzo:2014/12/1(月) 21:30:34 ID:h173FRh8P2
〜〜〜朝〜〜〜

カロル「……」パチッ

母「……」ウトウト

カロル「(…お母さま、また寝なかったんだ)」シュン

母「……あ」ハッ

カロル「朝になったから交代しよ?周りはボクが見てるからお母さまも休んで?」ムクッ

母「…そうね。この天気なら雨の心配もないし、少し休もうかしら」

カロル「うん!それがいいよ!あとは任せて?」

母「…じゃあちょっとだけ……」ゴロン

カロル「ちゃんと毛布もかけなきゃ寒いよ?」ファサ

母「ありがとう…?」ニコリ

カロル「どういたしまして?」ニコッ

母「……くぅ…くぅ」スヤスヤ

カロル「……」

カロル「(やっていけるって言ってたけど…お母さま、すごく疲れてる)」

カロル「(追われてる不安もあるし…やっぱり山での生活は厳しいもの)」

カロル「(それにしてもなんで王国と教団がボクらを追ってるのかな…)」

カロル「(…なにも言わないでいなくなったの…よくなかったのかも)」シュン

カロル「……」
130: ◆WEmWDvOgzo:2014/12/1(月) 21:34:29 ID:h173FRh8P2
〜〜〜夕方〜〜〜

カァーカァー カァーカァー

母「ん…うぅん?」ゴシゴシ

カロル「あ、起こしちゃった?」グリグリ

母「もう空が赤い…寝過ぎちゃったわね…。なにしてるの?」

カロル「火起こしだよ。いつもお母さまに任せきりだからボクだって頑張らなくちゃ?」グリグリ

母「そんなこと…子供なんだから気を使わなくていいのよ?」

カロル「親子だけど家族でしょ?助け合うのが普通だよ!」グリグリ

母「……」

カロル「気にしないで休んでて?ね?」ニコッ

母「…うん。ありがとう」ニコリ

マルク「あんっ!あんっ!」タタタッ

カロル「おかえりー!見つけてくれた?」グリグリ

マルク「わうんっ」シッポフリフリ

カロル「そっか!」ニコッ

母「あら…どうかしたの?」

カロル「近くに村がないか探してみてってマルクにお願いしたの」グリグリ

母「…ど、どうして?」ビクッ

カロル「…お母さま」

母「な、なに…?」

カロル「…たぶんこのままだとボクたちは静かに暮らせないと思うんだ」

母「そうかしら…?あたしは十分にやっていけてると思うわよ?」

カロル「…こんなに不安な気持ちのままでいいの?」

母「…火、点かないわね。貸してごらんなさい?」スッ

カロル「はい…」スッ

母「」グリグリ
131: ◆WEmWDvOgzo:2014/12/1(月) 21:36:24 ID:hTsbsopuA2
母「こうして強く擦るのよ…?」グリグリ

カロル「……誤解を解こうよ。みんなに謝って分かってもらおう?」

母「うーん…今日は調子が悪いわね」グリグリ

カロル「王子さまと宣教師さまなら分かってくれるよ」

母「……」グリグリ

カロル「…お母さまは気まずいかもしれないけど……ボク…」モジモジ

母「…会いたいの?」

カロル「」ギクッ

母「」ジッ

カロル「ち、ちが…う…のかなぁ?あ、あは…あはは……」テレッ

母「…会いたいのね?」

カロル「っ…あ、会いたい…」ドキドキ

母「…はぁ」

カロル「……!」キュッ

母「……マルク、案内して?」

マルク「わふー!」コクン

カロル「」ピクッ

母「行きましょう?善は急げって言うでしょ?」ニコッ

カロル「……いいの!?」パァァ
132: ◆WEmWDvOgzo:2014/12/1(月) 21:38:11 ID:h173FRh8P2
母「…お母さんね?実はずっと前から気付いてた?」

カロル「へ?」

母「あの時……黙って姿を消した後、坊やのしてきた事を台無しにしてしまったって…」

カロル「そんな…そうじゃないよ」

母「けれどまたこうなって…やっぱり人間の本質は変わらないのかもしれないと疑いもしたわ?」

カロル「……」

母「それでも…お爺さんと食事をした時に見せたあなたの笑顔が…とても煌めいていて頭から離れないの」

母「繋がる相手がいれば…坊やはその分、たくさんの幸せに満たされる」

母「こんな孤独感の中で本当の気持ちを隠し続けていたら…暗く沈んだ未来にしか辿り着けないわ」

母「今度こそ…あたしも強くなる。
怯えて逃げ出すのは簡単だけど…恐怖を乗り越える勇気を持たないとあたし達はいつまでも差別に病めるホビットのままですもの」

カロル「…ふふ!」クスッ

母「会いに行きましょう?何かを得ては失ってを繰り返してきたあたし達だもの。なるようになるわよ!」ウインク

カロル「うん!また始めからやり直そうよ!」
133: ◆WEmWDvOgzo:2014/12/1(月) 21:40:12 ID:hTsbsopuA2
―――山間の村(診療所)―――

医術師「……」トクトク

医術師「」グビグビ

医術師「ふぅぅ〜…」コトンッ

ガチャッ

医術師「……」チラッ

???「お邪魔します。先生」トンッ

医術師「…やあやあやあ、これはこれはこれは偉大なる村の救世主、クーペ様じゃあございませんか?
こんな寂れた廃墟寸前の診療所に入ってこられるとは驚きですよ?」

クーペ「…先生」

医術師「先生?とんでもない?わたくしなど、しがないヤブ医者に過ぎませんよ?
偉大な偉大なクーペ様に先生なんて呼ばれちゃ〜虫酸が……いやいやむず痒くて困りますわぁ」トクトク

クーペ「……いつからお酒を飲まれていたんですか?」

医術師「朝から晩まで毎日飲んでますよ?いやに寝付きが悪いもんでね?」グビッ

クーペ「…いつ患者さんが訪れるとも限らないのですから控えた方が……」

医術師「かぁ〜…ぺっ」ブッ

クーペ「」ビチャッ

医術師「あぁ〜すいません?深酒し過ぎたせいか痰がね?わざとじゃあござんせんよ?」ヘッ

クーペ「……お気になさらず」フキフキ
134: ◆WEmWDvOgzo:2014/12/1(月) 21:41:50 ID:h173FRh8P2
医術師「いやぁ医者の不養生というやつですよ?なんせヤブ医者なもんで?」ケッ

クーペ「…もしよろしければ、これを」スッ

医術師「なんです?その薬包紙は?」

クーペ「酔い止めです。独自に調合した物ですが効き目は保証します。
薬餌ですのでお食事に混ぜていただいても効果は得られますよ。そのまま飲むと少し苦味がくどいかもしれませんが…」

医術師「へぇ〜クーペ様がじきじきに調合なされた薬ですかぁ?そりゃもうとびっきり効果抜群の特効薬ですわなぁ?」ヒョイッ

クーペ「……」

医術師「あ、手がすべった」ブンッ

クーペ「っ……」バシッ

医術師「いやぁ飲みすぎたなぁ。手元が狂って大事な大事なクーペ様からのありがたぁ〜い薬包を投げつけてしまうなんて…後悔してもし足りないなぁ」ヘラヘラ

クーペ「…先生はわたしを憎んでおられるのですか?」

医術師「憎んだりしませんよぉ。村の救世主様を憎むなんて畏れ多い?」

クーペ「…先生の受け持っていらっしゃった患者様を独断で治療してしまったのは本当に申し訳なく思ってます」

医術師「いいんですよぉ?結果、オレなんかより遥かに速く…しかも負担なく治癒してしまったんですからねぇ?」

クーペ「……!」

医術師「クッカカカ!そりゃあね?村人は全員クーペ様に頼るでしょうよ?
未だに切ったり縫ったりしてる時代遅れなヤブ医者より薬だけで治しちまう頼もしいクーペ大先生にねぇ?」ジロッ

クーペ「…すみません」ペコリ

医術師「せん……じゃねぇだろ!?」ブンッ

クーペ「きゃっ」サッ

バリンッ
135: ◆WEmWDvOgzo:2014/12/1(月) 21:45:15 ID:h173FRh8P2
医術師「…わざわざこんなとこに来て同情する暇があんなら患者の相手でもしてろよ?余所者のホビットが!?」フゥーフゥー

クーペ「せん…せい……」

医術師「うざってんだよ!?」ガタンッ

クーペ「」ブルッ

医術師「ホビットがぁ…!?お前のせいで5年もここで患者を診てきたオレが…ヤブ医者の悪党扱いだ!?」

クーペ「…し、自然界に暮らしてきましたので薬草や動植物の効能を多少学んでいたのです…。独学ではありますが…。
…和解したと聞き、教団の方から紹介していただいたこの村で…何か一つでもお役に立てたらと」フルフル

医術師「あぁ立派に役立ってるよ?代わりに役立たずが一人あぶれたけどな!」

クーペ「…こ、この村の方々は…皆さん、すごく暖かくて…ホビットのわたしともすぐに打ち解けてくださいました。
特に…先生は気さくで…人当たりも良くて…わたし…感謝してるんです」フルフル

医術師「はんっ!よく言うよ?」

クーペ「…え?」

医術師「最初はみんな物珍しさにたかってただけさ!
教団の長がわざわざ山登りしてまで村長を説得してよ、図々しく何匹かのホビットが村にやって来たんだから…」

クーペ「…宣教師様はわたしの恩人です。思い付く限りの言葉を並べても…全然伝えきれないほど感謝してます」

医術師「あーそうですか。最初みーんなお前らをバカにしてたけどな?
濁った黄色い瞳を目玉焼きだって陰口叩いてからかってたんだぜ?」

クーペ「…今は誰もそんなひどい事、口にしません」

医術師「そうですねー。謎の病に苦しむ農家のオッサンを粉薬だけで治癒したんだから…そりゃみんな掌返しますよねぇ?」
136: ◆WEmWDvOgzo:2014/12/1(月) 21:47:54 ID:hTsbsopuA2
クーペ「…ですが今まで先生がいなければ助からなかった患者様も大勢いらっしゃいます」

医術師「あぁ〜そうさ?だが連中はどう思った?
治療でさんざん怖い想いしてきたのにホビットの調合薬であっさり治ったら?」

クーペ「……」

医術師「あいつは患者を切り刻むヤブ医者だ?そう思われても仕方ないよなぁ?」

クーペ「…すみません、すみません!」ペコリ

ガチャッ

村人1「クーペちゃん、ここにいたのけ?山菜売りの婆ちゃんが風邪引いたってよ?」

クーペ「…あ、はい」クルッ

村人1「またこんなとこ来て…ダメじゃねが。仕事もしねぇで飲んだくれてるヤブ医者の相手なんかしちゃ」

医術師「……」グビッ

クーペ「や、ヤブ医者なんかじゃありません!先生は名医です!」

村人1「どごが…?たかだかかすり傷で針縫ってるようなヤブ医者が…?クーペちゃんなら痛みなしに薬だけで治しちゃうべな?」

クーペ「薬での治癒には限界があるんです!大きな外傷や骨折には対応できません!」

村人1「またぁ〜?そんなこと言っても薬で痛み無くして添え木しとけば治せっぺ?」

医術師「はんっ!素人が適当にやったら骨が歪んでくっつくぞ?
曲がりくねっただらしねぇ腕ぶら下げてみっともないったらありゃしない」コトンッ

村人1「ちっ!ヤブ医者が…!さっさと村から出てけ!」

クーペ「……!?」

医術師「……すいやせんね、ヤブで?」グビッ

医術師「ゲェェェ……」ゲップ

村人1「うっ…くさ!?」

クーペ「先生……」

医術師「失せろ。二度と顔見せんな!目ん玉に箸ぶっ刺して食っちまうぞ!?」ダンッ

クーペ「……」

村人1「な、行くべ。こんなのほっとけばいいべ」
137: ◆WEmWDvOgzo:2014/12/1(月) 21:50:23 ID:h173FRh8P2
〜〜〜夜〜〜〜

―――山間の村(入り口)―――

マルク「あんっ!」スタスタ

カロル「あ、ここかな?」スタスタ

母「まぁ…大きな村?前に住んでた森の近くよりずっと大きいわね?」スタスタ

カロル「うん。もしかしたら教団の人に会えるかも!」

母「でも遅い時間だから門が閉ざされてるみたい?明け方に出直しましょうか?」

ガララッ

カロル「あ、開いたよ?」

門番1「おや?ホビット……」

母「(そういえばここで捕まったらどうするか考えてなかったわ…!)」ハッ

カロル「こんばんは!」

門番1「こんばんは?ようこそ、山間の村へ?」ニコッ

母「えっ」

門番1「警戒なさらずとも、この村はホビットの方でも歓迎しますよ?」

カロル「そうなんだ!よかったね、お母さま?」

母「そ、そうね…?てっきり捕まるかと思っちゃったわ?」ヒクヒク

門番1「ははは!実は帰り支度をしてたんですけど話し声が聞こえたもので…決して用心して門を開いた訳じゃありませんよ?」

母「」ホッ

門番1「どうぞお入りください?」

カロル「はーい!ありがとうございます!」スタスタ

母「(はぁ…善は急げって言ってもあまり考えなしに動いちゃダメね…)」スタスタ

マルク「あんっ!」スタスタ

門番1「では夜も遅いですし教会へ案内します。あそこでなら一晩は無料で寝泊まりさせてくれますから」スタスタ

母「…何から何まですみません」スタスタ
138: ◆WEmWDvOgzo:2014/12/1(月) 21:52:10 ID:hTsbsopuA2
―――山間の村(教会)―――

神父1「ようこそ、山の教会へ。寒空の下、体を冷やしてしまわれた事でしょう。今宵は暖かい布団でお休みください」

カロル「ありがとうございます!」

母「…ここは優しい人ばかりね」

マルク「わふん!」シッポフリフリ

神父1「いえいえ、すべては司祭様による教えの賜物。我々は悔い改め、より良い世界へ歩もうとしているまで」

カロル「司祭さま…?司祭さまってたしか……」

母「余計なこと言わないの…?」ポンッ

カロル「う、うん…」

神父1「どうかなされましたか?」

母「い、いえ!司祭様はあたし達のようなホビットにも優しいんですね?」アタフタ

神父1「はい。とてもお優しい方ですよ?少々厳しい一面もございますが生真面目で何事にも真剣に向き合う素晴らしい方です」

カロル「…宣教師さまみたいだね?」コショコショ

母「まさか?宣教師様は組織をまとめるとか嫌がりそうじゃない?」コショコショ

神父「この村にもあなた方と同じように隠れ暮らしていたホビットの方が何人も住んでるんですよ」

カロル「へぇ…!」パァァ

神父「現司祭様が取り組むようになってからホビット族との関係性は極めて良好になりました。
それもすべては巡礼のあの日……あるホビット族の少年たちが我々の目を覚ましてくれたおかげです」

カロル&母「」ギクッ

神父「残念ながら後ろの方にいた私には少年の姿が見えなかったのですがね…。
あの直後に行方を眩ましたと聞きますし、いったいどこへ行ってしまわれたのやら」

母「お、おほほほ……」ヒクヒク

カロル「あは……は」ヒクヒク

マルク「クゥン?」
139: ◆WEmWDvOgzo:2014/12/1(月) 21:54:24 ID:h173FRh8P2
〜〜〜朝〜〜〜

神父「もう行かれるのですか?」

母「えぇ、色々と見て回りたいので…泊めていただいてありがとうございました」ペコリ

カロル「ありがとうございました!」ペコリ

神父「いえいえ、もしこの村に住む気がありましたら役場で住人登録をしてもらうといいですよ。
ホビット族の方でしたら身分や生まれなど面倒な項目を除いて簡単に手続きを受けられますから。
なんでしたら私から紹介状を書いてもいいですし?」

母「お気持ちはありがたいんですけど…目的のある旅なので」

神父「そうですか…。残念ですが仕方ないですね」

カロル「あの…神父さまは宣教師さまを知りませんか?」

神父「宣教師…ですか?宣教師でしたらこの村にも何人かおりますが」

母「宣教師様は役職だから…名前を言わないと分からないわよ?」

カロル「……あ、そっか。名前……」

母「……」

カロル「……知ってる?」

母「……坊やも知らなかったの?」

カロル「……う、うん」

母「……会えたら最初に謝って名前を聞きましょうね?」

カロル「そうだね…。ずっと宣教師さまだったから……」

神父「?」

マルク「わふん…」ヤレヤレ
140: ◆WEmWDvOgzo:2014/12/1(月) 21:59:03 ID:h173FRh8P2
―――市場―――

ワイワイガヤガヤ

カロル「人がたくさんいるね。こういうの久しぶりだから、なんだかワクワクする!」スタスタ

母「そうね…。変装もいらないし、すごく解放感があるわ?」スタスタ

惣菜屋「お!お姉さん、見ない顔だべな?」

母「」スタスタ

惣菜屋「え?ちょ…ちょっと?無視だべか?」アセアセ

カロル「お母さまのこと?」ピタッ

母「へ?あたしは違うわよ。どう見たって、もうおばさんだもの」

惣菜屋「お、お母ちゃんかぁ!姉弟かと思ったべ!」

母「……え?」

カロル「お母さまがボクのお姉ちゃんに見えたの?」

惣菜屋「うんだ、全然違和感がなかったもんで」

カロル「あはははは!」ケラケラ

母「…そ、そんなに笑うことないでしょ!」アセアセ

村人2「お!惣菜屋さん、いい歳して口説いてんか?」

惣菜屋「ち、ちがうべ!たまたま見かけないホビット族さおったから新しい住人かと思ったんだべ!」

村人2「そういえばそうだっぺな!どごから来たんだい?」

母「あ、あたし達は旅の者でして…人を探してるんですの」

惣菜屋「こんな山の上で誰を探すんだべ?」

母「教団の宣教師様なんですけど…名前が分からなくて…」

惣菜屋「う、うーん…宣教師だけじゃ分からんべな」

村人2「そんな人、結構おるがんなぁ」

母「ですよねー…」
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