前スレ
(少年「ボクが世界を変えてみせる」)
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―――あらすじ―――
人間によるホビットへの差別が当然のように行われる時代
人里を離れ、森の中で静かに暮らしていたホビットの親子がおりました。
母親の名はマリー。子供の名はカロル。
二人はささやかな幸せを願って、穏やかな日々を送っていました。
母は今の生活に満足していました。
もちろん森の中での生活は不自由で贅沢とは無縁なものでしたが多くを望まない母にとっては愛する我が子と生きていけるだけで幸せだったのです。
しかしカロルは違いました。
もちろん愛する母と生きるのに不満はなく、彼自身も多くを望もうとは考えません。
ですが彼にとって一つだけ足りないものがあったのです。
それは友達という存在でした。
幼心に自分たちの置かれた立場は分かっていたつもりでした。
人目を逃れて生きるホビットには仲間もなく、心を通わせる相手を見つけるのはとても難しいと。
それでも小さな身体に宿る希望は膨らむばかりです。
93: ◆WEmWDvOgzo:2013/12/15(日) 22:25:07 ID:X7On2BumCY
執事「ふっぶぐぅぅぅぅぅぅ!!?」ブシュゥゥゥ
黒装束「けっ!舌に切れ目を入れてやっただけだ。死にゃしねぇよ。当分喋れねぇだろうがな?」ビチャッビチャッ
執事「ふっふっうぶっふひゅうぅぅぅう……!!」ボタボタ
黒装束「まぁ頬からイッたからな…。おーいてぇ!見てるだけでいてぇよ!」
執事「ぎゅっひあひゅふぃ」モゴモゴ
黒装束「そんじゃまぁ…一つ約束しようか。お兄さんよ?」ガシッ
執事「ぎひっ!?」グイッ
黒装束「今夜のことはぜーんぶ物置小屋に転がってる死体がやった…。そうだろ?」
執事「……!?」
黒装束「なぁ?」ギラッ
執事「!」コクコク
黒装束「イイ子だぁ?ご主人様にちゃーんと伝えといてくれや?」パッ
執事「ぎゅっひ!」ボトッ
黒装束「あぁ、そうだ?分かってるたぁ思うが…」ギラッ
執事「〜〜〜!」コクコク
黒装束「素直な奴は好きだぜ?」ニヤリ
94: ◆WEmWDvOgzo:2013/12/18(水) 21:32:18 ID:lpXKIBKjK.
―――バックヤード(ヘマトバザール本部)―――
黒装束「おーい、戻ったぞー」バンッバンッ
「あぁ、ウォルターさん!ただいま開けます!」ガチャガチャ
黒装束「どうした?ボーッとしてっと風邪引くぞ?」
カロル「……」
宣教師「(大きい建物ですが、ずいぶん古ぼけた…。まるで廃墟ですね…)」
黒装束「なんだ、なんだ?辛気くせーツラぁしやがって?」ポリポリ
ガチャッ
手下2「お疲れ様でした。どうぞ」
黒装束「おう、遠慮はいらねぇぜ?入れよ?」ズカズカ
カロル「……」
宣教師「カロルくん…。入りましょう?どちらにしろ今晩は身を隠した方が良さそうです」
カロル「……」コクリ
95: ◆WEmWDvOgzo:2013/12/18(水) 21:33:50 ID:lpXKIBKjK.
黒装束「まぁ座ってくつろげや?縛られっぱなしでいたから手足がズタズタだろ?」
カロル「」ポフッ
宣教師「(…趣味の悪い置物が並んでますね。気味が悪い…)」チラッ
黒装束「気になるか?内装は俺の趣味でな。見てて飽きねぇだろ?」
宣教師「ある意味新鮮ですが…どういうつもりなんですか?
床は血飛沫を模した斑点模様で埋め尽くされてますし、柱には苦しそうな顔が今にも蠢きそうにひしめいてますけど」ブルッ
黒装束「ククク!特にあのランベルヤの一番弟子、ヒクタスに描かせた地獄絵図の壁紙なんか、なかなかイカしてるだろ?」
宣教師「(イカれてるの間違いでは…?)」
黒装束「あれは人間の哀れさを暴力のみで例えた作品でな。お気に入りなんだ」
宣教師「人が人をいたぶる絵など見ていて不愉快極まりないですよ…」
黒装束「お嬢ちゃんとはウマが合いそうにねぇな」
宣教師「…どう考えても変ですよね?」
カロル「…うん」コクリ
黒装束「ちなみにお前らが座ってるソファーは曰く付きでな?
今までそれにケツを置いた奴が三人、謎の死を遂げてるらしいぜ?」
宣教師「」ゾクッ
カロル「……」
黒装束「まぁ…俺や他の奴も何回か座ってるけどな。面白そうなんで買ってみりゃ、なんにも起きやしねぇ」
宣教師「…そ、そうですか」ヒクヒク
96: ◆WEmWDvOgzo:2013/12/18(水) 21:35:41 ID:lpXKIBKjK.
宣教師「…なぜ私たちを助け出してくださったのですか?」
黒装束「別にお嬢ちゃんを拐いたかったんじゃねぇさ。本来はそのホビット一匹でよかったんだ」
宣教師「どういう意味です?」
黒装束「そのまんまの意味だよ。俺達はただそいつを連れ出して匿うよう指示されただけだ」
宣教師「指示?誰から指示されたんですか?」
黒装束「何度も言ってんだろうが?会長だよ。会長!俺らの組織で一番えらーいお方だ」
宣教師「組織って…そもそもあなた達は何者なのです?」
黒装束「ん?あ〜…なんつぅんだろうなぁ?
まぁ興行を企画して客前に出るんだから…エンターテイナーってとこか?」
宣教師「興行…サーカスや演劇ということでしょうか?」
黒装束「まぁ括りはそうなるな」
宣教師「ますます分かりません…。そんな方々がなぜ危険を犯してまで見ず知らずの私達を…」
黒装束「だぁから言ってんだろ?俺は指示を受けただけだってよ!」
カロル「…いいよ、そんなの」ボソリ
宣教師「?」
97: ◆WEmWDvOgzo:2013/12/18(水) 21:40:07 ID:lpXKIBKjK.
カロル「どうだっていいじゃない…。助けてくれた理由も…誰なのかだって…」
黒装束「分かってんじゃねぇか?んなの聞いてもしょうがねぇもんなぁ?」
宣教師「…それもそうですね。私達はこれからどうなるのですか?」
黒装束「知らされてねぇな。何があっても手を出すな、逃がすな、とのお達しだ」
宣教師「……」
黒装束「運が良かったな?ついでたぁ言っても助かったんだからよ?」
宣教師「…そうですね。置いていかれたら今頃、大臣の怒りを一手に引き受けていたかもしれません」
黒装束「ククク!あそこに置いといて余計なことをべちゃくちゃ唄われても困るしな」
宣教師「私が言わなかったとしても、あのような乱暴な手口ではすぐに気付かれますよ」
黒装束「ハッ…心配はいらねぇさ?」
宣教師「よく自信が持てますね…」
黒装束「逆に何がそこまで不安を駆り立てるのか伺いたいもんだな?」
98: ◆WEmWDvOgzo:2013/12/18(水) 21:41:27 ID:lpXKIBKjK.
宣教師「あの状況…殺されたお仲間を身代わりに仕立てあげても不自然ですよ。
たった一人の賊が四人の衛兵を返り討ちにして相討ちなんて…」
黒装束「そうか?実際、俺は一人で四人殺ったぜ?」
宣教師「普通なら、ということです。現場に遭遇していない人間が見れば間違いなく単独行動ではないと読むでしょう」
宣教師「それに…私とカロルくんが消えたのも不審に思うでしょうし、何より目撃者の執事がいますから」
宣教師「もしかすれば明日にでも大規模な捜索が行われるかもしれません。
そうなればすぐに見つかって捕らえられてしまいますよ…」
黒装束「くぁ…あぁ」アクビ
宣教師「……!真面目に聞いてるんですか!?」ガタッ
黒装束「あのなぁ、お嬢ちゃん?眠たい話はやめにしようや?
こちとら久々の荒仕事で疲れてんだぜ?」ゴシゴシ
宣教師「なっ…!」イラッ
黒装束「綿密にねちねちこねくり回して完璧に仕上げた計画より、短絡的で単純な方が案外うまくいくんだよ」
宣教師「……!」ムッ
黒装束「おーい!」
ガチャッ
手下3「失礼しまーす。呼びました?」
黒装束「おう、こいつらの寝床を教えてやれ」
手下3「了解でーす」
99: ◆WEmWDvOgzo:2013/12/18(水) 21:44:38 ID:/Q8jyxZM9E
手下3「んじゃ案内すっから?」
宣教師「…では行きましょうか?」
カロル「待って…」
宣教師「カロルくん…?」
カロル「ねぇ、ウォルターさん…でいいんだよね?」
黒装束「おう…?」
カロル「一個…聞いていいかな?」
黒装束「なんだ?便所の場所なら、そいつがまとめて案内するぞ?」
カロル「どうして仲間を見捨てたの?」
黒装束「?」
カロル「あの人間もあなたが殺した衛兵達も…助けようと思えば助けられたんだよ…?」グッ
黒装束「あぁ…?」ジロッ
カロル「ボクが……わぷっ!」モガモガ
宣教師「そこまでです!一度落ち着きなさい!」バッ
カロル「ふぇんほうひはは?」モガモガ
宣教師「(それは言わない方が身の為ですよ!幸いにも相手はキミが力の持ち主だと知らないんですから!)」コショコショ
カロル「……!」
100: ◆WEmWDvOgzo:2013/12/18(水) 21:45:49 ID:lpXKIBKjK.
黒装束「なぁにやってんだ、お前ら?」
宣教師「な、なんでも…!あはは!」ヘラヘラ
カロル「」コクコク
黒装束「何を隠したいんだが知らねぇが…あからさま過ぎて聞き出す気にもならねぇな。もういい!連れてけ!」
手下3「はいはい」
宣教師「ほ、ほら!行きますよ!」グイッ
カロル「ふぁい」モガモガ
黒装束「…おい、チビ」
カロル「?」
黒装束「会長から次の指示を受けるまで…俺は何があってもお前に手を出さねぇ。
だがなぁ…あんまり調子に乗らねぇ方がいい。会長のお許しが出た時に地獄を見るぜ?」
カロル「……」
黒装束「肝に命じとけ。薄汚ねぇホビットちゃんよ?」
宣教師「くっ…!」ギリッ
カロル「……」
101: ◆WEmWDvOgzo:2013/12/18(水) 21:47:06 ID:/Q8jyxZM9E
―――ヘマトバザール本部(客間)―――
宣教師「…さっきはどうしたんです?キミらしくありませんでしたよ?」
カロル「……」
宣教師「気持ちは分かりますが不用意な発言は避けなくては…?
前にも似たような失敗で騒動になりましたよね?」
カロル「宣教師さまこそ…らしくないと思います」ボソッ
宣教師「…と言いますと?」キョトン
カロル「いつもの宣教師さまだったら一緒に止めてくれたのに…あの時は見てるだけだったもの」
宣教師「あの時とは…ウォルターさんと衛兵の混戦中ですか?」
カロル「うん…どうして何も言ってくれなかったんだろうって思ってました」
宣教師「それは…縛られていて動けない状態でしたし、言葉だけではどうにもならない場面だってありますから」
カロル「それでもいつもの宣教師さまなら諦めなかったよ!」
宣教師「え…?」
カロル「ボク…言ったはずだよ。宣教師さまは変わらないでいてくれるから、自然と安心するって…」
宣教師「……」
カロル「でも…やっぱり宣教師さまもちょっぴり変わった気がするな?」
宣教師「か、変わってなど…。私は今でもキミを助けたいと…」
カロル「それだよ、たぶん…」
宣教師「は…?」
102: ◆WEmWDvOgzo:2013/12/18(水) 21:50:43 ID:/Q8jyxZM9E
カロル「いつから…宣教師さまはボクを贔屓するようになったの?」
宣教師「ひ、贔屓…?」オロオロ
カロル「会ったばっかりの頃は誰にだって分け隔てなく接してたじゃない!
ボクもルーボイくんもパッチくんも特別扱いしなかった!」
宣教師「何を言って…るんですか?今ここに二人はいないでしょう?」
カロル「衛兵さん達だってウォルターさんに付いてきた人間だって…関係ないから見捨てたの?」
宣教師「ち、違います!さっきも言いましたがどうにもならない状況だってあるんです!」
カロル「どうにもならないかもしれないけど、どうにかなるかもしれないじゃない!」
宣教師「そんな不確かな希望で…一時の感情に任せていたら、いずれ身を滅ぼしますよ!」
カロル「……!」
宣教師「キミの為にも私は適切な判断をしたまでです!」
カロル「…宣教師さまはもっと考えなんか無くって行き当たりばったりでまっすぐだった!」
宣教師「(私そんな風に思われてたんですか…?)」ガーン
カロル「村に入ったボクが暴力を受けた時だって宣教師さまは教団の人間なのに手当てしてくれた!」
カロル「家を燃やされてお母さまが乱暴された時も…村の人間を説得してボク達を引き取ってくれた!」
カロル「差別を無くす為に司祭さまに訴えてくれた…!」
宣教師「……」
カロル「ボクを手当てした時も…引き取ってくれた時も…宣教師さまは後悔なんかしてなかった!
ずっとみんなが幸せになれるって信じてた!
だから教団に逆らっても差別を無くそうとしてたんじゃないの!?」
カロル「それなのに…後悔するのを怖がって、ボクとお母さまさえ助かればいいって…そう思ってるの?
ボクらの為なら…傷付け合う人達を見捨てるの?」
宣教師「……」
宣教師「キミは私を買いかぶり過ぎてますよ」
カロル「そんなことないよ!宣教師さまは……」
宣教師「落ち着いてください」
カロル「っ…」
103: ◆WEmWDvOgzo:2013/12/18(水) 21:56:07 ID:/Q8jyxZM9E
宣教師「これまでがどう写っていたのかは知りませんが…私も少なからず現実を知ったつもりです」
宣教師「キミの言う通り、今はあなた達を救ってあげられればいい、と思っているのも否めません」
宣教師「…それはいけないことですか?」
カロル「…宣教師さまが望んだのはホントにそれだけなの?」
宣教師「……?」
カロル「その言い方だと…ルーボイくん達と仲直りさせるって言ってくれたのも…ボクの幸せの為に聞こえるよ」
宣教師「」ハッ
カロル「そんなの間違ってる…。二人は大事な友達だけど、ボクが幸せになる為の道具じゃないもの」
宣教師「カロルくん…」
カロル「宣教師さまは…ホビットのボクが可哀想だから特別扱いするの?」
宣教師「!」ピシッ
カロル「教えてよ…。宣教師は正しい教えを説く者だって教えてくれたのは宣教師さまでしょ…?」
宣教師「位を剥奪された私は…もはや宣教師ではありませんよ」
カロル「……!?」
宣教師「キミの前では出会ったままの私でいたかった…。穢れのない…信頼を置ける人間でありたかった…」
宣教師「…ですが、やはり拭えないものですね。奥底までこびりついたどす黒い汚れは?」
宣教師「キミの目から見た私は…もうあの頃の私ではないんですね?」
カロル「宣教師さま…」
宣教師「ごめんなさい。せっかく変わらないと言ってくださったのに…」
バンッバンッ
「うるせぇぞ!!騒ぐんじゃねぇよ!!」バンッバンッ
宣教師「…色々なことが起こりすぎて疲れましたね。時間も時間ですし、寝ましょうか」
カロル「…はい」
104: ◆WEmWDvOgzo:2014/1/2(木) 21:29:09 ID:/2BLhTPjUo
〜〜〜朝〜〜〜
宣教師「」シャコシャコ
宣教師「んっ」クイッ
宣教師「あー…」ガラガラ
宣教師「ぺっ」バシャッ
宣教師「虫歯になってないといいのですが…」マジマジ
宣教師「うんうん。問題なし」
カロル「」スタスタ
宣教師「おや、カロルくん?早起きですね?」ニコッ
カロル「おはよう…ございます」ペコリ
宣教師「早起きは三文の得と言いましてね?とても良い行いなんですよ?」
カロル「…そう、なんだ」
宣教師「どうぞ、こっちへいらっしゃい。私はもう済みましたから」
カロル「う、うん」トコトコ
宣教師「手洗い場が部屋に付いてるなんて、まるで宿さながらですね?」つ【歯ブラシ】
カロル「ありがと…」スッ
宣教師「ちゃんと磨かないといけませんよ?歯に虫がくっついて突っついてきますからね?」
カロル「…そ、そうなの?」ビクッ
宣教師「えぇ。虫に歯を掘られたら大変です。大きな穴を空けられてバイ菌を埋め込まれますから」
カロル「ち、ちゃんと磨かなくちゃっ」シャコシャコ
宣教師「うがいも忘れないようにしましょうね」
カロル「ふぁーい!」シャコシャコ
105: ◆WEmWDvOgzo:2014/1/2(木) 21:30:39 ID:N7x8tWnKvM
カロル「」アーン
宣教師「ふむふむ」ジーッ
カロル「ほ、ほう?うひあはいえふは?」アーン
宣教師「……」
カロル「」ドキドキ
宣教師「うん!問題なし!バッチリですよ!」ニコッ
カロル「はぁー!よかったー!」ホッ
106: ◆WEmWDvOgzo:2014/1/2(木) 21:32:27 ID:N7x8tWnKvM
カロル「……」ポフッ
宣教師「居心地は悪くありませんが退屈ですね?」
カロル「う、うん」プイッ
宣教師「…もしかして避けられてます?私?」
カロル「」ビクッ
宣教師「……」
カロル「さ、避けたり…しないです」ビクビク
宣教師「…せめて目を合わせて言ってくれませんか?」
カロル「ご、ごめんなさい」
宣教師「…キミの中で変わってしまった私はイヤですか?」
カロル「ち、違う!そんなんじゃない!」アセアセ
宣教師「ふふふ。別にいいんですよ?」ニコニコ
カロル「ほ、ホントに…違うから」
宣教師「…では私に色々言ってしまったから気まずいとか…ですかね?」
カロル「…うん」
宣教師「気にしないでください?
キミに言われた事で見えてくるものもありますし、私はいい勉強になったと思ってますよ?」
カロル「ホント?」
宣教師「はい。お互いになんでも言い合える関係に近付けたと考えましょう?」
カロル「!」パァァ
107: ◆WEmWDvOgzo:2014/1/2(木) 21:41:18 ID:N7x8tWnKvM
宣教師「そういえば…ここに来る前、ナラにも会いましたよ」
カロル「うん。ナラから聞いた!」
宣教師「よかったですね。お友達が増えて?」
カロル「えへへ」ヘラヘラ
宣教師「…ナラはアリアスに命令されたみたいですが」
カロル「知ってたんだ…」
宣教師「えぇ。本人から聞きました」
カロル「宣教師さまはどう思う…?」
宣教師「私の見解を聞いてもしかたありませんよ?どう捉えるかはキミ次第です」
カロル「そっか…。ボクは…信じてるよ。ともだちだって」
宣教師「ふふ。いいんじゃないですか?」
カロル「……?」
宣教師「キミもほんの少し変わりましたよ…というより成長したと言った方が正しいでしょうか?」
カロル「そうかな?」
宣教師「他人を疑うようになりました。少し前のキミならわざわざ私に確認しようとはしませんでしたが…。
きっと私の知らない間にいろいろ体験したのでしょうね」
カロル「……」
宣教師「大丈夫ですよ。ナラもキミを信じてます」
カロル「……」
108: ◆WEmWDvOgzo:2014/1/2(木) 21:43:13 ID:/2BLhTPjUo
コンコン
宣教師「はい」
「ウォルターさんがお呼びだ!」
宣教師「行きましょうか?」
カロル「…う、うん」ビクビク
宣教師「脅されたのが気になりますか?
カロル「ちょっぴり…怖いです」
宣教師「私が付いてますよ?」
カロル「でも…」
宣教師「」ポンッ
カロル「……?」
宣教師「」ナデナデ
カロル「…な、なに?」
宣教師「ふふふ」ニコニコ
カロル「?」キョトン
宣教師「気楽にしてていいのです。キミはまだ小さいんですから?」ニコニコ
カロル「……?」
宣教師「そばに大人が付いてる時は頼りにしてください」ニコニコ
カロル「宣教師さま…」
「なにやってんだ!呼んでるってんだろが!!」ドンッドンッ
宣教師「はいはい。今出ます」
カロル「……」
109: ◆WEmWDvOgzo:2014/1/2(木) 21:44:50 ID:/2BLhTPjUo
黒装束「おう。遅かったじゃねぇか。まぁ座れや?」
宣教師「失礼します。…昨晩と同じ格好なんですね?」ストッ
カロル「し、しつれいします」ストッ
黒装束「どこがだ?まるっきり変わってんだろうが?」
宣教師「(全身真っ黒でよく分からないんですが…)」
黒装束「てめぇらこそ、着替えねぇのか?」
宣教師「私たちは着替えがないんです。おかげで頂いた修道服もボロになってしまいましたし…」ボロッ
カロル「ボクも教団にもらった布地の服しかないです」
黒装束「はぁぁ?みすぼらしいなぁ、おい?俺のお下がりでもくれてやろうか?」
宣教師「いえ、結構です」キッパリ
黒装束「…可愛げのねぇ」
カロル「(スミだらけの服しか無さそう…)」
110: ◆WEmWDvOgzo:2014/1/2(木) 21:46:09 ID:/2BLhTPjUo
宣教師「それで…わざわざ呼び出してどういうつもりですか?」
黒装束「どういうつもりって喧嘩売ってんのか、おめぇは?
俺はお前らの命の恩人だぞ?なおかつ匿ってやってんだぞ?」
宣教師「…頼んだ覚えはありません。あなた達が勝手にした事です」
黒装束「…生意気なお嬢ちゃんだな?ブタの怒りを買う訳だ?」
宣教師「……」
カロル「? 宣教師さま、ブタに怒られたの?」キョトン
黒装束「なぁに言ってんだ?お前もブタにこっぴどくやられたんだろうよ?」
カロル「ボク知らないよ?ブタが怒るようなことしてないもの?」
宣教師「えーとですね…」
カロル「宣教師さま、ブタになにしたの?エサを取り上げちゃったの?」
宣教師「あ、いや…そうじゃないんですよ」
黒装束「だからブタってのは大臣だ。お前を買った奴だよ」
カロル「えっ」
黒装束「……?」
カロル「あのおじさま、人間じゃなくてブタだったの!?」
黒装束「もういい。話が進まねぇよ。お前らを呼び出したのはだな……」オホンッ
カロル「ねぇ、ブタって人間になれるの?」グイッ
宣教師「な、なれませんよ。ものの例えですから?ね?」アセアセ
カロル「えー!でもあの人、言ってたよ!」
黒装束「……聞けや」
111: ◆WEmWDvOgzo:2014/1/2(木) 21:47:45 ID:/2BLhTPjUo
宣教師「私達を…教会に?」キョトン
黒装束「おう。とりあえずこれに着替えろ」つ【修道服】
宣教師「……私、すでに着てるんですけど」
黒装束「そんなボロいの着たまま出歩けないだろうが?」
宣教師「というかなぜ教会なのです?」
黒装束「…教会の神官が会長と旧知の知り合いなんだとよ」
宣教師「アントリア神官が?」
カロル「じゃあボクらを助けたのはアントリアさんが頼んでくれたからなの?」
黒装束「…まあそうなるが」
宣教師「ふむふむ。神官が言ってたのはこの事だったんですね」
黒装束「てっきりガキをショーに使うと思ったんだがな…」
カロル「ショー?ボクが?」
黒装束「…おっと。なんでもねぇんだ。いいから早いとこ着替えな」
カロル「はーい」
112: ◆WEmWDvOgzo:2014/1/2(木) 21:49:30 ID:/2BLhTPjUo
宣教師「…久しぶりに着替えられたのに新鮮味がありません」
カロル「えへへ!宣教師さまとおそろいだね?」ニコニコ
宣教師「ふふふ!そうですね?」ニコッ
ウォルター「よーし!着替えたな?」
宣教師「どうしたんです?あなたまで修道服など…」
ウォルター「こうすりゃ教団の一行にしか見えねぇだろ?カモフラージュってぇやつだ!」
カロル「ボクだけ帽子が付いてる?」クイッ
ウォルター「フードだ、バカ。いいから被っとけ!」
カロル「う、うん。目を隠すんだよね?」ファサッ
ウォルター「目一杯深く被れ。憲兵に見つかったら終わりだからな」
宣教師「もう憲兵が動いてるんですか?」
ウォルター「決まってんだろ?大臣の屋敷に強盗に入ったんだぜ?」
宣教師「……」
ウォルター「むしろ昨日の内に踏み込まれててもおかしかぁねぇ?
強運に感謝しなくちゃぁなぁ?」
宣教師「昨夜は問題ないと自信満々におっしゃってたじゃないですか?」
ウォルター「ハッハー!知るか、そんなもん!人生なんざ時の運だ!どう転ぶか分かりゃしねぇよ?」
宣教師「そんな適当な…」
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