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カロル「ボクが世界を変えてみせる」
[8] -25 -50 

1: ◆WEmWDvOgzo:2013/11/24(日) 19:26:09 ID:j5u3Ryt06o
前スレ
(少年「ボクが世界を変えてみせる」)
http://llike-2ch.sakura.ne.jp/bbs/test/mread.cgi/2ch5/1356265301/1-50


―――あらすじ―――

人間によるホビットへの差別が当然のように行われる時代
人里を離れ、森の中で静かに暮らしていたホビットの親子がおりました。
母親の名はマリー。子供の名はカロル。
二人はささやかな幸せを願って、穏やかな日々を送っていました。

母は今の生活に満足していました。
もちろん森の中での生活は不自由で贅沢とは無縁なものでしたが多くを望まない母にとっては愛する我が子と生きていけるだけで幸せだったのです。

しかしカロルは違いました。
もちろん愛する母と生きるのに不満はなく、彼自身も多くを望もうとは考えません。
ですが彼にとって一つだけ足りないものがあったのです。
それは友達という存在でした。

幼心に自分たちの置かれた立場は分かっていたつもりでした。
人目を逃れて生きるホビットには仲間もなく、心を通わせる相手を見つけるのはとても難しいと。
それでも小さな身体に宿る希望は膨らむばかりです。


541: ◆WEmWDvOgzo:2014/6/7(土) 23:47:48 ID:Q0OIY//CZQ
ラム「はぁ…こんなはずじゃなかったんだけどね」

カロル「ラムくんはどうして捕まっちゃったの…?」

ラム「前に言ったの覚えてる?僕が旅をしてた理由…」

カロル「人間を追いかけて…だよね?」

ラム「実はね、あれウソなんだ?」

カロル「ウソ…?」

ラム「本当は二人の仲間と旅をしてたんだ。同族の暮らしてる集落を目指して…」

カロル「そうだったんだ…」

ラム「できれば君も仲間に誘いたかったけど…僕らとは考え方が違ってたからやめておいた」

カロル「そう…だね」

ラム「…僕の仲間も言ってたよ。君みたいな考えの同族は許せないってさ」

カロル「……」

ラム「悪く思わないでね。僕も仲間も人間が大嫌いだから…しょうがないんだ」

カロル「ねぇ…ひょっとして教会の人間って…」

ラム「よく知ってるね?僕の仲間が殺したのさ?」

母「そ、そうだったの…!?」

ラム「簡単な罠と拾った大きめの石で片付いたってさ?人間って脆いよね?いっつも威張ってるくせに?」 クスッ

カロル「おもしろくない…」

ラム「…あっそ」
542: ◆WEmWDvOgzo:2014/6/7(土) 23:49:54 ID:Q0OIY//CZQ
ラム「あいつは人間の中でも特に許せなかったんだ。卑怯で小狡くて残忍な…最低の奴だよ」

カロル「だから殺したの…?」

ラム「…あいつに騙されてヘマトバザールに捕まってさ。
それからは地獄の日々だよ。同族が泣き叫ぶのを間近で見せられて…次は自分かもしれないって恐怖にさらされてた」

ラム「そんな僕らを見てあいつは楽しそうにケタケタ笑ってたんだ…!」

ラム「だからある時、仲間と相談した。逃げ出そうって」

ラム「最初からチャンスはあったんだ。ヘマトの公演は表沙汰にできなかったから場所を転々としてて、連れ出される時は拘束を解かれてたしね」

ラム「ただ…逃げようとした同族は捕まったら松明で指を炙られる。
その上、焼け爛れた皮膚をくっつけられて5本の指を一つにさせられてしまうんだ」

母「」ゾォッ

カロル「」ブルッ

ラム「灯りがあれば見れたのに?後ろで呻いてる中にもいるんだよ?指を接合されたかわいそうな同族が?」

ウウウ ウウウ〜

母「ひっ…」ウルッ
543: ◆WEmWDvOgzo:2014/6/8(日) 00:06:07 ID:Q0OIY//CZQ
ラム「だからさ…僕らが逃げ出すのも命懸けだったんだよ?」

ラム「実際に5人の仲間と逃げ出したけど逃げ延びたのは3人さ。僕を含めて…たった3人…」

母「……!」ポロポロ

ラム「消せないよ。僕らは仲間の命と憎しみを抱えてるんだから?」

カロル「……」

ラム「もういい子ぶらなくたっていいよ。人間なんてみんな死ねばいい。君もそう思わない?」

カロル「…信じられる人間に出会えなかったんだね」

ラム「?」

カロル「ラムくん、なんにも変わってないよ…」

ラム「…イラつくね。あれから何も成長してないんだ?」イラッ

カロル「なんて言われてもボクは憎んだりしないよ。人間のいいところも知ってるもの」

ラム「……!」カッ

母「恨むしかなかったのよね…?」ポロポロ

カロル「お母さま…?」
544: ◆WEmWDvOgzo:2014/6/8(日) 00:08:00 ID:Q0OIY//CZQ
母「支えがなくて…誰も守ってくれないなら自分で守るしかないもの…」ポロポロ

ラム「…そうですよ。誰も守ってくれないんです。
君みたいにお母さんがいて、充実してて、ノンキに友達作りして…そんな気楽になんて生きられないからね?」

カロル「……」

母「そうね…。あたし達は脆くささやかなものでも…ちゃんと幸せを感じて生きてきたわ」グシッ

ラム「最悪だよ…。人間がいなかったら…僕も両親と幸せに暮らせたのに…」ググッ

カロル「でも…ホントだよ?いい人間も……」

ラム「まだ言うの…?君のお母さんだって言ってるじゃないか?」

母「それは少し違うわ…?」

ラム「え?」

母「坊やもあたしも信じられる人間に出会ってるの。あなたには申し訳ないけど…人間のすべてを憎めないわ?」

ラム「やっぱり分かってくれないんだね…」

カロル「そ、そうじゃないよ。ラムくんの気持ちも分かるもん?」アセアセ

ラム「…もういいよ。どうせ殺されるんだから言い合ってもしょうがないしね」プイッ

カロル「…集落には着かなかったの?」

ラム「…関係ないだろ」

カロル「ここを出て一緒に探そうよ?ボクたちが静かに暮らせる場所を?」

ラム「黙れよ、なにも知らないくせに!」

カロル「」ビクッ
545: ◆WEmWDvOgzo:2014/6/8(日) 00:11:13 ID:Q0OIY//CZQ
ラム「集落には着いたさ!同族だって住んでたよ!」

カロル「そ、それなら…」

ラム「その同族が騙したんだ!自分だけ助かる為に…人間に僕らを差し出したんだよ!」

カロル「……」

母「な、なんですって…!」

ラム「笑えるだろ?この世界に僕らが安心して住める場所なんてないんだ!
全部!全部!全部人間が奪うんだ!住み処も繋がりも命も…全部だ!」

ラム「末路がこれさ!暗い場所に閉じ込められて明るい場所で弄ばれて、怯えながら死を待つしかないんだよ!」

カロル「…ごめん」

ラム「…謝るなよ!君が謝ったからってなにも変わらないだろ!?」

カロル「変えられないかもしれないけど…変えようとすることはできるよ」

ラム「今さら何ができるって言うのさ…」

カロル「」ダキッ

ラム「え…!?」ビクッ

カロル「あの時とおんなじだね?こうやって抱きしめたらぬくもりが伝わって…」ギュッ

ラム「な、なに…?なにしてるの?」ビクビク

カロル「心の傷は塞げないけど…今はこれで我慢してね?」フワッ

ラム「い、意味が分からないよ…」

カロル「はい!傷治ったでしょ?」パッ

ラム「え…あ…ほ、ほんとだ。太ももの傷口が塞がってる…!」ペタペタ

ラム「それに薬の痺れも消えた…!?」ムクッ

ラム「ど、どうなってるの…?」

ウウウ ウウウ〜

カロル「…みんなも治してあげる」スッ
546: ◆WEmWDvOgzo:2014/6/8(日) 00:14:06 ID:Q0OIY//CZQ
「おお!動く!体が動くぞ!」

「て、手が…治ってる?指が開ける…!」グッパッ

「ありがとう!おにいちゃん!」

「助かったよ!」

カロル「えへへ。どういたしまして!」ニコニコ

母「身動きが取れても…ここから出られないと意味がないわ」

「う…!そ、それは…」

「外側から鍵が掛かってるから…」

カロル「みんなの力を合わせれば出られるよ!」

「具体的にどうやって?」

カロル「え?」

ラム「…方法はあるよ」

「本当か!?」

ラム「うん。その前に聞きたいんだけど、カロルくんはどうやって傷や痺れを治したの?」

カロル「えと…治したいって思いながら触るだけだよ?」

「な、なんだそりゃ」

「魔法でも使えるのか?」

「おにいちゃんすごーい」

ラム「…それって体力を使うの?それとも精神的に疲れるとか…」

カロル「ううん?なんともないよ?」

ラム「ふーん…じゃあ何回でも出来るんだね?」

カロル「もちろん!」
547: ◆WEmWDvOgzo:2014/6/8(日) 00:17:26 ID:cj4.h9Yvsk
ラム「みんな!聞いて!協力して同族たちを助けよう!」

ザワザワ ザワザワ

ラム「大丈夫だよ!カロルくんの魔法があれば傷を負っても回復できる!」

母「もしかして…ここにいる全員で人間と戦う気?」アセアセ

ラム「そうですよ?カロルくんがいてくれたら絶対に勝てますから?」

カロル「ま、待ってよ…!戦うなんて…ボクできないよ!」アセアセ

ラム「言っとくけど、連れてこられた同族は他にもいるんだよ?」

カロル「え?」

ラム「今、僕らがいる荷車の他に4台、同じように同族が閉じ込められてる荷車があって、一つの荷車に30人ずつ入れられてるんだ」

ラム「実際にショーをしてる舞台の後ろにはテントが張ってあって、そこにも30人、入れられてる」

ラム「例えば僕らだけが助かっても150人の同族が犠牲になるんだよ?」

カロル「……!」

ラム「そういえば君が来る前に車輪を引きずる音がしてたっけ?舞台に運ばれたのかもね?」

カロル「それって…どうなるの?」ビクビク

ラム「舞台にいた同族を使い終わって補充してるのさ?ショーを続ける為にね?」

母「じ、じゃあもう最初の30人は…!」

ラム「殺されてますよ。ここにいたら僕らも運ばれて殺されるだけです」

シーン
548: ◆WEmWDvOgzo:2014/6/8(日) 00:22:14 ID:cj4.h9Yvsk
ラム「…時間がないよ?やるの?やらないの?」

カロル「え?」

ラム「君が決めてよ。その魔法がないと僕らはどう足掻いても勝てないんだから?」

カロル「ぼ、ボク……」

ラム「……」

カロル「えと…」モジモジ

ラム「どうして悩むの?」

カロル「だ、だって…戦うなんて決められないよ」

ラム「怖いの?それとも人間が好きだから?同族はどうなってもいいの?」

カロル「そ、そんなことない!ボクも助けたいもの!」

ラム「へぇ?なのに悩むんだ?」

カロル「助けたいけど…人間と殺し合うんでしょ。そんなのやだよ…」

ラム「じゃあ殺されるのを待つだけだね?他の荷車にいる同族も舞台にいる同族もみーんな死ぬよ?君がウジウジ迷っていい子ぶるから?」

カロル「っ…!いい子ぶってなんかないってば!ボクは戦う以外にも方法が…!」カッ

ラム「ないよ、そんなの?」

カロル「な、なんで…!」

ラム「あるんなら言ってみなよ?どんな方法?仲良くしましょうって言うの?人間に僕らの話なんか通じないと思うけど?」

カロル「そ、そうかもしれないけど…!」

ラム「決めて?早く?時間がないよ?」

「そうだ!早くしろよ!」

「生きて帰れるなら私たちは戦うぞ!」

「私の家族も殺されるかもしれない!大切な相手を失うくらいなら戦う道を選ぶわ!」

「僕たちをこんな目に遭わせた人間を許せない!」

「あいつらのせいでさんざん苦しめられてきた!今度は我々ホビットがやり返す番だ!」

「身勝手な人間共に復讐するぞ!皆殺しにしてやる!」

カロル「…!」
549: ◆WEmWDvOgzo:2014/6/8(日) 00:26:51 ID:cj4.h9Yvsk
カロル「おかしいよ…!そんなの絶対に間違ってる…!」

オーオーオーオー

母「…坊や」

カロル「お母さま…?ねぇ、教えてよ…!どうしたらいいの!このままじゃ…!」

母「」ダキッ

カロル「えっ」ギュッ

母「…あなたがどんな選択をしてもお母さんは坊やの味方よ?」ニコッ

カロル「…やだよ。決めたくない」グッ

母「ツラいわよね…。ごめんなさい」ナデナデ

カロル「わからないよ…。戦っても戦わなくても…」

母「うん。そうね…。優しい坊やには難しいでしょうね…」

母「…でも決めないと?何もせずに全てを失うことになるわ?」

カロル「…やだ。お母さまと離れたくない」ウルッ

母「あたしもよ?あなたを失いたくない…」

ラム「…早くしてくれる?」

カロル「……」ギュッ

母「焦らなくていいの?大事なことだから、ゆっくり決めなさい?」ポンポン
550: ◆WEmWDvOgzo:2014/6/8(日) 21:47:29 ID:52sGqmWho2
―――大樹の根元―――

司祭「のう?宣教師や?」

宣教師「……」

アリアス「」ズシッ

宣教師「っ…」ズシャッ

アリアス「返事は?」グリグリ

宣教師「……!」ギリッ

司祭「よい、よい?そう厳しくしてやるな?」

アリアス「躾は大事ですことよ?」

司祭「躾か…。あの犬は躾がなっとらんかったのう?」

アリアス「腕に噛み跡が付いてしまいましたわ?入念に手入れしてるお肌が…あのバカ犬のせいで?」ギロッ

マルク「くぅ……」ボロッ

宣教師「くっ…!」ジャリッ
551: ◆WEmWDvOgzo:2014/6/8(日) 21:48:38 ID:.alfrJVIvQ
司祭「冥土の土産に聞かせてやろうか?この果実がなんなのか?」チョイチョイ

アリアス「お話してくださるそうよ?あなたが知りたがってた真実を?」グリグリ

宣教師「うっ…」ジャリジャリ

司祭「この真っ青に色付く大きな果実はアピシナの実と言ってなぁ?
命の結晶と言っても差し支えない程に豊潤な生命力を含んでおるのじゃよ?」

宣教師「だから…なんです?」キッ

司祭「古文書には…この実を食せば身体は最盛期まで若返り、永遠の命をもたらすとまで書かれておった」

宣教師「あり…えませんね。自然の摂理に反しています…」

司祭「ほう?」

宣教師「生命の理は…生まれ、育み、宿し、死ぬ。その4つに集約されています…。永遠なんて…あってはならない」

司祭「愚かじゃのう?生命の行き着くべき終着点こそが死の克服ではないか?」

宣教師「そんなの…あなた方のような…寿命では使いきれない欲望を抱えた人間が唱える絵空事です!」ムクッ

アリアス「はい、頭を上げない」ガンッ

宣教師「はぐっ」ドッ

アリアス「ウフフ…クセになりそう?」ニヤニヤ

司祭「これこれ?乱暴にしてはならんぞ?」

アリアス「失礼しました」パッ
552: ◆WEmWDvOgzo:2014/6/8(日) 21:50:22 ID:52sGqmWho2
司祭「わしらの悲願はな。永遠の命を手に入れ、アピシナの実を栽培することなのじゃよ」

宣教師「ざい…あい?」ズルッ

アリアス「さ・い・ば・い、よ?」

司祭「古文書を解読し、発表した後にわしは考えた。永遠の命を手に入れるなら…利用する手があるんじゃないかと?」

司祭「アントリアに持ち掛けてみたところ、奴はもっと恐ろしい提案をしてきおったわ?」

宣教師「……?」

司祭「今ある王国を滅ぼし、わしらの国を造り上げるという計画じゃ?」

宣教師「……!」

司祭「わしらの国を…まぁ仮に神国とでもしようかの」ポリポリ

司祭「神国でアピシナの実を栽培し、今ある教団に席を置く教団員や信者を選別する」

司祭「この選別は清らかな心を持ち、美しい見た目をした人間を審査するものじゃ」

司祭「わしらの眼鏡に叶わぬ人間は排除し、切り捨てる。見事選ばれた者は神国の民となり永遠の命を授かるといった寸法じゃ?」

宣教師「…サイテーな国作りですね」

司祭「分からんかのう?この偉業が…?」

宣教師「分かりたくもありません…!」

司祭「わしは人でありながら神へと昇華される。人は永遠の命を求め、わしを敬い、平伏するじゃろうて?」

宣教師「…アントリア神官は?」

司祭「あやつはやはり生粋の学者肌じゃな。永遠を綴り、謎も未解決もなく歴史を伝えられればそれでいいと言っておる?」

司祭「わしが神として全人間の上に立った時からを初めの歴史として、独自に唯一無二の歴史書を創るのだと息巻いておったぞ?」

宣教師「あなたが神…やめておいた方がいいんじゃないですか?」

司祭「む?」

宣教師「さんざん人を騙してきたウソつきには荷が重いかと?」

ガスッ

宣教師「!」ドシャッ

アリアス「足が滑ったわ?」ガスッガスッ
553: ◆WEmWDvOgzo:2014/6/8(日) 21:52:50 ID:.alfrJVIvQ
宣教師「う……うぁ……」ポタポタ

司祭「アントリアは巡礼が終わるまで怪しまれぬよう、向こうに出席しておる。わしらがアピシナの実をしっかりと見ておかんとな」

アリアス「はっ!」

司祭「宣教師や?お前さんも神国に住まんか?お前ならわしの条件を全て満たしておるぞ?」

宣教師「えんりょ…します」ズルッ

司祭「ふむ…残念じゃの。お前はわしのお気に入りだったんじゃが…やはりホビットに毒された影響か」

宣教師「…どうやって王国を滅ぼす気ですか?」

司祭「む?」

宣教師「王国の武力に…敵う見込みがあるとは思えません」

司祭「ほっほっ!いや、実はなぁ?もう滅ぼしとる真っ最中なんじゃよ?」

宣教師「えっ」

司祭「アントリアは顔が広くてのう?
他国の高官を信者に抱き込み、国内外を操作して今日の巡礼も執りなしてくれたんじゃが…」

司祭「今日の巡礼で王都はがら空きじゃろう?その隙に手を回しておいた他国の役人が兵を差し向けとる筈じゃ?」

司祭「王国の台頭を快く思わん国は腐るほどある」

宣教師「そ、そんな……」

司祭「ちなみに今日来ている他国の役人は…全員が今、王都を攻めてる国の人間じゃ?」ニタァ

宣教師「なにを…考えてるんですか!?都には関係のない民がいるんですよ!?」ガバッ

司祭「みたいじゃのう?」

宣教師「今すぐやめさせなさい!無益に血を流しているとお気付きにならないのですか!?」
554: ◆WEmWDvOgzo:2014/6/8(日) 21:57:36 ID:.alfrJVIvQ
司祭「遅い遅い?もう止められんよ?ここから王都までどれだけの距離があるか?」

宣教師「……!」ググッ

司祭「それにな…わしの生まれた国もそうじゃったんじゃぞ?」

宣教師「え?」

司祭「他国に兵を差し向けとる隙を狙って王国の兵が手薄な城下周辺の町を攻めた…」

司祭「血を流したのは…関係のないわしら民じゃ…!」ギリッ

宣教師「……!」

司祭「なんとか生き延びて偶然アントリアの屋敷に拾われ、この国に潜り込んで…いったいどれほど、この時を待ちわびたか!?」

司祭「わしのもう一つの悲願はな…。復讐じゃよ?」ニタニタ

宣教師「……」

司祭「王国に祖国を侵略され、逃げた先でホビットに襲われて死にかけた…」

司祭「ホビットへの差別を徹底し、王国を滅ぼし、ようやっとわしの復讐は遂げられたのじゃよ!」

司祭「残すは神となり、永遠の幸福を手に入れる!全てを奪われ、失われた人生を取り戻して謳歌するんじゃ!」

司祭「ほーっほっほっほ!!」ゲラゲラ

宣教師「(こんな人に仕えて…本気で尊敬していたなんて…)」

宣教師「(…長い人生の中で復讐を忘れる機会はあったはず、なのに何故こんなにも歪んでしまったのでしょうか)」

宣教師「(哀れです…あまりにも…)」
555: ◆WEmWDvOgzo:2014/6/9(月) 21:12:44 ID:qvysZCTdTY
―――平原(荷車の仮置場)―――

バンッバンッ バンッバンッ

手下3「ちっ…まぁだ薬が効かないのか?」

手下4「ああも内側から叩かれちゃ扉が壊されちゃうかもな?」

手下5「ないない」フリフリ

バンッバンッ バンッバンッ バンッバンッ バンッバンッ

手下3「」ビクッ

手下4「お、おい」

手下5「明らかに大人数で叩いてるぞ?他のは薬が効いてたんじゃないのか?」

バンッバンッ バンバンバンッ バンッバンッ バンッバンッ バンバンバンッ

手下3「た、確かめた方が……」スクッ

手下4「や、やめとけって!」

手下3「でもお前…どうすんだよ?こんなんじゃ舞台に運んだ時に一斉に飛び出すかもしれねぇぞ?」アセアセ

ドォンッ

手下3&4&5「」ビクゥッ

ドォンッ

手下3「あ、お…おお…まさか大人数で体当たりしてんのか!」ビクビク

ダダダッ

手下6「どした!なんだ、このでっけぇ音は!?」タタタッ

手下7「周辺を見張ってたこっちにまで届いてるぞ!」

手下4「ほ、他の連中も全員集めてくれ!あの荷車だけ、なんかおかしいんだ!」

バッカァン!

ゾロゾロ ゾロゾロ

手下3「で、出やがったぞ!?」

手下5「や、やべ!」

ウオオオオ ドドドドドッ
556: ◆WEmWDvOgzo:2014/6/9(月) 21:15:29 ID:ckmSCZfrhU
ドカッ バシッ ズサァッ

ウワーッ オーッ ヒエエエー


ラム「やあっ!」ドカッ

手下3「ごっ!?」ドサァァ

手下4「と、飛び蹴りだとぉ!?ホビットの分際でナメたマネしやがって!?」チャキッ

ラム「……」ジッ

手下4「こ、こっちはなぁ…武器持ってんだ!おめぇらタダじゃおかねぇぞ!」

ガッ ガシッ

手下4「うおっ?な、なにしやがる?てめぇら、離せコラ!」ジタバタ

ラム「そのまま押さえてて」スッ

手下4「は、離しやがれ!このチビ共!」ジタバタ
557: ◆WEmWDvOgzo:2014/6/9(月) 21:16:29 ID:ckmSCZfrhU
手下3「う、うう…」ムクッ

手下3「あ…?あれ?俺のナイフは?」キョロキョロ

ラム「」ダッ

手下4「や、やめろ!やめろぉ!?」ジタバタ

ズンッ

手下4「がっ…うぐっ」タラー

ラム「痛いよね」グリグリ

手下4「あっうっ!あぎゃぁぁぁぁ!!!」ブシュッ

ラム「もっと上手に…鳴けよ!?」グリィッ

手下4「ギャアアアアア!?」ズチュッグチュッ

ラム「…離していいよ?」ブフッ

パッ スッ

手下4「あがっ…うぅぅ……」ズシャッ

ラム「身体から刃を抜かれても痛みは無くならないだろ?」

手下4「あうぅぅ……」ゴロゴロ

ラム「僕たちも同じさ?お前らに突き刺された刃の痛みが…全身に残ってるんだ!」ドスッ

手下4「ぎゃあっ!?」ビクンッ

ラム「差別して!なにもかも奪った!」ドスッドスッ

手下4「」ブシュッ ブバァッ

ラム「お前ら人間の非情な刃が!ずっと僕らに突き刺さってたんだ!」ドスッドスッ

ラム「死ね!死ね!死ね!死ね!死ねぇっ!!」ドスッドスッ
558: ◆WEmWDvOgzo:2014/6/9(月) 21:17:51 ID:ckmSCZfrhU
ラム「まず一匹…」スッ

ウオオオオオオオ!

「勝てる!勝てるぞぉ!」

「あの少年に続け!」

「思い知らせてやる!俺たちの恨みを!」

ラム「……?」キョロキョロ

ラム「カロルくん…?」
559: ◆WEmWDvOgzo:2014/6/9(月) 21:18:43 ID:ckmSCZfrhU
手下5「クッソォ!ちょこまかとぉ!?」ブンッブンッ

手下6「すばしこい!チビだからか!」タタタッ

手下7「か、数が多すぎる!俺たちだけで30匹も相手するのは無理だ!」

手下8「ぐわっ!やめっ!」ズダァン

手下9「まずい!あいつら、また武器を奪うつもりだぞ!?」

手下10「クソォッ!誰か!誰かウォルターさんに…ぐはっ!」ザシュッ

手下11「報告してもショーの途中じゃウォルターさんだって動けねぇよ!持ちこたえろ!」

手下12「ここで食い止めるんだ!じゃなきゃウォルターさんに殺られちまうぞ!?」

ドカスカ ギャーギャー
560: ◆WEmWDvOgzo:2014/6/9(月) 21:20:54 ID:ckmSCZfrhU
―――荷車の中―――

カロル「」ブルブル

母「坊や…始まってる」

カロル「ボクのせいだ…」ブルブル

カロル「ボクが…戦うって決めたから…!」ブルブル

母「…行きましょ?仲間が頑張ってるのにこんな場所で膝を抱えてもしかたないわ?」

カロル「やだ…!」

母「あたしも本当は…ううん。みんなそうよ」

カロル「……」ブルブル

母「誰も戦いたくなんかない。でも…戦うことでしか生きる道はないの」

母「坊やがいないと傷を負った仲間は戦えなくなる。それが続くと…みんな倒されて死んでしまうわ?」

母「…坊やの言うように人間の全てを嫌いにはなれないけど」

カロル「……?」

母「約束を破った教団とヘマトバザールは許せない…!」キッ

母「あの人間たちには正しいやり方は通じないのよ…!」

カロル「め、目が…こわいよ?」ビクッ

母「……」

カロル「そんなの…間違ってる。お母さまも言ってたじゃない?憎しみに呑まれたらいけないって…」

母「そうね…」

カロル「」ホッ
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名前:
sage:


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