前スレ
(少年「ボクが世界を変えてみせる」)
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―――あらすじ―――
人間によるホビットへの差別が当然のように行われる時代
人里を離れ、森の中で静かに暮らしていたホビットの親子がおりました。
母親の名はマリー。子供の名はカロル。
二人はささやかな幸せを願って、穏やかな日々を送っていました。
母は今の生活に満足していました。
もちろん森の中での生活は不自由で贅沢とは無縁なものでしたが多くを望まない母にとっては愛する我が子と生きていけるだけで幸せだったのです。
しかしカロルは違いました。
もちろん愛する母と生きるのに不満はなく、彼自身も多くを望もうとは考えません。
ですが彼にとって一つだけ足りないものがあったのです。
それは友達という存在でした。
幼心に自分たちの置かれた立場は分かっていたつもりでした。
人目を逃れて生きるホビットには仲間もなく、心を通わせる相手を見つけるのはとても難しいと。
それでも小さな身体に宿る希望は膨らむばかりです。
529: ◆WEmWDvOgzo:2014/6/3(火) 21:20:42 ID:rVoFyN4TxM
………………
「なにも起こらんぞ!」
「司祭様の言葉は嘘だったのか!?」
「どうなってるんだ!?大樹は蘇らんのか!?」
「貴様らの言い出した事だろう!答えろ!」
ウォルター「やっべぇー…」
手下1「ど、どーすんすか?」
手下2「俺ら教団じゃねーし、知ったこっちゃねーって話っすよね」
「おい!なんとか言ったらどうなんだ!?」
「国王はどこだ!?こんな枯れ木の為に呼びつけておいて…我々をからかったのか!?」
「場合ニヨッテェハ責任ヲ追及サセテクダサイマシテゴザイマスデス!」
ウォルター「あー…まぁ気を取り直して続きと参りましょうや?」ヘラヘラ
「ふざけんなぁ!?」
「だいたい神聖な大樹に血をかけるとは暴挙にも程がある!しかもホビットの穢れた血だぞ!」
ウォルター「…おいおい、なんて言やぁいいんだ?言い訳なんか思い付かねーぞ?」
手下2「バックレちまいますか!」
ウォルター「ボケ!あれが見えねーのか!」
パタパタ パタパタ
手下1「…なんか赤い旗が上がってんなぁ」
ウォルター「他国の役人が連れてきた兵隊に号令出したんだ。威嚇のつもりだろうが…この騒ぎじゃ最悪もあり得るぜ」
手下1&2「えっ」
530: ◆WEmWDvOgzo:2014/6/3(火) 21:22:08 ID:rVoFyN4TxM
―――大樹の根元―――
司祭「」タッタッ
カロル「あ!」
アントリア「…来たか!」スクッ
司祭「はぁ…はぁ…」ガクンッ
宣教師「…は、始まったのですか?」
母「た、たいへん!」オロオロ
司祭「ぜぇっぜぇっ!はっ…はやくっ…!」
アントリア「今だ!大樹に癒しの力を!?」
カロル「うん!任せて!」ピトッ
カロル「……」キュッ
カロル「……」
宣教師「な…なにも起こりませんね」アセアセ
ダガ「どうなってんだ!?マジメにやれよ!?」クワッ
母「あ、あぁぁ…やっぱりムチャだったのよ…!」サァァ
アントリア「静かに!彼を集中させるんだ!」
シーン
カロル「……」
カロル「」フワッ
ゴゴゴゴゴゴゴゴ
全員「」ビクッ
531: ◆WEmWDvOgzo:2014/6/3(火) 21:25:47 ID:v7XI0TYKOw
バウンッ!
ズザザザザザザザッ!
司祭「ほ、ほっほっほ!!ほーっほっほ!!キタキタキタァァ!!」パァァ
マルク「わぅっ!?」ピョンッ
宣教師「樹が…見る見る内に若返って…!?」
ブワァッ! バッサァッ!!
母「か、勝手に枝分かれして葉がびっしり生えてきたわ…!?」パチクリ
アリアス「ど、どこまで成長するワケ…?頂が見えないじゃないのよ…!?」
ダガ「見上げるだけで首がいてぇ…」
アントリア「ハッハッハ!!アーッハッハッハッハ!!!」ゲラゲラ
ズオォォォォオオン
カロル「…良かった。元気になったんだね?大樹さま?」ニコッ
アントリア「素晴らしい…!素晴らしい…!素晴らしい!!」
司祭「か、叶う!ついに叶うんじゃな!」
532: ◆WEmWDvOgzo:2014/6/3(火) 21:27:04 ID:rVoFyN4TxM
宣教師「だ、大丈夫ですか?なんともありませんか?」ハラハラ
母「お腹痛くない!?熱は!?」ダキッ
カロル「あはは!平気だよ!これって別に疲れたりしないもの?」ギュッ
マルク「あんっ!」スリスリ
宣教師「よくやりましたね!キミならできると信じてましたよ!」
カロル「えへへ…そうかな?」テレテレ
司祭「わははは!見事と言う他ないわ!ようやったわい!」
ヒューン ポトッ
カロル「?」
母「なにか落ちてきたわ?」
宣教師「…果実のようですね。大樹から実ったのでしょうか?」
アントリア「ふっふっ…クックックックッ!」クツクツ
カロル「大きな実だね?みんなで分けて食べようよ!」
宣教師「それよりもまずは向こう側に移動しましょう。ホビット達が逃げられるように手助けしなくては!」
母「そうね!まだ終わった訳じゃないわ!」
マルク「はっ!はっ!」
アントリア「いや、君たちの役目は終わったよ」
カロル「へ?」
宣教師「」ビクッ
母「……?」
533: ◆WEmWDvOgzo:2014/6/3(火) 21:28:13 ID:v7XI0TYKOw
―――大樹―――
ウォオオオオオオオオ!!!!!
国王「あ……あ…あ」パクパク
大臣「は、ははひゃひゃぁ!?」ジョー
政務官「た、た、たい…たいじゅ…たい…」メダパニ
他国の役人3「よ…蘇ったゾォォオオオオ!!」ガタッ
ワアァァァァアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!
国王「お…おぉぉおおお!!!」ガタッ
大臣「(あ、あまりの出来事に漏らしてしまった…)」ジワァ
政務官「た、たたた…たいじゅ」メダパニ
534: ◆WEmWDvOgzo:2014/6/3(火) 21:29:08 ID:v7XI0TYKOw
ワアァァァァアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!
ヒメ「ッッッ!こ、今度は…なんだ!?」キーン
団長「」ポカーン
ヒメ「き、聞いてるのか!?この奇声と地響きはなんだ!?」
団長「お、面を上げなされ。とてつもない場面に遭遇しておりますぞ…」
ヒメ「え?なに?聞こえないぞ!?」キーン
妃「キャー!!!キャー!!!」パチパチ
団長「いいから見てみなされ!!」
ヒメ「な、なんなんだ…」チラッ
ヒメ「!?」ギョギョッ
ヒメ「な、なぜ…枯れていた樹が…!?」
団長「ワシにも分かりません!とにかく…大樹が蘇ったのです!!」
ヒメ「はぁ!?」
535: ◆WEmWDvOgzo:2014/6/3(火) 21:30:43 ID:v7XI0TYKOw
―――平原―――
ウオオオオオオオオ ウオオオオオオオオ
司教「み、見たか!?見たか!?」ユサユサ
教団員「み、見ましたとも!地鳴りの後に大樹が伸びて色づき、枝を通して葉がまんべんなく付きましたよ!?」ドキドキ
信者1「か、神だ!神の仕業だ!」
信者2「天より降りてこられたのだ!」
信者3「い、行こう!間近で拝まなければ!」ダッ
信者4「お、俺が先だ!」ダッ
信者1「あ、待て!狡いぞ!」ダッ
司教「あ、いや…み、皆さん!待ちなさい!私供はここで祈るようにと司祭様から……」アセアセ
信者2「どけ!」ドンッ
司教「おつっ!?」ドサッ
ダダダダダダダッ
司教「あぎっ!ぐふっ!まっ…わ、私を踏んでいくとはどういう…ぎゃっ!?」ドカッ ドスッ
教団員「ほ、他の…ぎっ!し、信者たちも…あつっ!行っちゃいますよ!?」ドンッ ドフッ
司教「ぼ、冒涜者共めぇー!!………がっ!?」ゴツンッ
司教「」バタンキュー
教団員「し、司教様ぁーーー!!!」
536: ◆WEmWDvOgzo:2014/6/3(火) 21:31:59 ID:rVoFyN4TxM
ダダダダダダダッ
ミシング「」タタタッ
ルーボイ「あのじーちゃん、なんか言ってなかった?」タタタッ
ナラ「わ、わかん…ない」タタタッ
ミシング「いい、いい!気にしないで行っちゃお!」タタタッ
ルーボイ「そうだな!おもしろそうだし!」ニカッ
ナラ「はぁっ…つ、つかれ…」クラッ
ルーボイ「がんばれよ!置いてっちゃうぞ!?」タタタッ
ミシング「うーん。私らだけ集団から外れて歩いちゃおっか?」タタタッ
ルーボイ「やだよ!俺は走れるもん!」タタタッ
ミシング「あー!女の子に合わせられない男はモテないぞ〜?」ニヤニヤ
ルーボイ「は、はぁ!?意味わかんねーし!?別にいいし!?」カァァ
ナラ「だ、だいじょ…ぶ。はしれるよ?」ニコッ
ルーボイ「」ドキンッ
ミシング「休みたくなったら言っていいからね?」タタタッ
ナラ「うん…」タタタッ
537: ◆WEmWDvOgzo:2014/6/3(火) 21:32:59 ID:v7XI0TYKOw
―――大樹(舞台)―――
ウォルター「おーおー?どうなるかと思ったがギリギリ助かったぜぇ〜」フイー
手下1「どうなってんすか?なんなんすか、あれ?」
手下2「客も相当盛り上がってますぜ?」
ウォルター「知るかよ。この勢いに乗じてドンドンいくぞ!」
手下1「うっす!おい、テントから次の持ってこい!」
手下2「おうともよ!」ダッ
ウォルター「お待たせしました!時間がかかりましたがお約束通り、見事大樹が蘇りましたよ!」
ウオオオオオオオオ
ウォルター「では続けてショーの方もお楽しみください!
まだまだホビットに罰を与えて神様にその血を捧いでやりましょうや!」
ワアァァァァアアアアアアアアアア
538: ◆WEmWDvOgzo:2014/6/7(土) 23:33:30 ID:Q0OIY//CZQ
―――平原(荷車の仮置場)―――
ドカッ ドサッ ズシャアッ
カロル「わっ!」
母「いった…!なにするの!?」
ダガ「ふ…もうてめぇらの顔を見なくていいと思うとせいせいするぜ?」ガララッ
バンッバンッ
ダガ「バカが…壁を叩いたって誰も出しちゃくれねぇよ…。ククク!」クツクツ
手下3「すんませんね。わざわざ?」ヘコヘコ
ダガ「ふ……気にすんな。ちゃんと始末しとけよ?」
手下3「えぇ、えぇ、どうも!会長によろしくお伝えください!」ヘコヘコ
ダガ「あぁ…」スタスタ
手下3「…しっかしこんな時にあんな上物を寄越してくるなんて会長も抜け目ないなー」
バンッバンッ
手下3「うるせぇな…。中に薬撒いてあっから、しばらくしたら痺れて動けねぇよ!諦めちゃえよ!」
バンッバンッ
手下3「ちっ…うるせぇな」
539: ◆WEmWDvOgzo:2014/6/7(土) 23:35:51 ID:cj4.h9Yvsk
ガシャンッ
カロル「こんなのってないよ!?約束は守ったじゃない!?」ムクッ
母「出しなさいよ!閉じ込めてどうする気なの!?」
シーン
母「なんとか言いなさいよ!変態ムキムキ男ー!」バンッバンッ
シーン
カロル「……」シュン
母「また…騙されたのね…!」ガクッ
ウウウ ウウウ〜
母「ひっ…な、なに?後ろで何かが蠢いてるわ?」ビクッ
カロル「ま、真っ暗でなにも見えないよ…?」ビクビク
「その声は…カロルくんかい?」
カロル「え?だ、誰?」クルッ
「僕だよ…。覚えてないかな?ほら、森で会った…?」
カロル「…ラムくん!?」ビクッ
母「まぁ…!?」
ラム「ひ、久しぶり…だね」ギチギチ
カロル「ラムくん!なんでこんなところにいるの!?」
ラム「ヘマトに捕まってね…。同族たちもいるよ?」
ウウウ ウウウ〜
母「…この呻き声は同族の?」
カロル「ヘマト…バザールって…アントリアさんが言ってたショーの…」
540: ◆WEmWDvOgzo:2014/6/7(土) 23:39:29 ID:cj4.h9Yvsk
ラム「君こそどうしたのさ?教団の本部に友達を助けに行ったんじゃなかったの?」
カロル「そ、そうなんだけど…」モジモジ
ラム「…どうせ騙されて、ここに連れてこられたんだろ?だから言ったじゃないか?」ジト
カロル「う、うん…」シュン
ラム「同族の言うことも…少しは信用してよね…っ!」ズキン
母「ケガしてるの…!?」
ラム「だ、大丈夫ですよ…」
母「大丈夫な訳ないでしょ!人間に何をされたの!」
ラム「こんなの…これからされる事に比べたら…」
母「え…!まさか…あなたみたいな子供にまで!?」
ラム「関係ないんですよ。人間には僕らの命なんて…」
母「ゆ、許せないわ…!どこまですれば気が済むのよ…!?」ワナワナ
カロル「……」
541: ◆WEmWDvOgzo:2014/6/7(土) 23:47:48 ID:Q0OIY//CZQ
ラム「はぁ…こんなはずじゃなかったんだけどね」
カロル「ラムくんはどうして捕まっちゃったの…?」
ラム「前に言ったの覚えてる?僕が旅をしてた理由…」
カロル「人間を追いかけて…だよね?」
ラム「実はね、あれウソなんだ?」
カロル「ウソ…?」
ラム「本当は二人の仲間と旅をしてたんだ。同族の暮らしてる集落を目指して…」
カロル「そうだったんだ…」
ラム「できれば君も仲間に誘いたかったけど…僕らとは考え方が違ってたからやめておいた」
カロル「そう…だね」
ラム「…僕の仲間も言ってたよ。君みたいな考えの同族は許せないってさ」
カロル「……」
ラム「悪く思わないでね。僕も仲間も人間が大嫌いだから…しょうがないんだ」
カロル「ねぇ…ひょっとして教会の人間って…」
ラム「よく知ってるね?僕の仲間が殺したのさ?」
母「そ、そうだったの…!?」
ラム「簡単な罠と拾った大きめの石で片付いたってさ?人間って脆いよね?いっつも威張ってるくせに?」 クスッ
カロル「おもしろくない…」
ラム「…あっそ」
542: ◆WEmWDvOgzo:2014/6/7(土) 23:49:54 ID:Q0OIY//CZQ
ラム「あいつは人間の中でも特に許せなかったんだ。卑怯で小狡くて残忍な…最低の奴だよ」
カロル「だから殺したの…?」
ラム「…あいつに騙されてヘマトバザールに捕まってさ。
それからは地獄の日々だよ。同族が泣き叫ぶのを間近で見せられて…次は自分かもしれないって恐怖にさらされてた」
ラム「そんな僕らを見てあいつは楽しそうにケタケタ笑ってたんだ…!」
ラム「だからある時、仲間と相談した。逃げ出そうって」
ラム「最初からチャンスはあったんだ。ヘマトの公演は表沙汰にできなかったから場所を転々としてて、連れ出される時は拘束を解かれてたしね」
ラム「ただ…逃げようとした同族は捕まったら松明で指を炙られる。
その上、焼け爛れた皮膚をくっつけられて5本の指を一つにさせられてしまうんだ」
母「」ゾォッ
カロル「」ブルッ
ラム「灯りがあれば見れたのに?後ろで呻いてる中にもいるんだよ?指を接合されたかわいそうな同族が?」
ウウウ ウウウ〜
母「ひっ…」ウルッ
543: ◆WEmWDvOgzo:2014/6/8(日) 00:06:07 ID:Q0OIY//CZQ
ラム「だからさ…僕らが逃げ出すのも命懸けだったんだよ?」
ラム「実際に5人の仲間と逃げ出したけど逃げ延びたのは3人さ。僕を含めて…たった3人…」
母「……!」ポロポロ
ラム「消せないよ。僕らは仲間の命と憎しみを抱えてるんだから?」
カロル「……」
ラム「もういい子ぶらなくたっていいよ。人間なんてみんな死ねばいい。君もそう思わない?」
カロル「…信じられる人間に出会えなかったんだね」
ラム「?」
カロル「ラムくん、なんにも変わってないよ…」
ラム「…イラつくね。あれから何も成長してないんだ?」イラッ
カロル「なんて言われてもボクは憎んだりしないよ。人間のいいところも知ってるもの」
ラム「……!」カッ
母「恨むしかなかったのよね…?」ポロポロ
カロル「お母さま…?」
544: ◆WEmWDvOgzo:2014/6/8(日) 00:08:00 ID:Q0OIY//CZQ
母「支えがなくて…誰も守ってくれないなら自分で守るしかないもの…」ポロポロ
ラム「…そうですよ。誰も守ってくれないんです。
君みたいにお母さんがいて、充実してて、ノンキに友達作りして…そんな気楽になんて生きられないからね?」
カロル「……」
母「そうね…。あたし達は脆くささやかなものでも…ちゃんと幸せを感じて生きてきたわ」グシッ
ラム「最悪だよ…。人間がいなかったら…僕も両親と幸せに暮らせたのに…」ググッ
カロル「でも…ホントだよ?いい人間も……」
ラム「まだ言うの…?君のお母さんだって言ってるじゃないか?」
母「それは少し違うわ…?」
ラム「え?」
母「坊やもあたしも信じられる人間に出会ってるの。あなたには申し訳ないけど…人間のすべてを憎めないわ?」
ラム「やっぱり分かってくれないんだね…」
カロル「そ、そうじゃないよ。ラムくんの気持ちも分かるもん?」アセアセ
ラム「…もういいよ。どうせ殺されるんだから言い合ってもしょうがないしね」プイッ
カロル「…集落には着かなかったの?」
ラム「…関係ないだろ」
カロル「ここを出て一緒に探そうよ?ボクたちが静かに暮らせる場所を?」
ラム「黙れよ、なにも知らないくせに!」
カロル「」ビクッ
545: ◆WEmWDvOgzo:2014/6/8(日) 00:11:13 ID:Q0OIY//CZQ
ラム「集落には着いたさ!同族だって住んでたよ!」
カロル「そ、それなら…」
ラム「その同族が騙したんだ!自分だけ助かる為に…人間に僕らを差し出したんだよ!」
カロル「……」
母「な、なんですって…!」
ラム「笑えるだろ?この世界に僕らが安心して住める場所なんてないんだ!
全部!全部!全部人間が奪うんだ!住み処も繋がりも命も…全部だ!」
ラム「末路がこれさ!暗い場所に閉じ込められて明るい場所で弄ばれて、怯えながら死を待つしかないんだよ!」
カロル「…ごめん」
ラム「…謝るなよ!君が謝ったからってなにも変わらないだろ!?」
カロル「変えられないかもしれないけど…変えようとすることはできるよ」
ラム「今さら何ができるって言うのさ…」
カロル「」ダキッ
ラム「え…!?」ビクッ
カロル「あの時とおんなじだね?こうやって抱きしめたらぬくもりが伝わって…」ギュッ
ラム「な、なに…?なにしてるの?」ビクビク
カロル「心の傷は塞げないけど…今はこれで我慢してね?」フワッ
ラム「い、意味が分からないよ…」
カロル「はい!傷治ったでしょ?」パッ
ラム「え…あ…ほ、ほんとだ。太ももの傷口が塞がってる…!」ペタペタ
ラム「それに薬の痺れも消えた…!?」ムクッ
ラム「ど、どうなってるの…?」
ウウウ ウウウ〜
カロル「…みんなも治してあげる」スッ
546: ◆WEmWDvOgzo:2014/6/8(日) 00:14:06 ID:Q0OIY//CZQ
「おお!動く!体が動くぞ!」
「て、手が…治ってる?指が開ける…!」グッパッ
「ありがとう!おにいちゃん!」
「助かったよ!」
カロル「えへへ。どういたしまして!」ニコニコ
母「身動きが取れても…ここから出られないと意味がないわ」
「う…!そ、それは…」
「外側から鍵が掛かってるから…」
カロル「みんなの力を合わせれば出られるよ!」
「具体的にどうやって?」
カロル「え?」
ラム「…方法はあるよ」
「本当か!?」
ラム「うん。その前に聞きたいんだけど、カロルくんはどうやって傷や痺れを治したの?」
カロル「えと…治したいって思いながら触るだけだよ?」
「な、なんだそりゃ」
「魔法でも使えるのか?」
「おにいちゃんすごーい」
ラム「…それって体力を使うの?それとも精神的に疲れるとか…」
カロル「ううん?なんともないよ?」
ラム「ふーん…じゃあ何回でも出来るんだね?」
カロル「もちろん!」
547: ◆WEmWDvOgzo:2014/6/8(日) 00:17:26 ID:cj4.h9Yvsk
ラム「みんな!聞いて!協力して同族たちを助けよう!」
ザワザワ ザワザワ
ラム「大丈夫だよ!カロルくんの魔法があれば傷を負っても回復できる!」
母「もしかして…ここにいる全員で人間と戦う気?」アセアセ
ラム「そうですよ?カロルくんがいてくれたら絶対に勝てますから?」
カロル「ま、待ってよ…!戦うなんて…ボクできないよ!」アセアセ
ラム「言っとくけど、連れてこられた同族は他にもいるんだよ?」
カロル「え?」
ラム「今、僕らがいる荷車の他に4台、同じように同族が閉じ込められてる荷車があって、一つの荷車に30人ずつ入れられてるんだ」
ラム「実際にショーをしてる舞台の後ろにはテントが張ってあって、そこにも30人、入れられてる」
ラム「例えば僕らだけが助かっても150人の同族が犠牲になるんだよ?」
カロル「……!」
ラム「そういえば君が来る前に車輪を引きずる音がしてたっけ?舞台に運ばれたのかもね?」
カロル「それって…どうなるの?」ビクビク
ラム「舞台にいた同族を使い終わって補充してるのさ?ショーを続ける為にね?」
母「じ、じゃあもう最初の30人は…!」
ラム「殺されてますよ。ここにいたら僕らも運ばれて殺されるだけです」
シーン
548: ◆WEmWDvOgzo:2014/6/8(日) 00:22:14 ID:cj4.h9Yvsk
ラム「…時間がないよ?やるの?やらないの?」
カロル「え?」
ラム「君が決めてよ。その魔法がないと僕らはどう足掻いても勝てないんだから?」
カロル「ぼ、ボク……」
ラム「……」
カロル「えと…」モジモジ
ラム「どうして悩むの?」
カロル「だ、だって…戦うなんて決められないよ」
ラム「怖いの?それとも人間が好きだから?同族はどうなってもいいの?」
カロル「そ、そんなことない!ボクも助けたいもの!」
ラム「へぇ?なのに悩むんだ?」
カロル「助けたいけど…人間と殺し合うんでしょ。そんなのやだよ…」
ラム「じゃあ殺されるのを待つだけだね?他の荷車にいる同族も舞台にいる同族もみーんな死ぬよ?君がウジウジ迷っていい子ぶるから?」
カロル「っ…!いい子ぶってなんかないってば!ボクは戦う以外にも方法が…!」カッ
ラム「ないよ、そんなの?」
カロル「な、なんで…!」
ラム「あるんなら言ってみなよ?どんな方法?仲良くしましょうって言うの?人間に僕らの話なんか通じないと思うけど?」
カロル「そ、そうかもしれないけど…!」
ラム「決めて?早く?時間がないよ?」
「そうだ!早くしろよ!」
「生きて帰れるなら私たちは戦うぞ!」
「私の家族も殺されるかもしれない!大切な相手を失うくらいなら戦う道を選ぶわ!」
「僕たちをこんな目に遭わせた人間を許せない!」
「あいつらのせいでさんざん苦しめられてきた!今度は我々ホビットがやり返す番だ!」
「身勝手な人間共に復讐するぞ!皆殺しにしてやる!」
カロル「…!」
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