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カロル「ボクが世界を変えてみせる」
[8] -25 -50 

1: ◆WEmWDvOgzo:2013/11/24(日) 19:26:09 ID:j5u3Ryt06o
前スレ
(少年「ボクが世界を変えてみせる」)
http://llike-2ch.sakura.ne.jp/bbs/test/mread.cgi/2ch5/1356265301/1-50


―――あらすじ―――

人間によるホビットへの差別が当然のように行われる時代
人里を離れ、森の中で静かに暮らしていたホビットの親子がおりました。
母親の名はマリー。子供の名はカロル。
二人はささやかな幸せを願って、穏やかな日々を送っていました。

母は今の生活に満足していました。
もちろん森の中での生活は不自由で贅沢とは無縁なものでしたが多くを望まない母にとっては愛する我が子と生きていけるだけで幸せだったのです。

しかしカロルは違いました。
もちろん愛する母と生きるのに不満はなく、彼自身も多くを望もうとは考えません。
ですが彼にとって一つだけ足りないものがあったのです。
それは友達という存在でした。

幼心に自分たちの置かれた立場は分かっていたつもりでした。
人目を逃れて生きるホビットには仲間もなく、心を通わせる相手を見つけるのはとても難しいと。
それでも小さな身体に宿る希望は膨らむばかりです。


373: ◆WEmWDvOgzo:2014/3/30(日) 22:09:44 ID:.zQQ4y5jKw
ライオネル「あなたホビットだったのねぇ?さっきのお坊ちゃんは飼い主なの?」

カロル「え?う、うん!そうなの!」コクコク

ライオネル「まぁ?鎖に繋がれてないのにおとなしいこと?
あたくしの飼ってるシャルドネちゃんなんて未だに逃げ出そうとするのに?」

カロル「飼う…?」

ライオネル「ダーリン!見て、このホビットおとなしいのよ!
躾も必要なさそうだし、さっきのお坊ちゃんから買ってみようかしら?」

リッチー「しょうがないな、ハニーは?
この前に買ったホビットも気に入らなくて折檻してたら死んじゃって…山奥に捨てさせたんじゃなかったっけ?」

ライオネル「だって全然言うこと聞かないんだもの?
このあたくしが自ら鞭を振るってレッスンしても上達しないし、やっぱり野良はダメね?
今飼ってるシャルドネちゃんを売って、この子を飼いましょ?」

カロル「…だ、ダメ!ボクは……」

ヒメ「そいつは売り物じゃないぞ」スタスタ

カロル「王子さま!」

ライオネル「ダーリン…あたくしの聞き間違いかしら?」

リッチー「…王子、って聞こえたよ。ハニー?」

ヒメ「ほら、飲み物」スッ

カロル「ありがとう!」パシッ
374: ◆WEmWDvOgzo:2014/3/30(日) 22:11:43 ID:0HxDtJds0Y
ライオネル「……」ションボリ

リッチー「……」ションボリ

ヒメ「もう気は済んだか?」

ライオネル&リッチー「し、知らなかったとはいえ申し訳ございませんでしたぁぁぁ!!」フカブカ

ヒメ「いいよ。どっか行け」シッシッ

カロル「ちょっと冷たいんじゃない…?」コショコショ

ヒメ「いいんだよ。こいつらの見栄に付き合ってやる義理ないし」

カロル「……?」

ライオネル「ところで…王子ぃ?あたくし達の舞踊、いかがでしたぁ〜?」スリスリ

リッチー「今度のコンテストでも披露するんですが〜?」スリスリ

ヒメ「見てないから知らない」

ライオネル「まぁ!そうでしたの?でしたらもう一曲……」

ヒメ「…カロル!移動するぞ!」パシッ

カロル「え…!」グイッ

リッチー「まぁまぁ!そう邪険にしないでくださいよ〜!
あぁ、そうだ!そういえば今度、僕達が主催のパーティーを予定してるんですが王子にも来ていただけませんか?」

ヒメ「どけ!邪魔!」ドンッ

リッチー「わっと!そ、そんなぁ〜!友人達も喜びますし、心配なさらずとも王子を招くに相応しい身分の客人ばかり……」ヨロッ

ヒメ「……」スタスタ

カロル「お、王子さまぁ」オロオロ
375: ◆WEmWDvOgzo:2014/3/30(日) 22:14:51 ID:0HxDtJds0Y
ヒメ「っ!これだからパーティーは嫌いなんだ!」イライラ

カロル「さっきの人間たち、よかったの?」

ヒメ「あいつらは王子と知り合いっていうブランドが欲しいだけさ!
誘いに乗ったら、勝手に友人ヅラされてほうぼうに妙な噂をばらまかれるんだぞ!?」

カロル「た、大変…なんだね?」ヒクヒク

ヒメ「こういう会には何かと理由を付けて出ないようにしてるし…僕と親しくしてる奴なんか殆どいないからな。
珍しい上に身分の高い僕は自慢だけが生き甲斐のあいつらからしたらいいカモなんだよ」ブツブツ

カロル「へぇ…」

???「これはこれは!王子ではありませんか!」スタスタ

ヒメ「…またか。やっぱり来るんじゃなかった!」イライラ

バルガン「お久しいな!今回も出席を拒まれているものかと?」

カロル「…あぁっ!」ビッ

バルガン「ん?なんだね?人を指差すものでは……おぉ!」

カロル「」ビクッ

バルガン「王子もホビットを飼ってるのですか!よくお父上が許されましたなぁ?」

ヒメ「ちがいますよ。知り合いです」

バルガン「知り合い?これはまた異な事をおっしゃる!」

ヒメ「知っての通り、父上はホビットを毛嫌いしてますから僕が飼う事を良しとしませんよ」
376: ◆WEmWDvOgzo:2014/3/30(日) 22:17:07 ID:.zQQ4y5jKw
バルガン「ほう…それにしても…どこかで見たような……」ジロジロ

カロル「……!」プイッ

バルガン「…気のせいか」

カロル「」ホッ

ヒメ「…どうした?」

カロル「なんでも…ない」

バルガン「あぁ、そうだ!大聖堂で見たホビットによく似ているのだ?」ポンッ

カロル「」ギクッ

バルガン「見れば見るほどによく似ている!これはどこで買われたので?」

ヒメ「買ってません…。城下で知り合った教団の人間が世話してるホビットですから」

バルガン「教団!ほうほう?では…」ゴソゴソ

カロル「……」ヒシッ

ヒメ「なんで後ろに隠れるんだよ…。心配しなくても僕といる限り、誰も手出しできないから平気さ…」ボソボソ

バルガン「あったあった!ホビットよ、これに見覚えはないか?」つ【絵】

カロル「…それ、ボクが描いた絵?」ピクッ

バルガン「」ニヤリ

ヒメ「なぜ貴殿がそのような物を?」

バルガン「フッ…まぁその辺はいいでしょう?」
377: ◆WEmWDvOgzo:2014/3/30(日) 22:19:13 ID:0HxDtJds0Y
カロル「どうして?その絵は宣教師さまにあげたのに…!」

バルガン「私は彼女の知り合いだ。彼女とはある条件付きで契約していたのさ?」

カロル「…けいやくってなに?」

ヒメ「約束事とかじゃないか?」

バルガン「大臣の慰み者となった彼女の命を保障してやる代わりに貴様の居どころを教えてもらうという契約だったが…まさか王子に先を越されていたとは?」

ヒメ「……」

バルガン「とはいえ飼う気はないのでしたな?
それならば教会の方に打診してみるとしよう…」

カロル「ウソだ!」

バルガン「フッ…なんだ?急に大声を出して…」

カロル「宣教師さまはそんな約束しないもん!」

バルガン「……」

カロル「その絵だってあげたりするはずないよ!全部大事にしてるって言ってくれたもの!」

バルガン「ククク!なんとでも言え?私が欲しいのは貴様の画力だけだ?」

カロル「っ…!」

ヒメ「僕の背中越しに会話するなよ…。なんか挟まれてるみたいで気まずいだろ?」

カロル「ご、ごめん…」

バルガン「あの女も命惜しさに貴様を差し出したんだ?
本来ならある催しの報せが届いた時に招待状を廻す手筈だったんだが…事情が変わった?」

「んぅ〜?なにやら大変興味深いお話が聞こえまするな?」

バルガン「……?」

大臣「卿、あなた…今なんて言いましたぁ〜?」ニタニタ

バルガン「…大臣」
378: ◆WEmWDvOgzo:2014/3/30(日) 22:21:45 ID:0HxDtJds0Y
ヒメ「」ペコリ

大臣「おぉ!ご挨拶が遅れましたな!王子が出席されるなど思いもよらず!」ペコリ

ヒメ「…父上に用があっただけですよ」

大臣「聞き及んでおりますぞぉ?最近、お忍びで城下に降りているとか?
そんな余分な手間をかけずとも王子がお望みでしたらわたくし共がご協力差し上げますのにぃ?」ニタニタ

ヒメ「……」

大臣「それはさておき…卿?」

バルガン「……」

大臣「いやはやなんとも!おかしいおかしいとは思ってたんですけどねぇ〜?
貴殿の父であるランベルヤ卿も突然にわたくしとの交流を断ちますし…何がなんやら分からんと頭を悩ませていたのですよぉ〜?」ヘラヘラ

バルガン「フッ…こうなっては仕方ありませんな。正直に申し上げ……」

大臣「いや結構!もう分かってますからぁ〜?」

バルガン「ククク…お恥ずかしい話です」

大臣「本当ですよねぇ!まさかわたくしの屋敷に賊を差し向けたのが貴殿だったなんて!いやはやなんとも!」ケラケラ

バルガン「えぇ、まったくその通り………はい?」キョトン

大臣「あの小娘といつの間にやら手を組んでらしたとは…同じ馬車に乗せるべきではなかった?」

バルガン「そ、それは宛が外れている…!私はこのホビットを…!」

大臣「えぇ、そのホビットも実はわたくしがバックヤードで買い取った奴隷でしてな!
なぜ王子と一緒におられるかは分かりませんがぁ…貴殿がプレゼントしたのですかな?」

バルガン「誤解だ!私は偶然、ここで会ったのです!それ以外のことは存じませんぞ!」アワアワ

大臣「わっはっは!またまたぁ〜?」ニタニタ
379: ◆WEmWDvOgzo:2014/3/30(日) 22:29:37 ID:.zQQ4y5jKw
バルガン「嘘は言ってない!私はただあの女にこのホビットの居どころを教えてもらおうと…!」

大臣「んぅ〜?失礼ですが王子はそのホビットとはどういったご関係で?」

ヒメ「城下で知り合いました。詳しいことは知りません」

大臣「なるほど…奴隷の分際でのうのうと城にまで踏み込むとは図々しいですなぁ?」

カロル「……!」キュッ

大臣「まぁなんにしても卿には後でいろいろ伺いませんとなぁ?
その口でべらべら喋ってしまった以上、わたくしが貴殿の言い訳を聞き入れるかは分かりませんがねぇ〜?」

バルガン「……!」ゾワァッ

大臣「ふん…落ちるところまでとことん落としてやりますかね…。
没落貴族の汚名を背負って親子仲良く塀に収まりなさい?」

バルガン「う…うおぉぉ!違う…違うんだぁ!?」ダッ

タタタッ……

大臣「ランベルヤ卿にもよろしく言っといてください」フリフリ

ヒメ「……」

大臣「あぁ、申し訳ございません!こちらの話でお引き留めしてしまいましたか!」

ヒメ「いえ、お構いなく」

大臣「お詫びと致しましてはなんですが、そのホビットは差し上げます!
観賞用としては値打ちものですので王子に相応しい事でしょう!」

ヒメ「はぁ…」

大臣「では失敬!わたくしは公務が残っておりますので!」スタスタ

ヒメ「……」

カロル「…行ったかな?」ヒョコッ

ヒメ「おまえずっと背中に隠れてたのか?」

カロル「うん」

ヒメ「…なんか分からないけど、たくさんの人間に巻き込まれてるんだな」

カロル「…ボクもよくわかんないんだけどね」

ヒメ「ふーん…」
380: ◆WEmWDvOgzo:2014/4/11(金) 21:55:04 ID:PCuqcoF.KI
女の子1「王子さま。お近づきの印にわたしと踊ってくださらない?」スッ

ヒメ「…ケッコーです」ツーン

女の子2「そうよ!あなたじゃ不相応!王子さまはあたくしと踊るのよ!」

ヒメ「踊りませんけど」

女の子1「きーっ!ブスが横からしゃしゃり出ないでよ!きったないドレスに似合わない髪飾りしてさ!」

女の子2「何から何まで仕立て屋に作らせた他にはない超一流品よ!
あんたこそ、そんな豚みたいな体で王子に誘い掛けちゃってみっともないったらありゃしないわ!?」

ヒメ「うるさいな…。さっきのダンスバカのとこに行けばいいのに」

カロル「パーティーって賑やかで楽しいね!」ルンルン

ヒメ「おまえも父上の説得に失敗したら処刑されるかもしれないのによく呑気でいられるよな…」

カロル「……えっ?そうなの!?」ビクビクゥ

ヒメ「やっぱり話し半分にしか聞いてなかったな?」ジト

カロル「えへへ…お城に入れるって聞いただけでワクワクしちゃって?」テレテレ

ヒメ「……」
381: ◆WEmWDvOgzo:2014/4/11(金) 21:56:42 ID:PCuqcoF.KI
キーキー ナニヨッ! アンタコソッ! グイッ

カロル「け、ケンカになってるよ?止めなくていいの?」アタフタ

ヒメ「いいんじゃないの?やらせとけば?」

カロル「で、でも…あぁ!髪引っ張ったり大変だよ!やっぱり止めなくちゃ!」ダッ

ヒメ「待てって!」ガシッ

カロル「っ…!?な、なに!?」グイッ

ヒメ「あれは仲良く踊ってんの!邪魔したら悪いだろ?」

カロル「そ、そうなの?ボクにはケンカしてるようにしか見えないけど」

ヒメ「そういうダンスなの!」

カロル「なーんだ…。じゃあ止めなくていいんだね」

ヒメ「そうそう。ほっとけばいいんだよ」

ギャーギャー キーキー
382: ◆WEmWDvOgzo:2014/4/11(金) 21:57:43 ID:PCuqcoF.KI
女の子3「王子さま!」タタタッ

ヒメ「(また来たし…)」

女の子3「私の愛を込めた花束を受け取ってくださいまし!」つ【花束】

ヒメ「いりません」キッパリ

女の子3「そうはいきませんわ!一人の淑女として受け取っていただかないと面目が立ちませんもの!」グッグッ

ヒメ「しつこいな…。カロル、花束くれるみたいだぞ?」

カロル「ボクにじゃなくて王子さまにでしょ?」ニコニコ

女の子3「当然よ!薄汚いホビットに高貴なる私の花はもったいないわ!」

ヒメ「……」イラッ

女の子3「さぁ!受け取っていただきますわよ!」ズイッ

ヒメ「身分階級を語るなら己の分を弁えるんだな。
その花に込められた醜い野心を思うだけで吐き気がする?」

女の子3「は…!?」ピクッ

ヒメ「花束を持って消え失せろ。二度とオレに話しかけるな」ジロッ

女の子3「」ブワァッ

女の子3「ひーん!」ダッ

ヒメ「…おまえらもだ」キッ

女の子1&2「……!」ダッ

カロル「……」
383: ◆WEmWDvOgzo:2014/4/11(金) 22:01:44 ID:KFU2x5lj.2
ヒメ「…少しは静かになったな。また来られても困るし、廊下に出よう」

カロル「ボクは大丈夫だよ?」

ヒメ「オレがヤなの!ああいう低俗な連中を相手してたらキリがないし!
それもこれも団長がたもたしてるせいだ!」プンスカ

カロル「…さっきのヒメくん、ちょっとひどいと思うな」ボソッ

ヒメ「は?」

カロル「ボク、ドリンクもらってくるよ」スタスタ

ヒメ「あ、おい……」

スタスタ スタスタ………

ヒメ「…なんだ、あいつ?急に拗ねたりして…」ポカーン
384: ◆WEmWDvOgzo:2014/4/11(金) 22:03:48 ID:KFU2x5lj.2
女の子3「ひっ…ひっ…」メソメソ

「隅で泣いてるあの娘!ミジメねぇ!」

「王子に花束を渡そうとして断られたんですってよ!オッホホ!」

「ワインレッドのドレスでアピールした上に精一杯のおめかしまでしてフラれてたら目も当てられないわ!
ま、渡すのがあたくしでしたら王子も快く受け取ってくださったでしょうけれど?」

「身の程を知りなさ〜い?三流のレディは三流を相手にしなきゃ〜?たとえばぁ…下級貴族の三男坊とか〜!」

キャハハハハハ

女の子3「……!こんなもの!」ブンッ

花「」バサッ

女の子3「これのせいでっ!私はっ!恥をっ!かいたのよっ!」ゲシッゲシッ

花「」グシャッグシャッ

女の子3「はぁっ!はぁっ!」ゼーゼー

カロル「ダメだよ、お花に八つ当たりしたら?」

女の子3「え…!あ、あんた…王子の…!?」クルッ

カロル「お花に罪はないでしょ?
せっかくキレイに咲いたんだもの。大事にしてあげなきゃ?」

女の子3「な、なに!ホビットのくせに文句でもあるって言うの!?」

カロル「たくさん踏まれて辛かったね…」スッ クシャッ

女の子3「あんたに私の気持ちが分かるの!?
大勢の前で想いを踏みにじられて…そんな花より私の方がかわいそうよ!」

カロル「」フワッ

花「」パァァ

女の子3「え……」

カロル「キミの気持ちも分かるけど、やっぱり八つ当たりは良くないよ?」

女の子3「…あ、あんた…何したのよ!花が元通りに……」

カロル「ボクが渡してきてあげる。だからもう泣かないで?
王子さまだって悪気があったんじゃなくて、照れ臭かったんだよ。たぶん」

女の子3「……!」
385: ◆WEmWDvOgzo:2014/4/11(金) 22:07:18 ID:KFU2x5lj.2
カロル「じゃあね。お花はちゃんと渡しておくから!」スッ

女の子3「ま、待ちなさいよ!あんたが渡したって私が断られたことに変わりはないじゃないの!」

カロル「そうかもしれないけど…」

女の子3「同情なんていらないわよ…!
どうしたって私はこの先ずっと笑われ者で通るんだから!
ましてやあんたみたいなホビットに慰められたらなおさら……」

カロル「そんなことないよ?キミを笑う人間がいても自分がどう思うかでしょ?」

女の子3「な、なに…よ!意味がわかんないわよ!」

カロル「ホビットのボクでも人間が大好きって気持ちでいたら、人間の友達ができたんだ?
キミも素直な気持ちを持ち続けたら、いつか必ず伝わ……」

女の子3「はぁ!?ちょっとなに!?あんたと私を一緒にしないでよ!?」

カロル「へ?」キョトン

女の子3「私は貴族の娘よ!?ホビットのあんたと違って誰からも愛されて当然なの!
キレイな飾り細工を着けてかわいいお洋服を身に纏ってちやほやされるのが私なの!」

カロル「え、えっと…」シドロモドロ

女の子3「あんたみたいに最初から誰にも相手にされないホビットとは違うのよ!」

カロル「……!」ズキッ
386: ◆WEmWDvOgzo:2014/4/11(金) 22:09:17 ID:PCuqcoF.KI
女の子3「人間の友達がいるですって?
王子に飼われてるからって調子に乗って、どうしようもない嘘つくんじゃないわよ!
いたとしてもねぇ!どうせあんたが一方的に思ってるだけで向こうはなんとも思っちゃないのよ!」

カロル「…王子さまとはともだちだよ。飼われるとか…そんなの知らない。
それに…みんな大事なともだちだもの。なんとも思ってないなんて…決めつけないでほしいな」

女の子3「あーぐちぐちぐちぐち口だけは達者ね、ホビットって!お父様の言ってた通りだわ?」

カロル「…キミはどうしてボクたちを嫌がるの?」

女の子3「はぁ!?なんでって…そう教えられてきたからよ!」

カロル「…じゃあ教えられたことが間違ってるって分かったら嫌わないでくれる?」

女の子3「私のお父様は教団に多額の寄付金を融資してるのよ?
それなのに教団が嘘を教えるって言うの!?」

カロル「もしものお話だから…答えてよ」ジッ

女の子3「あんたとなんか話したくない!」

カロル「……」

女の子3「消えて!目障りでならないわ!」シッシッ

カロル「…」スタスタ
387: ◆WEmWDvOgzo:2014/4/11(金) 22:16:28 ID:PCuqcoF.KI
ヒメ「お、遅かったじゃんか!王族を待ちぼうけにさせたからには死刑も覚悟してるんだろーな!」ドキドキ

カロル「あはは!ごめんね?」ニコニコ

ヒメ「あれ…お、怒ってないのか?」

カロル「え?どうして?」キョトン

ヒメ「い、いや…ならいいんだけど、遅かったから」

カロル「ドリンクの種類がいっぱいあったから、どれにしようか迷っちゃって?」ニコニコ

ヒメ「ふーん…ところでおまえ、なんで花束なんか持ってんの?」

カロル「あ、そうそう!さっきの子から預かってきたよ!はい!」つ【花束】

ヒメ「…預かった?」パシッ

カロル「うん。捨てようとしてたみたいだからもったいなくて!」

ヒメ「」ジロッ

カロル「な、なに?」アセアセ

ヒメ「おせっかい焼くな!あんなの相手にしてたらキリがないって言ってるだろ!」

カロル「ち、ちがうよ…。たまたま……」

ヒメ「じゃあなんでドリンクもらいに行ったのに花束しか持ってないんだよ!?」

カロル「あっ…そういえば忘れちゃった?」アハハ

ヒメ「様子がおかしいと思ったら…そういうのを大きなお世話って言うんだからな!?」

カロル「うぅ…」シュン

ヒメ「どうせ悪態つかれて帰ってきたんじゃないのか?」

カロル「っ!」ギクッ

ヒメ「何度も教えたろ!あいつらは身分階級でしかモノを考えられないって!おまえなんかどうやったってバカにされるんだよ!」

カロル「」ウルッ

ヒメ「言っとくけど…オレが普通に接してるのは単に変わり者だからなんだぞ?」

カロル「…」グスッ

ヒメ「…オレがあいつらと関わりたくない理由、少しは分かったろ?」

カロル「うん…」グシッ
388: ◆WEmWDvOgzo:2014/4/13(日) 20:25:03 ID:KyQ3C7cIb6
―――城(回廊)―――

団長「こちらに移動なされていたのなら一声かけていただかねば?
人混みをかき分けても見当たりませんし、探すのに苦労しましたぞ?」

ヒメ「…ああいう場は肌に合わないんだよ」ムスッ

団長「むぅ…しかしですなぁ?
わざわざ挨拶してくださった方々を邪険にしてはなりませぬぞ?
こういった会では社交性を問われます。
先々を見据えておられるなら愛想よく振る舞われた方が身のためかと」

ヒメ「御託はいい。父上はなんと?」

団長「事情は説明しておきました。向こうの扉から出て左手にある個室で待っておられますぞ」

ヒメ「そうか。なら後は任せるぞ」

団長「かしこまりました…」ペコッ

ヒメ「おまえはもう帰っていいぞ」

カロル「え?」

ヒメ「団長、こいつを教会まで送ってやれ」

団長「お待ちを…!陛下の結論はまだ出ておりますまい!」

ヒメ「必要ないさ。なぜならそいつは大臣の持ち物だからな。父上が自由にできるものじゃない」

団長「……!な、なぜそれを!?」

ヒメ「…知ってたのか?」

団長「じ、実は…大臣から捜索依頼が出ておりましてな…。
こやつと一緒にいた宣教師の二人を含め、もとより捕縛する予定でした…」

カロル「!?」
389: ◆WEmWDvOgzo:2014/4/13(日) 20:27:38 ID:ZIBx4oG0hk
団長「すでに女の方は確保しており、男の方も現在捜索中にて…」

ヒメ「…最初から騙してたんだな。
父上を説得出来ても出来なくても関係なかったわけか」

団長「…ご理解いただきたい。ホビットを認めてはならぬのです!
このような罪深き種族に迎合すれば利用されてしまいますぞ!」

ヒメ「…女は釈放してやれ。男の捜索も中止しろ」

団長「は…!?な、なりませぬ!
こやつらは大臣の下に返さねばなりませんし男は強盗を働いたのですぞ!?」

ヒメ「僕にアイスキャンディを振る舞ったから罪は帳消し。
あと二人は大臣が僕にくれると言った。どうしようと僕の自由だ」

団長「理屈が通りませぬぞ…!」

ヒメ「先にズルをしたのはおまえだ?
こっちだって強引な手段に出させてもらうぞ?」

団長「…ワシは貴方の為に言っているのです!失礼ながら貴方はまだ幼い!
これから先、人の上に立つ人間として守らねばならぬことは山ほどある!
ホビットを肯定することはすなわち人間社会に逆説を唱える裏切り行為となるのですぞ!」

ヒメ「……」

カロル「…無理しなくていいよ?王子さまに迷惑がかかるならボク……」

団長「そうです!これらの存在は太古の昔に犯した罪を贖い、ワシら人間に報いる為のもの!
情を寄せるなど以てのほか!どうかお考えを改めてくだされ!」

ヒメ「…昔の事なんか知らないし少なくとも僕はこいつが嫌いになれない」

カロル「……!」パァァ

ヒメ「こいつといると楽しいんだ。
…こいつだけは僕が王族だと知ってても気にしないでくれるしさ」

団長「気の迷いです!こやつは貴方を信じさせようと演じているのですよ!」

ヒメ「…もしそうだとしてもかまわないさ。
僕を利用しようと媚びてくる連中は他にもいるし…いつものことじゃないか」

団長「あ、いや……」グッ
390: ◆WEmWDvOgzo:2014/4/13(日) 20:31:12 ID:KyQ3C7cIb6
カロル「……団長さん、ボクは裏切ったりしないよ?」

団長「…な、なぜそう言い切れるのだ!だいたい貴様らは……」

カロル「だってともだちだもの」ニコッ

団長「!?」

カロル「ともだちはともだちを裏切らない…そうでしょ?」ニコニコ

ヒメ「ふっ…」クスッ

団長「……」

カロル「信じてください!おねがいします!」ペコリ

ヒメ「僕からも頼む。こいつは裏切るようなヤツじゃない」ペコリ

団長「むむっ!…う、うぅ!」ワナワナ

団長「はぁ…致し方ありませんな。貴方にまで頭を下げられてはワシに反対する術はござらん」

ヒメ「…感謝するよ。憲兵を束ねるのがおまえで助かった?」ニコッ

団長「ん、んぅ…おっほん!で、では女は釈放し、ワシがこの童と共に責任を持って教会まで送り届けましょう!」カァァ

カロル「ありがとうございます…!」ニコッ
391: ◆WEmWDvOgzo:2014/4/13(日) 20:32:23 ID:KyQ3C7cIb6
団長「しかし…ワガママも程ほどにしていただきたい!今回に限り、ですからな!?」

ヒメ「誰に口を聞いてるんだ?僕は王子だぞ?」ジロリ

団長「え…あ……」アタフタ

ヒメ「これからもワガママを通し続けるから、将来オレに仕えるならそのつもりでいろ?」ニヤリ

団長「うっ…!な、なんとも堂々と開き直ったものですなぁ!?」

カロル「あはははは!団長さんも大変だね!」クスクス

団長「あぁ!まったくだ!」

ヒメ「なにぃ!?おまえら、オレが即位したらまとめて死刑にしてやるからな!?」

団長「め、滅相もない!?今のは言葉のあやです!」

カロル「ヒメくんったら、ホントはそんなことしないのに?」ニコニコ

ヒメ「名前で呼ぶな!!」ムキーッ

カロル「ヒメくん、ヒメくん、ヒメくーん!」キャッキャッ

ヒメ「あー!絶対死刑だぞ!死刑だ!死刑!」ジダンダ

ギャーギャー

団長「」ニコリ

団長「(ワシの考え方はもはや古いのか…)」
392: ◆WEmWDvOgzo:2014/4/13(日) 20:36:20 ID:KyQ3C7cIb6
〜〜〜〜〜〜

『王子様に…聞いてみればいいでしょう?
それは…はたして罪なのか……どうかを』

〜〜〜〜〜〜

団長「(王子にとっての最善を考え、あれこれややこしく模索し、独断にて手を尽くしてはみたものの…。
肝心要を忘れてしまっていたようだ…)」

団長「(本人の本心を聞かずして何を最善と言えようか…。
心から笑えるのであれば、誰を友人にしてもいいのかもしれん…)」

ヒメ「この無礼者!オレをからかうヤツはこうだ!」グリグリ

カロル「ご、ごめんなさい!ごめんなさい!謝るから頭をグリグリしないで!」イタタタタ

団長「しかし同時に選んだ道はイバラなり…。しからばワシは貴方の行き先を切り開く剣となりましょうぞ」

ヒメ「」ジーッ

カロル「」ジーッ

団長「」ハッ

ヒメ「誰と喋ってるんだ…?」

カロル「団長さんは剣になるの?」

団長「も、ものの例えをつい口に出してしまった…」オホンッ

ヒメ「よく分からないけどいいか…。じゃあ僕は父上のところに行くよ」

カロル「え?もう?」

ヒメ「あまり待たせると話せる時間も減るからな」

カロル「そっか?じゃあボクも帰るよ」

ヒメ「あぁ、またな」スタスタ

カロル「うん!またねー!」フリフリ
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名前:
sage:


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