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カロル「ボクが世界を変えてみせる」
[8] -25 -50 

1: ◆WEmWDvOgzo:2013/11/24(日) 19:26:09 ID:j5u3Ryt06o
前スレ
(少年「ボクが世界を変えてみせる」)
http://llike-2ch.sakura.ne.jp/bbs/test/mread.cgi/2ch5/1356265301/1-50


―――あらすじ―――

人間によるホビットへの差別が当然のように行われる時代
人里を離れ、森の中で静かに暮らしていたホビットの親子がおりました。
母親の名はマリー。子供の名はカロル。
二人はささやかな幸せを願って、穏やかな日々を送っていました。

母は今の生活に満足していました。
もちろん森の中での生活は不自由で贅沢とは無縁なものでしたが多くを望まない母にとっては愛する我が子と生きていけるだけで幸せだったのです。

しかしカロルは違いました。
もちろん愛する母と生きるのに不満はなく、彼自身も多くを望もうとは考えません。
ですが彼にとって一つだけ足りないものがあったのです。
それは友達という存在でした。

幼心に自分たちの置かれた立場は分かっていたつもりでした。
人目を逃れて生きるホビットには仲間もなく、心を通わせる相手を見つけるのはとても難しいと。
それでも小さな身体に宿る希望は膨らむばかりです。


361: ◆WEmWDvOgzo:2014/3/23(日) 21:20:42 ID:b3J50V5QKY
ヒメ「おまえと話すと疲れるな!」プンスカ

カロル「そう?ボクはとっても楽しいな!」ニコニコ

ヒメ「……!お、オレは話術が巧みだからな!わははは!」

カロル「あ、照れてるんだ?」クスッ

ヒメ「はぁ!?」

カロル「ちょっぴり分かってきたんだ?王子さまが自分のこと、オレって言う時は無理してるって?」

ヒメ「してない!!オレはいつも自然体だ!!」ムキーッ

カロル「ふふ!そうかもね?」ニコニコ

ヒメ「…勝手に思ってろ!」

カロル「あはは!ごめんなさい!怒らないで?」

ヒメ「もういい…!それにしてもこんな大事になってはもう城を脱け出せないかもな…。はぁ。帰りたくない」ションボリ

カロル「ボクも…たくさん叱られそうで怖いや」ズーン

団長「そうは参りませんぞ!」

ヒメ「ん?早かったな?もう捕まえてきたのか?」

団長「お待たせして申し訳ない!犯人はすでに取り押さえ、連行致しました!
さぁ王子も城に戻りますぞ!妃様も大層心配しておられますでな!」

ヒメ「はぁ…。行くか」トボトボ

カロル「うん」スタスタ
362: ◆WEmWDvOgzo:2014/3/23(日) 21:23:03 ID:b3J50V5QKY
―――バックヤード(城下町裏通り)―――

団長「なにぃ!?逃げた連中を取り逃がしただとぉ!?」

憲兵1「我々と同様の制服を着用していたものですから…ついうっかり」

憲兵2「通しちゃいました…」

団長「うっかり通しちゃいました…じゃなかろうがぁ!!」ガァーッ

ヒメ「まぁまぁ、それくらいにしてやれ。奴らは僕を拐った犯人とは無関係だ」

団長「し、しかし!怪しいことに代わりはありませんぞ!
こういった事は徹底しませんと民にも示しが付かんのです!」

ヒメ「危ない連中じゃないのは僕が保証する。それでいいだろ?」

団長「何を根拠におっしゃるんです!?」

ヒメ「あれはこいつを助けようとしてただけだ。そうなんだろ?」

カロル「」コクンッ

団長「…なら何故、王子を一緒に救い出さなかったのか説明してもらおうか!?」ギロッ

カロル「え…?」

団長「言えんのか?なんぞ後ろ暗い事でもあるんだな?
いや、待てよ?もしかすれば貴様は最初から犯人とグルで…憲兵に化けていた二人も協力者だったんじゃあるまいな?
そう考えれば辻褄も合うというものよ!
こうしてる今も王子を監視し、仲間に合図を送ってるのであろうが!?」ガミガミ

カロル「あの…よくわかんなくて…」オロオロ

団長「言い淀むとは分かりやすくボロが出たな?決まりだ!
貴様も牢に放り込み、徹底的に追及してやろう!
仲間の居場所も誘拐を命じた黒幕の存在も洗いざらい調査してやるからな!そのつもりでいろ!」ガミガミ

憲兵1「だ、団長…その辺にしておいた方が…?」アセアセ

憲兵2「そうですよー。決めつけはよくないです」

団長「犯人の仲間をみすみす逃した間抜け共はすっこんでいろ!」
363: ◆WEmWDvOgzo:2014/3/23(日) 21:24:55 ID:b3J50V5QKY
カロル「団長さん!落ち着いてください?ボクは王子さまを拐ったりしないですよ?」アセアセ

団長「見苦しい!元はと言えばあんなずさんな計画で王子を拉致するなどおかしいと思ってたんだ!
おそらくは酒場の兄弟が身柄を確保し、憲兵に偽装した二人へ受け渡す予定だったのだろう!
だがなんらかの手違いで裏切り…もしくは別に計画していた組織の邪魔が入ったのだな?」ペラペラ

カロル「そ、そうじゃないんです!」アセアセ

団長「まぁいい?言い訳など街角に群れなす吟遊詩人共の嘯く夢だ愛だの唄ほどに聞き飽きた?
後は本部でじっくり取り調べればいい話だ?
事件の全容を明らかにし、まとめて逮捕した暁には全員を極刑に処してやるぞ!楽しみにしていろ!」ビシィッ

カロル「(どうしよう…?ぜんぜん分かってくれない…)」シュン

憲兵1「団長…その推理はちょっとぶっ飛びすぎてるような…?」

憲兵2「そうですよー。全部疑ってかかってたら事件も解決しませんし家に帰れないじゃないですかー!」

団長「ワシの推理が間違ってると?」ギロッ

憲兵1「いや、おっしゃりたい事は重々承知してますがあんまり事件性に幅を持たせてしまうと解決まで長引きますし…。
まずは捕らえた犯人を追及するとして、そのホビットは一旦置いときませんか?」

憲兵2「自分もそう思います!なにより新婚なんで早く帰って妻の手料理が食べたい!」

団長「…それもそうだな。ではワシは王子を城へ送ってこよう。
お前たちはホビットを連行し次第、犯人の尋問に当たれ!」

憲兵1「はっ!」ピシッ

憲兵2「団長、尋問に人員を割いてもしょうがないですし自分は先に帰宅しても……」

団長「抱える案件は一つではなかろうが?書類の整理を済ましておけ!」

憲兵2「あんまりだ…」グスンッ
364: ◆WEmWDvOgzo:2014/3/23(日) 21:27:12 ID:VTUPJwu2H6
団長「では参りましょうか?」

ヒメ「……」

団長「王子?」

ヒメ「……」

憲兵1「さぁお前も来い!」ガシッ

カロル「ぼ、ボクじゃないったら!」グッ

ヒメ「離してやれ!」

憲兵1「は?離し……」

ヒメ「命令だ。今すぐそいつから手を離せ!」

憲兵1「はっ!」パッ

カロル「……」ホッ

団長「王子!何をお考えに…其奴は貴方を貶めようとですな?」

ヒメ「笑わせるな?おまえの不確かな空論に賛同できると思うか?」

団長「…聞き捨てなりませぬな!これはれっきとした経験に基づく勘であり……」

ヒメ「どんなに経験を積んでも勘は勘だ。そんなの僕が認めない」

団長「む、むむっ!で、ですが主人の手を離れたホビットや野良のホビットの始末はどちらにせよ我々の預かるべき問題であって…!」

ヒメ「そいつは自力で主人の元に帰れる。そうだな?」

カロル「う、うん!帰り道は覚えてるよ?」

ヒメ「よし?じゃあ問題なし!」

団長「大有りではございませんか!罪深いホビットを敢えて野放しにされるなど次期国王としてあるまじき行為ですぞ!?」

ヒメ「あるまじき行為だとしたらどうする?僕を捕らえて裁くのか?」

団長「滅相もございません!将来、貴方様に仕える立場として、その神聖なるおみ足を土で汚さぬよう足場を清らかに保とうと心掛けている次第!」

ヒメ「はぁ…言い回しがややこしくてよく分からないけどなんとなく伝わったよ。
でも何を言われても曲げる気はないからな?」
365: ◆WEmWDvOgzo:2014/3/23(日) 21:40:43 ID:VTUPJwu2H6
団長「どうしても?」

ヒメ「どうしてもだ」

団長「どぉ〜〜〜しても…ですな?」

ヒメ「あぁ」

団長「…申しましたな?」

ヒメ「くどいぞ?」

団長「かしこまりました!では国王に相談していただきましょう!」

ヒメ「なっ…!」

カロル「国王って…王子さまのお父さま?」

団長「…もし国王の許しを得られたならワシも諦めが付くというもの!」ジロッ

カロル「」ビクッ

ヒメ「…本気で言ってるのか?父上は大のホビット嫌いだぞ?」

団長「僭越ながら…貴方はまだ国王ではござらん?
つまりワシ共に命令できる権限をお持ちでないのです!
だが我々は貴方のお望みを最大限に尊重し、叶えたいと存じております。
しからばワシに命令を下せる現国王のお力添えを賜ったらよろしい!」

カロル「王子さま…」オロオロ

ヒメ「…理不尽な正論に織り交ぜて不利な状況を押し付ける。これだから大人は嫌いなんだ」ムスッ

団長「それもこれも全ては貴方様を思ってのこと!
さぁ今度こそ参りましょう?そして見事、父君を説得なされ!」

ヒメ「こいつも城に入れていいのか?」クイッ

カロル「え?ボクもお城に入っていいの!?」パァァ

団長「…いいでしょう?ただし国王が其奴を捕らえよ、もしくは始末せよと申されれば…ワシはためらいなく実行に移しますぞ?」

ヒメ「命と引き換えになりそうだけど…どうする?」

カロル「わーい!お城!お城!お母さまと宣教師さまにも自慢しちゃおっ!」ピョンピョン

ヒメ「…団長、こいつが僕を拐えるほど賢いと思うか?」

団長「オホンッ…ま、まぁ犯人ではないと確信しましたがホビットである以上、罪深いのです!」
366: ◆WEmWDvOgzo:2014/3/30(日) 21:55:53 ID:0HxDtJds0Y
―――城下町(城門前)―――

カロル「大きい門だね!ここから入るの?」ソワソワ

ヒメ「僕らが入るのはこっちの小さい方だ」ビシッ

カロル「なーんだ、ちょっぴり残念かも?」

ヒメ「贅沢言うな?この大きな門は大勢の来客や式典用で普通に出入りする時は小さい方を使うんだよ」

カロル「…大きい門はどうやったら開くの?押したってビクともしないんじゃない?」

ヒメ「屈強な兵士が数十人集まってやっと押し開けるくらいだからな。
外から入る場合は先に知らせて開けっ放しにしておいてもらうんだ。まぁ滅多に使わないけど」

カロル「へぇ…!ボクもこっちから入ってみたいなぁ!」キラキラ

団長「口を慎め、愚か者が!?」

カロル「」ビクッ

団長「ホビットの分際で正門から入りたいだと?
貴様らは城に入れるだけでも奇跡なのだ!ありがたく思え!」

カロル「(神父のおじさまみたい…?)」

団長「城内では静かにするのだぞ。それから靴を脱げ!ホビットに土足でまたがせる敷居はない!」ガミガミ

カロル「はーい…」ヌギヌギ

ヒメ「わざわざ脱がなくても最初会った時みたいにフードで隠せばいいじゃん」

カロル「あ、そっか」ファサッ
367: ◆WEmWDvOgzo:2014/3/30(日) 21:57:50 ID:.zQQ4y5jKw
ヒメ「…そういえば今夜はホールで舞踏会があるんだったな。父上も参加なさってるのか?」

団長「…無論にござる。会が終われば陛下は会食に移られますので機会は今しかないでしょうな」

ヒメ「忙しくしてらっしゃるんだな…。まぁ当然か」

団長「本来でしたら貴方も舞踏会でお客様方に演舞を披露しなければならなかったのですぞ?」ジトー

ヒメ「なんなんだ。そのイベント…ただの辱しめじゃないか」

カロル「今からでも間に合うんじゃない?行ってみようよ!」

ヒメ「バカ言うな!僕は絶対やだからな!?」

団長「…いいかもしれませんな」

ヒメ「えっ」

カロル「ほら!団長さんも言ってるよ?」

団長「こうしてはいられない!中に参りましょう!」ガチャッ

カロル「わーい!王子さまの踊りたのしみー!」ピョンッ

ヒメ「ま、待て…!待てったら…!僕に踊れって言うのか!?」アタフタ

団長「どうされました?入られないので?皆々様も待ちわびておりますぞ?」キョトン

ヒメ「ち、父上を説得するのが先だ!」

カロル「いこ!」パシッ

ヒメ「えっ」グンッ

カロル「」タッタッ

ヒメ「えっえっ」タタッ
368: ◆WEmWDvOgzo:2014/3/30(日) 21:59:16 ID:0HxDtJds0Y
アリアス「……!?」ワナワナ

ダガ「城に入っていきやがったな?どうなってんだ?」

アリアス「何が起こってるのか分からないけれど…確実に良い方向には向いてなさそうね!」

ダガ「せっかく助け出したはいいが、とんだ邪魔が入りやがったからな…」

アリアス「後は戻るだけだったのになんなの…!あの黒装束の男は…!?」

ダガ「ドブネズミのクソガキは知り合いだったらしくてよ。たしか…ウォルターだとか?」

アリアス「…このまま帰れないわよ!」

ダガ「どうすんだよ?」

アリアス「向こうに信者の家があるから、そこで着替えましょ!もうこの服は使えないわよ!」

ダガ「…信者便利だな、おい」

アリアス「えぇ!信仰って大事よ!」ダッ

ダガ「……」ダッ
369: ◆WEmWDvOgzo:2014/3/30(日) 22:00:23 ID:0HxDtJds0Y
―――城(ダンスホール)―――

ララーラーラー トゥルルン シャララン シャンシャンシャン

団長「王子!」キョロキョロ

カロル「王子さまー!」キョロキョロ

給仕「あ、すみません」ドンッ

カロル「わっ」ドフッ

ヒメ「大丈夫か?」

カロル「あ、王子さま!」

団長「どこに行っておられたのですか!」

ヒメ「飲み物をもらってきてやったぞ」スッ

カロル「ありがとう!」パシッ

団長「あぁもう!またそういう事を…ワシに言ってくださればよろしいものを…!」

ヒメ「安心しろ。おまえの分はないから」

団長「」ガーン

カロル「よかったね!まだ王子さまの番来てないって?」

ヒメ「踊らねーよ」イラッ

団長「は、はしたのうございますぞ!」
370: ◆WEmWDvOgzo:2014/3/30(日) 22:04:04 ID:0HxDtJds0Y
ヒメ「それにしても僕が城を抜けたのに何事もないように行われてるんだな」

団長「…貴方がいつも出席なされないからでしょうに!」オホンッ

カロル「…王子さまのお父さまはどこにいるの?」

ヒメ「壇上に仏頂面で座ってるのが父上。その隣で貴婦人達と喋ってるのが母上だ」

カロル「楽しくなさそう?せっかくのパーティーなのに?」

ヒメ「僕らには珍しくもないからな。
おまえみたいなヤツには一生、縁がないだろうけどー?」ニヤニヤ

カロル「うん!でも王子さまのおかげで縁があったよ!入らせてくれてありがとう!」

ヒメ「おもしろいヤツ…」ニコッ

団長「王子、いかが致しましょう?陛下に相談するのは明日にして演舞の披露に…」

ヒメ「しない!早く父上を説得するぞ!」ムキーッ

団長「はぁ…ワシから陛下に掛け合ってみましょう。暫しお待ちを」スタスタ

ヒメ「まったく…なにが演舞だ!くだらない!」プンスカ

カロル「みんな踊ってるよ!ボクもやってみたい!」ウキウキ

ヒメ「なんでだよ!?あんな手繋いで足踏みしてるだけの茶番劇のどこに惹かれたんだよ!?」

???「まぁ?それってあたくし達のこと?失敬だと思わなくて?」

???「思うとも?きっと成り上がりの商家か、名も無い下級貴族の出なんだろう?」

ヒメ「…誰だ、おまえら?他人の話に図々しく割り込んでくるような無礼者を招待した覚えは無いぞ?」ジロッ

???「まぁ?聞いた?無礼者ですって?」

???「聞いたとも?僕らを知らないとも言った?」
371: ◆WEmWDvOgzo:2014/3/30(日) 22:05:46 ID:.zQQ4y5jKw
カロル「知ってる人間?」チョンチョン

ヒメ「全然知らない。誰?」

???「まぁ?なんて世間知らずなの?」

???「あきれた…。華やかなパーティーには相応しくないお子様二人…誰が呼んだのか?」ヤレヤレ

ヒメ「いいから名乗れ。誰もおまえらなんか知らないし?」

???「まぁ?ですってよ?ダーリン?」

???「かわいそうだから教えてあげようか、ハニー?」

ヒメ「……別にどっちでもいいんだぞ?興味ないしさ?」

カロル「」ゴクゴク

カロル「これすっごくおいしい!」パァァ

ヒメ「ほら、こいつなんか興味無さすぎてドリンクの感想言ってるぞ?」

???「」タンッ タタンッ

???「」カカッカッカッ

オォォォォ! ヒューヒュー

ヒメ「…なんだ?」キョロキョロ

カロル「ねぇ!おかわりしていい?」チョンチョン

ヒメ「あぁ、いいぞ。もらってくるよ」スタスタ

???「お待ち!」クルリンパッ

???「ドリンクより素晴らしい…ドリームを見せてあげよう!」ラララー

ヒメ「待たない」スタスタ

「あれは前年のコンテストを総なめにした舞踊家デュオ!!」

「ライオネルとリッチーだ!?」

ヒメ「(誰だよ)」スタスタ
372: ◆WEmWDvOgzo:2014/3/30(日) 22:07:59 ID:0HxDtJds0Y
ライオネル「あたくし達のパフォーマンスに酔いなさい!」タタンッタンッ

リッチー「おぉ!素晴らしい!素晴らしいステップだよ、ハニー!」カカッカッカッ

ライオネル「ダーリンのタップも素敵よ!」タタンッタンッ

ワァァァァァ

ライオネル「ダーリン!」スッ

リッチー「ハニー!」パシッ

グルグルグルグル

カロル「かっこいいー!」パチパチ

ヒューヒュー

ライオネル「フィ・ナーレ!」パッ

リッチー「はっ!」パッ

パチパチ パチパチ

カロル「……!」パチパチ

ライオネル「分かってもらえた?」キリッ

リッチー「二度と知らないとは言わせないよ?」

カロル「ねぇ!ボクにも教えてよ!」

ライオネル「まぁ?さっそく憧れてしまったのね?無理もないけど?」フフーン

リッチー「あの生意気なお坊ちゃんにも感想を聞かないとな?」キョロキョロ

カロル「こうかな?どう?」タンッタンッ

ライオネル「まぁ?たどたどしいタップですこと?
まずフードを取ってごらんなさい?
舞踊は魅せる競技、表情を隠すのはご法度よ?」クスクス

カロル「はーい!」ファサッ

ライオネル「まぁ!?」パチクリ

カロル「……あぁっ!見せちゃいけないんだっ!」ハッ

ライオネル「……」

カロル「(ど、どうしよう…)」アセアセ
373: ◆WEmWDvOgzo:2014/3/30(日) 22:09:44 ID:.zQQ4y5jKw
ライオネル「あなたホビットだったのねぇ?さっきのお坊ちゃんは飼い主なの?」

カロル「え?う、うん!そうなの!」コクコク

ライオネル「まぁ?鎖に繋がれてないのにおとなしいこと?
あたくしの飼ってるシャルドネちゃんなんて未だに逃げ出そうとするのに?」

カロル「飼う…?」

ライオネル「ダーリン!見て、このホビットおとなしいのよ!
躾も必要なさそうだし、さっきのお坊ちゃんから買ってみようかしら?」

リッチー「しょうがないな、ハニーは?
この前に買ったホビットも気に入らなくて折檻してたら死んじゃって…山奥に捨てさせたんじゃなかったっけ?」

ライオネル「だって全然言うこと聞かないんだもの?
このあたくしが自ら鞭を振るってレッスンしても上達しないし、やっぱり野良はダメね?
今飼ってるシャルドネちゃんを売って、この子を飼いましょ?」

カロル「…だ、ダメ!ボクは……」

ヒメ「そいつは売り物じゃないぞ」スタスタ

カロル「王子さま!」

ライオネル「ダーリン…あたくしの聞き間違いかしら?」

リッチー「…王子、って聞こえたよ。ハニー?」

ヒメ「ほら、飲み物」スッ

カロル「ありがとう!」パシッ
374: ◆WEmWDvOgzo:2014/3/30(日) 22:11:43 ID:0HxDtJds0Y
ライオネル「……」ションボリ

リッチー「……」ションボリ

ヒメ「もう気は済んだか?」

ライオネル&リッチー「し、知らなかったとはいえ申し訳ございませんでしたぁぁぁ!!」フカブカ

ヒメ「いいよ。どっか行け」シッシッ

カロル「ちょっと冷たいんじゃない…?」コショコショ

ヒメ「いいんだよ。こいつらの見栄に付き合ってやる義理ないし」

カロル「……?」

ライオネル「ところで…王子ぃ?あたくし達の舞踊、いかがでしたぁ〜?」スリスリ

リッチー「今度のコンテストでも披露するんですが〜?」スリスリ

ヒメ「見てないから知らない」

ライオネル「まぁ!そうでしたの?でしたらもう一曲……」

ヒメ「…カロル!移動するぞ!」パシッ

カロル「え…!」グイッ

リッチー「まぁまぁ!そう邪険にしないでくださいよ〜!
あぁ、そうだ!そういえば今度、僕達が主催のパーティーを予定してるんですが王子にも来ていただけませんか?」

ヒメ「どけ!邪魔!」ドンッ

リッチー「わっと!そ、そんなぁ〜!友人達も喜びますし、心配なさらずとも王子を招くに相応しい身分の客人ばかり……」ヨロッ

ヒメ「……」スタスタ

カロル「お、王子さまぁ」オロオロ
375: ◆WEmWDvOgzo:2014/3/30(日) 22:14:51 ID:0HxDtJds0Y
ヒメ「っ!これだからパーティーは嫌いなんだ!」イライラ

カロル「さっきの人間たち、よかったの?」

ヒメ「あいつらは王子と知り合いっていうブランドが欲しいだけさ!
誘いに乗ったら、勝手に友人ヅラされてほうぼうに妙な噂をばらまかれるんだぞ!?」

カロル「た、大変…なんだね?」ヒクヒク

ヒメ「こういう会には何かと理由を付けて出ないようにしてるし…僕と親しくしてる奴なんか殆どいないからな。
珍しい上に身分の高い僕は自慢だけが生き甲斐のあいつらからしたらいいカモなんだよ」ブツブツ

カロル「へぇ…」

???「これはこれは!王子ではありませんか!」スタスタ

ヒメ「…またか。やっぱり来るんじゃなかった!」イライラ

バルガン「お久しいな!今回も出席を拒まれているものかと?」

カロル「…あぁっ!」ビッ

バルガン「ん?なんだね?人を指差すものでは……おぉ!」

カロル「」ビクッ

バルガン「王子もホビットを飼ってるのですか!よくお父上が許されましたなぁ?」

ヒメ「ちがいますよ。知り合いです」

バルガン「知り合い?これはまた異な事をおっしゃる!」

ヒメ「知っての通り、父上はホビットを毛嫌いしてますから僕が飼う事を良しとしませんよ」
376: ◆WEmWDvOgzo:2014/3/30(日) 22:17:07 ID:.zQQ4y5jKw
バルガン「ほう…それにしても…どこかで見たような……」ジロジロ

カロル「……!」プイッ

バルガン「…気のせいか」

カロル「」ホッ

ヒメ「…どうした?」

カロル「なんでも…ない」

バルガン「あぁ、そうだ!大聖堂で見たホビットによく似ているのだ?」ポンッ

カロル「」ギクッ

バルガン「見れば見るほどによく似ている!これはどこで買われたので?」

ヒメ「買ってません…。城下で知り合った教団の人間が世話してるホビットですから」

バルガン「教団!ほうほう?では…」ゴソゴソ

カロル「……」ヒシッ

ヒメ「なんで後ろに隠れるんだよ…。心配しなくても僕といる限り、誰も手出しできないから平気さ…」ボソボソ

バルガン「あったあった!ホビットよ、これに見覚えはないか?」つ【絵】

カロル「…それ、ボクが描いた絵?」ピクッ

バルガン「」ニヤリ

ヒメ「なぜ貴殿がそのような物を?」

バルガン「フッ…まぁその辺はいいでしょう?」
377: ◆WEmWDvOgzo:2014/3/30(日) 22:19:13 ID:0HxDtJds0Y
カロル「どうして?その絵は宣教師さまにあげたのに…!」

バルガン「私は彼女の知り合いだ。彼女とはある条件付きで契約していたのさ?」

カロル「…けいやくってなに?」

ヒメ「約束事とかじゃないか?」

バルガン「大臣の慰み者となった彼女の命を保障してやる代わりに貴様の居どころを教えてもらうという契約だったが…まさか王子に先を越されていたとは?」

ヒメ「……」

バルガン「とはいえ飼う気はないのでしたな?
それならば教会の方に打診してみるとしよう…」

カロル「ウソだ!」

バルガン「フッ…なんだ?急に大声を出して…」

カロル「宣教師さまはそんな約束しないもん!」

バルガン「……」

カロル「その絵だってあげたりするはずないよ!全部大事にしてるって言ってくれたもの!」

バルガン「ククク!なんとでも言え?私が欲しいのは貴様の画力だけだ?」

カロル「っ…!」

ヒメ「僕の背中越しに会話するなよ…。なんか挟まれてるみたいで気まずいだろ?」

カロル「ご、ごめん…」

バルガン「あの女も命惜しさに貴様を差し出したんだ?
本来ならある催しの報せが届いた時に招待状を廻す手筈だったんだが…事情が変わった?」

「んぅ〜?なにやら大変興味深いお話が聞こえまするな?」

バルガン「……?」

大臣「卿、あなた…今なんて言いましたぁ〜?」ニタニタ

バルガン「…大臣」
378: ◆WEmWDvOgzo:2014/3/30(日) 22:21:45 ID:0HxDtJds0Y
ヒメ「」ペコリ

大臣「おぉ!ご挨拶が遅れましたな!王子が出席されるなど思いもよらず!」ペコリ

ヒメ「…父上に用があっただけですよ」

大臣「聞き及んでおりますぞぉ?最近、お忍びで城下に降りているとか?
そんな余分な手間をかけずとも王子がお望みでしたらわたくし共がご協力差し上げますのにぃ?」ニタニタ

ヒメ「……」

大臣「それはさておき…卿?」

バルガン「……」

大臣「いやはやなんとも!おかしいおかしいとは思ってたんですけどねぇ〜?
貴殿の父であるランベルヤ卿も突然にわたくしとの交流を断ちますし…何がなんやら分からんと頭を悩ませていたのですよぉ〜?」ヘラヘラ

バルガン「フッ…こうなっては仕方ありませんな。正直に申し上げ……」

大臣「いや結構!もう分かってますからぁ〜?」

バルガン「ククク…お恥ずかしい話です」

大臣「本当ですよねぇ!まさかわたくしの屋敷に賊を差し向けたのが貴殿だったなんて!いやはやなんとも!」ケラケラ

バルガン「えぇ、まったくその通り………はい?」キョトン

大臣「あの小娘といつの間にやら手を組んでらしたとは…同じ馬車に乗せるべきではなかった?」

バルガン「そ、それは宛が外れている…!私はこのホビットを…!」

大臣「えぇ、そのホビットも実はわたくしがバックヤードで買い取った奴隷でしてな!
なぜ王子と一緒におられるかは分かりませんがぁ…貴殿がプレゼントしたのですかな?」

バルガン「誤解だ!私は偶然、ここで会ったのです!それ以外のことは存じませんぞ!」アワアワ

大臣「わっはっは!またまたぁ〜?」ニタニタ
379: ◆WEmWDvOgzo:2014/3/30(日) 22:29:37 ID:.zQQ4y5jKw
バルガン「嘘は言ってない!私はただあの女にこのホビットの居どころを教えてもらおうと…!」

大臣「んぅ〜?失礼ですが王子はそのホビットとはどういったご関係で?」

ヒメ「城下で知り合いました。詳しいことは知りません」

大臣「なるほど…奴隷の分際でのうのうと城にまで踏み込むとは図々しいですなぁ?」

カロル「……!」キュッ

大臣「まぁなんにしても卿には後でいろいろ伺いませんとなぁ?
その口でべらべら喋ってしまった以上、わたくしが貴殿の言い訳を聞き入れるかは分かりませんがねぇ〜?」

バルガン「……!」ゾワァッ

大臣「ふん…落ちるところまでとことん落としてやりますかね…。
没落貴族の汚名を背負って親子仲良く塀に収まりなさい?」

バルガン「う…うおぉぉ!違う…違うんだぁ!?」ダッ

タタタッ……

大臣「ランベルヤ卿にもよろしく言っといてください」フリフリ

ヒメ「……」

大臣「あぁ、申し訳ございません!こちらの話でお引き留めしてしまいましたか!」

ヒメ「いえ、お構いなく」

大臣「お詫びと致しましてはなんですが、そのホビットは差し上げます!
観賞用としては値打ちものですので王子に相応しい事でしょう!」

ヒメ「はぁ…」

大臣「では失敬!わたくしは公務が残っておりますので!」スタスタ

ヒメ「……」

カロル「…行ったかな?」ヒョコッ

ヒメ「おまえずっと背中に隠れてたのか?」

カロル「うん」

ヒメ「…なんか分からないけど、たくさんの人間に巻き込まれてるんだな」

カロル「…ボクもよくわかんないんだけどね」

ヒメ「ふーん…」
380: ◆WEmWDvOgzo:2014/4/11(金) 21:55:04 ID:PCuqcoF.KI
女の子1「王子さま。お近づきの印にわたしと踊ってくださらない?」スッ

ヒメ「…ケッコーです」ツーン

女の子2「そうよ!あなたじゃ不相応!王子さまはあたくしと踊るのよ!」

ヒメ「踊りませんけど」

女の子1「きーっ!ブスが横からしゃしゃり出ないでよ!きったないドレスに似合わない髪飾りしてさ!」

女の子2「何から何まで仕立て屋に作らせた他にはない超一流品よ!
あんたこそ、そんな豚みたいな体で王子に誘い掛けちゃってみっともないったらありゃしないわ!?」

ヒメ「うるさいな…。さっきのダンスバカのとこに行けばいいのに」

カロル「パーティーって賑やかで楽しいね!」ルンルン

ヒメ「おまえも父上の説得に失敗したら処刑されるかもしれないのによく呑気でいられるよな…」

カロル「……えっ?そうなの!?」ビクビクゥ

ヒメ「やっぱり話し半分にしか聞いてなかったな?」ジト

カロル「えへへ…お城に入れるって聞いただけでワクワクしちゃって?」テレテレ

ヒメ「……」
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うpろだ
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