前スレ
(少年「ボクが世界を変えてみせる」)
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―――あらすじ―――
人間によるホビットへの差別が当然のように行われる時代
人里を離れ、森の中で静かに暮らしていたホビットの親子がおりました。
母親の名はマリー。子供の名はカロル。
二人はささやかな幸せを願って、穏やかな日々を送っていました。
母は今の生活に満足していました。
もちろん森の中での生活は不自由で贅沢とは無縁なものでしたが多くを望まない母にとっては愛する我が子と生きていけるだけで幸せだったのです。
しかしカロルは違いました。
もちろん愛する母と生きるのに不満はなく、彼自身も多くを望もうとは考えません。
ですが彼にとって一つだけ足りないものがあったのです。
それは友達という存在でした。
幼心に自分たちの置かれた立場は分かっていたつもりでした。
人目を逃れて生きるホビットには仲間もなく、心を通わせる相手を見つけるのはとても難しいと。
それでも小さな身体に宿る希望は膨らむばかりです。
35: ◆WEmWDvOgzo:2013/12/1(日) 22:04:59 ID:x0Da.DhtCQ
アリアス「…で、ですが買った人間が分かったところでどうするのです?」
司祭「うむ…。それほどの金を惜し気もなく出すような人間じゃ。
わしらが手出し出来る身分とは思えんぞ?」
アントリア「なんとかするしかないさ。人生を賭けてまで実現にこぎつけた計画を今さらフイには出来ないだろう?」
司祭「…そ、そうじゃな。わしもお前も僅かな残り火…今を逃せば二度と機会は巡るまい」
アリアス「私が責任を持って調べて参ります!」
アントリア「」サラサラ
アントリア「これを持っていきたまえ」つ【サイン】
アリアス「これは…?」
アントリア「紹介状のような物だ。それを見せれば上流層の人間も無下にはするまいよ?存分に聞き回ってみてくれ?」
アリアス「かしこまりました!」
司祭「何から何まですまんの…」
アントリア「水臭いものだね。僕と君の仲だろう?」
司祭「助かる…。お前と友であって良かったわい」
アントリア「はは。大袈裟だな…」クスリ
36: ◆WEmWDvOgzo:2013/12/1(日) 22:07:11 ID:x0Da.DhtCQ
―――教会(客室)―――
シスター「長旅お疲れ様でした」つ【紅茶】
ダガ「ふ…すまねぇな」カチャ
シスター「お連れ様には薬湯を…よくなるといいですね?」コトン
ダガ「」ズズ
母「げほっ!げほっ!」
ダガ「本部にいた時より明らかに悪くなってやがる。こりゃ長くねぇかもな?」
シスター「まぁ!でしたらお医者様を呼んで参ります!」
ダガ「やめとけ、やめとけ」
シスター「え?ですが……」
ダガ「くたばったらその時さ。別に痛くも痒くもねぇ」
シスター「そうですか…。わざわざ連れておいでになったので大切なのかとばかり…」
ダガ「バカ言え。どぶねずみがくたばって困るのは野良猫くらいのもんだ…。くっくっく!」
シスター「(変な人…)」
37: ◆WEmWDvOgzo:2013/12/1(日) 22:08:23 ID:x0Da.DhtCQ
バンッ!
シスター「」ビクゥッ
ダガ「あぁ?」
アリアス「何をのんきに茶なんか啜ってるの?行くわよ!」
ダガ「行くってどこにだ?」
アリアス「癒しの力が誰の手元に入ったか調べるのよ!」
ダガ「調べるったって、どう調べんだよ…?」
アリアス「私達の足でよ!いいから来なさい!」ガシッ グイッ
ダガ「おうっ!?て、てめぇ何しやがる!?」タタッタッ
アリアス「情報を掴むまでここには戻らないから、そのつもりでいて!」ガチャッ
ダガ「あぁ!?城下だけでどんだけ広いと思ってんだ!一生かかったって情報なんか掴めね……」
バタンッ!
シスター「(なんなの…?)」
母「」ゴホッゴホッ
シスター「はぁ…こんなの押し付けられても困るんだけど」
38: ◆WEmWDvOgzo:2013/12/4(水) 14:33:29 ID:M3wYd3wb5.
―――城下町(ランベルヤ邸)―――
大臣「はい?」
使用人「あいにく主人は不在でして…」
大臣「んぅ〜…事前にお伝えした筈なのですがねぇ」
使用人「申し訳ございません。今夜はどうかお引き取り願います」
大臣「…わたくしがわざわざ?直々に?足を運んだというのにぃ?」
使用人「大変申し訳ございません」ペコリ
大臣「…ちなみにどのような要件でお出かけになったのです?」
使用人「残念ながら申し上げる訳には参りません」
大臣「とどのつまりは居留守か?どういうつもりか知らんが、あまりわたくしを怒らせない方がいいぞ?」
使用人「滅相もございません…!」
大臣「たかだか使用人風情にわたくしの応対を任せるとは…コケにされたもんだ?」ジロジロ
使用人「まことに恐縮でございます…!謹んでお詫び申し上げますので、どうか度重なる非礼をお許しください…!」ペコッ
大臣「ふぅ…!分かりました。今夜はひとまず…おとなしく帰るとしましょう!」イライラ
使用人「」ホッ
大臣「あぁそうだ?言伝てを頼めますか?」
使用人「も、もちろんでございます。私から主人に伝えておきますので」
大臣「では…『次はないぞ。わたくしをコケにしてタダで済むと思うな』」ギロリ
使用人「……!」ゾクッ
大臣「しかとお伝えしましたぞ?」
使用人「」ゴクリ
使用人「か、かしこまりました」
39: ◆WEmWDvOgzo:2013/12/4(水) 14:42:12 ID:M3wYd3wb5.
使用人「はぁ…」
バルガン「体よく断れたか?」
使用人「次はない。コケにしてタダで済むと思うなとの御言葉を頂戴致しました」
バルガン「そうか…。父に遺恨を残してしまったな」
使用人「…私には坊っちゃまの考えが分かりかねます。
旦那様がお気付きになられたらお叱りを受けますよ?」
バルガン「クックッ…父には私が言っておく。お前は余計な事を考えなくていい」
使用人「かしこまりました…」
バルガン「(…これでしばらくは小娘も無事だろう。あとは招待状だが…)」
バルガン「おい」
使用人「はい?」
バルガン「何か催し事の知らせは来てないのか?」
使用人「はぁ…?今朝、お渡しした手紙に無いのでしたら今のところは…」
バルガン「(…知らせが無いなら出しようがない。一体教団と王国で何をやるんだ?)」
40: ◆WEmWDvOgzo:2013/12/4(水) 14:43:39 ID:PFgfnAqhNQ
―――大臣の屋敷―――
大臣「」グビグビ
大臣「ぶふぅ…!」
侍女「代わりをお持ちしますか?」
大臣「…お前は主が何も言わなければ動かんのか?」
侍女「」ビクッ
大臣「役立たずが…!」ビキビキ
侍女「す、すぐに代わりをお持ちします!」アセアセ
大臣「もういい!!」バリンッ
侍女「……!」
大臣「割れたグラスの掃除でもしてろ」スクッ
侍女「……」ブルブル
大臣「」スタスタ
41: ◆WEmWDvOgzo:2013/12/4(水) 14:48:19 ID:PFgfnAqhNQ
―――大臣の屋敷(展示室)―――
剥製「」
大臣「……」
大臣「(ランベルヤめ…!芸術家ごときが忌々しい…!)」
大臣「あぁクソッ!!」ダンッ
大臣「(くぅ…!早く…早くあの小娘を剥製にしたい…!)」
大臣「(静かな眠りに付き…永遠の美となる人形を片手に芳醇な酒の香りを楽しむ…。
これ以上の贅沢がはたしてこの世にあろうか…!?)」
コンコン
大臣「んぅ〜…?」
ギィィ
執事「お楽しみのところ申し訳ございません」
大臣「いいから要件を言え」
執事「はっ…教団の人間が旦那様にお話を伺いたいと訪ねて参りました」
大臣「教団?あの頑固ジジイのか?」
執事「入り口の前に待たせてありますがいかがなさいましょう?」
大臣「追い返せ。こんな真夜中に非常識極まりない」
執事「ではそのように…」
執事「それから別宅の奥様が使いを寄越しまして…金貨100枚ほど用立ててほしいそうです」
大臣「わかった…」
執事「失礼致しました」バタンッ
大臣「(どいつもこいつも…イラつかせる)」
42: ◆WEmWDvOgzo:2013/12/4(水) 15:02:59 ID:M3wYd3wb5.
―――大臣の屋敷(物置小屋)―――
宣教師「」パチクリ
???「」
宣教師「(全身を雑に縛られて猿轡を噛まされ、目隠しまで…)」
宣教師「(背丈からしてまだ幼子でしょうに…なんてむごい…)」
???「ぅ…」モゾモゾ
宣教師「(不安定な体勢を強いられて苦しいのでしょう…)」
宣教師「申し訳ありません…。ほどいてあげたいですが私も同じく身動きが取れないのです」
宣教師「気休めにもならないでしょうが、せめてあなたの為に祈らせてください」
???「……!」グッ
???「」ジタバタ
宣教師「…あ、ちょっと!気持ちは分かりますが、いけませんよ!
そんな事をしても余計に体力を消耗するだけですから!」
???「うぅー!うぅー!」ジタバタ
宣教師「(不用意に声をかけたのはまずかったですね…。かなり興奮させてしまいました…)」
宣教師「…先ほども言いましたが私も身動きが取れません」
???「うぅ〜…!うぅ!」ジタバタ
宣教師「キミも大臣に連れてこられたのでしょう?
…私から大臣に拘束を和らげるよう掛け合ってみますから、もう少し待っていていただけませんか?」
???「」ジタバタ
宣教師「(なんともどかしい…。目の前にいるのに何もしてあげられないなんて…)」
43: ◆WEmWDvOgzo:2013/12/4(水) 15:06:19 ID:M3wYd3wb5.
???「」ジタバタ
宣教師「(何か…なんでもいい。この子にしてあげられる事は……)」
???「」ジタバタ
宣教師「……」
宣教師「…こ…子守唄…とか…いかがでしょうか?」オソルオソル
???「」ピクンッ
宣教師「声をかけるのが精一杯なので…その…」モジモジ
???「」ピタッ
宣教師「…で、では…あの…僭越ながら…」
宣教師「お、おやーすみなさーいー。やーすらーかーにー。
おわかれはーかなしいけれどー。なーかなーいでー」オンチ
???「……」
宣教師「おつきさまーにーまたあしたー。きょうにさようならー。
あーしたーにあえるからー。おやーすみなさーい」オンチ
宣教師「ひはおちてー。ゆめをみてー。またあさがーきてー。
キミをあーたたかくー。むかえにくるよー」ノリノリ
???「……」
宣教師「ど、どうですか?落ち着きましたか?」
???「……」
宣教師「(眠ってくれましたか…。よかった)」ホッ
宣教師「(そういえば今晩は大臣が来ませんね…。まぁ来られても不愉快ですが)」
44: ◆WEmWDvOgzo:2013/12/5(木) 20:17:16 ID:g5WCmxTCbU
〜〜〜朝〜〜〜
―――城下町(広場)―――
アリアス「…―」ヨロヨロ
アリアス「」スタッ
アリアス「はぁ…」
ダガ「」フラフラ
アリアス「……収穫は?」
ダガ「ねぇよ…」ドッカ
アリアス「そう…」
ダガ「お前はどうなんだ?」
アリアス「同じよ…」
ダガ「…どうすんだ。もう朝だぞ」
アリアス「もう一度行くわよ。また昼になったらここで落ち合いましょ」スクッ
ダガ「…こんな時間に誰が起きてんだ。昨日なんざ真夜中に訪ねて追い返されたぞ?」
アリアス「私も似たようなものよ…。居留守をされたり出かけていたり、話を聞かせてもらえたのなんて一握り…」
ダガ「一旦戻って休もうぜ。司祭様もそのくらいは目を瞑るだろう?」
アリアス「つべこべ言わない。あなたは体力だけが取り柄なのだし?」
ダガ「ぶっ殺すぞ…!」イラッ
45: ◆WEmWDvOgzo:2013/12/5(木) 20:19:14 ID:Da6WQ42Ckk
アリアス「少し休んだら……」
「」グイッ
アリアス「…ん?」
ダガ「あ?どうした?」
アリアス「足元に何かいるようね…。目がシバシバしてよく見えないけれど」ゴシゴシ
ダガ「椅子の下に…?物乞いじゃねぇのか?」
アリアス「やめなさいよ。気味の悪い…」
ダガ「俺が見てやるよ」グワッ
マルク「クゥン」グッタリ
ダガ「なんだ、犬じゃねぇか?」
アリアス「犬?」
46: ◆WEmWDvOgzo:2013/12/5(木) 20:20:28 ID:g5WCmxTCbU
マルク「ハッ!ハッ!」ガツガツ!
ダガ「相当腹を空かしてたんだな。ベーコンを口一杯に頬張ってやがるぜ」
アリアス「えぇ。多分ゴイルに手傷を負わされて、何も食べずに1日近く体を休ませていたんでしょ」
マルク「」ムシャムシャ ハグッハフッ
ダガ「ふ…慌てなくていいぞ?テントのオヤジを叩き起こしてやったからな。食いたきゃまだまだ焼かせるぜ?」ナデリ
マルク「」パァァ
テントのオヤジ「(…非常識な奴らだよ、まったく)」ブツクサ
ダガ「ふ…ふ…可愛いなぁ、おい?」ニヤニヤ
アリアス「意外ね。あなたが犬好きだなんて?」
ダガ「ガキの頃に大型犬を飼ってたんでな。でけぇ犬を見ると懐かしくなんだよ…」ニヤニヤ
アリアス「あ、そう…。なんでもいいけれど。そろそろ行きましょ?」
ダガ「おう。オヤジ!無茶言って悪かったな!」
テントのオヤジ「いえいえ、滅相もござんせん!(そう思うならハナから起こすんじゃないよ、まったく)」
マルク「あん!」ペロリ
47: ◆WEmWDvOgzo:2013/12/5(木) 20:22:09 ID:Da6WQ42Ckk
ダガ「……」ジロジロ
アリアス「この靴の匂いをよく嗅いで?これはあなたの飼い主の履いていた靴よ?」つ【靴】
マルク「」クンクン
ダガ「…お前はアホか?」
アリアス「…たとえ一縷の望みでも闇雲に動き回るよりはいいでしょう?
幸い明け方で誰も歩いていない今なら余計な匂いに惑わされる事もないのだし」
ダガ「いよいよヤキが回りやがったな…」
アリアス「忘れてるようだけど、この犬の嗅覚は本物よ?
宣教師の匂いを追って森から遠く離れている大聖堂を目指していたのだから」
ダガ「…まぁ何もねぇよりはマシか」
マルク「」タタタッ
ダガ「ん…おいっ!どこ行くんだ!?」
アリアス「ふふ…!あの犬に付いていきましょう!決して見失わないようになさい!」ダッ
ダガ「ほ、本気か…?しょうがねぇな!」ダッ
48: ◆WEmWDvOgzo:2013/12/5(木) 20:23:39 ID:Da6WQ42Ckk
マルク「わんっ!わんっ!」ハッハッ
ダガ「お、おい…ここなの…か?」ヒクヒク
アリアス「みたいね…」
ダガ「みたいねってお前…ここは確か…」
アリアス「知っているの?」
ダガ「昨日ここにも来たんだ…。追い返されちまったがな…」
ダガ「ここは…大臣の屋敷だ」
アリアス「……!司祭様達に報告するわよ!」
ダガ「おう…」
マルク「」ガリガリ
ダガ「おい!門を引っ掻くな!」
アリアス「……」
アリアス「(またややこしくなりそうね…)」
49: ◆WEmWDvOgzo:2013/12/5(木) 20:27:24 ID:g5WCmxTCbU
―――城下町(教会)―――
司祭「…よりによって大臣に買われておったか!」
アリアス「おそらくですが…その可能性が高いかと」
アントリア「そんな気はしていたよ。大臣ならホビット一匹に200枚もの金貨を使ってもおかしくはない」
司祭「民から搾取した税で何をしとるんじゃ!あの豚は!?」
アリアス「まだ直接見た訳ではないので確かではありませんが…」
アントリア「とりあえずの目星は付いたのだから十分な収穫だよ。
ちょうどいい時間を見計らって僕が城に赴いて問い合わせてみよう」
司祭「ふん!わしも一緒に乗り込んで取り返してやるわい!!」
アントリア「いや、君はいい。話をこじらせそうだ」
司祭「な、なんじゃと!?」
アントリア「まだ大臣の手元にあると決まった訳じゃない。取り返すなんて意気込みで付いて来られても迷惑なのだよ」
司祭「め、迷惑…!?」
アントリア「まずは僕に任せておくれ。いいね?」
司祭「くっ…!」ギリッ
アリアス「私も異論はありません」
司祭「なっ…!?」クルッ
アントリア「決まりだ。…さて、出かける支度をしないとな」パッパッ
司祭「ぬぅぅ…!」ギリギリ
50: ◆WEmWDvOgzo:2013/12/5(木) 20:31:03 ID:Da6WQ42Ckk
―――城(応接間)―――
ガチャッ
大臣「お待たせしましたな」バタンッ
アントリア「忙しい中、申し訳ないね?」
大臣「えぇ、まったくですよ」ニンマリ
アントリア「……」
大臣「いやいや冗談ですとも?どうか気分を害されないよう…?」ニヤニヤ
アントリア「いえ、突然押し掛けてしまったのだから当然でしょう」
大臣「それもそうですな。ご用件を伺いましょうか?」
51: ◆WEmWDvOgzo:2013/12/5(木) 20:32:35 ID:Da6WQ42Ckk
アントリア「例の件はどうなったのだね?」
大臣「あぁ、その件でしたらご心配なく。順調に進んでますよ」
アントリア「知らせが届きませんが?」
大臣「……他の高官からは好感触を得られたのですが、肝心の国王が渋っておられましてな」
アントリア「やはり大樹を使うのは快く思われませんか?」
大臣「それだけならまだしもホビットを使った興行というのが気に食わないようで…」
大臣「『わざわざ訳の分からんショーをやるなら、見せしめに貴様らの飼ってる奴隷でも処刑したらいい。
広場でも時計塔の下でも手頃な場所を好きに使え』と手厳しい言われようで…」タハハ
アントリア「…あれだけの見栄を切ってくださった大臣のお言葉とは思えませんね?」
大臣「まぁまぁそう焦らず?最後はどうせ多数派に分がある。そういうもんです」
アントリア「…頼みますよ?」
大臣「……ところで」
アントリア「…なにか?」
大臣「神官…あなた何か隠してないですよねぇ?」
アントリア「なんのことかね?」
大臣「確かに税の底上げをせずに金を手に出来るなら、これ以上に望ましい事はありませんが…。
それにしても神官と司祭殿の積極さは…やや異常に思えてなりませんな?」
アントリア「税はあくまで民のより良い暮らしを保証する為の物。
貴殿のように異なる使い道をする者の為に無闇に上げたくはないのですよ」
大臣「ほほう?はっきり言ってくれますな?」
アントリア「不信感を晴らすには包み隠さず申し上げるしかない。違いますか?」
大臣「いや…違いない」ニヤリ
52: ◆WEmWDvOgzo:2013/12/5(木) 20:36:51 ID:g5WCmxTCbU
アントリア「ご心配には及びません。杞憂に終わりますよ」
大臣「分かりましたよ…。話はそれだけで?」
アントリア「あぁ、もう一つだけ」
大臣「んぅ〜?」
アントリア「宣教師君の様子はどうかね?」
大臣「……?」
アントリア「知らぬ仲でも無いのでね。出来れば一目会ってみたいんだが」
大臣「……」
アントリア「不都合がおありか?」
大臣「構いませんが…見てもいい気分はしませんぞぉ〜…?」
アントリア「ふっふっ。他意はないよ。彼女がどのように飼われてるのか…老いぼれの好奇心だ」クスクス
大臣「はぁ…?では後程使いの者を寄越しますよ」
アントリア「ご配慮、痛み入ります」
53: 名無しさん@読者の声:2013/12/6(金) 23:34:43 ID:CDKJ6otbR6
2スレ目突入おめでとう
宣教師様…(;_;)
っC
54: ◆WEmWDvOgzo:2013/12/8(日) 20:45:05 ID:VfeFjrjJI6
〜〜〜夜〜〜〜
―――大臣の屋敷(中庭)―――
アントリア「無理を言ってすまなかったね?」スタスタ
大臣「いえいえ、一向に構いませんよ。
ちなみにお食事は摂っていかれましたかな?なんなら用意させますが?」スタスタ
アントリア「ありがたい申し出だが…歳を取ると食が細くなるものでね。
一日に一食、腹に納めておけば不自由はしませんよ」キョロキョロ
大臣「そうですか?神官はお歳よりかなり若く見えますがね?」
アントリア「取り繕っているだけですよ。中身はとうに腐りかけてます」
大臣「わっはっは!そう卑下なさらず!もっと自信をお持ちにならねば?」
アントリア「そうですかね…」チラッ
大臣「おっと、着きましたぞ。この物置小屋がそうです!」
アントリア「大臣自らご案内いただけて恐縮です」
大臣「いやいや、立場は違えど我々王国の繁栄に尽力してくださる神官の頼みとあらば安いものです」ガチャガチャ
アントリア「("我々"王国の繁栄ときたか…)」
大臣「っと…開きましたぞ。どうぞ?」
アントリア「失礼するよ」グッ
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