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カロル「ボクが世界を変えてみせる」
[8] -25 -50 

1: ◆WEmWDvOgzo:2013/11/24(日) 19:26:09 ID:j5u3Ryt06o
前スレ
(少年「ボクが世界を変えてみせる」)
http://llike-2ch.sakura.ne.jp/bbs/test/mread.cgi/2ch5/1356265301/1-50


―――あらすじ―――

人間によるホビットへの差別が当然のように行われる時代
人里を離れ、森の中で静かに暮らしていたホビットの親子がおりました。
母親の名はマリー。子供の名はカロル。
二人はささやかな幸せを願って、穏やかな日々を送っていました。

母は今の生活に満足していました。
もちろん森の中での生活は不自由で贅沢とは無縁なものでしたが多くを望まない母にとっては愛する我が子と生きていけるだけで幸せだったのです。

しかしカロルは違いました。
もちろん愛する母と生きるのに不満はなく、彼自身も多くを望もうとは考えません。
ですが彼にとって一つだけ足りないものがあったのです。
それは友達という存在でした。

幼心に自分たちの置かれた立場は分かっていたつもりでした。
人目を逃れて生きるホビットには仲間もなく、心を通わせる相手を見つけるのはとても難しいと。
それでも小さな身体に宿る希望は膨らむばかりです。


221: ◆WEmWDvOgzo:2014/1/27(月) 17:50:04 ID:zefuhseCio
アントリア「時に君はもしも差別が無かったら…と考えたことはあるかな?」

カロル「う、うん。ある…よ」コクリ

宣教師「ない訳がないでしょう。差別を促しておいて…」

司祭「しからば無くしてしまえばええわい」

宣教師「!?」

母「そんなこと…できっこないわ!出来てたら…こんなことにはならなかった…!」ダンッ

アントリア「まぁ落ち着きたまえ。可能だよ?癒しの力にはそれだけの可能性がある」

母「…傷を治せるだけでしょう!?他に何があるのよ!?」

アントリア「傷を治せるだけじゃない。あらゆる生命を癒す力だ」

カロル「……?」

アントリア「その為にも大樹を復活させてほしい。君にしかできないことなのだ」

カロル「(差別が…無くなる?)」

カロル「もし…そうなったら」ボソリ

宣教師「本当に無くなるのでしたら、ですがね」

カロル「……」
222: ◆WEmWDvOgzo:2014/1/27(月) 17:55:51 ID:YVcGscXd6c
カロル「ボクが差別をなくす…。そんなことができるんですか?」

司祭「そうじゃとも?わしらもそれを願っておる」

アントリア「君が大勢の民衆の前で力を証明すれば間違いなく見方は変わる。
ホビットは再び人間と共存する道を歩めると、僕はそう信じている」

カロル「」ドクンッ

宣教師「はたしてそう都合よく事が収まるでしょうか?」

司祭「む…?」

宣教師「差別の起源はホビットが癒しの力を盗んだとされるからです。
民衆の前で力を使えば、すなわち癒しの力を盗んだ証明になってしまうのでは?」

司祭「くっ…!?」ギリッ

カロル「…?」

宣教師「彼は少し人を疑わなすぎます。
ですが…私がいる限り、あなた達の思惑通りにはさせません」

アントリア「…なんにせよ、答えは一つしかないと思うがね」

母「……」

アントリア「宣教師くんはともかくとしてホビットの二人は一生、後悔するんじゃないだろうか…?
今回のショーで集められたホビットは200を越える…。
つまりは200の同族が蹂躙され、虐げられて人間の見世物にされるのだ。
それでも痛む心を持たないのなら、好きにするといい」

カロル「っ」ズキンッ

宣教師「最終的には脅しですか…。あなた達はいつもそうですね」

アントリア「脅しと取るのならそれも構わないが…我々にしてみれば一世一代の賭けなのだよ。
多少の無理は承知の上で協力願いたい。君たちも恐れるばかりじゃなく、たった一度の機会に賭けたらどうだね?」

母「…あたし達の意思なんて関係ないのね」

司祭「……同族すら見放し、ぬくぬくと生活するのがお前さんらの意思か?」

母「っ…!あなた達が勝手に仕組んだんじゃない!?」
223: ◆WEmWDvOgzo:2014/1/27(月) 17:59:38 ID:zefuhseCio
司祭「ほっほっほ!賽は投げられたんじゃよ。あとはお前さんらが承知すればいいのじゃ」

アントリア「ノワール。その言い方ではあまりにも無慈悲だよ。
あくまでもこれは交渉であって我々は頼んでいるだけだ。命令してる訳じゃない」

宣教師「……」

母「宣教師様…!」

宣教師「こればかりは…なんとも言えません」

母「…で、でも!ショーなんて本当に行われるかどうかだって……」

宣教師「…神官が王国の高官に打診していたのを目の前で見てます。残念ですが……」

母「……イヤ!あたしは絶対にイヤよ!」

カロル「……」

宣教師「……」

母「なんで坊やなの…!ホビットは他にもいるじゃない!?」

アントリア「ホビットなら、ね。だが我々が手を借りたいのは癒しの力を持ったホビットだ」

母「癒しの力ってなんなのよ!同族からも聞いたことがないのに…なんでそんな力が坊やにあるの!?」

アントリア「いや、君たちは知ってた筈だよ…。アピシナの樹がおとぎ話として残っていたのだから」

母「あんなの…!全然関係ないわよ!だってあれは樹を育てるだけの話で…!」

アントリア「そのおとぎ話の中では人間がアピシナを樹から追い払い、自分で世話をしようとした描写がなかったかね?」

母「それがどうしたって言うのよ!?」

アントリア「しかし人間が世話をした途端に樹は枯れてしまった…とされている」

母「……そんなのどうだっていいでしょ!?」

アントリア「おかしいじゃないか?なぜ人間はアピシナに教えられた通りに手入れしたのに…樹は枯れてしまったのか」

母「……?」

アントリア「そこに答えはあった。アピシナは癒しの力を使って樹の世話をしていたのだ」

母「それだけで癒しの力があるなんて…考えられないわ」

アントリア「だろうね?でも我々は確信を持ったよ。
古文書の内容とそのおとぎ話の流れは一致してたのでね」

母「…なんなんです?古文書って…」
224: ◆WEmWDvOgzo:2014/1/27(月) 18:05:01 ID:YVcGscXd6c
司祭「当時、わしらが学者として王国に仕えていた際に残っていた書物じゃよ。
最初は古代文字で暗号化されておった為に解読するのに時間を費やしたがな」

アントリア「その内容は実に夢のあるものだった。まだ若かった僕たちは胸が躍ったよ」

宣教師「…内容とは?」

アントリア「…限られたホビットが持つ癒しの力を特定の樹に注ぐ事で天に伸びる大樹が生まれるという内容さ」

宣教師「大樹が天に伸びて何か起こるんですか?」

アントリア「……さぁ?何も起こらないんじゃないかな?」

宣教師「えっ」

アントリア「それはそうだろう?樹が成長を遂げて天変地異が起こるとでも言うのかね?」

宣教師「いえ…ですが」

アントリア「前にも話したと思うがね?
僕とノワールは悲惨な時代に生まれ育ったのだよ…。
一欠片の夢を見ることも敵わなかったのだ。
そんな時代を生き抜いた人間にしてみればこれ程、好奇心をそそられる話はない!」

司祭「うむ…。癒しの力を注いで大樹が天へと昇るサマは神々しいじゃろう。
人々の荒んだ心も浄化されるに違いないわい」ウンウン

宣教師「…その夢がなぜ差別に繋がったのです?」

司祭「うむ、この伝承を当時の高官に伝えたんじゃが…な」

アントリア「…戦争を止める口実になると内容を改竄され、大々的に広められてしまったのさ。
信心深い国々を手玉に取り、その国々と同盟を結ぶ事で刃向かう国を一つずつ潰し、今の王国が形作られた…」

司祭「そしてわしは王国が立ち上げた教団の長に任ぜられ、ホビットへの差別を促すように仕組まれたんじゃ」

宣教師「それは知ってましたが…他にやりようはなかったのですか?」

母「そうよ!そんなくだらない事の為にあたし達は…!」

カロル「へぇ…」
225: ◆WEmWDvOgzo:2014/1/27(月) 18:14:38 ID:zefuhseCio
アントリア「幸いにも王国は癒しの力なんて存在しないと思ってる。目の当たりにさせ、歪んだ意識を覚まさせたいのだ」

母「バカみたい…。全部、人間が勝手にした事じゃない!坊や、はっきり言ってあげましょう?」

カロル「うん」

司祭「こ、断ると言うのか!何度も言うがお前さんらの同族にも関わる……」

カロル「やる!」

母「そうそう。やるのよ……ん?」キョトン

カロル「二人の夢、ボクが叶えるよ!」

ドンガラガッシャーン!!

カロル「わあっ!?」ビクッ

母「ぼ…ぼう…や?」ピクピク

宣教師「大丈夫ですか!?食器の破片が刺さってるといけません!すぐに手当てを…!」ガバッ

カロル「お、お母さま…平気?」オロオロ

司祭「小僧、今の言葉に嘘はなかろうな?」

カロル「え……うん。いいよ?悪いことしたかったんじゃなくて夢を叶えたかっただけなんでしょ?」

宣教師「ま、まだそうと決まった訳では…話などいくらでも作れるのですし」

カロル「心配しないで!もし危なくなってもボクが二人を守るから!」エッヘン

宣教師「!」キュンッ

宣教師「き、キミは…!もう好きにすればいいでしょう!?」

司祭「そうか、そうか…。感謝するぞ」ニヤリ

カロル「それに…差別が無くなるかもしれないんですよね?」

アントリア「そうだね。必ずとはいかないが…大いにありえるよ?」

カロル「…頑張らなくちゃ!」グッ

アントリア「僕からも感謝するよ。ありがとう?」スッ

カロル「どういたしまして!」パシッ ギュッ

母「」ハラホロヒレハレー

宣教師「あぁ…お母様!しっかり…!」アタフタ
226: ◆WEmWDvOgzo:2014/2/2(日) 22:07:52 ID://Pq5MFqdI
―――城―――
大臣「ふぅ〜…」コキッ コキッ

「」コトン

大臣「んぅ〜?」チラッ

侍女2「どうぞ、ハバム地方から取り寄せたガーデンハーブです」ニコリ

大臣「ほぉ〜!気が利きますなぁ!ちょうど一息入れたいと思っていたのですよ!」

侍女2「いえ、下使えとして当然の配慮ですわ?」

大臣「いや、前の役立たずな侍女とは大違いだ」ゴクゴク

侍女2「」ニコニコ

大臣「んむ、うまい!香り高い茶葉の風味に芯まで癒されますなぁ」

侍女2「ウフフ…」ペコリ

大臣「では改めて公務に勤しむとしますかな!」

侍女2「その書類、全てに捺印を?」

大臣「えぇ、えぇ。承認待ちの案件が無数にあるものでねぇ」ポンッ

侍女2「はぁ…たくさん?手が疲れてしまいますわね?」

大臣「なんならやってみますか?」

侍女2「え…でも…わたし選別なんてできませんわよ?」

大臣「構いませんぞぉ?どうせ内容なんて見てませんから?」

侍女2「見ない…?」

大臣「一つ一つ丁寧に目を通してたらいつまで経っても終わらんでしょう?
だからこうして、と!ポンポン押してく訳ですな」ポンッ ポンッ

侍女2「そ、それって…まずいんじゃ?」

大臣「いいんですよぉ。都合が悪くなれば後でいくらでも認可取り消しすればいいんですからぁ?わたくしにはその権限があります」

侍女2「…で、ではなぜわざわざ捺印を?」

大臣「んぅ〜?それはまぁ…勝手に何か始められては困りますしねぇ。
儀礼的な手続きと言えど、きちんとお伺いを立ててもらわない事にはどうにもなりません。
言うなれば国の動きを監督し、取り締まる立場上の義務ですよ」

侍女2「…へぇ。難しいんですね」
227: ◆WEmWDvOgzo:2014/2/2(日) 22:10:07 ID:ElWhNBG81s
コンコン コンコン

大臣「ですからね、わたくしが持つ、この特別な捺印を押していただければいいのですよぉ?
ほれ、こっちへおいでなさい?わたくし自ら手解きして差し上げますからぁ?ねぇ?」グイッ

侍女2「きゃっ!で、でも…旦那様が押さないといけないんじゃ…!」グッ

大臣「誰だっていいんですよぉ〜!こんな作業、人の目に付く訳でもなし!ほら、お手を拝借!」モミッ

侍女2「あっ!い、いけないですわ…!そ、そこは…!」ビクッ

大臣「おやおやぁ?たわわに膨らみ、柔らかな感触…手を拝借したつもりがいやはやなんとも!」モミモミ

侍女2「んっ…あっ…こ、公務は…!?」ピクンッ

大臣「おぉっと!こぉれはいけませんなぁ!わたくしとしたことが!
しかしこの感触はなかなかに捨てがたく、侮れんものがありまするな…!」モミモミ

侍女2「っ…んぅ!だ、旦那様が…なさりたいんでしたら、わたしと致しましても…や、やぶさかでは?」ニヤリ

大臣「ほぉう…それはそれは実に興味深いお話…!続きは是非ともあなたのお身体にお聞きしたい!」レロォーン

侍女2「あんっ」クスッ

ガチャッ

大臣「よしよし、あなたのソコも承認待ちのようだ?しっかりと捺印を押して差し上げねば!」ググッ

侍女2「あぁん!旦那様の認可をくださいましっ!」

団長「失礼。お伺いしたいことが……」

大臣「おわぁっ!?」ビクッ

侍女2「きゃあっ!?」ビクッ

団長「お取り込みでしたか。申し訳ない」
228: ◆WEmWDvOgzo:2014/2/2(日) 22:14:39 ID:ElWhNBG81s
大臣「し、失敬な!の、の、ノックぐらいしたらどうだ!?」アタフタ

団長「ノックしたのですが…まさか公務の最中にお楽しみとは存じませんでな?」

大臣「だ、黙らっしゃい!」

団長「すまないがお嬢さんは席を外してもらえるか?」

侍女2「」タタタッ バタンッ

団長「……」

大臣「なんの用です!要件を言いなさい!わたくしは忙しいのですぞ!」

団長「昨夜の件ですが…とりあえず手配書の見本が完成したのでご確認願おうかと」つ【手配書】

大臣「んぅ〜?」マジマジ

団長「現場の証言が得られなかったので拐われた二人の情報しか載せられませんでしたが…本当に生き残りはいなかったのですか?」

大臣「そりゃそうでしょう。あんな猟奇的な手口を平然と行える人間が目撃者を生かす訳がない」

団長「確かに切り口から見るにためらいの無さが伺えるが…どうにも執事の死だけが不自然に思えまして」

大臣「んむ、人相書きもよく出来てる…。なにが不自然なんです?」

団長「…なぜ執事だけが舌を切られて、全身をメッタ刺しにされてるのか。衛兵たちは皆、一撃で絶命たらしめているのに」

大臣「はて…気まぐれでは?」

団長「…はたして犯人の仕業なのかも甚だ疑問でしてな?」ジロッ

大臣「はぁぁい〜?」

団長「いえ…失言でした」

大臣「一体なにをおっしゃってるんです?わたくしが処分したとでも?バッカバカしぃい!」

団長「…では引き続き調査に当たりますが、手配書の内容はこれでよろしいか?」

大臣「えぇ。特に問題点はありませんぞ」

団長「ではワシはこれで失礼します」ペコリ

大臣「次からは時と場合を考えて入ってくださいよぉ?わたくしもまぁ…色々とありますからな」

団長「心得ておきましょう」
229: ◆WEmWDvOgzo:2014/2/2(日) 22:20:42 ID://Pq5MFqdI
―――城(通路)―――

団長「」スタスタ

団長「(ふん。公務の最中に情事に耽るとは、な。拐われた二人の替えをもう見つけたらしい)」

団長「(あんなケダモノ連中に囲まれれば…王子が投げやりになるのも無理はない)」

団長「(しかしこの人相書き……)」

団長「(王子の面倒を見てくれた彼らに似ている…)」

団長「部下が彼らを取り調べたんだったな…。後で調書を確認してみるか」

団長「…無関係であってほしいが」

団長「もし…そうであった時は消えてもらうしかない」

団長「(これ以上、王子が悲しみに囚われない為にも…)」
230: ◆WEmWDvOgzo:2014/2/3(月) 21:23:46 ID:ss79KI2Bic
―――教会(客室1)―――

母「」ムスッ

カロル「お、お母さま…怒ってるの?」オロオロ

母「べつに!怒ってなんかないわ!」プクー

カロル「……」シュン

宣教師「(き、気まずい)」

マルク「くぅん…」

母「……」

宣教師「ご、ご加減はいかがですか?」

母「宣教師様が手当てしてくださった甲斐あって大きなケガにならずに済みました」ニコッ

宣教師「そ、それはよかったです!ね!カロルくん?」

カロル「う、うん。よかった!」

母「……」プイッ

カロル「あっ……」ガーン
231: ◆WEmWDvOgzo:2014/2/3(月) 21:27:20 ID:j5u3Ryt06o
母「マルクー!こっち来て一緒に寝ましょ?」ヒョイッ

マルク「わんっ!?」チラッ

カロル「ぼ、ボクも…」オズオズ

母「マルクとあたしでベッドはいっぱいよ?」

カロル「うぅ…」

マルク「あぅん…」

カロル「マルク〜!ボクと替わってよ!」

マルク「あんっ!」コクン

母「マルクー?」ダキッ

マルク「わんっ!?」ジタバタ

宣教師「あ、あの…マルクくんも困ってますし、そろそろ仲直りされては…?」

マルク「わふんっ!」コクコク

母「ケンカなんてしてませんけど?」

宣教師「そ、そうですよねー…。あ、あはは…」ヒクヒク

カロル「うぅ……」ウルウル

宣教師「(すみません、私ではどうにもできないです…)」
232: ◆WEmWDvOgzo:2014/2/3(月) 21:33:27 ID:j5u3Ryt06o
母「んぅ…マルクはふかふかしてあったかいわねぇ」ギュッ

マルク「クゥーン…」ウトウト


カロル「」グスンッ

宣教師「泣かない、泣かない。男の子なんですから」ポンポン

カロル「…泣いてない、です」グシグシ

宣教師「こっちのベッドもマルクくんには及びませんがふかふかで暖かいでしょう?」ファサッ

カロル「うん…。宣教師さまは寝ないの…?」

宣教師「おや、一人では寝れませんか?」

カロル「…久しぶりにお母さまと寝れると思ったんだもの。寂しいよ…」

宣教師「私はお母さまの代わりという訳ですか…」ガクッ

カロル「えっ?ち、ちがうよ!そうじゃなくて…!」アタフタ

宣教師「ふふ。冗談ですよ?」ニコッ

カロル「あっ…えと…よかった…。宣教師さまにも嫌われちゃったらひとりぼっちだもん」

宣教師「お母様もキミが嫌いになったんじゃありませんよ。きっと理由があるんです」

カロル「……そうだよね。お母さまがあんなに怒ったの、初めてかも」

宣教師「それはそれとして…じゃんっ!」つ【絵本】

カロル「えっ」

宣教師「絵本、読んであげる約束でしたよね?」ニコリ

カロル「覚えててくれたの…?」パァァ

宣教師「忘れたりしませんよ。約束からだいぶ時間が空いてしまいましたけどね?」

カロル「えへへ。うれしい」テレテレ

宣教師「…では読みますよ?」ニコニコ
233: ◆WEmWDvOgzo:2014/2/3(月) 21:35:07 ID:j5u3Ryt06o
宣教師「……かくしてウサギさんはおいしいお餅を月に持ち帰りましたとさ。めでたしめでたし」

宣教師「……」パタンッ

カロル「くぅ…くぅ…」スヤスヤ

宣教師「…すっかり夢の中ですね」ニコニコ

母「…寝かし付けてくれてありがとうございます」スッ

宣教師「おや?起きてたんですか?」クルッ

母「えぇ。ちょっぴりやりすぎちゃったかと思って心配で…」

宣教師「やはり演技でしたか」

母「この子ったら何も考えずに頷くんで…お灸を据えてみたんです」ニコッ

宣教師「…どうでしょう?彼なりに考えがあるのかもしれませんよ?」

母「ホントにそう思います?」

宣教師「……すみません。正直、分からないです」

母「でしょう?最近の坊やはあたしにもよく分からない時がありますもの」

宣教師「性格に似合わず頑固なところがありますよね。昔からそうだったんですか?」

母「うーん…好奇心の強い子ではありましたけど、あたしやお父様に叱られたら、すぐに納得してくれる聞き分けのいい子でしたよ?」

宣教師「まぁ14歳といえば成長の過程で多くの壁にぶつかる時期ですし、口に出さないだけで様々な悩みを抱えているのかもしれません。
それが無意識のうちに出て…やんわりと反抗するようになっているのでは?」

母「反抗とはまた違うような気がしますけどねぇ」

宣教師「…そうですね。なんというか……」

カロル「」スヤスヤ

宣教師「自由に生きようとしてますよね。カロルくんって」

母「そうね。同族にしてみたら考えられないくらい…自分の気持ちに正直だわ?」

宣教師「ホビットであると同時に人の血が通ってる彼だからこそ…物怖じせずに踏み込めるのかもしれませんね」

母「そうねぇ…。この短い間に怖い思いもしたし、辛い経験もたくさんしたのに……」

宣教師「……ふしぎですね」

母「……ホント、ふしぎですわね」
234: ◆WEmWDvOgzo:2014/2/3(月) 21:42:15 ID:j5u3Ryt06o
宣教師「まだ目的の日取りも教えられてないですが、このまま司祭たちに付いていくおつもりですか?」

母「出来ることなら…逃げてしまいたいけど」

宣教師「私はお母様の意思を尊重します。彼は物事を推し量るには…まだ幼いですから」

母「さっきから…ずっと考えてたの。無理にでも連れて逃げようかしらって」

宣教師「…いいと思いますよ。それでも」

母「ううん…ダメね。それってアントリアさんが言ってたみたいに…あたしだけが幸せになる考えだもの」

宣教師「…神官の言葉もあまり真に受けない方がいいかもしれませんよ?
実際はどのような企みがあるか、分かったものではありませんしね」

母「…それでも同族を見捨てたら、この子は一生を後ろめたく生きることになるわ」

宣教師「…前向きに過ごすには重たい枷になるでしょうね」

母「あたしはいずれ先に死んでしまうけど、この子は未来を生きなきゃならないもの。
余計なモノを背負わせたくはないの…」

宣教師「……」

母「親が子供を守るって…そういうのもひっくるめてだと思ったんです。
子供が一人で生きていくことになった時に何もしてあげられないから…それまでに出来る限りのことをしてあげなきゃ」

宣教師「……」

母「…なーんて。こんな風に考えるのも相手方の思うつぼなのかもしれないけど」

宣教師「先ほども言いましたが…私はあなたの意思を尊重しますよ。後悔のないようにしましょう?」ニコッ

母「ふふ…ありがとうございます?」ニコッ

宣教師「…さて、私もそろそろ寝ますね」スッ

母「えぇ。おやすみなさい」ニコニコ

宣教師「おやすみなさい」クスリ
235: ◆WEmWDvOgzo:2014/2/9(日) 15:49:26 ID:CFz6aP7Usc
〜〜〜〜朝〜〜〜〜

―――教会(客室1)―――

母「着替えまで用意してくださって、ご丁寧にどうも…」ペコリ

シスター「神官のお言いつけですからね。よくお似合いですよ!」ニコニコ

母「そ、そうですか?まさか教団の修道服を着る日がくるとは思いませんでしたけど…」キチッ

シスター「ホントにお綺麗ですよ。肌が透き通りそうなほどに真っ白なので白い修道服が自然に馴染みますし、青いお花の刺繍がよく栄えます!」

母「まぁ…?お若いのにずいぶんお上手ですのね?」クスッ

シスター「いやいや、お世辞抜きで綺麗ですよ?私なんて細かい事ばっかりしてますから肌荒れがひどいですし…」

母「そんなことありませんよ。あたしなんてとっくにおばさんですもの。若くて瑞々しいあなたが羨ましいわ?」ニコニコ

シスター「そ、そうでしょうか…?えへへ…」テレテレ

母「もちろんお世辞は抜きよ。お嬢さん?」ウインク

シスター「そ、そんなぁ…?」テレテレ
236: ◆WEmWDvOgzo:2014/2/9(日) 15:53:25 ID:CFz6aP7Usc
宣教師「」スースー

カロル「」スヤスヤ

マルク「」クピー

母「みんな疲れてるのねぇ…」シミジミ

シスター「朝餉の支度も整えてますからお連れ様が起床なさったらお声かけください」ニコニコ

母「…しばらくは起きないかも。いろいろあったみたいですし、もう少し休ませてあげてもいいですか…?」

シスター「お構い無く?暖めればすぐに食べられる物を用意しましたから、いつでも大丈夫ですよ」

母「…ありがとう」

シスター「では私はしつれ……」ガチャッ

母「あ、あの…」

シスター「なにか?」ピタッ

母「…なんとも思わないんですか?」

シスター「?」キョトン

母「あ、その…教団の方なので…」

シスター「あ…私も教団の一員ですから教えを受けてますし、あなた方を罪深い種族と認識してますよ?」

母「……」

シスター「でも神官があなた方を信じると言うなら話は別です。どうぞ心いくまでおくつろぎください!」ニコッ

母「……」

シスター「では失礼します!ごゆっくり!」バタンッ

母「」ペコリ

母「……」
237: ◆WEmWDvOgzo:2014/2/9(日) 15:57:47 ID:CFz6aP7Usc
宣教師「」パチッ

宣教師「」ガバッ

宣教師「」チラッ

カロル「くぅ…くぅ…」スヤスヤ

宣教師「」ホッ

母「おはようございます?」ニコッ

宣教師「…おはようございます」ペコリ

母「お気持ちはよく分かりますわ?あたしもひょっとしたら…起きたらみんないないんじゃないかって心配になりましたもの?」

宣教師「……」

母「朝ごはんの支度が出来てるそうですよ?」

宣教師「もしかして待たせてしまいましたか?」

母「いえいえ、気持ちよさそうに眠ってらしたんでそっとしておこうと思っただけですよ?」ニコッ

宣教師「…すみません」
238: ◆WEmWDvOgzo:2014/2/9(日) 15:59:23 ID:CFz6aP7Usc
母「謝ることなんかありませんよ。
お疲れでしょうから、ゆっくりお休みになってくださいな?」

宣教師「そういう訳にも参りませんよ。病み上がりのお母様の前で……」バッ

宣教師「……ん?」グイッ

カロル「くぅ…」ギュゥゥゥ

母「あらあら?」クスッ

宣教師「いつの間に私の手を……」

母「しょうがない子ねぇ?いつまで経っても甘えん坊なんだから…」クスクス

宣教師「起こしてしまうのもかわいそうですし、しばらくこのままにしましょうか」

母「気を遣わなくていいんですよ?」スッ

宣教師「あ…」

母「坊やー!朝よー!起きなさーい?」ユサユサ

カロル「う…うぅん」ムニャムニャ

母「ごはんも出来てるわよー?」

カロル「ん……はーい」ゴシゴシ

母「おはよう」ニコニコ

宣教師「おはようございます」ニコニコ

カロル「おはよー…あ、ごめんなさい!」パッ

宣教師「いえいえ」ニコッ
239: ◆WEmWDvOgzo:2014/2/9(日) 16:04:59 ID:yTWeyWMdBg
―――教会(客間2)―――
シスター「」カチャカチャ コトンッ

アントリア「ごちそうさま。君のおかげでいつも気持ちよく朝を迎えられるよ?」

シスター「とんでもないです。お粗末様でした!」

司祭「ふん…いいのう?気立てのよい娘さんがおって?」

アントリア「僕のような老い先短い人間にはもったいないほどにできた子だ。いつでもここを任せられる」

シスター「そ、そんな…やめてくださいよ!」テレテレ

司祭「お嬢さんや、わしのとこに来てみんか?こやつよりよほど良い待遇で迎えるぞ?」

シスター「ご冗談を!私なんかが司祭様に仕えるなんておこがましいですよぉ!」

司祭「む?それは残念じゃのう?」

アントリア「クックッ!手が早いね。孫と祖父ほどに歳が離れてるというのに…」

司祭「バカもんっ!妙に勘繰るな!」

シスター「お客人もそろそろ全員、目覚める頃でしょうから呼んで参りますね!」スタスタ

アントリア「本当によく気の付く子だ」

司祭「うむ…。この紅茶もうまいのう」ズズッ

アントリア「それは白湯だよ、ノワール?」

司祭「……」コトッ
240: ◆WEmWDvOgzo:2014/2/9(日) 16:07:38 ID:CFz6aP7Usc
司祭「しかし大臣の奴め。のらりくらりとしておったが今日中に決められるのじゃろうな?」

アントリア「昨日はそう言っていたがね。なんでも我々の申請を承認待ちの書類に紛れさせて判を押すとか」

司祭「なぜハナからそうせなんだか…」

アントリア「なんだかんだと国王を立ててやるつもりだったんだろう。
お伺いを立てて直接承認してもらえれば、それがなにより望ましい」

司祭「で、それが叶わぬと見て無断で認可を与えようという訳か」

アントリア「そうすれば無理やり議題に上げられるからね。
手際のいい大臣のことだ。すでに力ある上等な役人たちを抱き込んで多数意見を笠に国王を納得させる腹積もりなんじゃないかな」

司祭「毎度、毎度と…人望のない王じゃなぁ。結局は配下に押し負かされとる」

アントリア「君もバックヤードに入って分かったんじゃないか?
高官の圧力が国王の威光に勝っている事実が?」

司祭「わしらの時代は裏表はっきりと分かれておったがなぁ?
今はまさに表裏一体、あからさまになっとる」

アントリア「それだけ自由な時代になったのさ…。
ああしたごろつきまがいを飼い慣らしてる現状に民は当然、不信感を募らせるが、その矛先はどうしても国王にいく」

アントリア「王都の人間はそうでもないが…野放しにされ、納税だけを強いられる田舎民にしてみればおもしろくないだろう」

アントリア「それすらも計算づくで高官たちは国作りをしているのだろうがね」
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