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カロル「ボクが世界を変えてみせる」
[8] -25 -50 

1: ◆WEmWDvOgzo:2013/11/24(日) 19:26:09 ID:j5u3Ryt06o
前スレ
(少年「ボクが世界を変えてみせる」)
http://llike-2ch.sakura.ne.jp/bbs/test/mread.cgi/2ch5/1356265301/1-50


―――あらすじ―――

人間によるホビットへの差別が当然のように行われる時代
人里を離れ、森の中で静かに暮らしていたホビットの親子がおりました。
母親の名はマリー。子供の名はカロル。
二人はささやかな幸せを願って、穏やかな日々を送っていました。

母は今の生活に満足していました。
もちろん森の中での生活は不自由で贅沢とは無縁なものでしたが多くを望まない母にとっては愛する我が子と生きていけるだけで幸せだったのです。

しかしカロルは違いました。
もちろん愛する母と生きるのに不満はなく、彼自身も多くを望もうとは考えません。
ですが彼にとって一つだけ足りないものがあったのです。
それは友達という存在でした。

幼心に自分たちの置かれた立場は分かっていたつもりでした。
人目を逃れて生きるホビットには仲間もなく、心を通わせる相手を見つけるのはとても難しいと。
それでも小さな身体に宿る希望は膨らむばかりです。


11: ◆WEmWDvOgzo:2013/11/27(水) 12:07:00 ID:Zn..IGjcXM
カロル「…ありがとう。ボクを守ってくれようとしたんだもんね?」ペタペタ

マルク「わんっ!わんっ!」プンプン

カロル「けど…何か言われても吠えたりしたらダメだよ?」

マルク「クゥン」シュン

カロル「ボクは慣れっこだから。マルクも気にしなくていいよ」ナデリ

マルク「……」コクリ
12: ◆WEmWDvOgzo:2013/11/27(水) 12:08:20 ID:RCXCl5If6k
―――城下町(広場)―――

カロル「王国って広いねー?」

マルク「うぅ〜?」クンクン

カロル「うん。いい匂い。向こうのテントみたいな所で何か焼いてるのかな?」

マルク「」ジュルリ

カロル「マルク、よだれ出てるよ?」クスッ

マルク「……」グゥー

カロル「お腹空いちゃった?」

マルク「あんっ!」コクコク

カロル「ふふ。司祭のおじいさまを見つけたら頼んでみるよ」

マルク「きゃん!」シッポフリフリ
13: ◆WEmWDvOgzo:2013/11/27(水) 12:13:31 ID:Zn..IGjcXM
カロル「石のお家なんて見たことなかった!あっちには温泉があるよ!」

マルク「わんっ!」

「あれは温泉じゃないよ。噴水って言うんだ」

カロル「え?」クルッ

小太りの男「やあ?やっぱりそうだったんだね?」

カロル「おじさまは…?」

小太りの男「おいらかい?おいらはゴイルってんだ?」

カロル「…ボクになにか用ですか?」

ゴイル「お近づきの印だ。お菓子をお食べ?」つ【キャンディ】

カロル「え…でも…」モジモジ

ゴイル「人の好意は素直に受け取るものだよ?華やぐ都では必要なたしなみだ」ニコニコ

カロル「じゃ、じゃあ…ありがとうございます」パシッ

カロル「」パクッ

ゴイル「…そうそう。よーく味わってね?」

カロル「は、はい…」コロコロ

ゴイル「おいしいかい?」

カロル「はい!おいしいです!」ニコッ

ゴイル「そうか。それは良かった」

カロル「都の人間って優しいんですね!」コロコロ

ゴイル「うん、まぁね…」

ゴイル「(あ、あれ?おかしいな…。そろそろ薬が効いてもいい頃なんだが…?)」
14: ◆WEmWDvOgzo:2013/11/27(水) 12:18:33 ID:Zn..IGjcXM
カロル「ありがとうございました!」

ゴイル「ど、どういたしまして」

カロル「それじゃ行こっか?」

マルク「あんっ!」

ゴイル「あっ…いや…あの…ちょっと待って!」アセアセ

カロル「?」クルッ

ゴイル「(こ、こうなっちゃしょうがねぇ…)」

カロル「おじさま?」

ゴイル「…ふんっ!」ドフッ

カロル「ぐっ…!うぇっ……!?」ガクン

ゴイル「痺れ薬を混ぜたアメを食ってなんともねぇとは…どうなってんだ、こいつ?」グイッ

マルク「うぅ〜…わんっ!」グルルルルル

ゴイル「ヒヒヒ!なんにしろ思わぬ収穫だ!こいつは高く売れるぞぉ!」グッ

マルク「わぐぅっ!!」ガブッ

ゴイル「いたっ!イタタタタタ!な、なにしやがんだ、このクソ犬!?」ブンッ

マルク「ぎゃんっ!」バタッ

ゴイル「この!この!この!」ゲシゲシッ

マルク「きゃっ!きゃいんっ!」

ゴイル「はぁっ…はぁっ…」ゼーゼー

マルク「」ピクッピクッ

ゴイル「ペッ」ペッ ビチャッ

ゴイル「胸くそ悪い!」ズカズカ

カロル「う…うぅ…まる…く……」キゼツ
15: ◆WEmWDvOgzo:2013/11/27(水) 12:19:57 ID:Zn..IGjcXM
―――城下町(広場)―――
アリアス「どこに行ったのよ…!勝手に歩き回るなんて何考えてるの!?」タタタッ

花売り「お花。お花。かわいいお花。赤いお花に真っ白な花。幸運を呼ぶ桃色の花〜」ラララー

アリアス「あなた!!」ガシッ

花売り「ひゃっ!?」ビクンッ

アリアス「大きい犬と歩いてる子供のホビットを見かけなかった!?」

花売り「い、いえ」ビクビク

アリアス「そう…ありがとう」

花売り「あ、お花いかがです?色とりどりのかわいいお花!」

アリアス「…遠慮しておく。邪魔してごめんなさいね」ダッ

花売り「…なんだったのかしら」ボーゼン
16: ◆WEmWDvOgzo:2013/11/27(水) 12:23:38 ID:RCXCl5If6k
町人「あぁ!それならさっき見ましたよ。主人の手を離れて歩くホビットなんて目立ちますからね」

アリアス「どこ?どこに行ったの!?」グワシッ

町人「え、えーと…奴隷商人のゴイルがさらってきましたよ」

アリアス「奴隷商人ですって!?」

町人「えぇ。胡散臭い奴でしてね。あまりいい噂は聞かない男ですよ」

アリアス「…ゴイルの店はどこにあるの?」

町人「確か…繁華街にひっそりとある路地から階段を通って地下に行くと奴の店があるとか」

アリアス「なんでそんな奴が普通に市街を闊歩出来るのよ…」

町人「ご存知ありませんか?人身売買はホビットに限り、王国公認の商いなんですよ」

アリアス「…つまり犬や猫を売るのと同じ感覚って訳ね」

町人「はい。ここ2、3年で流行りだした商売です。
といってもゴイルのようなごろつき紛いの人間がやるんですから健全とは言えませんがね」
17: ◆WEmWDvOgzo:2013/11/27(水) 12:31:09 ID:Zn..IGjcXM
―――城下町(正門前)―――

司祭「なにぃ!?奴隷商人に捕まったじゃとぉ!?」

アリアス「も、申し訳ございません。一足違いでした…」

ダガ「いつもすかしてやがる割に…とんだ間抜けだぜ。やっぱり俺が付いていきゃよかった」

アリアス「…黙りなさい」

司祭「ともかく行くしかあるまい…。アレを失えば今までの努力が水の泡になる…!」

ダガ「お任せください。俺が力付くで奪い返してやりますよ」

司祭「たわけがっ!」

ダガ「は…?な、なんで…?」

アリアス「はぁ…あなたってどうしようもないバカね?」

ダガ「な、なにを…!」ピクッ

アリアス「ここは大聖堂じゃないのよ?私たちの管理下にない場所で好き勝手に出来ると思う…?」

ダガ「どういう事だ?」チンプンカンプン

アリアス「見知らぬ土地で客として来た店で暴れたり店主を脅して品物を奪ったらどうなる?」

ダガ「…品物が根こそぎタダになるな。万々歳じゃねぇか?」

アリアス「……」

司祭「もうよい。その馬鹿はほっておけ」

ダガ「なっ!?」
18: ◆WEmWDvOgzo:2013/11/27(水) 12:38:58 ID:Zn..IGjcXM
アリアス「なんでも裏通りはバックヤードと呼ばれていて入るには特別な証が無ければならないようです」

司祭「ふむ、今から手にいれるのは面倒じゃな。そんな事をしている間に売られでもしたらとんでもないぞ」

ダガ「それもこれもてめぇが目を離しやがったからだ…」ジロッ

アリアス「…あなたに言われる筋合いはない」

司祭「ダガよ。お前の馬車のアレはどうなっとる?」

ダガ「アレですか?ひどい熱を出したまま寝込んでましたんで馭者に任せてありますが?」

司祭「小僧が渋り出した時に人質として使おうと思っていたが…今、使ってしまうか」

ダガ「は?」

司祭「奴ら奴隷商人は稀少なホビットを喉から手が出るほど欲しがっとる筈じゃ。
アレを持って行けば証を立てずとも通れるじゃろうて」

アリアス「そうですね。早く持ってきなさい」

ダガ「ちっ…命令すんじゃねぇよ。では持って参ります」スタスタ

アリアス「…大丈夫でしょうか」

司祭「なんとかするしかなかろうが…?あの小僧の存在はもはやわしらだけの問題ではないんじゃぞ?」

アリアス「……」
19: ◆WEmWDvOgzo:2013/11/27(水) 20:40:08 ID:34aMYRyu/2
―――バックヤード(城下町裏通り)―――

ジロジロ ジロジロ

司祭「ふん…。煩わしいのう。群れたハイエナの視線が付きまとう…」スタスタ

アリアス「絶対に面倒を起こすんじゃないわよ?」スタスタ

ダガ「分かってるさ。それにしてもこいつを見せただけであんなにあっさり通れるたぁな?」ググッ

母「」ハァ…ハァ…

司祭「所詮はならず者の巣窟じゃからな。それよりも絶対に落とすでないぞ?」

ダガ「ちっ…こんなの担いで歩かなきゃなんねぇのか…」ブツブツ

ダガ「(やらけぇ乳が当たるわやらしい吐息が当たるわ役得だらけじゃねぇか…)」ニヤニヤ

アリアス「だらしない顔で歩かないでくれる?一緒にいて恥ずかしいのだけれど?」

ダガ「う、うるせぇよ…」
20: ◆WEmWDvOgzo:2013/11/27(水) 20:42:14 ID:2ys.Ih6noA
アリアス「…大通りのように周りから声を掛けてくる様子はないですが」

司祭「ふむ…そのようじゃな。ダガ!」

ダガ「かしこまりました…。おい!ちょっといいか?」スッ

薬剤師「」ジロッ

ダガ「奴隷商人のゴイルって男を知らねぇか?」

薬剤師「知らんね…。他当たんな」プイッ

ダガ「あぁ…?同じ所で商売しといて知らねぇはねぇだろ?」

薬剤師「ふん…」

ダガ「てめぇ…」ズイッ

司祭「ダガ!」

ダガ「ちっ…」
21: ◆WEmWDvOgzo:2013/11/27(水) 20:44:32 ID:2ys.Ih6noA
薬剤師「なんなんだい、あんたら?冷やかしなら余所に行ってくれよ?」

司祭「すまんすまん。そう言わずに話だけでも聞いとくれ?
実はこやつが担いどるメスのホビットを売りに出したいんじゃが…」

薬剤師「…それならウチで買い取ってやろうかい?」

司祭「ほう?いくらじゃね?」

薬剤師「金貨7枚でどうだ?病持ちのホビットには破格の値だ」

司祭「ほっほっほ。年寄りをからかうもんではない?」

薬剤師「ふんっ…」

司祭「…ゴイルの店に案内してくれれば駄賃は弾むぞ?」

薬剤師「…身なりから察するに教団の人間だろう?それもかなりのお偉いさん…おそらく司教か?」

司祭「それを聞いてなんとする?ヘタな詮索は控えるのが裏世界の作法じゃろうて?」

薬剤師「別に…。ここのところよく見かけると思っただけさ」

司祭「…わしらの他にもいるのか?」

薬剤師「…ヘタな詮索は控えるのが裏世界の作法だろ?」

司祭「くっ…」イラッ
22: ◆WEmWDvOgzo:2013/11/27(水) 20:47:03 ID:34aMYRyu/2
薬剤師「ゴイルならさっきも来たよ…。あいつはウチのクスリをよく買いに来るんだ…」

司祭「…クスリじゃと?」ピクリ

アリアス「まさか…クスリ漬けにするつもりじゃ…!?」

薬剤師「人聞きの悪い…。ウチで売ってるのはまっとうなクスリさ」

司祭「ゴイルはどんなクスリを買っていくのじゃ?」

薬剤師「腰痛持ちだからね。痛み止めなんかをよく買っていくよ」

司祭「それだけか?」

薬剤師「たまに痺れ薬を買いに来る…。何に使うか知らんがね」

司祭「…とぼけおって?おおかた捕らえたホビットが逃げ出さぬようにじゃろ?」

薬剤師「さぁね…。あんたらも一瓶どうだい?媚薬なんかも置いてあるよ」カチャカチャ

司祭「まっとうなクスリ屋が聞いて呆れるわい…。いいから案内せい」

薬剤師「案内するのはいいが…ここまで付き合ってやってタダとはいかんだろう?」

司祭「…今の情報では褒美はやれんな。わしらが知りたいのはゴイルの店の場所じゃ」

薬剤師「そうかい…。それなら一生さまよってな。
土地勘のないあんたらが闇雲に探したところでゴイルの店には辿り着けないよ」

司祭「足下を見おって…」

ダガ「しょ、しょうがねぇな。それなら俺が一瓶買ってやるよ。それでいいか?」

薬剤師「ふーん…まぁいいだろ」
23: ◆WEmWDvOgzo:2013/11/27(水) 20:51:04 ID:34aMYRyu/2
アリアス「だ、ダガ…あなた…」

ダガ「ふ…こういう時くらい役に立たねぇとな?付き人の立場に傷が付くってもんだ」

司祭「すまんな…」

ダガ「いえ…とんでもない」

薬剤師「どれになさいます?お客さん?」

ダガ「媚薬をくれ」

薬剤師「はいはい。銀貨3枚ね」カチャカチャ

ダガ「おう」チャリン

アリアス「ダガ…」

ダガ「ふ…気にすんな」

アリアス「それ…欲しかった訳じゃないのよね?」

ダガ「」ギクッ

アリアス「最低ね。あなたって…」シラー

ダガ「う、うるせぇ!勘違いすんな!」

薬剤師「あんたも好きだねぇ?効き目は期待していいよ」つ【媚薬】

ダガ「黙らねぇとその口引き裂くぞ…!」パシッ

薬剤師「分かってると思うがゴイルの店の場所を教えるのは別料金ね」

司祭「ダガよ。もちろんそれも払ってくれるんじゃろうな?」

ダガ「えっ」
24: ◆WEmWDvOgzo:2013/11/27(水) 20:52:28 ID:2ys.Ih6noA
―――バックヤード(奴隷商人の店)―――

司祭「ふむ…ここか。聞いていた通り入り組んだ場所にあるのう」

アリアス「銀貨3枚に加えて金貨1枚使った甲斐がありましたね」

ダガ「…全部俺の金だがな」ムスッ

母「げほっ!げほっ!」

ダガ「うおっ!俺の肩で咳き込むんじゃねぇよ!」

司祭「さっきの薬剤師から媚薬ではなく風邪薬でも買っておけばよかったな。のう?」

ダガ「そ、そうですな…」

司祭「それでは入るとしよう。お前らはそこで待っておれ」ガチャッ キィィ

ダガ「はっ!」

アリアス「はっ!」
25: ◆WEmWDvOgzo:2013/11/27(水) 20:54:03 ID:2ys.Ih6noA
ゴイル「やあ、いらっしゃい!」ニコニコ

司祭「ほう…意外と洒落ておるな?」キョロキョロ

ゴイル「元は酒場だったんですがね。手入れしたとこなかなか居心地のいい店になっちまいやしたよ」

司祭「ゴイルというのはお前さんか?」

ゴイル「おや?どちらさんで?お知り合いとは思えませんが…」キョトン

司祭「なに…噂に聞いたんじゃよ。なんでもホビットを取り扱っとるそうじゃな?」

ゴイル「えぇ、まぁ…失礼ですがご身分を伺ってもよろしいですか?」

司祭「…しがない布教者じゃよ。疑わずとも金ならある」ジャラッ

ゴイル「ヒヒヒ!疑うなんてそんな畏れ多い!
ウチは金さえ積んでくれりゃどなた様でも大歓迎ですとも!」

司祭「いいのは入っておるかな?」

ゴイル「おや?買い取りですか…?
入ってくる際に見えたお連れ様の肩にホビットが担がれてましたんで…てっきり売りに出されるのかと?」

司祭「目敏いのう?…あれは通行証代わりじゃよ。
ホビットを売りに出すと言えば番人があっさり通してくれたんでな」

ゴイル「なるほど…手形をお持ちでないんですね。悪いお方だ」

司祭「ふん…なぜ無法者の闇市場に手形が必要なのか疑問じゃわい」

ゴイル「簡単な事で。ここバックヤードに無法者なんて一人もいやしませんから」

司祭「…?」

ゴイル「法の管理下に置かれてるんでさぁ。表も裏もまるごとね」

司祭「む?国の規制を免れたワルの吹き溜まりではないのか?」

ゴイル「冗談言わんでくださいよ!国の許可無く、こんな危ない橋は渡れませんや!」

司祭「(…この国は一体全体どうなっとるんじゃ)」
26: ◆WEmWDvOgzo:2013/11/27(水) 20:57:14 ID:2ys.Ih6noA
ゴイル「お客さんを通した番人もお国に仕える憲兵ですぞ?」

司祭「憲兵がホビットを見て何も言わない事などあるのか?」

ゴイル「やれやれ…まずこびりついた茶渋を取ったらいかがです?
ここでそんな事言ってちゃ笑われますぜ?」ヘラヘラ

司祭「む…!?」カチン

ゴイル「いや、失礼しました…」オホンッ

ゴイル「確かに普段なら取り締まるでしょうが誰かの持ち物なら話は別なんですよ?
野良犬が街中を歩いてたら捕まえられてもしょうがないが首輪に繋がれて散歩してる犬を捕まえるバカはいないでしょう?」

司祭「ふん…なるほどな…」

ゴイル「まぁ野良のホビットになんてそうそう出くわしませんがね」

司祭「……」

ゴイル「とにかくホビットはバカ高い値で売れるからお国にとっても大歓迎なんですよ」

ゴイル「なんせバックヤードで商売やってる人間は納税に加えて、毎月お国に収入の2割を差し出さなきゃなりやせん。
こっちでホビットが一匹売れたらお国にしてみりゃ自動的に潤う訳です!」

ゴイル「ウチは月によって売り上げが変動しがちだから実質、他の店より搾られないが…まぁそれでも雀の涙程度の金でカツカツやってますよ」

司祭「よう分かった…。とりあえず品を見せてもらえんか?」

ゴイル「よござんしょ。では案内しますよ」

司祭「(…わしが学者をしとった頃よりも更に歪んだ国になっておったか)」

司祭「嘆かわしい…」ボソリ
27: ◆WEmWDvOgzo:2013/11/27(水) 21:01:44 ID:2ys.Ih6noA
ゴイル「こちらになります」

ギャーギャー! ガタンガタン!

ホビット1「おレを買エ!ジジイ!」ガッシャガッシャ

ホビット2「アァー!アァー!」ビエーッ

ホビット3「嫌だ!売られたくない!」ガクガクブルブル

ホビット4「ヒィ…ヒィ…」プルプル

司祭「なんじゃ。あまり売れておらんのか?」

ゴイル「どれも粗悪品なんですよ。品に窮してるから置いてやってますが食費やら諸々の経費がかさんで仕方ありませんや」

司祭「粗悪品?」

ゴイル「えぇ…たとえば1匹目の柵をガッシャガッシャ鳴らしてるのは性格に難がありましてね。見ての通りですわ」

司祭「たしかに凶暴じゃのう」

ゴイル「2匹目はまだガキのホビットでね。夜泣きがうるせぇわションベン漏らすわでたまらんですよ」

司祭「…うむ。臭うな」ヒクッ

ゴイル「3匹目は成熟してる上にオスでヒョロいから力仕事にも向かない。
4匹目はメスですが奇形のキチガイ。見事にバラバラな粗悪品でしょ?」

司祭「よく客に平然と粗悪品しかない等と言えるな…。お前さん、売る気はあるのか?」

ゴイル「ヒヒヒ…粗悪品は粗悪品で買い手がちゃんといますから」

司祭「…まともなのはいないのか?たとえば少年のホビットやら…」

ゴイル「…お客さん、そのお歳で趣味がソッチですかい?またずいぶんと奇特な…?」ドンビキ

司祭「バカモンッ!違うわい!?」

ゴイル「だってぇ…オスのガキは非力だわ性処理に使えないわで需要もね…。
まぁ一部の特殊な人種には絶大な人気がありますが…」

司祭「違うと言うに!!」
28: ◆WEmWDvOgzo:2013/11/27(水) 21:04:28 ID:34aMYRyu/2
ゴイル「いえね。ついさっきまでお客さんのお目がねに叶いそうなのが1匹いたんですが、もう売れちまったんですよ」

司祭「ちなみにどんなホビットじゃ?」

ゴイル「ちょっと特異な体質のメスみたいにキレイなホビットのガキなんですがね…」

司祭「なにぃ!?」

ゴイル「うおっ!」ビクッ

司祭「特異な体質とはなんじゃ!?」

ゴイル「い、いや…その…おとなしくさせようと痺れ薬なんかを飲ませても効かねぇんで」シドロモドロ

司祭「それじゃぁ!?」

ゴイル「ひいっ」ビクッ

司祭「だ、誰じゃ!誰が買った!?」ガシッ

カランカラン!

ゴイル「ちょっ!お客さん!近いですって!杖落とされてますよ!?」

司祭「やかましい!そんな事よりも質問に答えんか!?」

ゴイル「よく来る上客が金貨200枚で買ってったんでさぁ!後は知りませんよ!」

司祭「なん…じゃと……?」ガクッ

ゴイル「お、お客さん?大丈夫ですかい?」

司祭「(終わった…。癒しの力が無ければ…全てがパー…)」グワングワン

ゴイル「(すげー落ち込みようだな。そこまでがっつりハマってんのか、このホモジジイ?)」シゲシゲ
29: ◆WEmWDvOgzo:2013/12/1(日) 21:50:48 ID:x0Da.DhtCQ
アリアス「すでに売られていましたか…」

司祭「うむ。どうしたものか…」

アリアス「……」

ダガ「はっ!全部おじゃんだな?てめぇがマヌケにも目を離したから…」

アリアス「なによ?私のせいだと言うの!?」

ダガ「あぁ?違うってのか?」ギロッ

アリアス「元はと言えばあなたの到着が遅れたから私一人で付いていなきゃならなかったんでしょう!?」

ダガ「だからなんだ?俺だったらそんなヘマはしなかったぜ?」

アリアス「よく言う!?あなた、今背負ってるホビットの色仕掛けにはまって罪人を牢屋から出したじゃないの!?」

ダガ「ば、バカ野郎!それはだな…!?」

アリアス「その責めを負って牢に入れられたあなたを出してくださるよう司祭様に懇願したのは私よ!?
まさか忘れた訳じゃないでしょうね!?」

ダガ「ぐっ…!」

母「げほっ!げほっ!」

ダガ「うおっ!?」

司祭「…やめい。今は内輪で揉めとる場合ではない」

アリアス「も、申し訳ありません」

ダガ「……」

司祭「約束の時間もとうに過ぎておる。最初の予定通り教会へ行くぞ」
30: ◆WEmWDvOgzo:2013/12/1(日) 21:52:33 ID:limzVIxYaQ
―――城下町(教会)―――

アントリア「告白したい旨があると?」

町娘「……」

アントリア「恐れることはない。ありのままに話してみなさい」

町娘「」ブルブル

アントリア「…天地に隔たりが無い以上、神の眼には等しく我々の行いが写し出されているのです。
あなたの葛藤もまた同じこと。口に出すも胸にしまうも、ね」

町娘「正直に…申し上げます!ひ、拾ったお金を…使ってしまったのです!」

アントリア「それはとても良くない行いをしましたね?」

町娘「つい魔が差したんです!持ち主に会ったら返すつもりでした!」

アントリア「なるほど、考えは素晴らしいですが実現出来なかったのが悔やまれます」

町娘「…神官、わたしはどうすればいいでしょうか…?」

アントリア「手に手を合わせ、祈りなさい。
あなたの良心に曇りがあるのなら、それを晴らすのもまたあなたの良心でしょう」

町娘「はい…」ギュッ

アントリア「…限りある命は時に過ちを犯し、問われる真心の在処とは常々異なるモノ。
少しでも罪悪を否とする想いがあるならば、あなたには大切な真心が宿っている筈です」

町娘「……」

アントリア「今一度、見つめ直して己の罪と向き合いなさい…。
あなたがあなた自身を赦された時、祈りを捧げる両の手には救いが込められている事でしょう」

町娘「」ギュゥッ
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