むかしむかしのことです。
世界は深い緑が生い茂り、深い青が寄り添うように流れる清らかな一つの円でした。
穢れを知らず、怒りも悲しみもなく、渇くことのない喜びが波立てる大地は
争いを寡黙に、繋がりをおおらかにしました。
955:🎄 改行ミス…orz ◆WEmWDvOgzo:2013/11/13(水) 15:40:02 ID:sEfoXHz.V2
旅人「また明日、必ず遊びに行くよ。約束だ?」
ラム「別に来なくていい…」
旅人「素直じゃないなぁ〜?」ニヤニヤ
ラム「…うるさい」
旅人「いい子にしてろよ?」ナデナデ
ラム「やめろって言ってるだろ…!」バッ
旅人「おやすみ、ラム君?」フリフリ
ラム「……」
バタンッ
ラム「おやすみ、おじさん…」ボソッ
ガチャッ
ラム「」ビクッ
旅人「あぁ、そうだ!さっきの話、考えといてくれよ?」
ラム「う、うん。わかっ…た…」
旅人「…それからおやすみの挨拶はもっと大きな声でした方がいい?」ニヤリ
ラム「……!?」カァァァ
バタンッ
ラム「くっ…」ギリッ
956:🎄 ◆WEmWDvOgzo:2013/11/15(金) 20:18:41 ID:Ou70Vp7aU.
…………………
―――東の領土―――
「…きろ……ラム…!」
ラム「……?」ボヤァ
バンパ「起きろって!」ユサユサ
ラム「うぅん…揺すらないでよ」ゴシゴシ
バンパ「いつまで寝てんだ!出発するぞ!?」
ラム「はいはい…」スクッ
シープ「珍しいねー!ラムが寝坊するなんて!」
バンパ「ったく!俺に見張らせといてのんきなもんだぜ!」
ラム「ふあぁ〜…ちょっと懐かしい夢を見ててね」ノビッ
バンパ「ちっ…聞いちゃいねぇ!」
シープ「どんな夢だったの?」
ラム「…すごく嫌な夢。思い出したくなかったんだけどなぁ」
シープ「へー!じゃあ起こしてもらってよかったね?」ニッコリ
ラム「うん。バンパもたまにはいいことするよね」ニコッ
バンパ「たまにはってなんだ!?」
ラム「さ、行こうか。早く仲間に会いたいし」
バンパ「待たせといて行こうかじゃねぇだろ!?」
シープ「れっつらごー!」ピョンッ
957:🎄 ◆WEmWDvOgzo:2013/11/15(金) 20:20:05 ID:2f6ATVrpfk
シープ「あとどれくらいで着くのかなー?」スタスタ
バンパ「歩いてりゃその内着くよ」スタスタ
シープ「ちゃんと答えてよ!」
バンパ「あぁはいはい。分かったからこれでも食ってろ」つ【饅頭】
シープ「なにこれ?」
バンパ「行商人からぶん盗った荷物に入ってたんだよ。うまいかは知らん」
シープ「へー!ラムー!はんぶっこしよー!」チギリチギリ
ラム「ありがとう」パシッ
バンパ「(俺にも分けるって発想はないんだな…)」シミジミ
シープ「モグモグ…これ…おいモグモグしいね…!」モゴモゴ
ラム「パクッ…うん」モグモグ
バンパ「食いながら喋るな。だらしねーぞ」
シープ「バンパってお母さんみたい?いちいちうるさいしー!」
バンパ「誰がお母さんだ!?せめて兄貴って言えよ!?」
ラム「まぁ歳は離れてるから立ち位置は保護者に近いかもね」
バンパ「お前らみたいな年中反抗期のガキを育てられる甲斐性なんかねーよ!」
シープ「こっちだってやだよーだ!」アッカンベー
バンパ「(このクソガキ…!)」イライラ
958:🎄 ◆WEmWDvOgzo:2013/11/15(金) 20:21:46 ID:Ou70Vp7aU.
ラム「お母さん、かぁ。そういえばカロル君のお母さんは綺麗で優しかったっけ」
バンパ「あ?またそいつの話か?飽きねぇな、お前も?」
ラム「まぁね。ちょっと気になるんだ」
ラム「誰かを助けたいからって教団の人間に付いていっちゃったけど、結局どうしたんだろ」
バンパ「けっ!ホビットは罪深いだの触れ回ってんのはあいつらだ。無事に済むわきゃねぇだろ」
シープ「そんなに心配なら止めてあげればよかったのに?」
ラム「もちろん止めたよ。だけど聞かなかったから…」
バンパ「分からないな。お前も言ってたじゃないか?そいつとは気が合わないってよ」
ラム「気が合う訳じゃないけど…気に入らない訳でもない」
バンパ「なんだ、そりゃ…」
シープ「ぼくはキライ!人間も!人間と仲良くするヤツも!」
バンパ「同感だな。絶対ダチにはなれねぇ」
ラム「……」
バンパ「俺が人間の奴隷だったのは知ってるだろ?
おかげでイヤってほど踏みにじられてきたんだ!
あんな奴らと仲良くなれるなんて信じたくもねぇ!」
シープ「ぼくだって!」
ラム「うん…。そうだね」
ラム「でも…あの子の気持ちも少しだけ理解できるかな」
バンパ「…え?」
ラム「……なんでもない。それより前から馬車が来てるよ。隠れよう」
バンパ「え、あ、ほんとだ!」アタフタ
シープ「大きな木があるよ!あそこの木陰にしよう?」タタタッ
バンパ「お、おう!」タタタッ
ラム「」タタタッ
ラム「(カロル君の気持ちは理解できる。僕も一度信じてしまったから…)」
ラム「(けど騙された…。人間は平気で嘘をつく生き物だから)」
959:🎄 ◆WEmWDvOgzo:2013/11/15(金) 20:23:39 ID:2f6ATVrpfk
パカラッパカラッ パカラッパカラッ
ラム「…行ったよ」ヒョコッ
バンパ「けっ!なんであんな奴らにビクビクしなきゃなんねぇんだ!」スタスタ
シープ「捕まったらまたあそこに入れられちゃうよー?」
バンパ「うっ…あ、あそこだけは死んでも入りたくねぇ…!」
シープ「そうだよ。せっかく自由になれたんだから!」
ラム「…あそこで未だに苦しめられてる仲間もいるしね」
シープ「仲間を集めたらみんなみんな助けてあげよー!」エイッ エイッ オー!
ラム「ふふ」クスッ
バンパ「エルマーの仲間を説得したら世界中から同族を集めるんだ!きっと凄いコトになるぜ?」
シープ「そしたら人間なんて目じゃないよね!」
ラム「うん。ヘマトも教団も王国も全部、全部潰してやろう」
バンパ「そうだな!」ニカッ
シープ「うん!」ニッコリ
960:🎄 ◆WEmWDvOgzo:2013/11/15(金) 20:26:04 ID:2f6ATVrpfk
バンパ「やっと獣道を抜けたな」ザッザッ
シープ「ね、ねぇねぇ?いつまで歩くの?ぼく疲れちゃったよ」ゼーゼー
ラム「あと少しだから頑張って?」
バンパ「…見えたぞ!」
シープ「えっ!どこ?どこ!?」キョロキョロ
バンパ「あの丘の先に旗が見えるだろ!アレは俺達の種族を表す"青い実"の刻印だ!」
シープ「ホントだー!」キラキラ
ラム「……」
バンパ「行こうぜ!早く!」タタタッ
シープ「オッケー!」タタタッ
ラム「あ、二人とも…」
バンパ「チンタラしてたら置いてくぞー!」タタタッ
シープ「ラムも早く来なよー!」タタタッ
ラム「(おかしい。何かが…)」
ラム「(エルマーはホビットが隠れて暮らす集落の筈なのに…わざわざあんなに目立つ旗を付けるのかな)」
ラム「……」
ラム「」タタタッ
961:🎄 ◆WEmWDvOgzo:2013/11/15(金) 20:27:33 ID:2f6ATVrpfk
―――エルマー?―――
バンパ「お!入り口に誰か立ってるぞ?」
シープ「…人間?」
バンパ「いや、あれは同族だよ。説明して入れてもらおうぜ」スタスタ
シープ「…ぼくたち、ホントにここまで来たんだねー!やっと仲間に会えるんだ!」スタスタ
門番「」ビクッ
バンパ「そう警戒すんな!見ての通り同族だ!」
門番「……」
バンパ「どうした?」
門番「」ボソッ
バンパ「なんだって?聞こえないぞ?」
シープ「様子が変だよ?」
ラム「二人とも!」タタタッ
バンパ「ん?あぁ、やっと来たか!見ろよ、ちゃんと同族がいるぜ!」
ラム「…あ、ホントだ。僕の勘違いだったのかな」
シープ「ねぇ、通してよ?ぼくらは仲間でしょ?」
門番「誰から聞いてここに来た…!?」ボソボソ
バンパ「誰からって…同族から聞いたんだ。ここがホビットの集落だって」
シープ「あのお爺さん、一人で旅をしてたよね?今も元気かなー?」
門番「…げろ!…やく!」ボソボソ
シープ「え?なに?」キョトン
ギィィ バンッ
門番「」ビクッ
962:🎄 ◆WEmWDvOgzo:2013/11/15(金) 20:29:51 ID:Ou70Vp7aU.
バンパ「お、門が開いたぞ!」
ラム「待ちなよ。誰かいる…」
???「ようこそ、愛すべき同胞達!心から歓迎致します!」ニコニコ
門番「た、タワンテさん!」アセアセ
タワンテ「何をしてるんですか、ティラーナ!アナタの仕事は門を守るコト!
人間なら追い返し!同族なら受け入れる!違いますカ!?」
門番「……」
タワンテ「見なサイ。愛すべき同胞達がとても困ってル!」
ラム「……」
タワンテ「失礼しまシタ。どうぞお入りくだサイ!」
バンパ「それじゃ入ろうぜ?」
シープ「うん!」トコトコ
ラム「……」スタスタ
タワンテ「ティラーナ!門を閉じておきなサイ!アナタの役割をわすれないように!ネ!」
門番「…わかり…ました」
ギィィ バタンッ
963:🎄 ◆WEmWDvOgzo:2013/11/15(金) 20:31:23 ID:2f6ATVrpfk
タワンテ「ワタシが案内しますからネ!付いてってくだサイ!」スタスタ
ラム「案内?」スタスタ
タワンテ「皆にもアナタ達を紹介したいのデス!同胞がやって来るのは珍しいので!」
ラム「珍しいって…どうしてです?同族なら、まずここを目指すんじゃ…」
バンパ「たどり着けないんじゃねーか?俺らだって1年以上掛かったし危ない橋も渡ってきたろ?」
タワンテ「かもしれません」
シープ「あんまり家もないし…誰も歩いてない?」キョロキョロ
ラム「うん…。僕も気になってた」
タワンテ「そういうものデス」
バンパ「まさかほとんど誰も住んでないってんじゃないだろうな?」
シープ「タワンテさん、どうなの?」
タワンテ「心配はいりません。すぐに同胞に会えますから」
964:🎄 ◆WEmWDvOgzo:2013/11/15(金) 20:33:27 ID:Ou70Vp7aU.
タワンテ「…着きましたよ」
バンパ「着きましたって…何にもないじゃないか?」
タワンテ「……」
シープ「冗談やめてよ!ぼく、もうクタクタなんだから!」
ラム「え…?」ピクッ
ゾロゾロ ゾロゾロ
黒装束「ハッハー!ようこそ、愚かなホビット達よ!」ガサッ
ラム「……」
バンパ「は…!?」
シープ「ちょ、ちょっと!なにこれ…!?」アタフタ
黒装束「野郎共!このマヌケな3匹を捕らえな!」バッ
手下1「」ジリジリ
バンパ「うおっ!ふ、ふざけんな!」ダッ
ラム「シープ!走れるかい!?」ダッ
シープ「う、うん」タッタッ
手下2「逃げ場なんかねぇよ!おとなしく捕まりやがれ!」パシッ
シープ「ひっ!」ググッ
バンパ「シープを離せ!」バキッ
手下2「あうっ!?」ドカッ
バンパ「チャッチャと走れ!捕まるぞ!?」ガシッ タタタッ
シープ「わっ!ひ、引っ張らないでよ!」タタタッ
965:🎄 ◆WEmWDvOgzo:2013/11/15(金) 20:37:02 ID:2f6ATVrpfk
黒装束「おとなしく捕まっておけば痛い目に遭う必要もないんだがなぁ?」
タワンテ「諦めきれないんでしょう。せっかく手に入れた自由を」
黒装束「ハッハッハ!そういうモンか!?お前らホビットは好きだもんなぁ?無駄な努力が…!」
――――――
手下3「へぇっへっへ!追い詰めちゃったぞぉ〜?」ジリジリ
ラム「…うるさい。デブ」トンッ
手下4「後ろは壁。前にはナイフを持った俺達。さぁどうする?」
ラム「」スッ
手下3「おぅっ!おぅっ!?ひざまづいたぞぉ!?泣いて許しを乞うつもりかぁ〜!?」ブヒヒ
ラム「誰がお前らなんかに…」
手下4「素直にしとけば加減してやらんでもなかったが…バカな奴だ」ダッ シュバッ
ラム「」サッ バウッ
手下4「ぐあっ…目が…!このガキ…砂を…!」ギュッ ゴシゴシ
ラム「」タタタッ
手下3「ほーい!逃がさないよーん!」バッ
ラム「」バウッ
手下3「おっと、同じ手を喰うか!」サッ
ラム「」シュッ ガツンッ
手下3「ごぼほぉっ!?」ズルッ バタッ
ラム「潰れちゃった?」クスリ
手下3「(こ、このガキぃ…!き、きき…た…玉ぁぁ…蹴りやがったぁ!?)」アガアガ
ラム「バイバイ」タッタッ
966:🎄 ◆WEmWDvOgzo:2013/11/15(金) 20:39:22 ID:Ou70Vp7aU.
ラム「(バンパ達と合流しなきゃ)」タタタッ
???「逃がしませんよ」ヒュッ
ザクッ!
ラム「えっ…!?」ドサッ
タワンテ「諦めなサイ。ナイフが太ももに突き刺さってます。もうその足は使えませんヨ」スタスタ
ラム「た、タワン…テ?」ドクドク
タワンテ「こうしないとワタシがお仕置きされるんデス」ガッ グイッ
ラム「あっ…ぐっ!」ブチブチ
タワンテ「スミマセン。愛すべき同胞…許してください」
ラム「離せっ…!離せよ…!」ジタバタ
手下4「味な真似を…!」ゴシゴシ
手下3「うぐぅ…ゆ、ゆるさねぇ!こいつの玉、握り潰してやるぅ!」エグッ グシッ
タワンテ「…とりあえずウォルター様に報告しましょう」
手下3「ちぃっ」
手下4「それもそうだな?さっさと持ってくぞ」
タワンテ「ハイ」ズルズル
ラム「うあっ!ぐぅ!」ズズズ
967:🎄 ◆WEmWDvOgzo:2013/11/15(金) 20:43:46 ID:2f6ATVrpfk
―――エルマー?(門前)―――
バンパ「おい!開けろ、開けろよ!?」バンッバンッ
バンパ「っ…ダメだ!押しても引いてもビクともしないし門番も反応しねぇ!」
シープ「あいつらが来たよ!?」
手下1「へっ」スタスタ
手下2「言ったよな?逃げ場なんかねぇと?」スタスタ
バンパ「うぅ…くそがっ!こうなったら俺が時間を稼ぐ!シープ、お前は壁をよじ登って出るんだ!」
シープ「む、ムリだよー!あんな高い壁…!」
バンパ「じゃあどうすんだ!?ここまで来て、また自由を手放すのか!?」
シープ「」ビクッ ブルブル
バンパ「それが嫌なら死ぬ気で逃げろ!!無理でも壁から這い上がれ!!」
シープ「……!」ダッ ガッ ヨジヨジ
バンパ「けっ!」ダッ
手下1「お、あちらさんから向かってくるぞ?」
手下2「手間が省けていいや!やっちまえ!」
968:🎄 ◆WEmWDvOgzo:2013/11/15(金) 20:48:23 ID:Ou70Vp7aU.
バンパ「おらっ!」ビュッ
手下1「ぎゃっ!?」ドスンッ
手下2「な、なんだ、こいつ…!」
バンパ「(大したことねぇな…。これならラムの奴も逃げれてんだろ)」
黒装束「おーおー手こずってんなぁ?」スタスタ
手下2「ウォルターさん!」
バンパ「(親玉はあいつだな…。ならあいつさえ倒しちまえば…)」
黒装束「狩人が獲物に狩られてちゃ世話ねぇよ」
手下2「す、すんません」
黒装束「指、小指でいいから」クイッ
手下2「へ?あ、いや…でも…!」アタフタ
黒装束「ん?耳がいいのか?勇気のある奴だな?」
手下2「……!ゆ、指で…お願いします!」スッ
黒装束「」ヒュンッ ビシュッ
手下2「あっ…あっ!あうぅぅぅ……!」ブシュー
黒装束「おーしおし、止血なんかすんじゃねーぞ?骨を剥き出しにしてよーく風に当てとくんだ?」
手下2「は、はい…!」プルプル
黒装束「後で剥き出しになった指の骨をヤスリで削ってやるからなぁ?楽しみだなぁ?」
手下2「あ、あぁふぅぅ」ジョー
969:🎄 ◆WEmWDvOgzo:2013/11/15(金) 20:51:15 ID:Ou70Vp7aU.
黒装束「そんじゃ遊ぶか?」ニヤリ
バンパ「狂ってやがんな…」
黒装束「狂ってるくらいがマトモなんだよ。俺達の仕事はな」
バンパ「胸くそ悪い野郎だぜ…!」ダッ ブンッ
黒装束「お?なんだ、こりゃ?メガトンパンチか?」パシッ
バンパ「な、なにぃ!?」グイッ グイッ
黒装束「ハッハー!」ブンッ
バンパ「ぐは…!」バキッ
黒装束「運がいい時に来たなぁ、お前ら?」
バンパ「あぁ…!?」ヨロッ
黒装束「本当ならちょっとばかし遊んでから組織に持って帰るんだが…なんでも今度行うショーはでかいようでな?
最高の催しを届ける為に綺麗なままのホビットを集める事になってんだ」
バンパ「お前…!まさかヘマトか!?」
黒装束「なんだ?俺達の組織を知ってんのか?」
バンパ「……」
黒装束「あぁ?さてはお前ら脱走しやがったんだな?」
バンパ「だったらどうした!?」
黒装束「どうしたもこうしたもあるか。もったいないから再利用するだけだ。
せいぜい自分の出る演目に期待してな?主役を張りたきゃ悲痛な叫びを客に聴かせてやるこった?」
バンパ「なにが演目だ…!あんなモン、ただの虐殺じゃねぇか…!」
黒装束「価値観の相違ってやつか?まぁいいわな?」
970:🎄 ◆WEmWDvOgzo:2013/11/15(金) 21:01:23 ID:Ou70Vp7aU.
黒装束「しかし愚かだな?せっかく抜け出せたのにこんなとこに来るとはよ?」
バンパ「黙れ!お前らが先回りしてるとは思わなかったんだよ!」
黒装束「先回りだと?ハッハッハ!こいつは傑作だな!?」ゲラゲラ
バンパ「何がおかしいんだ!?」
黒装束「お前勘違いしてるよ?ここはな、最初から俺達の場所なんだ」
バンパ「!?」
黒装束「確かにここにはエルマーなんて集落もあったがとっくに滅ぼされてんだよ」
バンパ「じゃあ…タワンテさんは!?門番のティラーナは!?あいつら同族じゃねーのか!?」
黒装束「紛れもなく薄汚いホビットだぜ?」
バンパ「だったらなんでここにいんだよ!?おかしいだろうが!?」
黒装束「あいつらには俺達の拷問ショーに出さないって条件で協力させてんの。
迷いこんできたホビットを誘い込むのがあいつらの役目さ?」ヘラヘラ
バンパ「そんな…!同族を…売ったってのか!?」
黒装束「そう珍しい話でもないだろ?
俺たち人間も騙し合い、奪い合う。お前らホビットも例に漏れずってやつだよ」
バンパ「人間なんかと一緒にすんな!俺は…俺たちはな…!」ワナワナ
黒装束「人間だの、ホビットだの…区別すんのが好きだなぁ?王国も教団も…そしてお前らも?」
バンパ「あぁ!?」イラッ
黒装束「俺に言わせりゃニワトリかハトかくらいの違いしかねーよ。
いくら名前を付けても括りはおんなじ鳥だ」ニヤリ
手下4「あっ!いたいた!ウォルターさん!こっちは捕まえましたぜ!」スタスタ
黒装束「おーしおし、んじゃこっちもパパっと終わらせっか」ズイッ
バンパ「……!」
971:🎄 ◆WEmWDvOgzo:2013/11/15(金) 21:03:35 ID:Ou70Vp7aU.
―――エルマー?(外)――
シープ「な、なんでことするの…?」ググッ
門番「おとなしくしろ…。縛りにくい」シュルシュル ギュギュッ
シープ「同じ仲間でしょ!助けてよ!?」ギシギシ
門番「」ボソッ
シープ「え…?」
門番「忠告はした…。入ったのはお前らだ」ボソボソ
シープ「こんな所だなんて思わなかったから!知ってたら入らなかったよ!」
門番「一度入ったら…もう出せない。出したらワタシとタワンテさんが罰を受ける…」ボソボソ
シープ「一緒に逃げようよ!?そうすれば……」
門番「ダメだ…。ヘマトは追ってくる…。捕まったら…恐ろしい」ボソボソ
シープ「平気だって!そんな簡単に見つかったりしないよ!」
門番「…ヘマトは今、ホビットを大量に欲しがってる…。
次のショーは大舞台で王国を交えてやるから…数を増やさないとワタシとタワンテさんがショーに出される…」ボソボソ
シープ「……!」
ギィィ バンッ
黒装束「そういうこった?」ポイッ ドサッ
バンパ「」ピクッ ピクッ
ラム「はぁっ…ぅくっ…」ドクドク
シープ「ラム!!バンパ!!」ギシギシ
黒装束「そいつらを馬に括り付けろ。組織に持ち帰るぞ」
門番「」コクリ
972:🎄 ◆WEmWDvOgzo:2013/11/17(日) 21:12:07 ID:5tYfNPQVjY
―――大聖堂(東門)―――
ダガ「…まだ馬車の影も見えねぇ内から門を解放していいのか?怪しい人間が侵入したらどうするつもりなんだ?」
アリアス「…司祭様のやる事に文句を付けるの?」
ダガ「そんなんじゃねぇよ。ただな、俺達は付き人だぞ?
なんでこんな雑用紛いの扱いを受けなきゃならねぇんだ?」
アリアス「司祭様の気短な性分は今に始まったことじゃないでしょう?
それに教徒にも表向きは王都で講演会を行うと言ってあるけど…」
ダガ「ふ…実際はなぁ?」
アリアス「間違ってもその先を言わないでね?」ジロッ
ダガ「あぁ…分かってるよ。誰が聞いてるとも知れねぇしな」
アリアス「なんにしても雑用に近い役目を私達に任されるのは自然のなりゆきだと思わない?」
ダガ「ちっ…」
パカラッパカラッ パカラッパカラッ
アリアス「…いらっしゃったみたい。司祭様とホビットを呼んでくるわ?」
ダガ「あぁ…」
アリアス「くれぐれも失礼のないように出迎えなさい?」スタスタ
ダガ「うるせぇ。さっさと行ってこい」
973:🎄 ◆WEmWDvOgzo:2013/11/17(日) 21:14:57 ID:5tYfNPQVjY
―――大聖堂(応接間の隠し部屋)―――
ガチャッ
カロル「おはよう、ナ……ラ?」キョトン
司祭「ナラじゃなくて悪かったのう、小僧?」
カロル「お、おじいさま…」
マルク「」グルルルル
アリアス「私もいるのだけれど?」
カロル「…おはようございます」ペコリ
司祭「ほっほっほ!かしこまらずともよい!行くぞ?」
カロル「行くって…どこへ?」
アリアス「あなた達が安心して暮らせるように住み処を見つけてあげたのよ?」
カロル「お母さまは…?お母さまも一緒ですよね…?」
アリアス「あなたの母親は宣教師が一足先に連れていったわ?」
カロル「え?二人がボクを置いていったんですか?」
アリアス「違うわ?あなたの母親に新しい住み処を見てもらって…納得してからあなたも連れていく手筈なの」
カロル「…そんなの、おかしいですよ」プイッ
アリアス「(…めんどくさいガキ。だから嫌いなのよね、マザコンって)」イライラ
司祭「…小僧」
カロル「……?」
司祭「付いてこなければ、どのみち母親には会えんぞ?それでもいいんじゃな?」
カロル「…やっぱり、騙してたの?」ボソリ
司祭「…付いてくるのか?来ないのか?」
カロル「…わか…りました」シュン
司祭「安心せい。犬も連れていってやるわい?」ニヤリ
974:🎄 ◆WEmWDvOgzo:2013/11/17(日) 21:17:24 ID:OqXv9TpU5w
―――馬車―――
パカラッパカラッ パカラッパカラッ
アリアス「」ペラッ
司祭「……」ジロジロ
カロル「わぁっ!すごいや!草原が動いてるよ!」キラキラ
マルク「わんっ!わんっ!」シッポフリフリ
アリアス「(バカな子…草原が動く訳ないじゃない。中にいるからそう見えるのよ…)」ペラッ
カロル「あはは!揺れてるよ!」キャッキャッ
マルク「あんっ!」パァァ
司祭「なんじゃ、こいつは…?さっきまで浮かない顔をしとったクセに?」コショコショ
アリアス「癒しの力を持つホビットとはいえ中身は子ども…という事でしょうね」ペラッ
司祭「…どういう神経の持ち主じゃ?」ジロジロ
カロル「あっ!ねぇ、見てみて!今ボクらが住んでた森が見えたよ!」
マルク「」ハッハッ
司祭「(緊張感のない奴め…。うるさくてかなわん!)」
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