むかしむかしのことです。
世界は深い緑が生い茂り、深い青が寄り添うように流れる清らかな一つの円でした。
穢れを知らず、怒りも悲しみもなく、渇くことのない喜びが波立てる大地は
争いを寡黙に、繋がりをおおらかにしました。
2:🎄 名無しさん@読者の声:2012/12/23(日) 21:22:55 ID:apUuk9iOiY
互いを愛し、慈しむ心を持つ人間は大地と共に生きて言葉の通じぬ獣、目に見えぬものにまで感謝を示し、天に祈りを捧げます。
天上からその様子を見ていた神は人間を生命の最たる種族とし、大地を治めさせようと考えました。
その旨を伝える為、神は使いとしてホビットを大地に送ります。
大地に赴いたホビットは人間達に神の前に立つ一人を選ぶよう告げます。
人間達は悩み、悩みぬいた末に人望があり、勇敢さと正義感を併せ持つ一人の若者に役目を委ねました。
3:🎄 名無しさん@読者の声:2012/12/23(日) 21:23:55 ID:apUuk9iOiY
ホビットは若者を連れて天上へと続く大樹を案内し、
天に住まう神に引き会わせます。
神は若者に人間の長となり、
大地を清らかに保つとともに生命を統一するよう命じました。
若者は与えられた使命を硬く守ると誓い、
引き換えに癒しの力を戴きます。
4:🎄 名無しさん@読者の声:2012/12/23(日) 21:24:47 ID:apUuk9iOiY
神は言いました。
「すべての命に宿る血の一滴に至るまで愛するのです。」
「深く学び、広く知り、好奇心を以て接するのです。」
「大いなる愛が失われぬ限り、力は癒しとなり
魂を覆う深淵の闇を祓うでしょう………」
5:🎄 ◆WEmWDvOgzo:2012/12/23(日) 21:27:05 ID:apUuk9iOiY
――プロローグ――
宣教師「若者は神の言葉を重く受け止め、
人と大地を愛し、癒し続けました
と、聖書の内容はこのように終わっていますが、
皆さんはお話の続きを知っていますか?」
村の子供1「はい!」
宣教師「どうぞ」
村の子供1「ホビットが癒しの力をボクたちから盗みましたー!」
宣教師「素晴らしい、その通りです。
ホビットは神に選ばれた人間を妬み、
長を殺めた挙げ句にあろうことか力を奪ってしまったのです!
1くん、キミはとても優秀ですね。
神のご加護と一枚のビスケットを与えましょう」つ【ビスケット】
村の子供1「わーい!ビスケットだぁ!」ワーイワーイ
村の子供2「そりゃ知ってるに決まってるよ」コショコショ
村の子供3「毎日だもんね。
恒例のビスケットもすっかり早い者勝ちさ」コショコショ
村の子供2「そうそう、どうせまた同じ事を言うんだ」コショコショ
村の子供3「うん、村の外れにいるホビットの話でしょ」コショコショ
6:🎄 ◆WEmWDvOgzo:2012/12/23(日) 21:28:44 ID:apUuk9iOiY
宣教師「いいですか。
ホビットというのは非常にずる賢く、罪深き種族です。
村の外れにも忌々しいホビットの親子が住んでいますが
決して心を許してはなりません。いいですね?」
村の子供1「はーい!」
村の子供2「ほらな?」コショコショ
村の子供3「しょうがないよ。
お母さんも子供の頃から聞かされたって言ってたもん」コショコショ
宣教師「そこの二人、返事はどうしました?」
村の子供2&3「あっ…は、はい!」
7:🎄 ◆WEmWDvOgzo:2012/12/23(日) 21:29:42 ID:apUuk9iOiY
宣教師「……今日はここまで!
返事の良かった1くん、キミにはもう一枚ビスケットを差し上げましょう」つ【ビスケット】
村の子供1「わーい!」ワーイワーイ
村の子供2「あっ!ずるい!」プンスカ
村の子供3「1くんばっかり!」プンスカ
宣教師「黙りなさい、ちゃんとお話を聞かなかった罰です」
村の子供2「ちぇっ!」
宣教師「代わりと言ってはなんですが、キミ達には神のご加護を……」
村の子供3「えー!いらなーい!」
村の子供2「かみのごかごでお腹いっぱいになんないもんな」
宣教師「なっ!あ、ありがたい祈りに対してなんたる冒涜を!
これだから最近の子供は……」ブツクサ
8:🎄 ◆WEmWDvOgzo:2012/12/23(日) 21:32:28 ID:lvsJdXSM9o
宣教師「最近の子供はねじ曲がっています。
これがゆとり教育の弊害というものなのでしょうか…」スタスタ
村の大人1「おい!待て、このクソガキィ!!」
ワイワイガヤガヤ
宣教師「おや、一体なんの騒ぎでしょう?
人通りの多い市場でトラブルとは珍しい」
村の大人1「おら!捕まえたぞ。
ガキの分際でてこずらせやがって!」グイッ
少年「っ…!」
9:🎄 ◆WEmWDvOgzo:2012/12/23(日) 21:33:50 ID:apUuk9iOiY
村の大人2「バカなガキだぜ。
とりあえずどうするよ?」
村の大人1「けっ!決まってんだろ。
痛い目見せてやんのよ」
村の大人2「それもそうだなwww」ドッ
少年「うぅ…ごめんなさい…ごめんなさい…」ブルブル
10:🎄 ◆WEmWDvOgzo:2012/12/23(日) 21:35:59 ID:lvsJdXSM9o
宣教師「これは一体…大人が二人がかりで子供をいたぶるなど…。
神に仕える者として見過ごせませんね」
村娘「あら、宣教師様じゃありませんか。
ごきげんよう」
宣教師「村娘さん、ちょうどよいところに。
これは一体なんの騒ぎですか?」
村娘「…なんでもホビットが村に忍び込んできたそうですよ」
宣教師「な、なんですって!
それは由々しき事態です!」
村娘「うふふ、もう大丈夫ですよ。
村の大人二人が買い物をしていた所を見つけて捕まえたみたい」
宣教師「なるほど、それであの騒ぎに?」
村娘「えぇ、バカな子ですね。
ホビットが人間の村に入って来るなんて」
宣教師「ふむ……」
11:🎄 ◆WEmWDvOgzo:2012/12/23(日) 21:37:22 ID:apUuk9iOiY
村の大人1「おとなしくしやがれ!」バキッ
少年「うぐっ…」ドサッ
村の大人2「生意気に頭巾まで被って変装するなんてな。
ずる賢いホビットらしいぜ」
村の大人1「二度と村に入って来ねぇように痛め付けなきゃな!」
少年「ヒック…グスッ…ごめんなさい…」
村の大人1「うるせぇ!」バキッ
12:🎄 ◆WEmWDvOgzo:2012/12/23(日) 21:38:54 ID:apUuk9iOiY
少年「っ……!」ゲホゲホ
村の大人2「ははは!
腹に蹴りくらって悶絶してらwww」
村の大人1「んじゃもう一発おみまいするかwww」ドカッ
少年「っ……!」ギュッ
村の大人3「おい!
お前ら子供になにやってんだ!」
村の大人2「バーカ!こいつはホビットだぜwww」
村の大人3「あぁ…なんだ、ホビットか」
村の大人1「お前もやるか?」
村の大人3「そうだな。
せっかくだしやっとくか」
少年「」ビクッ
13:🎄 ◆WEmWDvOgzo:2012/12/23(日) 21:45:53 ID:lvsJdXSM9o
バキッ ガッ ドカッ ドスッ
宣教師「………」
村娘「あらま、いくらホビットだからってやりすぎじゃないかしら」
宣教師「……ホビットは罪深き種族。
何をされてもしかたがありません」
村娘「うふふ、それもそうですね?
私達は悪くない。罪を犯したのはホビットなんですもの」
宣教師「………」
村娘「では宣教師様、私は買い物の途中なので失礼します」ペコリ
宣教師「…えぇ。お気をつけて」ペコリ
14:🎄 ◆WEmWDvOgzo:2012/12/23(日) 21:47:34 ID:apUuk9iOiY
少年「……」グッタリ
村の大人1「ふースッキリしたなぁ」
村の大人3「おかげで手が疲れちまった」
村の大人2「お前らやりすぎだろwww
こいつ死んだんじゃねwww」
村の大人1「死んだところで知ったこっちゃねぇよ」
村の大人2「そりゃそうだwww」
村の大人3「とりあえずこいつを村の外に運ぶぞ。
道にこんなのが転がってちゃ邪魔だ」
宣教師「待ちなさい」
15:🎄 ◆WEmWDvOgzo:2012/12/23(日) 21:49:32 ID:lvsJdXSM9o
村の大人1「あ?っと。
これはこれは宣教師様」
宣教師「……その少年、私が送り届けましょう」
村の大人3「そっそんな!
わざわざ宣教師様にこのような事をさせられませんよ!」
宣教師「大丈夫です。
汚れ役を買って出るのも神のしもべとして当然のこと。
あなた達は自分の持ち場に戻りなさい」
村の大人1「はぁ…。宣教師様がそう言われるのなら…
では、失礼します。
おい、行くぞ!」スタスタ
村の大人2&3「ちょっ待てよ」スタスタ
宣教師「………」チラッ
少年「……」グッタリ
16:🎄 ◆WEmWDvOgzo:2012/12/23(日) 21:53:05 ID:apUuk9iOiY
???「ずる賢いホビットめ。
我々の目を盗んで森の奥に集落を作っていたとはな」
???「この世界にお前たちの居場所などない!」
???「あぁ…村が焼けている…」
???「見つけたぞ!殺せ!
一匹たりとも逃すな!」
???「待て!子供に手を出すつもりか!」
???「せめて、お前たちだけでもっ……!」
メラメラ メラメラ
17:🎄 ◆WEmWDvOgzo:2012/12/23(日) 21:55:15 ID:lvsJdXSM9o
少年「」ガバッ
少年「」ハッ
少年「……ゆ…め…?」
宣教師「目が覚めましたか?」
少年「」ビクッ
宣教師「安心しなさい、何もしませんよ」
少年「……」ブルブル
宣教師「……落ち着きなさい」
少年「…ご、ごめん…なさい」ブルブル
宣教師「…謝らなくてよろしい。
そうだ、ビスケットでもいかがですか?」つ【ビスケット】
少年「……!」パァァ
宣教師「……(分かりやすい)」
18:🎄 ◆WEmWDvOgzo:2012/12/23(日) 21:58:06 ID:apUuk9iOiY
少年「」サクッサクッ
少年「」パァァ
宣教師「……(ビスケット一枚でこんなに幸せそうに…)」
少年「」ハッ
少年「ごめんなさい…」シュン
宣教師「あっいえ、気にしないでください…」
少年「……」
宣教師「……」
少年「……」
宣教師「……」
宣教師「(き、気まずい…)」
19:🎄 ◆WEmWDvOgzo:2012/12/23(日) 21:59:19 ID:lvsJdXSM9o
少年「あ、あの…」
宣教師「はいっ」ビクッ
少年「あっ…ごめんなさい…」
宣教師「あっいや、どうしました…?」
少年「その…どうして…ボクを?」
宣教師「えっ」
少年「」ビクッ
20:🎄 ◆WEmWDvOgzo:2012/12/23(日) 22:05:09 ID:lvsJdXSM9o
宣教師「あっいや、その…どうしてと言われましても」
少年「…小さい頃、おじいさまが言ってました。
神に仕える人間は人一倍、ボクたちを嫌ってるって…」
宣教師「え、えぇ。まぁ…」
少年「……どうして、ですか…?」
宣教師「(い、言えない。
神に仕える身でありながらホビットを哀れに思ったなんて…)」
少年「……?」キョトン
宣教師「」キュンッ
宣教師「えっ」
少年「」ビクッ
21:🎄 ◆WEmWDvOgzo:2012/12/23(日) 22:10:33 ID:apUuk9iOiY
宣教師「(い、今もしかして私…。
いや、ありえない。何かの間違いに決まってます!
そうですよ、不気味な黄色い眼で見つめられたって)」
少年「」ジーッ
宣教師「」キュンッ
22:🎄 ◆WEmWDvOgzo:2012/12/23(日) 22:12:11 ID:lvsJdXSM9o
少年「……あっ!」バッ
宣教師「えっ」ビクッ
少年「ごめんなさい!ボク…家に帰らなきゃ!」
宣教師「そ、そうですか。
しかし先ほどのケガが…」ドキドキ
少年「だ、大丈夫です!
……ありがとうございました!」ペコリ
宣教師「い、いえ。そんなお構い無く」ドキドキ
少年「」ダッ ガチャッ バタンッ
宣教師「行ってしまった……」ドキドキ
23:🎄 ◆WEmWDvOgzo:2012/12/23(日) 22:14:29 ID:apUuk9iOiY
宣教師「それにしても」
宣教師「あれほどのケガを負って短時間で動ける程度に回復するとは」
宣教師「(あれが例の癒しの力……)」
宣教師「(いや、違う。癒しとはもたらす力)」
宣教師「(それにホビットが自己再生できるなんて聞いた事がない)」
宣教師「(あの子は一体……)」
宣教師「まあいいでしょう。
今は明日の分のビスケットを焼かなければ」
宣教師「………あの子にも焼いてあげますかね」
24:🎄 名無しさん@読者の声:2012/12/23(日) 22:34:00 ID:vTG5urokkw
すごくいい 支援
25:🎄 ◆WEmWDvOgzo:2012/12/23(日) 22:49:58 ID:awL1.A7dcc
>>24さん
支援ありがとうございますm(__)m
正直初めてのSSで手を震わせながら投稿ボタンを押しているような状況ですが
暖かい目で見ていただけると助かります。
今日はここで切っておきます。
おやすみなさい。
26:🎄 ◆WEmWDvOgzo:2012/12/24(月) 09:28:03 ID:hTsbsopuA2
――村外れの民家――
少年「」タタタッ
少年「はぁっ…はぁっ…」
少年「」ニコニコ
少年「」ハッ
少年「」ブンブン
少年「……」
少年「」ギュッ
少年「ただいま」ガチャッ
27:🎄 ◆WEmWDvOgzo:2012/12/24(月) 09:29:52 ID:hTsbsopuA2
母「おかえりなさい。
ずいぶん遅かったのね?」
少年「うん、ちょっとね」
母「そう」
少年「うん」
母「」ジーッ
少年「な、なに?」
母「どこに行ってたの?」
少年「か、川でマルクと遊んでたんだ。
そしたら夢中になっちゃって。それで……」
母「……あらあら、じゃあ泳いできたのかしら?」
少年「う、うん」プイッ
母「楽しかったでしょうねぇ。
あなたの目も泳ぎ足りないと言ってるわ」クスクス
少年「え……」アセアセ
28:🎄 ◆WEmWDvOgzo:2012/12/24(月) 09:31:58 ID:h173FRh8P2
母「まぁ!人間の村へ行ったの?」
少年「……ごめんなさい。お母さま」
母「……人間に見つからなかった?」
少年「」ドキッ
少年「うん、見つかってないよ…」
母「ふふ、また目が泳いでる」
少年「うぅ…」カァァ
29:🎄 ◆WEmWDvOgzo:2012/12/24(月) 09:33:01 ID:hTsbsopuA2
母「おいで、わたしのかわいいぼうや」
少年「…うん」ダキッ
母「ふふ…いつまで経っても甘えん坊ね」
少年「……だめ?」ジーッ
母「いいのよ、あなたは私のかわいい息子だもの」ナデナデ
少年「えへへ。うれしい」ニコニコ
30:🎄 ◆WEmWDvOgzo:2012/12/24(月) 09:34:22 ID:h173FRh8P2
母「……そう」
母「あなたは私のたった一人の家族」
母「世界で一番愛してるわ。誰よりも」
母「だからこそ、誰よりもあなたを失いたくないのよ」
母「ああ、私のかわいい坊や」ダキッ
少年「お母さま…?」
31:🎄 ◆WEmWDvOgzo:2012/12/24(月) 09:37:09 ID:hTsbsopuA2
母「見つかったんでしょう?」
母「人間に、何をされたの?」
少年「っ……!」ギュッ
母「目を閉じても分かるわ」
母「こうして抱き締めていると、分かるの」
母「あなたの胸からポタポタと音がする。
心が涙をこぼしているのが聴こえるわ」
32:🎄 ◆WEmWDvOgzo:2012/12/24(月) 09:38:27 ID:h173FRh8P2
少年「」ウルッ
少年「……」ウルウル
少年「う、うぅ…」ポタポタ
少年「わああぁぁん!!」ポタポタ
母「辛かったでしょう。もう大丈夫よ」ナデナデ
33:🎄 ◆WEmWDvOgzo:2012/12/24(月) 09:39:58 ID:h173FRh8P2
少年「ヒック…グスッ……」キュッキュッ
母「あらあら、こすっちゃだめよ。
目が傷付いてしまうわ?」
少年「グスッ…ごめんなさい…」
母「いいのよ。それにしてもどうして人間の村へ?」
少年「………」
母「おしえて?」
少年「いやだ……」
母「まぁ…どうして?」キョトン
少年「だって…お母さまを悲しませたくないもの」
34:🎄 ◆WEmWDvOgzo:2012/12/24(月) 09:41:32 ID:h173FRh8P2
母「…ふふ、あなたは本当に心優しい子。」
母「でもね、坊や。
あなたがどんなにひどい言葉をぶつけるより」
母「私を嫌いになってしまうより」
母「あなたが独りで抱え込んでしまう方がよっぽど辛いわ」
少年「お母さま……」ウルッ
母「ふふふ。やっぱり嫌われるのもショックかも?」ニコニコ
少年「………」ダキッ
35:🎄 ◆WEmWDvOgzo:2012/12/24(月) 09:46:20 ID:h173FRh8P2
母「話す気になってくれた?」ポンポン
少年「うん。実はね…友達が欲しかったの」
母「そう」ニコニコ
少年「悲しく…ないの?」
母「あら、どうして?」
少年「だって……」
母「お友達が欲しいなんて、当たり前のことじゃない。
あなたが誰と仲良くしても私はダメなんて言わないわ」
母「(……そうよね。
私以外知らないんだもの。
マルクは…友達と言っても言葉を交わせない野生の獣。
この子は一緒に笑いながら
たくさん遊べる仲間が欲しかったんだわ。
それでも気を使って、
寂しさを奥底にしまって…。
人間に求めてしまったのね…)」
少年「そっか」ニコニコ
母「そうよ?」ニコニコ
36:🎄 ◆WEmWDvOgzo:2012/12/24(月) 09:47:39 ID:hTsbsopuA2
少年「それとね?」
母「うん」ニコニコ
少年「友達が、できたの」ニコッ
母「うんうん」ニコニコ
母「うん……?」
母「えっ」
37:🎄 ◆WEmWDvOgzo:2012/12/24(月) 09:49:57 ID:h173FRh8P2
少年「お母さま?」キョトン
母「あっううん、なんでもないのよ。
続けてちょうだい?」アセアセ
少年「うん。それでね。女の人なの」
母「へぇ。女の子と仲良くなったの。
すごいじゃない?」
少年「ううん。大人の人間だよ」
母「えっ」
少年「へ?」キョトン
38:🎄 ◆WEmWDvOgzo:2012/12/24(月) 09:52:54 ID:h173FRh8P2
母「あ、あーら…そ、そうなの」
少年「うん。ビスケットくれたんだ!」パァァ
母「そ、そう…?」
少年「おいしかったよ!」ニコニコ
母「よ、よかったわねぇ」ニコニコ
母「(大人の女性と友達なんて、冗談よね…?
もしかして変な趣味の人じゃ…?
ま、まさかねぇ…?
でもこの子が言ってる事だし…)」アセアセ
39:🎄 ◆WEmWDvOgzo:2012/12/24(月) 10:01:14 ID:h173FRh8P2
――教会――
宣教師「くしゅんっ」
宣教師「……風邪でしょうか?」
宣教師「……まあいいです」
宣教師「ふむ、おいしそうに焼けました」
宣教師「村の子供の分とあの子の分は別に分けておきましょう」
宣教師「ふぁぁ…」
宣教師「夜も更けましたし寝ましょうか」
宣教師「」ハッ
宣教師「……そういえば、あの子の家を知りません」
40:🎄 ◆WEmWDvOgzo:2012/12/24(月) 10:03:25 ID:hTsbsopuA2
少年「それでねっ!ボクお礼しに行きたいの!」
母「そうねぇ。じゃあ明日、一緒に行きましょうか」
少年「うんっ!」パァァ
母「(うふふ。嬉しそうねぇ。
この子が私以外に感情を向けるなんて初めてだから、なんだか私まで嬉しいわ)」ニコニコ
少年「あっそうだ!
おみやげに庭のカリアムで花束を作ろうかな!」
母「いいわねぇ。
でも今日は遅いから、それは明日にしましょうか?」
少年「あっうん…そうだね。」シュン
母「大丈夫よ、坊や。
明日は逃げたりしないから」
少年「うん!歯磨きしてくるね!」タタッ
母「まぁまぁ。
家の中で走っちゃだめじゃない?」ニコニコ
41:🎄 ◆WEmWDvOgzo:2012/12/24(月) 10:05:22 ID:h173FRh8P2
少年「おやすみなさい。お母さま」
母「おやすみなさい。かわいい坊や」
少年「ふふっ」ワクワク
母「(あんまり楽しみで寝れないのね。
うふふ。困った子だわ)」ニコニコ
少年「お母さま」ワクワク
母「なぁに?」ニコニコ
少年「早く明日にならないかな?」ワクワク
母「まぁ?」ニコニコ
少年「ボクずっと起きてようかな?」ワクワク
母「夜更かしする悪い子は朝ごはん抜きよ」
少年「はーい…」シュン
42:🎄 ◆WEmWDvOgzo:2012/12/24(月) 10:07:14 ID:h173FRh8P2
少年「おやすみなさい」ギュッ
母「おやすみなさい」ニコニコ
少年「」ウトウト
少年「」スピー
母「……まだまだ子供ね」クスクス
母「生まれてくれてありがとう。
私のかわいい坊や」
母「……」
母「」スースー
43:🎄 ◆WEmWDvOgzo:2012/12/24(月) 14:40:14 ID:p9j21mNoUI
オギャァ オギャァ オギャァ オギャァ
???「あなた…見て?」
???「グズッ…ズズッ…ヒック…」ポタポタ
???「もう…ちゃんと見てあげて!」
???「す、すまん…」フキフキ
???「ほら、玉のように愛らしい。
私たちの子供なのよ?」
???「あぁ…言葉を忘れるほどに愛しい。
俺にも抱かせてくれないか?」
???「えぇ、そうしてあげて」スッ
???「おぉ…」ヒシッ
44:🎄 ◆WEmWDvOgzo:2012/12/24(月) 14:41:25 ID:CA0eW9E7MM
オギャァ オギャァ
???「おっと、泣かせてしまったか?」アセアセ
???「違うわ。きっと喜んでいるのよ」
???「……そうか」
???「……あなた?」
???「この子は、幸せになれるだろうか?」
???「あなた…」
???「……すまない」
???「…大丈夫。幸せになれるわ。
私たちも、この子も…」
オギャァ オギャァ
45:🎄 ◆WEmWDvOgzo:2012/12/24(月) 14:42:48 ID:CA0eW9E7MM
――――
少年「うぅん……また、夢…」ゴソゴソ
少年「あったかい…夢…」
母「あら、起きたの?」カチャカチャ
少年「うん、おはよう。お母さま」
母「おはよう。朝ごはんが出来てるわよ」
少年「はーい」タタタッ
46:🎄 ◆WEmWDvOgzo:2012/12/24(月) 14:44:30 ID:p9j21mNoUI
少年「」パクパク
少年「」モグモグ
少年「」ゴクゴク
母「そんなに急いで食べたら詰まらせちゃうわよ?」
少年「だ、だって…」
母「心配しなくても、まだお日様は沈まないわ」クスッ
少年「う、うん!」パクパク
47:🎄 ◆WEmWDvOgzo:2012/12/24(月) 14:46:54 ID:p9j21mNoUI
少年「ごちそうさま!」
母「おいしかった?」
少年「うん!」
母「そう?ならよかったわ」ニコニコ
少年「ボク、庭に行ってくるね」
母「えぇ。いってらっしゃい」
少年「いってきまーす!」
ガチャッ バタンッ
母「人間の女性でお友達、ねぇ。
どんな方なのかしら?
坊やの言うように優しい方だといいけれど…」
48:🎄 ◆WEmWDvOgzo:2012/12/24(月) 14:49:06 ID:p9j21mNoUI
少年「〜〜〜」ルンルン
少年「えへへ。いっぱい摘んじゃった。
あの人、喜んでくれるかな?」
旅人「坊や」
少年「」ビクッ
少年「……?」クルッ
旅人「おっと、驚かせてしまったか。
すまないね、君はこの家の子かね?」
少年「う、うん…」
旅人「ははっ!そうか。そうか。
ご両親はいるのかな?」
少年「お母さまがいるよ」
旅人「そうか。ありがとう」ナデナデ
少年「……(悪い人間じゃなさそう)」
49:🎄 ◆WEmWDvOgzo:2012/12/24(月) 14:50:26 ID:CA0eW9E7MM
コンコン
母「はーい」
母「(誰かしら?私たちの家を訪ねる人なんていない筈なのに…)」
母「………」
コンコン
母「あ、はい。今出ます」ガチャッ
50:🎄 ◆WEmWDvOgzo:2012/12/24(月) 14:52:04 ID:p9j21mNoUI
旅人「突然申し訳ないね」
母「いえいえ、お気になさらないでください。
失礼ですが、どなた?」
旅人「旅の者でね、村を探しているんだが心当たりは無いかね?」
母「そうですか。それならこの道を南に抜けると村がありますわ」
旅人「そうか。ありがとう。
では失礼するよ」
母「いえいえ、お気を付けて」
バタン
母「あの人、私の目を見ても驚かなかったわね。
単に気付かなかっただけかしら?」
51:🎄 ◆WEmWDvOgzo:2012/12/24(月) 14:52:56 ID:p9j21mNoUI
旅人「………」スタスタ
旅人「あれは間違いなくホビットの親子だな」
旅人「くっ…くくくっ!」
旅人「ははははは!!」
旅人「ぎゃはははははは!!……」
旅人「っ……!」ゲホッゲホッ
旅人「……まずは村に行くか」
旅人「」スタスタ
52:🎄 ◆WEmWDvOgzo:2012/12/24(月) 14:54:19 ID:CA0eW9E7MM
少年「お母さま!見て!
たくさん花を摘んできたよ!」
母「……あらあら」
母「(庭のカリアムを全部摘んじゃったのね…)」
少年「お母さま?」
母「あ、えぇ。大きな花束が出来そうね」ニコニコ
少年「うん!」パァァ
母「………」
母「初めてのお友達だもの。
はりきっちゃうわよね」
53:🎄 ◆WEmWDvOgzo:2012/12/24(月) 14:55:51 ID:CA0eW9E7MM
少年「お母さま!花束出来た!」
母「まぁ大きい!」
少年「あの人、喜ぶかな?」
母「きっと大喜びよ」ニッコリ
少年「えへへ」テレテレ
母「そろそろ行きましょうか?」
少年「うん!」
54:🎄 ◆WEmWDvOgzo:2012/12/24(月) 14:59:28 ID:CA0eW9E7MM
――村――
宣教師「と、聖書の内容はこのように終わっていますが……」
村の子供2「はい!」
宣教師「ん?」
村の子供2「ホビットが癒しの力を盗んだ!」
宣教師「お話の途中で答えるんじゃありません」
村の子供2「いいからビスケットー!」
宣教師「却下します」ムスッ
村の子供2「えー!」
宣教師「お話の邪魔をした罰です!」
村の子供2「はいはい。わかりましたー」
宣教師「はいは一回でよろしい」
村の子供2「は〜〜い」
宣教師「めんどくさそうに言うんじゃありません!」
村の子供2「はい…」ムスッ
村の子供3「はは…まぁまぁ」
村の子供2「ふん」プイッ
55:🎄 ◆WEmWDvOgzo:2012/12/24(月) 15:04:41 ID:p9j21mNoUI
宣教師「……今日はここまでにします」
村の子供1「宣教師様、ビスケット食べたい!」
宣教師「えぇ。いいですよ。
お話を聞いていたご褒美です」つ【ビスケット】
村の子供3「あ、ボクも!」
宣教師「はいはい。たくさんありますからね。
たんとお食べなさい」つ【ビスケット】
村の子供2「」ムスッ
宣教師「さて、2くん。あなたには神のご加護を……」
村の子供2「いらない!」ダッ
宣教師「……」ガーン
56:🎄 ◆WEmWDvOgzo:2012/12/24(月) 15:07:13 ID:p9j21mNoUI
宣教師「最近の子供はわがままです。
これが文明の進化による心の貧困なのでしょうか」スタスタ
村の大人1「あ、宣教師様!
昨日はありがとうございました」
宣教師「おや、あなたは昨日の……。
いえ、神に仕える者として当然の事をしたまでです」
村の大人1「いやぁ。
我々も昨日は良い行いが出来て、気持ちよく寝れましたよ」
宣教師「…それはなによりです」
村の大人1「そういえば昨日のガキはどうしたんですか?」
宣教師「さぁ。もう住み処に帰ったのではないでしょうか」
村の大人1「まだくたばってないんですか。
あいつらはやっぱりしぶといですなぁ」
宣教師「……」
57:🎄 ◆WEmWDvOgzo:2012/12/24(月) 15:08:11 ID:CA0eW9E7MM
村の大人1「慈悲深い司祭様が殺すなとおっしゃるから我々も生かしてやってますが
わきまえずに村に侵入するなんざとんでもない話ですよ!」
宣教師「……そうですね。
あ、時にあなたはホビットの住み処を知っていますか?」
村の大人1「ホビットの?
いやぁ知りませんね。
昔から村の外れに住んでるとは聞いてますが、
わざわざ薄汚いホビットを探そうなんて村人もいませんからね」
宣教師「そうですか…。それは残念です」
村の大人1「えっ」
宣教師「」ハッ
58:🎄 ◆WEmWDvOgzo:2012/12/24(月) 15:09:30 ID:CA0eW9E7MM
村の大人1「宣教師様、今のはどういう意味で?」
宣教師「ち、違います!邪推するんじゃありません!
残念というのは…そう!
昨日の子供から住み処を聞き出せなかったのが悔しいのです!」アセアセ
村の大人1「あ、あいつらの住み処なんて暴いてどうするんで?」
宣教師「え?そ、それはもちろん……」アセアセ
村の大人1「もちろん?」
宣教師「ひ、火です!火を放つのです!
不浄の血は清らかな大地の妨げになります!
神罰を以て粛清しなければなりません!」アワアワ
村の大人1「おぉ!なるほど!
それは素晴らしいですな!
さっそく司祭様に提案しましょう!」
宣教師「なっ……!
待ちなさい、司祭様が来てらっしゃるのですか?」
村の大人1「えぇ。先ほど挨拶させていただいた時に村長の家に用があると」
宣教師「なぜそれを先に言わないのですか。
私も挨拶に伺わなければ…」
村の大人1「すみません。気の付きません事で」ペコリ
宣教師「では私は失礼します」ソソクサ
59:🎄 ◆WEmWDvOgzo:2012/12/25(火) 17:40:24 ID:5SMOo2RLI.
宣教師「今日はあまり人がいませんね」スタスタ
宣教師「まあ休日の朝くらいはゆっくりしたいのが本音なのでしょうが」
宣教師「それにしても司祭様が自ら足を運ぶとは…」
宣教師「……とにかく会って確かめるほかありませんね」
宣教師「例のホビットに付いても報告……」
宣教師「」ピタッ
宣教師「(司祭様に報告すれば、あの子は…)」
60:🎄 ◆WEmWDvOgzo:2012/12/25(火) 17:41:52 ID:CrrmOLoToc
宣教師「」ハッ
宣教師「………」ガクガク
宣教師「私はなんと恐ろしい考えを……」
宣教師「神に仕える身でありながら、罪深き種族に配慮するなど…」
宣教師「…なんと愚かなのでしょう」
宣教師「あろう事か、施しを与えようとまで…」ブルブル
宣教師「……」つ【ビスケットの袋】
宣教師「けがらわしい!」ブンッ
バサッ
宣教師「……司祭様に、ご挨拶しなければ」
宣教師「……」スタスタ
61:🎄 ◆WEmWDvOgzo:2012/12/25(火) 17:44:20 ID:CrrmOLoToc
――村長の家――
宣教師「着きましたね」
宣教師「」コンコン
ガチャッ
村長の妻「はいはい。まぁ、宣教師様?
おはようございます」ペコリ
宣教師「おはようございます。
こちらに司祭様がお立ち寄りだと聞いたのですが」
村長の妻「はい、今は主人と話していますよ。
さぁどうぞ、上がってください!」
宣教師「失礼します」バタンッ
村長の妻「主人と司祭様は奥の部屋にいます。
なんでも大事なお話とか…」
宣教師「そうですか。
では待っていた方がよさそうですね」
村長の妻「そうですねぇ。
テーブルにかけていてくださいな。
今暖かいお紅茶をお持ちしますから」カチャカチャ
宣教師「あ、いえ。お気遣い頂かなくともご挨拶に伺っただけですので」
村長の妻「まぁ。遠慮なさらないでちょうだい?
ちょうど外から良い茶葉を仕入れましたの。
味見していってくださいな」
宣教師「お気遣い痛み入ります。
では遠慮なく頂きます」ペコリ
62:🎄 ◆WEmWDvOgzo:2012/12/25(火) 17:45:35 ID:CrrmOLoToc
村長の妻「どうぞ」つ【紅茶】
宣教師「いただきます」ゴクゴク
村長の妻「どうでしょう?」
宣教師「とても美味しいです」ニコッ
村長の妻「嬉しいわ。
あたしもいただいていいかしら?」
宣教師「どうぞ。私などにお構い無く」
村長の妻「それじゃ用意するわね」カチャカチャ
63:🎄 ◆WEmWDvOgzo:2012/12/25(火) 17:47:46 ID:5SMOo2RLI.
村長の妻「美味しいわ。外の行商から取り寄せただけあるわねぇ」
宣教師「えぇ。この紅茶に合うお菓子があれば、なお良いでしょう」
村長の妻「お菓子と言えば宣教師様がいつも子供たちに配ってるビスケット。
とても美味しいと評判ですことよ?」
宣教師「……そうですか。それはありがたいですね」
村長の妻「このお紅茶にも合うんじゃないかしら?」
宣教師「どうでしょう?
あいにく今日は手持ちにありませんので…」
村長の妻「そう。それは残念ね」
64:🎄 ◆WEmWDvOgzo:2012/12/25(火) 17:49:04 ID:CrrmOLoToc
宣教師「司祭様はいつ来られたのですか?」
村長の妻「宣教師様が来る20分ほど前です。
お供の方も連れずに一人で」
宣教師「なるほど。珍しいですね」
村長の妻「えぇ。何かあったんじゃないかと心配で、心配で」
宣教師「そうですね…」
村長の妻「取り分け昨日はホビットが村に入り込んだと聞くでしょう?
あたしは災いの前触れなんじゃないかって…」
宣教師「……」
村長の妻「あーやだやだ。
考えただけで身震いしますよ。
村の大人たちが追い出してくれたから良かったものの…。
宣教師様もそう思うでしょう?」
宣教師「……はい。罪深き種族の侵入を許すべきではありません」
村長の妻「そうですよね!
やっぱり司祭様にも報告して……」ペチャクチャ
宣教師「………」ゴクゴク
65:🎄 ◆WEmWDvOgzo:2012/12/26(水) 22:28:28 ID:L42.WERUbA
――奥の部屋――
村長「……なんと、そのような事が…」
司祭「ふむ。わしもお告げを聞くまでは信じられなんだが、紛れもない事実だそうだ」
村長「しかし、なぜ今になって…?」
司祭「分からぬ。すべては神の御心にしまわれたまま。
今はお告げに沿って動くほかあるまい」
村長「落ち着いている場合ですか!?
せっかくここまで……」
司祭「やっかましいぃぃい!!!
声を荒げるでないわぁぁぁあ!!!!!」
村長「」ビクッ
司祭「はぁっ…はぁっ…。
とにかく、村人に漏らすでないぞ。よいな?」
村長「は、はい」
司祭「では、わしは本部に戻るでな」ガタッ
村長「は、はぁ…」
66:🎄 ◆WEmWDvOgzo:2012/12/26(水) 22:30:02 ID:L42.WERUbA
村長の妻「なにかしら?
司祭様の声だったみたいですけど…」
宣教師「」ドキドキ
村長の妻「宣教師様?」
宣教師「あ、は、はい」ガタッ
村長の妻「大丈夫ですか?」
宣教師「え、えぇ。大丈夫です…」
村長の妻「ティーカップ、落としてますわよ?」
宣教師「へ?も、申し訳ございません!」アタフタ
村長の妻「大きい声でしたもの。驚かれるのも無理ありませんわ?」クスクス
宣教師「い、いえ決してそういうわけでは…」
ガチャッ
宣教師「」ビクッ
67:🎄 ◆WEmWDvOgzo:2012/12/26(水) 22:31:12 ID:L42.WERUbA
村長の妻「あら、あなた。
お話は終わったの?」
宣教師「」ホッ
村長「あぁ。もう帰られるそうだ」
司祭「ほっほっほ。早い時間に邪魔して申し訳なかったのう」
宣教師「」ビクッ
村長の妻「いえいえ、構いませんのよ?
こちらこそたいしたおもてなしも出来ずにすみません」
司祭「あぁあぁ。気を遣わんでくだされ。
突然押しかけたわしが悪いのじゃ」
村長の妻「あ、そうだわ!
宣教師様が司祭様にご挨拶したいと言っていらっしゃってますのよ?」
司祭「なんじゃ。来ておったのか?
相も変わらず律儀な奴じゃのう」
宣教師「ははははいぃぃ!!」ガタッ
司祭「」ビクッ
68:🎄 ◆WEmWDvOgzo:2012/12/26(水) 22:32:30 ID:FGq0e0WmdU
村長「どうかされましたか?」
宣教師「い、いえ…」
司祭「年寄りを驚かせるんじゃないわい。
なんなんじゃ、お前は」
宣教師「も、申し訳ありません…」
村長の妻「」クスクス
村長「何を笑ってるんだ?」
村長の妻「あぁ。ごめんなさい。なんでもないの」クスクス
宣教師「」カァァ
村長「……?」
69:🎄 ◆WEmWDvOgzo:2012/12/26(水) 22:33:49 ID:FGq0e0WmdU
司祭様「まぁよいわ。これ以上、ここにおったら邪魔になる。出るぞい」
宣教師「は、はい!」
村長「では私が外まで送りましょう」
司祭様「構わん。こやつがおるでな」
村長「それもそうですな」
司祭「では行くぞい」
宣教師「はっはい」
村長の妻「またいつでもいらしてくださいね?」
司祭「ほっほっほ。その時は世話になりますぞ」
宣教師「おいしい紅茶をありがとうございました」ペコリ
村長の妻「いえいえ。とんでもないですわ。
またいつでも飲みに来てください」
司祭「失礼するぞい」ガチャッ
宣教師「お邪魔いたしました」ペコリ
バタンッ
70:🎄 ◆WEmWDvOgzo:2012/12/26(水) 22:34:53 ID:FGq0e0WmdU
宣教師「司祭様がお一人で来られるなんて珍しいですね」スタスタ
司祭「たいした用ではないわい」スタスタ
宣教師「はぁ。そうですか…」
司祭「布教は進んでおるのか?」
宣教師「はい、子供たちはとても素直ですし
村の方々も前任の神父様の教えの甲斐もあり、神の意思に賛同してくださってます」
司祭「ほっほっほ。それは重畳」
宣教師「恐縮です」
司祭「やはりお前に任せて正解だったわい。
思えば幼い頃から信心深く、聡明な子じゃった」
宣教師「そんな…私など…」
司祭「謙遜するな。わしの目に狂いはなかったという事じゃ」
宣教師「し、司祭様…!」
司祭「これからも感謝を忘れず、布教に励むがよい」
宣教師「はい!司祭様のお言葉に報いる為にも、身命を賭して神のご意志を伝えさせていただきます!」
司祭「ほっほっほ。期待しておるぞ?」
71:🎄 ◆WEmWDvOgzo:2012/12/26(水) 22:36:24 ID:FGq0e0WmdU
宣教師「(やはり私は愚かだった…。
たった一度でもホビットに気を許すなど、神の冒涜にほかならない…!)」
司祭「あぁそうじゃ。
お前には言っておかなければならんな」
宣教師「と言いますと?」
司祭「実は我が教団から『神の声』という本を出すのじゃがいるか?」
宣教師「も、もちろんです!
今後、布教の参考にする為にもぜひ!」
司祭「そうか。代金は後で本部に送るがよい」つ【本】
宣教師「えっ」キョトン
72:🎄 ◆WEmWDvOgzo:2012/12/26(水) 22:37:57 ID:L42.WERUbA
司祭「なんじゃ。変な顔しおってからに?」
宣教師「お金を…取るのですか?」
司祭「当たり前じゃろうが。何を訳の分からん事をほざいとるんじゃ?」
宣教師「い、いえ…てっきり頂けるものかとばかり」
司祭「贅沢を言うでないわ。
信者やその家族も身銭を切って教本を求めているのじゃ。
わしらがタダで読んでは平等でなかろう」
宣教師「ふ、普通教本などは無料で配布するものでは…」
司祭「やっかましいぃぃぃい!!」
宣教師「ひっ」ビクッ
司祭「この一冊で神の声に触れられると言うに!!
金を惜しむなどもっての他じゃ!!
貴様、恥を知れぇぇえ!!」
宣教師「は、はいぃぃ!申し訳ございません!!」フカブカ
司祭「はぁっ…はぁっ…。
分かればよいのじゃ…」ゼーゼー
宣教師「(今日の司祭様怖いです…)」ドキドキ
73:🎄 ◆WEmWDvOgzo:2012/12/26(水) 22:39:24 ID:L42.WERUbA
宣教師「うぅ…村の方々からの施しが…」グスッ
司祭「ほっほっほ。有意義に使えたのう」ホクホク
宣教師「ま、まぁ神の教えを深く知る意味では……ん?」マジマジ
司祭「どうしたんじゃ?」
宣教師「著者は司祭様となっておりますが…?」
司祭「その通りじゃが?」
宣教師「し、しかし題名は神の声と…」
司祭「わしが神の声に耳を寄せ、書き上げたのじゃから当然じゃ」
宣教師「な、なるほど…」
司祭「さっきから何を訳の分からん事を言うとるんじゃ?」
宣教師「……」
74:🎄 ◆WEmWDvOgzo:2012/12/26(水) 22:42:34 ID:FGq0e0WmdU
司祭「そろそろ村の外に出るのう。ここまででよいぞ」
宣教師「お、お待ちください!」
司祭「なんじゃ?」
宣教師「村長からお聞きなされたとは思いますが…」
司祭「…ホビットが入り込んだそうじゃな」
宣教師「やはりご存知でしたか」
司祭「うむ、なんでも子供だったと聞くがのう」
宣教師「はい…」
司祭「おおかた何も知らぬ哀れな幼子じゃろう。
昨日の件もある。二度とこの村には来るまい」
宣教師「だと良いのですが…」
司祭「幼子と言えど罪深き種族。
時を追う毎に罰が下る。
己の罪深さを理解するまで捨て置く事じゃ」
宣教師「司祭様がそう言われるのでしたら私からもこれ以上の事は…」
司祭「それが良かろう。
奴らに関われば天の怒りを招く。
お前もそれは重々承知している筈じゃ」
宣教師「はい…」
司祭「うむ。ではわしは帰るでな。
この村の管轄は任せたぞい」
宣教師「はい。司祭様もお気を付けて」ペコリ
司祭「」スタスタ
宣教師「…私も教会に戻るとしましょうか」スタスタ
75:🎄 ◆WEmWDvOgzo:2012/12/28(金) 11:09:15 ID:BXUEK2.5u2
少年「ふんふふ〜ん」ルンルン
母「坊や、一人で先に行ってはだめよ?」
少年「お母さま、はやくはやく!」
母「まぁ。この子ったら?」
少年「村が見えたよ!」タタタッ
母「あ、ちょっと待って!」
少年「?」クルリッ
母「そのまま入ったら人間に見つかるでしょ?」
少年「あっそうだね…。
でもどうするの?
昨日は頭巾を被ってたのにバレちゃったんだよ?」
76:🎄 ◆WEmWDvOgzo:2012/12/28(金) 11:10:28 ID:BXUEK2.5u2
母「坊や。私たちと人間の違うところは何かしら?」
少年「瞳の色と…体の大きさ、かな?」
母「それから肌の色も、よ。
私たちは瞳が黄色くて、肌がとても白いわ。
それに体も人間と比べて小さい」
少年「うん…」
母「肌の色と小さな体はまだいいけれど、瞳の色を見られればどうしてもホビットだと分かってしまうわ。
だから……」
少年「目を隠すんだね?」
母「そうよ、賢いわね!」ニコッ
少年「えへへ!…あ、でもメガネなんて持ってないよ?」
母「安心なさい、お母さんが良い物持ってきたから」ニコニコ
少年「えっそうなの?」キョトン
母「こっちにおいで坊や。支度してあげるわ?」
少年「うん!」
77:🎄 ◆WEmWDvOgzo:2012/12/28(金) 11:11:47 ID:4a/V8q7lfc
母「うん、完璧ね!」
少年「………」ムスッ
母「あら、どうしたの坊や?ふてくされたりして」
少年「…なんでこうなるのさ?」ジト
母「まぁ。かわいらしくていいじゃない?」
少年「やだよ。女の子のカッコなんて!」
母「しょうがないでしょ?
色メガネで隠すより前髪で目を隠してしまった方が自然だもの」
少年「だからって……」
母「それに女の子のカツラを被っただけじゃない?
服はいつもと変わらないから大丈夫よ」
少年「……うん」
母「安心して?とってもかわいいから!」ニコッ
少年「そういう問題なのかな…?」
78:🎄 ◆WEmWDvOgzo:2012/12/28(金) 11:12:53 ID:BXUEK2.5u2
母「それに昨日、人間に見つかったんでしょ?
外から来た男の子ってだけで怪しまれるわよ?」
少年「あ、そっか…。
お母さまも前髪で隠すの?」
母「あたしは色メガネで隠すから大丈夫よ?」ニコッ
少年「っ……!ずるい!」プンスカ
母「うふふ。さあ行くわよ?」スタスタ
少年「むー…」ムスッ
79:🎄 ◆WEmWDvOgzo:2012/12/28(金) 11:14:22 ID:4a/V8q7lfc
――村――
母「……いい?自然に振る舞うのよ?」
少年「う、うん」
村の大人1「おっなんだ、あんたたち。
見かけない顔だがよその人かい?」
母「えぇ。娘と旅をしていますの」
少年「」ドキドキ
村の大人1「へーそうなのかい。
今どきは珍しくもないが、昔は故郷を離れるなんて考えられなかったからなぁ…。
女手一つでお嬢ちゃんを連れての旅だ、くたびれちまうだろう?」
母「えぇ、まぁ。…実は主人を亡くしまして、故郷を追われてしまいましたの」
村の大人1「……そいつは大変だな。
あんたも苦労してるんだろう。
この村にいる間は体も心も休めるといいよ。
ここはのどかな村だから悪い奴なんて一人もいないぜ?」
母「ありがとうございます。
お言葉に甘えさせていただきますわ」ペコリ
村の大人1「へへっ!頭なんか下げないでくれよ。
お嬢ちゃん。お母さんの言う事をよく聞いていい子にしてるんだよ?」ナデナデ
少年「」ビクッ
80:🎄 ◆WEmWDvOgzo:2012/12/28(金) 11:16:48 ID:BXUEK2.5u2
村の大人1「? どうしたんだい?」
母「あら、ごめんなさい。この子人見知りでして」
村の大人1「あぁ、そうか。
その歳で旅なんかしてちゃ友達もできないもんな?
大丈夫、村の子供らもお嬢ちゃんくらいの歳の子ばかりだから、
いっぱい遊んでいくといいよ」ニコニコ
少年「は、はい」ドキドキ
村の大人1「ほら、キャンディをあげよう。
これを出して話しかければ子供たちともすぐ仲良くなれるさ」つ【袋】
母「まぁ。そんな…」
村の大人1「いいんですよ。
俺が好きでやってるんだから」ニコニコ
母「ありがとうございます…。
ほら、あなたもお礼を言わないと?」
少年「ありがとう…ございます…」ペコリ
村の大人1「じゃあ俺は店があるから戻るが、困った事があったら遠慮なく村人たちに聞いてみな。
みんな嫌な顔一つせず助けてくれるからさ」
母「何から何まですみません」
村の大人1「いいってことよ!」スタスタ
少年「……」
81:🎄 ◆WEmWDvOgzo:2012/12/28(金) 11:19:11 ID:4a/V8q7lfc
少年「おじさん、優しかった…」
母「えぇ、そうね。すっかり女の子だと思われてたわよ?」ニコニコ
少年「もう!からかわないでよ!」
母「うふふ。ごめんなさい」クスッ
少年「……ねぇ」
母「ん?なぁに?」
少年「ボクね、お母さまに内緒だったけど
昨日あのおじさんにぶたれたんだ」
母「……そう」
82:🎄 ◆WEmWDvOgzo:2012/12/28(金) 11:20:16 ID:4a/V8q7lfc
少年「昨日はね、ボクが市場でお菓子を見てただけで怖い顔してた」
母「……」
少年「頭巾で隠してたから大丈夫かなって思ったけど、取ってみろって言われて嫌がったら捕まえられて」
少年「たくさんぶたれて、たくさん蹴られた」
少年「謝っても許してくれなかった」
少年「みんな冷たい目をしてたよ」
少年「助けてくれようとした人もボクがホビットってわかったら一緒になってぶったんだ」
少年「すごく怖かった」
母「……」
83:🎄 ◆WEmWDvOgzo:2012/12/28(金) 11:21:12 ID:4a/V8q7lfc
少年「でも、今日のおじさん、すごく優しくて…びっくりしちゃった」
母「そうね、とても大事な事よ?」
少年「うん…」
母「そこで見るものだけが真実ではないの。
心は色んな表情をするのよ?」
少年「……そうなの?」
母「心はね、たくさんの感情を持っているの。
喜び、悲しみ、愛、憎しみ」
母「喜びと悲しみの感情は自分だけのもの。
愛や憎しみは誰かに向けられるもの」
母「人間は同じ人間を愛し、獣に草木に空に海、空想的なものだって愛せる。
素晴らしいことよ、でもね」
母「ひとたび憎しみを受け入れてしまえば、心は呑まれてしまうの」
母「喜びも、悲しみも、愛も、ぜんぶ…」
母「そして憎しみは、あたしたちに向けられている」
母「何百…いえ、何千年も前から」
84:🎄 ◆WEmWDvOgzo:2012/12/28(金) 11:22:55 ID:BXUEK2.5u2
少年「……どうして?
ボクもお母さまも、悪いことしてないよ?」
母「決まってることなの。
いえ、決められてしまったという方が正しいわ」
少年「……わからないよ」
母「……ごめんなさい。あなたは知らなくていいことなのよ。
ただ忘れないでね、一面だけを見てすべてだと思ってはいけないの」
母「一つの場面での出来事にとらわれてしまうと、あたしたちは憎しみに呑まれるしかなくなってしまう」
少年「うん…」
母「あなたもいずれ分かるわ。
人間とお友達になるつもりならね」
少年「人間とお友達だと、いけないの?」
母「そうじゃないの。あなたにお友達ができたらあたしは嬉しいわ。
でも難しいの、ホビットと人間は…言葉にはできないほどに」
少年「……」
85:🎄 ◆WEmWDvOgzo:2012/12/28(金) 11:28:35 ID:BXUEK2.5u2
母「ねぇ坊や。二つ約束して。大事な約束よ?」
少年「うん…」
母「もし悲しくて、やりきれなくなってしまったら終わりにしてほしいの」
少年「人間と友達になるのを…?」
母「そうよ、その時は二人で静かに暮らしましょ?
あなたが憎しみにとらわれてしまわないように…ささやかな幸せを分け合うの」
少年「わかった…」シュン
母「それじゃもう一つの約束ね?
今から会うあなたのお友達が、あなたにとって信じられる人間だったなら…」
少年「……」
母「どんな事があっても信じてあげなさい?
その出会いを大切に、お互いにとってかけがえのない繋がりだと思って、ね?
約束できる?」
少年「…うん!!」パァァ
少年「約束、するよ!」
86:🎄 ◆WEmWDvOgzo:2012/12/28(金) 11:30:43 ID:4a/V8q7lfc
母「じゃあ約束の指切りをしましょ?」スッ
少年「うん!」ピトッ
母&少年「指切りげんまん嘘ついたら針千本のーます!指切った!」
母「約束破ったら本当に飲ませるわよ?」ニヤリ
少年「えっ」
母「冗談に決まってるじゃない?」クスクス
少年「……!」カァァ
少年「や、破らないもん!」
87:🎄 ◆WEmWDvOgzo:2012/12/29(土) 10:36:58 ID:wJajIDVNMY
母「さ、行きましょ?」
少年「うん、ボク場所覚えてるから案内するね!」
母「えぇ。お願い」
子供3「おーい、待ってよー!」
少年「ん?」
子供2「へっへーんだ!くやしかったらここまでおいでー!」タタタッ
子供3「くっそー!」タタタッ
母「村の子供たちが遊んでいるのね。あなたも入れてもらったら?」
少年「……ボクはいいよ」
母「あの子たちも喜ぶわよ?」
少年「そうかな…」
母「そうよ!ほら、いってらっしゃい。
お母さんはここで待ってるから」
少年「う、うん。いってくる!」タタタッ
母「」ニコニコ
88:🎄 ◆WEmWDvOgzo:2012/12/29(土) 10:38:15 ID:wJajIDVNMY
少年「ねぇ!ボクも仲間に入れて!」
子供2「えぇー!どうする?」
子供3「ボクはいいよ?」
子供2「じゃあお前も入れてやるよ!」
少年「うん、ありがとう!」
子供3「でもなんで女の子なのに"ボク"なの?」
子供2「あっほんとだ!ヘンだぞー!」
少年「なっ…!ボクは女の子じゃ…」
子供2&3「えっ」
少年「」ハッ
89:🎄 ◆WEmWDvOgzo:2012/12/29(土) 10:39:50 ID:wJajIDVNMY
子供2「女じゃねーのか?」
少年「う、ううん…女…だよ…」モジモジ
子供2「やっぱり女じゃんか!」
子供3「まぁまぁ」
少年「ごめん…」シュン
子供2「まぁいいや、何して遊ぶ?」
子供3「おいかけっこは飽きたし、かくれんぼでもする?」
子供2「いいな!やろうぜ!」
子供3「キミもかくれんぼでいい?」
少年「うん、いいよ!」ニコニコ
子供2「じゃあお前オニなー!」
少年「うん、わかった!」ニコニコ
子供3「いや、じゃんけんしようよ!?」
90:🎄 ◆WEmWDvOgzo:2012/12/29(土) 10:41:09 ID:wJajIDVNMY
少年「え?」
子供3「だってそうしないと不公平じゃない」
子供2「ちぇっ!わかったよ!」
少年「ねぇ」
子供2「ん?なんだよ?」
少年「じゃんけんって何?」
子供2「えっ」
子供3「えっ」
少年「えっ」
91:🎄 ◆WEmWDvOgzo:2012/12/29(土) 10:42:44 ID:wJajIDVNMY
子供2「なんだお前、じゃんけん知らねーのかよ?」
少年「うん、誰かと遊ぶのって初めてだから」
子供2「ヘンな奴!」
子供3「まぁまぁ!じゃあ教えてあげるね?
じゃんけんっていうのは…(※省略)」
少年「そうなんだ!おもしろそうだね!」
子供2「そうか?お前の方がおもしろいぞ?」
子供3「ボクもそう思う」
少年「あとかくれんぼっていうのも教えて?」
子供2「えー!?なんにも知らねーじゃん!」
少年「ご、ごめん」
子供3「いいよ?教えてあげる!」
92:🎄 ◆WEmWDvOgzo:2012/12/29(土) 10:44:33 ID:wJajIDVNMY
子供3「…っていうのがかくれんぼ!わかった?」
少年「うん、ありがとう!」
子供2「なー!早くやろうぜ?」
少年「待たせちゃってごめんね?」
子供3「じゃあじゃんけんしよう!」
子供2「よーし!最初はグー!」
「じゃんけんぽい!」
93:🎄 ◆WEmWDvOgzo:2012/12/29(土) 10:45:47 ID:PHb2NYku.U
少年「あはは。負けちゃった」
子供2「じゃあ俺たち隠れるから1000秒数えろよ!」
子供3「数え過ぎだよ!?
10秒でいいからね?」
少年「えっ…そんないいよ、1000秒数えるルールなんでしょ?」
子供2「……」
子供3「あ、あはは。2くんの冗談だから大丈夫だよ?」
少年「そ、そうだったの?」カァァ
子供2「」キュンッ
子供3「どうしたの?」
子供2「な、なんでもねーよ!」
子供3「……?」
94:🎄 ◆WEmWDvOgzo:2012/12/29(土) 10:47:44 ID:wJajIDVNMY
少年「はぁっ…はぁっ…」
子供3「つ、疲れたね…?」ゼェゼェ
子供2「お前らへばってんじゃねーよ!」
子供3「なんで2くんだけあんな元気なんだろ…?」
少年「わかんない…でもすごく楽しいや」
子供2「おーい、もっと遊ぼうぜ!」
子供3「えー!ちょっと休もうよ!」
子供2「なんでだよ!いいから遊ぼうぜー!」
少年「うん、遊ぼ?ボクももっと遊びたい!」ニコッ
子供2「」ドキッ
少年「どうしたの?」キョトン
子供2「う、うるせーよ!」
少年「え…」
子供2「ふんっ」プイッ
子供3「二人ともすごいや、ボクもうへとへとだよ…」
95:🎄 ◆WEmWDvOgzo:2012/12/29(土) 10:50:32 ID:wJajIDVNMY
子供3「だめ…ほんとにもうむり…」バタッ
少年「はぁっ…ぼ、ボクも…疲れちゃったよ…」
子供2「次なにするー?」
子供3「ボクらの話聞いてた!?」
少年「ボク…もう戻らなきゃ」
子供2「えー!なんでだよー!?」
少年「だって…お母さまを待たせてるから」
子供2「いいじゃんか!遊ぼうぜ!」
少年「で、でも…」
子供3「まぁまぁ!しょうがないよ」
子供2「……」
少年「ごめんね…?」
子供2「お前なんか知らねー!帰っちゃえよ!」
少年「」ガーン
子供2「バーカ!ブース!」ダッ
少年「……」
96:🎄 ◆WEmWDvOgzo:2012/12/29(土) 10:52:27 ID:wJajIDVNMY
子供3「気にしないでね、いつものことだから」
少年「…そうなの?」
子供3「そうだよ、好きな女の子にはああするんだ」
少年「す、好きな女の子…!?」カァァ
子供3「ボクらを教えてくれてる女の宣教師様にも、いつもああなんだ」
少年「そ、そうなんだ…」
子供3「うん、だから気にしないで?お母さん、待ってるんでしょ?」
少年「うん…」
子供2「おい!いつまでいんだよ!さっさと帰れよ!」
子供3「ふふ、素直じゃないんだから」
子供2「はぁ?意味わかんねーし!」
少年「」クスクス
97:🎄 ◆WEmWDvOgzo:2012/12/29(土) 10:53:33 ID:wJajIDVNMY
子供2「なに笑ってんだよ!?」
少年「ううん…なんでもない」
子供2「ヘンな奴…」
少年「これ、友達の証だよ。受け取って?」つ【キャンディ】
子供2「」ドキッ
子供3「ありがとう」
少年「ううん、またね?」タタタッ
子供2「お、おう…」ドキドキ
子供3「どうしたの?」ニヤニヤ
子供2「うるせー!!」プンスカ
98:🎄 ◆WEmWDvOgzo:2012/12/29(土) 10:54:45 ID:wJajIDVNMY
少年「待たせてごめんね」
母「あら、もういいの?」
少年「うん、お母さまを待たせてるもの」
母「もう…そんなの気にしなくていいのに」
少年「でも…」
母「あなたが子供たちと遊んでるのを見てるだけであたしは幸せよ?」
少年「……うん、ボクも楽しかった!」
母「うふふ、それは良かったわ!日も暮れてきたし行きましょうか?」
少年「そうだね、さっきまであんなに明るかったのに」
母「たくさん遊んだんだもの、しょうがないわ」
少年「楽しい時間は速く過ぎるんだね」
母「そうよ?だから大事にするの」
少年「そうだね…ボク、大事にするよ」
母「えぇ。そうなさい?」
少年「(また遊びたいな…)」
99:🎄 ◆WEmWDvOgzo:2012/12/29(土) 10:56:09 ID:PHb2NYku.U
母「それにしても…あの子たちと遊んでるあなた、まるで違和感が無かったわよ?」スタスタ
少年「そうかな?」スタスタ
母「えぇ。誰も14歳の男の子だなんて思わなかったでしょうね」ニコニコ
少年「……そんな事ないもん」
母「あ、今は女の子だったかしら?」ニヤニヤ
少年「っ……!しらない!」
母「うふふ。ところで、どの辺りなの?」
少年「えっと、確か…あっ!あそこだよ!」
母「まぁ、ずいぶん立派な……」ピタッ
少年「お母さま?どうしたの?」
母「これは…教会…?」
少年「うん、そうだよ?」
母「坊や、帰りましょ」
少年「えっ」
100:🎄 ◆WEmWDvOgzo:2012/12/29(土) 10:57:06 ID:PHb2NYku.U
少年「へ?な、なんで?」アセアセ
母「あなたも死んだおじいさまから聞いたでしょう?
教団の人間だけは、絶対にだめよ」
少年「で、でもボクを助けてくれた。いい人なんだよ?」
母「昨日はそうかもしれないけど今日はわからないでしょう?
お母さんはあなたを思って言ってるのよ」
少年「そ、そんな…急にどうして?」アタフタ
母「いいから帰るわよ、さぁ!」グイッ
少年「や、やめて!痛いよ?
それにあの人はそんな人じゃない!」
母「」キッ
少年「」ビクッ
母「ならいってらっしゃい!
行って教団の人間がどんなに酷いか知るといいわ!」
少年「……お母さま…」
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