むかしむかしのことです。
世界は深い緑が生い茂り、深い青が寄り添うように流れる清らかな一つの円でした。
穢れを知らず、怒りも悲しみもなく、渇くことのない喜びが波立てる大地は
争いを寡黙に、繋がりをおおらかにしました。
467:🎄 ◆WEmWDvOgzo:2013/3/9(土) 23:29:27 ID:ddmBHiklZY
母「坊や…行くわよ?」
カロル「…はっ…はっ…」ブルブル
母「目は閉じたまま。さ、手を繋いで?」パシッ
カロル「」ギュッ
母「……」スタ
カロル「ま、待って…。お母さま」
母「なに?」
カロル「埋めてあげなくちゃ…そのままにしたら、かわいそう」
母「そ、それも…そうね」
神父「い、いや。このままでいい。下手に動かせば証拠を失いかねないからな」
カロル「はっ…はっ…。そっか」ブルブル
母「……もう大丈夫?」
カロル「あと…服…服が旅の人の服だった…」ブルブル
母「…!目を開けたらダメって…!」
カロル「開けてないよ…。目をつむる前に見えちゃったんだ…」
母「……(旅人…あの時の…?)」チラッ
死体「」
母「うっ…」クラッ
神父「知って…いるのか?」
母「は、はい…」
神父「では手紙に書いてあった旅人とは…」
母「お顔は判別が付きませんが、おそらく…」
神父「や、やはり…」
母「違いますからね?」
神父「…も、ももちろん…疑っておらんよ」ブルッ
468:🎄 ◆WEmWDvOgzo:2013/3/9(土) 23:32:36 ID:1xCSy.MLpI
カロル「はっ…はっ…。
お母さま…。おじさま…。なにが起こってるの?」ブルブル
カロル「ボク…こわいよ」
母「心配しなくていいのよ…」ギュッ
神父「……(無関係を主張する為に演じているのか?
どこまでもずる賢い種族だ…)」
カロル「教えてよ…。不安なままじゃ苦しいよ…」
母「あたし達にも分からないの。今は離れるのが先よ?
お願いだから聞き分けてちょうだい?」
カロル「はっ…はい…」ブルッ
母「……」
神父「……」
死体「」プーン
469:🎄 ◆WEmWDvOgzo:2013/3/9(土) 23:35:51 ID:1xCSy.MLpI
神父「」スタスタ
カロル「まだ…開けちゃダメ?」スタスタ
母「そうね、もう大丈夫よ?」スタスタ
神父「(はたしてこのホビット共を大聖堂に招き入れていいものか…)」チラッ
カロル「ねぇ…。旅の人、死んじゃったの…?」
母「…忘れなさい」
カロル「忘れられないよ。目を閉じてる時、浮かんできて、ずっと怖かった…」
母「…ごめんね。あたしが付いているのに辛い思いばかりさせて…」
カロル「……!」
母「…お母さん、頼りないよね…?」
カロル「そんなこと、ない…。
お母さまがいてくれるから、頼っちゃって…いつもわがまま言っちゃうけど…」
母「……」
カロル「もう、この話はしないから…。悲しまないで?」
母「気遣ってくれてありがとう…」
カロル「気遣ってなんかないよ。心から思ってるもの?」ニコリ
母「」ニコッ
神父「(今はうまく演じているが、いつ本性を表すとも限らん…。
さすがに自由に身動きのとれる状態で連れていくのはまずい…)」
470:🎄 ◆WEmWDvOgzo:2013/3/9(土) 23:37:52 ID:1xCSy.MLpI
神父「な、なぁお前たち…」
母「なんです…?」
神父「村に寄っていいか?
もしかすれば村で何かしら手掛かりか掴めるかもしれない」
カロル「…!」
母「…そうですね。やはり通り過ぎてはいけない問題ですよね」
神父「い、いや…あ、あれだ。もし手掛かりを掴めればお前たちへのうた…ゲフンッゲフンッ!
…じゃなくて誤解が解けるかも分からんだろ?」
母「まだ疑ってらしたのね…?」ジト
神父「だ、断じて!断じて疑っておらんぞ!!」アタフタ
母「別に怒ってません…。襲ったりしないから、普通にしてください?」
神父「む…。り、了解した」
カロル「……」チラッ
母「…分かってるわよ。坊やも村へ行きたいんでしょう?」ニコッ
カロル「……!」パァァ
母「パッチ君とルーボイ君に会えるかは分からないけど、きっと二人も坊やを待ってるはずよ?」ニコニコ
カロル「えへへ…。約束したもんね?」ニッコリ
母「…坊や。耳を貸して?」
カロル「え?」キョトン
471:🎄 ◆WEmWDvOgzo:2013/3/9(土) 23:39:41 ID:ddmBHiklZY
母「よく聞いて?」コショコショ
カロル「うん…?」
母「……大聖堂に行ったら二人にも、もう会えないかもしれない。それでもいいのね?」コショコショ
カロル「…知ってる」
母「…ほんとにいいの?大聖堂にはあたしが行って、坊やはここに残ってもいいのよ?」コショコショ
カロル「っ…!?」
母「ラム君と仲直りすれば、きっとあたしがいなくても生きていけるわ?
あの子はまだ子供だけど、生きていく知恵を持ってるから」コショコショ
カロル「ダメ!そんなのやだ!!」
母「え…」
神父「!?」ビクビクビクゥッ
カロル「お母さまと一緒にいられなくなるなんてやだよ!!」
母「ぼ、坊や…。声が大きいわ?」
カロル「友達を欲しがったのはボクだけど、お母さまがいないなら…いらない!!」
カロル「みんな大切だけど…お母さまとは違うもん!」
カロル「ボクが不幸になっても…お母さまが幸せならいいから…!」
母「……」
神父「」ドキドキ
472:🎄 ◆WEmWDvOgzo:2013/3/9(土) 23:42:58 ID:ddmBHiklZY
母「坊や…。顔を上げて?」
カロル「……」スッ
母「あなたの気持ちはよく分かったわ?とても嬉しいの。
でもね。自分が不幸になってもいいなんて言葉を親に向けてはダメよ?」
カロル「……」シュン
母「親の役目は子供を幸せにすること。
子供の役目は幸せになること。
あなたが幸せじゃなくなったら、あたしは不幸になってしまうわ?」
カロル「でも…ボクはお母さまが…」
母「分かってる。坊やはあたしを思いやってくれてるものね?」
母「最近は人間と仲良くなって、短い間だけど経験を重ねてあなたは成長したわ?
あたしが不信感を持つと、諭してくれるほどに」
母「少しずつ親離れしてると思うと寂しいけれど、嬉しかった」
カロル「……」
母「……あたしもあなたが一番大事よ。坊や?
だけど、自分で望んだ繋がりをいらないなんて言わないで?」
母「"いらない"っていう言葉は、何よりも酷い言葉なの。
目の前にみんながいたら、坊やは同じように言える?」
カロル「……言えない。もしもボクが宣教師さまに言われたら傷付いてしまうもの」
母「…そうでしょ?どんなに心が乱れても、言ってはいけない言葉があるの。
一度の過ちですべて崩れ去ることもあるから」
カロル「はい…」ションボリ
母「本当にあたしの幸せを願ってくれるなら、曇りのないあなたでいて?」
カロル「お母さまが幸せになれるなら…がんばってみるね」ニコッ
母「えぇ。信じてるわね?」ニコニコ
神父「………」
神父「(疎外感が…)」ドキドキ
473:🎄 ◆WEmWDvOgzo:2013/3/9(土) 23:47:30 ID:1xCSy.MLpI
神父「い、一体なんの話をしてたのだ?」
母「ふふ。なんでもありませんわ?」
カロル「おじさま。早く村に行こう?」
神父「……あ、あぁ?」
母「二人はまた広場で遊んでるかしら?」ニコニコ
カロル「そろそろ起きる時間だもんね?」ニコニコ
神父「くっ…!」ズキッ
カロル「あっ…。目が痛いの?」
神父「う、うむ…。今度は先ほど…よりも、辛いな…!」ズキズキ
母「傷は浅いですけど、箇所が箇所ですものね…。
枝から菌が入ってるといけませんし、早く村に行きましょう?」
神父「い、いや…それには及ばん…。小僧、先ほどのように癒しの力で…治してくれ」
カロル「へ?さ、さっきも話したけど、ボクは力なんて知らないよ…?」
神父「う、嘘を言うな…!一時的とはいえ、力無くして…痛みを抑えることなど出来るものか…!」
カロル「そ、そう言われても…」
母「…先ほどはどうやったら治まったんです?」
神父「ふ、触れた時だ…!
触れた時に、確かに痛みが和らいだ…!」
母「……」パシッ
神父「う、うぅぅ…」ズキズキ
母「どうです?痛みは和らぎましたか?」
神父「ぐむむ…。だ、ダメだ…!」ズキズキ
母「これで分かりましたか?ホビットに癒しの力なんてありません」
神父「そんな…バカな…!先ほどは確かに…!?」ズキズキ
母「きっと偶然ですよ。これ以上傷が開いてしまう前に行きましょう?」
神父「うぐぅ…!」ズキズキ
カロル「……」オロオロ
474:🎄 ◆WEmWDvOgzo:2013/3/10(日) 17:49:04 ID:v12GvXB3vM
――村――
大人2の妻「あぁ…うぅ…」シクシク
ルーボイ「……ぐ…あぁ…!」
大人2の妻「いったい…どうなってるの…?」
大人2の妻「テパ君と出掛けて、帰って来ないかと思ったら…こんな大ケガして…!」
ルーボイ「……痛い…いはいよ。母ひゃん…」
大人2の妻「ごめんね…。村のみんなは倒れててお医者さんも呼べないのよ…」
ルーボイ「腕…熱ひんらよ…。なんほかひれよ…!」
大人2の妻「辛いよね…。ごめん…ごめんね…!」シクシク
ルーボイ「なんれらよ…。なんれらよぉ…!?」
大人2の妻「こんな時に…教団は何をしてるのよ…!
うちの息子がこんなに苦しんでるのに…。なにが救いよ…!なにが信仰よ!」
ルーボイ「うぅ…!」
大人2の妻「(みんな一晩中騒いだ挙げ句、朝になったら倒れてて…)」
バンッバンッ
大人2の妻「ひっ!」
バンッバンッ
大人2の妻「いい加減にしてよ!さっきからなんなの!?」
シーン
大人2の妻「(ああしておかしくなった人までいる…!)」
大人2の妻「昨日、なにがあったって言うのよぉ…。うぅ…」シクシク
ルーボイ「いへぇよぉ…!」グッタリ
475:🎄 ◆WEmWDvOgzo:2013/3/10(日) 17:51:30 ID:3s89PAnmDA
――大聖堂(地下牢)――
宣教師「はぁ…」ズーン
ジョー「……」
宣教師「」ズーン
ジョー「……」イライラ
宣教師「ジョーさん…」
ジョー「無理だ」
宣教師「まだ何も言ってませんよ!?」
ジョー「どうせ出してくれって言うんだろう?」
宣教師「はい…」
ジョー「無理に決まってんだろう?
あんたを出せば俺はどうなる?
間違いなく厳罰を強いられるんだぞ?」
宣教師「出してくださらなくともよいのです!
鍵を置いて、少しの間よそ見していただければ…」
ジョー「ふざけるな!」
宣教師「どうしても…ダメですか?」ウルウル
ジョー「諦めろ」
宣教師「諦めたらそこで試合終了ですよ?」
ジョー「うるさい!!」
476:🎄 ◆WEmWDvOgzo:2013/3/10(日) 17:53:56 ID:3s89PAnmDA
ジョー「そりゃあんたの気持ちは分かるぜ?
だからと言って俺がどうこう出来る問題じゃないんだ」
宣教師「分かってますけど…」
ジョー「ふぅ…。落ち込むのは分かるよ。けど他人の心配より自分の心配をしとけよ。
いつ司祭様が答えを出すかもわからないんだぞ?」
宣教師「…構いませんよ。司祭様が何をおっしゃっても…」プイッ
ジョー「なに言ってんだ!?
どんな状況でも、まずは自分だろ!」
宣教師「そう言いながらジョーさんは私の為に交代せず、ここにいてくれるじゃないですか…?」
ジョー「う、うるさい!交代しても暇だから付き合ってやってるだけだ!」カァァ
宣教師「ふふ…」ニコッ
ジョー「くっ!」タジタジ
宣教師「ジョーさんは優しいですね?」ニコニコ
ジョー「…ほっとけ!」
477:🎄 ◆WEmWDvOgzo:2013/3/10(日) 17:57:36 ID:3s89PAnmDA
ジョー「それに心配しなくても、もうすぐ奴らに会えるさ」
宣教師「どういうことですか?」
ジョー「さっき聞いたんだよ。代わりの神父が昨日、村に行く途中でホビットの居場所が書かれた手紙を見つけたってな」
宣教師「手紙を…?」
ジョー「あぁ。その手紙はホビットが書いた物で、奴らの飼い犬が首に下げていたらしい」
宣教師「マルクくんですね!しかし、なぜ神父様が…」
ジョー「聞いた話だと神父はあんたの修道服を着てたんだとよ。
犬は匂いで勘違いして神父に手紙を託したそうだ」
宣教師「また使い回しですか…。ホントに司祭様は倹約家と言いますか、ケチと言いますか…」ブツブツ
ジョー「…やめろ。誰かに聞かれたらどうすんだ」
宣教師「う…すみません」
ジョー「ったく!それでだ。司祭様が神父に捕まえてくるよう言ったらしい」
宣教師「なんですって!?」
478:🎄 ◆WEmWDvOgzo:2013/3/10(日) 17:59:58 ID:3s89PAnmDA
ジョー「あんたが足掻いたとこでどうにもならないんだよ。もう諦めたらどうだ?」
宣教師「困ります!そんな事…私が許しません!」
ジョー「はぁ…!?」
宣教師「あの親子は悪事など犯していません!
それなのに捕らえるなんて理不尽極まりない!」
ジョー「お、落ち着け!いいか?
ホビットは存在が罪だ。伝承にもあるだろ。人間に害を成した奴らだぞ?」
宣教師「そんなものは迷信です!」
ジョー「バカを言え!実際に奴らは人間よりも長く生きる。力を奪った証拠だ!」
宣教師「たとえ、そうだとしても…何千年も前の話でしょう!?」
ジョー「そりゃそうかもしれないけど…」
カツンカツン カツンカツン
ジョー「?」
付き人1「何事だ?」
ジョー「だ、ダガ様…!」
ダガ「やけに騒がしいな…。またこいつか?」ギロッ
宣教師「…私はこいつでは…!」キッ
ジョー「いえ、何事もなく!」
479:🎄 ◆WEmWDvOgzo:2013/3/10(日) 18:02:19 ID:3s89PAnmDA
ジョー「地下だから響きやすいんでしょう。お騒がせして申し訳ない」
ダガ「はっ!どうだか…?
お前ら何か企んでんじゃないのか?」
ジョー「た、企んでなんかいませんよ!」
ダガ「その割りにゃ牢屋番を一人で買って出たらしいじゃないか?
トトの奴がぼやいてたぞ?ジョーが必死に頼むから譲ったが、おかげで雑用ばかりだってな」
ジョー「は、はぁ…」
ダガ「くれぐれもこいつをここから出すなよ?
もし逃がしでもすれば司祭様の判断を待たず、俺が制裁を下してやるよ?」
ジョー「」ブルッ
ダガ「」チラッ
宣教師「」ムスッ
ダガ「ちっ…。こんなガキのどこがいいんだか…?
司祭様も目が弱ったものだな」
宣教師「聞き捨てなりませんね」ムッ
ダガ「なんだぁ?」
宣教師「私はガキではありません」
ダガ「なんだと…?」
ジョー「お、おい!」アタフタ
480:🎄 ◆WEmWDvOgzo:2013/3/10(日) 18:05:04 ID:v12GvXB3vM
ダガ「もう一度言ってみろよ?」
宣教師「何度でも言いますよ。私はガキではありません」
ダガ「ふ…。生意気な奴だぜ。俺から見ればまだまだ青いガキさ」
宣教師「…それはあなたが歳をとっているからでしょう。
世間的に見れば私は十分、大人です」
ダガ「減らず口を叩きやがって…」
宣教師「……」
ジョー「おい!やめとけ!これ以上なにも言うな!」
ダガ「目上の人間に対する礼儀もなってねぇときた…。
お前みたいな邪教徒を気に入る司祭様が分からんぜ」
宣教師「妬んでるのですか…?」クスリ
ダガ「あぁ?」ピクッ
ジョー「ば、ばか!やめとけって言ってるだろ!」
ダガ「」ギロッ
ジョー「え…」
ダガ「…黙ってろよ」
ジョー「す、すいません」ブルッ
481:🎄 ◆WEmWDvOgzo:2013/3/10(日) 18:07:19 ID:v12GvXB3vM
ダガ「おい、今のはどういう意味だ?」
宣教師「司祭様の付き人と言えば聞こえはいいですが、実際は護衛でしかないですものね…。
人を従えられず発言力も無く、上に行く事も無いから先も望めない…」
宣教師「年老いて務められなくなれば書室の番にでも回され、書物の整理に余生を費やす事になるんじゃないですか?」
ダガ「……くっ」
宣教師「気に入られていたかは知りませんが、あなたの目から見て私は司祭様に期待されていたのでしょう。
司祭様が私ばかり目にかけるのを妬んでいたのでは?」
ダガ「……少しばかりお勉強が出来るだけで調子に乗るなよ?」
宣教師「そのようなつもりはありませんが?」
ダガ「司祭様はもうお前なんぞ見ちゃいねぇぞ…」
宣教師「……」
ダガ「ふふ…。そうだ…。なんなら俺が罰を提案しようか。
お前が最高に苦しむとっておきの罰をなぁ?」
宣教師「お好きなように。どれだけ罰を与えられようと、あなたにだけは屈しませんから」
482:🎄 ◆WEmWDvOgzo:2013/3/10(日) 18:10:24 ID:v12GvXB3vM
ダガ「ふ…。楽しみにしてるんだな?」ニヤリ
宣教師「…あぁ。そういえば司祭様が以前、こんな事をおっしゃってました」
ダガ「?」
宣教師「私を本当の娘のように思ってくださっていると?」ニコッ
ダガ「……!」イラッ
宣教師「司祭様に愛していただけて私は幸せ者です」ニコニコ
ダガ「ふ…ふふ…。そうか。それなら後悔させてやるよ…。
司祭様に愛されたが為にお前は絶望を味わうんだ…」
宣教師「お手柔らかにお願いしますね。"おじさま"?」ニッコリ
ダガ「」ブチッ
ジョー「だ、ダガ様…?」
ダガ「……」ドンッ
ジョー「……!」ドテッ
宣教師「……」
483:🎄 ◆WEmWDvOgzo:2013/3/10(日) 18:13:23 ID:3s89PAnmDA
カツンカツン
ジョー「ふぅ…。行ったか…!」
宣教師「……」
ジョー「なぁ。あんたなに考えてんだよ?」
宣教師「……」
ジョー「さっきのはまずいぜ…?」
宣教師「……」
ジョー「……」
宣教師「……」
ジョー「なんとか言えよ!?」
宣教師「」ビクッ
宣教師「お、大きな声を出さないでください!?
もう少しで鼓動が落ち着きそうなのですから!」
ジョー「はぁ?さっきまで普通だったじゃないか?」
宣教師「…あんな風に言われたら、誰だってムッとするじゃありませんか?」
ジョー「そりゃそうだけどさ…。あんたらしくなかったぜ?」
宣教師「あの方とは昔から犬猿の仲なんです。
今回のようにあからさまに衝突した事はなかったですけど…」
ジョー「へー…」
484:🎄 ◆WEmWDvOgzo:2013/3/10(日) 18:14:34 ID:3s89PAnmDA
ジョー「にしてもなんであの人があんたに嫉妬するんだ?
そもそも役目が違うんだから、競う事もないだろう?」
宣教師「あの方も元は宣教師だったそうです。
まぁあまり布教に向いた人柄で無いとされて、任を降ろされたようですが…」
ジョー「司祭様に見限られた訳か。納得だな。
あんなガチムチに教えなんか受けたって入ってこねぇよ」
宣教師「まぁそれはそれとしてジョーさん。相談があるのですが…」
ジョー「不可能だ」
宣教師「まだなにも…!?」
ジョー「どうせまた出せって言うんだろ!
こっちはさっき脅されたばっかだぞ!?」
宣教師「そこをなんとか!」ウルウル
ジョー「ダメなもんはダメだ!おとなしくしてろ!」
宣教師「グスンッ…。そんなひどい…」メソメソ
ジョー「はぁ…。どうなるか知れねぇってのに気楽なもんだよ…」
485:🎄 ◆WEmWDvOgzo:2013/3/17(日) 02:17:12 ID:ddmBHiklZY
――村――
母「目は色メガネで隠したし、問題無さそうね。坊やは大丈夫?」
カロル「うん。頭巾を被ったから平気だよ」
神父「ぐ…うぅ…」
母「神父さんもちゃんと付いて来てくださいね」
神父「あ、あぁ…」
カロル「早くお医者さまに行かなきゃ!」
母「その為にもまずは村の人に話を聞かなきゃね。
お医者さんがどこにいるか分からない内は動きようがないわ?」
神父「わ、私も…まだこの村には司祭様のお供で数回来た程度で…よく知らん…。
と、とにかく…この痛みだけでも抑えなければ…!」ズキズキ
母「……」
母「(さっきまで本当にどうなっていたのかしら…。こんな深い傷…そうそう治りはしないはずなのに…)」
カロル「あ、村の人だよ!」
村の大人5「くく…うひひ…」
母「…様子がおかしいわね?」
神父「な、なんでもいい…!今は医者の場所を聞くのが先決だ!」
母「…そうですね。あたしが話を聞いてきます。
二人はここで待っていてください」
神父「う、うむ…」
カロル「おじさま。もう少しの辛抱だから、がんばってくださいね?」
神父「あぁ…」
486:🎄 ◆WEmWDvOgzo:2013/3/17(日) 02:20:16 ID:ddmBHiklZY
村の大人5「へへへ…」ニヤニヤ
母「あの…旅の者なんですが、お話よろしいですか?」
村の大人5「あは…?」ニヤニヤ
母「…この村にお医者様はいますでしょうか?
道中で会った教団の方がケガをなさってまして…」
村の大人5「教団?」ピクッ
母「あ、はい」
村の大人5「ひ…!お、おらぁなんも知らねぇよ!」
母「この村の方ですよね。知らないんですか?」
村の大人5「ひっ!ひえー!」ダッ
母「あっ…」
母「なに…?なにかまずい事言ったかしら?」
神父「ど、どうしたのだ?」
カロル「逃げてたね…。お母さまは人間のカッコをしてるのに…」
神父「くっ…!見破られたんじゃないのか?
こっちは激痛を堪えとるというに…」
カロル「……」
母「なんだったのかしら?突然逃げてしまわれたけど」スタスタ
神父「お、おい!お前あの村人になんと言ったんだ?」
母「普通に接しましたよ?
教団の方がケガをなさってるからお医者様の所へ案内してほしいと」
神父「それであんな怯え惑う訳があるまい!?
バレたんじゃないのか!?」
母「そう言われても…。特別気付かれた様子でもありませんでしたよ?」
神父「くっ!と、とにかくここにいても何にもならん。他の人間に聞きに行くぞ!」
母「はぁ…」
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