むかしむかしのことです。
世界は深い緑が生い茂り、深い青が寄り添うように流れる清らかな一つの円でした。
穢れを知らず、怒りも悲しみもなく、渇くことのない喜びが波立てる大地は
争いを寡黙に、繋がりをおおらかにしました。
447:🎄 ◆WEmWDvOgzo:2013/3/2(土) 20:18:27 ID:tKolNl3U7M
母「今まで坊やが望むなら…そう思って目を瞑ってきたけど」
カロル「……」
母「今度は認められない!
教団の本部に行けばあなたは一生陽の目を見られなくなる!
ささやかな幸せすら、失ってしまうのよ!?」
神父「き、貴様!人聞きの悪いことを言うな!?」
母「ならあなたはなぜ坊やを拐おうとしたの!?」
神父「そ、それは…」ゴニョゴニョ
母「あたし達に話せないような理由なんでしょう?
話せば坊やが考えを変えるかもしれないから、話せないんでしょう?」
神父「あ、いや…それはだな…」ゴニョゴニョ
母「この人間はあなたが司祭に会いたがる気持ちを利用してるだけよ!
何か企んでるに決まってるわ!」
カロル「……」
448:🎄 ◆WEmWDvOgzo:2013/3/2(土) 20:20:58 ID:tKolNl3U7M
神父「そ、そんな事はないぞ。私はお前の熱い気持ちに打たれたのだ!」
ラム「信じちゃダメだよ。人間は平気で嘘をつく生き物だから」
神父「余計なことを言うな!」
母「お願いよ!考え直して…?」
カロル「……それでも、行かなきゃ」
神父「よーし、よく言った!」
ラム「なんでさ。君が行く必要なんてないだろ?」
カロル「ボクじゃなきゃダメなんだ」
ラム「……!?」
カロル「ボクがちゃんと話さなきゃ。宣教師さまは悪くないって…。
そうしないと宣教師さまが不幸になってしまうもの」
ラム「宣教師…?」
母「……!」
母「(まさか…宣教師様を…)」
449:🎄 ◆WEmWDvOgzo:2013/3/2(土) 20:22:26 ID:aGBdsxic0Q
カロル「お母さま。おねがい。ボクに行かせて?」
母「ダメよ!行かせないわ!」
カロル「お母さま…」
母「…宣教師様は坊やの不幸を望まないはずよ…。
あなたを恨んだりしないわ?」
カロル「…だから助けないの?」
母「違う!そうじゃないの!」
カロル「宣教師さまは本気でボクたちを助けようとしてくれたよ…?」
母「分かってる!でも!…あたしのたった一人の家族なの!」
母「もう…失うのはたくさん!」
母「あたしには……あなたしかいないのよ…!」ウルッ
ラム「……」
カロル「……ごめんなさい。お母さま…」
母「なっ…なんで…なんで分かってくれないの?」
カロル「……」
母「あたしはただ、あなたが心配だから……」
450:🎄 ◆WEmWDvOgzo:2013/3/2(土) 20:25:30 ID:aGBdsxic0Q
カロル「ねぇ。お母さま」
母「え…」
カロル「村で約束したこと、覚えてる…?」
母「っ…!」
カロル「ボクは覚えてる。お母さまとの大切な約束だから」
母「……」
カロル「たとえば相手が人間でも……」
母&カロル「友達なら最後まで信じなさい」
ラム「……!」
カロル「……えへへ。やっぱり…覚えてた?」
母「自分で言ったことだもの…。覚えてるに決まってるわ」
カロル「……」ニコッ
451:🎄 ◆WEmWDvOgzo:2013/3/2(土) 20:27:35 ID:tKolNl3U7M
カロル「じゃあもうひとつ思い出してみて?」
母「…?」
カロル「宣教師さまが手を差し伸べてくれた時のこと」
母「それも、覚えてる……」
カロル「今まで…あんなことって、無かったでしょ…?」
母「……そう…ね」
カロル「…ボクが村でいじめられた時も、お母さまを傷付けられた時も、助けてくれたじゃない?」
母「……」
カロル「ルーボイくんとパッチくんだって。
宣教師さまがいなかったら…ホントの友達になれなかったと思う…」
母「(坊や……)」
カロル「みんな…みんな…。宣教師さまが…くれたんだよ?」グスンッ
母「……」
カロル「」グシグシ
母「分かったわ。あたしはもう何も言わない…」
カロル「…お母さま!」
母「けど、一人では行かせないからね?」
カロル「え…。でもそしたらお母さまが…」
母「これだけは譲らないわよ?」
452:🎄 ◆WEmWDvOgzo:2013/3/2(土) 20:30:26 ID:tKolNl3U7M
カロル「ラムくんはどうするの?
お母さまがいないと…一人にしちゃう」
ラム「僕のことは気にしないで」
カロル「え?だって…」
ラム「カロルくん達とは、ここで別れるよ」
カロル「…そ、そんな…」
ラム「同じホビットでも君は何かが違うみたい。
はっきり言って、不愉快だ」
カロル「…!」
ラム「君とは会ったばっかりだし、その人間も知らないけどこれだけは言えるよ。
君は人間を間違った目で見てる」
カロル「そんなこと…ないもん」
ラム「人間は汚い。汚いんだ。
君はまだ、本当に奪われる怖さを知らないから…」
カロル「……」
ラム「……あんまりお母さんを困らせたらいけないよ?
後悔するようになってから、思い出してしまうから」
カロル「……」
母「……ラム君」
ラム「……?」
母「ごめんなさいね…」
ラム「いえ…。それじゃ…」
カロル「ら、ラムくん…!」
ラム「バイバイ。カロル君!」ニコッ
カロル「っ……」
ラム「」スタスタ
スタスタ………
453:🎄 ◆WEmWDvOgzo:2013/3/2(土) 20:41:17 ID:tKolNl3U7M
神父「ふぅ…。ようやく行ったか」
神父「(あの小僧め。覚えてろよ。この目の恨みは忘れんからな…)」
カロル「行っちゃった…」
母「…あたし達も行きましょう。さ、案内してちょうだい」
神父「私に命令するな!!」
カロル「(ラムくん…)」
母「坊や。行きましょう?」
カロル「……」
母「出会いと別れは必然的に繋がっているものよ…」
母「これも、あなたの選んだこと。
坊やは無防備すぎるから、学ばなくちゃいけないわね」
カロル「……みんなで仲良くはなれないのかな?」
母「難しいわね。あたしは半ば諦めてるわ」
カロル「」シュン
母「……出来ない事っていっぱいあるの。
あたし達には何が出来るか、少しずつ知っていきましょう?」
カロル「はい…」
神父「いつまでくっちゃべってるつもりだ!?」
母「あら、ごめんなさい。
ほら、坊や。行きましょう?」
カロル「……」コクリ
454:🎄 ◆WEmWDvOgzo:2013/3/3(日) 19:37:54 ID:Opd5Ib3YrA
――森の道――
神父「(これで手柄は頂いたも同然だ…)」スタスタ
神父「くっくっく…」
母「なにを笑ってらっしゃるの?」
神父「お、思い出し笑いだ。気にするな」
母「……ずいぶんいやらしいお顔でしたけど」ジト
神父「な、な、なな何を言うか!?」
母「」ジト
神父「じゃ、邪推するな!何もいやらしい事など考えとらんわ!」
母「どうかしらね?」
神父「わ、私が朝っぱらから、そんな妄想をするように見えるか!?」
母「見えますわ」キッパリ
神父「な、にゃ、にゃにをうっ!?」プンスカ
母「ま、艶話は一つも無さそうですが…」クスリ
神父「き、貴様!私を侮辱する気か!」
母「大聖堂はまだかしら…」
神父「話を反らすなぁぁ!!
こうなればもう許さん!聞かせてやるぞ!
とっておきのめくるめく恋バナをなぁ!!」
母「別にいいですよ。興味ありませんから」
神父「貴様が始めた話だろうがぁ!?」
455:🎄 ◆WEmWDvOgzo:2013/3/3(日) 19:40:17 ID:8m3SaG5X5s
カロル「はぁ」
母「あら、どうしたの?溜め息なんて吐いて」
神父「き、貴様ら少しは興味を持たんかぁ!?
私が若い時はそりゃメイクラブしたものだ!」
カロル「……」ウジウジ
母「落ち込まないの。下ばかり向いてると幸福が逃げていくわよ?」ポンポン
カロル「はい…」ウジウジ
母「そうだわ。話を変えましょう?
坊やは人間の話を聞きたいんでしょう?」
カロル「うん…」ウジウジ
母「ちょうどいいじゃない?
せっかく人間といるのだから道中、お話を聞かせてもらったら?」
神父「勝手に決めるな!」
母「あら、いいじゃありませんか?
あたし達はあなた方の思惑に乗ってあげてるんですから」
神父「こ、この小僧とて司祭様に会いたがっているではないか?
利害は一致しているのだから、私が何かしてやる謂れはないぞ」
456:🎄 ◆WEmWDvOgzo:2013/3/3(日) 19:42:59 ID:8m3SaG5X5s
カロル「……いいのかな?」
母「ね?そうなさい。少しは気も紛れるはずよ」
神父「無視か!?」
カロル「…いつまでも落ち込んでられないもんね」
母「そうよ?ラム君も落ち込ませるつもりは無かったはずだもの。
一人で傷付いていたら変に思われるわ?」
カロル「…そうだね!」
神父「くっ…。こいつら、もしかして私をナメとるな?」
母「ほら、声をかけてご覧なさい?」
カロル「う、うん!…えと……」モジモジ
神父「(全部聞こえとるっつぅに…)」ブツクサ
カロル「……」モジモジ
母「どうしたの?さっきまで普通にお話してたじゃない?」
カロル「な、なんだか…緊張しちゃって…」モジモジ
母「あぁ…。さっきは勢いで話せる状況だったものね」
母「(そういえば…坊やはまだまともに自分から人間と接した事がなかったわね…。
まぁ大聖堂に行ってしまえば嫌でも接する事になるのだろうけど…)」
457:🎄 ◆WEmWDvOgzo:2013/3/3(日) 19:45:04 ID:Opd5Ib3YrA
母「大丈夫よ。あの人間は優しいから?ね?」
カロル「う、うん…」モジモジ
神父「("あのおじさんは優しいから"でこちらにプレッシャーを掛ける母親は全種族共通なのだな…)」
カロル「あ…あ…あの…お、おじさま…」ゴニョゴニョ
神父「なんだ?」ギロッ
カロル「」ビクッ
神父「……?」
カロル「」ブルブル
神父「さっさと言わんか!?」
カロル「っ…!」タッタッ
神父「ん?なぜ逃げる?」
カロル「」ポフッ
母「あらあら。どうしたの?突然甘えん坊になっちゃって?」ポンポン
カロル「」シクシク
神父「(なぜ泣く!?)」ギョギョッ
母「そう。怖かったの?」ポンポン
カロル「」コクコク
母「」キッ
神父「」ビクッ
458:🎄 ◆WEmWDvOgzo:2013/3/3(日) 19:46:21 ID:Opd5Ib3YrA
母「」ジーッ
神父「(なんだ、その目は!?私のせいとでも言う気か!?)」
母「」ジーッ
神父「(くそっ…。無言の圧力をかけてきおって…)」
母「坊やー?もう大丈夫よー?
おじさまは今、ものすごく上機嫌だから?」ポンポン
カロル「グスッ。…ホント?」
母「ホントよー?だから、ね?」チラッ
神父「」ビクッ
カロル「……」チラッ
神父「え……」アタフタ
カロル「」ジーッ
神父「へ、へへ…?」ニンマリ
カロル「っ…!」ゾワッ
神父「へ、へへへ…へへ…」ヒクヒク
カロル「ひっ…ぅ……」シクシク
母「そう…。やっぱり怖かったのね?」ダキッ
神父「なぜだぁぁぁぁ!!!?」ブチッ
459:🎄 ◆WEmWDvOgzo:2013/3/3(日) 19:47:47 ID:Opd5Ib3YrA
神父「いい加減にしろ!聞くなら聞く!聞かないなら聞かない!
貴様らホビットはその程度の分別も付けられんのか!?」
カロル「……ご、ごめんなさい」グシグシ
神父「(そのメンタルでよくさっきまでの罵声に耐えられたな…)」
母「最初は一番気になる事を聞いてみたら?」
カロル「えと、じゃあ…目が無くなって不便ですか?」
神父「」イラッ
母「坊や。そこは触れてはダメよ…」
カロル「あ、ご、ごめ…なさ……」
神父「不便に決まっとろうがぁぁ!!
ずっと痛いわ、方向感覚も掴めんわ、不便以外の何物でもないわ!!」
カロル「ひっ……」キュッ
母「怒ることないじゃないですか?
坊やはまだ人間との接し方がよく分かってないんですから」
神父「今のは人間だろうがホビットだろうが怒るわ!!
目を潰されたばかりの人間に不便ですかなんて聞く奴があるか!?」
母「そ、それはそうですけど…大人なのですから」
神父「っ…!ホビットごときに気遣いなどできるか!」
母「……」
カロル「あの…ごめんなさい」シュン
神父「……ふん!」
460:🎄 ◆WEmWDvOgzo:2013/3/3(日) 19:50:20 ID:8m3SaG5X5s
カロル「あ、そうだ!なんでボクたちのいた所が分かったんですか?」
神父「む?あぁ…昨日村に行く道中で出くわした犬がしきりに構ってきてな。
そこでお前たちの書いた手紙を見つけたのだ」
カロル「マルクだ…」
母「渡す相手を間違えたのね…」
神父「あの犬は今頃、本部で…たっぷりかわいがられてるだろうな…。くくく!」
カロル「(マルク……。待っててね。)」グッ
――その頃(大聖堂)――
マルク「くぅん!」
シスター1「かわいいぃぃ!」ギュッ
シスター2「あっずるい!あたしにも抱かせてよ?」
シスター3「その次はあたしね?」
マルク「あぅん……」フリフリ
シスター1「お名前なんて言うんですかー?」ナデナデ
マルク「わんっ!」
シスター1「ワンちゃんっていうのね。かわいい!」スリスリ
シスター2「もー!早く代わってよ」
シスター1「ごめんごめん!」テヘペロ
シスター2「ワンちゃんおいでー!」
マルク「わんっ!」ポフッ
シスター2「いいこいいこ!」ナデナデ
シスター3「いいなぁ。しっぽ掴みたーい」
マルク「くーん!」フリフリ
―――――――
461:🎄 ◆WEmWDvOgzo:2013/3/3(日) 19:53:45 ID:8m3SaG5X5s
神父「くっくっく。誤算だったな?
まさか別の人間が宣教師の修道服を着ているとは思わなかっただろう?」
カロル「え…おじさま、宣教師様の服を着てるの?」
母「そのご年齢で女装趣味ですか…」ドンビキ
神父「変な勘違いをするな!
奴が着ていたのは男性用の修道服だからと、司祭様が使い回させたのだ!」
母「そうなのですか?」
神父「あぁ。本来宣教師とは旅の中で出会った者に神の教えを授ける者。
信者から得た施しで生計を立てる上に位も低く、辛い役目だ」
神父「故に本来は男が任を請け負うのだが、奴は変わり者でな」
カロル「変わってる…?」
神父「本部で勉学に勤しみ、信仰を深めたにも関わらずシスターではなく、宣教師の道を選んだのだ」
神父「シスターになれば神父や司教に仕える事ができて、うまくいけば出世の足掛かりともなる。
それなのに『自分の目で世界を見て、より良い教えをまっとうしたい』などと言って宣教師になった」
神父「だから奴は男の修道服を着ていたのだ。
何もそこまで徹底する必要は無かったと思うが」
神父「変わってるな。どう考えても変わってる」ウーン
カロル「ふふ!」ニコリ
母「立派ねぇ…。どこかの神父さんと違って?」チラッ
神父「おい、誰の事だ!?」
母「さぁ。誰の事かしら?」
神父「くそっ…!」
カロル「宣教師さまのお話、もっと聞かせてください!」
神父「ん…?」
神父「(先ほどまでの怯えが嘘のようだな…。
まぁ少し話に付き合うだけでおとなしく付いてくるのなら御の字だが…)」
462:🎄 ◆WEmWDvOgzo:2013/3/7(木) 08:06:09 ID:Ec3umLyQhs
――教会――
カロル「……大丈夫ですか?」スタスタ
神父「黙れ。何も言うな」ボロッ
カロル「……」シュン
母「…そっとしてあげなさい?」スタスタ
カロル「はい…」
神父「(木にぶつかるわ、足元がおぼつかんわ、前が見えない恐怖が続くわ…)」
神父「(片目とはこんなにも恐ろしいものか…。
一生付き合っていくとなると、辛いな…)」
神父「(それもこれも…。くそっ…!)」
母「……」
カロル「あれ?ここって…」
神父「大聖堂に行く前に持ってきた荷物をまとめねばならんのでな。
お前たちはここで待っていろ」
カロル「はい…」
母「……」
神父「」ガチャ
キィィ
神父「む?」
死体「」プーン
神父「うおっ!?」ビクビクビクゥ
カロル「」ビクッ
母「なにかしら?」
神父「な…な…な…なんだ…これは……?」ヘナヘナ
母「様子がおかしいわね?」
463:🎄 ◆WEmWDvOgzo:2013/3/7(木) 08:07:21 ID:Ec3umLyQhs
神父「(こ、これは…まちがいなく…!)」ブルブル
オジサマー?
神父「(一体、誰が…?教会には誰もいなかったはずじゃ……)」
ドウシタンデスカー?
神父「(うっ…。それにしても…惨い有り様だ…)」ウプッ
タタタッ キャッ!?
神父「(とにかくここを離れなければ…ん?)」
イヤァァァァァア!!
神父「(そういえば…宣教師以外に教会を使っていたのは…?)」ブルブル
オカアサマ? ドウシタノ? アッ…!
ダメッ! ミテハダメヨ!!
神父「(手紙には……)」ブルブル
464:🎄 ◆WEmWDvOgzo:2013/3/7(木) 08:09:40 ID:YGdwWja6oE
――手紙(>>382)――
きょうかいに かえったら だめです
せんきょうしさまも あぶないです
神父「(教会から遠ざけようとしたのは……これを、隠すため…?)」ブルブル
たびびとに おわれてます
神父「(ということはこの死体は……)」ブルブル
ぼくと おかあさまは もりの おおきな かれきの したに います
神父「(大きな枯れ木…人気の無い場所を…指定?)」ブルブル
まってます
ずっと まってます
神父「」ゾクッ
神父「(事実、あのラムとかいうホビットは…私の目を…奪った)」ブルブル
『おじさま。大丈夫ですか?』
『いい加減にしてちょうだい!
この子はあなたを助けたかっただけなのよ!?』
神父「(しかし、それならなぜ私を……?)」
『奴らは狡猾な種族。
奴らの言葉に信用を向ければ、たちまちの内に利用され、喰い物にされるだけじゃ』
神父「………」
465:🎄 ◆WEmWDvOgzo:2013/3/9(土) 23:17:44 ID:1xCSy.MLpI
カロル「はっ…!はっ…!」ビクビク
母「(血の付いた石…砕かれた頭…。誰かが……でも、誰が…?)」ギュッ
カロル「」ビクビク
母「坊や。そのまま目を閉じてなさい?いいわね?」ナデナデ
カロル「う…うん…」ビクビク
母「神父さん…。平気ですか?」
神父「」ビクッ
母「早くここを離れましょう。ここにいたら危険ですわ…?」
神父「……」ブルブル
カロル「(錆びた臭いが…する。アレ…死んでるの?)」ビクビク
母「神父さん…?」スッ
神父「たし……るな」ブツブツ
母「へ…?」
神父「私に触るなぁ!!」
母「」ビクッ
カロル「(あの服…旅人にそっくりだった…)」ビクビク
466:🎄 ◆WEmWDvOgzo:2013/3/9(土) 23:21:08 ID:1xCSy.MLpI
母「どうなさったんですか…?」
神父「ひっ」ズザザッ
母「神父さん…?」
神父「わ、分かってるな…?
私は教団の人間だ。手にかければ、もうただでは済まんぞ?」
母「まさか…疑ってるんですか?」
神父「い、今ならまだ間に合う!
己の罪をよく理解し、受け入れれば神もお前たちを赦してくださるだろう!」
母「誤解しないでください!あたし達は違います!」
神父「わ、分かっているとも!故意ではなかろうよ!
だが罪は罪だ!おとなしく……」
母「やめてください!!」
神父「……」
母「あたしと坊やは…一昨日から教会を発っています。
それはあなたも知ってるはずでしょう?」
神父「あ、あぁ…知ってるとも」
母「なら疑うようなまねはよしてください…。
あたしも坊やも…混乱してるんです」
神父「う、うむ…。すまなかった…」
母「いえ…とにかく行きましょう」
神父「そ、そうだな…」
神父「(そんなもの…殺した後に教会を離れたと考えれば、なんのアリバイにもならん…)」
神父「(だが刺激したらまずい…。ここは言う通りにしておくか)」
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