むかしむかしのことです。
世界は深い緑が生い茂り、深い青が寄り添うように流れる清らかな一つの円でした。
穢れを知らず、怒りも悲しみもなく、渇くことのない喜びが波立てる大地は
争いを寡黙に、繋がりをおおらかにしました。
327:🎄 ◆WEmWDvOgzo:2013/1/27(日) 17:02:51 ID:NaSHqV57P6
旅人「まぁジョークはこの辺にしておいて、パッチ君って言ったかな?」
パッチ「は、はい」ドキッ
旅人「君はなぜホビットの少年といたんだい?」
パッチ「そ、それは…」
旅人「それはって事は、やはりホビットだったのか」
パッチ「あ…ち、違います!」
旅人「今さら隠しても無駄だよ〜?」
ダン「正直に言うんだぞ?」
パッチ「ただの友達です…」
旅人「」ニヤリ
パッチ「」ゾクッ
旅人「ところで取りに行ったお花はどこにあるんだい?」
パッチ「」ハッ
旅人「手には持っていないみたいだし、ポッケの中かなー?」
パッチ「あ、歩いてて落としたみたいです…」ドキドキ
旅人「ホントにぃ?」ジロジロ
パッチ「は、はい」プイッ
328:🎄 ◆WEmWDvOgzo:2013/1/27(日) 17:06:15 ID:TbIaTri9k.
旅人「ふーん。そういえばお父さん?」
ダン「なんだ?」
旅人「今日は何か特別なイベントはありますかな?たとえば誕生日とか…」
パッチ「」ギクッ
ダン「……いや、ないな?」
旅人「そりゃおかしいですな?
この子は確かに『父親の誕生日だから花を送る』と、そう話していたんですが?」
ダン「なんだって……?」
パッチ「……」フルフル
旅人「それから村長、カロルという名前の少年は村人の中にいますか?」
村長「はぁ?カロル…ですか?」
パッチ「」ハッ
――回想(>>262-266)――
パッチ「ボクたち、これから森に入ってカリアムの花を摘むんです」
旅人「カリアムの花?なんだね、それは?」
パッチ「親愛の花言葉がある桃色のキレイな花ですよ。
ボクらの村では感謝する人にカリアムの花を送るんです。
今日はお父さんの誕生日ですから。ね?カロルくん?」
カロル「う、うん?そうだよ?」
――――
329:🎄 ◆WEmWDvOgzo:2013/1/27(日) 17:13:46 ID:NaSHqV57P6
パッチ「」ガタガタブルブル
旅人「どうなんです?」
村長「そんな子はいませんが…」
旅人「はっはーん!チェックメイトだ!」パチンッ
村長「どういう意味ですかな?」
旅人「この事件、なんとなく読めてきましたよ…」
村長「はい?」キョトン
旅人「まぁとりあえず今日は遅いんで、これくらいにしましょう」
村長「あ、はぁ。それもそうですな」
パッチ「」ブルブル
ダン「…パッチ。大丈夫か?」
パッチ「う、うん…だいじょうぶだよ…」フルフル
旅人「君も帰ってぐっすり寝なさい。よい子はおねむの時間だよ〜?」ニヤニヤ
パッチ「」ビクッ
ダン「…帰るぞ?」
パッチ「うん…」アセアセ
スタスタ ガチャッ バタンッ
330:🎄 ◆WEmWDvOgzo:2013/1/27(日) 17:17:01 ID:NaSHqV57P6
旅人「明日の朝、全員を広場にでも集めといてくださいな」
村長「…分かりました」
村のおばさん「分かりましたって、村長。いいのかい?」ヒソヒソ
村長「仕方ないだろう。外の人間とはいえ、あの方以外に証人がおらんのだから」ヒソヒソ
村のおばさん「あたしゃ、あの旅人が怪しいと思うんだけどね…」ヒソヒソ
村長「犯人ならば、わざわざ知らせに来ないだろう?」ヒソヒソ
村のおばさん「そりゃそうだけど…」ヒソヒソ
旅人「まぁまぁ。ご心配なさらず?
必ず答えを見つけますから、じっちゃんの名にかけてね」
村長「(この人のキャラクターが掴めん…)」
旅人「それじゃおやすみなさいっと」ガチャッ
村長「あ、そこはわしの寝室……」
バタンッ
村長「……」
村のおばさん「あたしらも帰ろうかね?」
テパ「そうッスね。じゃあ村長、失礼しますね」
スタスタ ガチャッ バタンッ
村長「……客人とはいえ、妻と同じ寝間で寝かせていいものなんだろうか…?」ウーン
331:🎄 ◆WEmWDvOgzo:2013/1/27(日) 17:20:17 ID:NaSHqV57P6
――森――
ビュービュー
カロル「」ブルブル
母「寒いの?」
カロル「ううん…平気…」ブルブル
母「もう…こんなに震えてるじゃない?」ギュッ
カロル「お母さま…?」フルフル
母「こうしてくっつくと、暖かいでしょ?」ニコッ
カロル「うん…ぽかぽかする…」ヌクヌク
332:🎄 ◆WEmWDvOgzo:2013/1/27(日) 17:23:38 ID:NaSHqV57P6
母「思い出すわね?昔はこれが当たり前だったっけ…?」
カロル「初めてお家に住んでからは、ずっと暖かかったもんね?」
母「そうね。たまたま見つけた空き家で、もう何年も暮らしていたんだもの。
旅をしていた頃の事なんて、遠く感じるわね」
カロル「もう…あの家も無いんだね」シュン
母「えぇ。無くなっちゃったわね……」
カロル「マルクと遊ぶのに使ってた枯れ木細工の玩具とか
旅人が捨てた林檎の匂袋とか、お母さまが読み聞かせてくれた絵本とか、思い出がいっぱいあったのに…」
母「……坊やがあたしの為に集めてくれた押し花のアルバムも、おじいさまの遺書も焼けてしまったわ…」
カロル「ボクが友達を欲しがったから…?」
母「ううん、違う。きっと過去は捨てなさいっていう神様の思し召しよ?」
カロル「……?」
333:🎄 ◆WEmWDvOgzo:2013/1/27(日) 17:25:25 ID:TbIaTri9k.
母「それ以上に大切な物がこれからたくさん集まるから。
抱えきれなくなってしまう前に捨てなさいって、ね?」
カロル「そうなのかな?」
母「そうよ?現に3人もお友達が出来たじゃない?」
カロル「えへへ。そうだね」ニコリ
母「そろそろ寝ましょう?」
カロル「……宣教師さま、心配だな」
母「明日にもなればマルクも宣教師様を見つけてくれるわ?」
カロル「ホント?」
母「えぇ。今夜は安心して眠りなさい?」
カロル「うん。分かった…」ウトウト
母「おやすみなさい、わたしのかわいいぼうや…?」ナデナデ
カロル「おやすみ…なさい」スヤスヤ
母「……」ギュッ
母「(宣教師さま、どうか無事でいてくださいね?)」
334:🎄 ◆WEmWDvOgzo:2013/2/2(土) 18:09:34 ID:8C0o4sgn8A
――夢――
カロル「」タタタッ
カロル「」スッ
カロル「やっぱり!初めて見るお花だ!」パァァ
カロル「押し花にしてアルバムに入れよう!」ゴソゴソ
カロル「ふふ。お母さま、喜んでくれるかなぁ?」ニコニコ
ワンッワンッ グルルルル バウッ キャンッ
カロル「?」
カロル「なんだろ…?」クルッ
カロル「」タタタッ
335:🎄 ◆WEmWDvOgzo:2013/2/2(土) 18:10:44 ID:tP/EhEtJvg
カロル「あっ…!」
犬1「ばうっ!ばうっ!」
犬2「ぐるるるる…!」フーッフーッ
子犬「くぅん…」プルプル
カロル「大きい獣が小さい子をいじめてる…」
犬2「わんっ!!」
子犬「」ビクッ
犬1「ばうっ!」ドンッ
子犬「きゃいんっ」バタッ
犬1「がるるる!」ガッ
子犬「きゃんっ」ジタバタ
カロル「……!」ワナワナ
336:🎄 ◆WEmWDvOgzo:2013/2/2(土) 18:12:56 ID:tP/EhEtJvg
犬1「ばうっ!」ザッ
子犬「……!」プシッ
カロル「や、やめろ!」バッ
犬2「わう?」クルッ
犬1「」グルルルル
カロル「ぅ……」ビクッ
犬2「わんっ!!」
カロル「(こ、怖くない…怖くない…!)」フルフル
犬1「」ギロッ
カロル「〜〜〜!」バッ
犬1「?」
カロル「……!」フリフリ
犬2「わう?」キョトン
犬1「」キョトン
337:🎄 ◆WEmWDvOgzo:2013/2/2(土) 18:13:51 ID:tP/EhEtJvg
カロル「(今だよ!ボクが猫じゃらしで惹き付けてる間に…!)」チラッ
子犬「」ポカーン
犬1「」グルルルル
カロル「(は、早く逃げて!?)」チラッチラッ
子犬「」ハッ
子犬「」タタタッ
カロル「はぁ…。よかったぁ…」ホッ
犬1「ばうっ!」バッ
犬2「あおんっ!」ガッ
カロル「えっ?うわっ」ドサッ
ガブッ バウッ イタイ! イタイヨ!! ガリガリ ワオンッ オカアサマー!!?
338:🎄 ◆WEmWDvOgzo:2013/2/2(土) 18:15:42 ID:tP/EhEtJvg
カロル「うぅ…」グッタリ
カロル「いたた…!」ズキズキ
カロル「あ、あの子は…ちゃんと逃げられたかな?」
子犬「」クーン
カロル「え?」キョロキョロ
子犬「あん!」バッ
カロル「わっ!?」ビクッ
子犬「」ハッハッ
カロル「なんだ、キミだったの?」ホッ
子犬「あん!」シッポフリフリ
カロル「あは!そっか。逃げられたんだね?」ニコッ
子犬「」コクコク
カロル「よかったね?ふふ…」
カロル「っ…!」ズキン
子犬「くぅん?」ペロペロ
カロル「ふふ。ありがとう。でもボクは大丈夫だよ?」
339:🎄 ◆WEmWDvOgzo:2013/2/2(土) 18:17:44 ID:8C0o4sgn8A
子犬「あぅん…」シュンッ
カロル「悲しまないで?キミのせいなんかじゃないもの?
キミもケガをしてるから、ボクより自分を大切にしてあげて?」ニコッ
子犬「……」ペロペロ
カロル「そうそう。しっかり舐めて傷を治さなくちゃね」ニコニコ
子犬「あんっ!」
340:🎄 ◆WEmWDvOgzo:2013/2/2(土) 18:18:36 ID:8C0o4sgn8A
カロル「じゃあボクは帰るね。キミもあの獣たちに見つかる前に帰るんだよ?」
子犬「」クーン
カロル「……ごめん。お母さまが心配するから帰らなきゃ」
子犬「」スリスリ
カロル「だ、ダメ!ちゃんと自分のお家に…」
子犬「」ウルウル
カロル「ぅ…」タジタジ
子犬「」シッポフリフリ
カロル「」キュンッ
カロル「(うぅ…。こんなのズルいよ…。ほっとける訳ないじゃない)」チラッ
子犬「」キラキラ
カロル「」ハァ
カロル「…ボクのお家に来る?」
子犬「きゃんっ!きゃんっ!」ピョンピョン
…………
341:🎄 ◆WEmWDvOgzo:2013/2/2(土) 18:20:22 ID:8C0o4sgn8A
――森――
カロル「ん…ふぁぁ…」ノビノビ
カロル「………」
母「」スヤスヤ
カロル「(マルク……)」
母「……ぅん?」
カロル「(なんだろう…。胸がざわざわする…)」
母「早起きねぇ…」ポンポン
カロル「わっ」ビクッ
母「あらあら」クスクス
カロル「あ、お母さま…。おはよう」
母「おはよう。こんなに早起きしてどうしたの?」
カロル「なんでもないよ。目が覚めちゃっただけ」ニコッ
母「そう?まぁ枯れ木の窪みはすきま風に当たって寝心地が良くないわよね」
カロル「あはは。そうかも」ニコニコ
母「なーんてね。嘘はダメよ?」ニヤリ
カロル「」ドキッ
342:🎄 ◆WEmWDvOgzo:2013/2/2(土) 18:23:01 ID:8C0o4sgn8A
カロル「う、嘘なんてつかないよ?」
母「表情を見れば分かるのよ?」
カロル「……」
母「あたしはあなたの母親だもの。ね?」ウインク
カロル「お母さまにはかなわないや」クスクス
母「まぁ?」ニコニコ
カロル「……お母さま。マルクが昼までに戻って来なかったら、探しに行っていい?」
母「聞かなかったら黙って探しに行く気だったのかしら?」
カロル「……」
母「ダメよ」バッサリ
343:🎄 ◆WEmWDvOgzo:2013/2/2(土) 18:24:11 ID:8C0o4sgn8A
カロル「え…そんな…」シュン
母「危ないからダメ。じっとしてなさい?」
カロル「で、でも…」
母「あの子に宣教師様を探すよう頼んだのは坊や、あなたよ?」
カロル「それは…そうだけど」
母「なら最後まで信じてあげなさい?」
カロル「だけど、もし危ない目に遭ってたら…」
母「…お母さんと約束したわよね?」
カロル「うん…」
母「なら信じて待ちなさい。それとも坊やは友達が信用できない?」
カロル「ううん…。信じてる」
母「…そう。いい子ね?」イイコイイコ
カロル「……」
344:🎄 ◆WEmWDvOgzo:2013/2/2(土) 21:58:00 ID:Ck6no1fVS2
――村(広場)――
ワイワイガヤガヤ
旅人「あー!あー!ただいま発声テスト中!ただいま発声テスト中!」
村長「…何をしておられるので?」
旅人「ん?あぁ。ちゃんとギャラリーの皆さんに声が届くように発声練習をね」
村長「はぁ?とりあえず村人を集めましたが」
旅人「ん。オーケーオーケー!ベリーサンキュー!アイムソーリーヒゲソーリー!」ヒラヒラ
村長「(こんなにストレスの溜まる客人は初めてだ…)」イラッ
345:🎄 ◆WEmWDvOgzo:2013/2/2(土) 22:00:07 ID:Ck6no1fVS2
旅人「さぁて。パッチ君は来てるかなーん?」キョロキョロ
村長「一応全員呼んでありますが、被害者の家族は…まだ受け止められないようでして」
旅人「そうですか。んじゃまぁ始めるとしますかね」
村長「(本当に大丈夫なんだろうか…?)」
ザワザワ ザワザワ
旅人「あ、あー!おほんっ!おはようございます。村の皆さん。
こんな朝早くから、お呼び出ししてまことに申し訳ない」ペコリ
シーン
旅人「私を知らない方々もおられるかと思われますので、この場を借りて自己紹介しておきましょう」
村長「(なんだ、意外としっかりしてるじゃないか)」ホッ
旅人「名はアイリ・ワルド。歳は42。スリーサイズは上から82、57、85。
村長の家でお世話になっているしがない旅人です」
ズルッ バタバタッ
村長「……ずっこけてしまった。なに考えとるんだ、あの旅人は?」ムクリ
ワルド「ちなみに現在、独り身でしてね。私に気があるという方は是非一声かけてください」キリッ
ズルッ バタバタッ
村長「」ヒクヒク
ワルド「ははは。皆さん良い反応をされますな?」ケラケラ
346:🎄 ◆WEmWDvOgzo:2013/2/2(土) 22:02:28 ID:Ck6no1fVS2
テパ「おい!」ムクリ
ワルド「おや?あんたは昨日の…確かトンマさんと言ったかな?」
テパ「誰がトンマだ、ふざけるな!テパだ!」
ワルド「あーそうそう。そんな感じだ?」ヘラヘラ
テパ「あんた、大人2さん達を殺した犯人が分かったんじゃなかったのか!?」
ワルド「おいおい、そうカッカッしなさんなよ?
若い内は血の気が多いのもしょうがないが、さっきのはほんのジョークだろう?」
テパ「ならさっさと教えろよ!誰が殺ったんだ!?」
ワルド「さぁ?誰だろうな?」ニヤニヤ
テパ「く…!」
ザワザワ ザワザワ
ワルド「まぁ黙ってなよ。これから名探偵が事件の真相を暴くところだ。
横やりが入ると締まらないだろう?」
テパ「……ちっ!」
ワルド「さぁて、お待たせしましたね?
とんだ邪魔が入ってしまいましたが続けましょうか」
テパ「」ギリッ
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