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少年「ボクが世界を変えてみせる」
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1: 名無しさん@読者の声:2012/12/23(日) 21:21:41 ID:apUuk9iOiY
むかしむかしのことです。
世界は深い緑が生い茂り、深い青が寄り添うように流れる清らかな一つの円でした。
穢れを知らず、怒りも悲しみもなく、渇くことのない喜びが波立てる大地は
争いを寡黙に、繋がりをおおらかにしました。


324: ◆WEmWDvOgzo:2013/1/27(日) 16:52:48 ID:NaSHqV57P6
旅人「奇遇だねぇ?」ニコッ

パッチ「あ、あぁ……」アタフタ

村長「どこかで会われたので?」

旅人「まぁ。教会に向かう道すがらね」

村長「なんと…やはり教会に行ってたのか?」

パッチ「違います!ボクは…」

旅人「森にカリアムの花を取りに行ってた。そうだろ?」

パッチ「は、はい…」

旅人「ところで君と一緒にいた少年は?」

パッチ「え?」

旅人「あの子だよ、ほら〜?頭巾を被った子がいただろ?」

パッチ「あ……」

パッチ「(カロルくんの事だ…)」
325: ◆WEmWDvOgzo:2013/1/27(日) 16:55:38 ID:TbIaTri9k.
ダン「頭巾だと?まさか…!」

旅人「心当たりが?」

ダン「あぁ。おそらく村に忍び込んだ例のホビットだろう。
息子たちはそいつに騙されてんだ」

旅人「ほっほーう?なぁるほどねぇ?」ニヤリ

パッチ「ち、ちが…」

村長「それはどういう事だ!?」

パッチ「」ビクッ

ダン「……」

村長「子供とはいえ、村人までがホビットに毒されたなどと知れれば、いよいよタダでは済まんぞ!?」

ダン「だから…さっさと、あのホビットも宣教師も始末するべきだと言ったんだ!
それをあんたがモタモタやってるから…!」

村長「モタモタも何も話し合ったのは昨日の夜だろう!?
そんな早急に対応出来るか!」

ダン「し、しかし…!」

村長「…いつからだ?」

ダン「……昨日の朝です。あの宣教師に連れられて…」

村長「なるほどな。お前が焦っていたのも納得だ…」

ダン「申し訳ない…」
326: ◆WEmWDvOgzo:2013/1/27(日) 16:59:03 ID:NaSHqV57P6
村長「……どうしたものか」

旅人「あぁ〜。もういいかな?」

村長「はっ!す、すみませんな。内々の話で止めてしまいまして…」

旅人「いやいや、結構結構クックドゥルドゥーですよ」

村長「は?」キョトン

シーン

旅人「あらま。ウケなかった?
結構結構コケコッコーと思わせてクックドゥルドゥーと言うジョークだったんですがね?」

村長「は、はぁ…?」

村のおばさん「お、おほ。おほほ…。お、おもしろいジョークですこと…」ヒクヒク

テパ「(なに言ってんだ、こいつ?)」
327: ◆WEmWDvOgzo:2013/1/27(日) 17:02:51 ID:NaSHqV57P6
旅人「まぁジョークはこの辺にしておいて、パッチ君って言ったかな?」

パッチ「は、はい」ドキッ

旅人「君はなぜホビットの少年といたんだい?」

パッチ「そ、それは…」

旅人「それはって事は、やはりホビットだったのか」

パッチ「あ…ち、違います!」

旅人「今さら隠しても無駄だよ〜?」

ダン「正直に言うんだぞ?」

パッチ「ただの友達です…」

旅人「」ニヤリ

パッチ「」ゾクッ

旅人「ところで取りに行ったお花はどこにあるんだい?」

パッチ「」ハッ

旅人「手には持っていないみたいだし、ポッケの中かなー?」

パッチ「あ、歩いてて落としたみたいです…」ドキドキ

旅人「ホントにぃ?」ジロジロ

パッチ「は、はい」プイッ
328: ◆WEmWDvOgzo:2013/1/27(日) 17:06:15 ID:TbIaTri9k.
旅人「ふーん。そういえばお父さん?」

ダン「なんだ?」

旅人「今日は何か特別なイベントはありますかな?たとえば誕生日とか…」

パッチ「」ギクッ

ダン「……いや、ないな?」

旅人「そりゃおかしいですな?
この子は確かに『父親の誕生日だから花を送る』と、そう話していたんですが?」

ダン「なんだって……?」

パッチ「……」フルフル

旅人「それから村長、カロルという名前の少年は村人の中にいますか?」

村長「はぁ?カロル…ですか?」

パッチ「」ハッ

――回想(>>262-266)――
パッチ「ボクたち、これから森に入ってカリアムの花を摘むんです」

旅人「カリアムの花?なんだね、それは?」

パッチ「親愛の花言葉がある桃色のキレイな花ですよ。
ボクらの村では感謝する人にカリアムの花を送るんです。
今日はお父さんの誕生日ですから。ね?カロルくん?」

カロル「う、うん?そうだよ?」

――――
329: ◆WEmWDvOgzo:2013/1/27(日) 17:13:46 ID:NaSHqV57P6
パッチ「」ガタガタブルブル

旅人「どうなんです?」

村長「そんな子はいませんが…」

旅人「はっはーん!チェックメイトだ!」パチンッ

村長「どういう意味ですかな?」

旅人「この事件、なんとなく読めてきましたよ…」

村長「はい?」キョトン

旅人「まぁとりあえず今日は遅いんで、これくらいにしましょう」

村長「あ、はぁ。それもそうですな」

パッチ「」ブルブル

ダン「…パッチ。大丈夫か?」

パッチ「う、うん…だいじょうぶだよ…」フルフル

旅人「君も帰ってぐっすり寝なさい。よい子はおねむの時間だよ〜?」ニヤニヤ

パッチ「」ビクッ

ダン「…帰るぞ?」

パッチ「うん…」アセアセ

スタスタ ガチャッ バタンッ

330: ◆WEmWDvOgzo:2013/1/27(日) 17:17:01 ID:NaSHqV57P6
旅人「明日の朝、全員を広場にでも集めといてくださいな」

村長「…分かりました」

村のおばさん「分かりましたって、村長。いいのかい?」ヒソヒソ

村長「仕方ないだろう。外の人間とはいえ、あの方以外に証人がおらんのだから」ヒソヒソ

村のおばさん「あたしゃ、あの旅人が怪しいと思うんだけどね…」ヒソヒソ

村長「犯人ならば、わざわざ知らせに来ないだろう?」ヒソヒソ

村のおばさん「そりゃそうだけど…」ヒソヒソ

旅人「まぁまぁ。ご心配なさらず?
必ず答えを見つけますから、じっちゃんの名にかけてね」

村長「(この人のキャラクターが掴めん…)」

旅人「それじゃおやすみなさいっと」ガチャッ

村長「あ、そこはわしの寝室……」

バタンッ

村長「……」

村のおばさん「あたしらも帰ろうかね?」

テパ「そうッスね。じゃあ村長、失礼しますね」

スタスタ ガチャッ バタンッ


村長「……客人とはいえ、妻と同じ寝間で寝かせていいものなんだろうか…?」ウーン
331: ◆WEmWDvOgzo:2013/1/27(日) 17:20:17 ID:NaSHqV57P6
――森――

ビュービュー

カロル「」ブルブル

母「寒いの?」

カロル「ううん…平気…」ブルブル

母「もう…こんなに震えてるじゃない?」ギュッ

カロル「お母さま…?」フルフル

母「こうしてくっつくと、暖かいでしょ?」ニコッ

カロル「うん…ぽかぽかする…」ヌクヌク
332: ◆WEmWDvOgzo:2013/1/27(日) 17:23:38 ID:NaSHqV57P6
母「思い出すわね?昔はこれが当たり前だったっけ…?」

カロル「初めてお家に住んでからは、ずっと暖かかったもんね?」

母「そうね。たまたま見つけた空き家で、もう何年も暮らしていたんだもの。
旅をしていた頃の事なんて、遠く感じるわね」

カロル「もう…あの家も無いんだね」シュン

母「えぇ。無くなっちゃったわね……」

カロル「マルクと遊ぶのに使ってた枯れ木細工の玩具とか
旅人が捨てた林檎の匂袋とか、お母さまが読み聞かせてくれた絵本とか、思い出がいっぱいあったのに…」

母「……坊やがあたしの為に集めてくれた押し花のアルバムも、おじいさまの遺書も焼けてしまったわ…」

カロル「ボクが友達を欲しがったから…?」

母「ううん、違う。きっと過去は捨てなさいっていう神様の思し召しよ?」

カロル「……?」
333: ◆WEmWDvOgzo:2013/1/27(日) 17:25:25 ID:TbIaTri9k.
母「それ以上に大切な物がこれからたくさん集まるから。
抱えきれなくなってしまう前に捨てなさいって、ね?」

カロル「そうなのかな?」

母「そうよ?現に3人もお友達が出来たじゃない?」

カロル「えへへ。そうだね」ニコリ

母「そろそろ寝ましょう?」

カロル「……宣教師さま、心配だな」

母「明日にもなればマルクも宣教師様を見つけてくれるわ?」

カロル「ホント?」

母「えぇ。今夜は安心して眠りなさい?」

カロル「うん。分かった…」ウトウト

母「おやすみなさい、わたしのかわいいぼうや…?」ナデナデ

カロル「おやすみ…なさい」スヤスヤ

母「……」ギュッ

母「(宣教師さま、どうか無事でいてくださいね?)」
334: ◆WEmWDvOgzo:2013/2/2(土) 18:09:34 ID:8C0o4sgn8A
――夢――

カロル「」タタタッ

カロル「」スッ

カロル「やっぱり!初めて見るお花だ!」パァァ

カロル「押し花にしてアルバムに入れよう!」ゴソゴソ

カロル「ふふ。お母さま、喜んでくれるかなぁ?」ニコニコ

ワンッワンッ グルルルル バウッ キャンッ

カロル「?」

カロル「なんだろ…?」クルッ

カロル「」タタタッ
335: ◆WEmWDvOgzo:2013/2/2(土) 18:10:44 ID:tP/EhEtJvg
カロル「あっ…!」

犬1「ばうっ!ばうっ!」

犬2「ぐるるるる…!」フーッフーッ

子犬「くぅん…」プルプル

カロル「大きい獣が小さい子をいじめてる…」

犬2「わんっ!!」

子犬「」ビクッ

犬1「ばうっ!」ドンッ

子犬「きゃいんっ」バタッ

犬1「がるるる!」ガッ

子犬「きゃんっ」ジタバタ

カロル「……!」ワナワナ
336: ◆WEmWDvOgzo:2013/2/2(土) 18:12:56 ID:tP/EhEtJvg
犬1「ばうっ!」ザッ

子犬「……!」プシッ

カロル「や、やめろ!」バッ

犬2「わう?」クルッ

犬1「」グルルルル

カロル「ぅ……」ビクッ

犬2「わんっ!!」

カロル「(こ、怖くない…怖くない…!)」フルフル

犬1「」ギロッ

カロル「〜〜〜!」バッ

犬1「?」

カロル「……!」フリフリ

犬2「わう?」キョトン

犬1「」キョトン
337: ◆WEmWDvOgzo:2013/2/2(土) 18:13:51 ID:tP/EhEtJvg
カロル「(今だよ!ボクが猫じゃらしで惹き付けてる間に…!)」チラッ

子犬「」ポカーン

犬1「」グルルルル

カロル「(は、早く逃げて!?)」チラッチラッ

子犬「」ハッ

子犬「」タタタッ

カロル「はぁ…。よかったぁ…」ホッ

犬1「ばうっ!」バッ

犬2「あおんっ!」ガッ

カロル「えっ?うわっ」ドサッ

ガブッ バウッ イタイ! イタイヨ!! ガリガリ ワオンッ オカアサマー!!?
338: ◆WEmWDvOgzo:2013/2/2(土) 18:15:42 ID:tP/EhEtJvg
カロル「うぅ…」グッタリ

カロル「いたた…!」ズキズキ

カロル「あ、あの子は…ちゃんと逃げられたかな?」

子犬「」クーン

カロル「え?」キョロキョロ

子犬「あん!」バッ

カロル「わっ!?」ビクッ

子犬「」ハッハッ

カロル「なんだ、キミだったの?」ホッ

子犬「あん!」シッポフリフリ

カロル「あは!そっか。逃げられたんだね?」ニコッ

子犬「」コクコク

カロル「よかったね?ふふ…」

カロル「っ…!」ズキン

子犬「くぅん?」ペロペロ

カロル「ふふ。ありがとう。でもボクは大丈夫だよ?」
339: ◆WEmWDvOgzo:2013/2/2(土) 18:17:44 ID:8C0o4sgn8A
子犬「あぅん…」シュンッ

カロル「悲しまないで?キミのせいなんかじゃないもの?
キミもケガをしてるから、ボクより自分を大切にしてあげて?」ニコッ

子犬「……」ペロペロ

カロル「そうそう。しっかり舐めて傷を治さなくちゃね」ニコニコ

子犬「あんっ!」
340: ◆WEmWDvOgzo:2013/2/2(土) 18:18:36 ID:8C0o4sgn8A
カロル「じゃあボクは帰るね。キミもあの獣たちに見つかる前に帰るんだよ?」

子犬「」クーン

カロル「……ごめん。お母さまが心配するから帰らなきゃ」

子犬「」スリスリ

カロル「だ、ダメ!ちゃんと自分のお家に…」

子犬「」ウルウル

カロル「ぅ…」タジタジ

子犬「」シッポフリフリ

カロル「」キュンッ

カロル「(うぅ…。こんなのズルいよ…。ほっとける訳ないじゃない)」チラッ

子犬「」キラキラ

カロル「」ハァ

カロル「…ボクのお家に来る?」

子犬「きゃんっ!きゃんっ!」ピョンピョン

…………
341: ◆WEmWDvOgzo:2013/2/2(土) 18:20:22 ID:8C0o4sgn8A
――森――

カロル「ん…ふぁぁ…」ノビノビ

カロル「………」

母「」スヤスヤ

カロル「(マルク……)」

母「……ぅん?」

カロル「(なんだろう…。胸がざわざわする…)」

母「早起きねぇ…」ポンポン

カロル「わっ」ビクッ

母「あらあら」クスクス

カロル「あ、お母さま…。おはよう」

母「おはよう。こんなに早起きしてどうしたの?」

カロル「なんでもないよ。目が覚めちゃっただけ」ニコッ

母「そう?まぁ枯れ木の窪みはすきま風に当たって寝心地が良くないわよね」

カロル「あはは。そうかも」ニコニコ

母「なーんてね。嘘はダメよ?」ニヤリ

カロル「」ドキッ
342: ◆WEmWDvOgzo:2013/2/2(土) 18:23:01 ID:8C0o4sgn8A
カロル「う、嘘なんてつかないよ?」

母「表情を見れば分かるのよ?」

カロル「……」

母「あたしはあなたの母親だもの。ね?」ウインク

カロル「お母さまにはかなわないや」クスクス

母「まぁ?」ニコニコ

カロル「……お母さま。マルクが昼までに戻って来なかったら、探しに行っていい?」

母「聞かなかったら黙って探しに行く気だったのかしら?」

カロル「……」

母「ダメよ」バッサリ
343: ◆WEmWDvOgzo:2013/2/2(土) 18:24:11 ID:8C0o4sgn8A
カロル「え…そんな…」シュン

母「危ないからダメ。じっとしてなさい?」

カロル「で、でも…」

母「あの子に宣教師様を探すよう頼んだのは坊や、あなたよ?」

カロル「それは…そうだけど」

母「なら最後まで信じてあげなさい?」

カロル「だけど、もし危ない目に遭ってたら…」

母「…お母さんと約束したわよね?」

カロル「うん…」

母「なら信じて待ちなさい。それとも坊やは友達が信用できない?」

カロル「ううん…。信じてる」

母「…そう。いい子ね?」イイコイイコ

カロル「……」
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名前:
sage:


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