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魔王「何でイチャイチャちゅっちゅできないんだよ!」
[8] -25 -50 

1: :2012/9/14(金) 23:05:11 ID:4.MWSg5KoU
書きたいことが出来たので、以前書いてたSSの続きを書かせていただきます。
お手数おかけして申し訳ございませんが、知らない方は前作から読んだ方がいいと思います。
一応貼っておきます。前作→http://llike-2ch.sakura.ne.jp/bbs/test/mread.cgi/2ch3/1316008982/1-10

基本長いので携帯だと読めなくなる可能性があります。また、支援返レスを飛ばして読みたい方もいらっしゃると思います。
それらに該当する方は、本編とわけてまとめたので、こちらから読んでみてください。→>>981-984

注意事項は以上です。何卒よろしくお願い致します。


840: ちょっとグロいかも気をつけて:2012/11/13(火) 22:59:31 ID:7RuR6mIcnA
その瞬間、確かに産声を上げた俺ではあったが、未だに生まれてはいなかった。
それは誰からも望まれなかった命。父も世界も、そして自らも望んじゃいない代物。
何の意味も持たないままこの世に投げ出された俺の腐った生き様の始まりだった。
841: :2012/11/13(火) 23:00:59 ID:7RuR6mIcnA
父親は世界の頂点である。
本人から直接聞いたわけではないが、取り巻きの話を盗み聞く分にはこう結論付けることができた。
俺が出来る前は、魔法を得意とする一族が世界を牛耳っていたようだが、父親がそいつらを異世界へと追いやったらしい。
それからは父親の天下だ。実力的に民が反乱することも叶わないようで、自分の遊び場となった世界で好き放題やっていた。
適当に理由をつけて民を虐殺して遊び、綺麗な女は犯して遊び、子どもが出来たらめんどくさいから母体ごと殺す。
その過程で間違って出来たのが俺である。
子を宿したことを隠し、父親から逃れるように城を出て、俺を産んだ母親だったが、最終的には父親に見つかって殺された。
どうやら女に出し抜かれたという事実がプライドに触ったみたいで、殺さずにはいられなかったようだ。
その流れで俺も殺されるのかと思いきや、意外にも俺にはお咎め無しだった。
殺すとか殺さないとか、そんなことを考えるのも面倒なほど、俺という存在がどうでもよかったみたいだ。
842: 名無しさん@読者の声:2012/11/13(火) 23:01:20 ID:UnOQWjueGw
実際のところ、魔王と龍人はどんくらい力の差があるのか知りたい。
分数でお願いします
支援

1には
つパトラッシュが描かれた枕
843: :2012/11/13(火) 23:02:14 ID:7RuR6mIcnA
そんなわけで、俺は愛情という物を受け取ったことがない。
一応父親の住む城には引き取られたが、誰かが俺を育てるってことは決してなかった。
父親も、その取り巻きも、全てが俺を拒絶した。勝手に死んでもらおうって魂胆だったのだろう。あるいはその様を見て楽しむ気だったか。
俺は自力で生きていくしかなかった。
空腹なんかは虫とか食って誤魔化す。城の食糧なんか盗もうとした日には、取り巻きが俺をボコボコってオチだ。
弱い俺は、俺より弱い者の命を取り込むしかなかった。
言葉や文字を教えてくれる奴もいないから、その辺は独学でどうにかするしかない。
しかしこいつは一人で学ぶにはなかなか厄介な代物である。支障なく日常会話ができるまでけっこうな時間を費やした。
だから父親がどういう存在なのか知ったのも、実はけっこう遅かったりする。その頃には、俺のメニューは虫だけでなく動物も加わってた。
844: :2012/11/13(火) 23:03:49 ID:7RuR6mIcnA
ここまで生き残ったのは、周りにとって予想外だったらしい。そう言われたわけではないが、何となく雰囲気から読みとれる。
だがまあ、それだけである。俺という存在はひたすらどうでもいいみたいで、扱いは変わらなかった。
ただ、確かに変わった物があって、それは俺自身である。
ある程度知識がついてしまったガキっていうのは、くだらないことを考え出すもんであって、俺も例外ではなかったらしい。
この頃になると、自分の存在意義みたいなものばっか考えていた。
でも本当に生きてる意味がわからなかった。誰からも関与されず、虫や動物を食べて生き残り、それを繰り返すだけの日々。
自分が生きている意味がわからない。何故生きるのかわからない。生きるということが何なのかわからない。
何故俺は生まれたのだろう?何故俺は命を続けるのだろう?そんな考えても出やしない答えをひたすら求めて脳内に逃げ込んでいた。
845: :2012/11/13(火) 23:05:14 ID:7RuR6mIcnA
考えている中で、クモを見つけた。壁を素早く移動するそいつを見ながら、ふと思いつく。
父親が民を意味なく虐殺して遊んでいたように、俺もこいつを意味なく嬲り殺して遊んだらどうなるか試したくなった。
生命の維持から考えれば何の意味も持たない行動。しかし、父親はそれを繰り返している。
何でそんなことを繰り返すのか疑問に思っていた。思っただけでわからないならやってみればいい。
俺はクモを捕まえ、その手足を引き千切っていく。必死の抵抗を見せるが、こいつは俺から逃れる術を持たない。
無駄に多い手足を全てなくしてやった後、その体に少しずつ穴をあける。
そこから体液が絶え間なく流れていく。最期までもがき苦しんだクモは、やがてその命を無意味に終えた。
もはや動かなくなったそれを見て、俺の中で味わったことのない感情が生まれたのを俺は見逃さなかった。
846: :2012/11/13(火) 23:06:35 ID:7RuR6mIcnA
知らない感覚だったので、それが何なのかわかるまでに時間を要した。だが、わかってしまえば単純である。
楽しいのだ。俺の力を以て、弱者の命を意味もなく終わらせるのがたまらなく楽しかったのだ。
強いからこそ許される暴挙。無様に死んでいったクモを支配していたのは、間違いなく俺だ。
支配。破壊。暴力。惨殺。なるほど、父親がのめり込むのもわかる気がする。
誰かの一生に関与し、台無しにする。そんな誰かの無念が、憎悪が、俺に向かうことで、俺がこの世にいる証を感じることができる。
自然と笑みがこぼれた。この時、俺は、笑うということは口角を上げる動作を指すのではなく、楽しい時に自然におこる現象だということを学んだ。
そして人間と言う奴は、一度快感を覚えてしまうと、更なる高みを目指してみたくなることも同時に知った。
命を散らしたクモを見ながら、俺をこう思っていた。次はもっと大きな動物を殺してみたい、と。
その日はもう遅かったから実行は明日にすると決めた。眠るという行動に楽しみが生じたのも初めてのことだった。
847: :2012/11/13(火) 23:08:14 ID:7RuR6mIcnA
その辺で適当に捕まえた犬を殴る。蹴る。
打撃が通る度に悲痛な鳴き声を披露し、それが俺を快感で震わせた。
意味のない俺の気まぐれで苦しんでいる。俺が今、誰かの人生を汚している。壊している。
俺の行動が誰かに影響しているのが楽しくて仕方なかった。
弱った犬を踏みつけると、足を乱暴に掴んでへし折る。悲鳴が一つ。
その折れた足を乱暴に動かして、引き千切る。悲鳴が二つ。
千切った足を見てみるが、箇所が悪かったのか骨の断面くらいしか見えない。つまんねえな。
体を引き千切る力量はさすがに持ち合わせていない。仕方ない、こんな場面は人間の英知の出番だ。
都合良く見つけた鋭利な石を手に、犬の腹部へ振り下ろす。悲鳴が三つ。四つ。五つ。
中身が見えてくる頃には、鳴き声は止んでいた。それはそれで残念だが、代わりの光景が俺に更なる喜びを与えた。
裂け目から覗く血と肉に、苦痛や無念の表情のまま固まった顔。俺がこいつの命を支配し、壊してやった。やはり笑みは自然にこぼれる。
楽しい。楽しい。楽しい。
生きる上でこんなに楽しいことがあったなんて。間もなく俺は感動に打ち震えた。
少しだけ小賢しくなり、ずっとずっと考えていた謎。その謎に自分なりの答えを見出した瞬間である。

生きるとは、楽しむことだ。俺は今まで生まれてもなければ、生きてもいなかった。ただ、命を続けていただけ。
自分の命に意味を見出したこの日、俺はようやく生まれたのだった。
848: :2012/11/13(火) 23:09:21 ID:7RuR6mIcnA
生きる糧を見つけた俺が、次のステップに進むのは早かった。
もうこんな動物などでは満足できない。こんなのを壊したって喜びは小さい。
じゃあ何を壊そうか?決まっている。人だ。
俺の人生の中心は城で、世界の様子など知らないが、これだけは言える。人はこの世界の頂点だ。
そしてその人の中で頂点に立っているのが父親だ。
人なら、父親なら、言葉がわかる。つまり、俺が支配し、壊す最中で、どんな想いでいるのかが悲鳴を通して伝わる。
想像するだけでも快感で身震いする。その瞬間を体験してみてえ。
しかし、今の俺には無理難題である。城の食糧に手を出して、取り巻きにボコボコにされたことは忘れちゃいねえ。
今の俺ではまだ無理だ。連中を支配するには、俺が進化するしかねえ。
そう決めてからは、修行と称して自分を苦しめる日々を開始した。
849: :2012/11/13(火) 23:10:55 ID:7RuR6mIcnA
目的達成のために苦労するのには慣れてた。産声を上げてから今日まで、生きるために足掻いてきたのだから。
強くなるためのコツは書斎にあった。この城の連中は学ぶこととはかけ離れた生き物のようで、俺がここを勝手に使っても、お咎めはなかった。
使っていいならこっちのもんだ。こっちは自力で文字だって読めるようになっている。ならば、後は必要な情報を取り込むだけだ。
俺は筋肉というものや、魔力というものを学んだ。筋肉の鍛え方、魔力の出し方、その辺を調べて身に付けた。
どうやら俺は確かに父親の子どもらしくて、自分でも急激に強くなっていったのを感じた。
生きる糧を見出してからは定期的に動物を殺して遊んでいたのだが、最近では石とか何かなどの猪口才な小道具に頼らずともスムーズに殺せる。
この手で肉を貫くこともできるし、魔力によって燃やし殺すこともできる。少し前の俺とは別人だ。
人間の武器は英知にあるのだろうが、俺の武器はこの圧倒的な力だ。揺るがない自信を以て断言できる。
俺は支配者になるべく生まれた。これが俺の生きる意味だ。これが俺の存在意義だ。
自分の価値を見いだせる喜びの何と大きいことだろうか。
ひたすらに面倒でしかなかった生きるということも、生きる上では関係のない無意味な努力も、今では前向きに捉えられる。俺は今生きている。
850: :2012/11/13(火) 23:11:43 ID:7RuR6mIcnA
それからまたしばらく経って、俺の進化は完成した。少なくとも、俺自身はそう結論付けた。今が俺の最高のはずだ。
向こうから襲ってくるように俺は城の食糧を荒すことにした。こっちから襲ってもいいのだが、どうでもいい雑魚を懲らしめようとして返り討ちにあう屈辱、その表情が見てみたかった。
「貴様、そこで何をしている!それは王のための食糧だ!」
早速おいでなすった。その台詞は小さい時に聞いてる。
「……お前か。実の父に見捨てられた哀れなガキの」
わざわざ哀れなってつける辺り、悪口のつもりで言ってるのか。事実としか思わないから何も感じない。
「悪いなあ、王に歯向かう奴は痛めつけることになってんだよ。ここだけの話、あの糞野郎には苛立ってるからな。糞親の罪を被ってくれや」
そんなことをいいながら、指をぽきぽき鳴らして一歩、二歩、緩やかに接近してくる。
にやにやしながら、俺の頬にパンチを一つ。それを機に不愉快なにやけ面はようやく引っ込んだ。
「効いてない……?」
「弱いんだよ、おめえ!」
851: :2012/11/13(火) 23:13:11 ID:7RuR6mIcnA
そう叫ぶと同時に、俺はこいつの腹部に手を添え、ゼロ距離から魔力を放つ。
魔力放出の轟音と同時に、奴の背面からやけに長い変なのが飛び出した。書物で見たことあるな。大腸だっけか、小腸だっけか。あるいは両方か。
結局こいつの体は千切れて、上半身だけは派手に吹っ飛んだ。俺の足元で崩れた下半身は無視して、速足で上半身の方へと向かう。
「がっ!?げほっ!!あっ……ぐっ……!!」
一応まだ生きているらしい。すげえな、人間の底力ってやつはよ。
無様に転がるこいつの顔を覗く。そこには苦痛が、混乱が、屈辱が、恐怖が映っていた。
その瞬間、虫や動物なんかじゃ味わえなかった快感が全身を走った。
比べ物にならねえ。これが人間を支配し、壊すこと……!
もっと完全に壊したい。その想いに駆られた俺は、必要以上に足を上げると、勢いよくそいつの顔を踏みつぶした。
両の目が左右に飛んでいき、脳味噌の花が咲いた。これはこれでいいのだが、やらかしてから俺は後悔した。
「……しまった。これじゃあ苦痛に染まる表情が見れねえ」
それは置いといて、魔力放出の際の音を聞きつけて、城の連中が根こそぎやってきた。
血に染まる俺、足元に転がってる死体を交互に見て、とりあえずの事態は把握したようだ。それぞれが持ってる武器を俺に向ける。
今からこいつらを支配し、殺して楽しめる。
それを考えると、楽しくって楽しくって仕方なかった。
「ふふふ……くっくっくっ……ふはははははっ!!」
その時、俺は生まれて初めて声をあげて笑った。
852: :2012/11/13(火) 23:13:56 ID:7RuR6mIcnA
悲鳴が心地いい。今まで聞いてきたどんな音よりこれは素晴らしい。
赤色が心地いい。今まで見てきたどんな景色よりこれは美しい。
狂った理想郷の中心で俺は踊る。俺を中心にして人が壊れていく。
無意味に死んでいく人間達の負の感情が俺に取り込まれていくような、そんな感覚に陥る。
それがまた気持ちいい。それが支配の証のような気さえする。楽しい。楽しい!
853: :2012/11/13(火) 23:15:09 ID:7RuR6mIcnA
城の中を殺し歩く。俺が通った廊下には血溜まりと肉塊だけが残った。
目指す先は勿論一つ。最高のメインディッシュが俺を待っている。
長年住んではいたものの、俺の行動範囲は決まっていて、そんなだから奴がどこにいるかは知らなかった。
隅々まで探せば見つかるだろうと彷徨うこと数分。俺は奴のとこまで辿り着いた。
「城が騒がしいが……貴様が原因か」
俺の目の前にいるのが父親だ。正直に言うと赤子の時以来の再会で確証はないが、たぶん間違いないと思う。
その辺の雑魚とは雰囲気が違った。ある程度強くなるとその辺が感覚でわかるようになるみたいだ。
それは父親も同じみたいだ。俺を前にして明らかに戦闘モードに入った感がある。
「何者かは知らんが、かなりの使い手みたいだな。だが、この世界はわしの玩具だ。貴様には渡さん!」
どうやら俺が実の息子だとはわかってないらしい。そりゃそうか。今の今まで放置して会ってはいないんだ。
日常生活でちらほら出会う部下共は俺の生存を知ってても、父親はそれを知らず、とうの昔に死んだとでも思ってんのか。
あるいは、そもそも自分に息子がいたことすら覚えてないかもしれない。まあでもそんなことはどうでもいいんだ。
俺は目の前の支配者を倒し、逆に支配してゴミ屑のように殺してやるんだ!
854: :2012/11/13(火) 23:16:32 ID:7RuR6mIcnA
戦闘は一言で片づけられるような長さじゃなかったんだけどな。
いちいち説明するのもめんどくせえから結果だけ教えてやろうと思う。
倒れたのは父親の方だった。戦いこそ長引いたけど、正直俺の完勝のように思えた。
片や成長過程にあり絶え間なく努力した男で、片や老いる中で現状に満足し努力をやめた男だ。
ある意味この結果は約束されたものだったのかもしれない。
まあでも完勝とは言え、さすがに今まで体験したことのない強さではあった。
そんな奴を支配し、こいつの今後を握っているのは俺だ。
俺は無様に倒れている父親の首を掴むと、強引に起こしてこう言った。
「お前の命運を文字通り俺が握ってるわけだが、どうだ?死にたくねえか?」
その問いかけに対して、父親は必死に返す。喉を掴まれてるから発声しにくいんだろうが、それでも懸命に絞り出す。
「た、頼む……死にたくない……な、何でもするから……」
言葉と一緒にプライドがボキボキと折れる音も聞こえたような気がした。表情を見るに、必死に屈辱を押し殺して言っているように思える。
これだ。これを望んでいたんだ。この瞬間のために俺は生まれてきたのかもしれない。
支配されることとは縁遠い生き方をしたこいつを支配した。この世界の頂点を支配した。俺は全てを支配したんだ。
855: :2012/11/13(火) 23:17:42 ID:7RuR6mIcnA
「そうだよなあ。死にたくないよなあ。俺に劣るとはいえ、お前は強いし、配下に置くのもいいだろうなあ」
にこやかに俺は父親に告げる。どうやら命だけは助かりそうだと、安堵の表情を見せる。
「だが俺にはいらねえ。お前は死ね」
安堵の表情が一転して絶望に染まった瞬間、俺は父親の喉を握り潰した。
血が勢いよく俺にかかる。だが構わねえ。潰して、潰して、最後には引き千切った。
首から下が崩れ落ちてもそれは無視して、俺は手中に収めた父親の顔を見る。
最高の芸術品だった。人間が表現できる絶望の全てがそこには詰まっていた。
「ふふふ……ふははははは!!」
やはり笑いが出る。誰かの苦痛ってのはどうしてこうも気持ちいいのか。
これは俺の宝物にするとして、これからどうするか。まずは城内の掃除かな。
まだ残ってる雑魚もいるかもしれない。とりあえずそこらへんを始末しよう。
856: :2012/11/13(火) 23:18:23 ID:7RuR6mIcnA
城内に余計な物はなくなった。あるのは俺と絶望、苦痛だけ。
その空間の支配者こそこの俺だ。なんて清々しい気持ちだろう。
宝物を持ったまま、俺は城を出た。
外を見る度に思うが、世界ってやつは何て広いんだろう。これを支配してた父親を俺が支配した今、この世界ってやつも俺の物となったのだろう。
これからこの全てを俺が壊せるんだ。わくわくしてくる。
まずは近場の集落に行ってみよう。行くのは初めてだが、大丈夫。全ては俺の玩具だから。
857: :2012/11/13(火) 23:19:29 ID:7RuR6mIcnA
ちっぽけな建物が並び、人間共がいくつかうろつく場所に来た。これが集落ってやつなのだろう。
宝物の髪の毛を持ってぶんぶん回しながら俺はそこへと入っていく。
「ん?あいつ……っ!人の顔を持ってる!?」
「きゃあああああ!!」
「あ、あの顔って王じゃないか!?」
雑魚らしくわめいてるところ悪いが、新たな支配者として自己紹介くらいはしないといけないだろう。
手に持ってるこれを殺して新たな王になった者だと言おうとして、ここで初めて気付く。
俺には名前がない。誰からも名を貰えず、今日まで生きてきたから名乗るに名乗れなかった。
必要のない物だと思って気にもしなかったが、支配者としての記号はいるだろう。仕方ないから、適当に考えて俺はその名を発した。
「……俺は異界王という者だ。新しい支配者だ。俺の楽しみのために意味なく死んでくれ!」
こうして異界王と名乗り始めた俺は、この日は興奮のあまり三つの集落を血溜まりにした。
858: :2012/11/13(火) 23:20:43 ID:7RuR6mIcnA
いざ世界の支配者になってみると、面倒なことが多い。
片っ端から民を惨殺するつもりでいたのだが、それでは労働力がなくなってしまう。
とはいっても、連中と俺を繋ぐ要素なんて食糧の献上くらいの物だが。
父親は食料のほかに美女も要求していたようだが、俺はどうでもいい。子を残したいなんて思わねえし、男性器を突っ込みたいとも思わない。
あの辺の快楽は一人で処理すりゃそれでいいし、女は殺すに限る。死体の方がまだそそる。
とにかく、食糧問題があるから、民を無差別に殺すわけにはいかない。
昔みたいに虫や動物を殺してそのまま食べてれば、そんなことも気にせず民を殺せるという物だが、ちゃんとした食料の味を覚えてしまうとそれができない。
仕方がないから、適当に襲って怪我させるくらいで我慢するのだが、物足りない。殺さなきゃ、本物の絶望に染まる顔は造れない。
宝物も腐ってしまったから捨てた。頂点から転がり落ちた絶望に染まったあの表情は最高傑作だったんだけどな。
何て言うか、支配してしまって逆に楽しくなくなった。こんなのが俺の生まれた意味だったのだろうか。
859: :2012/11/13(火) 23:21:34 ID:7RuR6mIcnA
体の方は成長して大人も板についてきたのだが、中身はまだ子供のようだ。楽しみを失った俺は、またくだらないことを考えるようになっていた。
人は何故生きるか、そんな議題だ。知らねえよ馬鹿。
だが俺は、こんなことにも答えを欲していた。自分なりの答えでは、楽しむためだ。
楽しみがあるから、明日を望めるんだ。命を続けられるんだ。俺は笑えるんだ。
だけど今は、楽しくなくなっちまった。俺は支配者たる宿命の下に生まれたと信じてきたが、それで辿り着いた先がこれではな。
人生なんてそんなもので、楽しくない今こそが答えなのか。それとも、俺は間違っていたのか。
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