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魔王「何でイチャイチャちゅっちゅできないんだよ!」
[8] -25 -50 

1:🎏 :2012/9/14(金) 23:05:11 ID:4.MWSg5KoU
書きたいことが出来たので、以前書いてたSSの続きを書かせていただきます。
お手数おかけして申し訳ございませんが、知らない方は前作から読んだ方がいいと思います。
一応貼っておきます。前作→http://llike-2ch.sakura.ne.jp/bbs/test/mread.cgi/2ch3/1316008982/1-10

基本長いので携帯だと読めなくなる可能性があります。また、支援返レスを飛ばして読みたい方もいらっしゃると思います。
それらに該当する方は、本編とわけてまとめたので、こちらから読んでみてください。→>>981-984

注意事項は以上です。何卒よろしくお願い致します。


325:🎏 :2012/10/12(金) 23:07:13 ID:6xWpg1Pyas
右手が魔王の体に埋まり、手首まで潜り、前腕が完全に侵入を果たす頃には魔王の背面から手が脱出を果たした。
それと同時に魔王は吐血した。その表情は苦痛にゆがんでいる。素人目に見ても即座に分かる致命傷だった。
これによって二人の動きは一旦止まった。それによって、今まではヤムチャ視点だった見届け人の側近もその光景を目の当たりにしたのだった。
326:🎏 :2012/10/12(金) 23:08:38 ID:6xWpg1Pyas
側近「ま……魔王様ぁ!!」

魔王「ごふっ!……やっば、いって〜……」

異界王「終わりだなあ、イケメン弟ぉ!!命の灯が消えんとする瞬間が来たようだなあ!!」

魔王「うん……本当にやばいわ、これ……さすがにこの痛みなら、女の子が相手だったとしても……気持ち良くないかもしんない……」

異界王「お互い残念だな。俺はもうちょっとお前という最高の玩具で遊んでいたかったし」

異界王「お前は愛しいこの世界を守れなかったんだ。本当、お互い残念で仕方ねえな」

側近「魔王様、待っててください!すぐに回復魔法を……」

異界王「おおっと、兄ちゃん。そいつはいけねえな。こいつぁタイマン勝負だぜ。お忘れか?」

側近「勝負はこちらの負けでいい!!だから、魔王様の治療をさせてくれ!!」

魔王「側近……それは駄目だよ……」

側近「ま、魔王様!?何を言って……」

魔王「負けたら……この世界を守れないじゃんか……俺、約束したから……」

魔王「女勇者ちゃんと約束した……世界を守ってみせるって……」

魔王「側近のお願いも聞き入れたい……俺は俺のまま、こいつを止めるって……」

魔王「だから……ここで負けるわけには……いかないよ」
327:🎏 :2012/10/12(金) 23:09:35 ID:6xWpg1Pyas
側近「もういい!そんな約束も、俺の願いも、そんなのもうどうでもいいんです!」

側近「あなたは死んではならない!この世界は、我々は、あなたを必要としています!」

側近「生きていれば、何度でもやり直すことが出来るんです!だから……生きてください!生きろぉ!!」

魔王「ごめん……俺は、やっぱり世界を、皆を守りたいよ……」

魔王「もう戦争派の皆みたいに……誰かを救えないのは嫌だ……!」

魔王「だからごめんね、異界王……どうか死なないで……」

魔王「灯消えんとして光を増すってね……最期の力を以て……俺はこの世界を救う……!」
328:🎏 :2012/10/12(金) 23:10:45 ID:6xWpg1Pyas
魔王がそう言い切るのと同時に、異界王は言いようのない恐怖に駆られた。
その恐怖の発生源が目の前の男であると気付き、離れるために貫いた腕を引き抜こうとした。
しかし、それは阻止された。魔王は自らを貫いている異界王の右腕を掴み、力を込めたのだ。その結果、異界王の右腕は微塵も動かなくなった。

(野郎、死にかけの分際でまだこんな力が残ってんのか!)

異界王が慌てることが出来たのは、ほんの少しの間だけだった。魔王は、異界王の脱出を阻止すると、即座にゼロ距離から全ての魔力を放出したのだ。
解放し切った魔王の魔力は凄まじく、それを間近で浴びた異界王に、間もなく全身を焼かれるような苦しみが襲った。

「うっ……がああああああああ!!」

突然の激しい痛みに異界王の思考は止まり、ただただ叫ぶしかなくなっていた。
329:🎏 :2012/10/12(金) 23:12:45 ID:6xWpg1Pyas
魔力。
以前にも魔道師が説明した通り、それは魔法の源の力であり、同時に命の源の力でもあったと研究で判明している。
病気や外傷、寿命などの死因に加えて、体内に宿る魔力の枯渇もまた死因となり得るのである。
魔力を魔法として使用すれば、あらゆる場面で役立てることが出来る。しかし、己の魔力と相談しながら適量を使わないといけない。
普通、自身の生命維持に必要な最低限の魔力は絶対に残しておく。その限界を超えて使用すると、様々な弊害が生まれてしまうからだ。

女魔法使いは、移動魔法で無理をした結果、体調を崩してしまった。
かつて側近は、龍人との戦闘で全ての魔力を使おうとした。その時、彼は死を覚悟していた。
そして今、魔王は全ての魔力を解放した。致命傷の大怪我と相俟って、最早死は免れないような選択を自ら選んだのだ。

でも、何で?
側近はそのように考えていた。命にかかわる大怪我をしたこの状況で、何故自ら命を追い込むような真似をしなくてはならないのか。
330:🎏 :2012/10/12(金) 23:14:18 ID:6xWpg1Pyas
その答えはすぐにわかった。

異界王を捕まえ、全ての魔力を解放した魔王は、浮遊魔法で上空へと移動し始めた。
決闘の舞台は共存の街。その上空には、魔道師が作り上げた異世界へと通じる巨大な穴がある。
それを見て、側近は様々な発言を思い出していた。

『異世界を結ぶ魔法は、空間に穴を作る。その穴こそ異世界への道で、その開け閉めには強大な魔力がいるんじゃ』
『俺が死ぬ気で魔力出し尽くす時くらいありそうだよね……』
『おう。じじいの魔法なんざ知らねえかんな。下手に穴から帰って閉じちまったら、こっちに戻れなくなるだろ』

異世界へと通じる巨大な穴は、強大な魔力によって開閉する。
魔王の魔力を全て用いれば、開閉に必要な魔力に達する。
異世界へ通じる穴を唯一作れる魔道師が死んだ今、穴を閉じれば二つの世界が繋がることはなくなる。

……魔王は、自らの命を懸けて、異界王を元の世界に帰そうとしているのだ。
331:🎏 :2012/10/12(金) 23:15:15 ID:6xWpg1Pyas
異界王がいなくなれば、この世界の脅威はなくなる。
穴が閉じてしまえば、異界王はもうこの世界にはこれなくなる。
だから魔王は、異界王を連れていき、ついでに穴を閉じようとしているのだ。

異界王「ぐあああああああ!!」

魔王「待ってて……もう少しで戻れるから……もう少しで苦しみから解放されるから……」

側近(魔王様の魔力を吸い取っているのか?異世界への穴がどんどん小さくなっていく……)

魔王「間に合え……!穴も……俺の命も……異界王の命も……間に合えぇー!!」
332:🎏 :2012/10/12(金) 23:16:45 ID:6xWpg1Pyas
二人が穴に突入するのとほぼ同時に、異世界への穴は閉じてしまった。
さきほどまで大穴が存在していた空間だがその姿は既になく、光を得始めた明け方の空が映るだけだった。
その場に残ったのは、荒れ果てた共存の街、そして側近一人だけだった。

「……魔王様、嘘ですよね?出てきてくださいよ」
「魔王様が消えるなんて、あり得ないですよ。だからほら、姿を見せてくださいよ」
「ま、魔王様……そうだ、モテる方法を探すんでしょう?……まだ途中じゃないですか……」
「だから魔王様……姿を現してください……お願い……しますから……!」

涙を流しながら側近がこう呼び掛けても、異次元の彼方に消えた魔王にそれが届くことはなかった。

……こうして、共存の街で起こった一連の事件は終わることとなった。
人間と魔物を共存へと導いた一人の英雄の犠牲によって。
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