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3センチメンタル・ヤング・ピーポー【2】
[8] -25 -50 

1: ◆UTA.....5w:2012/7/31(火) 17:25:45 ID:N3rkjbtVuM


高校生の馬鹿馬鹿しくて、

ちょっぴりセンチメンタルな

青春グラフィティ───続行。


【前スレ目次】
http://llike-2ch.sakura.ne.jp/bbs/test/mread.cgi/2ch3/1327757079/993-995

【登場人物】
>>2-3

【当スレ目次】
>>768-769


423: ◆UTA.....5w:2012/11/9(金) 23:05:48 ID:Mq1eC4fuRs

──────‐‥


鈴木「どうしたの、ぼんやり外なんか眺めて」

鳴海「よくもまあ、恥ずかしげもなく手繋いで踊れるよなぁと思って」

桃山「あら、いいじゃないのフォークダンス。前、横、後ろ、ちょん、前、横、後ろ、ちょん」フンフン♪

篠原「あは。マイム・マイムじゃん懐かしー!」

桃山「フォークダンスといえばこれよねー!」


桃山がマイム・マイムのステップを踊りだす。

横に居た鈴木もさりげなくそれに続いた。


鈴木「前、横、後ろ、ちょん」

桃山「前、横、後ろ、ちょん♪」

橘「ええい!教室で踊るな鬱陶しい!」

桃山「やだ、このメガネ怖ーい」


424: ◆UTA.....5w:2012/11/9(金) 23:15:47 ID:7lh7q/CYCQ

橘「大体、フォークダンスといえばオクラホマミキサーだろう」

鈴木「うーん……何だっけ、それ」

橘「ふむ。おい、其処のチビ」ガシッ

鳴海「あ?何っ……」


橘が無理矢理に鳴海を立たせる。

状況を理解出来ずに首を傾げる鳴海の手を取り、真顔でメロディを口ずさみ始めた。


橘「チャララッチャーチャラララ ランランラン」(真顔)

鳴海「は?え?おわ、ちょっ……」


突然始まるフォークダンス。

確かに聞いた事のあるメロディだが、鳴海の足はリズムには合っていない。

振り回されているだけ、というのが正しい表現だろう。


橘「チャラッチャランラン チャラッチャラーン」(真顔)


なおも真顔で続ける橘の踊りが止まったのは、恐らくワンコーラスを終えてからだった。


橘「どうだクズ共、これがフォークダンスだ」キリッ

鳴海「怖ぇよこのメガネ……」


425: ◆UTA.....5w:2012/11/9(金) 23:23:38 ID:7lh7q/CYCQ

桃山「何よ、やっぱりマイム・マイムの方がノリノリでいいじゃないの。ねぇ、鈴木ちゃん?」

鈴木「前、横、後ろ、ちょん」

橘「フォークダンスといえばオクラホマミキサーと昔から決まってるんだよ」

鳴海「ちょっ、俺を巻き込むんじゃねぇよ!」


両ペアが互いにフォークダンスを踊り合う。

躍起になっている四名(正しくは二名)を、窓際に凭れながら微笑ましく見守る残りの二名。


篠原「結局踊ってるじゃんね、フォークダンス」

清瀬「そ、そうですね」


清瀬は少し、緊張が解けていないようだけれど。


426: ◆UTA.....5w:2012/11/9(金) 23:38:04 ID:7lh7q/CYCQ

篠原「……あのね、」

清瀬「?」


仲間達の騒ぎ声をBGMに、篠原は続けた。


篠原「一年生の子に、謝ってきたんだ。その……酷い事言ったから、俺」

清瀬「それって、こ、告白してきはった子ですか?」

篠原「うん、その子。もう彼氏も居るし、気にしてないって言ってくれた」

篠原「女の子って切り替え早いんだもん。何の事?って顔されて、なんか俺恥ずかしかったよー」

清瀬「……でも、わだかまりがなくなったならよかったです」

篠原「えっと、その……清瀬さんも、そう、ですか?」

清瀬「へ?」


篠原が重心を変えて清瀬に向き直る。

カーディガンの袖を弄んで、気恥ずかしそうに視線が泳ぐ。

清瀬は篠原の真意が掴めず、訝しげに首を傾けるだけだった。


篠原「清瀬さんはまだ、こんな俺の事を知りたいと思ってくれてますか……?」


427: ◆UTA.....5w:2012/11/9(金) 23:39:01 ID:7lh7q/CYCQ

清瀬「えぇ!?……え、あ……うち、は……」


少しばかりの間を置いて、清瀬が何かを言いかける。

──その時だった。


\ ドォーン! /


桃山「やだ、花火始まったじゃない」

鳴海「お前らがいつまでも踊ってっからだろ!」

橘「相変わらずのつまらん打ち上げ花火だな」

鈴木「たーまやー……」


学園の規模が知れる小さな打ち上げ花火が夜空に咲いた。

生徒達は皆、色とりどりの光を見上げている。


桃山「小さくたっていいじゃない、綺麗だもの」

橘「まあ、汚いものではないな」

鳴海「ったく、ホント可愛くねぇメガネだな」ケッ


428: ◆UTA.....5w:2012/11/9(金) 23:45:33 ID:Mq1eC4fuRs

篠原「おー、綺麗だねー」

清瀬「ふあっ、は、はいっ……」

鈴木「色々あった文化祭も、これでもう終わりだね」

桃山「人気投票で模擬店の部、アタシ達がダントツで一位だったそうよ!アタシ達も楽しめたし、皆にも満足してもらえたなんて最高よね!」

鳴海「何が最高だよ。あんな格好二度としねぇからな」

橘「俺は構わんぞ。愚民共が俺の美しさを惜しむのは仕方のない事だからな」

鳴海「味しめてんじゃねぇよ変態メガネ」

鳴海「大体、お前の萌え萌えビーム見て女子達悲鳴あげてたろ」

橘「何だと?俺の萌え萌えビームは完璧だっただろうが」

桃山「何だかんだでノリノリだったわよね、アンタ……」


429: ◆UTA.....5w:2012/11/9(金) 23:47:38 ID:Mq1eC4fuRs

篠原「……でも、楽しかったなあ。久しぶりにあんなに笑った」

篠原「これって皆のお陰だよね。ありがとね」ヘラリ

桃山「やぁね、改まっちゃって。しんみりしちゃうじゃないの」

橘「まあ、確かに色々とあった文化祭だったな。主に準備期間に」

鈴木「色々あったけれど私は嬉しかったよ、皆との距離が近付いた気がして」

篠原「うーん、それって俺の台詞だよね」

篠原「清瀬さんもありがと。いっぱい迷惑掛けてごめんね」

清瀬「いえ、そん、なっ……」


篠原の大きな手が清瀬の頭をわしゃわしゃと撫でる。

その手が温かかったからか、それとも気恥ずかしさからなのか。

触れられた部分が、じんわり熱を帯びてゆく。


清瀬「……」ギュッ


430: ◆UTA.....5w:2012/11/9(金) 23:54:12 ID:7lh7q/CYCQ

桃山「そうだ、最後のフォークダンス参加しにいきましょうよ!」

鳴海「……はあ?嫌なんすけどー」

鈴木「いや、行こう。今すぐに」グイッ

鳴海「ちょっ、何でっ……嫌だっつってんだろ馬鹿!引っ張るんじゃねー!」


嫌がる鳴海を半ば引き摺るようにして鈴木が教室を出た。

それを何かの合図とするように、桃山も笑顔で橘の腕を掴む。


橘「何のつもりだ。俺はオカマと踊る気なんかないぞ」

桃山「あら、じゃあ今だけ特別に男の部分見せちゃおうかしら」ニッコリ

橘「いっ……!?痛い痛い!骨が折れたらどうする、この怪力オカマが!」

桃山「ちょっとリストロックしただけじゃない。このまま脇固めしてやろうかしら、この軟弱メガネ男子め」


みしみしと関節が軋む音と鋭い痛みに、抵抗する術もなく橘は前へ前へと背中を押される。

彼が解放されたのは、廊下を少し歩いてからだった。

決して表現を誇張している訳ではない。本当に骨が折れるのではないかと思う程の激痛を伴うので、どうか良い子は真似をしないでほしいのである。


431: ◆UTA.....5w:2012/11/9(金) 23:55:38 ID:Mq1eC4fuRs

──廊下


鈴木「あーあ、パーカーが伸びちゃってる」

鳴海「お前が引っ張ったからな!」

鈴木「ごめんね、私達が居たら邪魔だと思ったから」

鳴海「邪魔?何が?」

橘「分かった分かった!ちゃんと歩くからもう放してくれ!」

桃山「……」パッ

橘「……っ、このオカマ……!」

桃山「まったく、アンタ達ときたら……もうちょっと空気読みなさいよね」ハァ

橘「?」キョトン


432: ◆UTA.....5w:2012/11/10(土) 00:01:22 ID:Mq1eC4fuRs

鳴海「お前何かしたの?」

橘「いや、俺はただつまらん花火を眺めていただけだが?」

鳴海「俺もだけど?」

鳴&橘「?」キョトン

鈴木「鳴海くんは知っている筈だけど」

鳴海「俺?何をだよ」

鈴木「……」ヤレヤレ

桃山「んもうっ!ピヨちゃんでしょうが!」

桃山「これだから男子ってやぁね。乙女心をちっとも理解してないんだから……」ブツブツ

鳴海「ピヨ……乙女心……?」

鳴海「……あ、分かったかも」

橘「おい、俺にも分かるように説明しろ」

桃山「アンタは一人でダンスでも踊ってなさい!鈍感軟弱メガネ男子!」リストロック

橘「い゙っ……折れる折れる!手首が取れる!!」


433: ◆UTA.....5w:2012/11/10(土) 00:02:25 ID:7lh7q/CYCQ

──教室


ギャアァァアァァァ…(鈍感軟弱メガネ男子の叫び声)


篠原「な、なんか叫び声が聞こえるんだけど……」ビクビク

篠原「皆いきなりどうしたんだろうね?俺達も行く?」

清瀬「……」

篠原「清瀬さん……?」

清瀬「あ、あの……うち……」


清瀬の手が篠原の服の裾に伸びる。

もごもごと口を動かしてはいるものの、喉の奥が震えて声が出せない。

もどかしい気持ちが彷徨って、裾を掴んだ手に力が入る。


清瀬「うち、篠原くんを傷付けてしもたんやないかって、思てました……」


434: ◆UTA.....5w:2012/11/10(土) 00:06:14 ID:7lh7q/CYCQ

篠原「え?なんで?」

清瀬「だ、だって、うち……中途半端な気持ちのまま篠原くんの事、知りたいやなんて……」

清瀬「篠原くんの気持ち、全然考えてへんかった」

清瀬「じ、自分の好奇心だけ押し付けて、嫌われてしもたんやって、当然やって思てました」ジワァ

篠原(あ、泣いちゃう……)

清瀬「で、でも、篠原くんは話してくれました」グッ

篠原(……堪えた)

清瀬「うち、前に言いましたよね」

清瀬「篠原くんは格好良くて、いつも笑てて、キラキラしとって、友達思いの優しい人やって」

篠原「あー……うん。なんか恥ずかしい。褒め過ぎだよね」フヘ

清瀬「今でもやっぱり、そう思うんです」

篠原「えぇ!?」


435: ◆UTA.....5w:2012/11/10(土) 00:09:25 ID:7lh7q/CYCQ

清瀬「あ、でもそれだけやないって分かったんで……!」

篠原(それだけで十分過ぎる程の評価だけどなあ……)

清瀬「泣いたり怒ったり、色んな篠原くんを見て、思たんです」

清瀬「憧れとか、好奇心とか、そ、そんなんとちゃうって」

清瀬「篠原くんはうちの、い、一番です。友達とは、また別の……」

篠原「ん?え?いち、ばん……?」

清瀬「もっと篠原くんの事知れたらって思うんやけど……だ、駄目ですか……?」

篠原「……」


436: ◆UTA.....5w:2012/11/10(土) 00:10:23 ID:Mq1eC4fuRs

二人きりの教室に沈黙が流れた。

思い切った事をした所為か、清瀬にはやけに長く感じられる。

篠原の表情を伺おうにも、羞恥心が勝って顔を上げられない。


清瀬(うう……えらい事言うてしもた……)

清瀬(篠原くん、何も言うてくれへん……)


顔を伏せたままの清瀬には篠原の表情が見えていない。

口元を押さえた彼の頬が紅潮している事にも、当然気付いてはいない。


篠原(うわ、うわー……)

篠原(……一番だって、俺)


ぽん、と清瀬の頭に何かの重みを感じる。

わしゃわしゃと撫でまわすそれが、先程の掌だと気付くのに時間は要さなかった。


437: ◆UTA.....5w:2012/11/10(土) 00:12:52 ID:Mq1eC4fuRs

篠原「……ありがと」

清瀬「へ?」

篠原「傷付いたとか嫌いだとか、そんな事思ってないよ。聞こえてない振りしてたけど、あの時も本当は嬉しかったんだ」

篠原「俺にも清瀬さんの事、沢山教えてほしいな」

清瀬「……」


ふにゃりと柔らかい笑みを浮かべる篠原を、放心状態で見上げる清瀬。

彼女の瞳はうるうると揺れて……


篠原「うぇ!?き、清瀬さん!?」

清瀬「ご、ごめんなさい……嫌われてないんや思たら、なんかっ……」ポロポロ

篠原「え、あの、ごめんなさい!泣かないでー!」


438: ◆UTA.....5w:2012/11/10(土) 00:24:51 ID:7lh7q/CYCQ

清瀬「し、篠原くんは何も悪ないです。ホンマに、そんなんやなくて……」グシグシ

清瀬「すぐ、すぐ泣き止みますから……ううー……」ポロポロ

篠原「……ごめんね、これくらいしか思い付かないや」

清瀬「ふ、えっ……?」


不意に身体が引き寄せられ、清瀬の視界が暗くなる。

低身長の小さな身体は、すっぽりと篠原の腕の中に収まっていた。


清瀬(なななっ、何が起こって……どないしよ、どないしよ……!)

篠原「なんか俺、泣かしてばっかりだ。ごめんね」


激しく脈打つ心臓が煩い。

全身から自分の鼓動が鳴り響いているような感覚に目眩を起こしそうだ。

それでも背中を叩く篠原の手の心地好さに、清瀬は離れる事が出来なかった。


439: ◆UTA.....5w:2012/11/10(土) 00:25:58 ID:7lh7q/CYCQ

橘「おい、何だそれ……何だそれええええ!」

篠原「」ビクッ

清瀬「」ビクッ


二人が向けた視線の先──窓の向こう側にグラウンドから叫ぶ橘の姿があった。

即座に距離を取る清瀬。
篠原は悪怯れる様子もなく、間の抜けた笑顔で友人達へと手を振った。


鳴海「え?マジ?上手くいったのかよ、あの二人」

鈴木「さあ。悪い結果にはなっていないようだけど」

桃山「篠くん……アタシの王子様が……」グスン

桃山「ううん、でもいいの。誰のものになろうとも、篠くんがアタシの王子様である事には変わらない」ゴシゴシ

桃山「篠くん!アイラービュー!」

橘「おい!俺は説明を要求するぞ!今すぐ降りて説明をしろ!」


440: ◆UTA.....5w:2012/11/10(土) 00:26:57 ID:Mq1eC4fuRs

篠原「うわー、なんかむちゃくちゃ怒ってるよ、橘」

清瀬「ご、ごめんなさい、うちの所為で……」

篠原「ん?なんで清瀬さんの所為になるの?」

清瀬「……だって、」

篠原「あはは、大丈夫だよー」


心配ないと笑ってみせても清瀬の表情は晴れない。

どうしたものかと考えた結果、篠原は清瀬の手を取り満面の笑みを浮かべる。


清瀬「篠原、くん……?」

篠原「逃げちゃえ!」ダッ

清瀬「え?え?」


グラウンドから聞こえる橘の怒号を背に、突如として走りだした二人。

階段を降りた先で友人達が待ち構えている事には、まだ気付いてはいない。

そうして清瀬が肝心な事を伝えていないと気付いたのは、もう少し先のお話。


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