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出会う感情の名は、
[8] -25 -50 

1: 1 ◆b.qRGRPvDc:2011/10/16(日) 19:19:06 ID:f4A63ChN1o
男「あれ?何してたんだっけ?…なんで此処に居たんだっけ?」

住宅街の路地にポツリと立つ青年。見たところ、学生のようだ。

辺りを見渡しても、まるで自分以外の人間が魔法にでも掛けられたかのように姿を見せない。

灰色に染まった空は雨を降らせてパタパタと音を立てながらアスファルトを濡らしていく。

男「うわ!財布の中身散乱してるし!お札が濡れる!」

散乱しているお金を慌てて掻き集め、乱暴に財布に押し込んだ。


482: 番外編
◆b.qRGRPvDc:2011/12/29(木) 22:56:42 ID:i20aHeWQRM

ピッ、ピッ──心電図が刻む音以外、物音さえも聞こえてこないような深夜、それは突然やってきた。三人の顔にも疲れの様子が見えた頃だった。それまで一定のリズムで音を鳴らしていた心電図が、突然に慌ただしく鳴りだした。

男「女ちゃん、駄目だよ!頑張れ!まだ駄目だ!」

弟「姉ちゃんっ」

枕元のナースコールを母親が慌てて押した。震える手を押さえ、何度もそのボタンを押す。親指が白くなるまで力を籠めて、祈るように握り締めた。

母「先生ぇ…誰か、早くっ!」


483: 番外編
◆b.qRGRPvDc:2011/12/29(木) 23:18:24 ID:i20aHeWQRM

間もなくして、医師が数名の看護士を連れて病室に入ってきた。アラームのような警鐘が、ひっきりなしに弟の耳を突く。
ふと、姉が目を開けたかと思えば、大きく息を吸い込んで再びその目を固く閉ざした。

───怖い。
ただ、それだけが弟の脳を支配した。耳を塞いで後退る。この場から逃げ出したい──その願いが通じたのか、看護士が病室から出るようにと、三人を促した。

心電図のラインが真っ直ぐに横に伸び、姉の心停止を告げている。規則的な音は一切途絶え、金切り声のような耳障りな単音を響かせた。


484: 番外編
◆b.qRGRPvDc:2011/12/29(木) 23:45:49 ID:i20aHeWQRM

「蘇生措置を行いますので、ご家族の方は病室の外で──」

看護士の声は、心電図から鳴り響く不愉快な音に掻き消された。三人は呆然としたまま病室の外に出され、祈る事だけを強いられた。

母「女!女ちゃん…っ」

男「ああ、ああぁ……」

母親と男は、全身の力が抜けたようにその場に崩れ落ちた。その横で、弟はただぼんやりと、閉じてゆく病室のドアを見つめていた。

慌ただしく声を上げる医師の後ろ姿を最後に、病室のドアは閉められ、弟の目の前は真っ暗になった。


485:
◆b.qRGRPvDc:2011/12/29(木) 23:51:57 ID:i20aHeWQRM
今回は此処までとさせて頂きます。今年中に終わらせられれば、と思っていたのですが、どうやらそれは無理そうです(´・ω・`)

それにしても質問スレでの瞬殺はやられたなー…という、独り言。
しかし、簡単にバレるという事は、私の特徴を覚えて下さっているという事で、それはそれで嬉しかったり(*´∀`*)

読んで下さった方、支援して下さった方、このスレを開いて下さった方に最大級のありがとうを!
486: 名無しさん@読者の声:2011/12/30(金) 09:44:22 ID:0wEUMZPqbc
うわああああああ(´;Д;`)
姉ちゃんCCCCC
487: 名無しさん@読者の声:2011/12/30(金) 12:27:44 ID:35K7yLKyUg
姉ちゃん…
1さんほんと焦らすの上手いよだいすきぃぃぃ(´;ω;`)つCCCCCCCC
488:
◆b.qRGRPvDc:2012/1/1(日) 00:22:43 ID:fY6mpR/54c
>>486
支援ありがとうございます!
お姉ちゃん、やってしまいました。ちゃんと緊迫感を醸し出せたのか不安でしたが、やってしまいました。

女「呼んだー?」ヒョコ
弟「いやいやいや、出てきちゃ駄目でしょうが」


>>487
支援ありがとうございます!
わー、ありがとうございます私も487さん大好きです(*´・ω・`*)
う、上手く焦らせましたか?2011年最後の更新があんな展開ですみません!

ノエル「沢山Cをありがとう」
弟「だからSSとの温度差…!」



そして、明けましておめでとうございます!昨年は本当にお世話になりました。
ランキングにも入る事が出来、絵スレで描いて頂いたり(全て保存余裕です!)読者スレや他のスレで話題に出して頂いたり、どれも涙がちょちょ切れる思いでした。

このSSを書き始めて二ヶ月以上…まさかこんなにも続ける事が出来るとは思ってもみませんでした。これも、読んで下さる皆さん、支援をして下さる皆さんのお陰です(*`・ω・´*)

このスレを開いて下さった皆さんに、最大級のありがとうを!今年も宜しくお願いします!
489: 番外編
◆b.qRGRPvDc:2012/1/2(月) 00:29:34 ID:4bhoiYs27A

弟「あれ、停電……?」

この暗闇は、精神的なものではない。弟の目の前が、本当に真っ暗になったのだ。辺りを見渡しても、自分が何処に居るのかさえ分からないこの状況は、以前に見た夢とよく似ている。

弟「また夢…?まさか、」

ぎゅっ、と力を籠めてつねった手の甲がピリリと痛む。最近の夢は、痛覚まで再現出来るのか。弟は手の甲を擦りながら、馬鹿げた自分の考えに苦笑した。


490: 番外編
◆b.qRGRPvDc:2012/1/2(月) 10:48:35 ID:lEgxtJc4yk

弟「男さん、何処?…母さん?」

しん、と静まり返る空間に、二人の気配は感じない。手探りで探してみても空を切るばかりで、何も触れる事はなかった。
眠った覚えは、ない。母親と男と三人で、確かに病室の外へ出た筈だった。しかし、あまりにも酷似しているこの状況に、口に出さずにはいられなかった。

弟「……姉、ちゃん…居るの?」

弟の問い掛けに、姉の返事は返ってこない。
何を考えているのだろうか。姉は病室のベッドの上で、生死の境を彷徨っているというのに。
弟は肩を落とすと、緊張で強張る顔を両手で覆った。


491: 番外編
◆b.qRGRPvDc:2012/1/2(月) 18:54:59 ID:CO20nL.cqw

チリン、チリン、と弾くような鈴の音が、突如として弟の耳を突いた。
背後に何かの気配を感じる。弟の喉が、ゴクリと波打った。これ程までに心地好い音を、聞き間違える筈がない。夢の中で聞いた鈴の音は、やはり彼女がいつも鳴らしていた音と同じものだった。

震える口元に手を添え、暖めるような素振りで深く息を吐く。
どうか、これが夢でありますように。そう心の中で祈りながら、彼女の名を呼んだ。

弟「───ノエル…?」


492: 番外編
◆b.qRGRPvDc:2012/1/2(月) 19:29:46 ID:Iihr5bPMRg

恐る恐る弟が振り返った先に居たのは、一匹の黒猫だった。暗闇の中、その闇に溶けるような艶めかしく輝く黒。その輝きは心を擽られた、あの黒髪に何処か似ている。

弟「この猫、前に…」

弟は、その猫を知っていた。ノエルを追い求め、駆け回っていた時に出会った黒猫だった。
黒猫の飴色の瞳が弟を捕える。何かを訴えるように、うるうると瞳を揺らして。

弟「…っ、何…?」

その刹那、眩しい光が目の奥に集まり、弟は思わず手を翳した。


493: 番外編
◆b.qRGRPvDc:2012/1/2(月) 20:01:02 ID:Iihr5bPMRg

まばゆい光が弟の視界を霞ませる。キラキラと眩しいその光に、弟は薄らと目を開ける事がやっとだった。
黒猫が光に包まれ、みるみる姿を変えてゆく。やがて、それは人の形を成し、その姿を現した。

弟「…っ…なん、で……」

まだ朧気な視界の中、サラサラと揺れる黒髪は、月明かりに照らされたように輝いて見える。段々とはっきりとしてくる視界が、目の前の人物の輪郭を明瞭とさせた。

弟「ノエル……」

どうか、これが夢でありますように。やはり、弟はそう願わずにはいられなかった。


494:
◆b.qRGRPvDc:2012/1/2(月) 20:02:54 ID:Iihr5bPMRg
短いですが、今回は此処までとさせて頂きます。

親戚の集まりで従妹が離してくれません…(´・ω・`)
495: 名無しさん@読者の声:2012/1/4(水) 16:51:13 ID:UjCotXF3.6
1さんあけましておめでとう!このSSのキャラ全員に私の愛を!!

っCCCCC
496:
◆b.qRGRPvDc:2012/1/4(水) 21:08:56 ID:l.vCnJsXL6
>>495
明けましておめでとうございます。今年初の支援、ありがとうございます!嬉しいです(*´・ω・`*)

もう少しで終わってしまいますが、登場人物共々今年も宜しくお願い致します!

めぐ「あけめでー!」

元祖男「それを言うならあけおめです」

ノエル「495さんが全員にと言ってくれたからね」

弟「まさかの全員集合だよ」

母「私もいいのかしら///」

女「いいのいいの!全員なんだから!」

男「意外と少ないもんだね」

めぐ「じゃあ皆でいくよー!せーのっ」

全員「今年もよろしくー!」

⊃愛⊂ ギュッ
497: 番外編
◆b.qRGRPvDc:2012/1/4(水) 21:22:18 ID:DJX01rDP6M

ノエル「…やあ、久しぶりだね」

弟の前に立っているのは、紛れもなくノエルだった。艶々と眩しく光る黒髪に、語り掛けるような黒目がちな瞳。そのどれもが弟にはいとおしく、とても苦しい。

ノエル「いつかこんな日が来るんじゃないかと、ずっと思っていたよ」

ノエルの瞳が、ゆらゆらと揺れる。

ノエル「もう、君とはお別れだ」


498: 番外編
◆b.qRGRPvDc:2012/1/4(水) 21:53:04 ID:6umHgByXfw

弟「これは夢、なんだよね?僕はまた夢を見てるんだよね?」

顔を歪めながら、弟がノエルに問う。──そうだと言ってほしい。そうでなければ彼女は一体、何者だというのだろう。

僅かに唇を震わせたノエルから、表情が消える。弟の願いも虚しく、その首は左右にふるふると揺れた。

ノエル「……夢じゃないよ。悪いけど、もう時間がないんだ」


499: 番外編
◆b.qRGRPvDc:2012/1/4(水) 22:47:23 ID:IZ/YJxW.FM

弟「ノエルは、猫なの?」

弟は、おずおずとノエルを見ながら言った。足元から髪の先まで、先程までの黒猫の面影は、今のノエルには感じられない。

ぷっ、とノエルが笑った。きょとんと首を傾げる弟が、やけに幼く見える。

ノエル「緊迫感というものを知らないのかい、君は」

恥ずかしさから、弟が顔を真っ赤にして取り乱した。

弟「だ、だって!だって、目の前で、ノエルが…」


500: 祝!500レス!
◆b.qRGRPvDc:2012/1/4(水) 23:19:07 ID:jsJ4QOAmCk

愛らしく染まる頬に、ノエルは顔が綻ぶ思いがした。じわりと暖かくなる、胸の辺りが擽ったい。
久しぶりに感じる温もりに、ノエルの胸は締め付けられる。

ノエル「そうだね…“あれ”も私だよ」

だけど。そう言って、ノエルの表情が陰った。伏せられた睫毛が寂しげに揺れる。

ノエル「私は……存在してはいけないものだから」


501: 番外編
◆b.qRGRPvDc:2012/1/4(水) 23:55:31 ID:Hwuqpvf2x2

消え入りそうな声で紡いだ言葉は、弟の心臓を激しく脈打たせた。

弟「どういう、意味…」

ノエル「前に、めぐの事を一度話したね。彼女も私と同じ、存在してはいけないものだったんだよ」

弟「待ってよ。めぐとはまた会えるって、ノエル言ってたじゃないか。意味が分からないよ。だって、ノエルは存在してる」

弟の揺れる瞳の中に、ノエルは自身の姿を見た。丸い瞳の中に、確かに捕えられている。
まだあどけなさの残る弟の顔が、柔らかく、しかし切なげに微笑んだ。


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