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出会う感情の名は、
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1:🎏 1 ◆b.qRGRPvDc:2011/10/16(日) 19:19:06 ID:f4A63ChN1o
男「あれ?何してたんだっけ?…なんで此処に居たんだっけ?」

住宅街の路地にポツリと立つ青年。見たところ、学生のようだ。

辺りを見渡しても、まるで自分以外の人間が魔法にでも掛けられたかのように姿を見せない。

灰色に染まった空は雨を降らせてパタパタと音を立てながらアスファルトを濡らしていく。

男「うわ!財布の中身散乱してるし!お札が濡れる!」

散乱しているお金を慌てて掻き集め、乱暴に財布に押し込んだ。


383:🎏
◆b.qRGRPvDc:2011/12/11(日) 23:44:05 ID:r12WCtJTeY
>>380-381
支援ありがとうございます!9m
きゅんきゅんして頂けましたでしょうか?私自身あまり少女漫画を読まない為、女でありながら乙女要素が皆無に等しいのでそれはとても嬉しいです…!

女「私と男くんがそんな事…フヒヒ…デュシュ、デュシュシュジュルジュル」
男「やだこの子怖い…」


>>382
支援ありがとうございます!
あれ、お姉ちゃんが一番好感度が高いのでしょうか。ちょっぴり驚いています。きっとお姉ちゃんの人気に男は焦っている事でしょうねw

男「ちょ、支援は有難いけど女ちゃんは駄目だよ…!」
女「えへへ、駄目らしいです」デレデレ
384:🎏 番外編
◆b.qRGRPvDc:2011/12/11(日) 23:47:21 ID:r12WCtJTeY

弟「お二人さん、もういいかな」

女「お、おと、弟くん!?」
男「今日も良い天気だなーっと!」

弟の声に二人の肩は面白い程に跳ね上がった。姉は先程まで鉛筆を滑らせていたそれに慌てて布を被せ、男は窓際に立って白々しく口笛を吹いた。

弟「男さん、今日は曇りだよ?」

晴れやかな満面の笑みを浮かべながら、弟が可愛らしく首を傾げてみせる。男は苦笑して頭を掻くと「まいったな」と眉を下げた。


385:🎏 番外編
◆b.qRGRPvDc:2011/12/12(月) 00:11:36 ID:6.GQMZQyxE

母「男くんごめんなさいね、この子シスコンだから嫉妬妬いてるのよ」

弟「何言ってんの。違うから」

弟の頭をポンポンと叩きながら母親が笑う。二人はそれを見て握り拳が入りそうな程にあんぐりと口を開けた。

女「お母さんまで居たの!?」

母「大丈夫よぉ、会話の内容までは聞いたりしてないから」

頬を火照らせた姉は両手で顔を隠して狼狽えた。穴があったら入りたいとはこの事を言うのだろう。


386:🎏 番外編
◆b.qRGRPvDc:2011/12/12(月) 00:29:53 ID:6.GQMZQyxE

男「……あの、俺はそろそろ失礼しますね」

上着を手に、いそいそと出口に向かう男が言った。

母「あらあら、邪魔しちゃったかしら」

男「いえ、そんな事は…!また来ます」

さようなら、と頭を下げる。名残惜しそうに様子を伺う姉に「またね」と笑顔で手を振った。
男が去った病室に少しの沈黙が流れた。仕切りなおすように母親がパチンと手を叩いて言った。


387:🎏 番外編
◆b.qRGRPvDc:2011/12/12(月) 00:51:05 ID:6.GQMZQyxE

母「さて!じゃあお母さん先生とお話ついでにお花の水入れてくるわね」

女「ああ、うん。行ってらっしゃい」

姉は病室のドアが閉まるのを確認して弟に視線を移した。表面上こそいつも通りにしているものの、椅子に掛けている弟の脚はブラブラと落ち着かない。

女「弟くん、何か良い事あった?」


388:🎏 名無しさん@読者の声:2011/12/12(月) 11:58:44 ID:KIYooKWHqg
(´・ω・)っC
389:🎏
◆b.qRGRPvDc:2011/12/12(月) 17:08:55 ID:xkRlVvRAxw
>>388
支援ありがとうございます!
また中途半端な所でうっかり寝てしまっていました…(´・ω・`)
こんな拙作に毎日のように支援が頂けるのはとても光栄な事ですね。皆さんからのレスで私の中の小さいおっさんが踊り狂います(※>>371参照)

女「ピンポーン!1さんの50%は小さいおっさんで構成されています」ニコッ
弟「それもはや小さくないし」



それから、セコムさんにお伺いしたところ12位だったそうで。(しかも読んで下さっている上に好きだと言って頂けました(´;ω;`))本編も完結し、過去や番外編を綴っているだけの作品に投票して頂けた事、とても嬉しく思います。本当にありがとうございます。
番外編が完結次第、この物語は終了となります。それまでもう暫くお付き合い下さると幸いです(`・ω・´)
390:🎏 番外編
◆b.qRGRPvDc:2011/12/12(月) 20:21:02 ID:jB4X9WbM8.

ころりと寝返りを打ち、見透かしたように姉が笑う。弟はぴくりと眉を動かして僅かに反応を示したが「別に何も?」と、冷蔵庫から缶ジュースを取り出して飲みはじめた。
コクン、と弟の喉が波打つ。横目でそろりと姉を伺うと、期待に目を輝かせて弟を見ていた。

弟「……何」

女「んー?別にー?」

弟「……」

ニコニコと見つめる姉の視線が痛い。弟は平静を装ってジュースを流し込んだ。


391:🎏 番外編
◆b.qRGRPvDc:2011/12/12(月) 20:43:31 ID:xkRlVvRAxw

そういえば、と弟が白々しく切り出すと、姉の目の輝きが一層増した。ベッドから落ちそうになる程ズイ、と身を乗り出し、続く弟の言葉を待った。

弟「……友達になろうって言った。この前話した子に」

女「本当に?」

弟が頭を上下に振った。それを確認した姉は花が綻ぶように笑って声を上げた。


392:🎏 番外編
◆b.qRGRPvDc:2011/12/12(月) 21:01:57 ID:jB4X9WbM8.

弟「でもあの子、名前なんてないとか、帰る家はないとか…変な事言うんだよ」

女「ミステリアスな女の子…いいじゃない!」

弟「もう、調子に乗らないの」

興奮して立ち上がろうとする姉の肩を弟が押さえた。姉の起伏の激しさや子供っぽい面は見慣れてはいるが、今日はまたいつにも増して激しい気がする。
誰かに恋をしても姉には相談するべきではないな、と考える弟の口からは自然と溜息が洩れていた。


393:🎏 番外編
◆b.qRGRPvDc:2011/12/12(月) 21:21:15 ID:xkRlVvRAxw

女「そうだ、名前がないって言うなら勝手に付けちゃうのはどう?」

弟「…そんな、人をペットみたいに」

駄目駄目、と弟が手を払う。

女「駄目かなぁ。二人だけの呼び名って、特別で素敵だと思ったんだけど……」

むぅ、と唸りながら姉の体がベッドに沈んだ。ふんわりと膨らむ栗色の髪を指先に絡ませて子供のように口を尖らせた。


394:🎏 番外編
◆b.qRGRPvDc:2011/12/12(月) 21:40:54 ID:jB4X9WbM8.

女「ねぇ、その子どんな子なの?可愛い?」

弟は姉の指先に絡まる栗色の髪を見つめた。

弟「……とりあえず、姉ちゃんとは真逆だと思うよ。色々と」

女「えぇ〜…?色々って何よう」

首を捻り、まるで難問題を叩きつけられたかのように考え込む姉を前に、弟は楽しげにクスクスと笑った。

弟(特別、か…)


395:🎏 番外編
◆b.qRGRPvDc:2011/12/12(月) 22:01:05 ID:xkRlVvRAxw

母「随分楽しそうね。何の話?」

母親の声と共に花の香りが病室に広がる。花瓶に挿された色とりどりの花がゆらゆらと揺れ、その香りが弟の脳を刺激した。

弟「別に何でもない話だよ。僕、先に帰って遊んできていい?」

少女はまたあの公園で一人、街の景色を眺めているのだろうか──何故だか、無性に会いたくなってしまった。


396:🎏 番外編
◆b.qRGRPvDc:2011/12/12(月) 22:26:11 ID:xkRlVvRAxw

母「遊びにって今来たところなのに誰と──」

女「いいよいいよ!行ってらっしゃい!」

もう、と溜息混じりに言う母親を遮って姉が早く早くと急かす。弟は自分の心境が見透かされたようで何だか少し気恥ずかしく思えた。
病室を出た弟の脚は自然と早まった。姉の言っていた“特別”を考えると、心が踊る。

少女は少し不思議な空気を纏っていた。何処か近寄りがたいようで、物寂しい瞳をしている。クラスメイトの女の子達にはない美しさに、弟は少なからず好意を抱いていた。


397:🎏 番外編
◆b.qRGRPvDc:2011/12/12(月) 22:49:40 ID:jB4X9WbM8.

────‥

弟「…やっぱり此処に居た」

少女「……また君か」

丘の上の公園に、やはり少女の姿はあった。鈴を鳴らして振り返る少女の姿は実に優美で、弟は暫く口を開けて惚けた。

少女「君は本当に、私が見えているんだね…」


398:🎏 番外編
◆b.qRGRPvDc:2011/12/12(月) 23:18:12 ID:xkRlVvRAxw

弟「見えるよ、幽霊じゃないんだから」

そう言う弟に、少女はクスリと小さく笑った。

少女「そういえば、前にも君と同じように言った子が居たよ」

弟「そうなの?」

少女はうん、と頷く。手首の鈴を指で撫でて懐かしむように語った。

少女「私に名前がないのをいい事に“霊子さん”だと。鈍いようで鋭くて、真っ直ぐな青年だった」


399:🎏 番外編
◆b.qRGRPvDc:2011/12/12(月) 23:39:04 ID:jB4X9WbM8.

今まで見た事のない少女の穏やかな表情は、弟の胸を言い様のない痛みにも似た苦しさに襲わせた。
きっと自分には理解の出来ないものを背負っているのであろう事は、幼い弟にも理解は出来た。

弟「あんた、その人の事が好きなの?」

少女「まさか」

ぷっ、と吹き出して少女は笑った。

少女「あんな子を好きになれるのは、あの子以外には無理だよ」


400:🎏 番外編
◆b.qRGRPvDc:2011/12/13(火) 00:08:07 ID:jB4X9WbM8.

少女の指先が優しく鈴を撫でる。
ああ、きっと少女の手首にいつもあるそれは、彼女の言う“あの子”の物だったのだろう。弟は漸く少女の背負っているものが少し見えたような気がして、少し誇らしく思えた。

弟「その子とは遊んだりしないの?あんた、いつも一人だけど」

少女「遊ぶ?私と彼女がかい?」

どうして、と首を傾げる少女に弟も首を傾げて返した。

弟「友達じゃないの?」


401:🎏 番外編
◆b.qRGRPvDc:2011/12/13(火) 00:27:48 ID:xkRlVvRAxw

少女「友達、か…」

ふむ、と少女は腕を組んだ。
展望台からの景色を目を細めて見つめた。弟が何処見ているのか視線の先を辿っても、其処には馴れ親しんだ街並が広がっているだけだった。

少女「…そうだったのかもしれないね」

弟「だった、って過去形なんだね」

少女「当然でしょう。あの子はもう居ないんだ。救いの光に包まれて消えてしまったからね」


402:🎏 番外編
◆b.qRGRPvDc:2011/12/13(火) 00:42:31 ID:jB4X9WbM8.

弟「消えた?」

少女の言葉の意味に全く理解が出来ない弟は、怪訝な顔をして少女を見た。少女の視線は一点を見つめたまま切なげに揺れている。

少女「もう居ないんだよ、めぐは」

弟「めぐ…その子、めぐって言うんだ」

チリン、と鈴が鳴る。少女はそれに視線を落とすとまた優しく指先で撫でた。

少女「彼がそう呼んでいた。名前を貰ったんだ。……その名と共に、あの子は消えた。幸せそうに彼の手を取って」


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