男「あれ?何してたんだっけ?…なんで此処に居たんだっけ?」
住宅街の路地にポツリと立つ青年。見たところ、学生のようだ。
辺りを見渡しても、まるで自分以外の人間が魔法にでも掛けられたかのように姿を見せない。
灰色に染まった空は雨を降らせてパタパタと音を立てながらアスファルトを濡らしていく。
男「うわ!財布の中身散乱してるし!お札が濡れる!」
散乱しているお金を慌てて掻き集め、乱暴に財布に押し込んだ。
296: 番外編 ◆b.qRGRPvDc:2011/11/29(火) 00:04:35 ID:As22E0pO8E
弟「人の姉ちゃんの病室じろじろ覗き見て何なわけ?バレてないとでも思ってんの?」
ワンピースの裾を握った少女の手が微かに震え、動揺の色を見せる。
病室の方にチラリと視線を投げて至極面倒そうに舌打ちを零した。
少女「…関わらない方がいいよ」
弟「は?」
少女「聞こえなかったのかい?私に関わらない方がいい。君には関係のない事だよ」
297: 番外編 ◆b.qRGRPvDc:2011/11/29(火) 00:30:50 ID:As22E0pO8E
少女は言い終えると弟が立つ位置とは逆方向に、木の上からふわりと飛び降りた。
弟「お、おいっ!」
急いで木の裏に回り込んだが、少女の姿は何処にも見当たらない。
困惑しながら辺りを見渡しても、弟は少女の姿を確認する事は出来なかった。
弟「何だよアイツ…逃げんの早すぎ」
298: ◆b.qRGRPvDc:2011/11/29(火) 00:36:24 ID:qL3BUknhLU
今日は此処までとさせて頂きます。
待っていて下さった方には感謝の気持ちでいっぱいです。過去の話や今回の番外編を妄想で終わらせずに、こうして機会を与えて下さった皆さんに深く感謝致します。
本当にありがとうございます!
299: 名無しさん@読者の声:2011/11/29(火) 01:17:12 ID:dfKDROSnzQ
安心のクオリティー!支援するしかないやろ!
300: 名無しさん@読者の声:2011/11/29(火) 08:24:39 ID:t3o.gKfTxg
弟と少女たんツンツンコンビじゃね(`CωC´)?
301: 名無しさん@読者の声:2011/11/29(火) 19:34:54 ID:iCdVdLGuIU
番外編キタ―!!
CCCCCC
302: ◆b.qRGRPvDc:2011/11/30(水) 00:15:25 ID:JlaWwk8fx.
>>299
支援ありがとうございます!
クオリティは決して高くはありませんが、そう言って頂けるととても救われます。もっとスキルアップせねばとは思うのですが(´・ω・`)
ホンマにありがとうございます。めっちゃ嬉しいです。頑張りますんで応援したって下さい!(関西弁返ししてみましたw)
少女「見守ってあげるといいよ」
弟「上から目線とか何様?あ、支援ありがとう」ニコ
少女「」イラッ
>>300
支援ありがとうございます!そして300ゲットおめでとうございます!
確かに二人共ツンツンしていますよねw少女は基本的に上からものを言う子で、弟は生意気で強がりです。でも、二人共悪い子ではないつもりです。
少女「これと一緒にしないでよ」
弟「僕の台詞取んなよ」
少女「は?」
弟「は?」
女「ふふ、似た者同士だね」
少女&弟「全然似てない!」
>>301
読みに来て下さってありがとうございます!番外編、来ました(`・ω・´)
構成を練りながら思ったのですが、私はどうも可愛げのある子供を書く力が乏しいようですwつんけんした子達ばかりですが、宜しくお願い致します!
弟「つんけんしてないけどね」
少女「まったくその通りだね」
弟「別に愛想くらい振りまけるけどね」ニッコー
少女「…」ニヤ
弟「怖いんですけど」
そして祝300レス突破!
303: 番外編 ◆b.qRGRPvDc:2011/11/30(水) 00:48:06 ID:JlaWwk8fx.
*
母「ただいまー」
玄関からドアが開く音と共に母親の声が響き渡る。間もなくしてパタパタとリビングへと足音が近付いてきた。
母「ただいま」
背後から聞こえてくる母親の声に弟はピクリと体を揺らすと、テレビ画面から目線を外す事なく「おかえり」とぶっきらぼうに返した。
我が子の素直になれない性格を理解している母親は、その後頭部を見ながら笑みを零した。
304: 番外編 ◆b.qRGRPvDc:2011/11/30(水) 01:06:43 ID:Kkh511QEhI
肩から鞄を降ろしながら弟に視線を送った。テレビ画面からは賑やかな笑い声と陽気なBGMが流れている。
母「ご飯ちゃんと食べた?学校のお手紙あったらちゃんと出してね」
優しく問い掛ける母親の声は疲れの色を隠せていない。椅子に腰を降ろすと堪らず「ふぅ…」と息を洩らした。
305: 番外編 ◆b.qRGRPvDc:2011/11/30(水) 01:16:53 ID:JlaWwk8fx.
横目で伺う弟の視界には、肩を揉みながら首を回している母親の姿があった。
弟「ねぇ、晩ご飯くらい自分でどうにか出来るから無理しなくていいよ。最近疲れてるんじゃない?」
母「子供が生意気な口聞くんじゃありません〜!」
母親は背後から弟の頭をわしゃわしゃと撫で回した。まだ幼い我が子の強がりがやけに胸に染みる。
306: 名無しさん@読者の声:2011/11/30(水) 12:27:23 ID:aTgMsJ/gf2
っC
307: ◆b.qRGRPvDc:2011/11/30(水) 20:03:55 ID:Eil4THsRhI
>>306
支援ありがとうございます!
昨日はうっかり寝てしまいました。そして今日は熱が出るという残念な展開に…(´・ω・`)
弟「支援ありがとう、ごめんね」
少女「私からも礼は言っておくよ」
308: 番外編 ◆b.qRGRPvDc:2011/11/30(水) 20:06:12 ID:Eil4THsRhI
弟「もう!心配して言ってやってんの、に……!?」
弟の手が振り払うのが先か、母親の腕が弟を包み込んだ。背中から伝わる母親の熱で抱き締められているのだと気付いた弟は、横目で母親を伺った。
母親の体は小さく震えている。
母「……お姉ちゃん、もう駄目かもしれないって」
弟「え…?」
母親の腕にグッと力が入る。
息苦しくなる程強く抱き締めているのというのに、弟は抵抗する事も忘れて呆然としていた。
309: 番外編 ◆b.qRGRPvDc:2011/11/30(水) 20:24:00 ID:Eil4THsRhI
母「手術するにも、今のままじゃ体力が保たないんだって」
母親の体の震えが背中から伝わる。背後で肩を揺らす母親の腕に、弟の手が重ねられた。
弟は震える喉を堪え、母親の腕から逃れるように立ち上がった。
弟「何、弱気になってんだよ。姉ちゃんはまだ生きてるよ。あんなに元気なんだ、きっと助かるよ」
310: 番外編 ◆b.qRGRPvDc:2011/11/30(水) 20:49:01 ID:Eil4THsRhI
母「…そうね、ごめんね」
弟の唇がギュッと噛み締められる。涙が出そうになるのを辛うじて堪えて母親に背を向けた。
姉はきっと助かる─そう信じてはいるものの、弱気になっている母親を見ると一抹の不安が過る。
弟「母さんも無理しないでよね。母さんまで倒れたら困るよ。僕、子供なんだから」
311: 番外編 ◆b.qRGRPvDc:2011/11/30(水) 21:12:45 ID:Eil4THsRhI
「おやすみ」と足早にリビングを後にする弟の後ろ姿を涙を拭って見送った。
母「…こんな時だけ子供ぶって」
母親の唇が弧を描いた。
鼻を啜りながら洗い終わっている食器に手を伸ばし、片付け始めた。
312: 番外編 ◆b.qRGRPvDc:2011/11/30(水) 21:21:43 ID:Eil4THsRhI
*
チリン、チリンと鈴の音が鳴り響いている。辺りを見渡しても真っ暗で何も見えず、自分が何処に居るのかも分からない。
鈴の音は段々と大きくなり、背後からその距離を縮めていた。
音の鳴る方に振り返ると、暗闇の中にぼんやりと人影が浮かんでいるのが見えた。
弟「誰…?」
目を凝らしながら恐る恐る近付いて行くと、それはよく見知った人物だった。
313: 番外編 ◆b.qRGRPvDc:2011/11/30(水) 21:49:07 ID:1TeB1qx0ZM
弟「……姉ちゃん?」
弟の声にピクリと体を揺らし、その人物はゆっくりと顔を上げる。
ふわりと柔らかく微笑むその人は、まさしく姉であった。
弟「姉ちゃん、こんなとこで何してんの?」
声を掛けながら歩み寄るも、二人の距離は一向に縮まらない。何も答えず、距離も縮めず、ただ其処で優しく微笑んでいる。
314: 番外編 ◆b.qRGRPvDc:2011/11/30(水) 22:13:46 ID:Eil4THsRhI
ふと、誰かが姉の手を取った。
姉の隣には、弟とそう背丈の変わらない少女の姿があった。
弟「あ!お前…!」
姉の隣に立っているのは、病院で見た黒いワンピースの少女だった。
弟の声に一切反応せず、姉の手を引いて歩き始める。姉はそれに抵抗する素振りはなく、弟に背を向けて少女と共に歩きだした。
315: 番外編 ◆b.qRGRPvDc:2011/11/30(水) 22:36:42 ID:1TeB1qx0ZM
弟「待てよ!何処行くんだよ!」
弟がどれだけ走っても一向に距離は縮まらず、それどころか二人が歩みを進める度に広がっていくばかりだった。
縋るように伸ばされた腕さえも、姉には届かない。
弟「───姉ちゃんっ!!」
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