男「あれ?何してたんだっけ?…なんで此処に居たんだっけ?」
住宅街の路地にポツリと立つ青年。見たところ、学生のようだ。
辺りを見渡しても、まるで自分以外の人間が魔法にでも掛けられたかのように姿を見せない。
灰色に染まった空は雨を降らせてパタパタと音を立てながらアスファルトを濡らしていく。
男「うわ!財布の中身散乱してるし!お札が濡れる!」
散乱しているお金を慌てて掻き集め、乱暴に財布に押し込んだ。
241: ◆b.qRGRPvDc:2011/11/21(月) 22:09:11 ID:owdFNQ5OBY
めぐ「見付けたんだ、やっと分かった!男、愛してるなんだよ!」
男「な、何が?」
頬の熱も冷めぬまま青年は困惑した。
めぐ「ボクの“失くしたもの”は、愛だ。誰かに愛されるという事、それと─」
青年の目の前にはめぐの笑顔があった。今まで見た事のない、はにかんだ笑顔。
めぐ自身の胸に手を当てて、青年を見つめた。
めぐ「──誰かを愛するという事」
242: ◆b.qRGRPvDc:2011/11/21(月) 22:12:15 ID:zp0bIVJqTM
×めぐ自身の胸に手を〜
〇めぐは自身の胸に手を〜
畜生、畜生…!すみません(´;ω;`)
243: ◆b.qRGRPvDc:2011/11/21(月) 22:30:13 ID:owdFNQ5OBY
男「……はは、何だ。そうだったのか」
呆然としていた青年の口元は次第に緩み、笑みを零した。
きょとんと首を傾げためぐに、青年は続ける。
男「めぐ、お前の本当の名前は“めぐみ”だ。“愛”と書いて、めぐみ。母親が俺につけようとしてた名前なんだ」
残念ながら生まれたのは男だったけど、と青年は苦笑した。
男「俺が最初にお前に与えたのは、愛(めぐみ)…お前の名前だよ」
244: ◆b.qRGRPvDc:2011/11/21(月) 22:48:40 ID:zp0bIVJqTM
めぐ「…あったんだ」
輝きを取り戻しためぐの瞳からは涙が流れている。頬を伝う涙はポロポロと零れ落ち、アスファルトの上で細かく弾けた。
めぐ「最初から、こんなに近くにあったんだ。ボクは愛を貰ってた」
空から降る雨はなく、アスファルトはめぐの涙で色を変えていく。
青年がその涙に触れようと手を伸ばすと、何か温かいものを感じた。
245: ◆b.qRGRPvDc:2011/11/21(月) 23:04:28 ID:owdFNQ5OBY
男「何、だ…これ…?」
気が付けば黄金色の粒が二人を包み始めていた。温かく優しいその光の粒が触れる度に、二人の体は色を失って消えていく。
めぐ「さよなら、だね」
男「…また会えるんだよな、俺達」
めぐ「きっと、いつかまた会える。何度でも見付けてみせるよ」
男「だったら…さよならは取り消しだ」
青年の揺れる瞳の中で、半透明のめぐがふわりと笑う。
溢れ出る涙でさえ黄金色の光の粒が飲み込んでいる。
246: ◆b.qRGRPvDc:2011/11/21(月) 23:28:07 ID:owdFNQ5OBY
めぐ「男、」
男「ん?」
めぐ「出会ってくれて、ありがとう」
男「……此方こそ」
めぐは眉を下げて微笑むと、ゆっくりと立ち上がり青年に向かって手を差し出す。
めぐ「お迎えです」
めぐの差し出された手に、男の手が重なった。
言葉に出さなくても伝わってくる。
互いの手が、その熱が、愛していると叫んでいた。
247: ◆b.qRGRPvDc:2011/11/21(月) 23:32:12 ID:owdFNQ5OBY
「──ありがとう」
黄金色の光の粒が二人を包み込み、やがて消えた。
248: ◆b.qRGRPvDc:2011/11/21(月) 23:56:15 ID:zp0bIVJqTM
────‐‥
チリン、と鈴の音が鳴る。
黒いワンピースを着た少女は一人、住宅街の路地を歩いていた。その手首には鈴の着いた赤いものが着けられている。少女が歩く度に、その鈴はチリンと音を鳴らした。
少し先の電柱を見て、少女は目を細めた。電柱の下には幾つもの弔いの花束が供えられている。
249: ◆b.qRGRPvDc:2011/11/22(火) 00:01:12 ID:zp0bIVJqTM
少女は電柱の前に屈むと、小さな花を一輪、そこに置いた。
少女「私は君を忘れないよ、めぐ。君という存在は確かに此処に在った」
足元の小さな花が頷くように揺れている。少しの間少女は目を閉じて、立ち上がった。
少女「……私も、いつか君達に会えるだろうか」
少女は笑顔で空を仰いだ。
晴れ渡る空は暖かい風を吹かせている。二人を濡らす冷たい雨は、もう降っていない。
250: ◆b.qRGRPvDc:2011/11/22(火) 00:02:39 ID:zp0bIVJqTM
──出会う感情の名は、愛。
大切に思う、暖かい感情。
「出会う感情の名は、」fin.
251: 名無しさん@読者の声:2011/11/22(火) 00:08:21 ID:YXeodUQ.WM
お疲れ様でした!お疲れ様でした!
素敵な物語をありがとうございました!!
252: 名無しさん@読者の声:2011/11/22(火) 00:13:53 ID:3i.S8VEdTg
はい、泣いた。もう号泣。アリスでも泣くまでいかずにすんだのに、もう涙が止まらん。
1さんあんた最高です。素敵な物語を本当に有難うございました。
できれば番外編で少女たんの話を…頼む!
253: ◆b.qRGRPvDc:2011/11/22(火) 00:25:17 ID:owdFNQ5OBY
いやー…終わってしまいました。思った以上に長くなってしまいました。何と言うか、終わるのが寂しくて寂しくてw
前に質問スレでお答えした通り、この物語はポルノグラフィティの「ヴォイス」という歌を聴いて閃いたものでした。その際に二曲ある、と言ったのを覚えていて下さっている方が居られるかは分かりませんが、此処で発表したいと思います。
もう一曲は、同じくポルノグラフィティの「愛が呼ぶほうへ」でした。もう一曲を言ってしまうとネタバレになると言ったのは、曲名でお察し頂けたかと思います。
>>79でお答えした名前の件も、上に同じです。
だらだらと稚拙な物語にお付き合い頂いて本当にありがとうございました!読者スレで話題に出して頂けた事、めぐ達を描いて頂けた事、ランキングに入れた事、どれも嬉しくて涙がちょちょ切れましたw
長ったらしい後書きですみません。本当に本当にありがとうございました。
254: ◆b.qRGRPvDc:2011/11/22(火) 00:39:29 ID:owdFNQ5OBY
>>251
ありがとうございます、ありがとうございます!
読んで頂けただけで感無量なのに、そんな事まで言って頂いて…(´;ω;`)
めぐ「さよなら、だね」
男「おい、止めろ」
>>252
なななな何ですって!?涙して頂けるなんて……よせよ、泣けるじゃねぇか!!
どのSSも素晴らしく、素敵な物語ばかりです。その中でもあのSSは一際目を引き、沢山の方の心を掴みましたよね。私は泣いちゃいましたw
強者な252さんに泣いて頂けて光栄です。本当にありがとうございます!
少女の話とめぐの過去(過去の話はあまりにも欝なので書くつもりはないのですが)も少しは頭にあるのですが、まだ形にもしていないので番外編については少し考えたいと思います(´ω`)
めぐ「泣かないで〜」
男「泣かないで〜」
少女「泣かないで」
男「羞〇心か!」ビシッ
少女「…やらせておいて」チッ
(舘ひ〇しよりこれが先に頭に浮かんでしまいましたw)
255: 名無しさん@読者の声:2011/11/22(火) 01:41:49 ID:3i.S8VEdTg
ポルノグラフィティか、納得です
俺は!番外編を!希望する!
256: 名無しさん@読者の声:2011/11/22(火) 09:46:40 ID:DupF7GDfog
うん。もっと評価されていいと思うんだこのSSは。
全てを知って読み返すと胸が痛い。
お疲れ様でした(;_;)
257: ◆b.qRGRPvDc:2011/11/22(火) 23:19:26 ID:JPOJYwW2Gc
>>255
納得して頂けるとは…!
歌詞の内容を全て使ったわけではないのですが、物語の構成を考える上で凄く助けられました。ポルノグラフィティに感謝(`・ω・´)
だが断…らない、かもです。
今、少し少女の話を考えています。ちゃんと頭の中で纏まれば番外編として投下しようかと思っています。ので、保管庫か削除の依頼はもう少し待とうと思います。
>>256
あわわわありがとうございます!そう言って頂けるだけで感無量です(´;ω;`)
読み返して頂けた、と受け取ってもいいのでしょうか?
至らない点が沢山あったとは思いますが、256さんに読み返して頂けるようなものが書けたと思うと…泣ける(´;ω;`)
本当にありがとうございました!
258: 名無しさん@読者の声:2011/11/23(水) 01:00:58 ID:JLU0toeGlQ
削除だけは許さんぞ(`;д;´)
SSとしてではなくてもいいから
個人的には過去の話も聞きたいです
1にこれあげるから
つ私の愛
259: 名無しさん@読者の声:2011/11/23(水) 08:13:28 ID:nUErM70S8M
わー!出遅れた!1さん完結おめでとうございます!!素敵な物語を、感動をありがとう!
こんな切なくて愛しくなるSSに出会ったのは初めてでした。めぐ達はきっとまた出会える。そう信じています!心から乙でした!!
番外編とめぐの過去…出来るなら自分も読みたいなーチラッチラッ
260: ◆b.qRGRPvDc:2011/11/24(木) 21:47:24 ID:VCHgmReH86
>>258
了解です!終了次第、保管庫で依頼させて頂きます(`;ω;´)
そして258さんの愛はしかと受け止めさせて頂きました!
ありがとうございます。ご厚意に甘えて私の語りという形でめぐの過去について書かせて頂こうと思います。ひっそりとsageで書こうと思うので、sageでのレスですみませんorz
気付いて頂けてるでしょうか…?
>>259
此方こそ最後までお付き合い頂いて本当に本当にありがとうございます!
わー…そんな事を言って頂いていいんでしょうか。何だか胸がいっぱいです。
この物語を始めた当初、二人の出会いや失くしたもの、そして別れまでの流れは決まっていました。もっと早く終わらせる事も出来たと思うのですが、長引かせてしまった部分も多少はあったと思います。
それを最後まで見守って頂けた事、登場人物の幸せを願ってくれた事、全てに感謝です(´;ω;`)
番外編はまだ思案中ですが、まずはめぐの過去をひっそりと投下させて頂きます!
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