男「あれ?何してたんだっけ?…なんで此処に居たんだっけ?」
住宅街の路地にポツリと立つ青年。見たところ、学生のようだ。
辺りを見渡しても、まるで自分以外の人間が魔法にでも掛けられたかのように姿を見せない。
灰色に染まった空は雨を降らせてパタパタと音を立てながらアスファルトを濡らしていく。
男「うわ!財布の中身散乱してるし!お札が濡れる!」
散乱しているお金を慌てて掻き集め、乱暴に財布に押し込んだ。
147: ◆b.qRGRPvDc:2011/11/7(月) 23:01:04 ID:e5rqslqDyc
砂嵐のようなものに交ざって人影が二つ、動いている。
『…本当に、送り届けないといけないのかな』
『傍に居たら、消えちゃうの…?』
ノイズ交じりに女の子の声が聞こえる。やがて砂嵐は無くなり、女の子の顔がはっきりと浮かんだ。
『…さようなら、男』
月明かりに浮かぶ黒猫と重なって見えた、一人の少女の姿。
それは紛れもなく、
男「……めぐ…なんで………」
148: ◆b.qRGRPvDc:2011/11/7(月) 23:08:00 ID:e5rqslqDyc
今日は此処までとさせて頂きます。今週中に完結出来る、かな?
>>141のしょうもない発言は忘れて下さいw完結して需要があれば投下したいと思います(`・ω・´)
それから私信になりますが>>139さん!絵スレの1さんが素晴らしい絵を描いて下さいました!!
もう涙ちょちょ切れです。リクエストして下さってありがとうございました(´;ω;`)
149: 139:2011/11/8(火) 00:34:42 ID:lc8RQVBUOw
見ました!!あれはヤバイ泣ける(;ω;)
SSで泣いちゃったの初めてだったんだぜwwこちらこそ素晴らしいSSを書いてくれて有難う
今日の展開もヤバイっすw名無しに戻って期待してます!!っCCCCCCCC
150: 名無しさん@読者の声:2011/11/8(火) 23:48:55 ID:KjMJHnHQms
っC
151: ◆b.qRGRPvDc:2011/11/9(水) 21:00:48 ID:xoGBRqKnAA
>>149
支援ありがとうございます!
こんな稚拙なもので涙して頂けたというだけで、私が泣いてしまいそうです(´;ω;`)
読んでくれてありがとうございます。期待に応えられるように全力で頑張ります!
>>150
支援ありがとうございます!
沢山あるSSの中でこのスレを開いて下さって、本当に(´;ω;`)
男「支援ありがとう!1も喜んでおる!」
少女「何だい、その喋り方は」
男「特に意味はないのである!」エッヘン
少女「だったら止めた方がいいよ。気持ち悪いから」
男「霊子さんって俺の扱い酷くない!?」
152: ◆b.qRGRPvDc:2011/11/9(水) 21:03:09 ID:mYM8Ym1HnU
夢で見た不思議な光景、あの声はめぐのものだった。
同じ場所、あの路地に居た少女と黒猫は、雨の中同じ“誰か”を待っていたのだろうか。青年は頭を抱えて俯いた。
カーテンの向こうを見るのが怖い。何かを知るのが怖かった。
――それでも。
男「…何も知らないまま居なくなられるのは、もう嫌だ」
153: ◆b.qRGRPvDc:2011/11/9(水) 21:21:29 ID:mYM8Ym1HnU
青年は震える手を抑えるようにぎゅっと握った。空気を吸い込むと、喉がヒュッと渇いた音を洩らす。
一度目を閉じて、ゆっくりと開く。
男「霊子さん、居るんだろ?」
シンと静まり返るワンルームを見渡して、
男「霊子さん!頼むよ!!」
少女「うるさい」
男「ヒッ…!!」
青年の背後に少女は居た。
二度目と言えど、青年の体は大きく跳ねる。声が出そうになるのを辛うじて堪えて、ゴクリと唾を飲み込んだ。
154: ◆b.qRGRPvDc:2011/11/9(水) 21:44:05 ID:mYM8Ym1HnU
少女「あのねぇ…」
少女はポリポリと頭を掻きながら青年を見た。眉間には深々と皺が刻まれている。
少女「子飼いじゃあるまいし、呼べばすぐ来ると思わないでくれるかな。私にだってすべき事はあるんだから」
それと、と付け足して少女は自分の胸を叩く。
少女「私の呼び名!変な呼び名付けないでくれるかい?」
男「ごめんなさい、霊子さん」
シュンと肩を竦める青年から目を逸らして、やり場のない感情を舌打ちで弾いた。
155: ◆b.qRGRPvDc:2011/11/9(水) 22:05:43 ID:mYM8Ym1HnU
男「あの、来てくれてありがとう」
少女「勘違いしないでね。別に、君の為じゃないから」
少女の目が泳ぐ。それを見た青年はクスリと微笑んだ。
男「分かってるよ。めぐの為だろ?」
少女「それも違うね。私達は友達でも何でもない」
男「でも、来てくれた」
少女「君が煩く私を呼んだからだよ!」
青年は目を細めて笑った。
頬を紅潮させて顔を逸らす少女がとても愛らしく見える。いつもの仏頂面は見る影もなく、幼さを垣間見せていた。
156: ◆b.qRGRPvDc:2011/11/9(水) 22:28:27 ID:mYM8Ym1HnU
少女「…君が知りたいのは、」
振り返った少女の目は真っ直ぐに青年を捕らえていた。
風にはためくカーテンが二人の会話を邪魔するようにパタパタと音を立てている。
少女「君が知りたいのは、彼女の事だね」
青年の目の色が変わる。口をグッと引き締めて少女の言葉を待った。
少しの間を開けて、少女は重い口を開いた。
少女「めぐというものは存在しないし、してはいけない。本来出会うべきじゃなかったんだよ、君と彼女は」
157: ◆b.qRGRPvDc:2011/11/9(水) 22:53:03 ID:VCHgmReH86
少女「…幽霊というのも強ち間違いじゃないんだ。元は人間だったからね、私も彼女も」
男「元は…?」
少女「……」
青年は眉を顰めた。
少女の話があまりにも現実味がなさすぎて理解が出来ない。まるで、安っぽいファンタジー小説を読んでいるようだった。
158: ◆b.qRGRPvDc:2011/11/9(水) 23:14:44 ID:gdsRLqBUn.
男「存在しないって、してるじゃないか。触れる事だって出来る」
少女「…っ君は!君は、目に見える事が全てなのか?私達は存在しない!ただの空っぽな何かなんだよ」
肩に触れる青年の手から逃げるように、少女は自分自身の肩を抱いた。力をこめられた指先は白くなっている。
青年は少女に掛ける言葉を見付けられずにいた。
少女は荒くなった呼吸を整えて冷静さを取り戻すと、静かに語りだした。
159: ◆b.qRGRPvDc:2011/11/9(水) 23:33:05 ID:VCHgmReH86
少女「簡単な話だよ。私達は罪を犯し、その代償としてこうしてる」
男「罪って…何を」
少女「…さぁね、記憶なんて何処かに忘れて来たんだろう。気が付いた時には、自分が何者かなんて覚えちゃいなかった」
男「それは、めぐも…?」
少女は無言で頷いた。
青年は出会ったばかりのめぐを思い出した。貴方は誰か―その質問に答えなかった訳が、何となく分かった気がする。
手のひらがじんわりと熱くなって、初めて自分の手に力が入っている事に気付いた。
160: ◆b.qRGRPvDc:2011/11/9(水) 23:35:41 ID:gdsRLqBUn.
今日の投下は此処までとさせて頂きます。終わりが見えてきた…!
何だか突然寒くなりましたね。皆さんも体調には気を付けて下さいね(´・ω・`)
161: 名無しさん@読者の声:2011/11/10(木) 02:44:05 ID:dfKDROSnzQ
いっぱいあげるからめぐと男を幸せにしてあげてCCCCCCCCCCCC
162: ◆b.qRGRPvDc:2011/11/10(木) 23:31:38 ID:A8T..sH7VM
>>161
沢山ありがとうございます(*`・ω・pCq)キャッチ
前にも他の方に支援を頂いた際にも答えさせて頂いたのですが、めぐにとっての幸せは“現状のまま”男と一緒に居る事なんですね。
救いようのない物語にするつもりはないので欝展開ではない、とだけは断言致します!
こうして色んな方に幸せを願って頂けるめぐは、とても幸せ者ですね。本当にありがとうございます(*´ω`*)
男「支援サンクスだぜ!」
少女「…自分のキャラに迷っているんだね」
男「そ、そんな事ないんだぜ!」
少女「可哀想に」クスッ
男「そんな事…ないんだぜ…」
めぐ「男、可哀想…」
男「もうやだこいつら」グスン
163: ◆b.qRGRPvDc:2011/11/10(木) 23:40:22 ID:A8T..sH7VM
少女は語り続けた。
――過去に何らかの罪を犯した私達は死後、死者となる事は許されなかった。真っ白い空間に私は居て、これからすべき事を知った。
私達は、こうして“生まれた”。
死期が訪れた人を送り届ける。
それが罪人である私達の償いであり、存在意義なんだそうだ。人は天使や死神と呼んだりするけれど、実際そんなものは居ない。
送り届ける。ただ、それだけの役割なんだよ。
164: ◆b.qRGRPvDc:2011/11/11(金) 00:23:12 ID:L9VHa.zPfY
人だった頃の自分の事は覚えていない。自分が犯した罪も、分からない。この容姿だって、私であって私じゃない。
そして、本来人に見えるものでもない。君のような人は初めてだったよ。私も、彼女も。
彼女が犯したタブーは、君という人間に出会い、共に過ごしてしまった事。君と触れ合い、存在してしまった事。
それから――
165: ◆b.qRGRPvDc:2011/11/11(金) 00:51:11 ID:A8T..sH7VM
少女は頭を左右に振ると言葉を紡ぐのを止めた。
少女「…これは、私が語るべき事ではないね」
青年は全身がドクンと脈打つのを感じた。こんなにも現実味のない話を信じる人は居ないだろう。そう思えるのに、目の前の少女の瞳が真実だと語り掛けている。
男「俺が……俺が、めぐの存在意義を奪ったのか?俺が一緒に居たいって言ったから?俺がめぐと出会ってしまったから?」
少女「それは違う。彼女は私の忠告を無視してまで“めぐ”である事を選んだんだよ」
166: ◆b.qRGRPvDc:2011/11/11(金) 00:56:40 ID:A8T..sH7VM
投下しながら何度も意識を手放してしまう…(´-ω-`)
時間掛かりすぎな上に少ない投下ですが、此処までとさせて頂きます。
おやすみなさい。
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