男「あれ?何してたんだっけ?…なんで此処に居たんだっけ?」
住宅街の路地にポツリと立つ青年。見たところ、学生のようだ。
辺りを見渡しても、まるで自分以外の人間が魔法にでも掛けられたかのように姿を見せない。
灰色に染まった空は雨を降らせてパタパタと音を立てながらアスファルトを濡らしていく。
男「うわ!財布の中身散乱してるし!お札が濡れる!」
散乱しているお金を慌てて掻き集め、乱暴に財布に押し込んだ。
126: ◆b.qRGRPvDc:2011/11/5(土) 23:18:35 ID:abfFXIg/oE
少しですが今日の投下は此処までとさせて頂きます。
支援して下さった方、体を気遣って下さった方、皆さん本当にありがとうございます。大好きです(*´・ω・`*)
127: 名無しさん@読者の声:2011/11/6(日) 00:12:34 ID:8UfovPMLHI
くそっ男かっこいい…(´;_;)っC
1さん無理は禁物ですぞ!ゆっくり休んで早く良くなってね!
128: ◆b.qRGRPvDc:2011/11/6(日) 19:40:45 ID:U7KJ6HZvos
>>127
お気遣い感謝です(´;ω;`)
お粥や豆腐ばかり食べていますが、胃に優しいものは少し味気ないですね。うどんに大分救われていますw
男はお節介でとても良い奴です。子供の頃から捨て猫等を放っておけず、しょっちゅう家に連れて帰っていたという無駄な裏設定があります。彼の母親もまた然り。
だから母親亡き今も、大好きだった妹の息子の面倒を伯母が見てくれる。彼が学生でいられる理由がそれです。
すみません、語りすぎてしまいましたw格好良くないけど、良い奴。それが男という人間です。
男「イケメンの俺から礼を言おう。支援ありがとう」キリッ
少女「……(蔑むような目)」
男「分かってるからそんな目で見ないで…」
少女「何も言ってないのに何故泣くんだい鬱陶しい気持ち悪い」
男「」
129: ◆b.qRGRPvDc:2011/11/6(日) 21:04:00 ID:dhwnfalxmU
*
あれから幾日も時間が流れた。
めぐは青年の家での生活にもすっかり慣れ、苦手とするドライヤーも我慢出来るようになっていた。
少女もあの日から姿を現す事はなく、二人は穏やかに過ごしていた。
ゲームをしたり、青年の思い出話をただひたすらに聞いたり、公園の木に二人、肩を並べて座ったり。
幸せな時間が二人を包み込む。いつまでもこんな日が続けば良い――そう思っていた。
130: ◆b.qRGRPvDc:2011/11/6(日) 21:23:09 ID:U7KJ6HZvos
浴槽に張られたお湯をチャプチャプと弄ぶ音がする。手の平で掬ったお湯は隙間からいとも容易く零れていく。
男「ちゃんと十秒数えてから出るんだぞー」
めぐ「わかってるもん!いーち、にーい…」
ドアの向こうから聞こえる青年の声に返事をして、めぐは指折り数え始めた。
めぐ「…じゅう!」
131: ◆b.qRGRPvDc:2011/11/6(日) 21:57:36 ID:U7KJ6HZvos
浴槽に手を掛けて体を起こす。激しく波打つお湯の粒が弾けてめぐの顔に何滴か当たった。
ゆらゆらと揺れる水面。覗き込んでみても其処にめぐの姿はない。無機質な電球の灯りだけが水面で揺れている。指先でそっと灯りに触れると円を描いてその形を崩した。
めぐ「……もう、時間がないね」
自嘲じみた笑顔で水面を見つめる。電球の灯りが頷くように揺れていた。
132: ◆b.qRGRPvDc:2011/11/6(日) 22:15:03 ID:U7KJ6HZvos
めぐ「うぅーうぅー…」
男「はいはい、もう少しの辛抱だから」
不愉快な轟音と温風がめぐを襲う。随分と慣れはしたものの、やはり好きになる事は出来なかった。
ああ、なんでドライヤーなんてものが生まれてしまったのか。毎度の事ながら、めぐは心の中で小さく舌打ちをした。
男「はい、終わり。お疲れさまでした」
めぐ「お疲れさまでした…」
133: ◆b.qRGRPvDc:2011/11/6(日) 22:34:42 ID:dhwnfalxmU
男「サラサラふわふわ!完璧!」
めぐ「完璧ー!」
青年がめぐの髪を梳かしながら弄ぶ。その表情は口角を上げて至極満足そうなものだった。
めぐもドライヤーからの解放感から、嬉しそうに声を上げた。
男「ほれ、もういいぞ」
めぐ「わーい!お疲れさまでしたよー!」
青年の手がポンとめぐの頭に触れた。めぐは洗面台の前から離れると、そのままベッドに飛び乗って突っ伏した。
134: ◆b.qRGRPvDc:2011/11/6(日) 22:55:58 ID:U7KJ6HZvos
男「布団に飛び込むなっていつも言ってるだろうに…」
めぐ「だって!お布団気持ちいいんだもん!」
青年は布団に突っ伏したまま足をバタつかせるめぐの後ろ姿を苦笑しながら見下ろした。
男「はいはい、良い子はさっさと寝なさい」
めぐ「はーい」
眉を下げて笑うめぐの表情は青年が押した電気のスイッチ音と同時に暗闇に消えた。
135: ◆b.qRGRPvDc:2011/11/6(日) 23:18:44 ID:dhwnfalxmU
客人だからとめぐにベッドを譲っていた青年だったが、何度別に寝ても青年が目を覚ますとめぐは青年に寄り添うように眠っていた。
何の為に固い床で我慢しているのか―そんな疑問は二人でベッドで眠るという選択で容易に解決した。
“そういう関係”でないのは分かっているが、だからこそあまり密着するのも憚られる。青年はいつも気を遣ってベッドの脇に寄っていた。
しかし、この状況は青年にとってもあんまりだった。
男「……めぐちゃん。そんなに寄って来られたら落ちちゃうんですけど、俺」
ベッドに横になる青年に、めぐはぴったりと密着していた。
136: ◆b.qRGRPvDc:2011/11/6(日) 23:42:36 ID:dhwnfalxmU
めぐ「…男、あのね」
男「ん?」
布が擦れる音がする。暗闇の中でめぐはうつ伏せの態勢を取った。
めぐ「“トモダオレ”ってどういう意味?」
男「読んで字の如く、だな。共に倒れる事だよ。助け合ったりした結果、二人共駄目になっちゃうって感じかな」
めぐ「二人共…」
男「うん。それがどうかした?」
青年はチラリと横目でめぐを見た。表情までは見えないが、小さな頭を枕に埋めている姿がぼんやりと見えた。
137: ◆b.qRGRPvDc:2011/11/7(月) 00:11:13 ID:dhwnfalxmU
男「めぐ?何かあったのか?」
めぐ「な、何でもない!」
青年の声と同時にめぐははっと顔を上げた。慌てて仰向けに態勢を変えると、顔だけを青年に向けて笑った。
めぐ「おやすみなさい、男」
男「…ん。おやすみ、めぐ」
138: ◆b.qRGRPvDc:2011/11/7(月) 00:14:37 ID:dhwnfalxmU
もう少し投下したかったのですが寝てしまいそうなのでこれにて終了とさせて頂きます!
読者スレで此処の名前が出ているのを発見してニヤニヤが止まらない1です。幸せな気持ちのまま眠りに就きたいと思います(*´∀`*)
支援して下さった方、ありがとうございます!おやすみなさい
139: 名無しさん@読者の声:2011/11/7(月) 01:18:37 ID:/c1i8FH/0g
めぐどうしたぁぁぁ(;ω;)っC
勝手にSS絵スレでリクエストしてしまったけどよかったかなぁ…勝手な事してごめん!
140: ◆b.qRGRPvDc:2011/11/7(月) 17:38:21 ID:e5rqslqDyc
>>139
支援ありがとうございます!
拝見させて頂きました。印象に残ったというのは私としては凄く嬉しいですよ!リクエストして頂けた事もとてもとても嬉しかったです(´ω`)
絵スレの1さんのご迷惑でなければ私からもお願いしたい程ですw139さんもよかったら…(チラッチラッ
めぐ「支援ありがとー!あのね、ボクね「セェェェイ!」
男「ネタバレ駄目絶対!!」
めぐ「…小せぇ男だな」ボソッ
男「…え?何?」
めぐ「ううん、何でもないよ」ニコ
141: ◆b.qRGRPvDc:2011/11/7(月) 17:41:18 ID:e5rqslqDyc
少し相談をば…
本編とは全く関係のないネタのようなものがあるんですが、本編を少し投下してネタを投下してもいいでしょうか?
さっさと本編終わらせんかい!
という意見がありましたら言ってやって下さい(`・ω・´)
また夜に投下しに来ます!
142: ◆b.qRGRPvDc:2011/11/7(月) 21:06:02 ID:mqN6SPO.86
深く呼吸を繰り返す音が暗闇の中、一つ聞こえる。もう一人はどうやら眠っていないらしい。
布が擦れる音がして、小さな人影が起き上がった。
めぐ「……」
体を起こしためぐは黙って青年を見つめていた。視界がぼやけて青年の顔がよく見えない。
めぐは涙を流していた。
143: ◆b.qRGRPvDc:2011/11/7(月) 21:22:28 ID:mqN6SPO.86
青年の髪に、瞼に、頬にと触れる。どれも暖かく、めぐにとって心地好いものだった。
めぐ「…っく、うぅ……」
静かにしなければ青年が目を覚ましてしまう、そう思ってはいるものの、溢れるものが止まらない。
しゃくり上げそうになるのを堪えて青年の頬をそっと撫でた。
めぐ「ご、めんね、ごめっ…男には、居なくならないでほしいから…」
144: ◆b.qRGRPvDc:2011/11/7(月) 21:43:04 ID:mqN6SPO.86
めぐの両手が青年の頬を包み込む。小さな人影がゆっくりと動き、重なって行く。
めぐの唇がそっと青年の唇に触れた。
それは、とても短い口付けだった。
めぐ「…さようなら、男」
窓を開けて振り返る。青年は今だにすやすやと寝息を立てていた。
小さな人影がパタパタとはためくカーテンの向こう側に消える。外の雨はもう、小雨になっていた。
145: ◆b.qRGRPvDc:2011/11/7(月) 22:12:35 ID:mqN6SPO.86
男「……はぁ…」
青年は一人、身を捩った。寝返りを打とうとした際に意識がはっきりとしてしまった。
目を閉じていても瞼からオレンジ色が映る。もう朝なのだろうか。どれくらい自分が眠っていたのかも分からないでいた。
夢を見た気がする。内容は覚えてはいないけれど、何だか寂しい気分になるのはその所為かもしれない。
目を開けなくても、青年には分かった。
男「なんでまた居なくなるんだよ、めぐ…」
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