絵を描き続けたら人生救われた
Part5
346 :華丸 ◆vk8BsG8fow :2011/12/13(火) 00:56:39.81 ID:i8RmR7sP0
キタ!キタ!キタよこれ!
俺は心の中で連呼した。
俺はその場でそに子を抱きしめた。
そに子は小さい声で「ふふ」
って言った気がした。
この時、板尾たちはどんな顔をしてたのだろう。
ただ、市原の「マジかぁ〜…」
って声は聞こえた気がした。
一体どんな感情なんだ、その言葉はw
348 :華丸 ◆vk8BsG8fow :2011/12/13(火) 01:00:40.31 ID:i8RmR7sP0
初めてまともに好きな人を抱きしめたと思う。
思えばあの時は有頂天だった。
板尾も市原も大笑いして「おめでとう!」って言ってくれた。
(市原は舌打ち混じりだったが)
本当に、嬉しかった、本当に。
でも、この喜びは、すぐにどっかいってしまう。
354 :華丸 ◆vk8BsG8fow :2011/12/13(火) 01:05:20.19 ID:i8RmR7sP0
そに子の入学式も、俺はまるで親父のように見に行った。
それからは幸せな毎日だったと思う。
そに子は新入生で色々忙しくなるけど、俺が色々サポートして。
楽にとれる単位は?なんてよく聞かれた。
本当に板尾のおかげだったと思う。
俺は思っていた。
「ああそう言えば、去年のコミケで約束した、そに子と一緒に
板尾の美大に遊び行くって計画、いつやろうかな…」
356 :華丸 ◆vk8BsG8fow :2011/12/13(火) 01:08:32.30 ID:i8RmR7sP0
俺は近いうちに行こうと思っていた。
俺「いつがいいかなあ。」
板尾「4月のうちは忙しいでしょう。まあそに子ちゃんも落ち着いたら
ゆっくり来なよw美大の中を巡るツアーをしてやんよw」
俺「まあ言うて俺は何度も行ったことあるがww」
板尾「まあねっw」
357 :華丸 ◆vk8BsG8fow :2011/12/13(火) 01:10:19.93 ID:i8RmR7sP0
この後また俺にとっては辛すぎる事が起きる。
書くのも正直辛いんだが、頑張るよ。
これを書くために立てたようなスレだったしね。
あれは5月のはじめだったろうか。GWだもんな。
360 :華丸 ◆vk8BsG8fow :2011/12/13(火) 01:16:14.07 ID:i8RmR7sP0
板尾が、GWに地元の山道でバイクで自損事故を起こした。
帰らぬ人になってしまった。
俺は信じられなかった。高校の連中からメールやら電話が来る中で、
俺は段々と事態を飲み込んでいった。
一体、何が起きているというのか?
まったく分からなくなった。
361 :名も無き被検体774号+:2011/12/13(火) 01:18:20.17 ID:wTv1K6zv0
おいまじかよ・・・
363 :華丸 ◆vk8BsG8fow :2011/12/13(火) 01:20:29.44 ID:i8RmR7sP0
故郷の板尾の家に行って、式に出て、なんとなく何が起きているか分かった。
嘘だと思った。嘘なら良かったな、本当に。
俺が信じられないくらい泣きわめくので、多分周りにいる人ドン引きだっただろう。
どうしていいか分からなくなった。
俺はそれから一週間近く家を出なかった。
何も食えなくなって、ひげだらけになっていた。
365 :華丸 ◆vk8BsG8fow :2011/12/13(火) 01:23:29.02 ID:i8RmR7sP0
思えば、色々な事が脳裏をよぎった。
一緒に合同誌を出すって約束していたこと。
そに子と一緒に板尾の美大を巡る予定だったこと。
そして、板尾にいつか追いつきたかった……
すまんダメだ今俺もボロボロ泣いてる。
少し遅くなるかも、すおまん
366 :名も無き被検体774号+:2011/12/13(火) 01:28:45.40 ID:1EaWOpnn0
無理すんな。待ってっから
367 :名も無き被検体774号+:2011/12/13(火) 01:29:10.69 ID:Bx0JYEVlO
ゆっくりで良いぞ
368 :名も無き被検体774号+:2011/12/13(火) 01:29:39.98 ID:H08lBggx0
板尾ーーー!!
俺も悲しい・・・
369 :名も無き被検体774号+:2011/12/13(火) 01:31:55.25 ID:NL0cAPG6O
板尾ぉ‥‥‥(;_;)
370 :華丸 ◆vk8BsG8fow :2011/12/13(火) 01:32:14.14 ID:i8RmR7sP0
思えば、俺は板尾がいなければ本当にダメだった
彼には感謝してもしきれない。
いや、もう感謝とかそんなんじゃなかったんだと思う。
アイツがいなかったら俺は、どうなっていたんだろう。
俺は板尾を見返すと同時に色々恩返しもしたかった。
いつか、いつか…と。
そんな存在が急に目の前から消えてしまった。
ポッと。突然、なんの前触れもなく。
372 :華丸 ◆vk8BsG8fow :2011/12/13(火) 01:38:34.67 ID:i8RmR7sP0
それからしばらくは夢を見ているかのようだった。
この歳にして親友を失うとは、思ってもみなかった。
スカイプを開いて、つい板尾にチャットを送りそうになってしまう。
そうすると、途方もなく虚しくなる。
これは、今でもたまにやってしまうんだが…
373 :名も無き被検体774号+:2011/12/13(火) 01:41:47.03 ID:9zmDXbo5O
辛すぎる
374 :華丸 ◆vk8BsG8fow :2011/12/13(火) 01:47:29.58 ID:i8RmR7sP0
ふう、みんなありがとう。
一旦シャワー浴びるから30分くらい時間空けるね。
眠い人は寝てください。付き合ってくれる方はよかったらお願いします。
見てくれてる人はどれくらいいるんだろ?
これでやっと全体の半分…もしかしたらまだ5分の2くらいかもしれない。
まだ続くけど、よろしくです。
375 :名も無き被検体774号+:2011/12/13(火) 01:48:12.57 ID:W8iFGv99I
キツいな。先読みたいけどねよっ
>>1辛いだろーけど頑張れ!
391 :華丸 ◆vk8BsG8fow :2011/12/13(火) 02:40:16.25 ID:i8RmR7sP0
俺はこの時、本当に人生で一番落ち込んだ時だったかもしれない。
そに子いわく、俺はほとんど笑わなくなったらしい。
辛くて辛くて、もちろんそに子に弱音も吐いた。
そに子は全部受け止めてくれた。
この時も、そに子の存在は大きかった。
でも、それ以上に俺を助けてくれた奴がいる。
それが、市原だった。
393 :華丸 ◆vk8BsG8fow :2011/12/13(火) 02:45:09.41 ID:i8RmR7sP0
恋人であるそに子が俺をケアしてくれたのは大きい。
それは俺にとって本当に生きる支えだった。
でもこういう時は得てして、男友達の支えというのも非常に重要だった。
メシとかを食べる気力を無くしていた俺を、市原は率先して自分の家に呼んだ。
そして市原鍋を振舞った。(白菜と豚肉をごった煮しただけ)
市原は高校時代3年間クラスを共にした男だった。
一緒にいると本当に落ち着いたし、楽だった。
市原の家に行くのは、自分の実家に帰るような感覚だった。
394 :華丸 ◆vk8BsG8fow :2011/12/13(火) 02:56:16.01 ID:i8RmR7sP0
市原の家に行くと、市原はよくオレに夢を語った。
市原「俺は獣医学を専攻して、動物の研究をするのさ…」
俺「へー…それって面白いのか…?」
市原「面白いとか面白くないとかではないんだよ。それが夢なんだから。」
夢。よくよく考えたら俺の夢ってなんなんだろうか。
395 :華丸 ◆vk8BsG8fow :2011/12/13(火) 03:05:18.13 ID:i8RmR7sP0
板尾と夢の話をしたことは一度しかなかった。
まだまだ19の少年だったから、目先の事に頭が一杯で、将来の話をする機会はあまりなかった。
その時板尾はポロッと言った。
板尾「俺は美術教師になる、絵の楽しさをダイレクトに伝えられるから」
俺は夢なんてまったくなかったし、「すげえなあ」
くらいで流してしまった気がする。
夢。美術教師。
この頃からそんなワードが俺の頭をかすめるようになる。
396 :華丸 ◆vk8BsG8fow :2011/12/13(火) 03:11:02.47 ID:i8RmR7sP0
6月になると、冬に板尾と一緒に申し込んでいたコミケの当落発表があった。
結果は落選。
なんということか。
俺はそに子と一緒に何か本を出すつもりでいた。
目的を失った気がした。
そこに、去年の冬のコミケで一緒にサークル参加した板尾の友人から連絡があった。
398 :華丸 ◆vk8BsG8fow :2011/12/13(火) 03:15:57.05 ID:i8RmR7sP0
友人「コミケ、どうだった?」
俺「いや、落ちちゃったよ…ダメだった。」
友人「そっか…それなら前回と同じように僕のとこで本を出しなよ」
なんと、またしても板尾の友人が俺を助けてくれた。
これには俺とそに子は二人して大喜びした。
本が出せる。コミケで。
403 :華丸 ◆vk8BsG8fow :2011/12/13(火) 03:27:38.12 ID:i8RmR7sP0
こんな感じで、6,7月はぼちぼち大学に通いながら
コミケに向けた絵を描いていく日々だった。
そに子は一緒に合同でイラスト本を出すと言っていたが、まだ
デジタルで彩色が上手くできないという事で駄々をこねられた。
なので、結局はそに子はコピーの折り本を、俺は個人誌を出すことにした。
彩色以外は、綺麗な線を描くし、正直俺と対して変わらなかったんじゃないだろうか…
あと、書き忘れてたけどそに子は俺と同じ美術部に入部しています。
でも、特に部活で書くようなイベントがなかったので割愛してしまいましたw
402 :名も無き被検体774号+:2011/12/13(火) 03:23:52.30 ID:+4uQiR3DO
板尾の友人いいひとだね
いいひとたちに囲まれてる
404 :華丸 ◆vk8BsG8fow :2011/12/13(火) 03:29:22.35 ID:i8RmR7sP0
>>402 そうなんだよね。振り返ってみて改めて思うけど
俺は本当いい人達に囲まれて生きてきたなって思うよ。
407 :華丸 ◆vk8BsG8fow :2011/12/13(火) 03:36:59.65 ID:i8RmR7sP0
俺は、今まで漫然とただ絵を描いていた。
ずっと描き続けて、いつかイラストレーターみたいになれたら…
そんな甘美な夢を見ていた。
でもこの頃から明らかに意識は変わっていたと思う。
よく分からないけど、コミケのイラスト集の絵はただひたすら
集中して描いていた。
それでもたまにそに子から絵の相談を受けたりするので、そんな時は
楽しく絵チャとかやったりして、マッタリ絵を描くこともあった。
408 :華丸 ◆vk8BsG8fow :2011/12/13(火) 03:43:19.93 ID:i8RmR7sP0
板尾の死は、よくも悪くも俺を変えた。
もう自信作を描いても、「いいじゃんそれ!」
と言って笑う板尾はいないんだから。
コミケの原稿も一段落した8月の初旬、俺は美術部の合宿に行った。もちろんそに子も一緒に。
夏合宿。まあ、楽しいレクリエーションだ。
みんな夜通し語り明かしたりもする。
俺はこの合宿で相談したい相手が居た。
409 :名も無き被検体774号+:2011/12/13(火) 03:43:54.09 ID:TsjlM4fB0
お前の絵が早く見たい。
お前の優しさとか人格がこの文章からよく伝わってくる。きっといい絵を描くんだろうなって思った
410 :華丸 ◆vk8BsG8fow :2011/12/13(火) 03:47:08.47 ID:i8RmR7sP0
>>409 ありがとう。この話を最後までみんなにできたら、うpもいいかもしれない。
ただ、本当に期待しないほうがいいよw俺まったく上手くはないから。
411 :華丸 ◆vk8BsG8fow :2011/12/13(火) 03:58:59.57 ID:i8RmR7sP0
一個上の部長。
部長は、芸大受験の経験もある、かなりアーティストな人だった。
そう、俺はこの時決心していた。
東京学芸大の中等美術科に行って、美術教師になってやる…
そのためには大学を辞めることや仮面浪人もいとわなかった。
夢が、見えた気がした。
芸大や美大受験とはさすがに勝手が違うが、それでも部長の意見を聞いてみたかった。
421 :名も無き被検体774号+:2011/12/13(火) 04:40:31.70 ID:cl6d7WHOO
やっと追いついた…っ!
自分も絵を描くのが大好きで時間があればずっと絵描いてる。
身体が弱くて学業もまともに受けられてない状態でお先真っ暗なんだけど、
好きなことは続けたらきっと良いことがあるはずだと思って、いままで絵を描いてきた。
でも、どれだけ必死に描いたって周りの子のほうが上手いし、
なにより、学業もまともに受けられてないのに絵なんか描いてていいんだろうかって
最近ずっともやもやしただったからこのスレ読んで、
ああやっぱり絵描くのが好きだし死ぬまで続けたいって思えた。ありがとう。
早くに良い親友を失ったんだな…。かけがえないものを失う痛みはどれだけ時が経っても辛いな。
続き書くのも辛いだろうけどいい方向へ向かっていくことを信じつつ待ってるよ。
本当にいい時にこのスレに会えたと思う。長文すまんかった。
427 :名も無き被検体774号+:2011/12/13(火) 09:52:28.22 ID:f+cWjw/H0
俺も絵描いてる 感動した
ずっと描いてると自分の人生の中に大きな意味を
持ってくるようになるよな
1はいい友人に恵まれて凄くうらやましい
428 :名も無き被検体774号+:2011/12/13(火) 10:16:55.99 ID:AXXt3sao0
追いついた!
電車の中で泣いてもーた…
やりたいことあって専門行ってるはずなのに周りすごい奴らばっかでやる気なくして結局ダラダラしてたけど、もっかい頑張ろうと思った
>>1のおかげで初心に返ったわ、ありがとう 続き楽しみにしてる
448 :華丸 ◆vk8BsG8fow :2011/12/13(火) 17:17:03.74 ID:P1VUjXiJ0
夏合宿。
みんな浮かれ気味である。
俺たち美術部一行は、とある片田舎の避暑地に行った。
バスでは、俺とそに子は隣に座らなかったが、
それをひたすらにブーイングされた。
なんだかんだで遠藤と仲よかった俺は、何故か遠藤の隣だった。
遠藤「今年の一年女子をこの合宿で見極める…」
俺「がんばれよ」
でも遠藤は途中からバス酔いしたので静かで楽だった。
451 :華丸 ◆vk8BsG8fow :2011/12/13(火) 17:23:52.54 ID:P1VUjXiJ0
夏合宿では海に行くか高原に行くか半々くらいだった。
女子が多い部活。
俺は正直海に行きたくて仕方なかった。
でも行き先は高原だった。
俺「着いた〜バスって楽しいねえ修学旅行みたい」
遠藤「水…水…」
コテージ?ログハウス?なんて言うんだろうそんなとこに皆で泊まる。
でも管理人の老夫婦がいたし民宿にも近いのかな。
453 :華丸 ◆vk8BsG8fow :2011/12/13(火) 17:30:06.93 ID:P1VUjXiJ0
俺「すごいなここ、バドミントンとかバスケ、テニスで自由に遊べるのな」
遠藤「バスケしようぜ〜」
近くには牧場もあったり、自由にスポーツできたり。
緑が綺麗でとてもいいところだった。
そに子「華丸さんバドミントンしようよ〜」
俺「遠藤、そういうことだから。」
遠藤「いやいや混ぜてくれよ」
454 :華丸 ◆vk8BsG8fow :2011/12/13(火) 17:34:43.77 ID:P1VUjXiJ0
この時ばかりは青春ってやつだったかもしれない。
今思い出すとむずがゆい、でも楽しかった。
明るいうちはみんなでバドミントンとかして、
近くの小川に行って裸足で入って足怪我したり。
食べれる野草を見つけてみんなで騒いだり。
夜には肝試しでお化け役になって樹の枝に腕ひっかけてすりむいたり。
けっこう怪我したwでも楽しかった。
456 :華丸 ◆vk8BsG8fow :2011/12/13(火) 17:44:21.59 ID:P1VUjXiJ0
夜。自由時間。
夕飯も終わってみんなマターリタイムである。
俺は建物の外でまだ吸い始めたばかりの煙草を吸っていた。
そうすると、部長がきた。
部長「くさいよ、それ」
俺「あ、すいませ…部長相談があるんです。」
部長「何よw 改まっちゃってw」
俺「俺大学多分やめます」
457 :華丸 ◆vk8BsG8fow :2011/12/13(火) 17:48:47.53 ID:P1VUjXiJ0
部長「何トンチンカンな事言ってんの?」
俺「いや、だから…俺は美術教師になりたいんですよ、はい…」
部長「初めて聞いたな」
俺「そのためには、今の大学じゃ絶対無理じゃないですか。
やめて、今から美大は厳しいですから、学芸の中等美術科に…」
部長「うんうん、分かった分かったちょっと待って。」
俺「はい…」
部長「華丸は中高で美術部の経験があった?」
俺「いえ、まったく…高校では一度も美術の授業すらなかったです…」
459 :華丸 ◆vk8BsG8fow :2011/12/13(火) 17:56:43.53 ID:P1VUjXiJ0
部長「じゃあ、美術の先生がどんなことするか、どんな人かも分からないんだね」
俺「まあ…そうなります…」
部長はいつになく真剣だった。部長はスタイルがよくて、
ハキハキしていて、出来る女性って感じだった。だから尚更気迫があった。
部長「華丸がなんで急にそんなこと言い出したのかは分からない。
まあ、なんとなく察しもつくんだけど…
よく考えた方がいいよ。そんなに甘いもんじゃないよ。」
俺「で、でも…」
部長「こんな言い方してごめんね。でももしそれで大学やめて美術の先生になれなかったら?
なれたとして、一生続けられるかな。」
部長は芸大受験に何回か失敗してからうちの大学に来ていたから、
学年一個上とは言え、歳は離れていた。
460 :華丸 ◆vk8BsG8fow :2011/12/13(火) 18:06:26.23 ID:P1VUjXiJ0
俺はもしかしたら、「頑張れ」とか「応援してる」とか
そういう言葉を期待していたのかもしれない。
学芸の受験自体は、実技がそこまでできなくても
勉強をめっちゃ頑張ってセンターでいい点をとれば可能性はあるかもしれない
ということも分かっていた。
だから部長みたいな人に背中を押して欲しかったんだろう。
俺は落ち込んだ。
一歩踏み出す、きっかけを与えて欲しかった。
461 :華丸 ◆vk8BsG8fow :2011/12/13(火) 18:13:38.06 ID:P1VUjXiJ0
そんなこんなで、期待していた夏合宿は終わりを迎える。
俺はここで心機一転するはずだったのに…と落ち込んでいた。
完全に他人に頼っていたと思う。
でも俺は挫けなかった。
夢を追えなかった板尾のことを思うと、美術教師は諦められなかった。
この時の俺は本当に取り憑かれたように美術教師になる、って言ってたんだけど
それが本当の自分の気持ちだったのか、
板尾に対する自分の想いだったのかは、未だによく分からない。
462 :華丸 ◆vk8BsG8fow :2011/12/13(火) 18:20:28.64 ID:P1VUjXiJ0
合宿が終わると、
助けを呼ぶ声があった。
コミケで本を置かせてもらうことになっている板尾の友人だった。
友人「華丸君、今ヒマかな?原稿がやばいんだよ、手伝ってくれないかな…」
俺「おお、いいよいいよ。そんなにやばいんか。」
夏のコミケの締め切りギリギリ。まさに友人は修羅場状態であった。
そして、この一本の電話が俺にとって大事な分かれ道だった。
463 :華丸 ◆vk8BsG8fow :2011/12/13(火) 18:26:23.55 ID:P1VUjXiJ0
俺は美大近くの友人の家に行った。
友人「ごめんねー手伝わせて」
俺「いいよいいよーそれより聞いて欲しいんだけど」
俺たちは作業しながら会話をした。
友人「どうしたの?」
俺「今から、学芸行って美術教師になりたい、それって難しいのかな」
友人「そんなことないんじゃないー?」
軽い。予想外の反応だった。
友人「俺の友達で学芸とか教育系の美術科?受けてここに来た子とかいるよー」
俺「え、本当に?」
464 :華丸 ◆vk8BsG8fow :2011/12/13(火) 18:32:19.08 ID:P1VUjXiJ0
友人「その子、板尾とも仲良かったよ?もしかしたら会ったことあるんじゃない?」
俺は記憶の糸をたぐりよせた。確かに去年はよく板尾の美大に潜り込んで、
色んな人と関わった。
俺「なんて子?」
友人「石田だよ、石田。」
俺「あ、俺その子知ってるよ……」
その子は石田ゆり子にちょっぴり似ているので石田と呼ぶ。
465 :華丸 ◆vk8BsG8fow :2011/12/13(火) 18:42:41.74 ID:P1VUjXiJ0
そもそも、石田さんとはそに子と初めて会う前から面識があった。
大学1年の5月くらいにもう会っていた気がする。
板尾が美大の連中を色々紹介してくれた時に、その中にいたって感じだった。
まだまだ異性に距離を置いていた時だったし、
もちろん連絡先も知らなかった。会ったことも4,5回あるくらいだった。
美大に遊びに行った時に、構内で出くわせば、「あ、ども…」くらいの感じだった。
それでもだんだん慣れて話すこともあったが、とにかく「板尾ありき」の存在だった。
板尾が亡くなってからは会ったことはなかった。
466 :華丸 ◆vk8BsG8fow :2011/12/13(火) 18:46:41.49 ID:P1VUjXiJ0
ただ俺は板尾が紹介してくれた美大の連中のことはほとんど忘れていた。
この友人を除いて。
顔くらいは覚えていたが、名前までハッキリ覚えている人なんてほとんどいなかった。
ただ、俺は石田さんのことは覚えていた。
俺は石田さんを初めて見た時から、なんとなく「可愛い」とは思っていた。
好きとかそんなんじゃなく、外から傍観する感じで。
だから記憶にも割と残っていたのだ。
467 :華丸 ◆vk8BsG8fow :2011/12/13(火) 18:51:17.51 ID:P1VUjXiJ0
友人「じゃあ原稿一段落したら、美大に来なよ。
石田も呼んで、話聞く?そのついでにさ、ほら、美大の中色々見たりする?」
俺「それはいい考えだね。じゃあそに子も連れてくるよ。」
友人「きっと彼女も色々話聞きたいかもねwできるだけ友達呼ぶよw」
そう、板尾の友人は、俺とそに子と板尾が美大巡りの約束をしたことを
知っている唯一の人間だった。
あの時の計画が、こんな形で実行されるとは。
でも俺は楽しみだった。そに子もきっと喜ぶだろう。
キタ!キタ!キタよこれ!
俺は心の中で連呼した。
俺はその場でそに子を抱きしめた。
そに子は小さい声で「ふふ」
って言った気がした。
この時、板尾たちはどんな顔をしてたのだろう。
ただ、市原の「マジかぁ〜…」
って声は聞こえた気がした。
一体どんな感情なんだ、その言葉はw
348 :華丸 ◆vk8BsG8fow :2011/12/13(火) 01:00:40.31 ID:i8RmR7sP0
初めてまともに好きな人を抱きしめたと思う。
思えばあの時は有頂天だった。
板尾も市原も大笑いして「おめでとう!」って言ってくれた。
(市原は舌打ち混じりだったが)
本当に、嬉しかった、本当に。
でも、この喜びは、すぐにどっかいってしまう。
354 :華丸 ◆vk8BsG8fow :2011/12/13(火) 01:05:20.19 ID:i8RmR7sP0
そに子の入学式も、俺はまるで親父のように見に行った。
それからは幸せな毎日だったと思う。
そに子は新入生で色々忙しくなるけど、俺が色々サポートして。
楽にとれる単位は?なんてよく聞かれた。
本当に板尾のおかげだったと思う。
俺は思っていた。
「ああそう言えば、去年のコミケで約束した、そに子と一緒に
板尾の美大に遊び行くって計画、いつやろうかな…」
356 :華丸 ◆vk8BsG8fow :2011/12/13(火) 01:08:32.30 ID:i8RmR7sP0
俺は近いうちに行こうと思っていた。
俺「いつがいいかなあ。」
板尾「4月のうちは忙しいでしょう。まあそに子ちゃんも落ち着いたら
ゆっくり来なよw美大の中を巡るツアーをしてやんよw」
俺「まあ言うて俺は何度も行ったことあるがww」
板尾「まあねっw」
357 :華丸 ◆vk8BsG8fow :2011/12/13(火) 01:10:19.93 ID:i8RmR7sP0
この後また俺にとっては辛すぎる事が起きる。
書くのも正直辛いんだが、頑張るよ。
これを書くために立てたようなスレだったしね。
あれは5月のはじめだったろうか。GWだもんな。
板尾が、GWに地元の山道でバイクで自損事故を起こした。
帰らぬ人になってしまった。
俺は信じられなかった。高校の連中からメールやら電話が来る中で、
俺は段々と事態を飲み込んでいった。
一体、何が起きているというのか?
まったく分からなくなった。
361 :名も無き被検体774号+:2011/12/13(火) 01:18:20.17 ID:wTv1K6zv0
おいまじかよ・・・
363 :華丸 ◆vk8BsG8fow :2011/12/13(火) 01:20:29.44 ID:i8RmR7sP0
故郷の板尾の家に行って、式に出て、なんとなく何が起きているか分かった。
嘘だと思った。嘘なら良かったな、本当に。
俺が信じられないくらい泣きわめくので、多分周りにいる人ドン引きだっただろう。
どうしていいか分からなくなった。
俺はそれから一週間近く家を出なかった。
何も食えなくなって、ひげだらけになっていた。
365 :華丸 ◆vk8BsG8fow :2011/12/13(火) 01:23:29.02 ID:i8RmR7sP0
思えば、色々な事が脳裏をよぎった。
一緒に合同誌を出すって約束していたこと。
そに子と一緒に板尾の美大を巡る予定だったこと。
そして、板尾にいつか追いつきたかった……
すまんダメだ今俺もボロボロ泣いてる。
少し遅くなるかも、すおまん
366 :名も無き被検体774号+:2011/12/13(火) 01:28:45.40 ID:1EaWOpnn0
無理すんな。待ってっから
367 :名も無き被検体774号+:2011/12/13(火) 01:29:10.69 ID:Bx0JYEVlO
ゆっくりで良いぞ
368 :名も無き被検体774号+:2011/12/13(火) 01:29:39.98 ID:H08lBggx0
板尾ーーー!!
俺も悲しい・・・
369 :名も無き被検体774号+:2011/12/13(火) 01:31:55.25 ID:NL0cAPG6O
板尾ぉ‥‥‥(;_;)
370 :華丸 ◆vk8BsG8fow :2011/12/13(火) 01:32:14.14 ID:i8RmR7sP0
思えば、俺は板尾がいなければ本当にダメだった
彼には感謝してもしきれない。
いや、もう感謝とかそんなんじゃなかったんだと思う。
アイツがいなかったら俺は、どうなっていたんだろう。
俺は板尾を見返すと同時に色々恩返しもしたかった。
いつか、いつか…と。
そんな存在が急に目の前から消えてしまった。
ポッと。突然、なんの前触れもなく。
372 :華丸 ◆vk8BsG8fow :2011/12/13(火) 01:38:34.67 ID:i8RmR7sP0
それからしばらくは夢を見ているかのようだった。
この歳にして親友を失うとは、思ってもみなかった。
スカイプを開いて、つい板尾にチャットを送りそうになってしまう。
そうすると、途方もなく虚しくなる。
これは、今でもたまにやってしまうんだが…
373 :名も無き被検体774号+:2011/12/13(火) 01:41:47.03 ID:9zmDXbo5O
辛すぎる
374 :華丸 ◆vk8BsG8fow :2011/12/13(火) 01:47:29.58 ID:i8RmR7sP0
ふう、みんなありがとう。
一旦シャワー浴びるから30分くらい時間空けるね。
眠い人は寝てください。付き合ってくれる方はよかったらお願いします。
見てくれてる人はどれくらいいるんだろ?
これでやっと全体の半分…もしかしたらまだ5分の2くらいかもしれない。
まだ続くけど、よろしくです。
375 :名も無き被検体774号+:2011/12/13(火) 01:48:12.57 ID:W8iFGv99I
キツいな。先読みたいけどねよっ
>>1辛いだろーけど頑張れ!
391 :華丸 ◆vk8BsG8fow :2011/12/13(火) 02:40:16.25 ID:i8RmR7sP0
俺はこの時、本当に人生で一番落ち込んだ時だったかもしれない。
そに子いわく、俺はほとんど笑わなくなったらしい。
辛くて辛くて、もちろんそに子に弱音も吐いた。
そに子は全部受け止めてくれた。
この時も、そに子の存在は大きかった。
でも、それ以上に俺を助けてくれた奴がいる。
それが、市原だった。
393 :華丸 ◆vk8BsG8fow :2011/12/13(火) 02:45:09.41 ID:i8RmR7sP0
恋人であるそに子が俺をケアしてくれたのは大きい。
それは俺にとって本当に生きる支えだった。
でもこういう時は得てして、男友達の支えというのも非常に重要だった。
メシとかを食べる気力を無くしていた俺を、市原は率先して自分の家に呼んだ。
そして市原鍋を振舞った。(白菜と豚肉をごった煮しただけ)
市原は高校時代3年間クラスを共にした男だった。
一緒にいると本当に落ち着いたし、楽だった。
市原の家に行くのは、自分の実家に帰るような感覚だった。
市原の家に行くと、市原はよくオレに夢を語った。
市原「俺は獣医学を専攻して、動物の研究をするのさ…」
俺「へー…それって面白いのか…?」
市原「面白いとか面白くないとかではないんだよ。それが夢なんだから。」
夢。よくよく考えたら俺の夢ってなんなんだろうか。
395 :華丸 ◆vk8BsG8fow :2011/12/13(火) 03:05:18.13 ID:i8RmR7sP0
板尾と夢の話をしたことは一度しかなかった。
まだまだ19の少年だったから、目先の事に頭が一杯で、将来の話をする機会はあまりなかった。
その時板尾はポロッと言った。
板尾「俺は美術教師になる、絵の楽しさをダイレクトに伝えられるから」
俺は夢なんてまったくなかったし、「すげえなあ」
くらいで流してしまった気がする。
夢。美術教師。
この頃からそんなワードが俺の頭をかすめるようになる。
396 :華丸 ◆vk8BsG8fow :2011/12/13(火) 03:11:02.47 ID:i8RmR7sP0
6月になると、冬に板尾と一緒に申し込んでいたコミケの当落発表があった。
結果は落選。
なんということか。
俺はそに子と一緒に何か本を出すつもりでいた。
目的を失った気がした。
そこに、去年の冬のコミケで一緒にサークル参加した板尾の友人から連絡があった。
398 :華丸 ◆vk8BsG8fow :2011/12/13(火) 03:15:57.05 ID:i8RmR7sP0
友人「コミケ、どうだった?」
俺「いや、落ちちゃったよ…ダメだった。」
友人「そっか…それなら前回と同じように僕のとこで本を出しなよ」
なんと、またしても板尾の友人が俺を助けてくれた。
これには俺とそに子は二人して大喜びした。
本が出せる。コミケで。
403 :華丸 ◆vk8BsG8fow :2011/12/13(火) 03:27:38.12 ID:i8RmR7sP0
こんな感じで、6,7月はぼちぼち大学に通いながら
コミケに向けた絵を描いていく日々だった。
そに子は一緒に合同でイラスト本を出すと言っていたが、まだ
デジタルで彩色が上手くできないという事で駄々をこねられた。
なので、結局はそに子はコピーの折り本を、俺は個人誌を出すことにした。
彩色以外は、綺麗な線を描くし、正直俺と対して変わらなかったんじゃないだろうか…
あと、書き忘れてたけどそに子は俺と同じ美術部に入部しています。
でも、特に部活で書くようなイベントがなかったので割愛してしまいましたw
402 :名も無き被検体774号+:2011/12/13(火) 03:23:52.30 ID:+4uQiR3DO
板尾の友人いいひとだね
いいひとたちに囲まれてる
404 :華丸 ◆vk8BsG8fow :2011/12/13(火) 03:29:22.35 ID:i8RmR7sP0
>>402 そうなんだよね。振り返ってみて改めて思うけど
俺は本当いい人達に囲まれて生きてきたなって思うよ。
407 :華丸 ◆vk8BsG8fow :2011/12/13(火) 03:36:59.65 ID:i8RmR7sP0
俺は、今まで漫然とただ絵を描いていた。
ずっと描き続けて、いつかイラストレーターみたいになれたら…
そんな甘美な夢を見ていた。
でもこの頃から明らかに意識は変わっていたと思う。
よく分からないけど、コミケのイラスト集の絵はただひたすら
集中して描いていた。
それでもたまにそに子から絵の相談を受けたりするので、そんな時は
楽しく絵チャとかやったりして、マッタリ絵を描くこともあった。
408 :華丸 ◆vk8BsG8fow :2011/12/13(火) 03:43:19.93 ID:i8RmR7sP0
板尾の死は、よくも悪くも俺を変えた。
もう自信作を描いても、「いいじゃんそれ!」
と言って笑う板尾はいないんだから。
コミケの原稿も一段落した8月の初旬、俺は美術部の合宿に行った。もちろんそに子も一緒に。
夏合宿。まあ、楽しいレクリエーションだ。
みんな夜通し語り明かしたりもする。
俺はこの合宿で相談したい相手が居た。
409 :名も無き被検体774号+:2011/12/13(火) 03:43:54.09 ID:TsjlM4fB0
お前の絵が早く見たい。
お前の優しさとか人格がこの文章からよく伝わってくる。きっといい絵を描くんだろうなって思った
410 :華丸 ◆vk8BsG8fow :2011/12/13(火) 03:47:08.47 ID:i8RmR7sP0
>>409 ありがとう。この話を最後までみんなにできたら、うpもいいかもしれない。
ただ、本当に期待しないほうがいいよw俺まったく上手くはないから。
411 :華丸 ◆vk8BsG8fow :2011/12/13(火) 03:58:59.57 ID:i8RmR7sP0
一個上の部長。
部長は、芸大受験の経験もある、かなりアーティストな人だった。
そう、俺はこの時決心していた。
東京学芸大の中等美術科に行って、美術教師になってやる…
そのためには大学を辞めることや仮面浪人もいとわなかった。
夢が、見えた気がした。
芸大や美大受験とはさすがに勝手が違うが、それでも部長の意見を聞いてみたかった。
421 :名も無き被検体774号+:2011/12/13(火) 04:40:31.70 ID:cl6d7WHOO
やっと追いついた…っ!
自分も絵を描くのが大好きで時間があればずっと絵描いてる。
身体が弱くて学業もまともに受けられてない状態でお先真っ暗なんだけど、
好きなことは続けたらきっと良いことがあるはずだと思って、いままで絵を描いてきた。
でも、どれだけ必死に描いたって周りの子のほうが上手いし、
なにより、学業もまともに受けられてないのに絵なんか描いてていいんだろうかって
最近ずっともやもやしただったからこのスレ読んで、
ああやっぱり絵描くのが好きだし死ぬまで続けたいって思えた。ありがとう。
早くに良い親友を失ったんだな…。かけがえないものを失う痛みはどれだけ時が経っても辛いな。
続き書くのも辛いだろうけどいい方向へ向かっていくことを信じつつ待ってるよ。
本当にいい時にこのスレに会えたと思う。長文すまんかった。
427 :名も無き被検体774号+:2011/12/13(火) 09:52:28.22 ID:f+cWjw/H0
俺も絵描いてる 感動した
ずっと描いてると自分の人生の中に大きな意味を
持ってくるようになるよな
1はいい友人に恵まれて凄くうらやましい
428 :名も無き被検体774号+:2011/12/13(火) 10:16:55.99 ID:AXXt3sao0
追いついた!
電車の中で泣いてもーた…
やりたいことあって専門行ってるはずなのに周りすごい奴らばっかでやる気なくして結局ダラダラしてたけど、もっかい頑張ろうと思った
>>1のおかげで初心に返ったわ、ありがとう 続き楽しみにしてる
448 :華丸 ◆vk8BsG8fow :2011/12/13(火) 17:17:03.74 ID:P1VUjXiJ0
夏合宿。
みんな浮かれ気味である。
俺たち美術部一行は、とある片田舎の避暑地に行った。
バスでは、俺とそに子は隣に座らなかったが、
それをひたすらにブーイングされた。
なんだかんだで遠藤と仲よかった俺は、何故か遠藤の隣だった。
遠藤「今年の一年女子をこの合宿で見極める…」
俺「がんばれよ」
でも遠藤は途中からバス酔いしたので静かで楽だった。
451 :華丸 ◆vk8BsG8fow :2011/12/13(火) 17:23:52.54 ID:P1VUjXiJ0
夏合宿では海に行くか高原に行くか半々くらいだった。
女子が多い部活。
俺は正直海に行きたくて仕方なかった。
でも行き先は高原だった。
俺「着いた〜バスって楽しいねえ修学旅行みたい」
遠藤「水…水…」
コテージ?ログハウス?なんて言うんだろうそんなとこに皆で泊まる。
でも管理人の老夫婦がいたし民宿にも近いのかな。
453 :華丸 ◆vk8BsG8fow :2011/12/13(火) 17:30:06.93 ID:P1VUjXiJ0
俺「すごいなここ、バドミントンとかバスケ、テニスで自由に遊べるのな」
遠藤「バスケしようぜ〜」
近くには牧場もあったり、自由にスポーツできたり。
緑が綺麗でとてもいいところだった。
そに子「華丸さんバドミントンしようよ〜」
俺「遠藤、そういうことだから。」
遠藤「いやいや混ぜてくれよ」
454 :華丸 ◆vk8BsG8fow :2011/12/13(火) 17:34:43.77 ID:P1VUjXiJ0
この時ばかりは青春ってやつだったかもしれない。
今思い出すとむずがゆい、でも楽しかった。
明るいうちはみんなでバドミントンとかして、
近くの小川に行って裸足で入って足怪我したり。
食べれる野草を見つけてみんなで騒いだり。
夜には肝試しでお化け役になって樹の枝に腕ひっかけてすりむいたり。
けっこう怪我したwでも楽しかった。
456 :華丸 ◆vk8BsG8fow :2011/12/13(火) 17:44:21.59 ID:P1VUjXiJ0
夜。自由時間。
夕飯も終わってみんなマターリタイムである。
俺は建物の外でまだ吸い始めたばかりの煙草を吸っていた。
そうすると、部長がきた。
部長「くさいよ、それ」
俺「あ、すいませ…部長相談があるんです。」
部長「何よw 改まっちゃってw」
俺「俺大学多分やめます」
457 :華丸 ◆vk8BsG8fow :2011/12/13(火) 17:48:47.53 ID:P1VUjXiJ0
部長「何トンチンカンな事言ってんの?」
俺「いや、だから…俺は美術教師になりたいんですよ、はい…」
部長「初めて聞いたな」
俺「そのためには、今の大学じゃ絶対無理じゃないですか。
やめて、今から美大は厳しいですから、学芸の中等美術科に…」
部長「うんうん、分かった分かったちょっと待って。」
俺「はい…」
部長「華丸は中高で美術部の経験があった?」
俺「いえ、まったく…高校では一度も美術の授業すらなかったです…」
459 :華丸 ◆vk8BsG8fow :2011/12/13(火) 17:56:43.53 ID:P1VUjXiJ0
部長「じゃあ、美術の先生がどんなことするか、どんな人かも分からないんだね」
俺「まあ…そうなります…」
部長はいつになく真剣だった。部長はスタイルがよくて、
ハキハキしていて、出来る女性って感じだった。だから尚更気迫があった。
部長「華丸がなんで急にそんなこと言い出したのかは分からない。
まあ、なんとなく察しもつくんだけど…
よく考えた方がいいよ。そんなに甘いもんじゃないよ。」
俺「で、でも…」
部長「こんな言い方してごめんね。でももしそれで大学やめて美術の先生になれなかったら?
なれたとして、一生続けられるかな。」
部長は芸大受験に何回か失敗してからうちの大学に来ていたから、
学年一個上とは言え、歳は離れていた。
460 :華丸 ◆vk8BsG8fow :2011/12/13(火) 18:06:26.23 ID:P1VUjXiJ0
俺はもしかしたら、「頑張れ」とか「応援してる」とか
そういう言葉を期待していたのかもしれない。
学芸の受験自体は、実技がそこまでできなくても
勉強をめっちゃ頑張ってセンターでいい点をとれば可能性はあるかもしれない
ということも分かっていた。
だから部長みたいな人に背中を押して欲しかったんだろう。
俺は落ち込んだ。
一歩踏み出す、きっかけを与えて欲しかった。
461 :華丸 ◆vk8BsG8fow :2011/12/13(火) 18:13:38.06 ID:P1VUjXiJ0
そんなこんなで、期待していた夏合宿は終わりを迎える。
俺はここで心機一転するはずだったのに…と落ち込んでいた。
完全に他人に頼っていたと思う。
でも俺は挫けなかった。
夢を追えなかった板尾のことを思うと、美術教師は諦められなかった。
この時の俺は本当に取り憑かれたように美術教師になる、って言ってたんだけど
それが本当の自分の気持ちだったのか、
板尾に対する自分の想いだったのかは、未だによく分からない。
462 :華丸 ◆vk8BsG8fow :2011/12/13(火) 18:20:28.64 ID:P1VUjXiJ0
合宿が終わると、
助けを呼ぶ声があった。
コミケで本を置かせてもらうことになっている板尾の友人だった。
友人「華丸君、今ヒマかな?原稿がやばいんだよ、手伝ってくれないかな…」
俺「おお、いいよいいよ。そんなにやばいんか。」
夏のコミケの締め切りギリギリ。まさに友人は修羅場状態であった。
そして、この一本の電話が俺にとって大事な分かれ道だった。
463 :華丸 ◆vk8BsG8fow :2011/12/13(火) 18:26:23.55 ID:P1VUjXiJ0
俺は美大近くの友人の家に行った。
友人「ごめんねー手伝わせて」
俺「いいよいいよーそれより聞いて欲しいんだけど」
俺たちは作業しながら会話をした。
友人「どうしたの?」
俺「今から、学芸行って美術教師になりたい、それって難しいのかな」
友人「そんなことないんじゃないー?」
軽い。予想外の反応だった。
友人「俺の友達で学芸とか教育系の美術科?受けてここに来た子とかいるよー」
俺「え、本当に?」
464 :華丸 ◆vk8BsG8fow :2011/12/13(火) 18:32:19.08 ID:P1VUjXiJ0
友人「その子、板尾とも仲良かったよ?もしかしたら会ったことあるんじゃない?」
俺は記憶の糸をたぐりよせた。確かに去年はよく板尾の美大に潜り込んで、
色んな人と関わった。
俺「なんて子?」
友人「石田だよ、石田。」
俺「あ、俺その子知ってるよ……」
その子は石田ゆり子にちょっぴり似ているので石田と呼ぶ。
465 :華丸 ◆vk8BsG8fow :2011/12/13(火) 18:42:41.74 ID:P1VUjXiJ0
そもそも、石田さんとはそに子と初めて会う前から面識があった。
大学1年の5月くらいにもう会っていた気がする。
板尾が美大の連中を色々紹介してくれた時に、その中にいたって感じだった。
まだまだ異性に距離を置いていた時だったし、
もちろん連絡先も知らなかった。会ったことも4,5回あるくらいだった。
美大に遊びに行った時に、構内で出くわせば、「あ、ども…」くらいの感じだった。
それでもだんだん慣れて話すこともあったが、とにかく「板尾ありき」の存在だった。
板尾が亡くなってからは会ったことはなかった。
466 :華丸 ◆vk8BsG8fow :2011/12/13(火) 18:46:41.49 ID:P1VUjXiJ0
ただ俺は板尾が紹介してくれた美大の連中のことはほとんど忘れていた。
この友人を除いて。
顔くらいは覚えていたが、名前までハッキリ覚えている人なんてほとんどいなかった。
ただ、俺は石田さんのことは覚えていた。
俺は石田さんを初めて見た時から、なんとなく「可愛い」とは思っていた。
好きとかそんなんじゃなく、外から傍観する感じで。
だから記憶にも割と残っていたのだ。
467 :華丸 ◆vk8BsG8fow :2011/12/13(火) 18:51:17.51 ID:P1VUjXiJ0
友人「じゃあ原稿一段落したら、美大に来なよ。
石田も呼んで、話聞く?そのついでにさ、ほら、美大の中色々見たりする?」
俺「それはいい考えだね。じゃあそに子も連れてくるよ。」
友人「きっと彼女も色々話聞きたいかもねwできるだけ友達呼ぶよw」
そう、板尾の友人は、俺とそに子と板尾が美大巡りの約束をしたことを
知っている唯一の人間だった。
あの時の計画が、こんな形で実行されるとは。
でも俺は楽しみだった。そに子もきっと喜ぶだろう。
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