Part8
232 :
以下、名無しが深夜にお送りします:2012/07/31(火) 21:08:55 ID:
3NThupvc
支援感謝です。再開します。
少年視点になります
233 :
以下、名無しが深夜にお送りします:2012/07/31(火) 21:10:02 ID:
3NThupvc
村につきます。
走り続けたせいで心臓や肺が抗議の痛みを発しています。
ちょっと黙っていて欲しいです。
身体の痛みなんかより、ずっと心が痛いんです。
心も身体もう少し持ち主の意志を尊重して欲しいですよね。
少年「魔女! どこにいるの!」
魔女に何かあったら。
考えるだけでも嫌です。
だから、今は村をひたすら走ります。
234 :
以下、名無しが深夜にお送りします:2012/07/31(火) 21:11:05 ID:
3NThupvc
少年「魔女!」
村のはずれに魔女は居ました。
なにやら魔物に襲われています。
村人「うぃあああああ」
怖くはないです。
魔女に何かあったりした方がよっぽと怖いです。
235 :
以下、名無しが深夜にお送りします:2012/07/31(火) 21:13:53 ID:
3NThupvc
少年「うおぉぉ!!」
魔女に酷いことをする奴なんて許せません。
だから。
村人「うげぇえお」
思い切り体当たり。
魔女に嫌なことをしようとしていた奴を押し倒します。
いきなりの出来事で魔物も驚いています。
知ったこっちゃないです。
少年「うあああああ!」
地面の石を掴むとそのまま魔物の頭に振り下ろしました。
236 :
以下、名無しが深夜にお送りします:2012/07/31(火) 21:14:50 ID:
3NThupvc
村人「うあああああ」
村人「うぃあああああ」
少年「ごぇっ」
お腹で何か爆発したみたいな衝撃でした。
何メートルも吹き飛ばされて、自分が触手に殴られたということに気がつきます。
魔女「んー!んー!」
魔女が何か叫んでます。
少年「待っててね、い……ま、たすけるから」
なにやら、お腹の辺りの感覚がありません。
触ってみるとどうやら折れたりなんだりと大変みたいです。
でも、まだ身体は動きます。
237 :
以下、名無しが深夜にお送りします:2012/07/31(火) 21:15:39 ID:
3NThupvc
痛みなんて痛いだけです。
少年「魔女を……離せ!」
次は腕に激痛。
触手に横薙ぎにされて、吹き飛ばされました。
左腕がおかしな方向にひしゃげてます。
でも身体はまだ動きます。
魔女「んんー!」
魔女の瞳と頬が濡れています。
魔女を泣かせてしまいました。
『女は、泣かせるもんじゃなくて笑わせるもんだ』というお兄ちゃんの言葉を守れませんでした。
238 :
以下、名無しが深夜にお送りします:2012/07/31(火) 21:16:29 ID:
3NThupvc
でもーー。
『本当に大切な物は何があっても守りなさい。 貴方の大切な物を守ることができるのは貴方だけよ?』
母さんの言葉、これだけは破る訳にはいきません。
家族を守れなかった僕だから。
村人「うぇあぅあぁあああ」
少年「うぁっ」
また触手に吹き飛ばされました。
もう、全身痛いです。 痛くないところがわからない程です。
でも、身体はまだ進めます。
身体を動かしているのは僕の意志です。 全身の抗議の痛みは今回も無視です。
239 :
以下、名無しが深夜にお送りします:2012/07/31(火) 21:20:10 ID:
3NThupvc
村人「うぇあぅあぁあああ」
魔女「んんー!んんー!」
早く魔女の涙を止めなくちゃ。
魔女は泣いているべきじゃないです。
辛い過去の分笑っていなくちゃ駄目なんです。
だから。
少年「魔……女ぉ」
村人「ぅあぇえ」
吹き飛ばされないように、精一杯地面を踏みしめて。
村人「あぁうあああ」
少年「んぅっ」
心配かけないように歯を食いしばって声を我慢します。
240 :
以下、名無しが深夜にお送りします:2012/07/31(火) 21:20:58 ID:
3NThupvc
一歩、一歩と歩みを進めます。
視界がぼんやりとしてきます。
意識が今にも飛んでしまいそうです。
だけど、魔女の顔だけははっきり見えます。 見えているから進めます。
少年「……けるから」
魔女「んぅう!んー!」
だからそんな顔しないでよ。
少年「絶対…助けるから」
241 :
以下、名無しが深夜にお送りします:2012/07/31(火) 21:24:50 ID:
3NThupvc
村人「ぅあぇえ」
魔女の口を塞いでいる魔物が触手で僕を叩きます。
口の中が鉄の味です。
でも、あと五歩。
少年「魔女……助けに、来たよ!」
あれ?
おかしいな。 なんで僕は魔女を見上げているんでしょう?
進みたいのに身体の感覚が無いです。
242 :
以下、名無しが深夜にお送りします:2012/07/31(火) 21:25:10 ID:
3NThupvc
少年「うぁ」
魔女の拘束をしていた触手が僕の身体に力いっぱい叩きつけられました。
魔女……ごめんね
魔女「少年っ!」
あぁ、でも魔女の口の拘束が外れたみたいだしいいか。
魔女「〜〜〜〜〜〜」
魔女が歌を口ずさむような、それでいて、凄く力強いような、そんな口調で呪文を唱えました。
心臓の辺りがポカポカしてきたのを感じました。
243 :
以下、名無しが深夜にお送りします:2012/07/31(火) 21:26:04 ID:
3NThupvc
今回の更新は以上となります。
244 :
以下、名無しが深夜にお送りします:2012/07/31(火) 21:40:36 ID:4ErR9AOo
ひゃっほい
支援
245 :
以下、名無しが深夜にお送りします:2012/08/01(水) 07:05:06 ID:1Zil4yQ6
( ∀)/〜支援〜応援〜\(∀ )
246 :
以下、名無しが深夜にお送りします:2012/08/02(木) 18:13:24 ID:6H/IASZE
支援支援支援!
頑張って完走してくれ!
247 :
以下、名無しが深夜にお送りします:2012/08/02(木) 20:27:23 ID:
SrQXGCIs
支援ありがとうございます。
更新します
後数回の更新で終了です。
次は魔女視点となります
248 :
以下、名無しが深夜にお送りします:2012/08/02(木) 20:29:11 ID:
SrQXGCIs
この少年はなぜここまでしてくれるのだろう?
僕はこんな事をして貰える覚えなんてないのに。
魔女「んー!」
彼の真っ直ぐな濃褐色の瞳が私に向けられると悲しくなる。
僕なんかが向けられていい瞳じゃないんだ。
少年「魔女ぉ」
いったいその小さな身体のどこにそんな力があるのだろうか?
249 :
以下、名無しが深夜にお送りします:2012/08/02(木) 20:29:38 ID:
SrQXGCIs
何度も打ち据えられ、それでも尚、徐々に進む少年。
なぜ僕はこんなにも無力なんだろう?
あと一歩で届く。
そこで少年はついに倒れた。
倒れた少年に容赦なく振り下ろされる触手。
それは僕の口を塞いでいた触手だった。
魔女「〜〜〜〜」
急いで呪文を唱える。
ありったけの肉体強化の呪文を少年に。
250 :
以下、名無しが深夜にお送りします:2012/08/02(木) 20:30:20 ID:
SrQXGCIs
少年視点になります
251 :
以下、名無しが深夜にお送りします:2012/08/02(木) 20:31:47 ID:
SrQXGCIs
熱いです。 ポカポカとしていた心臓は今は沸騰しているみたいに熱いです。
そこから全身に熱さが広がります。
身体は軽く、さっきまでの激痛もいくらか和らいでいるみたいです。
魔物の触手も避けられます。
少年「魔女を離せ!」
目の前にいる魔物からついに、魔女を助け出せました。
本当に大切な物を、今度は守れました。
魔女「君は無茶をする」
少年「男は無茶をする物だって、父さんが言ってたよ」
腕の中の魔女はやっぱり小さいんです。
助け出せて、良かったです。
252 :
以下、名無しが深夜にお送りします:2012/08/02(木) 20:33:12 ID:
SrQXGCIs
魔女「無茶ついでに、少し頼んで良いかい?」
少年「?」
魔女「いいかい? 魔女、そして魔法使いの正しい使い方を教えてあげるよ」
魔物の群が集まってきました。
目の前を埋め尽くす魔物の赤い眼光は少し前なら絶望以外の表現ができなかった事でしょう。
魔女「僕たち魔の法を闘う術とする者の正しい運用方法は‘固定砲台’なんだ。 君には砲台を守る盾の役を果たしてもらおう」
魔女の眼をみて感じました。 僕の事を信頼してくれている事を。
少年「これに応えられなきゃ男じゃない、よね」
魔女「言うようになったね。 君も」
魔女は目を細めて言いました。
なんだか嬉しそうです。
253 :
以下、名無しが深夜にお送りします:2012/08/02(木) 20:34:03 ID:
SrQXGCIs
魔女「これを武器に使えばいいよ。 霊樹の幹を切り出した大杖だ。 そんじょそこらのナマクラなんかよりよっぽど効くよ?」
少年「じゃあ、ちょっとの間任せてもらおうかな」
魔女「あぁ、期待しているよ」
杖は握ると手に馴染み、仄かに拍動しているようでした。
魔女「〜〜〜〜」
魔女は祈るように、謳うように、呪文を紡いでいます。
無防備に詠唱を続ける魔女に、指一本触れさせるわけにはいきません。
少年「うおぉぉぉおお!」
突撃します。 身体は軽く、今なら何でもできそうです。
守りたい物があると人間は強くなれる。
人間ってそんなものです。
254 :
以下、名無しが深夜にお送りします:2012/08/02(木) 20:34:34 ID:
SrQXGCIs
魔女視点となります。
255 :
以下、名無しが深夜にお送りします:2012/08/02(木) 20:35:06 ID:
SrQXGCIs
少年には、悪いことをした。
いくら、補助魔法をかけたとしても彼はまだ年端も行かない只の人間だというのに。
でも、そんな只の人間が、全てを振り絞って僕なんかを助けに来てくれた。
魔女「少年のあの眼、まるで勇者みたいに真っ直ぐで力強かったな」
今も眼前で、獅子吼をあげ奮戦している少年。
彼が相手にしているのは、王国の騎士団さえ後込みするほどの凶悪な魔物達だというのに。
今の少年は、きっと大丈夫だとなぜか思えてしまう。
小さな背中がどんどん大きく見えてくる。
優しいだけで人間はこうも強くなれるんだと僕は忘れていたようだ。
256 :
以下、名無しが深夜にお送りします:2012/08/02(木) 20:37:39 ID:
SrQXGCIs
胸に手をかざす。
空想する。 僕の中に確かに存在すると確信できるほどに。
心の中にハッキリと浮かび上がったソレを、現実に引き出す。
かざした手に握られているのは杖の形をした光。
魔力を練って作り出した僕だけの為の杖。
ソレを媒介に呪文を紡ぐ。
魔女「〜〜〜〜」
呼び寄せ、破壊する想像。
森羅万象の摂理をねじ曲げて事象を引き起こすために。
257 :
以下、名無しが深夜にお送りします:2012/08/02(木) 20:40:27 ID:
SrQXGCIs
なにが起きるかわからない筈の呪文を、魔力で強制的に効果を特定の物にする。
魔女「〜〜〜〜」
神経が焼け付くような痛みを押し殺す。
魔女「〜〜〜〜!」
魔法は、成功。
魔女「少年、ご苦労様。 後は僕の側にいて巻き添えにならないようにしてくれれば終わるよ」
少年「え?」
少年を引き寄せると同時に発動させる。
魔女「ほら、今から星空が降ってくるよ。 願い事でもいう準備をしたらいい」
少年を抱き寄せて、魔物の群れに目をやる。
次の瞬間。
天空から流星が降り注いだ。