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少年「あなたが塔の魔女?」
Part10


286 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/08/08(水) 10:33:06 ID:8rnuXNWY
更新します

287 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/08/08(水) 10:33:54 ID:8rnuXNWY
少年「ねぇ、魔女?」
 返事はありません。
少年「こんな所にいると、風邪引いちゃうよ?」
 返事はありません。
少年「僕、帰る所がなくなっちゃったんだ」
少年「魔女は僕の居場所になってくれないの?」
 返事はありません。
少年「ねぇ……魔女」
 返事は……ありませんでした。
魔女「君は意外と泣き虫だよね」

288 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/08/08(水) 10:34:32 ID:8rnuXNWY
 森を抜け、街道沿いを歩きます。
 良いお天気は足取りも軽くなってしまいますよね。
 僕は一人で歩きます。 歩いていきます。
少年「魔女……君はやっぱりズルいよ」
 返事はありません。
 あるわけない、ですよね。
少年「魔女……君はお別れの時、笑ってたのかな?」
 いったいどんな想いを持ってお別れしたんでしょうか。
少年「先に行っちゃうなんてね」
 少しだけ悲しくなってきました。
 一人でも平気だと思っていたんですけど、どうやら心が弱くなっちゃったみたいです

289 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/08/08(水) 10:35:06 ID:8rnuXNWY
少年「あっ、見えた」
 見えてきたのは王都です。
 大きな門は開かれていて、色々な人、馬車、牛車なんかが行き来していました。
 つい、周りをキョロキョロと見渡してしまいます。
 田舎者と思われちゃいます。
 でもしょうがないです。
 人を捜しているんです。
少年「居た、おーい」
 見つけました。 周りから浮いているのですぐわかりました。
 太陽の下にいるとその髪はより一層輝いていて、眩しいくらいです。

290 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/08/08(水) 10:43:51 ID:8rnuXNWY
少年「馬車で行くなんてズルいよ魔女!」
魔女「僕は体力がない、それにまだ本調子じゃないんだ」
 魔女が魔王を倒した時に放った魔法は、自分の全魔力を相手にぶつける魔法でした。
 もともと体力のない魔女は、魔力で補ってたのです。
 結果、三日三晩も寝込む事になったのです。
少年「でも起きた途端いきなり王都に行こうだなんて驚いたよ」
 魔女と市街地を歩きます。
 王都はとっても綺麗です。
魔女「僕はその後の君の発言に驚いたけどね」
 魔女は思い出したかのように、眉間に皺を寄せて僕を睨みました。

291 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/08/08(水) 10:44:35 ID:8rnuXNWY
魔女「知り合いに会いに行くと言った僕に君はなんて言ったんだっけ?」
少年「…………」
 僕は魔女に知り合いが居た事に驚いて、つい「魔女に知り合いなんて居たの?」て言ってしまいました。
魔女「人に社交性が無いと決めつけた君の思考に驚きだよ」
 魔女は案外根に持つタイプらしいです。
少年「で?話を戻すけど、知り合いってどこにいるの」
魔女「ん、あそこに居る」
 魔女が指差した所は、いわゆるお城という建物でした。
 国の偉い人が住む立派な建物です。
少年「えぇ!?」
魔女「驚きすぎだ、少年」

292 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/08/08(水) 10:46:32 ID:8rnuXNWY
 冗談かと思いましたが、魔女は何の躊躇もなくお城の前まで歩きます。
門番「止まりなさい。 ここは王城。 どのような用件でここに?」
少年「魔女……?」
魔女「あ、忘れてた」
 魔女は僕の手を引いて物陰に隠れました。
少年「どういうこと?」
魔女「〜〜」
 魔女が呪文を唱えます。
少年「魔女? ……!?」
魔女「驚きすぎだ、少年」
 目の前にいたのは、気品と妖艶さを纏った妙齢の女性でした。
魔女「んふふ、どーだ?」
 魔女は艶めかしく微笑みます。
 僕は、驚きすぎて声がでませんでした。

293 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/08/08(水) 10:51:29 ID:8rnuXNWY
魔女「私よ。 コレは私の従僕、もちろん、通してくれるわよねぇ?」
門番「貴女は……!?」
 魔女は門番の前に立つと高慢とも思える態度で言いました。
門番「深森の塔の魔女。 貴女が王城に訪れるなんていったい何事でしょうか?」
 門番さんは緊張した面持ちで跪くと恐る恐る聞いてきました。
魔女「只の野暮用よ、詮索する程の物ではないわ」
 魔女はそれだけいうと自分の家にでも帰るようにお城に入っていきました。

294 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/08/08(水) 10:52:29 ID:8rnuXNWY
少年「えーと」
 とんでもない事が起きてます。
 魔女「やぁ、久々だね四代目。 前に会ったのは戴冠の儀以来かな?」
女王「わざわざご足労頂くとは何事でしょうか?」
 目の前にいるのは、この国で一番偉い人です。
 ただの上品なオバサンではなく、この国を統べる女王様が、目の前に居るんです。
魔女「それよりも、何故僕が城に入る時は変身しなくちゃならないんだい?」
女王「救国の賢者たる貴女がちんちくりんの少女じゃ格好がつかないでしょうから」
魔女「格好ばかり気にしているならいっそ、魔神にでも化けて空から降ってこようか?」
 女王様と普通にお話している魔女はただ者ではないみたいです。

295 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/08/08(水) 10:53:45 ID:8rnuXNWY
女王「世間話とお茶の為にわざわざ塔から来た訳ではないですよね?」
 魔女「報告が一つ、頼み事が一つ」
 魔女はテーブルに置かれた紅茶を飲み干すと、カップを弄りながら言いました。
女王「それは?」
魔女「先ずは報告、塔に封印中の魔王が目覚めて、それに伴い周囲が魔境と化した」
女王「して、その対処は?」
魔女「魔境と化した周囲と現れた魔物を殲滅、魔王の復活を阻止したが、現状を鑑みるに楽観視は出来ない」
女王「ふむ……、封印自体が脆くなっている、か。 被害は?」
魔女「近隣に存在する村一つが壊滅状態。 生存者はこの少年の他に存在しないと思われる」

296 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/08/08(水) 10:54:43 ID:8rnuXNWY
女王「貴女の力を以てしても防げぬ程事態は深刻であったという事ですか」
魔女「あぁ、間違い無く魔王が完全に復活する日が近づいている。 それも近い内にだ」
少年「」
 真面目な話をしているせいでついていけません。
 うん、とりあえず紅茶が美味しくてソファがふかふかです。
魔女「早急に、とは言わないが国家間での対策を協議する段階だと頭に入れといてくれ」
女王「わかりました。 騎士団の方達にもより一層鍛錬を励むようにも言っておきます」
 話が終わったみたいです。

297 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/08/08(水) 10:55:23 ID:8rnuXNWY
女王「で? 貴女が頼み事なんて言い方をするのはいったいどんな話なの」
 終わってませんでした。
魔女「そこの少年に人よりも少し幸せな人生を送れるように努力を惜しむな」
 え?
女王「……はぁ、具体的には?」
魔女「貴族の地位と、暖かな家庭をこの国で与えてやってくれ」
 待って……。 何を言ってるの?

298 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/08/08(水) 10:56:01 ID:8rnuXNWY
女王「無茶を言いますね。 どちらもそう簡単に出来るものではないですよ」
魔女「僕の頼み事と、この国の既存兵力で僕を討ち取る事はどちらが難しい?」
女王「それは……」
魔女「この頼みを聞かなければ、僕は君の国に対して宣戦布告をし、一晩で滅ぼして見せよう」
女王「恐ろしい事を平然と言いますね。 そしてそれを可能とする実力があるという事も」
魔女「承諾したと受け取って良いのかな?」
女王「国は守らなければなりませんから」
魔女「良い心がけだ」
 僕はどうなるの? もう魔女と居れないの?

299 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/08/08(水) 10:57:00 ID:8rnuXNWY
今回の更新は以上となります。
次の更新で最後……かなぁ

300 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/08/08(水) 11:26:58 ID:5jI8m8H2
きてた!支援支援!
最後…
早くみたい気もするし終わって欲しくない気もするな
とりあえず超支援

301 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/08/08(水) 15:00:07 ID:8rnuXNWY
更新いたします。長らくお付き合いして下さりありがとうございました。この更新にて本編を終了とさせていただきます。

302 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/08/08(水) 15:01:13 ID:8rnuXNWY
少年「まって!」
魔女「?」
女王「?」
少年「今の話って、僕の事だよね?」
魔女「あぁ、君にはもう帰る場所もないだろう?」
 魔女は僕の事が嫌になってしまったのでしょうか?
少年「一緒に居てくれないの?」
魔女「君は困った奴だな、せっかく幸せな人生を約束して貰えるというのに」
 魔女は何にもわかってないです。

303 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/08/08(水) 15:01:53 ID:J2jYWg8o
がんばれー

304 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/08/08(水) 15:02:06 ID:8rnuXNWY
少年「僕の幸せはそんなんじゃないよ……」
魔女「わがままだな、じゃあいっそのこと王族にねじ込んであげれば満足かい? なぁ女王、君の所の一人娘の婿はこの少年にしてくれ」
女王「私は娘の婿を決めるような権限はありませんよ」
少年「僕は!」
 魔女はまったくわかってないです!
 僕の幸せはーー。

305 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/08/08(水) 15:02:48 ID:8rnuXNWY
少年「僕は魔女と一緒居る事が幸せなんだ!」
魔女「え、あ……と」
女王「あらあら、うふふ」
魔女「君は真顔でとんでも無いことを言うね」
 魔女は被っている山高帽を深く被り直しながら言いました。
少年「駄目かな?」
魔女「いや……駄目じゃないけど」
魔女「あぁー、もう」
魔女「〜〜」
 魔女が呪文を唱えます。
 次の瞬間目の前から消えてしまいました。

306 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/08/08(水) 15:03:19 ID:8rnuXNWY
少年「あ、魔女!?」
女王「さて、どうするのかしら?」
少年「追いかけます!」
女王「出口はあっちよ?」
少年「ありがとうございました」
女王「さて、これを持って行きなさい。 森の方面へ行く馬車の券よ」
 女王様がくれた券を受け取り部屋から飛び出ます。
王女「ふぇっ!?」
少年「うわっ!?」
 すんでのところでぶつかりそうになりソレを避けたまま馬車乗り場まで走りました。

307 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/08/08(水) 15:03:42 ID:8rnuXNWY
女王「若いって良いわねぇ」
王女「ママ、今の人だぁれ?」
女王「さてね、縁があればまた会う事もあるでしょう」
王女「どーいうこと?」
女王「貴女が勇者として旅立つことがあれば、きっと彼らを頼る事になるわ」
王女「へぇー、そーなんだ」

308 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/08/08(水) 15:04:08 ID:8rnuXNWY
 馬車がガタゴトと音を立てて走ります。
 太陽の光が優しく、なんとも気持ちが良いですね。
 不意にお母さんが言っていた言葉を思い出しました。
『世界っていうのはとても美しいものよ』
『何故かって? 秘密。 でも、貴方もそう感じる時がくるわ』
 うん、世界は美しいと思います。

309 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/08/08(水) 15:04:48 ID:8rnuXNWY
 村の近くにある古びた塔。
 そこのてっぺんには怖い怖い魔女が住んでいるという噂でした。
少年「良かった、やっぱり居たんだ」
 魔女は居ました。
 絵本に出てくるような格好は、まさに魔女だと思います。
 魔女は夕闇のような濃い紫の瞳を細めて、僕を見ています。

310 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/08/08(水) 15:06:12 ID:8rnuXNWY
魔女「まさかそれを確かめるだけにわざわざ僕の家まできたのかい?」
 魔女の声は何というか、陽向のように暖かく包んでくれて、でも井戸の水のような透明な声で、ドキッとします。
少年「魔女に会いに来たんだ」
魔女「なぜ僕に会いに?」
 魔女が、安楽椅子から降りて近づいてきます。
 身長はお姉ちゃんよりも小さくて、僕より頭ひとつ違うくらい。
 僕は、魔女って案外小さいんだなぁと思いました。
 ちょっと困ったような、でも嬉しそうな顔をして僕を見ました。

311 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/08/08(水) 15:06:57 ID:8rnuXNWY
少年「ここに居ても良いかな?」
魔女「君はズルいね。 断らないと確信したうえで言っているだろう」
少年「そんな事思ってないよ」
魔女「僕はこわーい塔の魔女だよ? 食べられちゃうかもしれないよ?」
少年「それは怖いね、どこにいるんだろう?」
魔女「目の前に居るじゃないか」
少年「おかしいな。 僕の前に居るのは誰よりも優しくて頼りになる女の子だよ?」
少年「それに塔の魔女は世界を守っている優しい魔女だ」
魔女「うぅ〜、君は口が達者になり過ぎじゃないか?」
 魔女は容姿に合った、可愛らしく拗ねたような顔で僕を睨みました。

312 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/08/08(水) 15:07:14 ID:8rnuXNWY
少年「あなたが塔の魔女?」
魔女「いかにも、僕が塔の魔女だよ」
少年「ただいま」
 僕は嬉しくなって思わず笑いました。
魔女「おかえり」
 魔女もにっこり笑いました。
 
少年「あなたが塔の魔女?」


313 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/08/08(水) 15:12:39 ID:8rnuXNWY
以上で
少年「あなたが塔の魔女?」
終了となります。
読んで下さった方ありがとうございました。
質問とうありましたらお答えします。

314 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/08/08(水) 15:26:36 ID:HDWhUgNA
おつ

315 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/08/08(水) 15:36:52 ID:XYIsMxtY
おつ!

316 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/08/08(水) 15:44:35 ID:dB/clOUA
乙(^O^)
完走お疲れさま
ところでかつて魔女とパーティーを組んでいた勇者達はその後どうなったのかな?

317 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/08/08(水) 15:59:00 ID:8rnuXNWY
勇者→建国。
僧侶→神官。
戦士→旅にでる。
です。
それぞれのSSのプロットを練っている段階です、そのうち書こうかと思っています。

318 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/08/08(水) 17:56:20 ID:o90Fy0mw
お疲れ様でした。
文体が素晴らしかった。
少年の生い立ちに関して伺いたいです。
犬に育てられてたけど殺された?

319 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/08/08(水) 18:01:50 ID:8rnuXNWY
>>318
普通に家族と暮らしていたした。
家族が疫病になり、村に疫病が蔓延することを恐れた村人達に家族を殺され、それ以降は寂しさを紛らわす為に野良犬と暮らしていました。

320 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/08/08(水) 18:07:25 ID:o90Fy0mw
>>319
ありがとうございます。
新作も期待して拝読します。