サシャ「じっくり吟味しましょうか」
Part1
1 : ◆H4iwFNXQsw:2013/11/26(火) 20:14:01 ID:YhM/Zu/M
・サシャ「隠し味なんてどうでしょう?」の続きです
・長いので分割して投下します
2 : ◆H4iwFNXQsw:2013/11/26(火) 20:14:45 ID:YhM/Zu/M
ーー 休日 夕方 女子寮 ミカサたちの部屋
サシャ「ミカサ、手鏡貸してくれてありがとうございました」ペコッ
アニ「……」フキフキ
ミカサ「これくらい、お安いご用。また何かあったら言ってほしい。できるだけ力になりたい」ギュッ
アニ「……」キュッキュッ
サシャ「ミカサにはお世話になりっぱなしですね。……私、何か返せたらいいんですけど」
アニ「……ちょっとどいて」フキフキ
ミカサ「気にしなくてもいい。たまに湯たんぽになってくれれば、私はそれで充分」
アニ「ねえ、掃除の邪魔」
サシャ「それくらいだったらいつでも、いくらでもやってあげますよ! 任せてください! ーーさあミカサ、いらっしゃいませ!」ババッ
ミカサ「おじゃまします!」ダキッ
アニ「……」イラッ
3 : ◆H4iwFNXQsw:2013/11/26(火) 20:15:24 ID:YhM/Zu/M
アニ「……ミカサ。サシャ」
ミカサ「何?」ゴロゴロ
サシャ「なんですかー?」ゴロゴロ
アニ「あんたたち、私が掃除してるの見えないの? それともわかっててわざと床で寝っ転がってるわけ?」
ミカサ「気づいていても、やめられないこともある」ゴロゴロ
サシャ「やめられないとまらないー♪」ゴロゴロ
アニ「…………ふんっ!」ゲシッ
ミカサ「!!」ササッ
サシャ「あいたぁっ!? ーーあ、アニ、何するんですか!」ヒリヒリ
アニ「休みの日だからって食っちゃね食っちゃねしてるんじゃないよ……! 掃除の邪魔!!」イライライライラ
ミーナ「……アニ、お母さんみたい」フキフキ
4 : ◆H4iwFNXQsw:2013/11/26(火) 20:16:04 ID:YhM/Zu/M
アニ「大体あんたたち、部屋の掃除は終わったの? 休暇明けに出す課題は? 全部終わったんなら外で遊んできな」イライラ
ミカサ「掃除は今朝終わらせた。課題は出された日のうちに片付けた。外は寒いから行きたくない」
サシャ「掃除は一週間前にしたばかりなのでたぶん平気です。課題は今日の夜やります。外は大好きですけどミカサがここがいいって言ったので動けません」
ミーナ「なんて対照的な二人」
アニ「せめてベッドの上に移動してよ。床が狭い」
ミカサ「わかった。ーーサシャ、一緒に私の布団の上でゴロゴロしよう」イソイソ
サシャ「わかりました。ゴロゴロしながらお話ししましょう」モソモソ
アニ「ゴロゴロしない!!」バンッ!!
ミーナ「お母さんこわい」ガタガタ
5 : ◆H4iwFNXQsw:2013/11/26(火) 20:16:56 ID:YhM/Zu/M
ミーナ「ところで、二人で集まって何の話? ……恋の話!? きゃっほうだったら私も混ぜて混ぜてー!」ピョン
アニ「部屋の中で跳ねるんじゃないよ。埃が飛ぶでしょ」
サシャ「違います。私の手鏡を買いに行く話ですよ、ミーナ」
ミーナ「手鏡? サシャ、持ってなかったの?」キョトン
サシャ「部屋に少し大きめのはあるんですけどね。今までそういうことを全然気にしてなかったので、小さいのは持ってなかったんですよ。今回ミカサに手鏡貸してもらいましたから、どういうものがいいか大体見当はつきましたが」
ミカサ「つきましたので明日買い物に行く。二人でデートする」
ミーナ「へー……ねえ、よかったらお店何軒か紹介してあげようか? 明日アニのマフラーと手袋買いに行くからさ、そのついでに」
サシャ「えっ、いいんですか?」
ミーナ「まあねー。地元民の私に任せといて!」エッヘン
サシャ「おおっ、頼もしいです!」パチパチパチパチ
ミカサ「四人でダブルデートとは……素晴らしい。自慢して歩こう」
アニ「しなくていい。それに女同士なんだからデートじゃないよ」
6 : ◆H4iwFNXQsw:2013/11/26(火) 20:17:43 ID:YhM/Zu/M
サシャ「えっ? 女同士だとデートにならないんですか?」
ミカサ「なる」
アニ「ならない」
ミーナ「そこに愛があればなるんじゃない?」
サシャ「それじゃあ、二対一でなるってことでいいですね」
ミカサ「異議なし」
アニ「ならないってば」
ミカサ「そう思うならアニ、よく考えてみて。ーーあなたはミーナとお出かけする時に、その普段着で外に出るの? 髪を整えたりはしない?」
アニ「……ある程度はするよ。外に出るわけだし」
ミカサ「なら、それはデートということになるはず」
アニ「なんでそうなるの」
ミカサ「デートに行く時はおしゃれしたくなる。おしゃれしたくなるのはデートに行くから。よって成り立つ」
アニ「無理矢理同じにしないで」
7 : ◆H4iwFNXQsw:2013/11/26(火) 20:18:25 ID:YhM/Zu/M
ミーナ「デートってことはぁ……サシャは報告しないといけない相手がいるよね?」ニヤニヤ
サシャ「報告……? 誰にですか? 外出届は出すつもりですけど」キョトン
ミーナ「違う違う、ライナーに決まってるでしょ? 陰でこっそりデートしてたって聞いたらきっと怒るよー?」
アニ「ただのお出かけだけどね」
サシャ「えっ……怒られたくはないですね。わかりました、ちゃんと報告することにします」
ミーナ「そうそう。報告・連絡・相談は大事だからねー」
ミカサ「……私も、エレンやアルミンに報告したほうがいいだろうか」
アニ「あんたまで真に受けてるんじゃないよ」
ミカサ「でも去年までは、私はエレンやアルミンとばかり一緒に出かけていた。こういう報告をしたことがない」
ミーナ「えっ? 他の女の子と出かけたりしなかったの?」
ミカサ「ない。街でミーナやクリスタと偶然会って、そのまま合流したことはあるけれど、事前に約束したのははじめて」
8 : ◆H4iwFNXQsw:2013/11/26(火) 20:19:15 ID:YhM/Zu/M
ミカサ「今までの休日は、こうやって……女の子の友だちだけで、出かける機会がなかった。ので、サシャやアニやミーナと一緒に出かけられるのは……楽しみ。とても」
アニ「……そうなんだ」
サシャ「明日はいい日にしましょうね、ミカサ」
ミカサ「うん。いい日にしよう」
サシャ「私も田舎暮らしで、同年代の女の子と遊ぶ機会なんてありませんでしたから……ミカサの気持ち、わかります」
ミカサ「……似たもの同士?」
サシャ「そうですね。ラブラブですね、私たち」
ミカサ「……うん。らーぶらーぶ」スリスリ
ミーナ「……アニ、私たちもやろう。ラブラブしよう」
アニ「しないよ」フキフキ
ミーナ「ほっぺすりすりしよう」
アニ「しない」フキフキ
9 : ◆H4iwFNXQsw:2013/11/26(火) 20:19:59 ID:YhM/Zu/M
サシャ「じゃあ、夕食の後にでもライナーに言っておきますね。明日ミカサたちと遊びに行ってくるって」
アニ「完全に保護者への連絡だね」
ミーナ「……待って、サシャ。誰と出かけるかはライナーに話しちゃダメ」
サシャ「でも、相手がわからないとライナーも不安じゃないですかね」
ミーナ「そう、それだよ。ーーねえサシャ。このままじゃいつまで経ってもライナーとの仲は進展しないよ? たまにはライナーを振り回してみたらどうかな?」
サシャ「そんな……ライナーの身体を持ち上げるなんて、私には無理ですよ」
ミカサ「いいえ、そんなことはない。サシャも鍛えて筋肉がついてきている。持ち上げるくらいはできるかもしれない。今度試してみるといい」
アニ「そういう物理的な話じゃないと思う」
ミーナ「あのねサシャ。いつもそばにいることだけが、アプローチの方法じゃないんだよ?」チラチラ
アニ「ミーナ。雑誌置いたら?」
ミーナ「えっとね……『恋の駆け引きは極上のスパイス』なの。『少し離れたり態度を変えてみることも、男女の関係には必要』なんだって……なんだよ? わかる?」チラチラ
10 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/11/26(火) 20:20:51 ID:pP.Ot54Q
待ってました!
今回も楽しみにしてます
11 : ◆H4iwFNXQsw:2013/11/26(火) 20:20:54 ID:YhM/Zu/M
サシャ「すぱいす……?? ってなんですか?」
ミカサ「香辛料のこと。つまり胡椒の類」
サシャ「!? ーーそれってつまり、ライナーの身体からスパイスが滲み出てくるってことですか!?」ジュルリ
アニ「出るわけがない」
ミーナ「おおっと、ここでアニが冷静なツッコミ」
ミカサ「確証はないけどたぶんそう」
ミーナ「しかし聞いてない」
サシャ「私やります! ライナーを振り回します!」
ミーナ「あれーおかしいなー? やる気が変な方向に出たぞー?」
アニ「私、知らないからね」
サシャ「スパイスは何にかけましょうかね……むふふ、やっぱり芋でしょうか……」ウットリ
12 : ◆H4iwFNXQsw:2013/11/26(火) 20:21:46 ID:YhM/Zu/M
ミーナ「待って待って、落ち着いて。そもそも人の身体からはそんなもの出ないよ?」
ミカサ「そんなことはない。ーー例えば、ジャンの目からは黄金が出ると聞いたことがある」
アニ「……そうなの?」
ミーナ「アニ、騙されないで」
ミカサ「人魚姫の涙が真珠になるなら、ジャンから出た何かが金になってもおかしくないはず」
アニ「ああ……よく馬面って言われてるもんね、そういえば」
ミーナ「物語と現実をごっちゃにしないで。ーーそもそもミカサは誰からそんな話聞いたの? アルミンとか?」
ミカサ「ううん。コニーから聞いた」
アニ「じゃあありえるかもね」
サシャ「ええ。コニーは嘘を言いませんからね」
ミーナ「コニーはお馬鹿さんだってことをみんな忘れてるみたい。……おかしいなぁ、私が変なのかなぁ」ウーン...
13 : ◆H4iwFNXQsw:2013/11/26(火) 20:22:41 ID:YhM/Zu/M
サシャ「ええっと、つまり……報告するけど報告しなきゃいいんですね。よくわかりませんがわかりました」
アニ「……やめておいたほうがいいと思うけどね、私は。そもそも、あんたたちは小細工向いてないでしょ」
ミカサ「そんなことはない。私は技巧もそれなりに得意」
サシャ「私はそこまで得意じゃないですね」
アニ「ねえミカサ。ーーあんた、去年のエレンの誕生日プレゼント買う時にさ、アルミン連れて『デートに行ってくる』ってエレンに言ったでしょ」
ミカサ「うん、言った。……すごい、よく覚えている。アニの記憶力は素晴らしい。立派」パチパチ
サシャ「すごいですねー」パチパチ
アニ「それでエレンが相手してくれなかったって、その日の晩にミーナに泣きついてたじゃない」
ミーナ「ーーと、ミカサに私を取られて当時さびしい思いをしたアニちゃんが申しております」
アニ「拗ねてない」
ミーナ「まったまたぁ、アニったらツンデレさんなんだから!」ツンツンツンツン
アニ「……」ゲシッ
ミーナ「痛い!」バターン!!
アニ「……つまり私が言いたいのは、そういう真似は卑怯だってことだよ。『やらなきゃよかった』って後悔しても、私は知らないからね」
14 : ◆H4iwFNXQsw:2013/11/26(火) 20:23:34 ID:YhM/Zu/M
ーー 同刻 男子寮 エレンたちの部屋
エレン「よっと……本はこれで全部か? アルミン」ドサッ
アルミン「ううん、まだあるよ」ガサゴソガサゴソ ヒョイヒョイ
エレン「……俺、男子寮と資料室もう五往復したんだけど」
アルミン「もうちょっと頑張ろうね。そろそろ半分だから」ガサゴソガサゴソ
エレン「はっ、半分!? あれだけ運んで半分もいってないのかよ!?」
アルミン「そうだよ」ガサゴソ
エレン「……ま、まあいいや。お前の本好きは今に始まったことじゃないしな。それで、焼却炉に持ってくゴミのほうはまとまったのか? そろそろ時間がーー」
アルミン「うん、そっちは終わったよ。これで全部」ドサドサドサッ
エレン「」
15 : ◆H4iwFNXQsw:2013/11/26(火) 20:24:30 ID:YhM/Zu/M
ベルトルト「アルミン。このままだとエレンが腰痛になっちゃうよ?」
ライナー「そうだぞ、もう少しエレンの腰を労ってやれ」
エレン「そう思うなら手伝ってくれよ。さっきから何読んでるんだ?」
ライナー「今度の山岳訓練の資料だ。ーー今回は雪山だからな。備えも万全にしておかないと」ペラッ
アルミン「そっか、もうそんな時期かぁ。エレンやベルトルトも参加するんだよね?」
ベルトルト「うん。僕も班長だよ」
エレン「俺もな。……でも俺、班長って柄じゃねえんだけどなぁ」ウーン...
アルミン「エレンは他の誰かに指示するよりも先に、自分が動いちゃうもんね。確かに指揮役っぽくはないかも」
エレン「……やっぱり向いてねえよな」ショボン...
ライナー「いいや、こういうのも経験だ。訓練兵のうちに学べるものは学んでおいたほうがいいぞ、エレン」
16 : ◆H4iwFNXQsw:2013/11/26(火) 20:25:16 ID:YhM/Zu/M
ライナー「最初からうまくできる奴なんかいねえだろ。むしろどん底から這い上がってくるほうが、伸びしろがわかりやすくてちょうどいいと思うがな」
エレン「……けどよ、今のこの時期にどん底ってのも、それはそれで問題じゃねえか?」
ライナー「何言ってんだ。お前の長所はそのどん底から這い上がってくる根性だろ? 三年前の姿勢制御訓練のこと、忘れたとは言わせねえぞ。ーー大丈夫、うまくやれるさ」
エレン「そう……だよな。やれるよな、俺だって」
ライナー「ああ。……俺もどっちかと言えば自分が動くタイプだからな。お前の気持ちもわかる」
ベルトルト「……」
エレン「っし! 気合い入った! ありがとな、ライナー!」グッ
ライナー「そりゃよかった。ーーあまり無理はするなよ」
エレン「俺の辞書に無理なんて言葉はねえよ! あるのは根性・努力・駆逐の三つだけだ!!」キリッ
アルミン「はいじゃあゴミ捨て行ってみよう!」ドサドサドサッ
エレン「」
17 : ◆H4iwFNXQsw:2013/11/26(火) 20:26:25 ID:YhM/Zu/M
エレン「……ライナー、ベルトルト。俺、焼却炉までゴミを駆逐しに行ってくるけど他に何かあるか?」
ベルトルト「いや、今は特にないけどさ。仮にあったとしても頼みにくいよ……」
ライナー「普通の掃除にしちゃ、やけに量が多いな。なんでこんなに溜め込んでたんだ?」
アルミン「溜め込んでたんじゃなくて、大掃除してたんだよ。ーーほら、卒業試験の後ってすぐに解散式でしょ? だから、比較的暇な今の時期にまとめてやっちゃう人が多いんだって」
エレン「今日は二人ともずっと寮にいたけど、大掃除やらないのか?」
ベルトルト「僕、あまり物は持たないようにしてるから。大掃除しなきゃいけないほど散らかってないよ」
ライナー「そもそも普段から綺麗にしておけば大掃除なんてもんはいらねえだろ」
エレン「正論すぎて」
アルミン「耳が痛い……」ズーン...
ライナー「……あっ、いや、その、すまん」アタフタアタフタ
ベルトルト「えっ、えーっと……そうだ、アルミンは物持ちいいもんね。僕も何度か助けられたりしたなぁ」アタフタアタフタ
18 : ◆H4iwFNXQsw:2013/11/26(火) 20:27:20 ID:YhM/Zu/M
エレン「アルミンはノートも多いんだよなー。冊数だけなら本よりも多いし」ペラッ
ベルトルト「……待ってエレン。今めくったノート中身、真っ黒だったよ?」
ライナー「アルミン、お前のノートは黒いのか? 黒板だったのか?」
アルミン「違う違う。本を読んで気になったところをノートに書き写してたんだ。それがどんどん増えちゃっただけ。……あっ、エレン。そっちの束はもう覚えちゃったノートだから捨ててもいいよ」
エレン「その都度捨てろよ。今更だけど」
アルミン「次から気をつけるよ。今更だけど」
ライナー「そっちに積んである本も処分するのか?」
アルミン「これ? ーーううん、これは資料室に寄付する本だよ」
ベルトルト「分厚い本ばかりだね。アルミンらしいと言えばそうなのかもしれないけど」
エレン「辞書みたいな専門書ばかりだから、司書のおばちゃんは喜んでたな。三回目辺りになったら流石に引いてたけど」
アルミン「こうして僕が置いていった本がさ、将来誰かの役に立ったらと思うと嬉しいよね」
19 : ◆H4iwFNXQsw:2013/11/26(火) 20:28:16 ID:YhM/Zu/M
ベルトルト「ところで、そっちいかがわしい本の山は?」
アルミン「……寄付するよ」
ライナー「資料室にか?」
アルミン「まさか。この部屋に何冊か隠しておくんだよ。ーー僕はね、将来ここの部屋を使った誰かが、この本を手にしたことで健全な生活を手に入れる……そういうことに幸せを感じるんだ」
ベルトルト「内容は不健全だけどね」
ライナー「しかし、この量じゃ隠すにしたって多すぎやしないか? どこにしまうのかは知らないが、この本全部が入るほどのスペースがあるとはとても思えないんだが」
アルミン「……ベルトルト。これは僕からの、ささやかなプレゼントだよ」スッ
ベルトルト「えっ? ……ああ、うん」
アルミン「ほら、ライナーにはこっちのお尻が素敵な女の子をあげるね。エレンにはこの黒髪の子をーー」
エレン「俺たちに処分させる気満々じゃねえか!!」バシーン!!
アルミン「僕だって入団はじめはこんなことになるなんて思ってなかったんだよ!! なんでみんな僕に預けていくのさ! 木を隠すなら森の中って言っても限度があるだろ!! 自分で買ったいかがわしい本なんかこの中に片手ほどもないよ!?」
エレン「俺に黙っていつ買ったんだぁっ!?」
アルミン「ああああどうしようどうしよう!! これ一体どうしたらいいんだよ!!」グルグルグルグル
20 : ◆H4iwFNXQsw:2013/11/26(火) 20:29:02 ID:YhM/Zu/M
ライナー「……」
ベルトルト「……」
アルミン「……あれ? ライナー、ベルトルトどうしたの?」
ライナー「すまん、アルミン。ーーこれはもらえない」
ベルトルト「僕も。ごめんね」
アルミン「ううん、それはいいけど……好みに合わなかった?」
ライナー「いや、ど真ん中ではあるんだが」ソワソワ
ベルトルト「正直家宝にしたいくらいなんだけど」ソワソワ
ライナー「いざという時にすぐ動けるように、物はあまり持たないようにしてるんだ。……だから、その本は受け取れない」
エレン「そういや、ライナーもベルトルトもやけに荷物少ないよな。いつもすっきりしてるとは思ってたけどよ」
ベルトルト「まだ何冊か残してるけどね。……試験で使うもの以外は、全部処分するつもりだよ」
21 : ◆H4iwFNXQsw:2013/11/26(火) 20:29:57 ID:YhM/Zu/M
アルミン「二人とも、手元に何も残さないの?」
ベルトルト「……残しても、荷物になるだけだから」
ライナー「兵士は身軽なほうがいいからな」
エレン「ふーん……そんなもんか。でも二人とも憲兵になるんだろ? 遠征の多い調査兵団や異動が多い駐屯兵団と違うんだから、身軽でいる必要なんかないんじゃねえの?」
ライナー「憲兵だって異動がないわけじゃないだろ。もちろん、他の兵団より頻度は低いだろうけどな」
アルミン「……ライナーとベルトルトは、兵士は身軽なほうがいいって思うの?」
ベルトルト「端的に言っちゃえば、そういうことになるのかな」
アルミン「……僕は、そう思わない。何冊か手元に残すよ。だって読みかけの本とかあったらさ、何が何でもこの場所に帰ってこようって思えるじゃないか」
エレン「おいおい、読みかけの本って……そりゃアルミンの話だろ?」
アルミン「……でも」
ライナー「すまんなアルミン、お前の考えを否定する気はないんだ。ーーただ、俺たちがそうだってだけで」
ベルトルト「……」
ライナー「変な空気にして悪かったな。ーーそっちの本、運ぶの手伝わせてくれ」
アルミン「……ううん、僕こそごめん。お願いするね」
22 : ◆H4iwFNXQsw:2013/11/26(火) 20:31:09 ID:YhM/Zu/M
ーー 夕食前 女子寮 廊下
クリスタ「焼却炉、混んでたねぇ」スタスタ...
ユミル「何をそんなに燃やすものがあるんだかな」
クリスタ「でも部屋も綺麗になったし、今日は気持ちよく寝られそうだよね!」
ユミル「ああ、クリスタが頑張ったからな。さっぱりした気持ちで寝られるってのはいいもんだ」ガチャッ
\グチャァッ.../
\デローン.../
ユミル「……部屋間違ったか?」
クリスタ「ううん、合ってるよ」
ユミル「……」
クリスタ「……」ゴソゴソ
23 : ◆H4iwFNXQsw:2013/11/26(火) 20:32:09 ID:YhM/Zu/M
クリスタ「サシャ、出ておいでー。あめちゃんあげるよー」パンパン
サシャ「お菓子ですか!? ください!!」モゾモゾ ヒョコッ
ユミル「てめえよくもクリスタが折角綺麗にした部屋をここまで汚してくれやがりましたなこんちくしょうが」メリメリメリメリ
サシャ「ぎゃあああああごめんなさいごめんなさいごめんなさい!!」ジタバタジタバタ
クリスタ「ユミル、どうどう! サシャの頭が変形しちゃう!」グイグイ
ユミル「……ちっ」ポイッ
サシャ「あうっ。……うう、お尻に続いて頭とは、今日は厄日ですね」サスサス
クリスタ「ねえサシャ、こんなに広げて何かあったの? 探しもの?」
サシャ「はい。あの……これの中身、知りませんか?」パカッ
クリスタ「空箱?」
ユミル「ああ、ライナーにもらった髪ゴムか」
サシャ「箱に入れておいたはずなんですけど、今……今見たら、なくなってて」
ユミル「……顔真っ青だぞ、お前」
・サシャ「隠し味なんてどうでしょう?」の続きです
・長いので分割して投下します
2 : ◆H4iwFNXQsw:2013/11/26(火) 20:14:45 ID:YhM/Zu/M
ーー 休日 夕方 女子寮 ミカサたちの部屋
サシャ「ミカサ、手鏡貸してくれてありがとうございました」ペコッ
アニ「……」フキフキ
ミカサ「これくらい、お安いご用。また何かあったら言ってほしい。できるだけ力になりたい」ギュッ
アニ「……」キュッキュッ
サシャ「ミカサにはお世話になりっぱなしですね。……私、何か返せたらいいんですけど」
アニ「……ちょっとどいて」フキフキ
ミカサ「気にしなくてもいい。たまに湯たんぽになってくれれば、私はそれで充分」
アニ「ねえ、掃除の邪魔」
サシャ「それくらいだったらいつでも、いくらでもやってあげますよ! 任せてください! ーーさあミカサ、いらっしゃいませ!」ババッ
ミカサ「おじゃまします!」ダキッ
アニ「……」イラッ
3 : ◆H4iwFNXQsw:2013/11/26(火) 20:15:24 ID:YhM/Zu/M
アニ「……ミカサ。サシャ」
ミカサ「何?」ゴロゴロ
サシャ「なんですかー?」ゴロゴロ
アニ「あんたたち、私が掃除してるの見えないの? それともわかっててわざと床で寝っ転がってるわけ?」
ミカサ「気づいていても、やめられないこともある」ゴロゴロ
サシャ「やめられないとまらないー♪」ゴロゴロ
アニ「…………ふんっ!」ゲシッ
ミカサ「!!」ササッ
サシャ「あいたぁっ!? ーーあ、アニ、何するんですか!」ヒリヒリ
アニ「休みの日だからって食っちゃね食っちゃねしてるんじゃないよ……! 掃除の邪魔!!」イライライライラ
ミーナ「……アニ、お母さんみたい」フキフキ
4 : ◆H4iwFNXQsw:2013/11/26(火) 20:16:04 ID:YhM/Zu/M
アニ「大体あんたたち、部屋の掃除は終わったの? 休暇明けに出す課題は? 全部終わったんなら外で遊んできな」イライラ
ミカサ「掃除は今朝終わらせた。課題は出された日のうちに片付けた。外は寒いから行きたくない」
サシャ「掃除は一週間前にしたばかりなのでたぶん平気です。課題は今日の夜やります。外は大好きですけどミカサがここがいいって言ったので動けません」
ミーナ「なんて対照的な二人」
アニ「せめてベッドの上に移動してよ。床が狭い」
ミカサ「わかった。ーーサシャ、一緒に私の布団の上でゴロゴロしよう」イソイソ
サシャ「わかりました。ゴロゴロしながらお話ししましょう」モソモソ
アニ「ゴロゴロしない!!」バンッ!!
ミーナ「お母さんこわい」ガタガタ
5 : ◆H4iwFNXQsw:2013/11/26(火) 20:16:56 ID:YhM/Zu/M
ミーナ「ところで、二人で集まって何の話? ……恋の話!? きゃっほうだったら私も混ぜて混ぜてー!」ピョン
アニ「部屋の中で跳ねるんじゃないよ。埃が飛ぶでしょ」
サシャ「違います。私の手鏡を買いに行く話ですよ、ミーナ」
ミーナ「手鏡? サシャ、持ってなかったの?」キョトン
サシャ「部屋に少し大きめのはあるんですけどね。今までそういうことを全然気にしてなかったので、小さいのは持ってなかったんですよ。今回ミカサに手鏡貸してもらいましたから、どういうものがいいか大体見当はつきましたが」
ミカサ「つきましたので明日買い物に行く。二人でデートする」
ミーナ「へー……ねえ、よかったらお店何軒か紹介してあげようか? 明日アニのマフラーと手袋買いに行くからさ、そのついでに」
サシャ「えっ、いいんですか?」
ミーナ「まあねー。地元民の私に任せといて!」エッヘン
サシャ「おおっ、頼もしいです!」パチパチパチパチ
ミカサ「四人でダブルデートとは……素晴らしい。自慢して歩こう」
アニ「しなくていい。それに女同士なんだからデートじゃないよ」
サシャ「えっ? 女同士だとデートにならないんですか?」
ミカサ「なる」
アニ「ならない」
ミーナ「そこに愛があればなるんじゃない?」
サシャ「それじゃあ、二対一でなるってことでいいですね」
ミカサ「異議なし」
アニ「ならないってば」
ミカサ「そう思うならアニ、よく考えてみて。ーーあなたはミーナとお出かけする時に、その普段着で外に出るの? 髪を整えたりはしない?」
アニ「……ある程度はするよ。外に出るわけだし」
ミカサ「なら、それはデートということになるはず」
アニ「なんでそうなるの」
ミカサ「デートに行く時はおしゃれしたくなる。おしゃれしたくなるのはデートに行くから。よって成り立つ」
アニ「無理矢理同じにしないで」
7 : ◆H4iwFNXQsw:2013/11/26(火) 20:18:25 ID:YhM/Zu/M
ミーナ「デートってことはぁ……サシャは報告しないといけない相手がいるよね?」ニヤニヤ
サシャ「報告……? 誰にですか? 外出届は出すつもりですけど」キョトン
ミーナ「違う違う、ライナーに決まってるでしょ? 陰でこっそりデートしてたって聞いたらきっと怒るよー?」
アニ「ただのお出かけだけどね」
サシャ「えっ……怒られたくはないですね。わかりました、ちゃんと報告することにします」
ミーナ「そうそう。報告・連絡・相談は大事だからねー」
ミカサ「……私も、エレンやアルミンに報告したほうがいいだろうか」
アニ「あんたまで真に受けてるんじゃないよ」
ミカサ「でも去年までは、私はエレンやアルミンとばかり一緒に出かけていた。こういう報告をしたことがない」
ミーナ「えっ? 他の女の子と出かけたりしなかったの?」
ミカサ「ない。街でミーナやクリスタと偶然会って、そのまま合流したことはあるけれど、事前に約束したのははじめて」
8 : ◆H4iwFNXQsw:2013/11/26(火) 20:19:15 ID:YhM/Zu/M
ミカサ「今までの休日は、こうやって……女の子の友だちだけで、出かける機会がなかった。ので、サシャやアニやミーナと一緒に出かけられるのは……楽しみ。とても」
アニ「……そうなんだ」
サシャ「明日はいい日にしましょうね、ミカサ」
ミカサ「うん。いい日にしよう」
サシャ「私も田舎暮らしで、同年代の女の子と遊ぶ機会なんてありませんでしたから……ミカサの気持ち、わかります」
ミカサ「……似たもの同士?」
サシャ「そうですね。ラブラブですね、私たち」
ミカサ「……うん。らーぶらーぶ」スリスリ
ミーナ「……アニ、私たちもやろう。ラブラブしよう」
アニ「しないよ」フキフキ
ミーナ「ほっぺすりすりしよう」
アニ「しない」フキフキ
9 : ◆H4iwFNXQsw:2013/11/26(火) 20:19:59 ID:YhM/Zu/M
サシャ「じゃあ、夕食の後にでもライナーに言っておきますね。明日ミカサたちと遊びに行ってくるって」
アニ「完全に保護者への連絡だね」
ミーナ「……待って、サシャ。誰と出かけるかはライナーに話しちゃダメ」
サシャ「でも、相手がわからないとライナーも不安じゃないですかね」
ミーナ「そう、それだよ。ーーねえサシャ。このままじゃいつまで経ってもライナーとの仲は進展しないよ? たまにはライナーを振り回してみたらどうかな?」
サシャ「そんな……ライナーの身体を持ち上げるなんて、私には無理ですよ」
ミカサ「いいえ、そんなことはない。サシャも鍛えて筋肉がついてきている。持ち上げるくらいはできるかもしれない。今度試してみるといい」
アニ「そういう物理的な話じゃないと思う」
ミーナ「あのねサシャ。いつもそばにいることだけが、アプローチの方法じゃないんだよ?」チラチラ
アニ「ミーナ。雑誌置いたら?」
ミーナ「えっとね……『恋の駆け引きは極上のスパイス』なの。『少し離れたり態度を変えてみることも、男女の関係には必要』なんだって……なんだよ? わかる?」チラチラ
10 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/11/26(火) 20:20:51 ID:pP.Ot54Q
待ってました!
今回も楽しみにしてます
11 : ◆H4iwFNXQsw:2013/11/26(火) 20:20:54 ID:YhM/Zu/M
サシャ「すぱいす……?? ってなんですか?」
ミカサ「香辛料のこと。つまり胡椒の類」
サシャ「!? ーーそれってつまり、ライナーの身体からスパイスが滲み出てくるってことですか!?」ジュルリ
アニ「出るわけがない」
ミーナ「おおっと、ここでアニが冷静なツッコミ」
ミカサ「確証はないけどたぶんそう」
ミーナ「しかし聞いてない」
サシャ「私やります! ライナーを振り回します!」
ミーナ「あれーおかしいなー? やる気が変な方向に出たぞー?」
アニ「私、知らないからね」
サシャ「スパイスは何にかけましょうかね……むふふ、やっぱり芋でしょうか……」ウットリ
12 : ◆H4iwFNXQsw:2013/11/26(火) 20:21:46 ID:YhM/Zu/M
ミーナ「待って待って、落ち着いて。そもそも人の身体からはそんなもの出ないよ?」
ミカサ「そんなことはない。ーー例えば、ジャンの目からは黄金が出ると聞いたことがある」
アニ「……そうなの?」
ミーナ「アニ、騙されないで」
ミカサ「人魚姫の涙が真珠になるなら、ジャンから出た何かが金になってもおかしくないはず」
アニ「ああ……よく馬面って言われてるもんね、そういえば」
ミーナ「物語と現実をごっちゃにしないで。ーーそもそもミカサは誰からそんな話聞いたの? アルミンとか?」
ミカサ「ううん。コニーから聞いた」
アニ「じゃあありえるかもね」
サシャ「ええ。コニーは嘘を言いませんからね」
ミーナ「コニーはお馬鹿さんだってことをみんな忘れてるみたい。……おかしいなぁ、私が変なのかなぁ」ウーン...
13 : ◆H4iwFNXQsw:2013/11/26(火) 20:22:41 ID:YhM/Zu/M
サシャ「ええっと、つまり……報告するけど報告しなきゃいいんですね。よくわかりませんがわかりました」
アニ「……やめておいたほうがいいと思うけどね、私は。そもそも、あんたたちは小細工向いてないでしょ」
ミカサ「そんなことはない。私は技巧もそれなりに得意」
サシャ「私はそこまで得意じゃないですね」
アニ「ねえミカサ。ーーあんた、去年のエレンの誕生日プレゼント買う時にさ、アルミン連れて『デートに行ってくる』ってエレンに言ったでしょ」
ミカサ「うん、言った。……すごい、よく覚えている。アニの記憶力は素晴らしい。立派」パチパチ
サシャ「すごいですねー」パチパチ
アニ「それでエレンが相手してくれなかったって、その日の晩にミーナに泣きついてたじゃない」
ミーナ「ーーと、ミカサに私を取られて当時さびしい思いをしたアニちゃんが申しております」
アニ「拗ねてない」
ミーナ「まったまたぁ、アニったらツンデレさんなんだから!」ツンツンツンツン
アニ「……」ゲシッ
ミーナ「痛い!」バターン!!
アニ「……つまり私が言いたいのは、そういう真似は卑怯だってことだよ。『やらなきゃよかった』って後悔しても、私は知らないからね」
14 : ◆H4iwFNXQsw:2013/11/26(火) 20:23:34 ID:YhM/Zu/M
ーー 同刻 男子寮 エレンたちの部屋
エレン「よっと……本はこれで全部か? アルミン」ドサッ
アルミン「ううん、まだあるよ」ガサゴソガサゴソ ヒョイヒョイ
エレン「……俺、男子寮と資料室もう五往復したんだけど」
アルミン「もうちょっと頑張ろうね。そろそろ半分だから」ガサゴソガサゴソ
エレン「はっ、半分!? あれだけ運んで半分もいってないのかよ!?」
アルミン「そうだよ」ガサゴソ
エレン「……ま、まあいいや。お前の本好きは今に始まったことじゃないしな。それで、焼却炉に持ってくゴミのほうはまとまったのか? そろそろ時間がーー」
アルミン「うん、そっちは終わったよ。これで全部」ドサドサドサッ
エレン「」
15 : ◆H4iwFNXQsw:2013/11/26(火) 20:24:30 ID:YhM/Zu/M
ベルトルト「アルミン。このままだとエレンが腰痛になっちゃうよ?」
ライナー「そうだぞ、もう少しエレンの腰を労ってやれ」
エレン「そう思うなら手伝ってくれよ。さっきから何読んでるんだ?」
ライナー「今度の山岳訓練の資料だ。ーー今回は雪山だからな。備えも万全にしておかないと」ペラッ
アルミン「そっか、もうそんな時期かぁ。エレンやベルトルトも参加するんだよね?」
ベルトルト「うん。僕も班長だよ」
エレン「俺もな。……でも俺、班長って柄じゃねえんだけどなぁ」ウーン...
アルミン「エレンは他の誰かに指示するよりも先に、自分が動いちゃうもんね。確かに指揮役っぽくはないかも」
エレン「……やっぱり向いてねえよな」ショボン...
ライナー「いいや、こういうのも経験だ。訓練兵のうちに学べるものは学んでおいたほうがいいぞ、エレン」
16 : ◆H4iwFNXQsw:2013/11/26(火) 20:25:16 ID:YhM/Zu/M
ライナー「最初からうまくできる奴なんかいねえだろ。むしろどん底から這い上がってくるほうが、伸びしろがわかりやすくてちょうどいいと思うがな」
エレン「……けどよ、今のこの時期にどん底ってのも、それはそれで問題じゃねえか?」
ライナー「何言ってんだ。お前の長所はそのどん底から這い上がってくる根性だろ? 三年前の姿勢制御訓練のこと、忘れたとは言わせねえぞ。ーー大丈夫、うまくやれるさ」
エレン「そう……だよな。やれるよな、俺だって」
ライナー「ああ。……俺もどっちかと言えば自分が動くタイプだからな。お前の気持ちもわかる」
ベルトルト「……」
エレン「っし! 気合い入った! ありがとな、ライナー!」グッ
ライナー「そりゃよかった。ーーあまり無理はするなよ」
エレン「俺の辞書に無理なんて言葉はねえよ! あるのは根性・努力・駆逐の三つだけだ!!」キリッ
アルミン「はいじゃあゴミ捨て行ってみよう!」ドサドサドサッ
エレン「」
17 : ◆H4iwFNXQsw:2013/11/26(火) 20:26:25 ID:YhM/Zu/M
エレン「……ライナー、ベルトルト。俺、焼却炉までゴミを駆逐しに行ってくるけど他に何かあるか?」
ベルトルト「いや、今は特にないけどさ。仮にあったとしても頼みにくいよ……」
ライナー「普通の掃除にしちゃ、やけに量が多いな。なんでこんなに溜め込んでたんだ?」
アルミン「溜め込んでたんじゃなくて、大掃除してたんだよ。ーーほら、卒業試験の後ってすぐに解散式でしょ? だから、比較的暇な今の時期にまとめてやっちゃう人が多いんだって」
エレン「今日は二人ともずっと寮にいたけど、大掃除やらないのか?」
ベルトルト「僕、あまり物は持たないようにしてるから。大掃除しなきゃいけないほど散らかってないよ」
ライナー「そもそも普段から綺麗にしておけば大掃除なんてもんはいらねえだろ」
エレン「正論すぎて」
アルミン「耳が痛い……」ズーン...
ライナー「……あっ、いや、その、すまん」アタフタアタフタ
ベルトルト「えっ、えーっと……そうだ、アルミンは物持ちいいもんね。僕も何度か助けられたりしたなぁ」アタフタアタフタ
18 : ◆H4iwFNXQsw:2013/11/26(火) 20:27:20 ID:YhM/Zu/M
エレン「アルミンはノートも多いんだよなー。冊数だけなら本よりも多いし」ペラッ
ベルトルト「……待ってエレン。今めくったノート中身、真っ黒だったよ?」
ライナー「アルミン、お前のノートは黒いのか? 黒板だったのか?」
アルミン「違う違う。本を読んで気になったところをノートに書き写してたんだ。それがどんどん増えちゃっただけ。……あっ、エレン。そっちの束はもう覚えちゃったノートだから捨ててもいいよ」
エレン「その都度捨てろよ。今更だけど」
アルミン「次から気をつけるよ。今更だけど」
ライナー「そっちに積んである本も処分するのか?」
アルミン「これ? ーーううん、これは資料室に寄付する本だよ」
ベルトルト「分厚い本ばかりだね。アルミンらしいと言えばそうなのかもしれないけど」
エレン「辞書みたいな専門書ばかりだから、司書のおばちゃんは喜んでたな。三回目辺りになったら流石に引いてたけど」
アルミン「こうして僕が置いていった本がさ、将来誰かの役に立ったらと思うと嬉しいよね」
19 : ◆H4iwFNXQsw:2013/11/26(火) 20:28:16 ID:YhM/Zu/M
ベルトルト「ところで、そっちいかがわしい本の山は?」
アルミン「……寄付するよ」
ライナー「資料室にか?」
アルミン「まさか。この部屋に何冊か隠しておくんだよ。ーー僕はね、将来ここの部屋を使った誰かが、この本を手にしたことで健全な生活を手に入れる……そういうことに幸せを感じるんだ」
ベルトルト「内容は不健全だけどね」
ライナー「しかし、この量じゃ隠すにしたって多すぎやしないか? どこにしまうのかは知らないが、この本全部が入るほどのスペースがあるとはとても思えないんだが」
アルミン「……ベルトルト。これは僕からの、ささやかなプレゼントだよ」スッ
ベルトルト「えっ? ……ああ、うん」
アルミン「ほら、ライナーにはこっちのお尻が素敵な女の子をあげるね。エレンにはこの黒髪の子をーー」
エレン「俺たちに処分させる気満々じゃねえか!!」バシーン!!
アルミン「僕だって入団はじめはこんなことになるなんて思ってなかったんだよ!! なんでみんな僕に預けていくのさ! 木を隠すなら森の中って言っても限度があるだろ!! 自分で買ったいかがわしい本なんかこの中に片手ほどもないよ!?」
エレン「俺に黙っていつ買ったんだぁっ!?」
アルミン「ああああどうしようどうしよう!! これ一体どうしたらいいんだよ!!」グルグルグルグル
20 : ◆H4iwFNXQsw:2013/11/26(火) 20:29:02 ID:YhM/Zu/M
ライナー「……」
ベルトルト「……」
アルミン「……あれ? ライナー、ベルトルトどうしたの?」
ライナー「すまん、アルミン。ーーこれはもらえない」
ベルトルト「僕も。ごめんね」
アルミン「ううん、それはいいけど……好みに合わなかった?」
ライナー「いや、ど真ん中ではあるんだが」ソワソワ
ベルトルト「正直家宝にしたいくらいなんだけど」ソワソワ
ライナー「いざという時にすぐ動けるように、物はあまり持たないようにしてるんだ。……だから、その本は受け取れない」
エレン「そういや、ライナーもベルトルトもやけに荷物少ないよな。いつもすっきりしてるとは思ってたけどよ」
ベルトルト「まだ何冊か残してるけどね。……試験で使うもの以外は、全部処分するつもりだよ」
アルミン「二人とも、手元に何も残さないの?」
ベルトルト「……残しても、荷物になるだけだから」
ライナー「兵士は身軽なほうがいいからな」
エレン「ふーん……そんなもんか。でも二人とも憲兵になるんだろ? 遠征の多い調査兵団や異動が多い駐屯兵団と違うんだから、身軽でいる必要なんかないんじゃねえの?」
ライナー「憲兵だって異動がないわけじゃないだろ。もちろん、他の兵団より頻度は低いだろうけどな」
アルミン「……ライナーとベルトルトは、兵士は身軽なほうがいいって思うの?」
ベルトルト「端的に言っちゃえば、そういうことになるのかな」
アルミン「……僕は、そう思わない。何冊か手元に残すよ。だって読みかけの本とかあったらさ、何が何でもこの場所に帰ってこようって思えるじゃないか」
エレン「おいおい、読みかけの本って……そりゃアルミンの話だろ?」
アルミン「……でも」
ライナー「すまんなアルミン、お前の考えを否定する気はないんだ。ーーただ、俺たちがそうだってだけで」
ベルトルト「……」
ライナー「変な空気にして悪かったな。ーーそっちの本、運ぶの手伝わせてくれ」
アルミン「……ううん、僕こそごめん。お願いするね」
22 : ◆H4iwFNXQsw:2013/11/26(火) 20:31:09 ID:YhM/Zu/M
ーー 夕食前 女子寮 廊下
クリスタ「焼却炉、混んでたねぇ」スタスタ...
ユミル「何をそんなに燃やすものがあるんだかな」
クリスタ「でも部屋も綺麗になったし、今日は気持ちよく寝られそうだよね!」
ユミル「ああ、クリスタが頑張ったからな。さっぱりした気持ちで寝られるってのはいいもんだ」ガチャッ
\グチャァッ.../
\デローン.../
ユミル「……部屋間違ったか?」
クリスタ「ううん、合ってるよ」
ユミル「……」
クリスタ「……」ゴソゴソ
23 : ◆H4iwFNXQsw:2013/11/26(火) 20:32:09 ID:YhM/Zu/M
クリスタ「サシャ、出ておいでー。あめちゃんあげるよー」パンパン
サシャ「お菓子ですか!? ください!!」モゾモゾ ヒョコッ
ユミル「てめえよくもクリスタが折角綺麗にした部屋をここまで汚してくれやがりましたなこんちくしょうが」メリメリメリメリ
サシャ「ぎゃあああああごめんなさいごめんなさいごめんなさい!!」ジタバタジタバタ
クリスタ「ユミル、どうどう! サシャの頭が変形しちゃう!」グイグイ
ユミル「……ちっ」ポイッ
サシャ「あうっ。……うう、お尻に続いて頭とは、今日は厄日ですね」サスサス
クリスタ「ねえサシャ、こんなに広げて何かあったの? 探しもの?」
サシャ「はい。あの……これの中身、知りませんか?」パカッ
クリスタ「空箱?」
ユミル「ああ、ライナーにもらった髪ゴムか」
サシャ「箱に入れておいたはずなんですけど、今……今見たら、なくなってて」
ユミル「……顔真っ青だぞ、お前」
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