サシャ「無意味じゃありません!」
Part2
23 : ◆H4iwFNXQsw:2013/09/02(月) 18:26:06 ID:YGRfFQo.
サシャ「ライナー……? なんでここに……?」
ライナー「いや、雨宿りをしようと……じゃなかった、すまん! 外に出る!!」クルッ
サシャ「!? 待ってください出なくていいですよ! 後ろ向いて壁でも見ててくれればいいですから!」
ライナー「……わかった。終わったら言ってくれ」
サシャ「はい、急ぎますね」モソモソ
ライナー「……なんで下着姿なんだ? サシャ」
サシャ「服が濡れちゃったから着替えてたんですよ。誰か来るとは思ってませんでしたし」モソモソ
ライナー「そうか……濡れちゃったんなら、仕方ないよな……」
ライナー(ずっと前、夜中にミカサが連れてきた時はよく見えなかったが……思ってた以上に……)
ライナー「……」
ライナー「……」ゴンッ!!
サシャ「ひぇっ!?」ビクッ!!
24 : ◆H4iwFNXQsw:2013/09/02(月) 18:27:27 ID:YGRfFQo.
サシャ「……なんで扉に頭突きしたんですか?」
ライナー「いや、何もしてないぞ?」ヒリヒリ
サシャ「だって今、音もしましたし……」
ライナー「気のせいだろ」
サシャ「……まあいいですけど。それにしても、こんなところで会うなんて偶然ですよね。この納屋に何か用だったんですか?」
ライナー「んなわけあるか。お前を探しに来たんだよ」
サシャ「私? ……なんでです?」
ライナー「……迷子は迷子の自覚がないって話は本当だったんだな」ボソッ
サシャ「何か言いました?」
ライナー「なんでもない」
25 : ◆H4iwFNXQsw:2013/09/02(月) 18:28:51 ID:YGRfFQo.
サシャ「お待たせしました、もうこっち向いてもいいですよ」
ライナー「……」クルッ
ライナー(……半袖シャツ一枚に、夏物の丈の短いスカートか)
ライナー「……上着は?」
サシャ「全滅でした」
ライナー「俺の上着を貸してやるから着てろ。シャツだけだと寒いだろ」パサッ
サシャ「えっ、でもそれだとライナーが寒いんじゃありません?」
ライナー「丈夫だからいいんだ、俺は」
サシャ「じゃあ、お借りします……」パサッ
サシャ(上着……ライナーの上着……! 数週間ぶりの……!!)ドキドキドキドキ
ライナー「どうした? 羽織ってないで早く着ろ」
サシャ「そっ、袖を通していいんですか!?」
ライナー「? 当たり前だろ? 汗臭くても文句言うなよ?」
サシャ「言いません言いません言いません!!」ブンブン
26 : ◆H4iwFNXQsw:2013/09/02(月) 18:29:58 ID:YGRfFQo.
サシャ「じゃあ、失礼します……っと、結構ぶかぶかですね」ブカブカ
ライナー「サイズが一回り違うからな。……お前の分の雨具も持ってきたから、上から着ろ」
サシャ「はーい。着まーす」モソモソ
ライナー「着替え終わったら戻るぞ。クリスタやミカサが心配してたからな」グッ
ライナー「……ん?」
サシャ「? どうかしました?」モソモソ
ライナー「……開かない」グッグッ
サシャ「押してダメなら引いてみろ!」
ライナー「どっちもやった。……どこか引っかかってるみたいだな」
サシャ「なら、私が代わりましょうか? 案外あっさり開くかもしれませんし」
ライナー「特に変わらんと思うが……やってみろ」
サシャ「よーっし…………はい、開きませんね!」ガチャガチャ
ライナー「かなり古いみたいだからな、この納屋」
サシャ「コニーが朝直してたんですけどねー、ここ」
27 : ◆H4iwFNXQsw:2013/09/02(月) 18:31:11 ID:YGRfFQo.
サシャ「ん? ……ということは、私たち閉じ込められたってことですか?」
ライナー「そういうことだな。……天気も収まらないし、少し様子を見るか」
サシャ「そうしましょうか。苦労してここから出ても、またびしょ濡れになっちゃうでしょうし」
ライナー「……悪い。俺が来た意味なかったな」
サシャ「そんなことないですよ! 一人でいても心細かったので、来てもらえて助かりました!」ブンブン
サシャ「というか、お手数かけてすみません……しかも巻き込む形になっちゃいましたし……」ショボーン...
ライナー「こっちが勝手に探しに来たんだ。気に病まなくていい」ポンポン
サシャ「……髪濡れてますから、ライナーの手も濡れちゃいますよ?」
ライナー「そうだな、大変だ」ポンポン
サシャ「そうですよ、大変ですよ」
サシャ(……よくよく考えたら、私を探しにこの雨の中来てくれたってことですよね)
サシャ(不謹慎かもしれないですけど……嬉しいなぁ)
28 : ◆H4iwFNXQsw:2013/09/02(月) 18:32:20 ID:YGRfFQo.
ライナー「立ってても仕方ないな。座るか。お前も雨具脱いでいいぞ」パサッ
サシャ「はーい。……あ、ちょっと待ってください」ゴソゴソ
ライナー「……それ、ハンカチか?」
サシャ「はい。直に座るよりはマシですよね、どうぞ」ファサッ
ライナー「どうぞって……洗ったばかりなんじゃないのか?」
サシャ「こうなったら全部後からやり直すつもりなのでいいですよ。気にしないでください」
ライナー「悪いな、助かる」
サシャ「いいえ、こちらこそ。……そうだ、しばらくここにいるんですよね? 上着返しましょうか?」
ライナー「いや、ここを出るまで着てていいぞ」
サシャ「でも、それだとライナーが寒くないですか?」
ライナー「余計な心配はしなくていい。着てろ」
29 : ◆H4iwFNXQsw:2013/09/02(月) 18:33:51 ID:YGRfFQo.
サシャ「そうだ、寒くなってきたら私に抱きつくといいですよ! クリスタが私のことあったかいって言ってましたから!」
ライナー「……は?」
サシャ「というわけで、私が前に座りますね!」ストンッ
ライナー「……」
サシャ「……」
ライナー「………………………………いいのか?」
サシャ「何がですか? ……あ、向きあったほうがよかったですかね? クリスタは私の背中に抱きついてたから、こっちのほうがいいと思ったんですけど」
ライナー「いや、そうじゃなくてだな……」
サシャ「……?」キョトン
ライナー(……なんだ、この状況)
30 : ◆H4iwFNXQsw:2013/09/02(月) 18:34:48 ID:YGRfFQo.
サシャ「そうだ! どうせだから何かお話ししましょうよ。このまま黙ってても暇ですし」ユラユラ ヒョコヒョコ
ライナー「その前に、髪ほどいてくれないか? 目の前で動くから気になる」
サシャ「あ、どうぞどうぞ。いいですよ」
ライナー「……」
サシャ「……?」ユラユラ ヒョコヒョコ
ライナー(……俺がほどけばいいのか)
ライナー「……ほどくぞー」シュルッ...
サシャ「はーい」ユラユラ
ライナー「こら、動くな」
31 : ◆H4iwFNXQsw:2013/09/02(月) 18:35:49 ID:YGRfFQo.
ライナー「……蝶、つけてないんだな」
サシャ「なくしたくないので、訓練の時はつけてないんですよ。今日の午後は立体機動でしたし。……でも、この前ハンバーグ作ってた時はちゃんとつけてましたよ?」
ライナー「そうだったのか? 気づかなかった」
サシャ「二人ともそれどころじゃありませんでしたしねー、この前は」
ライナー「そういや、指はもう治ったか?」
サシャ「ええ、おかげさまで」
ライナー「そうか、よかった」
サシャ「見ます?」
ライナー「いや、治ったんならいい」
32 : ◆H4iwFNXQsw:2013/09/02(月) 18:37:00 ID:YGRfFQo.
ーー 同刻 食堂
ーー ザーーーーーーーーーーーーッ!!
ミカサ「……」ソワソワ
エレン「ライナーに任せときゃ大丈夫だって、ミカサ」
アルミン「そうだよ。もしかしたら二人でどこかに避難して、動けなくなってるのかもしれないし」
ミカサ「なら、なおさら助けに行かないと」ソワソワ
ユミル「なあ……まさかとは思うが、おっぱじめたりしてねえよなあいつら」
ミカサ「何を言い出すのユミル」ガタッ
33 : ◆H4iwFNXQsw:2013/09/02(月) 18:38:39 ID:YGRfFQo.
ユミル「もちろん、まだ見つかってない……ってのも充分あり得るんだが」
ユミル「訓練所の端から端まで探したって、いくらなんでも一時間もかかるわけないだろ」
ユミル「今ぐらいの時間なら……そうだな、そろそろ一旦帰ってきて、中にいなかったか聞きに来てもいい頃合いじゃないか?」
ミカサ「……一理ある」
ユミル「だろ? つまり、帰ってきてないってことはそれなりの理由があるわけだよな」
ユミル「アルミンの推測通り、仮にどこかに避難してると仮定して、だ」
ユミル「密室に男女が二人だろ? ……となったら、やることは一つしかないよな?」
34 : ◆H4iwFNXQsw:2013/09/02(月) 18:40:09 ID:YGRfFQo.
アルミン「でもさ、まだ付き合ってないんだよね? あの二人。心配しすぎじゃない?」
ユミル「いや、あの二人に限ってそれは当てはまらないだろうよ」
ミカサ「……何を言いたいの?」
ユミル「だからさー、あの二人って、そういう段階に行くために必要な手順を一切踏んでないだろ?」
ユミル「普通はさ、えーっと、告白して手ぇ繋いでキスして? ……まあ色々省くけど、全部逆なわけだろ? あの二人の場合」
ユミル「だから、その延長でおっぱじめちまう可能性が……あるんじゃねえのかなぁって……」
ミーナ「ズッコンバッコン……」
アニ「……開拓地送り?」
ミカサ「サシャが危ない」ガタガタッ
35 : ◆H4iwFNXQsw:2013/09/02(月) 18:41:29 ID:YGRfFQo.
ユミル「いやいや、流石に昼間っから愛情たっぷり夜の立体機動なんかしないだろ。……なぁ紳士諸君?」チラッ
ジャン「……」プイッ
マルコ「……」プイッ
ベルトルト「……」プイッ
アルミン「……」プイッ
コニー「ところで夜の立体機動ってなんだ?」
エレン「知らねえ。でも危ねえよな、夜に立体機動なんて」
コニー「そうは言うけどよ、訓練場の森の中だってだいぶ暗いぞ?」
ミカサ「エレン、夜の立体機動については今夜私が優しく教えてあげてもいい」
エレン「じゃあいいや知らなくても」
ミカサ「遠慮しなくていい」グイグイ
エレン「いーやーだー!」ジタバタジタバタ
36 : ◆H4iwFNXQsw:2013/09/02(月) 18:43:10 ID:YGRfFQo.
ジャン「まあ……ライナーなら、大丈夫だろ。たぶん。その辺の分別はあるって」
アルミン「うん。ライナーだし。大丈夫だよ。きっと」
マルコ「ライナーだもんね、大丈夫だよね。おそらく」
ベルトルト「うーん、どうかなぁ……?」
ユミル「ふわっふわした意見だな。参考にもなりゃしねえよそれだと」ケッ
アルミン「だって、こればっかりはねぇ……」
マルコ「ちょっと僕らにはわからないっていうか……」
ベルトルト「口出しできない領域だよね、ある意味……」
ジャン「むしろ俺たちに何を言えと」
ユミル「最後に抜いたのいつー?」プーックスクス
ジャン「お前そういうの本当やめろって」
37 : ◆H4iwFNXQsw:2013/09/02(月) 18:44:22 ID:YGRfFQo.
ーー 同刻 納屋
ーー ザーーーーーーーーーーーーッ!!
サシャ「雨も風も収まりませんねー。ひどくなる一方ですよ?」
ライナー「さっきのほうがまだマシな天気だったな……まだしばらくは、ここに足止めか」
サシャ「ですねー」ユラユラ
ライナー(上着の肩幅、大分余ってるな……一回り違えば当然か)
ライナー(改めて見ると、こいつの肩かなり細いんだな……これでも、女子では鍛えてるほうなんだよな?)
ライナー「……サシャ、メシはちゃんと食えよ」
サシャ「なんですか突然。毎日三食しっかり食べてますよ?」
ライナー「本当か? 我慢しなくてもいいんだぞ? パンだけじゃ偏るからな、肉だけじゃなく野菜も取れよ?」
サシャ「言われなくてもちゃんと食べますよー」ユラユラ
38 : ◆H4iwFNXQsw:2013/09/02(月) 18:45:34 ID:YGRfFQo.
サシャ「それよりも、ずーっと胡座と腕組みじゃ疲れません? もっと楽にしたらどうですか? 崩してもいいんですよ?」ユラユラ
ライナー「……じゃあ、足だけ」モソモソ
サシャ「ちゃんと伸ばしていいんですよー? 折り曲げたままだと肘掛けみたいでいいですけど」ポフポフ
ライナー「こら、腕のせるんじゃない。……さっきから落ち着きがないな、お前」
サシャ「……実は、ちょっと楽しくて」エヘヘ
ライナー「楽しい?」
サシャ「だって、いつもは見回りの時間を気にしながらやってるでしょう? 外に出かけても門限がありますし」
サシャ「ーーでも今は、正真正銘二人っきりじゃないですか」
39 : ◆H4iwFNXQsw:2013/09/02(月) 18:47:11 ID:YGRfFQo.
ライナー「……」
サシャ「……?」
サシャ(今日のライナーはいつも以上に黙りこむことが多いですね……あ、枝毛)チョイチョイ
ライナー(……サシャの言う通りだ)
ライナー(誰も来ない、誰もいない……見回りの時間を気にする必要もない……)
ライナー(もし仮に、最後まで行っても……)
ライナー(……いやいや、何考えてるんだ俺は)
ライナー(………………でも抱いてもいいって言ったよな、さっき)
40 : ◆H4iwFNXQsw:2013/09/02(月) 18:48:19 ID:YGRfFQo.
サシャ(あたたかい……返したくないなぁ、上着……)ギューッ
サシャ(これって、こんなにあったかいものでしたかねー……?)ヌクヌク
サシャ(もしかすると、男子だけ素材が違うのかもしれませんね。聞いてみましょうか)ヌクヌク
サシャ「あの、ーーひゃっ!?」 ーーギュッ
サシャ「え、あの、ちょっと……ライナー? ど、どうしました?」
ライナー「……こっち向くな。おとなしくしてろ」ボソッ
サシャ(ひぇっ……み、耳元……!)
ライナー「……返事は?」
サシャ「は、はいぃ……///」
サシャ(心臓の音、聞こえそう……や、顔、熱い……///)ドキドキドキドキ
41 : ◆H4iwFNXQsw:2013/09/02(月) 18:49:52 ID:YGRfFQo.
ライナー「……確かにあったかいな、お前」
サシャ「でっ、でしょう……?」ドキドキドキドキ
サシャ(クリスタの時は、全然恥ずかしくなかったのに……おかしいですね……///)ドキドキドキドキ
サシャ(わ、私……この後、どうしたらいいんでしょう……?///)ドキドキドキドキ
ライナー(なんでこいつは抵抗しないんだろうな……)
ライナー(男に後ろから抱きつかれてんだぞ? 普通は逃げるだろ?)
ライナー(……)
ライナー(あー、くそ……………………………………………………………………もう無理)
45 : ◆H4iwFNXQsw:2013/09/02(月) 19:31:57 ID:YGRfFQo.
ーー 同刻 食堂
ユミル「それでさ」
ジャン「!? まだ続くのかよこの話……もういいって……」
ユミル「まだまだ終わらないんだなーこれが。……で、そういうことってさ、段階踏んで徐々に覚えてくもんだろ? お互いさ」
ユミル「どうやらそっちの紳士様方は、彼女いないくせにそういう知識が豊富でいらっしゃるみたいだけどな?」チラッ
アルミン「……ノーコメントだよ、ユミル」
ユミル「まあ、先に進めるけどさ。……正直、サシャとそういう話したことねえからわかんないんだけどよ。……その」
ジャン「突然歯切れ悪くなったな。さっさと言えよ」
ユミル「……あのさ」
ユミル「もしかすると、サシャにはそっち系の知識……一切ないんじゃねえかなー、って……」
46 : ◆H4iwFNXQsw:2013/09/02(月) 19:32:40 ID:YGRfFQo.
ジャン「……え? マジ?」
ユミル「年がら年中盛ってるお前ら男どもと一緒にするなよ。女子はそういう知識に詳しくなくても別に困らないの。なぁ?」
ミーナ「ノーコメント」プイッ
アニ「黙秘」プイッ
ミカサ「ユミル。セクハラ」
ユミル「ご覧の通りだ」
ジャン「見てもわかんねえよ」
ミカサ「……ジャン、セクハラ」チッ
アニ「最低」チッ
ミーナ「豚小屋出身家畜以下」チッ
ジャン「扱いひどくねえ!?」
47 : ◆H4iwFNXQsw:2013/09/02(月) 19:33:43 ID:YGRfFQo.
ユミル「というわけでだな、私たちはそっちの純情男よりも更に更にピュアなんだよ。となると、行方不明の天然芋女は推して知るべしだろ」
アルミン「まさか、いくらなんでもそんなことあるわけーー」
クリスタ「ねえユミル、さっきからみんなで何の話してるの? 午後の立体機動訓練の話?」
ユミル「見ての通りだ」
ベルトルト「なるほど」
ジャン「納得した」
アルミン「否定できないね」
マルコ「そういうこともあるんだろうさ」
クリスタ「?」キョトン
サシャ「ライナー……? なんでここに……?」
ライナー「いや、雨宿りをしようと……じゃなかった、すまん! 外に出る!!」クルッ
サシャ「!? 待ってください出なくていいですよ! 後ろ向いて壁でも見ててくれればいいですから!」
ライナー「……わかった。終わったら言ってくれ」
サシャ「はい、急ぎますね」モソモソ
ライナー「……なんで下着姿なんだ? サシャ」
サシャ「服が濡れちゃったから着替えてたんですよ。誰か来るとは思ってませんでしたし」モソモソ
ライナー「そうか……濡れちゃったんなら、仕方ないよな……」
ライナー(ずっと前、夜中にミカサが連れてきた時はよく見えなかったが……思ってた以上に……)
ライナー「……」
ライナー「……」ゴンッ!!
サシャ「ひぇっ!?」ビクッ!!
24 : ◆H4iwFNXQsw:2013/09/02(月) 18:27:27 ID:YGRfFQo.
サシャ「……なんで扉に頭突きしたんですか?」
ライナー「いや、何もしてないぞ?」ヒリヒリ
サシャ「だって今、音もしましたし……」
ライナー「気のせいだろ」
サシャ「……まあいいですけど。それにしても、こんなところで会うなんて偶然ですよね。この納屋に何か用だったんですか?」
ライナー「んなわけあるか。お前を探しに来たんだよ」
サシャ「私? ……なんでです?」
ライナー「……迷子は迷子の自覚がないって話は本当だったんだな」ボソッ
サシャ「何か言いました?」
ライナー「なんでもない」
25 : ◆H4iwFNXQsw:2013/09/02(月) 18:28:51 ID:YGRfFQo.
サシャ「お待たせしました、もうこっち向いてもいいですよ」
ライナー「……」クルッ
ライナー(……半袖シャツ一枚に、夏物の丈の短いスカートか)
ライナー「……上着は?」
サシャ「全滅でした」
ライナー「俺の上着を貸してやるから着てろ。シャツだけだと寒いだろ」パサッ
サシャ「えっ、でもそれだとライナーが寒いんじゃありません?」
ライナー「丈夫だからいいんだ、俺は」
サシャ「じゃあ、お借りします……」パサッ
サシャ(上着……ライナーの上着……! 数週間ぶりの……!!)ドキドキドキドキ
ライナー「どうした? 羽織ってないで早く着ろ」
サシャ「そっ、袖を通していいんですか!?」
ライナー「? 当たり前だろ? 汗臭くても文句言うなよ?」
サシャ「言いません言いません言いません!!」ブンブン
26 : ◆H4iwFNXQsw:2013/09/02(月) 18:29:58 ID:YGRfFQo.
サシャ「じゃあ、失礼します……っと、結構ぶかぶかですね」ブカブカ
ライナー「サイズが一回り違うからな。……お前の分の雨具も持ってきたから、上から着ろ」
サシャ「はーい。着まーす」モソモソ
ライナー「着替え終わったら戻るぞ。クリスタやミカサが心配してたからな」グッ
ライナー「……ん?」
サシャ「? どうかしました?」モソモソ
ライナー「……開かない」グッグッ
サシャ「押してダメなら引いてみろ!」
ライナー「どっちもやった。……どこか引っかかってるみたいだな」
サシャ「なら、私が代わりましょうか? 案外あっさり開くかもしれませんし」
ライナー「特に変わらんと思うが……やってみろ」
サシャ「よーっし…………はい、開きませんね!」ガチャガチャ
ライナー「かなり古いみたいだからな、この納屋」
サシャ「コニーが朝直してたんですけどねー、ここ」
27 : ◆H4iwFNXQsw:2013/09/02(月) 18:31:11 ID:YGRfFQo.
サシャ「ん? ……ということは、私たち閉じ込められたってことですか?」
ライナー「そういうことだな。……天気も収まらないし、少し様子を見るか」
サシャ「そうしましょうか。苦労してここから出ても、またびしょ濡れになっちゃうでしょうし」
ライナー「……悪い。俺が来た意味なかったな」
サシャ「そんなことないですよ! 一人でいても心細かったので、来てもらえて助かりました!」ブンブン
サシャ「というか、お手数かけてすみません……しかも巻き込む形になっちゃいましたし……」ショボーン...
ライナー「こっちが勝手に探しに来たんだ。気に病まなくていい」ポンポン
サシャ「……髪濡れてますから、ライナーの手も濡れちゃいますよ?」
ライナー「そうだな、大変だ」ポンポン
サシャ「そうですよ、大変ですよ」
サシャ(……よくよく考えたら、私を探しにこの雨の中来てくれたってことですよね)
サシャ(不謹慎かもしれないですけど……嬉しいなぁ)
ライナー「立ってても仕方ないな。座るか。お前も雨具脱いでいいぞ」パサッ
サシャ「はーい。……あ、ちょっと待ってください」ゴソゴソ
ライナー「……それ、ハンカチか?」
サシャ「はい。直に座るよりはマシですよね、どうぞ」ファサッ
ライナー「どうぞって……洗ったばかりなんじゃないのか?」
サシャ「こうなったら全部後からやり直すつもりなのでいいですよ。気にしないでください」
ライナー「悪いな、助かる」
サシャ「いいえ、こちらこそ。……そうだ、しばらくここにいるんですよね? 上着返しましょうか?」
ライナー「いや、ここを出るまで着てていいぞ」
サシャ「でも、それだとライナーが寒くないですか?」
ライナー「余計な心配はしなくていい。着てろ」
29 : ◆H4iwFNXQsw:2013/09/02(月) 18:33:51 ID:YGRfFQo.
サシャ「そうだ、寒くなってきたら私に抱きつくといいですよ! クリスタが私のことあったかいって言ってましたから!」
ライナー「……は?」
サシャ「というわけで、私が前に座りますね!」ストンッ
ライナー「……」
サシャ「……」
ライナー「………………………………いいのか?」
サシャ「何がですか? ……あ、向きあったほうがよかったですかね? クリスタは私の背中に抱きついてたから、こっちのほうがいいと思ったんですけど」
ライナー「いや、そうじゃなくてだな……」
サシャ「……?」キョトン
ライナー(……なんだ、この状況)
30 : ◆H4iwFNXQsw:2013/09/02(月) 18:34:48 ID:YGRfFQo.
サシャ「そうだ! どうせだから何かお話ししましょうよ。このまま黙ってても暇ですし」ユラユラ ヒョコヒョコ
ライナー「その前に、髪ほどいてくれないか? 目の前で動くから気になる」
サシャ「あ、どうぞどうぞ。いいですよ」
ライナー「……」
サシャ「……?」ユラユラ ヒョコヒョコ
ライナー(……俺がほどけばいいのか)
ライナー「……ほどくぞー」シュルッ...
サシャ「はーい」ユラユラ
ライナー「こら、動くな」
31 : ◆H4iwFNXQsw:2013/09/02(月) 18:35:49 ID:YGRfFQo.
ライナー「……蝶、つけてないんだな」
サシャ「なくしたくないので、訓練の時はつけてないんですよ。今日の午後は立体機動でしたし。……でも、この前ハンバーグ作ってた時はちゃんとつけてましたよ?」
ライナー「そうだったのか? 気づかなかった」
サシャ「二人ともそれどころじゃありませんでしたしねー、この前は」
ライナー「そういや、指はもう治ったか?」
サシャ「ええ、おかげさまで」
ライナー「そうか、よかった」
サシャ「見ます?」
ライナー「いや、治ったんならいい」
32 : ◆H4iwFNXQsw:2013/09/02(月) 18:37:00 ID:YGRfFQo.
ーー 同刻 食堂
ーー ザーーーーーーーーーーーーッ!!
ミカサ「……」ソワソワ
エレン「ライナーに任せときゃ大丈夫だって、ミカサ」
アルミン「そうだよ。もしかしたら二人でどこかに避難して、動けなくなってるのかもしれないし」
ミカサ「なら、なおさら助けに行かないと」ソワソワ
ユミル「なあ……まさかとは思うが、おっぱじめたりしてねえよなあいつら」
ミカサ「何を言い出すのユミル」ガタッ
33 : ◆H4iwFNXQsw:2013/09/02(月) 18:38:39 ID:YGRfFQo.
ユミル「もちろん、まだ見つかってない……ってのも充分あり得るんだが」
ユミル「訓練所の端から端まで探したって、いくらなんでも一時間もかかるわけないだろ」
ユミル「今ぐらいの時間なら……そうだな、そろそろ一旦帰ってきて、中にいなかったか聞きに来てもいい頃合いじゃないか?」
ミカサ「……一理ある」
ユミル「だろ? つまり、帰ってきてないってことはそれなりの理由があるわけだよな」
ユミル「アルミンの推測通り、仮にどこかに避難してると仮定して、だ」
ユミル「密室に男女が二人だろ? ……となったら、やることは一つしかないよな?」
34 : ◆H4iwFNXQsw:2013/09/02(月) 18:40:09 ID:YGRfFQo.
アルミン「でもさ、まだ付き合ってないんだよね? あの二人。心配しすぎじゃない?」
ユミル「いや、あの二人に限ってそれは当てはまらないだろうよ」
ミカサ「……何を言いたいの?」
ユミル「だからさー、あの二人って、そういう段階に行くために必要な手順を一切踏んでないだろ?」
ユミル「普通はさ、えーっと、告白して手ぇ繋いでキスして? ……まあ色々省くけど、全部逆なわけだろ? あの二人の場合」
ユミル「だから、その延長でおっぱじめちまう可能性が……あるんじゃねえのかなぁって……」
ミーナ「ズッコンバッコン……」
アニ「……開拓地送り?」
ミカサ「サシャが危ない」ガタガタッ
35 : ◆H4iwFNXQsw:2013/09/02(月) 18:41:29 ID:YGRfFQo.
ユミル「いやいや、流石に昼間っから愛情たっぷり夜の立体機動なんかしないだろ。……なぁ紳士諸君?」チラッ
ジャン「……」プイッ
マルコ「……」プイッ
ベルトルト「……」プイッ
アルミン「……」プイッ
コニー「ところで夜の立体機動ってなんだ?」
エレン「知らねえ。でも危ねえよな、夜に立体機動なんて」
コニー「そうは言うけどよ、訓練場の森の中だってだいぶ暗いぞ?」
ミカサ「エレン、夜の立体機動については今夜私が優しく教えてあげてもいい」
エレン「じゃあいいや知らなくても」
ミカサ「遠慮しなくていい」グイグイ
エレン「いーやーだー!」ジタバタジタバタ
36 : ◆H4iwFNXQsw:2013/09/02(月) 18:43:10 ID:YGRfFQo.
ジャン「まあ……ライナーなら、大丈夫だろ。たぶん。その辺の分別はあるって」
アルミン「うん。ライナーだし。大丈夫だよ。きっと」
マルコ「ライナーだもんね、大丈夫だよね。おそらく」
ベルトルト「うーん、どうかなぁ……?」
ユミル「ふわっふわした意見だな。参考にもなりゃしねえよそれだと」ケッ
アルミン「だって、こればっかりはねぇ……」
マルコ「ちょっと僕らにはわからないっていうか……」
ベルトルト「口出しできない領域だよね、ある意味……」
ジャン「むしろ俺たちに何を言えと」
ユミル「最後に抜いたのいつー?」プーックスクス
ジャン「お前そういうの本当やめろって」
37 : ◆H4iwFNXQsw:2013/09/02(月) 18:44:22 ID:YGRfFQo.
ーー 同刻 納屋
ーー ザーーーーーーーーーーーーッ!!
サシャ「雨も風も収まりませんねー。ひどくなる一方ですよ?」
ライナー「さっきのほうがまだマシな天気だったな……まだしばらくは、ここに足止めか」
サシャ「ですねー」ユラユラ
ライナー(上着の肩幅、大分余ってるな……一回り違えば当然か)
ライナー(改めて見ると、こいつの肩かなり細いんだな……これでも、女子では鍛えてるほうなんだよな?)
ライナー「……サシャ、メシはちゃんと食えよ」
サシャ「なんですか突然。毎日三食しっかり食べてますよ?」
ライナー「本当か? 我慢しなくてもいいんだぞ? パンだけじゃ偏るからな、肉だけじゃなく野菜も取れよ?」
サシャ「言われなくてもちゃんと食べますよー」ユラユラ
38 : ◆H4iwFNXQsw:2013/09/02(月) 18:45:34 ID:YGRfFQo.
サシャ「それよりも、ずーっと胡座と腕組みじゃ疲れません? もっと楽にしたらどうですか? 崩してもいいんですよ?」ユラユラ
ライナー「……じゃあ、足だけ」モソモソ
サシャ「ちゃんと伸ばしていいんですよー? 折り曲げたままだと肘掛けみたいでいいですけど」ポフポフ
ライナー「こら、腕のせるんじゃない。……さっきから落ち着きがないな、お前」
サシャ「……実は、ちょっと楽しくて」エヘヘ
ライナー「楽しい?」
サシャ「だって、いつもは見回りの時間を気にしながらやってるでしょう? 外に出かけても門限がありますし」
サシャ「ーーでも今は、正真正銘二人っきりじゃないですか」
39 : ◆H4iwFNXQsw:2013/09/02(月) 18:47:11 ID:YGRfFQo.
ライナー「……」
サシャ「……?」
サシャ(今日のライナーはいつも以上に黙りこむことが多いですね……あ、枝毛)チョイチョイ
ライナー(……サシャの言う通りだ)
ライナー(誰も来ない、誰もいない……見回りの時間を気にする必要もない……)
ライナー(もし仮に、最後まで行っても……)
ライナー(……いやいや、何考えてるんだ俺は)
ライナー(………………でも抱いてもいいって言ったよな、さっき)
40 : ◆H4iwFNXQsw:2013/09/02(月) 18:48:19 ID:YGRfFQo.
サシャ(あたたかい……返したくないなぁ、上着……)ギューッ
サシャ(これって、こんなにあったかいものでしたかねー……?)ヌクヌク
サシャ(もしかすると、男子だけ素材が違うのかもしれませんね。聞いてみましょうか)ヌクヌク
サシャ「あの、ーーひゃっ!?」 ーーギュッ
サシャ「え、あの、ちょっと……ライナー? ど、どうしました?」
ライナー「……こっち向くな。おとなしくしてろ」ボソッ
サシャ(ひぇっ……み、耳元……!)
ライナー「……返事は?」
サシャ「は、はいぃ……///」
サシャ(心臓の音、聞こえそう……や、顔、熱い……///)ドキドキドキドキ
41 : ◆H4iwFNXQsw:2013/09/02(月) 18:49:52 ID:YGRfFQo.
ライナー「……確かにあったかいな、お前」
サシャ「でっ、でしょう……?」ドキドキドキドキ
サシャ(クリスタの時は、全然恥ずかしくなかったのに……おかしいですね……///)ドキドキドキドキ
サシャ(わ、私……この後、どうしたらいいんでしょう……?///)ドキドキドキドキ
ライナー(なんでこいつは抵抗しないんだろうな……)
ライナー(男に後ろから抱きつかれてんだぞ? 普通は逃げるだろ?)
ライナー(……)
ライナー(あー、くそ……………………………………………………………………もう無理)
45 : ◆H4iwFNXQsw:2013/09/02(月) 19:31:57 ID:YGRfFQo.
ーー 同刻 食堂
ユミル「それでさ」
ジャン「!? まだ続くのかよこの話……もういいって……」
ユミル「まだまだ終わらないんだなーこれが。……で、そういうことってさ、段階踏んで徐々に覚えてくもんだろ? お互いさ」
ユミル「どうやらそっちの紳士様方は、彼女いないくせにそういう知識が豊富でいらっしゃるみたいだけどな?」チラッ
アルミン「……ノーコメントだよ、ユミル」
ユミル「まあ、先に進めるけどさ。……正直、サシャとそういう話したことねえからわかんないんだけどよ。……その」
ジャン「突然歯切れ悪くなったな。さっさと言えよ」
ユミル「……あのさ」
ユミル「もしかすると、サシャにはそっち系の知識……一切ないんじゃねえかなー、って……」
ジャン「……え? マジ?」
ユミル「年がら年中盛ってるお前ら男どもと一緒にするなよ。女子はそういう知識に詳しくなくても別に困らないの。なぁ?」
ミーナ「ノーコメント」プイッ
アニ「黙秘」プイッ
ミカサ「ユミル。セクハラ」
ユミル「ご覧の通りだ」
ジャン「見てもわかんねえよ」
ミカサ「……ジャン、セクハラ」チッ
アニ「最低」チッ
ミーナ「豚小屋出身家畜以下」チッ
ジャン「扱いひどくねえ!?」
47 : ◆H4iwFNXQsw:2013/09/02(月) 19:33:43 ID:YGRfFQo.
ユミル「というわけでだな、私たちはそっちの純情男よりも更に更にピュアなんだよ。となると、行方不明の天然芋女は推して知るべしだろ」
アルミン「まさか、いくらなんでもそんなことあるわけーー」
クリスタ「ねえユミル、さっきからみんなで何の話してるの? 午後の立体機動訓練の話?」
ユミル「見ての通りだ」
ベルトルト「なるほど」
ジャン「納得した」
アルミン「否定できないね」
マルコ「そういうこともあるんだろうさ」
クリスタ「?」キョトン
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