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しんのすけ「フシギなちからが、そなわったゾ!」

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Part1
1 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/04/07(土) 00:04:56.91 ID:J1rHTBq80
カザマ「ほら、しんのすけ、早く行くぞ」
風間君がオラに手を差し伸べた。西日が強く差し込み、焦点を合わせるのに時間がかかる。黒い陽炎のようにぼやけた風間君は、徐々にクリアになって歯を覗かせた。ため息交じりに笑った。
カザマ「みんな待ってるんだからさ」
いつもの公園では変わらぬ顔ぶれが揃っていた。
五人ともスーツで、背丈も子供のころとはえらい違いだ。
それもそうだ。あの時から、20年近く経ったのだから。

4 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/04/07(土) 00:08:23.04 ID:J1rHTBq80
ネネ「遅いわよ」
幼いころからの赤毛は長くのび、キューティクルが幾層にも重なっていて美しい。昼間は結っていたのだろう、軽くウェーブがかかっている。
艶やかな前髪からのぞく細い眼はひどく魅力的で、マサオ君がさきほどからちらちらと盗み見ているのが分かった。
オラが小さく笑うと、ネネちゃんは、しんちゃんは変わらないわね、と付け足し笑った。
マサオ「ほんとだよ。むかしっから、遅刻ばっかしてたよな」
そうは言ったものの、マサオ君も笑っていた。
耳まで隠すミディアムヘアは、オニギリ頭の面影もない。あの頃からいちばん変わったのは、彼なのかもしれない。
褐色の肌色は健康的で、顔つきから自身が満ち溢れ、そこここにこぼれおちていた。真っ赤なネクタイも、その表われか。

8 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/04/07(土) 00:12:56.52 ID:J1rHTBq80
ボー「……」
ボーちゃんは相変わらず、というわけでもない。
以前にも増して無口になったが、それは美徳だ。沈黙は金である。
そんなことよりも、口数に比例するように身長が伸びた。180はゆうに超え、それでいて手足は細い。
スタイリッシュなストライプスーツを身につけ、煙草をくゆらせている。
カザマ「さて、やっとそろったな」
リーダーは今も昔も彼だ。
スーツの胸元には老若男女問わず知っている大企業のバッチがまぶしい。
地味なスーツだが、ブランド物のカフスボタンや靴のセンスはほのかな色気を振りまいている。いやらしくない程度に薫る香水も、きっと高級品なのだろう。
すっきりとした短髪はみていて気持ちがよかった。

10 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/04/07(土) 00:17:40.68 ID:J1rHTBq80
しんのすけ「かすかべ防衛隊……」
オラが思いついたようにこぼすと、八つの目はいっせいにこちらを向いた。
マサオ「……懐かしいな」
カザマ「……ああ」
禁句を口にしたようだ。オラたちは、あの日愛する防衛隊を解散したのだった。
ネネ「……懐かしいね」
ネネちゃんが宝物を扱うように、繰り返した。

11 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/04/07(土) 00:18:25.21 ID:J1rHTBq80
オラたちは幼稚園の卒園式の帰り、最後だからとお泊まり会をした。
たしか、オラの家の二階で集まったのだと思う。
夜も更け、マサオ君が船をこぎ出したころボーちゃんが言った。「星が見たい」。
ネネちゃんは目を輝かせて賛成し、カザマ君の声も珍しく上ずっていた。
上気した頬のまま、ネネちゃんはマサオ君を起こし、オラたち五人は裏山に向かった。
たしかオラが高いところの方が見やすいゾ、だとかなんとか言ったのだと思う。
昔から、振り回して迷惑をかけてばかりだ。そして、今も。


12 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/04/07(土) 00:19:18.02 ID:J1rHTBq80
裏山の中腹、大きな木の佇立する下で、星を見た。
想像していたよりも空はかすみ、薄められた夜空に星はまばらだった。
それでも、そのころのオラたちにとって、世界はあまりにも広かった。遠かった。
マサオ君が泣きだしたのを機に、帰ることにした。
家に誰もいないとなって両親を心配させるのは気が引けたし、純粋に、みんな怖くなっていたのかもしれない。早足で山を下った。
その途中だった。ボーちゃんが指さす先に流れ星が瞬いたのだ。
ネネちゃんは喜び、マサオ君は泣きやんだ。カザマ君は「おかしいな」と屁理屈を並べようとしていたものの、そんな時間もなかったのだ。
光の玉は徐々に大きくなり、マサオ君がまた泣き出す前にオラたちの前に落ちた。

13 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/04/07(土) 00:19:44.98 ID:J1rHTBq80
落ちたのだ。比喩などではなく、まぎれもなく墜落した。
オラたち五人は気を失い、五人がいっせいに目が覚めたのは、新聞記事に見出しが躍った翌日の事だった。
『K市で園児五人の変死体が発見される』

17 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/04/07(土) 00:24:38.20 ID:J1rHTBq80
寝ずの番をしていたオラの父ちゃんと母ちゃんは、怒っているのか泣いているのかわからないくらい顔をぐちゃぐちゃに歪ませた。
たぶん、うれし泣きだった。
父ちゃんの伸びた髭が痛かったのを覚えている。後でみんなに訊いたら、どの家もそんなふうな反応だったらしい。
そうやって、オラたちは蘇った。

18 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/04/07(土) 00:25:47.32 ID:J1rHTBq80
はるばる蘇ったオラたちを待っていたのは、星なんか比べ物にならないほどにまぶしい、フラッシュの光だった。
医療ミス、という言葉で片付けられるまでに一週間ほどかかり、その間は連日オラたちのニュースで持ちきりだった。
あのとき、父ちゃんと母ちゃんがマスコミを怒鳴りつけていなかったら、オラはぐれたりひきこもっていたりしてしまっていたかもしれない。
父ちゃん母ちゃんには、本当に頭が下がる。
あと、ワイドショーでまつざか先生が自慢げにオラたちのことを話していたのも忘れていない。

20 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/04/07(土) 00:32:43.03 ID:J1rHTBq80
さて、やっと本題に入れる。
かくして大変な目にあったオラたちだが、再び集まるともっと大変なことになった。
みんながフシギなちからを手に入れていたのだ。
それを本能的に恐れたオラたちは、それを五人の秘密にし、かすかべ防衛隊を解散することにした。
子供ながらにも、危険な力だとはわかっていたのだ。
そして時は流れ、五人が五人就職し生活を持つようになった。
ネネちゃんに至っては、結婚もしている。
今日まで定期的に集まってはいたが、それはあくまで旧友としてだ。
いつの間にか防衛隊という言葉自体避けられ、タブーに近いものとなっていた。
そしてーー

21 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/04/07(土) 00:33:44.94 ID:J1rHTBq80
カザマ「愛ちゃんの屋敷はおそらくフェイクだ」
カザマ君がベンチに愛ちゃんの屋敷の見取り図を広げ、説明を始めた。
マサオ「フェイクっつーと?」
ネネ「どこか別の場所に隠れてるってこと?」
カザマ「そうなんだけど、そうじゃない」
カザマ君はニヒルにわらってみせた。
そして、見取り図の中心を人差し指でトントンと叩き、言った。
カザマ「地下だ」

22 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/04/07(土) 00:34:07.01 ID:J1rHTBq80
マサオ「根拠は?」
カザマ「昔の地図と比較したら、屋敷の下には防空壕があった。こんな辺鄙な土地に大企業の令嬢が引越してきたのがそもそもきな臭い。それに、屋敷の前の尋常じゃない警備はこの町に必要ない」淡々と言葉を並べた。
ネネ「愛ちゃんは無事かしら」
ネネちゃんが憂いを帯びた顔で言う。
ボー「無事でいてくれないと、困る」
ボーちゃんが口を開いた。渋みのかかった低音はどこかに懐かしさが残っていた。
残ったみんなが顔を合わせ、頷いた。

23 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/04/07(土) 00:34:28.38 ID:J1rHTBq80
カザマ「行こう、愛ちゃんのもとへ」
マサオ「しんちゃんのためにも」
ネネ「愛ちゃんのためにも」
しんのすけ・ボー「かすかべ防衛隊」
オラとボーちゃんの声が重なった。
みんな「ファイヤー!」

24 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/04/07(土) 00:37:36.98 ID:J1rHTBq80
屋敷の前でオラたちを迎えてくれたのは、筋肉でスーツが張り裂けそうな黒人二人だった。
樽のような腕を前に組み、サングラスをかけている。夜なのにうっとおしい奴らだ。
少し離れた場所でそれを確認し、ため息をついた。
マサオ「俺が行くよ」
マサオ君が先陣を切って二人の前に向かった。
右手を水平に挙げ、手のひらで拳銃をかたちどった。
二人の屈強な男は、警戒の濃い色を帯びさせ、組んでいた腕をほどいた。
だが、遅かった。
マサオ君は突き出した手を軽く握り、はじいて音を鳴らした。
途端、片方の男が悲鳴を上げる。

25 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/04/07(土) 00:37:58.54 ID:J1rHTBq80
悲鳴をあげた男の背中が燃えていたのだ。
うろたえる、片割れ。マサオは続けざまに反対の指もならす。
パチン
音に呼応するように、もう一人の男も悲鳴をあげた。
足もとから炎が立ち上っているのだ。
ーーパイロキネシス
念発火能力だ。
二人の男はもがきながらも無線機のようなものを操作しようとする。
マサオは指揮者のように、両手を広げ、ならした。
二つの無線機が音を立てて爆発した。

26 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/04/07(土) 00:38:03.78 ID:pjkvnqRP0


27 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/04/07(土) 00:39:30.58 ID:YS6KXODM0
マサオくんマスタングかよww

28 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/04/07(土) 00:40:46.40 ID:J1rHTBq80
二つの火だるまは、すぐに跡形もなく消えた。
後にはススのようなものが散るのみで、それもすぐに夜の闇に紛れてしまった。
隠れていたネネちゃんは悪戯っぽく口角をあげ「その能力がないマサオ君は、今頃フリーターとかやってると思うわ」と言った。みんなが小さく笑った。
隠れていた場所に戻ってきたマサオ君は、笑っているみんなをみて首をかしげた。

29 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/04/07(土) 00:41:19.36 ID:J1rHTBq80
改めて、みんな揃って門の前に立つ。
刑務所の出入り口のように厳重なそれは、当然だが施錠されていた。
ずい、と一歩前に出たのはボーちゃんだ。
ボーちゃんは目をつむり、両手をひろげて突き出した。
すると、地鳴りにも近い音が局地的に起こり、どっしりとした鉄の壁がかたかたと震え始めた。
施錠が解除される音が何度も聞こえる。
そして、手を触れることなくドアは開かれた。
ーーサイコキネシス
念動力能力だ。

30 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/04/07(土) 00:41:52.94 ID:J1rHTBq80
ボー「急ごう!」
そう言ったボーちゃんの後にみんなが続く。
いちばん前はオラの定位置だったんだけどなあ。
カザマ「ちょっと待って!」
カザマ君が声をはりあげ、みんなが足を止めた。
ネネ「どうしたの?」
ネネちゃんの問いを黙殺し、カザマ君は地に手をつけた。


31 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/04/07(土) 00:42:37.53 ID:2WFNgfiP0
鼻水は念動力で動かしてんだな

32 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/04/07(土) 00:43:09.18 ID:ENryHmJ10
ボーちゃんは元からな気が………

33 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/04/07(土) 00:46:16.68 ID:J1rHTBq80
みんなはカザマ君の言うとおり、ぴたりと動きをとめ彼の次の言葉を待った。
マサオ君のつばをのむ音が、やけに大きく聞こえる。
カザマ「ボーちゃん!」
ボーちゃんはすぐさまカザマ君のもとに駆け寄り、何度か頷くとすぐに両手を広げて念を込めた。
すると、近くの茂みからなになやら音がした。
しばらく待つと、赤いレーザーを発する機械が転がりでた。
即座にマサオ君がそれを焼いた。
おそらく、センサーを発する警報装置の類だろう。

34 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/04/07(土) 00:46:48.24 ID:OMLFoCe20
殺した訳じゃあねぇよな

35 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/04/07(土) 00:48:39.29 ID:J1rHTBq80
カザマ君はふうとひとここちついた。
彼は、地面の意志を、いわゆる残留思念といったものを読み取ったのだ。
ーーサイコメトリー
接触分析能力だ。
カザマ「こっちだ!」
カザマ君は正門を避け、裏庭にみんなを導いた。
オラ、いいとこ無しだゾ……。

36 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/04/07(土) 00:49:24.73 ID:fcvwb0Ge0
さてしんのすけの能力が気になるな

37 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/04/07(土) 00:51:41.30 ID:wNCbuSI60
これは愛ちゃんを助けにいってるのか

38 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/04/07(土) 00:55:42.26 ID:pjkvnqRP0
逆に愛ちゃんが敵なのかも

39 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/04/07(土) 00:56:47.12 ID:J1rHTBq80
裏庭は手入れの行きとどいたものだった。
噴水はこんこんとわき上がる水を湛え、花は話しあったかのように一斉に咲いている。
しんのすけ「夜なのに、不気味だゾ……」
カザマ君はオラの言葉も無視し、地に手をついた。
しばらくすると、マサオ君に目配せをする。
マサオ君は頷き、指を鳴らした。
噴水のわきの一帯が燃え上がり、四角く切り取られたコンクリートの出入り口を露わにした。
ボーちゃんが四角いパネル状の入り口を持ち挙げ、中を覗くと暗闇に梯子がおりていた。

40 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/04/07(土) 01:02:18.97 ID:pL0C8iVN0
大佐かっけぇ

41 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/04/07(土) 01:04:27.30 ID:ot8t1q2o0
しえん

42 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/04/07(土) 01:04:53.71 ID:J1rHTBq80
梯子を降りると学校の廊下ほどの通路が一本伸び、遠くの壁に松明がかかっていた。
ところどころに苔が群生しているようで、どうにも足もとが不安定だ。
しばらく待って、目を暗闇に慣れさせることにした。
しばらくして、景色がしっかりとした輪郭を持つようになった。
前を歩いていたカザマ君とマサオ君は壁伝いに歩き始めた。
突然、いちばん後ろを歩いていたネネちゃんが言った。
「カザマ君、あと二歩。マサオ君、あと五歩」
二人は足を止めて、ネネちゃんを振り返った。
ネネちゃんは子供のように笑っていた。

43 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/04/07(土) 01:07:33.25 ID:RltJjtNv0
いない者

44 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/04/07(土) 01:09:35.80 ID:0JFSlV1P0
何者でちゅか

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