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キモオタ「我輩がおとぎ話の世界に行くですとwww」ティンカーベル「そう」
Part96


432 :◆oBwZbn5S8kKC :2015/08/13(木)23:45:05 ID:L4X
ヘンゼル「……それなら魔法は使えない。いや、使わせられない」
グレーテル「……そっか、なんだか……残念……」
雪の女王「少しなら耐えられるだろうし、訓練で多少は更に耐えられるようになるだろうが…しかし、私の家族である以上はグレーテルの魔法使用は禁止だ」
雪の女王「どうしても魔法を使わなければいけないときは仕方がないが、それでも避けられる限りは避ける事。感情に任せて魔法を行使しない事」
雪の女王「わかったか?ヘンゼル、グレーテル。キミ達が手を繋げばそれこそ何でもできるかもしれないが、その代償はグレーテルが払う事になる。それを忘れないようにな」
ヘンゼル「わかった…使わなければ済む話だもんね、問題は無いよ」
グレーテル「うん……どうしても困った時だけ……約束する……」
雪の女王「よし、理解してくれたようだな。だったら大丈夫だろう。ああ、それと…最後に一つだけ」
ヘンゼル「なに?まだ決まりごとがあるの?多すぎると思うけど」
雪の女王「大切な事さ、いいか?二人とも今日から私の家族だ、だから家族には遠慮しない事」
雪の女王「困った事があれば相談する、一人で考え込まずに頼っても良い。だから自分が一人だなんて思わない事、わかったな?」
グレーテル「うん、わかった……女王さま……よろしくね……」
雪の女王「ああ、よろしく。それでヘンゼルはどうだ?約束できるな?」
ヘンゼル「家族だなんて言ったって血もつながって無いし今日会ったばかりなんだ、そうそう信用は出来ないよ。でもね女王……」
ヘンゼル「そうなれるようには……いつかはそうなれるように努力、してみるのもいいかなって…僕はちょっと、思ってるよ」

433 :◆oBwZbn5S8kKC :2015/08/13(木)23:52:27 ID:L4X
今日はここまで
タールぶっかけてくる魔女と薪に変えて燃やす魔女はそれぞれおとぎ話の登場人物です
タールの方は魔女だと言及されてなかったかな?
ヘンゼルとグレーテル。とある消滅したおとぎ話編 次回に続きますs

434 :名無しさん@おーぷん :2015/08/14(金)00:42:56 ID:MVe
乙です!雪の女王好きだ。
今回の話を見ると、二人が何で今は現実世界にいるのか気になるなぁ……
次の更新も楽しみにしてる!

435 :名無しさん@おーぷん :2015/08/14(金)01:27:10 ID:IFm
乙です!
ほんとに女王いい人やなぁ……。
続き待ってます!!

445 :◆oBwZbn5S8kKC :2015/08/15(土)23:48:16 ID:CQq
ヘンゼルとグレーテルが雪の女王の宮殿に住むようになってしばらく後
雪の女王の世界 雪の女王の宮殿 書庫
・・・
カイ「……」ペラッペラッ
トコトコ
グレーテル「カイお兄ちゃん……ちょっと……いい……?」
カイ「グレーテルか。なんだ、言ってみろ」
グレーテル「女王さまが絵本読んでくれるって……好きな絵本とって来て良いよって言ってくれた……だから……【マッチ売りの少女】探してるの……」
カイ「【マッチ売りの少女】か、あれはこの書庫には無いな。いや、あるにはあるけどあれを軽々しく棚から出すのもな……」
グレーテル「……?」
カイ「いや、何でもねぇよ。とにかくこの書庫にはお前に渡せる【マッチ売りの少女】は無い、女王に買って欲しいってねだってみろ」
グレーテル「でも……ここに住ませてもらってるのに……おねだりまでできない……しちゃだめだよ……」
カイ「あいつはお前に家族だって言ったんだろ?だったらそんな事気にしてる方があいつは傷付くぜ。住ませてもらってるなんて家族は言わないからな」
グレーテル「そうなの……?」
カイ「ああ。そうだな…『大好きな女王さまに読んで欲しいから新しい絵本買って』とでも言えば喜んで買ってくれるだろうさ」フフッ
グレーテル「うん……お願いしてみる……ありがとうね、カイお兄ちゃん……」トコトコ

446 :◆oBwZbn5S8kKC :2015/08/15(土)23:50:47 ID:CQq
カイ「さて、続きを読むとするか」ペラッ
スタスタ
ヘンゼル「カイ。読書の邪魔をして悪いけど、聞きたい事があるんだ」
カイ「…お前等兄妹は俺の読書邪魔しなきゃならない決まりでもあんのかよ…お前の妹なら女王に本を読んで貰うんだとよ、女王の部屋だろうから行ってみろ」
ヘンゼル「いいや、それはグレーテルから聞いた。僕は調べ事があるから断ったよ」
カイ「調べ事?ああ、なんだか知らねぇがその調べ事とやらに使う本がどこにあるか教えろって事か?」
ヘンゼル「そう。僕達の作者……【ヘンゼルとグレーテル】の作者が書いたおとぎ話の本を全て貸して欲しい」
カイ「お前等を書いた作者か。確かこの書庫にもあったと思うけどな…ああっと、なんて名前の作者だったか忘れちまったな」
ヘンゼル「グリム兄弟。ヤーコプ・グリムとヴィルヘルム・グリム。それが僕達を運命に縛り付けた、作者の名前だ。女王に教えてもらった」
カイ「調べるとお前は言ったけどよ……それは何のためにだ?復讐の為に調べるってなら、俺は教えてやれねぇぜ」
ヘンゼル「恨んではいるけど、そんなことの為じゃないさ。僕達の作者は現実世界の時間の流れでは随分と前に死んでしまったと女王は言っていたし、復讐なんかもう叶わない」
ヘンゼル「だけど、僕は知っておきたいし知っておかないといけない。僕達を苦しめた作者が他にどんなおとぎ話を書いたのか」
カイ「……いいぜ。案内してやるよ、着いてきな」
スタスタ

447 :◆oBwZbn5S8kKC :2015/08/15(土)23:52:46 ID:CQq
ドサッ
カイ「グリム兄弟の書いたおとぎ話はこれで全部だ、用がすんだらそこの棚に戻しておけ」
ヘンゼル「随分とたくさんあるんだね。助かったよ、ありがとう、カイ」
カイ「ああ。あいつも言ってた通りこの書庫は自由に使えば良いけどよ、俺の読書の邪魔をするのは控えろ」
ヘンゼル「うん、悪かった、気をつけるよ」ペラペラッ
カイ「…なぁ、ヘンゼル。俺もあんまり野暮は言いたくないけどよ。過去の事、そんなに気にする事か?」
ヘンゼル「なんなの?突然、そんな事言って」
カイ「作者への復讐は叶わないって言ったけどよ、現実世界の人間に何かしらの報復が出来ないかって考えてるんじゃねぇのか、お前」
ヘンゼル「……」
カイ「お前達は【ヘンゼルとグレーテル】の世界を消滅させた。もう本来の結末に添う必要は無いんだろ?女王に聞いたぜ」
カイ「だったらもういいじゃねぇか。【雪の女王】の筋書きじゃあ俺はいつかはこの宮殿を後にする日が来るけどよ、お前達兄妹はそうじゃねぇんだいつまでも女王と一緒に暮らせる」
カイ「女王もお前とグレーテルが来てから家族が増えたと言って嬉しそうだ。それにお前達だってここでの生活に不満がある訳じゃあないんだろ?今、家族みんなが幸せならそれで十分だろうが」
ヘンゼル「カイ、大丈夫さ。僕は報復なんか考えちゃいない。それに女王には感謝してる、嘘じゃないよ」
カイ「……」
ヘンゼル「作者の書いた本を知っておきたいというのに深い意味なんか無いよ。おとぎ話の住人として純粋に興味があるだけさ」
カイ「そういうことならいいけどよ。ただ、一人で思いつめて無茶な事するんじゃないぞ。お前の妹も女王も俺も、そんな事望んでないからな」
スタスタ

448 :◆oBwZbn5S8kKC :2015/08/15(土)23:55:10 ID:CQq
ヘンゼル「……」ペラペラ
ヘンゼル(あの日、僕とグレーテルが悪い魔女の屋敷から逃げだして【ヘンゼルとグレーテル】を消滅させてからもう一カ月になるだろうか)
ヘンゼル(雪の女王は僕達に専用の部屋を与えてくれた、温かいベッドもそれぞれの机もある立派な部屋だ)
ヘンゼル(氷の宮殿の中は少し寒いけれど、温かい洋服も準備してくれたしあまりに寒い時は女王はあの時のように冷気を取り払ってくれた。僕はまだあの冷気吸収には慣れないけど)
ヘンゼル(宮殿での食事の準備はカイと僕達でやっている)
ヘンゼル(僕はこういうのは苦手だけど、カイは料理が得意らしい。口は相当悪いけど面倒見はいい奴だ、彼に料理を教わっているグレーテルは心なしか嬉しそうに料理をしている)
ヘンゼル(グレーテルが嬉しいなら僕も嬉しい。女王は僕達が料理をしているところをよく覗きに来るけど、なんだかんだ理由をつけてキッチンには入ってこない。カイが言うには女王は火がかなり苦手らしい、雪の女王と呼ばれるだけあると僕は納得した)
ヘンゼル(もう硬くなったパンを食べる事も、空腹をごまかす為に水をたらふく飲む事必要もなかった)
ヘンゼル(グレーテルは大好きな豆のスープを好きなだけ食べられるようになった。まだ遠慮して、少ししか食べないけど…それでも以前よりはずっと血色も良くなった)
ヘンゼル(女王は僕達によくしてくれてるし、カイはたまに嫌な奴だと思う事もあるけど基本的には悪い奴じゃない、グレーテルにだって意地悪しない)
ヘンゼル(そんな二人にグレーテルも懐いている。喋り方も変わらず以前の様な性格に戻る事もなかったけど、それでも幸せそうだ)
ヘンゼル(カイが言うように、僕もグレーテルもここでの生活には何の不満も無かった)
ヘンゼル(むしろ、僕は今では女王に感謝している。あの日、信用できなくなれば出て行くなんて言ったけれど、そんな心配は必要なかった)
ヘンゼル(女王は僕達の話を聞いてくれる、嬉しい時は一緒に喜んでくれるし、約束を破ったりすればキチンと叱ってくれた。世の中には悪い大人ばかりじゃない、魔女にも善人はいるんだと思った)

449 :◆oBwZbn5S8kKC :2015/08/15(土)23:57:06 ID:CQq
ヘンゼル(今でも、僕はあの父親だった男も悪い魔女も、作者の連中も許していない)
ヘンゼル(でも復習や報復をしようっていう気持ちは……まったく無いとは言わないけど。少なくとも今は考えていない)
ヘンゼル(憎しみは決して消えないけど、今はそれよりもグレーテルが幸せそうにしている事が僕も幸せでたまらないんだ)
ヘンゼル「……」ペラッ
ガバッ ギュッ
雪の女王「へぇ、グリム童話集か。自分達の作者の作品に興味を持ったのか?」フフッ
ヘンゼル「そうだよ、女王。何か用事?」
雪の女王「いいや、グレーテルに本を読んでやろうと取りに来たらキミの姿が見えたからな。私の事は気にせずにキミは読書を続けてくれ」フフッ
ヘンゼル「そう思うなら抱きつくのをやめて欲しいんだけど。後ろから抱きつかれて読書を続けられるほど僕は器用じゃないから」
雪の女王「そうなのか?カイは私に抱きつかれたままでも嬉しそうに読書を続けているぞ?なぁ、カイ?」
カイ「嬉しくねぇよ馬鹿。誤解を招く言い方はやめろ。それはお前を無視してるだけだ」
雪の女王「フフッ、まぁ良いじゃないか。こういう日常的なスキンシップも愛情表現として必要な事だ、そうだろグレーテル」フフッ
グレーテル「うん……だから女王さまが毎日何度も何度も私にキスするのも……なでなでするのも抱きついてくるのも……おかしい事じゃないよね……」
ヘンゼル「ちょっと待って、毎日そんな事されてるなんて初めて聞いたんだけど、僕」
ヘンゼル(前言撤回、不満はひとつだけある。女王がグレーテルを異常に可愛がっている事。これは流石に可愛がりすぎだ)

450 :◆oBwZbn5S8kKC :2015/08/15(土)23:58:45 ID:CQq
雪の女王「女の子の家族は初めてだからな、可愛がるのは当然だ。グレーテルは可愛いからな」ナデナデ
カイ「女王、あんたのスキンシップは過剰なんだよ。それより、食料庫の菓子が異様に減っていたんだが知らないか?」
雪の女王「悪いが知らないな。雪の妖精でも迷い込んでくすねて行ったんだろう。私たちは菓子なんか知らない、そうだよなグレーテル?」ナデナデ
グレーテル「うん、私達……食べてないよね……女王さま……」
カイ「…おい、ヘンゼル、お前も知らないのか?」
ヘンゼル「知らないよ、毎食キチンと食べてるのにお菓子まで勝手に食べたりしないよ」
ヘンゼル(今朝、グレーテルがカイには内緒だと言っていたキャンディの事だろうか。女王に貰ったと言っていたけど)
雪の女王「フフッ、犯人捜しをするなんて感心しないな。そんなことで家族の絆が揺らぐなら、女王の権限で今日はお菓子食べ放題にする。それで解決するだろう?」フフッ
グレーテル「お菓子……食べ放題……ビスケットも……?」
雪の女王「ああ、当然だ。さぁ、二人にも食料庫からお菓子を運ぶのを手伝ってもらおう」
カイ「おい、勝手な事を…無くなったらまた買い出しに行かなきゃなんねぇんだぞ?」
雪の女王「たまにはいいじゃないか。ああ、それと先に謝っておこう、昨晩キャンディを持ちだしたのは私だ」クスクス
カイ「そんな事だろうと思った。お前、グレーテルに甘すぎるんだよ、女王のあんたがそんなだからいくら備蓄があってもたりゃしねぇ…いざという時に困るだろ」
雪の女王「お菓子は子供を笑顔にする為の食べ物だ。子供たちが喜ぶなら隠しておくなんて勿体無いじゃないか。さぁヘンゼル、キミも手伝ってくれ」クスクス
ヘンゼル「…女王が決めた事なら従うよ、嬉しそうにしてるグレーテルをガッカリさせたくないしね」フフッ
・・・

451 :◆oBwZbn5S8kKC :2015/08/16(日)00:00:29 ID:aV7
それから数日後
雪の女王の宮殿 ヘンゼルとグレーテルの部屋
グレーテル「……お兄ちゃん……見て、この絵本……」スッ
ヘンゼル「絵本?ああ、これ僕達が初めてここに来た時に女王が言っていたおとぎ話じゃないか」
グレーテル「うん、そう……【マッチ売りの少女】……女王さまが買ってくれたの……」
ヘンゼル「そうか、よかったじゃないか。ちゃんとお礼は言った?」
グレーテル「うん……ちゃんとお礼できて偉いって……褒めてくれた……ずっと大切にする……」
ヘンゼル(少しだけ、グレーテルは笑ったように見えた。女王に贈り物を貰った事がよほど嬉しいんだろう)
ヘンゼル「ねぇ、グレーテル。この宮殿に住む事になってもう一カ月経つけど……グレーテルは幸せ?」
グレーテル「うん……幸せ……」ギュッ
グレーテル「お兄ちゃんも女王さまもカイお兄ちゃんも一緒……昔は辛いことも……悲しいこともいっぱいあったけど……今は幸せ……お兄ちゃんは……?」
ヘンゼル「お前が幸せなら、僕だって幸せだ。あの時、女王を信じ切れなかったけど…今は信じて良かったと思ってる」
ヘンゼル「いつか、女王にキチンと礼をしないとね。僕達に出来ることで」
グレーテル「女王さまに……お礼……ちょっとまってて、お兄ちゃん……私、女王さまにあげたいもの……あるの……」
ヘンゼル「女王にあげたいもの…?」

452 :◆oBwZbn5S8kKC :2015/08/16(日)00:02:20 ID:aV7
グレーテル「この本、見て……このあいだね……女王さまに教えてもらったの……」スッ
ヘンゼル「なんの本かと思えば、植物図鑑じゃないか。これがどうかしたの?」
グレーテル「この図鑑のね……えっと、このお花……見て……」ペラペラッ
ヘンゼル「陽の差し込まない場所に芽吹き、冷気を養分として成長する儚い植物、『氷雪花』…?」
グレーテル「この辺りの雪原には……お花全然咲いてない……でも町から普通のお花買ってきても……宮殿じゃすぐに駄目になっちゃって可哀そうだって……女王さま言ってた……」
ヘンゼル「氷で出来たこの宮殿には普通の花は飾れないからこの花を女王にプレゼントしたいってこと?」
グレーテル「うん……この雪原のどこかにもきっと生えてるって……女王さま言ってた……珍しい花だけど……寒ければ寒いところほど芽を出しやすいって……」
ヘンゼル「でも…難しいんじゃないかな?それに女王に言えば自分で見つけて取って来てくれると思うけど」
グレーテル「でもそれじゃ……プレゼントにならない……」
ヘンゼル「それは、そうだけど…」
グレーテル「女王さま……今日はお出かけしてるから夜まで帰ってこないよ……それにいってらっしゃいのキスしたから……寒いのも平気……」
ヘンゼル「させられたって言うのが正しい気もするけど。女王は居ないし、冷気も吸収してもらってるから行くなら今日…ってことか」
グレーテル「今日は吹雪も……おさまってるっていってた……だから、一緒に探しに行こう。女王さまへのプレゼント」

453 :◆oBwZbn5S8kKC :2015/08/16(日)00:03:43 ID:aV7
雪原
ザッザッザッ
ヘンゼル「グレーテル、寒くない?」
グレーテル「大丈夫……女王さまのキスのおかげ……寒くないよ……」
ヘンゼル「氷雪花の咲いてそうな場所は確か、陽の差し込まない場所で寒いところ…だったね」
グレーテル「宮殿の裏側……崖の底の方なら……きっと咲いてる……暗くて寒いから……」
ヘンゼル「崖の方まで行くのはやめようグレーテル。一応、カイには書き置きしておいたけど…何かあったらどうしようもないよ」
グレーテル「……お兄ちゃんが居るから……平気だよ……?」
ヘンゼル「頼ってくれるのは嬉しいけど、僕には制御できない魔力を打ち出すくらいしか出来ないよ」
グレーテル「でも……私が今、いつもご飯を食べられるのも……絵本を読んで暮らせるのも……女王さまやお兄ちゃんのおかげだよ……?」
ヘンゼル「僕は何も出来てないよ。女王が僕達によくしてくれてる、全部女王のおかげだ」
グレーテル「ううん、お兄ちゃんが……【ヘンゼルとグレーテル】の世界から……逃げようって言ってくれたからだよ……」
グレーテル「お兄ちゃんにも女王さまにも……ありがとうって気持ち伝えたいよ……だから今日は女王さまにありがとうっていうの……だからお花必要……」
ヘンゼル「……わかった、でも十分気をつけて行こう。危ない事に変わりは無いんだから」

454 :◆oBwZbn5S8kKC :2015/08/16(日)00:05:44 ID:aV7
崖の上
ヘンゼル「いくら寒くて陽が差し込まない場所に咲くとはいっても…下の方は暗いね、まだ昼なのに」
グレーテル「灯り……持ってくればよかったね……」
ヘンゼル「一度戻ってランプを持って来るにしても、崖まで来てる事がカイに知れたら引きとめられるだろうし…」
グレーテル「そうだ……お兄ちゃん。手、つないで……?」スッ
ヘンゼル「それは構わないけど……心細くなったならもう諦めて帰ろうか?」
グレーテル「寂しくないよ……?明るくする方法……思い出したの」
ギュッ
グレーテル「燈した蝋燭……擦られたマッチ……ピカピカ輝くランプ……崖の下、明るく照らして……」
ポウッ
ヘンゼル「駄目じゃないかグレーテル…!女王に言われてただろ、魔法を使うときはどうにもならないときだけだって…!」
グレーテル「どうにもならなかったよ……?このままじゃ……女王さま喜ばせられなかったから……魔法使ったの……大丈夫、ちょびっとだから……倒れたりしないy」
フラッ
グレーテル「あっ……」ズルッ
ヘンゼル「だから言ったじゃないか……僕につかまれ!グレーテルッ!!」グッ
ズルッ
ズサズサズササーッ

455 :◆oBwZbn5S8kKC :2015/08/16(日)00:07:33 ID:aV7
崖の下
ガサッ!ガサガサ-! 
ドサッ
ヘンゼル「……っ!グレーテル!大丈夫か!グレーテル!」バッ
グレーテル「あっ……お兄ちゃん……大丈夫……だよ、怪我してない……ちょっと擦りむいたくらい……」
ヘンゼル「そうか…よかった!無茶が過ぎるよグレーテル!勝手にあんな風に魔法使って…」
グレーテル「あの……ごめんね……私が、相談せずに勝手に魔法使っちゃったから……お兄ちゃんまで巻き込んじゃった……」
ヘンゼル「…もういいよ、気にしないで。それだけ女王に感謝の気持ちを伝えたかったんでしょ?」
グレーテル「うん……でも、言いつけ破ったのは……ダメだったね……これじゃ心配かけちゃう……」
ヘンゼル「半分は僕のせいだ。グレーテルだけが悪いんじゃないよ…でも洋服はボロボロになっちゃったし隠すのは難しそうだ、素直に謝ろう」
グレーテル「うん……でも……ここ、あの崖の下じゃないよね……?寒くないし、雪も全然積もってないし……お花も植物もたくさん生えてる……」
ヘンゼル「そうだね…鳥も飛んでる、それにこの森の匂い……あの雪原には森なんか無かったもんね」
グレーテル「私達……あの井戸に飛び込んで……女王さまの雪原に出た時みたいに……もしかして……別のおとぎ話に……来たのかな……?」
ヘンゼル「きっとそうだ、どこかはわからないけど少なくともここは僕達が居た【雪の女王】の世界とは別のおとぎ話の世界だ」

456 :◆oBwZbn5S8kKC :2015/08/16(日)00:09:34 ID:aV7
とあるおとぎ話の世界 森の中
グレーテル「……私が勝手な事しちゃったから……知らない世界に落ちちゃったんだ……」シュン
グレーテル「もう……あの宮殿には戻れないのかな……女王さまやカイお兄ちゃんには……もう会えないのかな……」ポロポロ
ヘンゼル「泣かないで、グレーテル。大丈夫だよ、きっとまた二人に会えるし、宮殿にだって帰れるよ」
グレーテル「本当……?嘘じゃない……?」グスングスン
ヘンゼル「ああ、嘘じゃない。女王なら僕達が勝手に宮殿の外に出て崖から落ちてしまった事くらい予想が付くはずだよ。そこで僕の魔力の気配が無ければ別世界に落ちてしまった事にも気がつけるはずだ」
グレーテル「うん……じゃあ女王さま……助けに来てくれるかな……?」
ヘンゼル「女王は現実世界に行った事があるって話していたし、別の世界に行く魔法が使えるはずだよだから、この世界に来る事だってできるよ。女王は僕の魔力を感知できるしね」
ヘンゼル「それに、女王は僕達の事を家族だって言ってくれた。絶対に助けに来てくれる、女王はあの男や悪い魔女とは違うんだから、信じて待とう」
グレーテル「うん……私たちは二人っきりの家族じゃないもんね……女王さまやカイお兄ちゃんもいるもんね……」
ヘンゼル「そうだよ、心配いらない。でも、女王達に凄く心配をかけちゃうのは間違いないから……叱られるだろうね」
グレーテル「それは……ちょっと怖いの……すっごく叱られるね……氷のおしおきだね」
ヘンゼル「うん、でもいつまでも森の中に居ても危険だから、一度近くの村か何かを探そう」
モクモクモク
ヘンゼル「…あっちの方にいくつか細く煙が上がってる、きっと村か何かがあるんだよ。そこを目指してみよう」
グレーテル「うん……わかった……そこで女王さま……待とうね……」

457 :◆oBwZbn5S8kKC :2015/08/16(日)00:12:56 ID:aV7
とあるおとぎ話の世界 近くの村
スタスタスタ
「おーい、草刈りおわったべー」
「よーっしゃ、そんじゃあ休憩にするだよ」
「わがった、向こうの連中にも声かけてやるだー」
スタスタ
ヘンゼル「畑仕事してる人、多いね。野菜作ってるのは間違いなく畑だろうけど……あの長い草は何のために植えてるのかな、麦に似てるけど違うみたいだ」
グレーテル「あの長い草も食べるのかな……?なんだか……女王さまの世界とも私たちの初めの世界とも……違う感じだね……」
ヘンゼル「そうだね、服もなんだか僕達のとは全然違うね。それに建物も全然違う形だ」
グレーテル「どこか……私たちの事泊めてくれるお家……探すの……?」
ヘンゼル「出来ればそうしたいけど。そう簡単にはいかないと思うよ、どこか空き家か何かあれば……こっそり軒先を借りれそうなものだけど……」
グレーテル「教会があればいいけど……無さそうだね……」
ザワザワ ザワザワ
「おい、なんだあの子らは…えらい奇抜な着物きとるぞ…見た事の無い童どもじゃ」
「んだんだ、あんな栗色の髪の毛は見た事ねぇだ。それにあの目ん玉みただか?瑠璃色っちゅうか恐ろしい色しとったわい…鬼の子か妖怪の類か…」
「ありゃあ恐らく妖怪の子供らじゃろう。村に災いを招くに違いねぇだ…よし、ワシが確かめてくるわい」

458 :◆oBwZbn5S8kKC :2015/08/16(日)00:14:51 ID:aV7
スッ
薄毛のおっさん「おぉい、そこの童らぁ……おまえらなにしとる?」
ヘンゼル「……グレーテル、僕の後ろに」ボソッ
グレーテル「うん……わかった……」スッ
ヘンゼル「何かな、僕達に何か用事かな?」
薄毛のおっさん「いんやぁ、この辺りじゃあ見ん顔じゃったからな……何もんじゃろうと思うてな」
ヘンゼル「…こことは違う所から来たただの子供だよ。行くあてが無くて、今晩雨風がしのげるところが無いかと思って探してるだけさ」
薄毛のおっさん「…そうか、しかしただの子供と言うにゃあ…随分と奇抜な着物じゃな?」
ヘンゼル「僕達にとってはあんた達の方がよほど奇抜だよ、そんな服は見た事が無いから」
薄毛のおっさん「それにその栗色の髪の毛もじゃし、瑠璃色の目ん玉……おまえら、本当に人間なんか?」
ヘンゼル「……何、その質問。人間に決まってるでしょ?」
薄毛のおっさん「ワシにはそうは見えんなぁ…童ども、妖怪の類じゃありゃあせんか?」
ヘンゼル「……」
薄毛のおっさん「やっぱりそうじゃな?妖怪の類なんじゃな?この村は小さな村じゃ……それに犀川の神様がじきに荒ぶる頃じゃ、お前等妖怪の童を村にいれるわけにゃあいかん」
グレーテル「さいかわのかみさま……?」
ヘンゼル「行こう、グレーテル。どうやらこの村に僕達の居場所は無いみたいだから」