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キモオタ「我輩がおとぎ話の世界に行くですとwww」ティンカーベル「そう」
Part94


384 :◆oBwZbn5S8kKC :2015/08/09(日)23:07:54 ID:4CO
グレーテル「お兄ちゃん……ダメだよ……そんな突き放すような事言うの……」
ヘンゼル「グレーテルこそダメだよ、どういう相手かもよく知らないのに優しくされたくらいで信用したら痛い目にあう。魔女の時だってそうだった事忘れたの?」
グレーテル「……それは、そうだったけど……」
ヘンゼル「僕達は【西遊記】も【ラプンツェル】も良く知ってる。だけど、あんた達がどういう人間なのかまでは知らない…なのに頼れとか信用しろとか簡単に言うでしょ?」
ヘンゼル「出会って数時間の相手を信用しろ?そんなの無理な話だよ。仮に…仮にだよ?あんた達が例外的に良い大人だったとしても、それは今判断できない」
キモオタ「確かに、それは道理かもしれませんな…あのような経験をしてるのならば尚の事でござる」
ヘンゼル「それに何かを企んでる大人はたいてい子供にやさしく接してくる。僕等を騙した魔女がそうだったみたいに」
孫悟空「テメェ等を食う為に菓子で出来た家におびき寄せたんだったか?」
ラプンツェル「お菓子の家かぁ…でも私も憧れちゃうよ、お菓子大好きな人にとっては夢だもん!あ、でも悪い魔女に食べられちゃうのはヤだなー…」
グレーテル「あの魔女ね……ただ私達を食べる為に捕まえたんじゃないの……魔法の力の為……なの」
孫悟空「魔法の力…だと?」
キモオタ「そう言えばwwwヘンゼル殿は魔力を持っているのに森から帰る為に一度も使ってませんなwwwそれが関係するのですかなwww」
ヘンゼル「僕の魔力は生まれ持ってのものじゃないから、まだ持ってなかったんだよ。僕はそこで…お菓子の家で魔力を手に入れたんだ」
孫悟空「ヘンゼルの魔力は相当なもんだ、後天的な要因であそこまでの魔力を手に入れたってのは興味あるぜ」
ヘンゼル「……話の続きをしてあげるよ、僕達が再び捨てられた森の中で…何日も何日も迷った挙句に見つけたお菓子の家での話を」
ヘンゼル「僕はそこで魔力を手に入れ…そして、僕はそこで自分の世界がおとぎ話だったと知る事になったんだ」
ヘンゼル「同時に、作者なんて言う忌むべき存在が現実世界に居る事もね」
・・・

385 :◆oBwZbn5S8kKC :2015/08/09(日)23:10:05 ID:4CO
ヘンゼルとグレーテルの世界 お菓子の家
・・・
人喰いの魔女「フェーッフェッフェッフェ!もう逃がさないよガキ共がぁ!」ガシッ
ヘンゼル「クッ……!離せ!あんた、優しいおばあさんのふりをして僕達を騙したんだな!?」ウググ
人喰いの魔女「そうさ!だが気付くのが遅かったねぇ!わざわざお菓子の家なんていう胸焼けしそうなもんまでこしらえて、あんた達が来るのを心待ちにしていたんだ…感づかれて逃げられたらつまらないからねぇ!」フェッフェッフェ
人喰いの魔女「だがもう捕まえた!逃がしやしないよ…あんたもグレーテルもねぇ!」フェッフェッフェ
ヘンゼル「やっと優しい大人に助けてもらえたと思ったのに…やっと助かったと思ったのに…!本性は悪い魔女だったなんて…!」ギリッ
人食いの魔女「フェッフェッフェ!魔女なんざ悪者と相場が決まってるのさ、それに話に聞いていた通りヘンゼルには利用価値がありそうだ」フェッフェッフェ
グレーテル「お兄ちゃん!お兄ちゃん!魔女さんやめてっ!お兄ちゃんを離してあげて!」グイグイ
人喰いの魔女「ええい、離さんか小娘!お前には用などないんじゃい!」ゲシッ
グレーテル「げほっ……ハァハァ、お兄ちゃ…」ボタボタ
ヘンゼル「グレーテル!あんた、妹に何をするんだ!このっ…!」ググッ
人食いの魔女「随分と威勢のいいガキだねぇ…だが少し肉付きが悪いみたいだ、もうちょっと太っていないと食いでが無いからねぇ」グイッ
スタスタスタ
人食いの魔女「暴れられちゃあ面倒だ。さぁて、この納屋に入っていてもらおうかね」ドサッ

386 :◆oBwZbn5S8kKC :2015/08/09(日)23:11:43 ID:4CO
人喰いの魔女「感謝するんじゃぞ?しばらくお前には大量の食事を与えてやるからのぉ、しっかりと食って肉を付けるんじゃ」フェッフェッフェ
ガチャン
人喰いの魔女「そしてお前が丸々と太ったらワシがお前を食ってやろう、フェッフェッフェ!楽しみじゃわい!」
ヘンゼル「出せ…!出せ!こんなところに閉じ込められたら僕はグレーテルを護れない!グレーテルを…!」
グレーテル「お兄ちゃん!お兄ちゃん…!」
人食いの魔女「ええい、やかましいガキめ!ワシはビィビィうるさい小娘は大嫌いなんじゃい!」ビュオ バシンバシンッ
グレーテル「痛いっ…!やめて、やめて…!」ジワッ
ヘンゼル「やめろ!痛がってるだろ!妹を傷つけたら僕が許さないからな!」ガシガシ
人喰いの魔女「フェーッフェッフェッフェ!いくら威勢良く吠えたところでお前はもうその特別な納屋からは出られん!もうワシの食糧なんじゃよ」フェッフェッフェ
ヘンゼル「僕があの時お菓子の家を目指そうなんて言わなければ…!」
人喰いの魔女「フェッフェ!悔やんでも遅いわい!じゃがいずれワシの血肉となるお前へのせめてもの弔いとしてグレーテルはワシの屋敷に置いてやろう。このワシの奴隷としてのぉ!」フェッフェッフェ
ヘンゼル「奴隷…僕の可愛い妹を奴隷だって!?グレーテルに酷いことしたら僕がお前を殺すからな…!いつか、絶対に」ギロッ
人食いの魔女「おお、恐ろしい恐ろしい!だが無理じゃ、お前はこの納屋から逃げられない。時折妹の泣き叫ぶ声が聞こえるかも知れんが……フェッフェッフェ!まぁ安心せぇ!」
人食いの魔女「さぁ来るんだグレーテル、ワシがお前を立派な奴隷に仕立て上げてやるからねぇ。さぁ、まずは屋敷の掃除からだ、もたもたするんじゃないよグレーテル!」グイグイッ
グレーテル「いや…お兄ちゃん!お兄ちゃん助けて…!私、奴隷なんか嫌だよ…!」グイッ
スタスタスタ

387 :◆oBwZbn5S8kKC :2015/08/09(日)23:13:27 ID:4CO
納屋
ドンッ!バンッ!ガコン!
ヘンゼル「くっ…壊れろ…!壊れろ!」ガンッ!
シーン
ヘンゼル「どうなってるんだ…見た目はただの木製の納屋なのに…どれだけ叩きつけてもびくともしない」ジンジン
ヘンゼル「特別な納屋って言ってたっけ…魔法でもかけてるのかも、僕を逃がさない為に」ギリッ
ヘンゼル「でも…僕は絶対にこんな扉ぶち破ってグレーテルを助けるんだ!あんな狡猾な大人に捕まって、いまだって何をされてるか解らない…!」
ヘンゼル「僕の責任だ…!どんな酷い事をされるだろうか…食事も貰えず家事をさせられるかもしれない、怪しい魔法の実験に利用されるかもしれない、他の悪い大人に売り飛ばされるかも……」
ーーお兄ちゃん!お兄ちゃん助けて…!
ヘンゼル(何が…お兄ちゃんだ。妹を助けられないどころか危険にさらして…何が、何がお兄ちゃんだよ…!)
バンッ!ゴンッドンッ!
ヘンゼル「クソッ!クソッ!僕がパンクズじゃなくてもっとしっかりした目印を付けていれば…!お菓子の家なんか無視していれば…!きっとこんな目には会わなかったのに!」
ヘンゼル「僕が…もっと警戒していればグレーテルは不幸にならなくて済んだんだ!僕があんな魔女を信用したから…!大人は信用できないって解っていたのに、優しい言葉に騙されてしまったから…!」
ヘンゼル「全部大人が悪いんだ…!あいつらは困ったら子供を捨てて、都合の良いように利用して…助けてなんかくれない、味方になんかなっちゃくれない…!」
ヘンゼル「もう二度と大人なんか信じない…!グレーテルの幸せの為にも…僕はもう大人なんて…信用しない!!」バンバンッ

388 :◆oBwZbn5S8kKC :2015/08/09(日)23:15:17 ID:4CO
その日、夜遅く
人食い魔女の家
グレーテル「あ、あの…魔女さん、お掃除終わりました。それと、キッチンのお片づけも」
人食い魔女「ああ、そうかい。じゃあ今日はもう仕事は無いよ、ったくお前がとろいからこんな時間になっちまったじゃないか。明日はニワトリが鳴くより早く起きて朝食の支度からじゃぞ?」
グレーテル「はい…わかりました。それと、私…どこで寝たらいい、ですか?それと、ご飯…欲しい、です」
人食い魔女「ああ、そういやあ朝から何も食べてなかったっけねぇ…だが役立たずの奴隷にやる食事なんか無いからね。これでもかじっておればいいじゃろ」スッ
カランッ
グレーテル「ザリガニ…の殻」
人食い魔女「なんだい?文句があるなら食わなきゃいい、この屋敷にある食料はワシとあのヘンゼルを太らせる為のもんだ。お前にはそれで充分じゃ」
グレーテル「…はい」
人食い魔女「それとお前には寝床なんざないからね、書庫の隅にでも転がってねていりゃあいいさね」フェッフェッフェ
グレーテル「…わかりました」
人食い魔女「さぁて、ワシはワインでも一杯ひっかけてから寝ようかね…」フェッフェッフェ
バタン
グレーテル「泣いちゃ……ダメ、お兄ちゃんはもっと辛いんだ…だから、泣いちゃダメ……」ポロポロ

389 :◆oBwZbn5S8kKC :2015/08/09(日)23:16:44 ID:4CO
書庫
グレーテル「魔女さんはここで寝なさいって言ってたけど、ベッドもソファもない…」グスングスン
グレーテル「でも、凄い数の本…もしかして、全部魔法の本かな?」
ズラーッ
グレーテル「これが全部魔法の本なら…もしかしたら、この部屋のどこかにお兄ちゃんを助けられる魔法とか書いてあるかも。私でも使えるような魔法とか…ないかな」スッ
グレーテル「うん…お兄ちゃんも大変なんだ、助けを待ってるだけじゃダメ…私も少しずつ魔法の本読んで…勉強しよう。妹だもんね」
グレーテル「ザリガニの殻も…頑張って食べなきゃ、残したら何も貰えなくなっちゃうかもしれないから」
モグモグ
グレーテル「うっ、ぺっぺっ……これ食べられるものの味じゃない…でも、頑張らなきゃ。我慢して食べなきゃ……死んじゃったら何にもならないから……」
モグモグ
グレーテル「……うぇっ」ゲホゲホ 
グレーテル「残しちゃダメ……もどしちゃダメ……なんでも食べないと生き延びれない……私が死んじゃったらお兄ちゃん助けられない……」
グレーテル「でも……お水欲しい。魔女さんに見つからないように…お水貰おう。でも確か井戸は枯れてるって言ってたから…キッチンの裏に回らなきゃ」
スタスタ

390 :◆oBwZbn5S8kKC :2015/08/09(日)23:21:47 ID:4CO
キッチン
グレーテル(キッチンでは魔女さんがお酒飲んでるんだっけ…見つからないようにそっと……)コソコソ
人喰いの魔女「フェーッフェッフェ!まぁさかこんなところであんな特異体質の子供を見つけられるなんて本当にラッキーじゃわい」グビグビ
人食いの魔女「この森に放たれたワシの使い魔…野犬共が言っていた通りじゃったな。それにしてもうまくあの二人を騙せて良かった良かった」フェッフェッフェ
グレーテル(とくいたいしつ?お兄ちゃんの事かな……?)コソコソ
人喰いの魔女「認めたくないがワシもすっかり衰えた。目も大分霞んで調合やら細かい作業には難儀していたが…これからは役立たずのグレーテルに細かい作業を全部させりゃあいいからのぉ!」フェッフェ
グレーテル(……)
人喰いの魔女「じゃがあんな奴隷なんぞよりもヘンゼルじゃ」グビグビ
人喰いの魔女「太らせる為と偽ってあいつに魔力を帯びた食材で作らせた料理を毎日食べさせ…体内に魔力を蓄積させる」ホロヨイ
人喰いの魔女「すると不思議な事に、あいつの体内でその魔力は何倍にも膨れ上がる。ヘンゼルは生まれついて魔力を持っていないが…あの特異体質は魔力との相性が凄まじく優れている」
人食いの魔女「取り込んだ魔力を自分のものにし、それを際限なく増強させることができる。何億の人間が居たとてそんな特異体質一人いるかいないかじゃからな、本当に運が良かった」
人食いの魔女「そうして魔力を高めさせ…十分に魔力が蓄積したら膨大な魔力ごとあいつを食べちまう、そうすりゃあその膨大な魔力はワシのもんさね!」
人喰いの魔女「フェッフェッフェ!笑いが止まらんのぉ!フェッフェッフェ!」
グレーテル(そういうことなんだ…だったら多分、しばらくはお兄ちゃんは食べられない。なんとか助ける方法考えなきゃ)コソコソ

391 :◆oBwZbn5S8kKC :2015/08/09(日)23:22:59 ID:4CO
それから一カ月 納屋
・・・
ヘンゼル「……」
ヘンゼル「……僕達の父親だった男は、本当にうそつきだ」
ヘンゼル「良い行いは神様が見てるなんて言っていたけど……神様なんて、この世界のどこにもいない」
ヘンゼル「……あれからもう一カ月。誰も助けに来ない……毎日納屋を壊そうとするけど……壊れない……逃げられない……」
ヘンゼル「たまに、屋敷の方から怒鳴り声が聞こえる……あの魔女の声……怒鳴り声が向けられているのはきっと……」
ヘンゼル「……」
ヘンゼル「……グレーテル。何も出来ない、ダメなお兄ちゃんで……ごめん」ポロポロ
チチチ チュンチュン
ヘンゼル「……小鳥。ああ、あの時僕が目印にしたパンクズを小鳥が食べさえしなければ…僕達は助かっていたかもしれないのに……小鳥さえいなければ、僕達は幸せになれたのに……」
チュンチュン
小鳥「心外、心外。それじゃまるで、私達が悪者みたいだ」パタパタ
ヘンゼル「っ!?……なんだ、この小鳥」スッ
小鳥「聞き捨てならない、聞き捨てならない。私は役目をキチンとこなしただけ、それを悪く言われるのは許せない」

392 :◆oBwZbn5S8kKC :2015/08/09(日)23:24:16 ID:4CO
ヘンゼル「役目…?いや、何を言ってるんだあんた…もしかして、あんたが僕が目印にしたパンクズを食べたのか…!」キッ
小鳥「何その目、何その目!そうだよ、私がパンクズを食べた。でもなんで私が睨まれるの!」
ヘンゼル「僕の計画に穴があったのは認める、でもあんたが余計な事しなけりゃあ僕達はこんな目にあわなかったんだ!」
小鳥「納得いかない、納得いかない!なんで私がこんな風に怒鳴られなきゃなんないの!」
ヘンゼル「そりゃあ怒りたくもなるよ、あんたのせいで僕達は魔女に捕まったんだぞ」
小鳥「筋違い、筋違い!私を恨むのは筋違い、だってそういう役割だ。君の撒いたパンクズを食べて帰り道をわからなくするのが私の役目、私に与えられた役」
ヘンゼル「役割?筋違い?あんたまさかあの魔女の仲間…?」
小鳥「違うよ、違うよ。ああ、でも察したよ。君は知らない、何も知らない。この世界がおとぎ話の世界だってこと、全然知らない」
ヘンゼル「……おとぎ話の、世界?あんたは何を言ってるの?」
小鳥「作り物だよ、作り物だよ。君が過ごしてるこの世界は普通の世界なんかじゃあない、現実世界で作られたおとぎ話の世界だよ」
ヘンゼル「だから…その意味がわからない。現実世界?なんなのそれ。おとぎ話の世界?この世界が、おとぎ話だって言うの?」
小鳥「そうだよ、そうだよ。おとぎ話だよ。君と妹が主人公の【ヘンゼルとグレーテル】というおとぎ話さ」
ヘンゼル「なんなのそれ……僕達の住んでいる世界はおとぎ話で……僕等はその主人公?」
ヘンゼル「【ヘンゼルとグレーテル】……?いや、そんなの信じられないよ」

393 :◆oBwZbn5S8kKC :2015/08/09(日)23:26:28 ID:4CO
小鳥「真実、真実。信じられなくてもこれが真実。この世界は現実世界に存在するおとぎ話そのもの、だからこの世界は作られた世界。私はその登場人物。君はその主人公の一人」
ヘンゼル「……」ジッ
小鳥「信じてない、信じてない。その目は信じてない!私は嘘なんか言ってないのに!」
ヘンゼル「そんな突拍子もない事信じられないよ、どうせ僕を騙すつもりだろう」
小鳥「ホントに心外、ホントに心外!だったらこれからどうなるか、教えてあげたら信じる?」
ヘンゼル「僕達がこのあとどうなるか…知ってるの?」
小鳥「もちろん、もちろん。知ってるよ、君は助かるよヘンゼル。ちょうど今日、もう少ししたら君は助かる」
ヘンゼル「……本当かい?ここまでそんな気配無かったのに」
小鳥「本当、本当。私は今さっきここに来た、でも……今朝方、君の太り具合を魔女が見に来たはず。そして君はそれを軽くあしらった、きっと魔女はいつもよりイライラして屋敷に帰った」
ヘンゼル「ああ、その通りだけど…見てたの?」
小鳥「見てない、見てない。見てないけど、このおとぎ話はそういう展開。展開通りにお話が進むのがおとぎ話、だから私はどうなるか知ってる。魔女は怒って君を食べようとしてる」
ヘンゼル「…じゃあ聞かせて、僕とグレーテルはどうなる?誰が助けに来てくれるのか、あんたは知ってるの?」
小鳥「もちろん、もちろん。知ってるよ、もうすぐここには彼女が来る、君の可愛い妹が君を助けにやってくる」
小鳥「絶対、絶対。君の為に走って助けにやってくる、魔女を殺してやってくる。グレーテルがやってくる」

394 :◆oBwZbn5S8kKC :2015/08/09(日)23:38:50 ID:4CO
ヘンゼル「…なんだよそれ、やっぱり嘘じゃないか」
小鳥「なんなの、なんなの!なんで信じてくれないの、そういうの凄く心外!」
ヘンゼル「グレーテルがあの魔女を殺すって?いいや、そんな事は出来ない。あの子は優しい子なんだ」
小鳥「そうは言っても、そうは言っても…そういうおとぎ話だ、仕方ない。それにグレーテルは君の為にたくさん努力して我慢した」
小鳥「耐えてた、耐えてた。私は見た。毎日ザリガニの殻とお水だけ、硬い床に転がって少しだけ眠ってあとはずっと働きづめ」
小鳥「つぶやいてた、つぶやいてた。お兄ちゃんも頑張ってるって、呟いてた…毎日隠れて本を読んで、君を助ける方法を探してた」
小鳥「魔女は酷い、魔女は酷い。叩かれてあざになってるとこもあった。食事が貰えない日もあった、そんな時は腐った生ゴミを漁ってでも必死に生きようとしてた……全部は君の為」
ヘンゼル「……」
小鳥「信じてくれる?信じてくれる?」
ヘンゼル「仮に、グレーテルが本当に魔女を殺して僕を助けに来るとして…その悲惨な奴隷生活が全部本当だとしよう。…それじゃあ聞くけど、この世界はおとぎ話なんだよね」
小鳥「そうだよ、そうだよ。現実世界で作られたおとぎ話の世界だよ」
ヘンゼル「ってことは作り話だ…その現実世界ってところの誰かが作った、作り物のお話って事だ。ということはつまり…作者が居る、そうだね?」
小鳥「うん、うん。そうだよその通り、現実世界に住む作者がこのおとぎ話を作ったんだよ」
ヘンゼル「その作者が…このおとぎ話を作った。僕とグレーテルが親に捨てられ、魔女に騙されて、奴隷にされ、監禁される……こんな悲惨な物語を……!」
ヘンゼル「僕達の悲惨な人生を歩ませた……!自分勝手に無責任に…!僕達の苦しみなんかお構いなしに…僕達が不幸になる物語を作ったんだ!」

395 :◆oBwZbn5S8kKC :2015/08/09(日)23:41:02 ID:4CO
小鳥「あれ、あれ……ヘンゼル?そういう考えになっちゃうの…?それはダメ、そんな風に思っちゃダメ」
小鳥「これはおとぎ話、おとぎ話。私たちは役者。作者が作ったおとぎ話を滞りなく進める為に与えられた役割をそれぞれがこなすんだよ」
小鳥「そうだよ、そうだよ。だから私はパンクズを食べた、君の両親は君達を捨てた、魔女は君を捕えた。全部作者の筋書き通り、それに逆らうような真似は…」
ヘンゼル「逆らうよ、僕は。なんで見ず知らずの現実世界の奴の為に、僕やグレーテルがこんな酷い目にあうのか解らない」
小鳥「おかしい、おかしい!主人公の君がそんな考えに至るなんて…もしかして異変?私、言っちゃいけない事言っちゃった?ねぇねぇ、とにかく筋書き通りにしよ」
ヘンゼル「聞かせて、その作者は僕達にどんな結末を用意したのか」
小鳥「…宝石、宝石。魔女を倒した君達は魔女の持つ宝石を奪って家に帰る。家には父親だけ居て、継母はもう死んでる。幸せに暮らせる」
ヘンゼル「……なにそれ。宝石やるから悲惨な人生でも耐えろって事?そして今更あの父親と暮らせ?大人ってのはどこの世界でも卑劣で自分勝手なんだね」
小鳥「い、いいじゃない、いいじゃない!ハッピーエンドだ!だから逆らったりしちゃあダメ。この世界が無くなっちゃう!」
ヘンゼル「そっか、理解したよ。筋書き通りに行かなくなると、この世界…おとぎ話は消えるんだね。だったらもう意地でもそんなハッピーエンドもどきの結末には辿りつかない。こんな世界消えてしまえばいい」
小鳥「ああ、ああ……ダメだよ!ダメダメ!私達はおとぎ話の住人なんだからちゃんとおとぎ話の展開に沿って……」
ヘンゼル「おとぎ話の世界だろうが関係ない……僕の人生は僕のものだ、他人に指図なんかさせない」
ヘンゼル「僕の結末は、僕自身が決める。見知らぬ他人の為に、決められた未来なんか選択しない」

396 :◆oBwZbn5S8kKC :2015/08/09(日)23:42:14 ID:4CO
バタバタバタ
グレーテル「……お兄ちゃん。助けに……来たの……待ってて……すぐに、開けるの……」ギィギィ 
ヘンゼル「その声…グレーテル!本当に助けに来てくれたんだね……!」
バタンッ
グレーテル「……お兄ちゃん、私……頑張ったよ……頑張って……あの魔女、殺したの……」
グレーテル「お兄ちゃんと……一緒に居たかったから……あの魔女、殺したの」
ヘンゼル「……ああ、よくやった。僕の為にやってくれたんだよね…ありがとうね、ありがとう。グレーテル」ギュッ
グレーテル「……うん、お兄ちゃんの妹だから……そう思って、頑張ったの……」ギュッ
ヘンゼル「さぁ、グレーテル。ここから逃げよう、こんな馬鹿げたおとぎ話の世界以外のどこかに」
グレーテル「おとぎ……話?なんの……こと?」
ヘンゼル「小鳥、僕達は作者なんかの思い通りには動かない。でもそうなると世界は消える、何か方法は無いの?」
小鳥「もうだめ、もうだめ……きっと君は説得できない。私は悪くない!うっかり話した私は悪くない!だから私は逃げる…!」
ヘンゼル「待ってよ、逃げ道があるんだね。その場所はどこだい?」
小鳥「知ってる、知ってる。私は別のおとぎ話に続く門を知ってる、魔女の屋敷の枯れ井戸の底。偶然偶然、別の世界につながってる…私はそこから逃げるんだ」
ヘンゼル「枯れ井戸の底だね……いこう、グレーテル。僕達は今度こそ誰かに利用される人生から逃れられる」

397 :◆oBwZbn5S8kKC :2015/08/09(日)23:44:02 ID:4CO
魔女の屋敷 枯れ井戸
ヘンゼル「小鳥が一目散に飛び込んで…帰ってこない。この枯れ井戸が別の世界につながっているというのは信用してもよさそうだ」
グレーテル「……おとぎ話の世界……私達が主人公のおとぎ話……まだちょっと信じ切れてないけど……お兄ちゃんが言うなら間違いないよね……」
ヘンゼル「うん、僕も半信半疑だったけど…もう信じないわけ無いはいかない」
グレーテル「でも……お兄ちゃんの話だと……私達がここから別のおとぎ話に行っちゃうと、この世界は消えちゃうね……」
ヘンゼル「構わないよ。おとぎ話っていうからにはその作者は誰かに聞かせる為に話を作った…僕達を作った」
ヘンゼル「だったら面白い話を書こうとするはずだ。できるだけ不幸な兄妹がとにかく悲惨な目にあって…申し訳程度の幸せを手に入れる。そんな話をね」
ヘンゼル「作者は僕達を利用して話を盛り上げたんだ。面白い話なら有名になれる、だから僕達はその作者の勝手な欲望の為に不幸な人生を歩まされた」
グレーテル「それって……酷いね……」
ヘンゼル「そうだよ。でも、もう僕達はそれに気が付いた。見知らぬ現実世界の奴に付き合ってやる必要は無いよ」
ヘンゼル「だから僕はこのおとぎ話を捨てて、お前を幸せにする。別のおとぎ話の世界で」
グレーテル「……今度こそ……幸せになれるかな?私と、お兄ちゃん」
ヘンゼル「ああ、きっと……いや、絶対僕がそうして見せる」
グレーテル「うん……私はお兄ちゃんの言う事だったら信じられるよ……だから、行こう」
ヘンゼル「ああ。これで僕等は誰にも縛られない…おとぎ話の展開にも結末にも縛られない……自由に生きる事が許されるんだ。じゃあ行こう、勇気を出して枯れ井戸に飛び込むんだ」
グレーテル「……うんっ」スッ
ピョン

398 :◆oBwZbn5S8kKC :2015/08/09(日)23:46:44 ID:4CO
別のおとぎ話の世界 氷と雪に彩られた銀世界
・・・
ビュオオオォォォォォ
ヘンゼル「なんだこの世界…!どこを見渡しても氷と雪…一体どこのおとぎ話だ…?」
グレーテル「お兄ちゃん……私ね……寒いよ……」ブルブル
ヘンゼル「こんな極寒の地…いつまでもこんな恰好のままいたら…!」
グレーテル「……お兄ちゃん」ギュッ
ヘンゼル「どうしてこんなに僕達は酷い目にあうんだ…ようやくあの馬鹿げた世界から逃げ伸びたのに、今度はこんな場所にほおりだされて……!」
グレーテル「……ねぇ、お兄ちゃん……大丈夫……だよね……?今度こそ……なれるよね、幸せに……」
ヘンゼル「ああ、絶対に…僕が絶対にグレーテルを幸せにする。吹きたければ吹雪よ吹けばいい!僕はもうどんな逆境だって越えて見せる、自分とグレーテルだけ信じて……どんな困難だろうが撥ね退けて」
ヘンゼル「今度こそ幸せになってやるんだ…!」
ビュオオオォォォォ
???「……っ」ピクッ
???「膨大な魔力の気配…?それに感じ慣れてない人の気配がする。恐らく、宮殿裏の大地だな」
スッ
???「ああ、ちょうどこの部屋から見えるな。何故、あんな場所に別世界のおとぎ話の住人がいるんだろうな…しかし、あのような格好で野外に居ては長く持たないだろう」フム
???「……どうやら可愛い少年と少女のようだ、それならひとつ挨拶をしなくてはいけないな」フフッ

399 :◆oBwZbn5S8kKC :2015/08/09(日)23:51:22 ID:4CO
今日はここまでです、みんなレスありがと!
イッパイアッテナ思ったより知名度あってワロタ
雪の世界 が次回の舞台
ヘンゼルとグレーテル。とある消滅したおとぎ話編 次回に続きます

400 :名無しさん@おーぷん :2015/08/09(日)23:52:35 ID:agz
乙です!!
次回も楽しみにしています!!

401 :名無しさん@おーぷん :2015/08/09(日)23:54:35 ID:Fu4
おつおつ
更新が最近の楽しみになってる

402 :名無しさん@おーぷん :2015/08/10(月)00:30:18 ID:Luo
>>1さん乙です!
次回の更新が楽しみです!!