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キモオタ「我輩がおとぎ話の世界に行くですとwww」ティンカーベル「そう」
Part91


298 :◆oBwZbn5S8kKC :2015/07/29(水)23:38:36 ID:Ti0
沙悟浄「しかし、この数ではまともに戦っていても埒が明かない。一度に燃やしてしまうか、大水で押し流すか…一網打尽の策を練るべきだ。後者ならば、私の得意とするところだが……」シャキン
猪八戒「それは名案でござるなwwwしかし、この辺りに海や湖はおろか小川すらありませんからな……この大軍を押し返す程の大水などありませんぞ?」ドスドスドス
孫悟空「それに焼き払うのも考えもんだぜ。集落もまとめて焼き払うことになっちまうからなぁ、逃げた住民共が帰るところが無くなっちまったら話になんねぇ」ビュオンビュオン
沙悟浄「それは道理だが、しかしこのままだと…我々はおろか、このおとぎ話【西遊記】の存在すら危うい。何とかせねば……」ギギッ シャキン
孫悟空「引くのは趣味じゃねぇ、力任せの正面突破しかねぇか……おい!玉龍、こっち来れるか?」
玉龍「んーっ?はいはーいっ…こっちはちょーっとだけ余裕あるッスよー…っとぉ!」ピョコン
ピョンピョンピョーン
玉龍「おまたせッス、悟空センパイ!いつもは法師様の愛馬ッスけど…今日は久々に女の子モードの玉龍ちゃんッスよ〜♪どうっすか?かわいいッスか?セ・ン・パ・イ♪」スリスリ
孫悟空「刀剣持って擦りよるんじゃねぇ!ったく…なことはどうでもいいんだよ、テメェは元々龍だから目は利くだろ。確認しろ、集落の連中は大方避難できてんのか?」
玉龍「そうッスねー……とりあえず避難完了ってところっすかね。あっ、法師様もこっちへ急いでるッスね」ピョンピョン
孫悟空「そうか、ってこたぁ多少は大暴れしてもよさそうだな……!よし、八戒!悟浄!一気にこいつr」
玉龍「センパイセンパイ、それは良いんスけど。うち、お礼言われてないっッス。ごほうび欲しいッス」プクーッ
孫悟空「毎度毎度、面倒臭ぇ奴だなテメェは…ありがとよ、玉龍!助かったぜ!…ほら、これでいいだろ!」ワシャワシャ
玉龍「えへへ〜♪なんだかんだでセンパイは優しいから大好きっすー♪」スリスリ

299 :◆oBwZbn5S8kKC :2015/07/29(水)23:40:20 ID:Ti0
玉龍「でもあれッスよね、如意棒伸ばして物見台代わりにでもすれば自分で確認できるッスのに…わざわざうちに頼むってことは…ッスよ?」
玉龍「いやー、うちがお手伝いしないといけないほどピンチな戦いだっていうのに…センパイはうちに会いたくて仕方がないんスね?ふふっ、うち嬉しいッス!」フフフッ
孫悟空「いいか、八戒と悟浄。俺が敵の中心に突っ込んで如意棒で一気に蹴散らす。そのまま突き進むから八戒は右、悟浄は左から討ち損じを始末しながら前進してだな…」ビュオンビュオン
猪八戒「ちょwww玉龍殿は完全にスルーでござるなwww」ガキーン
孫悟空「おう、玉龍は無視しろ。こいつは普段戦わねぇから緊張感ってもんがねぇんだ、無視しろ。とにかくだ、目の前の敵に集中して一気に叩いて……」
ザッザッザッザッザッ
沙悟浄「ちょっと待ってくれ悟空…どうやら、それは無理そうだ」
玉龍「やばいッスよセンパイ!援軍ッス……それも倍じゃきかない数ッスよ!」
猪八戒「ちょ…ただでさえ苦戦しているというのに、倍以上の援軍ですと!?」
孫悟空「おいおい…どこの誰だか知らねぇが、随分と舐めた真似しやがるじゃねぇか…!」ギリッ
玉龍「どうするッスか、センパイ?もう集落が燃えるとか言ってる場合じゃないッス!ここは火を放って一網打尽にするッスよ!」
孫悟空「仕方ねぇか…だがその役目はテメェらに任すぜ。俺ァちっと頭に来ちまったからよぉ…テメェらはここで雑魚を相手してろ」ググッ
沙悟浄「どうするつもりだ?」
孫悟空「決まってんだろ!このトランプ兵どもを差し向けてやがる親玉を探し出して…ぶちのめす!そうすりゃあ騒ぎもおさまらぁ!」
猪八戒「し、しかし親玉の場所も解らんというのに…無茶が過ぎますぞ、悟空殿!」
ブォン
ドドドドドドドドド

300 :◆oBwZbn5S8kKC :2015/07/29(水)23:44:21 ID:Ti0
玉龍「これは…なにが起きてるッス!?どんどん集落の建物が崩れていくッスよ!!」
沙悟浄「いや…建物だけでは無い、山も木々も…大地すらも崩れていく。これは、おそらく……」
孫悟空「クソッ…どうなってんだ、どうなってやがんだこりゃぁよぉ!」
ザザッ
三蔵法師「……世界の消滅、おとぎ話【西遊記】の消滅が始まったのです」ハァハァ
孫悟空「消滅だと!?待てよ師匠、おとぎ話の消滅ってのは物語が立ち行かなくなっちまったり主人公や重要人物が死んじまったときじゃねぇのか!?俺達はピンピンしてんだろうが!」
三蔵法師「恐らく、我々がこの後に倒す筋書きだった妖怪が倒されてしまったのでしょう…金角銀角、牛魔王…あの強き者共がやられるとは…」
孫悟空「雑魚共が…!今からでも遅くねぇ!俺がひと飛び親玉を探し出してやらぁ!」
三蔵法師「もう間に合いません。許しませんよ。悟空。」
孫悟空「なんでだ!!その親玉のせいで俺達のおとぎ話は消えちまうんだぞ、思い知らせてやらなきゃ気がすまねぇ!!俺も、師匠もこいつらも消える!それを黙って見てろって言うのか、不抜けも大概にしろよこのハゲがぁ!」
三蔵法師「愚か者、あの者達はトランプ…紙札の兵士です、火を放てば倒せるでしょうが同時にこの辺り一帯は焦土と化します、トランプ兵が逃げ回りでもすれば避難できたとはいえ人々にも被害が及びます、火は放てません」
孫悟空「もう世界が消えちまうってのにそんな心配してどうすんだ!集落の奴らを助けても、もう結局はこの世界と一緒に消えちまうんだぞ!」
三蔵法師「どうせ世界が消えるから……結局は死ぬのだからあの者達を助けなくて良いなど、そんな正義がありますか?」
三蔵法師「結果が決まっていても、この世界が消える瞬間まで…あの者達が苦しみ怯えるという感情は現実のものなのですから。それを救う事が僧の務め。我々は最後まで人々を守る為に戦うのです」
孫悟空「だがよぉ…!どうすりゃあいんだ!トランプ兵から集落の奴等を守りきっても結局はこのおとぎ話は消えるんだぞ!?」
三蔵法師「……では、こうしましょうか」スッ

301 :◆oBwZbn5S8kKC :2015/07/29(水)23:46:50 ID:Ti0
三蔵法師「この【西遊記】の世界はじきに消滅します。ですが人々を見捨てる事は出来ません、私と八戒と悟浄が最期の時まで人々を守り続けます。頼めますね?」
沙悟浄「正直、心残りはありますが…元々償いの旅、私の様な化け物の命で人々の魂を救えるのならば喜ばしいことです」
猪八戒「ちょwww決死の覚悟wwwしかしお師匠殿がそう仰るのならばwwwこの猪八戒、どこまでもお供しますぞwww」コポォ
孫悟空「……おい、師匠。俺の名前が無ぇじゃねぇか。テメェ、まさか…俺を逃がすってんじゃねぇだろうなぁ!?答えろコラァ!」グイッ
三蔵法師「師匠の胸ぐらをつかむとは何事ですか…?」
孫悟空「黙りやがれぇ!テメェの魂胆はわかってんだハゲコラァ!!」
三蔵法師「玉龍、本来の姿である龍へと変化しなさい。悟空を連れ、別のおとぎ話へ」
玉龍「……わかったッス。センパイ、行くッスよ」スッ
孫悟空「行きたけりゃ一人で行きやがれ!俺ぁ逃げねぇからな!テメェらが最期まで命を燃やすってぇなら俺だって同じだ!舐めんじゃねぇぞ!」
三蔵法師「逃げるのではありません悟空。私はそこまで逃げ腰では無いですよ、これは……逃走ではないのです」
孫悟空「どういうことだよ師匠?」
三蔵法師「何者かがこのおとぎ話を攻撃している。それは確実です、しかしこのおとぎ話だけを攻撃しているのでしょうか?……答えは否、ですね」
三蔵法師「親玉は他のおとぎ話にも攻撃を仕掛けるでしょう。何の目的があっての事かは解りませんが……」
三蔵法師「ですから、他の世界へあなたを差し向けるのは逃がす為ではありません…わかりますね?」

302 :◆oBwZbn5S8kKC :2015/07/29(水)23:48:37 ID:Ti0
孫悟空「師匠は俺に……別の世界へ渡って、他のおとぎ話を救えっていうのか…?」
三蔵法師「そうです、沙悟浄や猪八戒も優秀な我が守護者ですが……あなたは別格です」
三蔵法師「おとぎ話の世界でもその強さは段違い。あなたならば、他の者では敵わないような敵でさえ薙ぎ払えるでしょう。ここで私達と共に朽ちて良い存在ではありません」
三蔵法師「あなたは以前、斉天大聖などという畏れ多い名を名乗っていたではないですか。天にも等しい大聖者なのでしょう?ならば、おとぎ話を救う事など容易いのではありませんか?」
孫悟空「……しかし、お師匠よぉ…俺は守護者だ。あんたを護る役目がある。だから行けねぇ」
三蔵法師「悟空……」
猪八戒「いやはやwwwわかってませんなぁwww悟空殿はwwwこれだから山猿は困りますぞwww」コッポォ
孫悟空「あぁ…?」
猪八戒「師匠殿は【西遊記】のみならず、別のおとぎ話の住人達をも救おうと考えているのいるのでござるよ?しかし自分にはそれが出来そうもない…」
猪八戒「故に、悟空殿に頼んでいるのでござろうwww我々守護者は師匠殿の肉体を守るだけが仕事ではないのですぞ?www」コポォ
孫悟空「どういうことだ?師匠の身体を妖怪共から守る事が俺達の役目だろうが」
猪八戒「それももちろんそうでござるがwww肉体だけではなく、想いや願いを護る事もまた守護者の務めでござろうwww」
孫悟空「師匠が叶えられなかった想いや願いを護る事も……俺の役目って言いたいのか、八戒」
猪八戒「そうですぞwwwしかし、所詮はお山の大将でござるからなぁwww元天界人の我輩の方が適任かもしれませんなwww」コポォ

303 :◆oBwZbn5S8kKC :2015/07/29(水)23:50:36 ID:Ti0
猪八戒「兄弟子が怖気づいているのなら仕方ないですなwww我輩が代わりに玉龍殿と別のおとぎ話の世界に行くでござるwwwうはwww玉龍ちゃんペロペロwww」
玉龍「ブタはお呼びじゃないッス。うちより後輩なんスから調子に乗んなッス」プイッ
猪八戒「ちょwww態度wwwがwww違うwwwさて、それはいいとして……どうしますかな?悟空殿?wwwここまでブタに言われて引き下がるわけ無いでござるよねwww」
孫悟空「おい、八戒…」スタスタ
猪八戒「なんでござるかなwww」
ボカッ!
孫悟空「テメェ毎度毎度…うまい事挑発して俺の事焚きつけやがって…!間抜けで能天気のくせにそういうところ気が周るのが腹立つんだよブタがぁ!」
猪八戒「ちょwww何も殴らなくともwww」コポォ
孫悟空「だがまぁ、決心はついたぜ。……ありがとな、猪八戒」ソッ
猪八戒「例には及びませんぞwwwそれではさらばですぞwww」ドゥフ
沙悟浄「…いろいろと世話を掛けたな、悟空」
三蔵法師「……あなたの良さは熱い心を持っているところですが、悟空は加減が苦手すぎます。落ち着いて、事に臨みなさい」
孫悟空「ああ、お師匠。俺は守護者として…あんたの想いを、おとぎ話の世界を救ってやらぁ!行くぞ、玉龍!!」スッ
玉龍「わかったッス!それじゃあ行くッスよセンパイ!玉龍ちゃん女の子モードからドラゴンモードにモードチェンジッスよー!」ファアアァァァァ
孫悟空「よっし、どんなおとぎ話でも構わねぇ!この孫悟空様が、全部まとめて救ってみせらぁ!!」
キィィィィンッ
三蔵法師「達者で……私の愛する弟子よ」
ドドドドドドドド
・・・
・・・

304 :◆oBwZbn5S8kKC :2015/07/29(水)23:52:28 ID:Ti0
現在
現実世界 廃墟
孫悟空「オラァ!なんとか言いやがれこのブタがぁ!!」グイグイ
孫悟空「テメェはあの時!消滅する【西遊記】の世界に沙悟浄と師匠と一緒に残っただろうが!なんでここに居るのか答えやがれぇ!!」
キモオタ「ちょwww何の事だかさっぱりですぞwww誰でござるかwww猪八戒殿ってwww」ガクガクガク
グレーテル「猪八戒はね……【西遊記】の登場人物……孫悟空さんの旅の仲間なの……豚の妖怪なのよ……」
キモオタ「なるほどwwwそれは納得でござるwwwってwwwなんで我輩毎度ブタに間違えられるのかwww」コポォ
ラプンツェル「あっ、私ね、鏡持ってるよ!使う?」ニコニコ
キモオタ「ちょwwwどういう意味でござるかそれwwwナチュラルにそれは酷いですぞwww」コポォ
孫悟空「なにをごちゃごちゃと……!あの時俺をあんなふうに焚きつけておいて、まさか自分だけ逃げだしたんじゃねぇだろうな!?答えろ八戒!!」
キモオタ「だからwww我輩はその猪八戒殿では無いというのにwww」
孫悟空「テメェみたいなブタが世界に二人もいてたまるかってんだ!しらじらしい嘘をつくんじゃねぇ八戒!」
キモオタ「駄目でござるよこれwww孫悟空殿どうしたら信じてくれるのかwww」
グレーテル「孫悟空さん……そのお兄ちゃんはね……キモオタお兄ちゃんっていうの……猪八戒さんじゃないのよ……?」
孫悟空「テメェ、しかし、なあ……おい、この小娘の言葉は本当なのか?八戒」
キモオタ「本当でござるって先ほどから言ってるのにwwwいやwww八戒殿ではないでござるけどwww」

305 :◆oBwZbn5S8kKC :2015/07/29(水)23:54:50 ID:Ti0
・・・
孫悟空「おとぎ話の世界の消滅を防ぐために旅をしている……現実世界の人間ってぇわけか……」
キモオタ「そうでござるよwwwようやく信じてくれましたかなwww」
孫悟空「お前等の話はまぁ、嘘じゃないだろう。それは信じてやるけどよぉ……いや、やっぱりお前は八戒だろ?」
キモオタ「なんでwwwまだwww半信半疑www」
孫悟空「ラプンツェルの話を聞いた限りじゃあ確かにおとぎ話の世界を救う人間ってのは嘘じゃなさそうだが……こうも瓜二つだってのは偶然に思えねぇ……」
キモオタ「そんなに似てるのでござるかwww」
孫悟空「ああ、似てる……しかしだ、つい話しこんじまったけどよぉ……テメェは俺の敵だってことには変わりねぇんだ」ググッ
孫悟空「グレーテルを捕えて、テメェらを始末しねぇとあいつの命が危ねぇ。護るべきもん護れなくて何が守護者だって話だからな……」
キモオタ「まさか…人質でも取られていて……だからこんな悪事を……?」
孫悟空「ああ、そうだ。弱いとでも何とでも言いやがれ、八戒。だが俺ぁあいつを見殺しになんかできn」
キモオタ「なんでそうと言わないでござるか!」
孫悟空「……あぁ?」
キモオタ「お主が真の誘拐犯に人質を取られていて、本意ではない悪事に加担しているのであれば……我輩見過ごせませんぞ、なんとか人質を助ける方法を考えますぞ!」
孫悟空「いや、テメェには関係のねぇ話だ。だから俺は……」
キモオタ「何を言ってるでござるか!人質など卑劣な行為ですからなwwwお主の友人に瓜二つなのも何かの縁www我輩、お主の人質救出に協力しますぞwww」

306 :◆oBwZbn5S8kKC :2015/07/29(水)23:57:57 ID:Ti0
孫悟空「……信用、出来るのか。こっちの八戒は」
ラプンツェル「うん!私の事も助けてくれたし、シンデレラや桃太郎も助けてくれたって言ってたよ!大丈夫!悟空のことも助けてくれるよ!」ニコニコ
孫悟空「……八戒にそっくりなのは、外見だけじゃねぇってことか。キモいところも節介焼きでお人好しなところまで瓜二つとはな……」
キモオタ「どうかしましたかなwww」コポォ
孫悟空「いいや、なんでもねぇ……どっちにしろこのままじゃ平行線だったんだ。ここはひとつテメェを信用してみるぜ、よろしくな現実世界の猪八戒」ニッ
キモオタ「ちょwwwもう猪八戒殿はいいでござるwwwキモオタでござるよwww」
孫悟空「おう、キモオタだな。だがまぁあまり深くは話せねぇが……事情の説明はしておかねぇとな……あー、どこから話したもんだろうな……」
グレーテル「……」トテトテ
グレーテル(このあたりの瓦礫……血で濡れてるの……)ペトッ
グレーテル(そこから……点々と血が落ちて……奥の部屋に続いてる……)
グレーテル(これって……もしかしてヘンゼルお兄ちゃんが捕まっちゃう時……よくわかんない廃墟の奥からでも帰り道をわかるようにする為に……わざと落としたんじゃないかな……)
グレーテル(……だったら)
グレーテル(これをたどって行ったら……ヘンゼルお兄ちゃんが捕まってる部屋に……行けるかな……?)
グレーテル(……)
グレーテル(……きっとそうなの……この血の跡を辿って行ったら……ヘンゼルお兄ちゃん助けられる……)
グレーテル(待っててね……ヘンゼルお兄ちゃん……今度も、私が助けてあげるからね……)
グレーテル(私はお兄ちゃんの妹……魔女も誘拐犯も……私が全部燃やしつくして……殺しちゃうから……)
グレーテル(だから……また私と一緒に、ずっと一緒に居てね……ヘンゼルお兄ちゃん……)
スタスタスタ

307 :◆oBwZbn5S8kKC :2015/07/30(木)00:03:53 ID:TeT
今日はここまで
玉龍って絵本の西遊記とかだと結構省略されててマイナーっぽいけど
普段は馬で目立たないけど実は龍って設定が好きすぎる
ヘンゼルとグレーテル。とある消滅したおとぎ話編 次回に続きます

328 :◆oBwZbn5S8kKC :2015/08/02(日)22:56:00 ID:e1D
墟 建物の奥
グレーテル(ヘンゼルお兄ちゃんは……とても賢いの、それに簡単には諦めないの……)
グレーテル(森に捨てられちゃったときだって……私は泣くことしかできなかったけど……お兄ちゃんは、ちゃんと帰り道が解るように目印落としてたの……)
グレーテル(今は悪い人に捕まっちゃったみたいだけど……こうして目印を作ってるって事は……お兄ちゃんは諦めてない……)
グレーテル(捕まっても……もう一度立ち向かう準備してる……私と家族を護るために……お兄ちゃんは、絶対あきらめないの……)
グレーテル(だから……私も、頑張るの……お兄ちゃんの、妹だから)
スタスタスタ
グレーテル(……血の跡、この部屋の前で止まってる……)グイグイ
ギィィィッ
ヘンゼル「…っ!グレーテル!?」バッ
グレーテル「お兄ちゃん縛られてる……それに右手血だらけ。早くロープをほどいて、それから右手治さなきゃだね……」ホドキホドキ
ヘンゼル「なんで来たんだ!僕は部屋の中に居ろと言ったじゃないか。今すぐにここを出るんだ!あとは僕が何とかする」
グレーテル「……お兄ちゃんはすごくて賢い……だからなんとかできるなら、もうやってる……なんとかできないから、縛られたままここにいたんだよね……?」
ヘンゼル「そんな事はどうだっていいんだ、グレーテル。あの男の狙いは僕とお前だ、敵側には孫悟空だって居る…ここは危険なんだ、僕に構わず早く逃げて欲しい」
グレーテル「……うん、逃げる……でもそれは……みんな一緒に……だよ。私一人で逃げるなんて……嫌なの……」

329 :◆oBwZbn5S8kKC :2015/08/02(日)22:59:50 ID:e1D
グレーテル「……お兄ちゃん、行こう……ロープ、解けたの……」パサッ
ヘンゼル「グレーテル、助けに来てくれた事は感謝するよ。でも、ここからは本当に危険だ、頼むから先に一人で逃げて欲しい」
グレーテル「……嫌なの。私、お兄ちゃんと一緒に居るの……いっぱい頑張るから、私を足手まといって……思わないで……」
ヘンゼル「そうじゃない、お前は足手まといなんかじゃない。あの魔女に捕まった時も今回も、捕えられた僕を二度も救ってくれたじゃないか。お前は自慢の妹だ」
ヘンゼル「だからこそ、逃げて欲しいんだ。またグレーテルが酷い目にあうのは耐えられない、またお前を救えなかったら僕は……自分を許せない、絶対に」ググッ
グレーテル「……お兄ちゃん、お菓子の家での事……私、本当にもう気にして無いよ……?だから、いつまでも自分を責めるの……やめて欲しいの……」
ヘンゼル「いいや……家に帰れなかったのも、易々と魔女に捕えられた事も、お前にひもじい思いをさせた事も、魔女を殺すなんて決断をさせた事も全ては僕の責任だ」
ヘンゼル「だから僕はお前には幸せになってもらいたい、幸せにしないといけない。グレーテルはもう十分すぎるほど辛く苦しい思いをした、これ以上苦しい思いをする必要なんてないんだ」
ヘンゼル「だから、お前を危険な事に巻き込みたくない。お前は自分の幸せだけ願って暮らしてくれればいいんだ、グレーテル」スッ
グレーテル「……違うの、お兄ちゃん。私は、お兄ちゃんと一緒に……」
キィッ シュバッ
ヘンゼル「……っ!伏せろ!グレーテル!」
グイッ
グレーテル「うぐっ…」ガシッ
小柄な男「自ら助けに来るたぁ、兄貴思いな奴だ。良い妹を持ったなぁ、クソガキ……いいや、ヘンゼルよぉ!」ニィッ

330 :◆oBwZbn5S8kKC :2015/08/02(日)23:02:03 ID:e1D
グレーテル「んーっ……んーっ……」ジタバタ
小柄な男「今度こそ状況を理解したよなぁ、ヘンゼル?」
ヘンゼル「……あんた、今度はグレーテルを人質にするんだね」ゴゴゴゴゴ
小柄な男「使えるもんはなんだって使うぜ、グレーテルは俺が捕えた!生かすも殺すも俺次第だ。さぁ大人しくしろよ、さもねぇとこいつの軟肌が真っ赤に染まる事にn」
グレーテル「……離してっ」ガジッ
小柄な男「うぉっ…クソがッ!何しやがんだこのガキッ!」ブオンッ
ガシャーン
グレーテル「んぅっ……ゲホゲホッ……」ゲホゲホ
小柄な男「クソ小娘が!この俺様の腕を齧りやがって……兄妹揃ってふざけたガキ共め!」ギロッ
ヘンゼル「僕の妹になんて事するんだこいつ……!」ヒュバッ
小柄な男「不意を突いただけで調子に乗るなよクソガキ!お前にどんな魔力が宿ろうと子供が大人に敵うはずがねぇだろうが!!」スッ
ヘンゼル「そういうセリフ、僕は大嫌いだ。もうグレーテルはあんたの手を離れた、この距離だったらその小さな身体をひしゃげる事くらい簡単だ!」ゴゴゴゴゴ
小柄な男「粋がりやがって…!お前等兄妹はもう俺の手のひらの上も同然なんだからよぉ!もう面倒な駆け引きはする必要無ぇんだ!」
スッ
グレーテル「ゲホゲホ……藁の……束…!だめ……お兄ちゃ…その……オジサン……」ゲホゲホ
小柄な男「テメェら二人を同時に口封じ出来るならよぉ!もう俺様の能力を隠す必要なんざねぇ!」シュバッ

331 :◆oBwZbn5S8kKC :2015/08/02(日)23:04:57 ID:e1D
小柄な男「おらよ、クソガキ…!ガキの分際で大人に立て付いた罰だ!」スッ
シュルッ シュルルッ
ヘンゼル「っ…!藁が首に撒きついて…!いいや、こんなもの構うもんか、グレーテルを傷付けた罰を受けるのはあんたの方だ!」ググッ
小柄な男「おっと、もうテメェと正面から戦ってやる理由なんざねぇぜ!」スタタッ
ヘンゼル「逃げるつもり?さっきといい今回といい随分と弱腰なんだね…でも逃がさないよ、僕は」スッ
小柄な男「クックッ、滑稽ったらねぇぜ。そんな挑発はもう意味がねぇんだぜ、ヘンゼル」ススッ
グレーテル「お兄ちゃん、ダメ……!この人の正体、解ったの……この人の能力……藁を黄金に変える魔法だよ……!」
小柄な男「余計な事を言うんじゃねぇ…っと、だがこれでテメェの首にも装着完了だぜ。グレーテル」シュルッ
ヘンゼル「藁を黄金に変える能力…?あんた、まさか……おとぎ話【ルn」
小柄な男「おっとそこまでだヘンゼル!グレーテル!テメェらはもう俺様の名前を叫ぶ事が出来ねぇ!誰かに伝える事もだ!俺様とお前等はもう契約を結んだ!」
小柄な男「その黄金の首輪は俺以外には外せねぇ、壊せねぇ!しかもいつでも締め付けてお前等を殺せる!つまりお前等の生殺与奪は俺様にある!」
小柄な男「そこでお前等の記憶する『俺様の名前』と『ヘンゼルとグレーテルを生かす権利』を交換だ…!俺様がお前等を生かしている間、お前等は俺様の名を口に出来ねぇ!」
ヘンゼル「契約だって?あんたは名前を呼ばれれば魔力を失う、そんな一方的な契約に従う必要なんかないよ、××××……!」パクパク
グレーテル「××××……言えない……私も、あのオジサンの名前知ってるのに……名前、言えない……」
ヘンゼル「どうなってるんだ…!僕達はこんな契約に応じたつもりは無い!こんな一方的な契約なんかありえない!」
小柄な男「アッハッハ!それがありえるんだヘンゼル!相手の承諾なんざ必要ねぇ、わずかでも求めてるなら契約は結ばれる、俺様に主導権のある契約!これはそういう能力なんだからよぉ!」アーッハッハッハ

332 :◆oBwZbn5S8kKC :2015/08/02(日)23:07:06 ID:e1D
ヘンゼル「あんたは確か黄金を渡した対価として王妃の子供を要求したんだったね…ああ、どおりでクソ野郎だと思ったよ」ギリッ
小柄な男「口の減らない野郎だな、ヘンゼル…テメェは状況判断が苦手みてぇだからよぉ、よく説明してやる」
小柄な男「テメェらの首には俺が藁から精製した黄金が巻きついている、こいつを外す方法は俺の名前を叫ぶ以外に無ぇ。万一、俺が名前を当てられる以外の方法で倒されれば…」
小柄な男「テメェがまた粋がって俺を攻撃して、俺が倒れれば…その首輪はテメェらの首を締め付ける。肉に食い込み骨を砕き千切るまでな」
ヘンゼル「……っ」ギリッ
小柄な男「流石にもう手は出してこねぇな。そりゃあそうか、今までは何とか俺を殺せば勝ちだったが……もう俺を殺す事は妹を手に掛ける事と同じだからなぁ!」
小柄な男「本当はさっさと殺してしまっても良かったがな、どうやらグレーテルが連れてきた連中に魔力持ちが居るみてぇだ。この魔力のでかさ、おとぎ話の住人だな?」
グレーテル「……」
小柄な男「だんまりか、まぁいい。本当はテメェらを殺して心臓を食って終わりのつもりだったが、そいつもついでに頂こうじゃねぇか」
小柄な男「そいつが俺様の名を知っているかどうかは気になるところだが……こいつ等の様にもう黙らせちまった方が早ぇな」クックック
ヘンゼル「……」
小柄な男「アッハッハ!随分と大人しくなっちまったなぁ!そりゃあそうだ、その魔力持ちさえ殺せばもう今度こそ俺の名前を知っている奴なんかいない!お前らも俺の名前を口に出来ない!」
小柄な男「つまりよぉ、もう俺様に恐いものはねぇってことだ!アーッハッハッハ!」アーッハッハッハ
グレーテル「お兄ちゃん……」ボソッ
ヘンゼル「大丈夫だグレーテル、今は機会を待とう……あいつを倒す手はまだ、残ってる」ボソッ

333 :◆oBwZbn5S8kKC :2015/08/02(日)23:09:23 ID:e1D
廃墟 キモオタ達のいる部屋
・・・
ラプンツェル「そっか、じゃあ悟空のおとぎ話も誰かに…多分だけど、アリスに消されちゃったって事だね?」
孫悟空「ってことになっちまうか、大体は今話した通りだな。【不思議の国のアリス】のトランプ兵の襲撃、同時にどこかの重要な妖怪がやられちまったせいで【西遊記】は消滅した」
キモオタ「そして孫悟空殿と玉龍殿の二人は他の世界へ移動したと…そういうことでしたな」
孫悟空「そういうこったな、俺には他にも世界移動する手段はあんだがよ…お師匠の事だ、玉龍に連れていかせねぇと俺が【西遊記】に残ると思ったんだろうぜ」
ラプンツェル「悟空って頑固そうだもんねー」ニコニコ
キモオタ「すると孫悟空殿が人質に取られているというのは、その玉龍殿ですかな?」
孫悟空「いいや、違ぇな。玉龍もこの世界のどこかに監禁されちまってるが…あいつの事はさほど心配しちゃいねぇよ」
ラプンツェル「えーっ?でも孫悟空にすっごく懐いてる女の子の龍なんでしょー?心配してないってひどいよ、きっと悟空に会いたがってるよ?」
キモオタ「確かにwww龍とはいえ女子を邪険に扱うなどwwwいくら悟空殿がリア充でも許される行為ではありませんぞwww」コポォ
孫悟空「あいつは守護者じゃねぇがお師匠に着き従ってた期間は俺の次に長いからよぉ、捕えられた程度で騒ぐ必要無ぇってことだ。あいつもお師匠の従者である事には違いねぇ」
キモオタ「悟空殿の話ですと【西遊記】では旅の途中で悪い妖怪に襲われ放題でしたからなwww慣れているという事でござるかwww嫌な慣れでござるがwww」
孫悟空「おう、それにあいつにとって玉龍は世界移動が出来る唯一方法だ、飯くらいは食えてるだろう。それに姿を変えていても龍だからな、そんなやわじゃねぇよ」
孫悟空「それとな、テメェら勘違いしてるみてぇだが玉龍は…」
ラプンツェル「でもでも、玉龍ちゃんが人質じゃないってなると人質に取られてるのってだれー?」

334 :◆oBwZbn5S8kKC :2015/08/02(日)23:11:53 ID:e1D
孫悟空「あいつの名は…わりぃが伏せる。だが、俺と玉龍がおとぎ話の世界を旅するうちに出会った娘だ」
キモオタ「ふむ…娘を人質に取るとはポピュラーながらに外道な輩ですな」
孫悟空「あの男のおとぎ話は既に消滅しちまっているらしい、だからこそ好き放題やりやがる」チッ
ラプンツェル「私は【ラプンツェル】のおとぎ話残ってるけど好きな事してるよー?やりたいことしてー、好きな物食べてー…」ニコニコ
キモオタ「ちょwww話が進まないのでちょっとラプンツェル殿は静かにしてていただきたいwww」コポォ
孫悟空「……続けるぜ、そいつのおとぎ話であの男は人質を取りやがった。殺されたくねぇなら要求を飲めってな…それが俺が護衛となり玉龍で現実世界へ行く事、ってなわけだ」
キモオタ「あれほど多彩な技を持つ悟空殿だからこそ護衛に選んだのでござろうが、それほどの力を持つ悟空殿が逆らえないとなると…なにか魔法がからんでますな?」
孫悟空「あの男の能力は特殊なもんでな、藁を黄金にする。俺があいつを殺せば人質の娘の首に巻かれた黄金がそれに反応して締め付けちまって殺す仕組みだ」
ラプンツェル「首ぎゅーってされちゃったら死んじゃうね……でも、悟空ってすっごい力持ちだから壊せないの?その首輪」
孫悟空「無理に壊そうとすればあいつに締め付けられちまう、それはできねぇ。だがな、あいつを無傷で助ける方法がひとつだけあんだよ」
キモオタ「ほう、してその方法とは……?」
孫悟空「あの男の名前を当ててやりゃあいい、そうすりゃああいつは魔力を失っちまうらしい。そうすりゃあ契約も切れる、あいつを縛る首輪も消えるってぇ事だ」
ラプンツェル「なーんだ!名前当てるだけだったら簡単だね」ニコニコ
孫悟空「…おいラプ公!テメェ本当に俺の話聞いてやがったのか!?簡単ならもう解決してんだよ!」