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キモオタ「我輩がおとぎ話の世界に行くですとwww」ティンカーベル「そう」
Part65


312 :◆oBwZbn5S8kKC :2015/03/24(火)22:46:35 ID:r1T
桃太郎「うぅ……拙者の『鬼屠り』が……侍の魂がキラッキラに……」ウワアァァ
人魚姫「ねぇ赤ずきん、桃太郎あんまり嬉しそうじゃないけどなんで?フツーあんなキレイにデコって貰えたら嬉しくない?」ヒソヒソ
赤ずきん「周囲の目を気にするタイプなのよ、こういう細工は彼の国であまり見かけないから」
人魚姫「なるほどねー、桃太郎は派手なの苦手なタイプかー…オッケー!じゃあその腰の巾着と服もデコってあげるよ、今度はシックな感じにしてあげっから安心しなよ、ほら貸して!」
桃太郎「いや渡さないよ!?きび団子の袋や羽織まで煌びやかにされたらもう拙者何者なんだよ!全身キラキラさせて犬猿キジつれて…道化師か!勘弁してくれよもおおぉぉ!」ウワアァァ
赤ずきん「落ち着きなさいな。私はその刀良いと思うわよ?美しい貝殻と無垢な宝石で彩られた、唯一無二の刀…。悪鬼征伐の英雄に相応しいと思うけれど」
桃太郎「……唯一無二って言えばそうだけど、本当か?本当に良いと思う?」
赤ずきん「ええ、素敵だと思うわよ。帝への申し開きなんて何とでもなるでしょう?あなたはあの世界の英雄なのだからもっと堂々としなさいな」
桃太郎「そりゃそうだけど…うん、ちゃんと説明すればお咎めもない…よな?!うん、なんか落ち着いてきたわ…取り乱してすまん、人魚姫」
人魚姫「いいっていいってー、次からデコる前にちゃんと確認するからー。あっ、じゃあきび団子?の巾着貸してよ、バッチリデコってあげっからさ!」ワクワク
桃太郎「い、いや…拙者は刀だけでいいや…。それより赤ずきんも武器持ってるからそれに細工を施してやってくれ、どうやら赤ずきんはその細工を気に入っt」
赤ずきん「いいえ、私は必要ないわ」ゴソゴソ
桃太郎「えっ……なんでお前マスケット隠して……」
赤ずきん「そろそろお茶の準備が出来た頃合いでしょう。赤鬼を手伝ってくるわね。人魚姫、悪いけれどデコレーションは桃太郎の持ち物に施してあげて頂戴」スタスタ
桃太郎「ちょっ…」
人魚姫「りょーかいー、じゃあその間に桃太郎の巾着デコるよ、ほら早く出して欲しいんですけどー」ワクワク
桃太郎「おいいぃぃ!拙者を囮にするとかずるいぞ赤ずきんお前ええぇぇ!!」ウワアアァァ

313 :◆oBwZbn5S8kKC :2015/03/24(火)22:48:54 ID:r1T
・・・
赤鬼「おーい桃太郎、人魚姫!茶が入ったぞ、休憩にしようじゃないか」
桃太郎「うむ、頂戴するとしよう…」キラキラ
赤鬼「刀の件は赤ずきんから聞いてはいたが…思ったよりあれだな……すまん、オイラがちゃんと見てなかったせいだ」ペコッ
桃太郎「いや、お主が気にすることはない…拙者の刀は鬼ヶ島より凱旋を果たせし『鬼屠り』…眩き煌めきを放つなど造作もない事…」キラキラ
赤鬼「お、おう…そういう納得の仕方なのか……」
桃太郎「という事にしておけば体裁も保てるというもの……否、ということにでもしなければ拙者の胃がもたぬのでな」キリキリキリ
赤ずきん「もうあの国では英雄だというのに相変わらずなんだから…」ズズー
人魚姫「そんなことよりこの飲み物マジでいけるね、もう一杯ある?」
桃太郎「そんなこと!?」ガーン
赤鬼「おう、おかわりはたくさんあるぞ!…ところで人魚姫、赤ずきんにいろんな洋服や装飾品を試して貰ったみたいだが何か得るものはあったか?」カチャカチャ
人魚姫「んっ、まーねー…やっぱりあたしの作るアクセは人魚用だなってのはすごく感じたかなー…そのまんま人間が使うってのはむずかしいっぽいかもねー」モグモグ

314 :◆oBwZbn5S8kKC :2015/03/24(火)22:50:58 ID:r1T
赤鬼「ほう、やっぱり違うか?オイラ達鬼と人間の違いと比べれば人魚と人間の方が似ているように思えるが、肌の造りとかな」
人魚姫「それは立場が違うからそう見えるだけっしょー?あたしには人間と鬼の方が近く見えるけど?だってさ、あたし達は水中で暮らすけど人間も鬼も陸で暮らしてる訳じゃん?」
赤ずきん「確かにそこは重大な違いね、なにしろあなた達には足がないわけだもの」
人魚姫「そうそう、その代わり水中では人間よりマジで早く長く泳げるけどねー…まぁそれはいいとして、姿が違えばアクセの扱いも変わって来るじゃん?なんだっけ、さっき教えて貰った足に着けるアクセ」
赤ずきん「アンクレットかしら?」
人魚姫「それそれ!人魚の国にはないアクセだし、そういう人間の世界だけのアクセも勉強しなきゃなって思ったかなー。逆に人間には尾鰭につけるアクセなんかも必要ないわけだしいろいろと覚えること多いっしょ?」
桃太郎「話に聴いてはいたが…人魚姫は装飾品の研究に随分と熱心なのだな…」
人魚姫「そりゃねー、アクセで生計立てるのは私の夢だかんねー」
赤鬼「オイラは装飾品なんざ詳しくねぇんだが…人間の事を都合に入れなくてもお前さんの作る細工は繊細で綺麗だと思うぞ?それとも装飾品ってのは人魚の世界じゃあ人気ないのか?」
人魚姫「ちょーっと赤鬼?それは失礼っしょー?あたしのアクセは立場隠して売ってもらってるんだけどさ、ぶっちゃけチョー人気あんだからね?」イラッ
赤鬼「ぬぅ、すまん…そういうつもりじゃなかったんだが」
人魚姫「まぁいいけどさー、ぶっちゃけ完全に手作りだから数作れないからレアなんだ、だから欲しがってる娘達に行き渡らないのがちょっと悪いなーって思うんだよね」
桃太郎「しかし、人魚達に人気があるのならばなおさら人間を相手にする必要などないのではないか?」

315 :◆oBwZbn5S8kKC :2015/03/24(火)22:52:59 ID:r1T
人魚姫「んー……まぁそうなんだけど、これはあたしのもう一つの夢って言うか……えっと、あたしがさ、桃太郎の刀デコるのに使った貝殻あるでしょ?」
赤ずきん「ええ、綺麗よねあれ。あんな綺麗な貝殻見たこと無いもの」
人魚姫「あの貝殻はね、ほとんど陸に打ち上げられることがないんだよねー。海流とか?そーいういろんな関係で海底の特定の場所でしか採れない陸では超レアな貝殻なわけ。海底では特別レアってわけじゃないけど」
桃太郎「どおりで……拙者の国で見る貝殻よりも煌びやかな訳だ…希少なものならばそれも納得出来るというもの……」
人魚姫「逆にさー、宝石とかは海底ではレアかなー?だって難破船の貨物から拝借したりしなきゃなんないっしょ?」クスクス
赤ずきん「海底と陸では環境が違いすぎるものね」
人魚姫「そーいうこと、私は陸でしか採れない宝石や植物を使ったアクセも作ってみたいと思ってるわけ!海で採れる素材だけじゃ限界があるっしょ?」
赤鬼「なるほどな、そこで人間向けの装飾品を作って自分の腕を認めてもらいたい…という所か?」
人魚姫「そゆこと!私がキレイでカワイイアクセ作れるって解ってもらえたら、アクセが欲しい人間が宝石手に入れるの協力してくれるじゃん?それに人間に海底の貝殻を捕ることは難しいけどあたしだったら簡単なわけっしょ?」
赤ずきん「…陸に上がれない人魚と海底で自由が利かない人間が手を結んで両者が利益を得る。なるほどね、意外といろんな事考えているのね人魚姫」
人魚姫「それ、ちょっとバカにしてんでしょ?」イラッ
赤ずきん「あら、そんなことないわよ?」クスクス

316 :◆oBwZbn5S8kKC :2015/03/24(火)22:55:24 ID:r1T
人魚姫「とにかくさぁ、私は人間に出来ないことが出来る。その逆も同じ、だったら協力するしかないっしょ?住んでるところが違うとか種族が違うとか関係ないじゃん、その方がぜったい楽しいっしょ!」
赤鬼「おぉ……!」
人魚姫「赤鬼?どーかした?」
赤鬼「うおおおぉ!そうだぞ、そのとおりだ人魚姫!!」ガバッ
人魚姫「うわっ、なんなの赤鬼、急に立ち上がったらびっくりするっしょ!」
赤鬼「種族間の壁なんざ取っ払うべきなんだよな!別種族に恐怖心や疑念を抱く必要なんてこれっぽっちもねぇんだ。同じ生物として仲良く暮らせないわけがねぇんだから!」
人魚姫「へぇー、赤鬼もあたしと同じ考えってわけねー。うんうん、そう思うっしょ?もっとお互いにさぁ歩み寄って生きていけばいいと思うのね」
赤鬼「その通りだ。これを夢物語だと言う奴が多いが…そんな事はねぇ!現に鬼のオイラだって人間である赤ずきんとも友達だ、キモオタや妖精のティンクだって協力して旅をしてる!」
人魚姫「うんうん、人間と人魚が仲良くするなんて今更無理だって大人の人魚は言うけどさ、そんなことないっしょ!だって今、私は人間の赤ずきんと桃太郎、それに鬼の赤鬼と一緒にお菓子食べてダベってるんだからさ」
赤鬼「おうよ、オイラ達はもう友達だ!だから別種族でも歩み寄れる!そうだろう?」
人魚姫「そうそう、赤鬼わかってんじゃーん!じゃあこの勢いで港の方に出てみるのもいいんじゃね?」ケラケラ
赤ずきん(彼もまた人間と鬼の共存を望んでる。人間と人魚が手を結ぶことを望む人魚姫とは共感できるものがあるんでしょうね…)
赤ずきん(だからこそ赤鬼は人魚姫の気持ちがわかるのでしょうけど……実際はそんなに容易い事じゃない)

317 :◆oBwZbn5S8kKC :2015/03/24(火)22:58:24 ID:r1T
桃太郎「だが……人魚姫よ、言葉にして良いことなのか解らぬが……」
赤ずきん「……」
桃太郎「この世界の人間と人魚の間には確執があるのではなかったか……?」
赤鬼「うむ……そうだったな」
人魚姫「あー…うん、まぁ、そうだけどさー」
桃太郎「拙者は…お主が夢に向かう様もまた戦う者の立派な姿だと思う。人々に恐れられている鬼にも赤鬼のような善人が多いことも知っている、他種族同士が歩み寄ることにも賛成だ」
桃太郎「だが……この世界の人間は人魚に憎悪を持たれるほど嫌われている、拙者が口にするのもおかしな話だが……若いお主が一人で事を成すのは危険ではないのか?」
人魚姫「……」
赤ずきん「私も桃太郎と同意見ね」
赤鬼「おい、赤ずきん…!」
赤ずきん「もちろん、私は赤鬼の考えは正しいと思っている。だから彼の目標のためなら協力は惜しまないつもりよ。私自身もそれを望んでいる。けれど……」
赤ずきん「それでも、あなた達の夢は…あなた達に望んでいる共存は容易い事じゃない。現にあなたのお姉さんは私たちを殺そうとした。人間だからと言う理由でね」
人魚姫「それは…!マジで悪かったと思ってるけど、あたしは…!」

318 :◆oBwZbn5S8kKC :2015/03/24(火)22:59:43 ID:r1T
赤鬼「おい、そりゃあ事実だが何もそれを今言わなくても…」
赤ずきん「ごめんなさい、私は決して責めている訳じゃあないの。ただ、考えてみましょう…お姉さんは何故人間だからって私たちを殺そうとしたのかしら?」
人魚姫「姉ちゃんは……人間を憎んでる。人魚の中でもその気持ちはきっと、強い」
桃太郎「……あの人魚は海を荒らされたり自分の仲間の人魚が被害を受け、人間へ恨みを持っていたのだろう。だからこそ人間全体を憎んでいた…」
赤ずきん「赤鬼が村人から鬼だからと言う理由で恐れられ避けられていたようにあの人魚もまた私たちが人間だったから憎かった、だから殺そうとした…」
赤ずきん「悪鬼の被害を受けた村人も、人間から被害を受けたであろう人魚姫のお姉さんも、加害者側の種族へ恐怖や憎悪を向けている。正直に言うと、その気持ちはわかる……」
赤鬼(そうか……こいつの家族や街の住人は……)
赤ずきん「……私は大切な人をみんな狼に喰い殺されて失っている。例え目の前に、人間に対して友好的な狼が現れたとしても……」
赤ずきん「私はきっとその狼を信用できない。もしかしたらマスケットを向けてしまうかもしれない……いいえ、きっと向けてしまうでしょうね」
人魚姫「……じゃあ赤ずきんは、種族が違えば歩み寄ることはできないって言いたいわけ?」
赤ずきん「いいえ、そうじゃない。ただ、あなたのお姉さんが人間を殺したいほど憎んでいるのは、人間から被害を受けたからでしょう?」
人魚姫「心当たりっていうか……原因は知ってる」
赤ずきん「だったら、あなたもその被害に遭うかもしれない。危険な目に遭うかもしれない。そう思うと私はあなたの友達として…一人で軽々しく動くのを止めなければいけない。あなたのためにも」
人魚姫「あー、うん…赤ずきんが言いたいことは…わかる」
赤ずきん「あなた達人魚とこの国の人間に確執を話してくれないかしら?確執の原因が分かれば、人魚と人間の仲を取り持つ手助けが…あなたの望みを叶える手助けが出来るかもしれないから」
人魚姫「……そこまで言ってくれてんなら教えない理由なんてないっしょ、それにあんたたちは姉ちゃんの被害に遭ってるし無関係じゃないしね」
人魚姫「…話すよ、人間と人魚の間になんで確執があるのかをさ」

319 :◆oBwZbn5S8kKC :2015/03/24(火)23:02:59 ID:r1T
人魚姫「……昨日の夜、赤ずきんと桃太郎が姉ちゃんに眠らされたじゃん?」
赤鬼「ああ、そうだ。それでお前の姉の執事がオイラの所に来たんだ」
人魚姫「そうそう、姉ちゃんが赤鬼を騙して殺そうとしたとき、あの執事はなんて言って毒薬を渡してきたか…覚えてるっしょ?」
赤鬼「確か、不老不死の薬だと偽ってオイラに毒を飲ませようとしたんだったな」
赤ずきん「そんなことがあったのね……あなたが命を狙われただなんて私は聞いていないけれど……」キッ
赤鬼「余計な心配かけたくねぇからだ、隠してて悪かった。で……不老不死の薬だとあいつは偽ったんだったな、それがどうした?」
人魚姫「そっ、不老不死の薬。私たち人魚は人間達がそれを欲しがってるって事を知ってるんだよ、だから姉ちゃんもそれなら騙せると思ったんじゃね?」
赤鬼「不老不死……人魚の肉を口にすると得られるという噂は耳にするが……」
桃太郎「うむ、確かに拙者の国でも人魚の伝説は存在する……そして、それには必ず『人魚の肉を食べると不老不死になる』と…そのような文言が出てくる」
人魚姫「そゆこと、人間は人魚の肉を食べると不老不死になれるって信じちゃってるってわけ。そんなの根拠のないバッカバカしいデマだってのにさ」
赤ずきん「という事は、あなた達の仲間は……」
人魚姫「想像の通りって感じ?人間に捕らえられて殺されちゃったってわけ……もちろん人魚を食べたって不老不死になんかならないってのにさ」

320 :◆oBwZbn5S8kKC :2015/03/24(火)23:05:02 ID:r1T
赤ずきん「あなた達人魚は、得られもしない不老不死のために人間達に捕らえられて殺されている……ということかしら?」
人魚姫「まっ、そういうこと。今では襲われる人魚はかなり減ったけどもっと昔はマジで酷かったらしいんだよね、一年間に数十の人魚が人間に殺されたんだって」
桃太郎「ふむ……不老不死に憧れるが故に虚ろな希望にすがってしまうのだろう。情けのないことだ」
人魚姫「他にも見せ物にされたりさ、声のキレイな人魚は歌を歌うためだけの奴隷にされたりって事もあったって聞くんだよね、マジで酷い話っしょ?」
赤ずきん「……」
人魚姫「人魚はさ、海では人間よりも早く泳げるけど捕らえられて船の上にでも叩きつけられたらほとんど自由なんか効かないんだよね、殺されたのもほとんどが若い女の人魚だったって聞くしさ」
赤鬼「むむっ、女子供を狙うとは許せんな…!」
赤ずきん「あなた達鬼の種族も似たような被害にあっていたわね。以前、青鬼に聞いたわ」
赤鬼「ああ、鬼の場合は角だったな……角が万能薬になると言うデマが流行ったことが過去にあってな、あの時も狙われたのは女子供だった」
桃太郎「同じ人間として恥ずべき事だ…そして許せぬ、真に征伐が必要なのはそういった悪意を持つ人間であろう」
赤ずきん「同感ね……」
人魚姫「二人ともさ、あんま気にしないでよ。だってあんたたちは良い人間じゃん?被害を受けているのは人魚なのにそうやっ怒ってくれるんだからさ。悪いのは人間っていう種族じゃなくてさ、その中の一部っしょ」
桃太郎「その通りではあるのだが……我々人間が外道な振る舞いをしたことは事実。すまぬ……」

321 :◆oBwZbn5S8kKC :2015/03/24(火)23:05:54 ID:r1T
人魚姫「でも、他の人魚が私と同じふうに考えてる訳じゃないんだよねー」
赤鬼「人魚を殺す人間がいる……だから人間という種族は全て悪だと決めつけている奴が多いという事だな」
人魚姫「そうそう、あたしの姉ちゃんみたいにね……それにそういう考えを持った人魚の方がずっと多いんだよねー、私みたいな人間にも良い人はいるって考えはチョー少数派」
桃太郎「しかし、一部の悪人の所行とはいえ人間が人魚にした仕打ちを考えれば確執が生まれるのもやむを得ぬ事なのやもしれぬな……」
人魚姫「……これが人魚が人間を憎んでいる理由、他にも海を汚されたとか海の仲間が酷い目にあったとか理由はあるけどさ、一番の理由はこれっしょ」
赤鬼「オイラ達鬼と人間の関係に似ている部分が多いな……これは容易く解決できる問題ではないかもしれん」
赤ずきん「……でも、なんだか……」ボソッ
赤鬼「……赤ずきん?」
赤ずきん「いいえ、なんでもないわ……ところであなたのお姉さんが昨日私と桃太郎を眠らせた歌声…あれはなんなの?」
人魚姫「ああ、あれは姉ちゃんの能力。姉ちゃんは眠りに誘う歌声を持つディーヴァだからさ」
赤鬼「昨日も言ってたがそのディーヴァってはいったい何なんだ?」
人魚姫「美しい歌声で海の平和と人魚の安全を守る正義の歌姫って感じ?でもそんなにはただの表向きの姿なんだよね」
赤ずきん「表向きって…どういうことなの?」
人魚姫「それは表面上の建前ってこと、確かに人魚も海の仲間も守ってる……でもディーヴァは歌姫なんかじゃない」
人魚姫「人間を殺すための兵器なんだよ」

322 :◆oBwZbn5S8kKC :2015/03/24(火)23:10:41 ID:r1T
赤ずきん「人間を殺すための兵器……?」
人魚姫「人魚の国の王族は女にだけ特別な力が宿る…って赤鬼には話したっしょ?」
赤鬼「ああ、歌声に特別な力が宿るんだったな?」
人魚姫「そうそう、王族の女の人魚…今は国王の娘だけ、つまりあたしを入れて6人いる人魚の姉妹だけってこと」
人魚姫「あたしたち姉妹はそれぞれが特別な歌声を持ってんの。どれも他の姉妹とは違うけど、人間に影響を与える歌声って所は共通してんのね」
人魚姫「赤ずきん達を眠らせた一番上の姉ちゃんは歌声を聞いた『人間を眠らせる』。一度眠ると姉ちゃん以外には起こすことが出来ない…まぁあたしは別としてね?」
人魚姫「二番目の姉ちゃんも他の姉ちゃんもみんな特別な歌声を持ってるんだよね、魅了させたり幻を見せたり体を麻痺させたり視力を奪ったり…海の上でそんなことされたらどうなるか、考えなくてもわかるっしょ?」
赤ずきん「まぁ、想像するのは容易いわね……」
人魚姫「その特別な歌声を使って海を守る役目を人魚の国ではディーヴァって呼ぶんだよ、姉ちゃん達はディーヴァとしていろんな海域へ向かってんの。このあたりの海域は一番上の姉ちゃんの担当って事かな」
桃太郎「ちょ、ちょっと待ってくれ……海を守るとは言うがディーヴァってのは意図的に人間を殺しているというのか…!?」
人魚姫「そうだよ、だから兵器だっていったっしょ?姉ちゃん達は人間を殺すためにあちこちの海で歌ってる。こうやって話してる今もきっとどこかの海でどれかの姉ちゃんは船を沈めてる」
赤鬼「……っ!」
人魚姫「さっきも言ったじゃん?ディーヴァは人間を殺すための兵器。姉ちゃん達に人間殺しを命じたあたし達の父親……人魚の王は仲間の命を奪った人間を決して許さない」

323 :◆oBwZbn5S8kKC :2015/03/24(火)23:13:05 ID:r1T
人魚姫「人間が人魚を殺すなら、その前に人間を殺す…海に平和を守るために。そーいう理由で姉ちゃん達はディーヴァを命じられて、それに従ってんの」
赤鬼「それじゃあオイラ達鬼の時と一緒じゃねぇか…復讐のために無関係な人間を襲えば、人間は人魚を憎むようになる!その繰り返しだ、そうなっちまったらもう簡単には止められないんだぞ!」
人魚姫「そんなこと……あたしにだってわかるんだけど?けどあの人たちはそれが解ってないんだよ。それか、解ってるけどもう後に引けなくなっちゃってるのかもしんないけど」
桃太郎「しかし、このままでは状況は悪化する一方……何かしらの手を打つ必要がある。早々に」
人魚姫「だけどさ、だったらどうすりゃいいの?末娘のあたしがあの人に意見して通ると思うの?無理に決まってんじゃん」
人魚姫「だってもう人魚は…ディーヴァは無差別に人間を殺してる。もう、人魚はただの被害者じゃないんだからさ」
赤ずきん「なるほどね……人魚は人間に仲間を殺された。その復讐のために国王は人間を殺すディーヴァという役割を設け、あなたのお姉さんがそれを担っている。ということね?」
人魚姫「……そゆこと、なんであんな事してんのかあたしには理解できない。復讐なんかしたって、殺された人魚は帰ってこないのにさ」

324 :◆oBwZbn5S8kKC :2015/03/24(火)23:16:01 ID:r1T
赤ずきん「……けれど、あなたも王の娘ならディーヴァになるように命じられているんじゃないの?」
人魚姫「命じられているどころじゃないんだよね。人魚は15歳になると一人で海上に出ることが許されるからさ、たぶん15歳になったらすぐにでもディーヴァやらされると思うんだよね」
桃太郎「そのようなしきたりがあるのだな…いや待て、お主まだ15歳ではないのに海上に上がっているではないか……?」
人魚姫「あはは、それはほらバレなきゃいいわけだし誕生日明日だし問題ないっしょ!」
赤鬼「明日だと!?明日にはディーヴァにされるかもしれないのか!?」
赤ずきん「あなた、随分と余裕なのね……」
人魚姫「まぁ元々家を出るつもりでいたからね、これから一度王宮に荷物を取りに行ったらもう帰らないつもりってわけ。まぁさ、なんにしても」
人魚姫「あたしは絶対にいいなりになるのは嫌……でもあの人からしたらあたしの歌声の利用価値は他の姉ちゃんの比じゃないんだよ」
桃太郎「眠りから覚めさせる歌声……か?」
人魚姫「それは応用しただけじゃん、あたしの歌声は思うように『人間を操れる』歌声。あたしが目覚めろと命令したら目覚めるし、眠れと命令したら眠る」
人魚姫「あたしが死ねって命令して歌えば、人間はそれに逆らえない。あたしの歌を聴いちゃったらね」

325 :◆oBwZbn5S8kKC :2015/03/24(火)23:20:16 ID:r1T
赤鬼「うむ、なんとも恐ろしい能力だな…」
人魚姫「でも安心していいって、歌声の効果があるのは人間だけだしあたしは人間を殺すためには絶対に歌わないからさ」
桃太郎「しかし、娘を危険な目に遭わせてまで復讐を遂げたいと思うものなのだろうか…?」
人魚姫「娘と思ってないんだって、あの人は。父親はあたしのことも姉ちゃん達みたいに兵器としてしか見てないんだよ、憎い人間を自在に操れる便利な兵器ってね」
人魚姫「でもあたしはディーヴァにはならない。絶対にね」
赤ずきん「……それで、なにか考えはあるの?家を出てもどうやって生活していくつもり?」
人魚姫「だからほら…とりあえず家を出たらさ、アクセで生計立てるんだって」
赤ずきん「そうは言っても陸に上がれないのだから海中で売るしか無いけれど…それだと居場所がすぐに知られてしまうわよ?」
人魚姫「あーっ、そっか。でもちょっとだったら蓄えもあるしいけるっしょ!」
桃太郎「しかし、その通貨は人魚の国の物なのだろう?商店に出入りしていてはいずれ見つかるのではないのか?娘が戻らなければ王も捜索するであろう?」
人魚姫「……」
人魚姫「あれっ……もしかして、あたしヤバいんじゃね……?」
赤ずきん「結局、具体案は無いわけね……」
人魚姫「とりあえず、浅瀬にはあまり人魚は寄らないから…しばらくはなんとかなるけどさ……どうにかしなきゃヤバいよマジで……」

326 :◆oBwZbn5S8kKC :2015/03/24(火)23:26:38 ID:r1T
赤鬼「まぁ、今後どうするかは一緒に考えてやるとして…明日はお前の誕生日なんだろう?まずはその祝いをやらねぇとな!」
人魚姫「えっ…マジで!?あたしの誕生日祝ってくれんの?」ワクワク
赤鬼「おう!オイラとしては若い娘が家を出るってのは反対だが…事情が事情だ、明日はうまいものでも食って祝おう。それからのことはじっくり考えればいい、そうだろ赤ずきん!」
赤ずきん「ええ、もちろん……協力はするけれど……」
赤ずきん「……赤鬼、あなた忘れていないわよね?明日が人魚姫の誕生日だということがどういうことか」ボソボソ
赤鬼「ああ、明日…王子を助けた人魚姫は声を失う…その先どうなるかも忘れちゃいねぇ。大丈夫だ、でもいいだろう?誕生日に旨いもんを食うくらい悪いことじゃねぇ」ボソボソ
赤ずきん「…それならいいけれど。あまり楽しい思い出を作りすぎると私もあなたも人魚姫も……」ボソボソ
赤ずきん「……いいえ、何でもないわ」ボソボソ
赤ずきん「折角ですもの、私は甘いお菓子でも見繕ってくるわね」フフッ
桃太郎「うむ……是非共に祝いたいところだが拙者はそろそろ国に戻らねばならぬからな…すまぬが祝いは二人に存分にしてもらってくれ、人魚姫よ」
人魚姫「桃太郎これないのは残念だけどさ、今年は誕生日祝って貰えるなんて思ってなかったからチョーテンションあがるんですけど!」
赤鬼「がっはっは!じゃあ明日は楽しみだな!今日と同じ時間にまたくるから忘れないようにしてくれよ、人魚姫」
赤ずきん「それと家を出ていくならくれぐれも気をつけなさいね、怪我なんかしたら大変よ」
人魚姫「オッケーオッケー!チョー楽しみ…!じゃああたし遅くならないうちに荷物まとめなきゃだから帰るね、また明日ね赤ずきん!赤鬼!桃太郎もまたね!」ヘラヘラ
赤ずきん「ええ、また明日」
赤鬼「おう、じゃあな人魚姫!」
桃太郎「うむ、またいずれ会おうぞ…!」
・・・

327 :◆oBwZbn5S8kKC :2015/03/24(火)23:48:56 ID:r1T
海底 珊瑚の王宮 王座の間
スゥ
髪の美しい人魚「失礼いたします、お父様」
人魚王「……随分と遅かったな、私の呼びつけには最優先で応じよ」
髪の美しい人魚「はい、承知しました。お待たせして申し訳ありません」
人魚王「明日はアレが齢15となる日、ディーヴァとしての指導は済ませてあるのだろうな?」
髪の美しい人魚「はい、済ませてあります。少々反抗的ではありますが……」
人魚王「反抗的……だと?」ギロッ
髪の美しい人魚「はい、改めさせるよう言いつけてはいるのですが……未だにアクセサリー制作などという趣味を捨てられないようで……」ヒュッ
ガゴッ
髪の美しい人魚「きゃっ……お、お父様何を……」ゲホゲホ
人魚王「アレの反抗的な態度を改めさせ、ディーヴァとして使えるようにするのが貴様の役目であろう」ギロリ
髪の美しい人魚「も、申し訳ありません…お父様…」
人魚王「指導者としても三流、兵器としても妹に劣るなど…貴様に存在意義があるのか疑わしい、そう思わないか?」
髪の美しい人魚「い、いえ…私はまだディーヴァとして戦えます、ですから…」
人魚王「私を失望させるな。明日は陸の王国の王子が参加する船上パーティが行われると情報が入っている。わかっているな?失敗は許さぬ」
髪の美しい人魚「はい、必ずやお父様の期待に応えてご覧に入れます……」
人魚王「当然だ。貴様は私の命令に従い、人魚の国を平和に導けばいい。ただそれだけだ、わかっているな?」
髪の美しい人魚「はい、ディーヴァは海の平和のために歌うもの…無様な失敗は致しません」

328 :◆oBwZbn5S8kKC :2015/03/24(火)23:50:20 ID:r1T
今日はここまで!
人魚姫編 次回に続きます

329 :名無しさん@おーぷん :2015/03/25(水)00:44:08 ID:8Mf
乙!
なにやらキナ臭いね

330 :名無しさん@おーぷん :2015/03/25(水)15:20:42 ID:0VC
乙!
赤ずきんちゃんはやっぱ狼トラウマなんだろうか(´・ω・`)

332 :名無しさん@おーぷん :2015/03/26(木)06:50:28 ID:L2d
乙!
人魚王もなかなか良い感じのクズっぷりだなwww