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キモオタ「我輩がおとぎ話の世界に行くですとwww」ティンカーベル「そう」
Part161


934 :◆oBwZbn5S8kKC :2016/10/11(火)00:50:44 ID:OJH
雪の女王「あぁ、知っている。貧しい兄妹の話だ、両親に捨てられるという展開は衝撃的だ」
ヴィルヘルム「うん、そうだね…両親に口減らしの為に捨てられるんだ、兄妹が死んでしまう可能性が高い事を承知でね。だから僕はこのおとぎ話を幸せな話に書き換えようとしたけど、兄さんは許してくれなかった」
雪の女王「血も涙もない奴だなヤーコプは」
ヤーコプ「馬鹿かお前達は。ヘンゼルもグレーテルも単なる登場人物、存在しない子供だ。いい大人がそんなものに感情移入をするな」
雪の女王「……」
ヤーコプ「そもそもあのおとぎ話は過去に起きた飢饉が元になっている。子供を捨てる事に躊躇無い親など居ない、だがそうしなければならないほどの大飢饉、それは確かに存在した歴史だ」
ヤーコプ「それを可哀想だからなんて理由で書き換えるくらいなら童話集など出版する意味がない。だから最初、ヴィルヘルムの改変を俺は許さなかった」
ヴィルヘルム「でも僕は頼み込んでなんとか改変を許可してもらった。兄妹の家族構成を少しだけという条件でね」
雪の女王「家族構成…?そんな些細な部分だけ変えたのか?」
ヴィルヘルム「そう、兄さんの言葉は正論だ。だから改変は最低限にすることにしたんだ。元々兄妹は実の父親と母親と暮らしていた、貧しくも清くね。でも…」
ヴィルヘルム「飢饉が生んだ悲劇のせいでヘンゼルとグレーテルは捨てられて魔女に襲われてしまう。しかし自分達を捨てたのが実の両親だというのはあまりに悲惨すぎる」
ヴィルヘルム「せめて、継母の口車に乗せられて捨てられたという内容の方が少しでも彼らの心の救いになるだろう」
ヴィルヘルム「そう思って僕は二人を捨てたのを両親ではなく父親と継母という内容に改変したんだ


935 :◆oBwZbn5S8kKC :2016/10/11(火)01:00:40 ID:OJH
雪の女王「そうだな、確かに兄妹の気持ちを考えればまだ救いはある。少なくとも実の母親は彼等にとって綺麗な存在のままなんだから」
ヴィルヘルム「僕もね子供達が不幸になる物語はやはり辛いんだ。本当なら【マッチ売りの少女】の改変もしたいのだけど」チラッ
アンデルセン「ヴィルヘルムさんの頼みと言えど駄目ですよ。それだけは何があっても譲らない」
ヴィルヘルム「うん、そうだよね。駄目で元々、聞いてみただけだよ」
ヤーコプ「お前は【赤ずきん】の主人公が狼に食われたままなのは可哀想だなどと言って、本来登場しなかった猟師に助けさせておきながら…次はマッチ売りだと?大概にしろよ…?」
ヴィルヘルム「チャールズ君じゃないけど子供たちには笑っていて欲しいでしょ?それに狼に食べられっぱなしだとペローさんの所と被るんだ」
ヤーコプ「今までは言わずにいたが俺には理解が出来ない。どうしてそこまで感情移入をするんだ?」
ヤーコプ「【ラプンツェル】もそうだ、元々は主人公が塔に侵入した王子と逢瀬を繰り返して結果として孕まされる内容だった。それを『母親の気持ちを考えるとやるせない』などと言って改変を求めてくる始末…」
ヴィルヘルム「考えて見てよ兄さん、塔に幽閉してまで大切に大切に手塩にかけて育てた娘が騙されて妊娠させられるなんて、親からしたらショックなんてもんじゃない」
ヤーコプ「だからそこまで感情移入することがおかしいと言っているんだ。ラプンツェルもゴーテルも存在しない!そもそもゴーテルがラプンツェルを幽閉した理由は不明のはずだろう」

936 :◆oBwZbn5S8kKC :2016/10/11(火)01:06:07 ID:OJH
ヴィルヘルム「奪ってきた赤ん坊を育てるメリットなんか魔女にはないじゃないか。何らかの理由で育てているうちに愛着がわいたと考えるのが自然だよ」
ヤーコプ「……」イライラ
ヴィルヘルム「そうなれば娘を守るために塔に幽閉したという説明もつく。そうだとすれば結婚前の愛娘を傷物にされるなんて死ぬほど辛いはずでしょ。だから僕は…」
ヤーコプ「お前は…この際だからハッキリ言っておくがな!お前も大概変人だぞ、そこまで登場人物に感情移入する奴がどこにいる!端から見たら気違いだぞ!」バンッ
アンデルセン「ヤーコプさん、落ち着いて。何もそんなに怒鳴ることないでしょう」
ヤーコプ「アナスンは黙っていろ、これは兄弟の問題だ!それともなにか?ヴィルヘルム、お前はゴーテルの知り合いか何かか!」バンッ
ヴィルヘルム「そんなわけないじゃないか、僕に魔女の知り合いは居ない、」
ヤーコプ「そんなことは知っている!そもそも俺はだなお前のそう言うところが気に入らない!いい歳をしてお前は…!表に出ろヴィルヘルム!」
ヴィルヘルム「望むところだよ。そんなこと言うのなら僕だって不満はある、大体兄さんはいつもいつも…!」
ギャーギャー 
雪の女王「おい、お前達落ち着け。冷静になれ!アンデルセン!お前も止めろ!」
アンデルセン「いつもの事だよ、童話の事になると意見がぶつかって喧嘩になる」
雪の女王「なんでそんなに落ち着いているんだお前は…」
アンデルセン「二人とも童話に対して本気だから喧嘩になる。私や君が割って入って止められるものじゃない」
アンデルセン「店の外でやってくれる理性が残っていただけマシだよ。私達は食事を続けながら待っているしかない。君も座るといい、この焼き物なかなかの味だぞ」モグモグ
雪の女王(やはり作家というのは、みんなどこかしらおかしな部分があるものだな…)

937 :◆oBwZbn5S8kKC :2016/10/11(火)01:11:14 ID:OJH
今日はここまで 『作者』編 次回へ続きます
 ガ チ 喧 嘩 す る 老 人 
次回
今朝タブレットが壊れて買い換えて設定とかしてたら時間が無くなった(言い訳)
次回こそ下の内容やります!
チャールズの弟子期間も終わりを迎えます
そんななか本来の居場所ではない場所に長居している女王にも身の振り方を決断するときが来たようです
過去編、そろそろ終わりです

938 :名無しさん@おーぷん :2016/10/11(火)01:16:20 ID:gMn
ヤーコプの今後にも期待・・

939 :名無しさん@おーぷん :2016/10/11(火)01:26:32 ID:Uh5
乙〜
ペローの赤ずきんは食べられて終わりだったっけ
猟師が出てくるって凄い改変だよなぁ
ラプが孕まされてたのは知らんかったぞ…
とりあえず一緒にヴィルに感謝しようぜ、ゴーテル

942 :名無しさん@おーぷん :2016/10/11(火)14:57:34 ID:W8n
乙です!
ヤーコプさん、ゴーテルに殺されますよ…(笑)
続き待ってます!!

943 :名無し :2016/10/11(火)20:01:29 ID:Uh5
孕まされたラプがゴーテルに捨てられた後男女の双子を産む
…ってのを今日初めて知りました…そんな展開だったとわ…
…いやあれだ、ゴーテル、そのうちラプと王子が結婚したら可愛い初孫がいっぺんに二人も出来るかも知れないと良い方向に考えよう!な!

947 :◆oBwZbn5S8kKC :2016/10/13(木)23:48:15 ID:5aK
キモオタを書きたくなったから書いた単発番外編 【なぞなぞ】
キモオタ「唐突でござるがなぞなぞしますぞwwwパンはパンでも食べられないパンはなんでござーるかwww」コポォ
ティンカーベル「わかった!ピーターパン!」ピコーン
キモオタ「ドゥフフwwwハズレですなwwwというか絶対に言うと思いましたぞwwwさて赤ずきん殿は解りますかなwww」
赤ずきん「そうね…あなたが途中まで食べたパンかしら。私は絶対に食べられないわ」
キモオタ「ちょwwwなぞなぞは精神攻撃する場ではないですぞwwwでは次はヘンゼル殿に聞きますかなwww」
ヘンゼル「僕が帰り道の道しるべとして落としたパン。二人の人間の命が掛かってるんだ、マトモな奴なら食べられない」
キモオタ「そういう状況が限定されるアレではなくwwwというか明らかな私怨がwww次、ドロシー殿ですぞwww」
ドロシー「え、えっと…私が焼いたパンかな…お料理はあんまりだから。ごめんなさい」
キモオタ「ちょwwwドロシー殿の料理スキルは今関係ないですぞwww最後はグレーテル殿でござる、バッチリ答えてくだされwww」
グレーテル「……私とお兄ちゃんとお父さんと死んじゃったお母さんの家族四人で一緒に食べる……パン。もう……二度と、食べられないから……」
キモオタ「な、なんだか申し訳ない…」
グレーテル「大丈夫……気にしてないよ……」
おわり
一例として上げたラプの改変前の反響多くてワロタwww
民間伝承系はエロやグロ多いから改変は仕方ないとも言える

951 :名無しさん@おーぷん :2016/10/14(金)18:42:34 ID:y54
ひゃっほう!単発番外編大歓迎やでイッチ!また暇な時にでも頼む!

954 :◆oBwZbn5S8kKC :2016/10/17(月)00:39:46 ID:Iox
アンデルセンが住む街 料理店の店先
ヤーコプ「ヴィルヘルム、俺はお前の思考や言動を否定することは極力避けてきた。お前はグリム童話集を共に産み出した大切なパートナー、出来る限りは意思を尊重したい」
ヤーコプ「故に今まで口に出さずに居たが…あえて言う。お前の行っている改変は必要の無いものが多い。ほとんどがグリム童話集には不要な改変だ」
ヴィルヘルム「僕は一つとして意味の無い改変なんかしていないと思っている。そもそも兄さんは条件付きとはいえ僕の改変に納得してくれただろう、それを今さら蒸し返すなんてどうかしてる」
ヤーコプ「言ったはずだ、俺が認めたのは童話集にとって必要な改変も存在していたからだと。解りにくい表現、現在の道徳観と合わない内容、過剰な性的表現暴力的場面、それらは確かに加筆修正の必要がある」
ヤーコプ「その場合もあくまで本来の物語を崩さない程度に、最小限に抑えるべきだ。だがお前の改変はどうだ?最小限と言えるか?」
ヴィルヘルム「……確かに僕の改変は元々の内容を大きく変化させたものもある。兄さんがそこに納得できないのも理解できるけど、だけどこれは必要な事なんだよ」
ヤーコプ「童話の登場人物に過剰な感情移入をし、可哀想だの不憫だのという個人的な感情で内容を書き換える事が…必要な事だと?」
ヴィルヘルム「…必要だよ。長い編集活動でずっと物語に関わっていたせいかな…僕は彼等を他人とは思えない、彼等の辛い運命を見過ごせない。兄さんはそうは思えないかい?」
ヤーコプ「思えないな。不憫だとは思うがそれまでだ、童話の登場人物はあくまで創作。現実ではない」
ヴィルヘルム「現実じゃないから、創作だからこそ不幸な運命のままなんて可哀想だと僕は思う。僕が書き換えることでヘンゼルとグレーテルが救われるならそうするべきだ、違うかい?」
ヴィルヘルム「少し筋書きを変えるだけで赤ずきんは死なずに済む。ゴーテルは悲しまずに済む。辛い運命、悲惨な結末を書き換えられるならそうするべきだと僕は思う、それに何の問題があるというんだい?」
ヤーコプ「…呆れて物も言えんな。自分が可哀想だと感じたから助ける、不憫だと感じたから救う。作者という職権を乱用して思うがままの展開に書き換える?都合のいいように?」
ヤーコプ「お前は神にでもなったつもりかヴィルヘルム?」

955 :◆oBwZbn5S8kKC :2016/10/17(月)00:42:32 ID:Iox
ヴィルヘルム「そんなつもりは無いよ、どうしてそんな言い方しかできないんだ兄さんは…!」バッ
ヴィルヘルム「目の前に苦しんでいる人が居たら手を差し伸べるのが普通だよ。僕がしていることはそんなにおかしいことかい!?」
ヤーコプ「ならば道中に見かけた孤児達に手を差し伸べてこい。物乞いをしてきた少年や花売りの娘、お前に全てを救えるというのならやってみろ」
ヴィルヘルム「全てなんて…出来るわけ無いじゃないか!そうやって飛躍した意見を述べて僕を黙らせようなんて…」
ヤーコプ「飛躍?捨てられたヘンゼル兄妹も家の無いこの街の孤児も同じようなものだ。むしろ生きて家に帰れる保証があるだけヘンゼル兄妹の方が幸福だろうが」
ヤーコプ「兄妹は不憫だが物語のなかでは死なない。だがあの孤児は今こうして言い争いをしている間に命を落としていても不思議ではない。それとも何か、童話の登場人物は救いたいが現実世界の人間は知った事ではないのか?」
ヴィルヘルム「そうじゃなない。そうじゃない、でもそれは……」
ヤーコプ「元の赤ずきんのように若くして命を失った人間がこの世界にどれくらいいる?ゴーテルのように苦しみを味わった事の無い人間などいるのか?」
ヤーコプ「この現実の世界では…辛い境遇にある奴は神が救ってくれるのか?理不尽な死を迎えた奴は神がその運命を塗り替えるのか?お前が登場人物達にしてやったように」
ヴィルヘルム「…いや、そんな事はないよ」
ヤーコプ「だろうな。そんな都合のいい話は存在しない。だがそういう事だ、ヴィルヘルム」
ヤーコプ「童話の登場人物の運命は俺達の目に見え、現実世界の人間の運命は俺達に見ることが出来ない。そこに違いがあるだけだ」
ヤーコプ「不幸だろうが幸福だろうがそれはそいつの運命だ、当人が足掻くのならばいざ知れず。他人が干渉できるものでも、していいものでもないだろう」
ヤーコプ「童話は子供達が読むものだ、全てを包み隠さずとは言わないが…現実の厳しさを伝えることも大切なことだと俺は思うがな」
ヴィルヘルム「……」
雪の女王「……」コソッ

956 :◆oBwZbn5S8kKC :2016/10/17(月)00:45:39 ID:Iox
料理店 店内
カランコロンカラーン
雪の女王「……」スッ
アンデルセン「どうかしたか?二人の様子を見に行ったかと思えば、戻った途端に俯いて」
雪の女王「いや…ヤーコプがもっともな事を言っていてな。少し、考えさせられた」
アンデルセン「フフッ、君にそんな顔をさせるとは流石はヤーコプさんだな。聞こうか、彼は何を言っていたんだ?」
雪の女王「…現実世界の人間も、おとぎ話の世界の人間もその運命に可視性があるかどうかの違いがあるだけで本質的な事は変わらない。というような事をな」
アンデルセン「ヤーコプさんがそんなことを…確かに成り立ちや住む世界が違うだけで私達と君達の間に大きな違いなんか無い。どちらもそれぞれの世界で暮らす一人の人間だ」
雪の女王「…私は自分達おとぎ話の世界の住人をどこか特別視していたのかもしれない」
雪の女王「現実世界の作者が童話を産み出し、その筋書き通りの運命を持った人々が暮らす世界が生まれる。それがおとぎ話の世界」
雪の女王「辛い運命や結末を抱えている人物がいればそれは作者の責任。唯一書き換えが出来る作者にはそれを正す義務があると以前は考えていたが……それはやはり違う」
アンデルセン「……」
雪の女王「私達は特別な存在なんかじゃない、数ある世界に存在する多くの生き物の中のひとつに過ぎない。その運命が気に入らないからと他人を恨んだり書き直させるのは間違っている」
雪の女王「望んだ未来というのは誰かに頼るのではなく、自分達の手で手繰り寄せるものなのかもしれない」
雪の女王「作家のお前が子供達の幸せを祈って童話を書いたように、各々が自分に出来る事で未来を変えるべきなんだろうな」

957 :◆oBwZbn5S8kKC :2016/10/17(月)00:52:53 ID:Iox
アンデルセン「私の耳を切り裂いた人の言葉とは思えないな、やはり君は変わったよ。丸くなった」クスクス
雪の女王「茶化さないで欲しい、私は真面目な話をだな…」
アンデルセン「そうは言っても、君達の運命は抗いようのないものだろう。結末を変えれば物語は消える、努力で変えられるものじゃない」
雪の女王「それを言われると困ってしまうが…」
アンデルセン「だが、おとぎ話の結末を変えられなくてもおとぎ話の世界の未来は変えられる」
雪の女王「……どういう事だ?」
アンデルセン「例え話だが…【マッチ売りの少女】の世界ではマッチ売りは死んでしまう結末だ。その運命は変えられない」
アンデルセン「だが…彼女が亡くなったその先の未来は変えられるだろう。私が書いたのは彼女が天に召されるまでだ、その後の世界がどうなるかまでは書いていない。つまり良くもなるし悪くもなる」
アンデルセン「そのままならばおそらく、彼女の死後も世間は何も変わらない、同じことが繰り返されるだろう。だが彼女が望み、誰かの心を動かせたのならば…自分は死んでもその後の世界を少しでも良いものに出来るかもしれない」
雪の女王「そうか…その世界に存在しているのは物語を動かす登場人物だけじゃない。物語には直接関わらない人物も大勢いるのだからな」
アンデルセン「彼女と関わる事で心を動かされた人物が現れる可能性もある。もしかしたら彼女の優しい想いを引き継ぐ者がいるかもしれない」
雪の女王「物語が結末を迎えた後も世界は存在し続ける訳だからな…そういう考えもあるのか」
アンデルセン「…だがこれは仮説に過ぎない、それも相当都合のいい仮説だ。そもそもあの世界の人間は他人に興味がない人間がほとんどだからな。言ってしまえばこれは単なる希望的観測だ」
雪の女王「いいや…そうだとしても素敵な考えだ。少なくとも私はそうであると信じたい。運命には抗えなくても変えられる何かが私たちにもあるということを信じたい」
アンデルセン「…信じても良いんじゃないか?君達はおとぎ話の登場人物である前に一人の人間なんだ」
アンデルセン「現実世界の私達に出来て君達には出来ないなんて道理は無い。誰だろうと未来を変える力を持っているものだ」

958 :◆oBwZbn5S8kKC :2016/10/17(月)00:56:02 ID:Iox
アンデルセン「というか、君はこうして現実世界に滞在して私の考えを含む様々なことを知り、そして経験しているんだ」
アンデルセン「自分の未来をより良いものに変える位の事はして貰わなければ困る。そうでなければ私は話し損、殺されかけ損だ」クスクス
雪の女王「あいにくだが【雪の女王】が結末を迎えても、私は倒されたり何かを失ったりする訳じゃない。より良い未来に…と言ってもそもそも特に不幸になるという訳でも無い、それはお前も知っているだろう」
アンデルセン「そうか?君の性格だとさらってきたカイを相当可愛がる事になると思うぞ。君は子供好きだからな、辟易されるほど撫でたりするに決まっている」フフッ
雪の女王「それは…確かにそうかもしれないが…」
アンデルセン「一緒に住んでいた少年がある日突然居なくなる。淋しい食卓。君が咳をしても心配する人は居ない。君は広い広い宮殿にただ一人で住み続ける事になる。あぁ、それはとても寂しいだろうな」
雪の女王「や、やめてくれ。想像しただけで気が滅入りそうだ」
アンデルセン「だがなにもしなければきっとそうなるぞ?カイとずっと宮殿で暮らすことは出来ないが…君が寂しさを感じず暮らせる方法は必ずある」
アンデルセン「元の世界へ戻ったらなんとかその方法を探しだす事だ。街に降りてそこの人々と生活してもいい、別の世界に移り住んでみるのもありだ。他には、そうだな……」
雪の女王「君はつくづくおかしな奴だ。お前にとって私は数ある作品の登場人物の一人に過ぎない。物語が完結した後の事まで考えなくてもいいだろうに」
アンデルセン「何もおかしい事なんてないさ、私は君を産み出した作者なんだ」
雪の女王「それが…何か関係あるのか?」
アンデルセン「大いにあるとも。君も知っての通り作者と一言で言っても様々な人間がいる」

959 :◆oBwZbn5S8kKC :2016/10/17(月)01:00:09 ID:Iox
アンデルセン「童話の歴史や存在事態を大切にする作家。童話の登場人物を大切にする作家。従来の在り方にとらわれず楽しさを追求する作家、の見習い」
アンデルセン「そして私のような童話作家もな。他にも上げればキリがない程だ。だがどんな作家にも共通することがある。何か解るかい?」
雪の女王「…いいや、何なんだ?」
アンデルセン「私の持論だが…童話作家は例外なくおとぎ話という作品に魅了されている。そして、自分の作品や登場人物を愛している」
アンデルセン「ヤーコプさんだってああ言っていたけれど童話の登場人物を嫌っている訳じゃないんだ。ヴィルヘルムさんとは方向性いが違うだけで童話を大切にしている」
雪の女王「自分の作品を、愛している…か」
アンデルセン「あぁ。私達はとにかく童話が大好きでおとぎ話を書きたくて書きたくて仕方がない。そうして生まれた童話を作家は我が子のように愛するのさ、その物語だけじゃなく登場人物さえも。童話作家というのはそういうものさ」
アンデルセン「私も自分の作品全てを愛している。当然【雪の女王】もカイもゲルダも、そして女王…君の事もだ」
雪の女王「……」
アンデルセン「それに私は君を良き助手であり友人だとも思っている。友人の幸せを願うのは当然だろう?」
雪の女王「…友人、か。大作家先生にそう思って貰えるとは光栄な限りだよ」フフッ
アンデルセン「フフッ、君こそ茶化さないでくれ、私は真面目な話をしているんだぞ?」フフッ
アンデルセン「今の生活は私も気に入っている。だが君もいずれは自分の世界に帰らなければいけない。いつまでもこの世界にいることは…出来ないのだから」
アンデルセン「ならば…せめて君が元の世界へ帰った後の事を案じるくらいはさせてくれ。私に出来るのはそれくらいだ」

960 :◆oBwZbn5S8kKC :2016/10/17(月)01:04:22 ID:Iox
雪の女王「……今は問題無いが私がずっと帰らなければ【雪の女王】の世界が消滅してしまうからな」
アンデルセン「……あぁ、私としてはおとぎ話が消えてしまうのは作者として、困る」
雪の女王「……」
アンデルセン「……」
雪の女王(……途端に暗い雰囲気になってしまった)
雪の女王(私だって気がついていなかった訳じゃない。私は本来、ここに居るべき存在ではない。アンデルセンが童話に込めた想いを知った今、もうここにいる理由はなくなっているんだ)
雪の女王(だが…私の正直な気持ちを言うのなら……)
雪の女王(いいや、それは…ワガママだ。それを通すことは決してしてはいけない、それはアンデルセンが産み出した童話を消してしまうことになるからだ)
雪の女王(とはいえ…避けたい話題ではあった。あぁ、沈黙が辛い。ヤーコプとヴィルヘルムはまだ戻って来ないのか?この沈黙が続くくらいなら険悪な二人と食事をする方がずっとマシだ)
二人「……」
雪の女王(駄目だ。間がもたない、ひとまず二人の様子を見てくるとか理由つけてこの場を離れて…)
チャールズ「ちょっとちょっとー!何でこんなお葬式ムードなんですかー!俺、せっかく来たってのにこの空気で飯食うの嫌ですよ!?」
チャールズ「アレなら幼女の話します?場がパッと明るくなることうけあいですよ!」ヘラヘラ

961 :◆oBwZbn5S8kKC :2016/10/17(月)01:06:39 ID:Iox
アンデルセン「チャールズ、アルバイト先に向かったんじゃあなかったのか?ずいぶん早いな」
チャールズ「いやー、そうだったんですけど。奥さん倒れちゃったでしょ?そんな状態で店開けてても店長が奥さん心配してソワソワソッワソッワしててもー…仕事にならないから閉めましょって言ってやりましたよー」アハハ
チャールズ「で、皆さんに合流しようとフラフラ探してたんですけどグリム両先生が店先で口喧嘩してたんですぐにわかりましたよー!」
アンデルセン「そうか、まぁ彼等もじきに和解して戻ってくるさ。君も何か注文するといい、空腹だろう?」
チャールズ「ペッコペコですよー、何にしようかな…あっ、すんません店員さん!あの幼女が食べてるのと同じ奴ください!」キリッ
アンデルセン「…注文まで幼女に影響されることはないんじゃないか?」
チャールズ「いやいやー、見てくださいあの笑顔。あの料理絶対うまいですよ。俺は断然、幼女のチョイスを信用します」
雪の女王(こいつは相変わらずアレだがとにかく助かった…これでなんとか場の空気が明るくなる。チャールズに感謝だな)
チャールズ「ところでお二人はなんであんなに暗かったんですか?何の話してたんです?教えてくださいよ俺にも、なんか気になるんで!」ヘラヘラ
雪の女王(折角雰囲気良くなったのにこいつ…察しろロリコンめ!)キッ
チャールズ「えぇっ!?先輩なんか怒ってません!?なんで睨むんですか!?」
アンデルセン「対したことは話していないよ、チャールズ。ただ…彼女もそろそろ私の助手を辞めなければならない時が近くてね、その話をしていたんだ」