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キモオタ「我輩がおとぎ話の世界に行くですとwww」ティンカーベル「そう」
Part129


780 :◆oBwZbn5S8kKC :2016/02/13(土)00:21:03 ID:AcB
かぐや「わ、私が悪党…?」
ネロ「そうだよ、かぐやさんが…あなたがコゼツおじさんを殺すことでこの世界は形を留めていられなくなった」
ネロ「コゼツおじさんにはまだ【フランダースの犬】の登場人物として役割があった、それなのに殺してしまえばどうなるか…あなたは知ってたはずだよ」
かぐや「それは…!確かに私は知っていたわ、おとぎ話の展開に必要な登場人物が死んでしまえば、物語が立ち行かなくなって…消滅してしまう」
ネロ「それをわかっていながら…あなたは殺したんだ。僕の幸せの為だと言って…自分の都合でコゼツおじさんを殺した」
かぐや「コゼツを殺したから私が悪党だって言うの!?ま、待ってよ…確かに私はコゼツを殺した、その結果この世界が消えてしまってもいいと思ったことも事実よ。でも…それはあなたの事を救うためだったのよ!理由あってのことなの」
ネロ「あなたに…罪の無いコゼツおじさんを殺すような理由があったって言うの?」
かぐや「ええ、私はアントワープであなたと別れた後この村に向かっていたの。その途中でコゼツに出会った」
かぐや「コゼツは落としたお金を探してたみたいだったけれど、そこで…少し口論になったの。その時、言ってしまったのよ…あなたがコゼツのお金を拾う事を」
ネロ「……それで、どうしたの?」
かぐや「私は真実を教えてあげたわ、お金はネロが拾うけれどそれはキチンとコゼツの家に届けられるって事をね。でもあいつは…それを信じなかった」
かぐや「コゼツはあなたを泥棒扱いしたわ、貧しいネロの事だから拾ったお金を素直に返しに来るわけがないってね。それだけじゃない…あの男はネロなんか死んでしまえばいいとすら言ったのよ?」
かぐや「あなたが望む結末のひとつに、コゼツと画家の先生があなたを認めると言うモノがあるけれど、私にはこの男の事をとてもじゃないけど信用できなかった」
かぐや「ネロを蔑み馬鹿にするコゼツが…この数時間後に改心するなんてとても信じられなかった。あなたの事を認めて今までの罪を悔やむとは到底思えなかった」
かぐや「あなたが望む結末を迎えられるとは思えなかった」

781 :◆oBwZbn5S8kKC :2016/02/13(土)00:23:00 ID:AcB
ネロ「だから…殺したっていうの?」
かぐや「そうよ、コゼツは改心の余地の無い根っからの悪党だった。あなたの運命を委ねるには…信用できない人物だった。だから殺した」
かぐや「だからいっその事あなたの周囲の悪党を全て殺して…あなたを連れて別の世界へ逃げようと思ったのよ」
ネロ「それを僕が望んでいないって、考えなかったの?」
かぐや「望んでいるとか望んでいないとかじゃなく…あなたが幸せになるにはもうそれしか方法がなかったのよ」
かぐや「アントワープであなたの決心が硬い事を知って、一度はあなたの望む結末に協力しようと考えたわ。でも…それは意味の無い事だってすぐに気が付いた」
かぐや「ネロ…あなたは優しい。でも周りの連中もそうだとは限らない、コゼツがあなたを疑ったように…村の連中やアロアがあなたを助けてくれなかったように…」
かぐや「この世界にあなたを幸せに出来る人間は誰一人いなかった。そう、私以外には…誰一人」
ネロ「……」
かぐや「さぁ、ネロ…急いでこの世界から逃げましょう。お腹にガラスなんか突き刺して…きっと内臓を傷付けてる、すぐにお医者様へ…」
ネロ「…僕に近づかないでくれ、それ以上近寄れば…僕はこのガラス片をあなたを突き刺す」
スッ
かぐや「…どういうつもり?私に、そんなもの向けて…」バッ
ネロ「……言ったはずだよ。僕にとってはもう…かぐやさんはただの悪党だって」

782 :◆oBwZbn5S8kKC :2016/02/13(土)00:26:41 ID:AcB
かぐや「ネロ、そんなものは捨てて頂戴。冗談はやめて…そんなもの握るから手のひらだって怪我してるじゃない…」
ネロ「…こうでもしないとあなたは無理矢理にでも僕をこの場から連れ去るだろう」
かぐや「どうして私にそんなモノを向けるの?私は…ネロの事を救おうとしてるのよ?あなたの味方なのよ?そんな事は解りきってる事じゃない」
かぐや「私の事姉の様だって、言ってくれたじゃない。ほら、私に全てを委ねて…その傷も何とかしてあげるから。私に治癒は出来ないけどどこか別の…」スッ
ネロ「……僕の側に近寄らないで。僕はもうあなたの事を姉だとも家族だとも……思って無い」
かぐや「……っ!」
ネロ「でも、出来る事なら殺したくは無い…。でも、近寄られたらなにをするかわからない。僕は今…とても、とても…悔しいんだ…この世界を消される事が…」
かぐや「どうしてそんなにこの世界の結末にこだわるの…?ネロ、私が悪かったのなら謝る…だから家族じゃないなんて言わないで。あなたに…そんな風に言われるのは、とても…辛いわ」
ネロ「……あなたは不思議に思わなかった?僕がどうしておとぎ話の主人公でありながら、この世界の事も結末の事も知っているのか」
かぐや「考えた事も無かったわ…私はお父様に自分の世界がおとぎ話の世界だと教わったけど…)
かぐや(でも確かに…私が旅してきたおとぎ話の世界の主人公たちはそのほとんどが自分の世界がおとぎ話であると知らなかった…)
かぐや(主人公はおとぎ話の核。特に悲惨な結末のおとぎ話の場合、その未来を主人公が知っていることは…都合が悪いはず。だから本来は知らない筈だ…)
ネロ「……以前、僕の元に一人の女性が現れたんだ。彼女は自分の名をウィーダと名乗った」
ネロ「ウィーダはこのおとぎ話【フランダースの犬】を生み出した作者…僕の運命を書きつづった現実世界の女性だよ」

783 :◆oBwZbn5S8kKC :2016/02/13(土)00:30:49 ID:AcB
かぐや「この世界を生み出した作者が…この世界に?そんなことが…あり得るの?聞いたことないわよそんな事…」
ネロ「信じられないかもしれないけど事実だよ。僕は別の世界との交流が無いから…これが特殊な事なのか一般的な事なのか解らないけどね…」
ネロ「本当はこの事を誰かに話すつもりなんか無かった、もちろんあなたにも話さないでおくつもりだった」
かぐや「…でも聞かせて頂戴、あなたがこの世界の結末にこだわる本当の理由がそこにあるんでしょう?」
ネロ「……ウィーダは僕に【フランダースの犬】の一部始終を教えてくれたよ。アロアとの事、お爺さんの事、仕事を失う事、そして…結末の事」
ネロ「初めて僕が迎える結末を聞いたとき、確かにショックだったけど…でも不思議と怒りは湧いてこなかった、救いのある結末だったから納得できた」
ネロ「それに、僕にその事を話すウィーダは終始泣きながら僕に何度も謝っていたよ。こんな結末にしてごめんなさい、あなただけ辛い思いをさせてごめんなさい…って」
かぐや「…その女はあなたを悲惨な運命に縛り付けた張本人なのよね?泣いて謝るくらいならそんなことしなければいいと思うけれど」
ネロ「…僕には彼女の気持ちがわかった。一応僕だって絵描きのはしくれだから…絵描きも作家も作品を生み出すっていう点は同じだから」
かぐや「その女の気持ち…?」
ネロ「作家にしろ画家にしろ、自分の作品には愛情を持って接するよ。だからウィーダは僕を苦しめる為に【フランダースの犬】を生み出したわけじゃないってすぐに理解出来た」
かぐや「…でもそれは主人公のあなたが不幸になった方が、展開が盛り上がるからじゃないのかしら?」
ネロ「それなら、パトラッシュとも離れ離れで聖堂にたどり着けずに僕を死なせると思うけど」
かぐや「……」
ネロ「ウィーダは言っていたよ、現実世界で【フランダースの犬】はとても高い知名度を得る事が出来たって、多くの人に読んで貰えたって」

784 :◆oBwZbn5S8kKC :2016/02/13(土)00:33:00 ID:AcB
ネロ「物語に感動して手紙を送ってくれる人も居たって聞いたよ。僕達の運命に涙してくれた人がたくさんいたってね」
かぐや「現実世界の人間達が流した涙で、あなたが幸せになれるわけでも無いでしょう」
ネロ「そうかもしれないけど、でも…僕はね、それがとても嬉しかったんだ」
ネロ「僕には世界中の人を感動させる絵を描く事はできなかった。でも…僕の運命は、僕の人生は現実世界で多くの人たちに感動を与えていた」
ネロ「それがすごく、凄く嬉しい。人々に感動を与えたあのルーベンスの絵のように、僕達の存在は人々に感動を与えられたんだ」
ネロ「だから、僕は大きな成功も名誉もいらないと言ったんだ。元々の結末でも十分幸せだったけれど、それを聞いて更に僕は救われてると感じたよ」
ネロ「元々与えられた僕の運命を聞いて、現実世界の人たちは悲惨だと同情して泣いてくれただろうけど…それでもやっぱり僕自身は幸せだ」
ネロ「そうやって伝えたら、ウィーダはまた泣いちゃって…それからしばらくして彼女は現実世界へ帰って、二度と会う事は無かった」
かぐや「……あなたは本当に一切その女を恨まなかったの?その女はあなたを…」
ネロ「恨まないよ。それにウィーダが書きつづったと言ってもこれは僕の人生の物語だ、そこに幸せや価値を見出せるのは僕だけなんだ」
ネロ「だから…何度も言うようにあの結末に不服なんか無かったんだ。むしろ誇りにすら思っていた」
ネロ「…それを、あなたは奪った。僕はそれが悔しいし、許せない」

785 :◆oBwZbn5S8kKC :2016/02/13(土)00:34:28 ID:AcB
かぐや「そんなにこの世界が大切なら、もっと早くその話をしてくれれば良かったのに…!」
ネロ「言ったところで信じて貰えないかもしれないと思ったし。それになにより…あなたは優しい面もたくさんあったけれど、どこかで過激な部分が見え隠れしていた」
ネロ「…最悪の場合、現実世界に乗り込んで無茶苦茶するかもしれないって思えた」
かぐや(……否定は、出来ない)
ネロ「ウィーダはもう現実世界ではずっと昔に亡くなってると思う。けれどおとぎ話は語り継がれていく、僕の運命に感動してくれる人はきっと今でも居るはずだ」
ネロ「そんな世界を無茶苦茶にさせるわけにはいかない。だから、現実世界の話題には極力触れないように…この事は言わなかった」
かぐや「……」
ネロ「でも、それも結局無意味になっちゃったね…こうやってあなたに無茶苦茶にされて、この世界は消えてしまうんだから」
ネロ「あなたにとって大切なのは可哀想な人を助ける事だけ、その世界がどうなろうと知った事じゃなかったんだろうけど…」
ネロ「もうこの際だからはっきり言う、僕は…あんたが許せない」
かぐや「……」
ネロ「僕は何度も言った、元の結末で満足してると。でも最後の最後で…結局あなたはこの世界を壊したんだ」
ネロ「ウィーダが伝えたい事が詰まったこのおとぎ話、現実世界の人たちを感動させたこのおとぎ話、僕のささやかながら幸せな結末…」
ネロ「それを自分の正義感を押し付けて無茶苦茶にしてしまったあなたを…僕は軽蔑するよ」

787 :◆oBwZbn5S8kKC :2016/02/13(土)00:36:32 ID:AcB
かぐや「……ネロ、ごめんなさい。私は、貴方を助けたい一心で」
ネロ「……」
ネロ「それでも、やっぱりあなたを許せない。あなたを許す事はできない」
かぐや「……」
ネロ「……もう、僕は長くない。最後くらい、パトラッシュと二人で逝かせて欲しい」
かぐや「……わかったわ」スッ
ネロ「パトラッシュ、側においで。僕は一足先に神様の元に向かう事になりそうだ」
パトラッシュ「…くぅん」ペロペロ
かぐや「……さようなら、ネロ」スッ
パタンッ
パトラッシュ「くぅんくぅん…」
ネロ「大丈夫だよパトラッシュ…この世界は消えて、現実世界の人たちは僕達の事を忘れる。でも…僕達が多くの人に感動を与えた事は事実なんだ、それは嘘にはならない」
ネロ「僕がかぐやさんを恨んでも一緒に過ごした楽しかった日々が無くならないようにね……それだけは嘘じゃ無かった。こんな別れになるのは嫌だったけど…」
パトラッシュ「わぅん…」
ネロ「おやすみパトラッシュ、アロア……さよなら、かぐやさん」

788 :◆oBwZbn5S8kKC :2016/02/13(土)00:38:26 ID:AcB
フランダースの犬の世界 崩壊していく村
ゴゴゴゴゴ ボロボロボロ
「うわあぁぁ!!もうおしまいだぁぁあ!!」
「空が落ちてくる…風景が崩れていく!民家が牧場が…何もかも消えていく…!」
「終末だ…もう私達にはどうにも出来ない…ただ死んでいくしか…!!」
ワーワー ギャーギャー
かぐや「……」トボトボ
かぐや(ネロが言った通り。今まで、可哀想な人を助ける事だけが重要だった、だから真面目に考えたことなんかなかった、世界が消えると言う事がどういう事か…)
かぐや(ただ世界が一つ消えるだけじゃない。そこに託された思いも何もかも全てが消える、現実世界の人間が感じた事も想った事も巻き込んで何もかも消してしまう)
ギャーギャー ウワアアアア
かぐや(こんな小さな村でさえ見た事も無いような大混乱…阿鼻叫喚…。崩れていく世界、死んでいく住人…まさに地獄絵図)
かぐや「……これを引き起こした私は、確かに悪党ね」
かぐや「……」
かぐや(私が今までに救ったと思っていた世界でも…同じような事が起きていたのね…)
かぐや(私が誰かを救えたと思っていた裏で、崩壊していく世界の中で多くの人が絶望していた…。現実世界でおとぎ話が消滅していた。そんなものに見向きもせず、私は次の世界を目指していた)
かぐや(自分が可哀そうだと思う者だけ救い、それ以外には目も向けなかった…)
かぐや「……独りよがりな正義、ね」トボトボ

789 :◆oBwZbn5S8kKC :2016/02/13(土)00:40:22 ID:AcB
ギャーギャー ウワワワワ タスケテクレェェェ
かぐや「……」トボトボ
ーーネロ「今のかぐやさんは、僕にとって世界を壊して僕を不幸にした……ただの悪党だよ」
かぐや「私は…正義でも何でもない悪党……」
ーーネロ「……僕の側に近寄らないで。僕はもうあなたの事を姉だとも家族だとも……思って無い」
かぐや(私を姉だと慕ってくれたのに…助ける事が出来なかった。それどころか彼を裏切るような事をしてしまった、私は…私は…)
かぐや「何をしてるんだろう、私にとってネロは大切な人だったのに…彼の言葉を聞きいれることもできず、自分勝手な行動をして…大切なおとぎ話まで無茶苦茶にして…」
かぐや「……。大丈夫。不安に押しつぶされちゃいけない、私は……正しい。うん、うん……私は間違って無い……」
かぐや(大丈夫よ……私は正しい、私は正しい。ネロの事は救えなかったけど…あんな優れた力を持つ私は神に選ばれた存在なの……)
かぐや(……)
かぐや(……本当に?本当に私は正しいの?ネロを救う事が出来なかったのに?)
かぐや(……もう、私にはわからない)
かぐや(ネロを救いたい一心でやっていた事なのに、結局は彼の望む未来を…大切なおとぎ話を奪い取っただけだった)
かぐや(……私は、私がしてきた事は……)
かぐや「なんだったんだろう…私が正義だと思っていた事は…私が今までやってきた事は…なんだったんだろうか…」
かぐや「ごめんなさいネロ…ごめんなさい…私は…私は……」ポロポロ

790 :◆oBwZbn5S8kKC :2016/02/13(土)00:43:00 ID:AcB
かぐや姫の世界 月の都 王宮 かぐやの自室
かぐや「……」ボーッ…
月の王「かぐや、私だ。入っても構わないか?」
かぐや「……今は、一人にしてください」
月の王「君が望むのならそうしよう、だが…長い間家を出ていた娘が帰ってくるなり部屋に閉じこもっては、父親としては心配だ」
月の王「あれからもう一週間、その間君はろくに食事もとってないそうじゃないか」
かぐや「……」
月の王「外の世界で何があったのか知らないが、父に聞かせてはくれぬか。そろそろ…君の中での気持ちの整理もついたのではないか?」
かぐや「……」
月の王「私は王だ。君よりは数多くの逆境や困難を乗り越えてきた、力になれると思うのだけどね」
かぐや「……どうしてこうなったのでしょうか、お父様」
月の王「……話してみなさい」
かぐや「私は…以前月の都に下りた時、一人の悪党に遭遇しました。都では有名なならず者で、役人すら手を焼いている様子。民達はその存在に怯えていました」
かぐや「私がその悪党を押しつぶすと、民からは感謝され街には笑顔が戻りました。それがとても嬉しかった…これが私が初めて悪党を倒した時の話です」
かぐや「あれから月日は経ちましたが、私はいつだって困っている者の為弱き民の為に正義の為に戦っているつもりでした」
かぐや「それが何故…どうしてこんな事になってしまったのでしょう…」

791 :◆oBwZbn5S8kKC :2016/02/13(土)00:44:38 ID:AcB
かぐや「私は結局、大切な友を失っただけでなく彼から何もかも奪ってしまった」
かぐや「彼を救いたかっただけなのに、笑顔になって欲しかっただけなのに…」
月の王「良かれと思った行動が裏目に出てしまったというわけだね?」
かぐや「…はい」
月の王「そうか、それは大層辛かっただろうね。でも自分にとっての善が他人にとっては悪に映ってしまうと言う事は…少なくない事だよ」
かぐや「…お父様にも同じような経験がおありなのですか?」
月の王「私は王だ、だけど神様じゃない。民の為を思ってとり行った政策が逆に民を苦しめてしまうと言う事もあった」
月の王「組織した軍隊の練度が不足していて無駄な死者を出してしまった事もあった」
かぐや「…その時、民や兵…あるいはその家族に恨まれはしなかったのですか?」
月の王「恨まれもしたさ、手酷い仕打ちを受けた事も罵声を浴びせられた事だってある」
かぐや「……」
月の王「でもね、君のように落ち込んでひきこもるような事はしなかったな」
かぐや「……」
月の王「今の状況は辛いかい、かぐや?」
かぐや「……はい、とても辛いです」

792 :◆oBwZbn5S8kKC :2016/02/13(土)00:46:14 ID:AcB
かぐや「私が今まで掲げていた正義は…何の意味も持たないモノになってしまいました。それどころか独りよがりな考えでしかなかったのです」
かぐや「しかし、本当に辛いのは私の未熟な正義感に振り回された者達です…今なら、つぐみの髭の王の言葉も理解できます」
かぐや「私に辛いなんて言う権利は無い…全ては私が引き起こした事なんだから」
月の王「……侍女から君が落ち込んでいると聞いてね、宝物庫からある魔法具を出させたんだ」
月の王「羽織ることで記憶を消す事ができる羽衣…魔法具だ、君も知っての通り【かぐや姫】の結末の場面で君はこれを羽織って下界での記憶を失う事になる」
かぐや(何故、今その様なものを…)
月の王「君が外の世界での記憶が重荷になると言うのなら、辛い経験に悩まされるというのならこの羽衣でその記憶を消してしまう事も可能だよ」
かぐや「……」
月の王「もちろん、残しておきたい記憶だけ残しておくこともできる、どうする?使うかどうかは君次第だ」
かぐや「……お父様ならどうしますか?」
月の王「私かい?」
かぐや「ええ、お父様も王という立場にいらっしゃるので、精神的な負荷も多いと思いまして…」
月の王「私だったら…使わないな。自分の過ちや失敗から逃げても意味なんか無いからね」

793 :◆oBwZbn5S8kKC :2016/02/13(土)00:49:05 ID:AcB
かぐや「……記憶を消して逃げても、罪が消えるわけでは無いですからね」
月の王「それはもちろんその通りだけど…忘れてしまっては罪を償う事も出来ないだろう?」
かぐや「罪を償う…?そんな事に意味は無いと思います、罪を償ったとしても犯した罪が無かった事にはなりません」
月の王「私はそうは思わないな。罪を償うことで必ずしも許されると言う事は無いが…それでも、償うと言う事は大切な事だ」
月の王「人は罪を犯すものだ、それは仕方の無い事だ。しかし自分の過ちと向き合って、自分の犯した罪の後始末をしなければいけない…」
かぐや「……どうすれば、罪を償う事が出来るでしょうか」
月の王「それは君自身が見つけなければいけない事だよ、かぐや」
かぐや「私自身が…」
月の王「そうだ、君自身で決めなさい。私はそれを手助けするだけだ」
かぐや「それならば…ひとつ、お願いがありますお父様」
月の王「ほう、なんだい?」
かぐや「力に溺れ、立場に胡坐をかき、自分の価値観を押し付け…まるで自分が神様だと思っていた愚かな私から…生まれ変わらなければいけません」
かぐや「もう一度、私は赤子からやり直さなければいけません。そして、次こそはおごることのない立派な人間へと成長して見せます、その過程で…償いの意味を見出します。必ず」
月の王「なるほど…少々時期は早いが、それはつまり…」
かぐや「はい、私を…送りだして欲しいのです」
かぐや「地球へ…日ノ本の竹林の中へ」

794 :◆oBwZbn5S8kKC :2016/02/13(土)00:54:31 ID:AcB
今日はここまでです。次回更新は日曜日の予定です
かぐやの過去編、大方終わりです
近付く決戦の時、もうじき八冊目終わります。長すぎワロタ
かぐや姫とオズの魔法使い編 次回へ続きます

795 :名無しさん@おーぷん :2016/02/13(土)01:03:56 ID:TTa
乙です!
ここでこう繋がるのか…。
続き待ってます!!

797 :名無しさん@おーぷん :2016/02/14(日)09:27:21 ID:O2b
おつおつ。
竹取物語のテーマ、
かぐやの罪が他のおとぎ話についての所業についてだったとはね。

798 :名無しさん@おーぷん :2016/02/14(日)11:33:47 ID:IK5
乙です
続きが気になって仕方がない

799 :名無しさん@おーぷん :2016/02/15(月)00:03:34 ID:ODY
期待