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キモオタ「我輩がおとぎ話の世界に行くですとwww」ティンカーベル「そう」
Part126


670 :◆oBwZbn5S8kKC :2016/02/01(月)00:10:29 ID:nKL
フランダースの犬の世界 ネロの住む村
ネロ「かぐやさん、この辺りが僕達の住んでいる村なんだ」
かぐや(ここがネロの住む村…。この貧しく不幸な少年が住む村…)キョロキョロ
かぐや(このおとぎ話【フランダースの犬】の存在を私は知らなかった。故につぐみの髭の王から聞いた僅かな情報しか私は持ち合わせていない…)
爺さん「ふぅふぅ…。今日は特別じゃから久しぶりに街まで着いて行ったが…やはり無理はするもんじゃないのぉ…」ゼェゼェ
ネロ「だから無理しないでっていったのに。それに今日から十二月だ、寒さも厳しくなってきているし…さぁ早く小屋へ戻って休もう」
パトラッシュ「くぅんくぅん」トテトテトテ
かぐや(ネロはこのお爺さんをもうすぐ亡くしてしまう。この牛乳の運搬の仕事も失う…そしてパトラッシュと共に息を引き取る…何一つ報われぬまま…)
かぐや(私がこの少年にしてあげられる事は…ただ一つ。その不幸を取り除く事…その為にはネロを良く思っていないという男を探さなければ)
かぐや(その男を探し出し…いつものように押し潰してしまえば事は足りる…。ですが…ひとつ気がかりなこともある)
ーーつぐみの髭の王「決してそのおとぎ話を消滅させないと約束しなさい」
かぐや(相手が悪党とはいえ約束は守らねばなりません。その男を殺す事でこの世界が消滅してしまうのならば…私は別の方法を探さなければいけなくなる…)
かぐや(しばらくはネロと行動を共にするというのが良いでしょうか…?それならばその男の事も掴めましょう…)
かぐや(私は必ず、この不幸な青年を救って見せるのです。正義を掲げる者として…それが当然の行いなのですから)

671 :◆oBwZbn5S8kKC :2016/02/01(月)00:13:02 ID:nKL
ネロ「なんだかさっきから黙っているけれど…もしかして、この村はかぐやさんが探している場所じゃなかった?」
かぐや「いえ、少し考えごとをしていたのです。私の目的とする場所は確かにこの村です、ここに君が住んでいるというのなら」
ネロ「そう…?良くわかんないけど、目的の村にたどり着けたなら良かったよ」
爺さん「ところで…かぐやさんは何故この村に来たんじゃ?近くのアントワープなら大きな街じゃからまだしも、こんな小さな村にゃ風車小屋以外なんもありゃせんよ?」
かぐや「私がこの村に来た目的…ですか?そうですね、それは……」
かぐや(普段なら正体を明かしてしまう所だけど…。今回は少々勝手が違う、ここは立場を伏せておいた方が良いかもしれない…。何か口実を考えて…)
かぐや「……風車、そうです。ここからも見えるいくつもの大きな風車です」
かぐや「私は各地を転々としている旅の者なのですが、この村の風車小屋が大層美しいという話を聞いたのです。ですので是非、一目と思ったのです」
ネロ「そうなんだ、僕にとっては幼いころから見慣れている村の風景の一部だけれど余所の人には珍しいのかな?」
かぐや「はい、私の生まれた惑星…いえ、国には風車というものは存在していませんでしたから。文献で存在は知っていたのですけれど…」
かぐや「しかし、実際に目にして驚きました。確か、風の力を利用して穀物を粉にしているのでしたね?」
ネロ「うん、この辺りは農業が盛んだからね。もう収穫の時期は終わったけれど、秋にはこの小さな村も大忙しさ」
かぐや「秋は豊饒の季節、どこもそれは同じなのですね。私の住む国でもそうでした」
爺さん「豊作ならばまとまった収入も得られるしのぅ…。ワシもこの子に田畑のひとつでも残してやれたら…もう少しは人並みの生活をさせてやれたものを…」
かぐや(なるほど…二人は田畑ひとつ持てないほど貧しい。故にこの牛乳運びの仕事が生命線というわけね…)

672 :◆oBwZbn5S8kKC :2016/02/01(月)00:14:37 ID:nKL
ネロ「もう、またそんな事言って…無い物ねだりしてもしょうがないよ」
爺さん「いや、お前ももう十五じゃ。それにワシももう長くない…いつまでも牛乳運びをしているわけにもいくまい、パトラッシュももう年寄りだ」
パトラッシュ「くぅんくぅん」
爺さん「ワシはお前の夢を応援しているが…しかしそろそろ生活の事も考えなければならん。お前一人になってしまった後、あの世からワシが手助けしてやれるわけでもないんじゃからな」
ネロ「心配してくれるのはありがたいけど、大丈夫だよ。今回の絵にはすごく自身があるんだ、コンクールで賞をとれる出来栄えだよ」
爺さん「しかしじゃなぁ…」
かぐや「確かネロは絵描きを目指しているのでしt……いえ、絵描きを目指しているのですか?」
ネロ「うん、そうなんだ。今日は絵画コンクールの作品受付の日でね、牛乳配達のついでにアントワープの街に作品を届けて来たんだ」
ネロ「いつも牛乳運びは僕とパトラッシュの仕事だけど、お爺さんがどうしてもついて行くって言ってくれてね…身体が悪いんだから家で休んでいていいのに」
爺さん「お前がコンクールに出品するというんじゃ、ワシが居てどうというわけでもないが…じっとしている事も出来んでな。なぁパトラッシュ?」
パトラッシュ「わうんわうん!」フリフリ
ネロ「二人も応援してくれているし、今回の作品で結果を残せれば絵描きの夢にぐんと近づけるんだ。コンクール結果は今月の末…クリスマスに発表される」
ネロ「僕は必ず賞を取って、絵描きになるんだ。そして、ルーベンスのような立派な絵描きになってたくさんの人に感動を与えたい」
かぐや「ルーベンス…?というのは有名な絵描きなのですか?」

674 :◆oBwZbn5S8kKC :2016/02/01(月)00:16:09 ID:nKL
ネロ「かぐやさん…ルーベンスを知らないの!?」
かぐや「ええ、存じません」
爺さん「あぁ、駄目じゃかぐやさん…」
ネロ「なんて事だ…旅の人とはいえルーベンスを知らないなんてそんな事があるの?あのね、ルーベンスって言うのはね物凄く立派な絵描きなんだ。
どう立派かって言うとね…ああ、駄目だ言葉じゃ言い表せない!でもとにかく凄いんだよ、その作品は油彩画が多いらしいんだけど、何というかこう…
見るモノに感動を与える作品らしくてね、僕はもうルーベンスに凄くあこがれていて、それで…」クドクドクド
かぐや「……」
爺さん「すまんの、ネロはルーベンスの事になるとこうなんじゃ…」
ネロ「かぐやさん聞いてる?それでね、そのルーベンスの作品がアントワープにある大聖堂に展示されているんだ。僕はその絵を一目で良いから見てみたいんだ」
かぐや「私は絵画に興味は無いのでわかりませんが…そんなに素晴らしい作品ならば見てみればよいのでは?」
ネロ「僕も出来ればそうしたいけれどね…無理なんだ」
かぐや「絵画をただ見るだけなのでしょう?」
ネロ「大聖堂に展示されているルーベンスの絵を見るには見物料が必要なんだ。とてもじゃないけど、僕には手が届かない額でね」
かぐや「そうなのですか…」
かぐや(つぐみの髭の王が言っていた絵とはそのルーベンスという者の作品のようね。高い見物料の為にネロはその絵を見る事が出来ない。いえ、一度だけ見る事が出来る…)
かぐや(しかし、それはネロが息を引き取る時…その時、たった一度だけ。小さな願いが叶うだけで、ネロは報われず不幸なまま死んでいく…それがこのおとぎ話の結末)

675 :◆oBwZbn5S8kKC :2016/02/01(月)00:19:54 ID:nKL
爺さん「ワシが金持ちじゃったら、ネロに絵画の見物料くらいだしてやれたというのにのぉ…」
ネロ「だからそんな事気にしなくていいんだって。僕がいつか画家として有名になって、絵を買ってくれる人が居たらそのお金でルーベンスの絵を見に行くから良いんだ」
ネロ「それに僕はお爺さんやパトラッシュが居るだけで十分なんだから」
爺さん「ネロや、お前は本当に健気な子じゃて…」
ネロ「もう、そんなことないって。僕を育ててくれたお爺さんに恩返しだって出来てないのに」
爺さん「何を言っているんじゃ、お前が居てくれるだけであの古びた小屋はぱぁっと明るくなるんじゃから恩ならもう十分に返してもらっとるよ」
かぐや「……」
かぐや(何故このような貧しくも清い者たちがいつも苦しい思いをするのでしょうか?その世界でも悪党ばかりが力を持ち、弱きものは貧しく不幸…納得がいきません)
爺さん「…しかし、かぐやさん。今夜の宿はどうするつもじゃ?ここは見ての通りの農村じゃから宿など無いのじゃ、アントワープの街まで行かなければならん」
ネロ「今からアントワープにもどって宿を探すってなると…早めにこの村を出ないと、夜遅くなってしまうよ?」
かぐや「そうですね…不躾なお願いではあるのですが、あなた方の元に置いてはくださいませんか?」
爺さん「それは構わんのじゃが…。ワシらは自分達の食事すら困窮している身、何のもてなしもしてやれんのじゃ」
かぐや「構いません。軒先を貸していただければそれで、食事を頂こうなど考えておりません」
爺さん「そういうことなら…あんなあばら屋でよけりゃ構わんが…本当に粗末な小屋じゃ、驚いてしまうかも知れんが…」
かぐや「その様な事はありません。好意で身を置かせていただくのに何故その様な贅沢を申せましょう、驚くなど失礼な事はありません」

676 :◆oBwZbn5S8kKC :2016/02/01(月)00:22:15 ID:nKL
ネロの住む村 村はずれの小屋
ネロ「着いたよ、ここが僕達の住む小屋なんだ僕とパトラッシュは荷車の後片付けをして来るから二人は先に入っていてよ」
かぐや「……っ」
かぐや(これは…予想以上の粗末さですね。我が国の貧民でも、もうすこしマシな家屋に住んでいました。とても人が住む場所では…)
爺さん「…思った以上にボロイじゃろ?若い娘さんが身を置くにはあんまり粗末じゃ、知り合いの牧場主に頼んで一晩だけでも止めて貰えるように頼んで…」
かぐや「いいえ、申し訳ありません…正直驚いてしまいました。しかし、私は旅の身。十分でございます、どうかここに泊めてください」
爺さん「義理立てようとして無理しなくてもいいんじゃよ。お主は若く美しい、頼めば食事も恵んで貰えるじゃろうし」
かぐや「私はあなた方のような清い心を持つ者達の側に居たいと思うのです。待遇の良し悪しは関係ありません」
爺さん「そうかい…それならいくらでも居るといい。じゃが本当に何も構ってやる事は出来んがのぉ…」
かぐや「助かります。しばらくご厄介になりますが…このかぐやに手助けできる事がおありでしたらなんなりとお申し付けください」
かぐや(…見たところ、お爺様の言っている事は謙遜などでは無いのでしょう。本当に困窮している…。食べ物に困っているのなら後に野山で鳥獣の類でも狩ってきましょうか)
コンコンッ
爺さん「どうやら来客じゃな…珍しい。ネロはまだ裏手じゃし、どれワシが出て…あいたたたたたっ」ビキッ
かぐや「お爺様は無理をなさらないでください、私が出ましょう」スッ

677 :◆oBwZbn5S8kKC :2016/02/01(月)00:24:07 ID:nKL
アロア「誰も出ない…まだ帰っていないのかな?ねぇネロ、お爺さん、パトラッシュ。居ないの?私よ、アロアよ」コンコンッ
ガチャッ
かぐや「お待たせしました。何用にございましょう?」スッ
アロア「わっ…綺麗な人…!」
かぐや(少女…。年の頃はネロよりもいくつか下でしょうか…?)
アロア「えーっと、ネロ…君はいますか?私、ネロ君に用事があって来たんです」
かぐや「…あなたはどちらさまでしょう?」
アロア「アロアって言います、ネロの友達…いえ親友です。えっと、あなたは…?」
かぐや「かぐやと申します。縁あってここに厄介になっている者です」
アロア「縁あって……あの、こんな事聞くの失礼ですけど…ネロとはどういう関係なんですか…?」
かぐや「どうといいましても…彼等は旅の私を家に置いてくださっているのです。それがなにか?」
アロア「旅人さんですか…じゃあかぐやさんはネロの事好きとかそういうのは…ないんですよね?」モジモジ
かぐや「はぁ…何を言いたいのかわかりませんが、ネロなら荷車の片づけをしているのでもうじき戻ると…」
ガタッ
ネロ「アロア……!どうして君がここに……!」

678 :◆oBwZbn5S8kKC :2016/02/01(月)00:26:54 ID:nKL
パトラッシュ「わうんわうんっ!」スリスリ
アロア「パトラッシュ!久しぶりね、今日はあなたにもお土産があるの。食事の残りモノの骨だけど…あなた好物だもんね」ナデナデ
パトラッシュ「わふっわふっ!」ペロペロ
アロア「あははっ、喜んでるのね?良い子良い子」ナデナデ
かぐや「ネロ、彼女は何者なのですか?あなたの親友だと名乗っていましたけれど」
ネロ「…初対面のかぐやさんにまだそんな事を言ってるんだね、アロアは…」
かぐや「事情は知りませんが、あなたにとって都合の悪い相手というのなら私が殺し…いいえ、始末…ではなく、どうにかしましょうか?」スッ
ネロ「えっ!?いやいや、やめてよ。アロアは良い娘だよ、僕の幼馴染で何かと気に掛けてくれているしパトラッシュにも優しくしてくれる。でも…」
アロア「ネロ!もちろんあなたにも贈り物があるの、お母様にお願いしてパンを焼いてもらったのよ」ドッサリ
ネロ「…あのね、アロア」
アロア「少しだけど干し肉も持って来たの。あなたは何も言わないけど食事ができない日もあるんでしょ…?」
アロア「遠慮なんかしないでいいの、私達は友達だもん。困った時は助け合わなきゃ。私に出来ることなんかこれくらいだけど、でももっと私の事を頼ってくれても……」
ネロ「アロア、ありがたいけれど…受け取れない。それにここには来ないでくれと前に頼んだはずだよ…それなのにどうして来たんだい?」
アロア「あっ…ごめんなさい…。でも、ネロ…!」
ネロ「……ごめん。でももう帰ってくれ、ここは君が居てはいけない場所だ」

679 :◆oBwZbn5S8kKC :2016/02/01(月)00:28:51 ID:nKL
アロア「…どうして!?私にとってあなたは大切な人なの、あなたが困っているのに…私には何もできないなんて嫌よ」
ネロ「…それは僕にとっても同じだ、今でも僕は君の事を親友だと思っている。大切な友達だ」
ネロ「でも…ここに居ては君の立場を悪くするだけだ。それにおばさんに頼んでパンを焼いて貰ったって言っていたけど、それももうやめて欲しい。おばさんにまで迷惑がかかるから」
アロア「私の立場が悪くなったって構わない、それにお母様だってあなたの事を心配していたわ」
ネロ「……」
アロア「今日、ここに来るのだって誰にも見つからないように来たの。だから、お父様は私がここに来ている事なんて知らない筈よ」
アロア「お父様はあなたが優しい子だって事を見ようとしてないだけ。貧しいからってあなたの事を悪く言って、あなたの夢を良く思っていないだけで…!」
かぐや「……っ!ネロの事を良く思っていない……男。彼女の父親……」ボソッ
ネロ「アロア、話しても無駄だよ。君のお父さんは僕達が仲良くしているのを良く思わない、だからもう僕とは会わないように言いつけたんだ。その約束を破っちゃいけない、良い事にはならない」
アロア「どうして…私達は、ネロは何も悪い事をしていないのに。どうして友達同士で仲良くしてはいけないの!?お父様にそんな事を決める権利は無いのに!」
アロア「私は…昔のようにあなたと遊びたいだけなの、風車小屋の下で…絵を描くあなたの側に居たいだけなの」
ネロ「……帰るんだアロア。もう二度とここに来てはいけない」
アロア「ネロ……!」
ザッ
男「彼の言うとおりだアロア。二度とこのような場所に来てはいけない」

680 :◆oBwZbn5S8kKC :2016/02/01(月)00:30:42 ID:nKL
アロア「お父様…!どうして…!」ビクッ
男「お前のやりそうなことなどお見通しだ。アロアよ、私はお前に厳しく念を押したはずだが?もう二度とネロとは会わぬようにと」
アロア「だ、だけど…そんな事はおかしいです!私とネロはただの友達です、友達と会ってはいけないなんて…!」
男「お前はそう思っていたとしても世間はそうは思わん。じきに年頃の男女が親しくしていれば…良くない噂も立つ、お前もネロも顔が良くよく目立つから尚更だ」
男「嫁入り前のお前に妙な噂が立つ事は良い結果を生まない。まして村一番の富豪の娘と…土地も家畜も持たない貧民との間に良くない噂が立つなど…あり得ん事だ」
ネロ「おじさん。僕達はあなたが思っているような関係ではありません、アロアはただ…友人として僕を助けてくれようとしただけで」
男「当然だ、お前のような怠け者とアロアが恋仲などと思うはずがなかろう。だが世間はそういったくだらない噂話を好むのだ、小さな村ならば尚更な」
アロア「ネロは怠け者なんかじゃないわ!彼はルーベンスのような偉大な画家になる為に一生懸命頑張っているの!」
ネロ「アロア、もう良い…やめるんだ」
男「ああ、確かにこいつの絵は中々のモノだ。だがそれがどうした?絵描きなどというのはほんの一握りの天才だけに許された職だ」
男「多少才能があろうと、こいつのような貧しい子供に叶えられるものではない。叶わぬ夢を見るのは無駄な事、無駄な事に時間を費やすなど…遊び呆けている怠け者に過ぎん」
ネロ「……」
かぐや「あなたが…ネロを不幸にした元凶…この世界で私が滅するべき悪党なのですね」
男「悪党…?何を言っている、何者だお前は?」
かぐや「その前に…あなたの名を是非ともお伺いしたく思いますが…お聞かせいただけますか」
コゼツ「良いだろう、我が名はコゼツ…。この村に存在する全ての風車小屋を所有する者…バース・コゼツだ」

681 :◆oBwZbn5S8kKC :2016/02/01(月)00:34:20 ID:nKL
かぐや「これはこれは…ご丁寧にありがとうございます。私はかぐやと申します」
コゼツ「貴様は私の事を悪党だと言ったな?今、貴様は私の立場を理解したはずだ…もう一度聞こう、先ほどの悪態は私の聞き間違いか?」
かぐや「いいえ、私は確かに申し上げました。あなたは悪党であると」
ネロ「かぐやさん…!駄目だ、そんな事を言っちゃあかぐやさんまで睨まれてしまうよ。今すぐに謝るんだ」グイッ
かぐや「あなたとアロアに非はありません。この男のつまらない世間体の犠牲になっているだけです、屈する必要などないでしょう」
ネロ「だから駄目だって、コゼツおじさんはこの村一番の富豪なんだ。こんな小さな村でそんな人に目をつけられる事がどういう事か…わかるでしょ?」ヒソヒソ
かぐや「えぇ、わかります。ですが…正義はこちらにあるのです、故に悪党に許しを請う必要などありません」
コゼツ「なかなか胆の据わった娘だ。それともただ後先考えぬ無知な娘か?どちらにしろ私がこの村一番の富豪だと知った上で悪態を吐くなど愚かな娘だ」
かぐや「随分と器の小さな男です、あなたは自分の立場を誇示しなければ他人と会話も出来ないのですか?」
コゼツ「ほう…余所者の娘が、口だけは達者なようだな。地位は力だ、それがわからんのなら身を持って教えてやろう」
ネロ「コゼツおじさん、彼女は余所の国の生まれで…もういろいろと良くわかっていないんです!だから大目に見てくださいませんか」
かぐや「引いていなさいネロ、悪党に頭を下げる必要等ありません。それに私は彼に用があるのです」
ネロ「何言ってるの、初対面のコゼツおじさんにようなんかあるわけないでしょ。良いからここは謝って、それで丸く収まるんだから」
コゼツ「小僧、その娘の好きにさせよ。私もそこまで言われて大人しく引き下がれるほど、安いプライドは持っていないのでな」

682 :◆oBwZbn5S8kKC :2016/02/01(月)00:36:25 ID:nKL
コゼツ「貴様は私を悪党だと言ったが…それは私がネロとアロアの仲を引き裂いたからか?」
かぐや「それも要因の一つではありますね」
コゼツ「貴様のような若者には理解出来んだろうがアロアは村一番の富豪の一人娘…誰とでも仲良くしていていいわけではないのだ」
かぐや「随分な暴論ですね、どんな家柄であろうとその人間が誰と仲良くしようと当人の勝手です」
コゼツ「そういうわけにもいかぬ、アロアは富豪の…あるいは貴族の息子と結婚させる。ネロとおかしな噂がたてばうまくいくものもいかんのだ、それはアロアの幸せにも我が家系の繁栄にも響く」
かぐや「自分の娘をお家の繁栄の為に利用すると?」
コゼツ「庶民には考えられんかもしれんがな、富豪の娘とはそういうものだ」
アロア「お父様、私はそんな結婚望んでいません。それに私はまだ十二です、そんな話は…」
コゼツ「お前は黙っていなさいアロア。全て父に任せていれば問題ないのだ、我が家が繁栄する事はお前にとっても喜ばしい事なのだからな」
かぐや「つまり…あなたはそのくだらない欲望の為にアロアやネロを苦しめると」
コゼツ「欲などと言うな、一族を繁栄させる事は家長である私の責務だ。それに何か間違いがあってからでは遅いのだ」
かぐや「…その為に、彼の生活を脅かす事も罪を着せる事も厭わぬというのですね?」
コゼツ「唐突に何を言い出す。私がいつその様な事をした?」
かぐや「…仮にです。今後、あなたは自分の欲望の為に…ネロの仕事を奪ったり罪の濡れ衣を着せる…そう言った事も厭わないのでではないかと聞いているのです」
ネロ「かぐやさん…?」

683 :◆oBwZbn5S8kKC :2016/02/01(月)00:38:25 ID:nKL
コゼツ「私を見くびるな、必要がなければその様な事はせぬ」
かぐや「それはつまり…必要があればすると、そう解釈してもよろしいですか?」
コゼツ「好きにしろ。だが…ネロとアロアが私の言いつけを破り続ければ、そういう事になる可能性も十分にあり得る」
かぐや「…例えその様な事態になったとしても、それはネロやアロアが言いつけを護らなかった事が原因だと。その様な口ぶりですね」
コゼツ「当然だ、大人の言いつけや忠告を護れないのなら…相応の罰を与える、それが教育というものだ」
かぐや「夢を持つ少年を蔑み、苦しめるのが大人のする事だと?」
コゼツ「現実を見せる事の何が悪い?ネロのような貧乏人が画家になろうなど…自惚れもいいとこだ、分相応に生きるべきと教える事も必要だ。貴様のような若者にはわかるまい」
コゼツ「貧しい家系はその時点で何の権利も持てぬのだ。貧しき者や弱者は夢すら持てぬ、幸福を願う事も叶わぬ。だがそれは定められた運命、故に幸福を願うなど…おこがましいのだ」
かぐや「……もう結構。どうぞお帰り下さい、あなたと話す事はもうありません」
コゼツ「ほう、納得したか…。いいだろう、余所者という事で今回の無礼は見なかった事にしてやろう。いくぞ、アロア」
アロア「はい、お父様…」
かぐや「ですが…足元にはお気を付け下さい。つまずいて転んだりしないようにしてください、このあたりは砂利が…多いですから」
スッ
コゼツ「むっ?何を言って……。っ!?」ズズッ
ゴシャアアァァァ ベキベキベキ
コゼツ「ぬぐおぉぉっ!な、なんだこの押さえつけられるような力は…!」グググググ

684 :◆oBwZbn5S8kKC :2016/02/01(月)00:40:40 ID:nKL
かぐや「おやおや、ですからお気を付け下さいと言ったではありませんか…しかし、随分と盛大に転びましたね」クスクス
コゼツ「貴様が…何かしたのか…!」ギロリ
かぐや「言いがかりはおやめ下さい。私は妖術使い魔法使いの類では無いのですから、手を触れてもいないのにあなたを転ばせる事などできませんよ」
コゼツ「転んだ…だと?抜かせ、このおかしな力…貴様ただの旅の女じゃないな!?」ググググ
かぐや「私はただの旅人ですよ。さぁ、手をお貸ししましょう…娘さんの前でいつまでも転んだままというのもお恥ずかしいでしょう」スッ
コゼツ(…?急に押さえつけるような感覚が消えた…)
かぐや「ほら、押さえつけるような力なんかあなたの勘違いですよ。しかし、もしもその押さえつける力が本物だとしたら…」
かぐや「身体が破裂するまで押さえつけることも可能でしょうね」
コゼツ「……」
かぐや「どうかなさいましたか?風車小屋の主、バース・コゼツさん?」
コゼツ「ネロ…そしてかぐやと言ったな、もう二度と私やアロアに近づくな」
かぐや「約束はできませんね。今後しだいですから」
コゼツ「…まぁいい。帰るぞアロア」
スッ
ネロ「……」

685 :名無しさん@おーぷん :2016/02/01(月)00:43:09 ID:gD5
ドキドキ……

686 :◆oBwZbn5S8kKC :2016/02/01(月)00:43:51 ID:nKL
かぐや「悪党は何処にでも居るもの…とはいえ大変な目にあいましたね、ネロ」
ネロ「ねぇ、かぐやさん。コゼツおじさんが地面に押さえつけられてたあの力って…何?」
かぐや「ネロまで私が何かしたと思っているのですか?ふふっ、ですから私は妖術使いでも魔法使いでも無いんですよ?」
かぐや「妖術も魔法もおとぎ話の世界の出来ごとなんですから、私にそんな力が使えるわけが…」
ネロ「だったらむしろ…使えるよね。この世界はおとぎ話の世界なんだから、それにかぐやさんはどこかよその世界から来た…おとぎ話の住人なんでしょう?」
かぐや「……」
ネロ「隠さなくてもいいよ、僕はこの世界の正体を知ってる。【フランダースの犬】というおとぎ話で、僕はその主人公だ」
かぐや「…そうですか、あなたもまたおとぎ話の世界の事情を知る一人でしたか」
ネロ「かぐやさん…あなたの目的は何なの?風車が見たいなんて嘘だったんだよね。何の為にこの世界に来たの?」
かぐや「あなたの事を救うためです。この世界がおとぎ話の世界だと知っていると言う事は…あなたは知っているのでしょう?この先、自分の身に何が起きるのか」
ネロ「もちろん、でもそれを知ってるのはこの世界では僕だけだ。だからこの先僕やパトラッシュがどうなるか…知ってる」
かぐや「その不幸からあなたの身を救う為に、私は来たのです。不幸なあなたを救う為に、私は正義を掲げこの場に来たのです!あなたはもう苦しむ必要は無いんです」
ネロ「……気持ちは嬉しいけど、でもそれは……余計な事だよ」
かぐや「……今、何と言ったのです?」
ネロ「余計な事はしないで欲しいと、そう言ったんだかぐやさん。僕は…救って貰うつもりなんて無いんだよ」

687 :◆oBwZbn5S8kKC :2016/02/01(月)00:46:35 ID:nKL
今日はここまでです
アロアって名前がすでにかわいい
かぐや姫とオズの魔法使い編 次回に続きます

689 :名無しさん@おーぷん :2016/02/01(月)01:35:09 ID:eSw
ネロが知っていたとは驚きの展開です!
更新をありがとうござい
毎回楽しみにしています

690 :名無しさん@おーぷん :2016/02/01(月)02:29:02 ID:ZYU
乙!
さあどうなるか

691 :名無しさん@おーぷん :2016/02/01(月)07:50:36 ID:zqM
乙です!
まさかの知ってる人物がネロとは…。
ここからどうなってくのか…。
続き待ってます!