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キモオタ「我輩がおとぎ話の世界に行くですとwww」ティンカーベル「そう」
Part124


587 :◆oBwZbn5S8kKC :2016/01/16(土)00:48:56 ID:ADc
孫悟空「今の所は殺すつもりがない…ってとこだろうな」
玉龍「帽子屋は【こぶとり爺さん】の鬼の力を持っていたッス。それならウチら三人が別の場所にいる時を狙ってすれ違いざまに攻撃する方がずっと確実で簡単ッス」
キモオタ「それに気が付けないような者共ではござらんし、意図したものでござろうな…」
孫悟空「それにドロシーをやたら責めたててたが…あれもどうも引っかかる」
ドロシー「わ、私を責めてた事ですか…?」
孫悟空「ああそうだ。ドロシーを追いつめることであいつ等は何を得られるってんだ?」
ドロシー「わかんないですけど…私の事を虐めて楽しんでたとか…」
かぐや「あの時、あの場に到着したのはドロシーと私…どんな能力を持っているか解らない私を前にして、そんなことするかしら…?」
キモオタ「普通ならかぐや殿の方を警戒するでござるよね。戦う事が出来ないドロシー殿の方を構うというのは確かに不自然でござる」
ティンカーベル「…ねぇ、悟空はどう考えてる?帽子屋には何か別の目標があるって思う?」
孫悟空「そうだな…これは俺が今までの戦いで得た経験っつうか勘みてぇなもんだがな」
孫悟空「帽子屋は俺達の目を自分に向けようとしてるってところじゃねぇか?」
ティンカーベル「どゆこと?帽子屋は構ってちゃんだったって事?」
キモオタ「ちょwwwそういう意味ではないでござろうwww自分に注意をひきつけているってことでござるよね?悟空殿?」

588 :◆oBwZbn5S8kKC :2016/01/16(土)00:52:00 ID:ADc
孫悟空「ああそうだな。村を襲う事も、ドロシーを責め立てる事も俺やかぐやの怒りを買うって点じゃ共通してっからな」
孫悟空「俺達の意識を帽子屋に向けている間に、別の場所でもっとでかい何かをしようとしている……ってとこだろうと俺は考えてるぜ」
キモオタ「他でおこなわれるもっと大きな計画から目をそむけさせる為に、帽子屋殿は敢えて自分にヘイトが集まるような行動をしたと」
ドロシー「村を襲う事も十分酷い事だと思うのに、もっと大きな計画があるなんて…」ビクビク
ティンカーベル「うーん…でもさぁ、それだったらなおさら悟空やかぐやを殺そうとしない?」
ドロシー「えっと、それってどういう意味ですか…?」
ティンカーベル「だからさ、他の場所でもっと大きな計画をしようとしてて悟空やかぐやに知られたくないっていうならもういっそのこと二人を殺した方が早くない?あいつらにとったらさ」
玉龍「あー、確かに殺してしまえば注意をひきつけるも何もないッスからねー」
ティンカーベル「でしょー?」
キモオタ「……殺せない、のだとしたらどうですかな?」
ティンカーベル「んー…でも帽子屋は間違いなく強敵だし、こっそり近づいて襲いかかられたら…」
キモオタ「そうではなく、この世界に用があるからかぐや殿を殺してこの世界が消えてしまうのは困る。とかではござらんか?例えばこの世界で何か探し物があるとか」
かぐや「良い線をいってる推理だと思う。私にはアリス側が何を探しているのか…大方察しがつくわ」
ティンカーベル「それって…もしかして、龍玉以外の宝物の事かな?龍玉に強い魔力が宿ってるなら他の宝物もきっと魔法具だったり強い魔力が宿ってたりするんじゃない!?」

589 :◆oBwZbn5S8kKC :2016/01/16(土)00:54:03 ID:ADc
孫悟空「俺もキモオタと同じ考えだ。アリス側はこの世界にある魔法具・魔力の宿った道具を回収する為にあえてこのおとぎ話を消さずにいやがる」
孫悟空「その為に俺達の気を帽子屋が惹き、別の場所で他の奴が魔法具を探している…そんなところだろうな」
ティンカーベル「じゃあ玉龍や悟空が頑張って帽子屋と戦ってたのもかぐやが帽子屋を圧倒したのも全部意味無かったってこと!?」
キモオタ「意味がなかったわけではないでござろうwwwしかし、その裏では別の計画が動いていた可能性もある…ということですな」
ティンカーベル「んもぉー!なんかあいつ等の手の中で踊らされてる気がして悔しいよ!」
孫悟空「そう喚くんじゃねぇよ、俺だって頭にきてんだ。まぁアリスがこの世界に来ていながら消滅させずにいるってのは…前から気がついていたけどな」
キモオタ「そうだったんでござるか?」
孫悟空「ああ、お前も居たから見ただろ。現実世界でアリスがグレーテルの火炎魔法を防いだ事…覚えているか?」
キモオタ「覚えておりますぞ、何の魔法具を使ったのか…あるいは防御魔法でも使っていたのかわからんでござるが…」
孫悟空「ありゃあな、この【かぐや姫】のおとぎ話に登場する魔法具…火鼠の皮衣だ」
キモオタ「火鼠の皮衣…」
かぐや「火鼠の皮衣は火にくべても決して燃える事の無い魔法具よ。身にまとえば、どんな火炎の中でも熱風を浴びても平然としていられるわ」
孫悟空「このおとぎ話に登場する五つの宝物は龍玉、仏の御石の鉢、火鼠の皮衣、蓬莱の珠の枝、燕の生んだ子安貝…この宝物になんらかの不思議な力が宿ってると踏んで、奴等はこれを探してんだろうな」

590 :◆oBwZbn5S8kKC :2016/01/16(土)00:57:07 ID:ADc
孫悟空「まぁ、推測にすぎないが…こんなところじゃねぇかとは思ってるぜ」
キモオタ「ならば帽子屋殿を無視してこの世界の別の場所で宝物を探している輩を攻撃するでござるか?」
かぐや「そういうわけにはいかないわ、今回は村の人たちに直接被害はなかったけど…私達の注意が引けないとなれば、次は村の人やお爺様に手を出すかもしれない」
かぐや「それだけは絶対にさせないし、許さないけれどね」
キモオタ「だったらここは帽子屋殿との戦いを続けるしかないでござるな…」
ティンカーベル「もうあれだよ!さっさと帽子屋を倒してさ!それからちゃちゃっともう一人の奴捕まえればいいんだよ!」
キモオタ「ちょwww理想ではあるでござるがwwwそれ難易度やばいでござるよwww」コポォ
ドロシー「……」
かぐや「あら、どうしたの?ドロシー?」
ドロシー「い、いえ…なんだかアリスちゃんも帽子屋さんも目的を達成する為なら手段を選ばないなって思って…恐いし、本当に悪い人たちだなって思って…」
ドロシー「でも、でも…私には悪いことするつもりなんかなかったけど、それでも私は少し前までそんな人たちの仲間だったんだなって…思っちゃって…」
かぐや「…帽子屋が言っていた事を気にしているの?」
ドロシー「……」
キモオタ「ドロシー殿…」
ドロシー「……帽子屋さんの言ってた事は間違いないなって、思います。私は今でも償いをするつもりはあるし、それを諦めたりはしないけど…でも…」
ドロシー「どれだけ償いをしても、それで許されたとしても……私はもう、前のような普通の女の子には、戻れないなって…そう、思います…」

591 :◆oBwZbn5S8kKC :2016/01/16(土)01:01:52 ID:ADc
今日はここまでです
ルイス・キャロル含めてこのssに登場する作者のくだりはフィクションも含みます
次回、かぐやの犯した罪
かぐや姫とオズの魔法使い編 次回に続きます

592 :名無しさん@おーぷん :2016/01/16(土)01:20:35 ID:bXI
乙です!
ドロシーちゃんがこれからどうして行くのか気になります。
あと、次回予告も!
続き待ってます!

594 :名無しさん@おーぷん :2016/01/16(土)16:17:05 ID:3bD
乙!
宝物は存在するのか

595 :名無しさん@おーぷん :2016/01/16(土)20:35:33 ID:aRS
乙です!
作者とアリスちゃんの関係が少しずつ紐解かれていくのでしょうが、そこにアリスちゃんの僕っ娘の秘密もあるのでしょうか…

600 :◆oBwZbn5S8kKC :2016/01/19(火)23:48:58 ID:r0k
レスありがとう!
明日更新予定です、良ければお付き合いください
>>594
実在しているものもあります。
ただ、本物は元の【かぐや姫】に登場しないので奪われたとしてもおとぎ話は消えないのです
>>595
ボクっ娘の秘密も暴かれる予定です

601 :名無しさん@おーぷん :2016/01/20(水)07:21:22 ID:yZt
>>600
おはようございます!
やった!更新楽しみにしてます!!

604 :◆oBwZbn5S8kKC :2016/01/21(木)00:17:28 ID:czh
玉龍「何を落ち込んでるんスかー!あんなカマ野郎に言われたことなんか気にしなくていいんスよ!」
ティンカーベル「そうだよそうだよ!あんな奴の言うことスルーしちゃえばいいんだよ!スルー安定だよ!」
ドロシー「うん…」
キモオタ(とはいえドロシー殿…帽子屋殿に責められた事が相当心に残っているようでござるな…)
孫悟空「…無理もねぇよ、あんな風に言われちまったらな」ヒソヒソ
キモオタ「悟空殿…」ヒソヒソ
孫悟空「性格を捻じ曲げられたこいつは随分とガラが悪かったみてぇだが、本来は内気で引っ込み思案な…まぁどっちかっつうと地味な田舎小娘だ」
孫悟空「あんな風に他人に責め立てられるなんて経験無かったろうし、これから償いをしていこうって時にあんな風に言われちまったら委縮もすらぁな」
キモオタ「普通の女の子には戻れないと言っておりましたな…口には出さないだけで元の生活を取り戻したいのでござろうか…」
孫悟空「そりゃあそうじゃねぇか。こいつが【オズの魔法使い】の主人公で、仲間と冒険の旅を繰り広げたって事を差し引いても…こいつはもともと普通の小娘なんだ」
孫悟空「何事も無けりゃオズの国から帰った後ごく普通の未来が待ってただろうにな。田舎の農家娘の将来なんざ決まりきったようなもんよ、家の手伝いして年頃になったら嫁にいって子供産んで、そこそこ幸せな家庭で年老いていくってな」
キモオタ「地味でありきたりながら幸せな未来でござるが、もはや自分にとっては叶わぬ夢と…ドロシー殿はそう思っているのでござろうな。帽子屋殿が言ったように普通の生活など出来無い、どこに行こうと恨まれ続けるのだと…」
かぐや「…そんな事はないのにね」ヒソヒソ
キモオタ「かぐや殿、聞いていたのでござるか…」

606 :◆oBwZbn5S8kKC :2016/01/21(木)00:19:09 ID:czh
・・・
玉龍「ほらほらドロシー!ウチが取ってきた柿を食べるッス。なんならビワもあるッスよ?食べて元気出すッス」
ティンカーベル「なんなら空飛ぶ?妖精の粉かけてあげてもいいよ!」フンス
ドロシー「あっ、うん…ありがとう、でも大丈夫だよ、平気だよ」オドオド
ドロシー(二人が私の事心配してくれてるのは…嬉しい、でも…)
ドロシー(帽子屋さんが言ってたように、私はきっと何処へ行っても恨まれるし…もう普通の生活は送れない。今はかぐやさん達が良くしてくれてるから平気なだけで…)
ドロシー(かぐやさんは私には味方だっているって言ってくれた。でも…罪人の私と一緒に居たら、私はその味方にまで迷惑をかけちゃうんじゃ……。だったら私は一人で居るべきなんじゃ…)
スッ
かぐや「ねぇ、ドロシー。今、おかしなこと…考えてない?」ニコッ
ドロシー「んふぇっ!?か、かぐやさん…おかしなことなんて…考えてないです…!」シドロモドロ
キモオタ「その割には変な声出てましたぞwwwんふぇってwww」コポォ
かぐや「帽子屋君が言ってた事気にしてるのね。でもドロシーはもう一度普通の生活を送りたい。普通の女の子に戻りたい。そうなんでしょう?」
ドロシー「……はい、いつかは昔のように争いや戦いとは無縁の生活を送りたいって思ってます。でも、帽子屋さんは言っていました…私のような罪人が普通の生活を送るなんてもう出来ないって」
かぐや「そんな事無いわ。確かに帽子屋君が言ってたように現実は厳しいし罪を償うのは容易い事じゃない、あなたを恨む人もいる。私は確かにそれを肯定したけれど、私はこうも言ったわ…あなたに協力してくれる人だっているって」
かぐや「あなたは随分帽子屋君の言葉を気にしているけど、彼は貴方にとってどんな存在なのかしら?あなたに協力してくれる味方?」

607 :◆oBwZbn5S8kKC :2016/01/21(木)00:21:23 ID:czh
ドロシー「…違います。帽子屋さんは…私に協力なんかしてくれないと思います、仲間なんかじゃ…ないです」
かぐや「そうよね。だったらあんまり帽子屋君の言葉を気にする事無いのよ」
ドロシー「で、でも…」
かぐや「それでも気になるのなら、ここにいるみんなに聞いてみましょう。ドロシーは普通の生活に普通の女の子に戻りたいそうだけど…それは出来ると思う?」
玉龍「出来るに決まってるッス!そもそもドロシーは操られてただけなんスから、そんな心配することないんスよ!」
孫悟空「まぁ、時間はかかるだろうがな。やってやれねぇことなんか何もねぇよ、ドロシーのやる気次第だな」
ティンカーベル「まぁ悟空の言うとおりだよね。あと元気があれば何でもできるよ!」
キモオタ「闘魂wwwまぁ、我輩が脱オタするよりははるかにイージーでござろうなwww」
かぐや「だって、ドロシー。あなたの仲間はみんな口をそろえて、こう言っているわよ?」
ドロシー「で、でもそれはみんなが優しいから私を傷付けない為に言ってくれてて…」
かぐや「例えそうだとしても…あなたがそう望むのならみんなはあなたの手助けをしてくれるわ、必ずね」
ドロシー「それは…凄く嬉しい事です。でも、かぐやさんやみんなの言葉に私は甘えてばかりで……」
かぐや「確かに…自分に都合のいい言葉ばかり聞き入れるのは誠実とは言い難いかもしれないけれど、周りの声を全て聞き入れる必要なんかないのよ」

608 :◆oBwZbn5S8kKC :2016/01/21(木)00:22:36 ID:czh
かぐや「周囲は貴方にいろんな言葉を投げかけてくるけれど、あなたの為に何かをしてくれるわけでもあなたを想ってくれているわけでもない他人の無責任な言葉を信じる必要なんか無いの」
かぐや「それよりも、あなたを心配してくれる人の言葉を信じた方がずっと良いと私は思うわよ。今までだってそうだったんじゃない?今は遠く離れていても…あなたには仲間がいる」
ドロシー「はい、私には…仲間がいます。ブリキもカカシもライオンも…今は離れているけど、でも大切な仲間です」
かぐや「だったら想像できるんじゃない?彼等に同じ質問をした時、どんな答えが返ってくるのか」
ドロシー「……きっと、みんなと同じ答えを返してくれると思います。大丈夫だよ心配しないで、普通の女の子にきっと戻れるよって…言ってくれます」
かぐや「だったら、あなたがすべき事は一つよね?それは、帽子屋君の言葉を気にして立ち止まってしまうこと?」
ドロシー「……違います。私がしないといけないのは…みんなが大丈夫って言ってくれた気持ちに答えられるように、頑張る事です」
かぐや「そうね、ドロシーは理解が早くて賢い子ね」ウフフ
ドロシー「で、でも…私に出来るでしょうか…みんなの気持ちを裏切ってしまうかも…」オドオド
キモオタ「ちょwwwドロシー殿は何事もマイナス思考がセットになってしまっておりますなwww」
ティンカーベル「失敗するかもー…とかさ、失敗してから考えればいいんだよ!とにかくやってみたらいいんだよ、話はそれからだよ!」
キモオタ「ティンカーベル殿はもうちょっと繊細に行った方がいいのではwww前向きならいいってもんじゃないですぞww」
孫悟空「まぁ、後ろ向きになってウダウダ悩んでるよりはずっといいんじゃねぇか?やってみなけりゃ始まんねぇってのは俺も同意見だぜ」
玉龍「そうッス!まずは気持ちからパーっと明るくしてしまうんス!そのまま勢いでズバーって挑戦すればいいんス!結果はついてくるッス!」
キモオタ「ちょwwwこのパーティwww脳筋率高過ぎワロタwww」コポォ

609 :◆oBwZbn5S8kKC :2016/01/21(木)00:24:18 ID:czh
かぐや「ふふふっ…確かに前向きなのは良い事ね」フフッ
玉龍「なんなんスかかぐやー!人事みたいに笑ってる場合じゃないッスよ!」
かぐや「ふふっ、ごめんね。…でも少し思いだしちゃったわ、ネロの事。彼は前向きと言うのとは少し違っていたけれどね、でも決して後ろを向かない子だったわ」
ドロシー「ネロさんって…確か、村に向かう前にかぐやさんが言っていた…」
キモオタ「【フランダースの犬】というおとぎ話でしたかな?確かもう既に消滅しているとか…」
かぐや「良い機会だわ、私の過去に何があったのか…帽子屋君との戦いが終わったら話す約束をしてたわね」
孫悟空「まぁ、かぐやの過去の経験は…聞いておいて損はねぇだろうな、いやドロシーはむしろ聞くべきって感じだな」
かぐや「そうね。私もドロシーには特にしっかり聞いておいて欲しいわね」
ドロシー「私に…ですか?」
かぐや「そうよ、ネロの生き方はドロシーに知っておいて貰いたい。きっとこの先生きて行く中であなたの為になる」
ドロシー「…はい、かぐやさんが言ってくれるって事は間違いないと思いますし…。ネロさんの事も、かぐやさんに何があったのかも聞きたいです…だから、話して下さい」
かぐや「わかったわ。でも彼の話をするにはまず事の起こりから離さなければいけないわね」
かぐや「当時の月の姫…私がどんな人間だったのか。そして如何にその行動が独りよがりで愚かなものだったのか…聞いて貰うわね」

610 :◆oBwZbn5S8kKC :2016/01/21(木)00:26:10 ID:czh
ずっとずっと昔
かぐや姫の世界 月の都 王宮
・・・
サッサッ
かぐや「お待たせ致しましたお父様。かぐやにございます」
月の王「はい、どうぞ。急に呼び付けてすまなかったね、入っても構わないよ」
かぐや「失礼いたします」スッ
月の王「さて、かぐや…何故、私が自ら君を呼び出したのか解るかい?」
かぐや「いえ、見当もつきませぬ」
月の王「本当にそうかい?」
かぐや「えぇ、全く心当たりがございませぬ。ですが…お父様は私に何か不満がおありなのですね?仰っていただければ至らぬ点を改めますが…」
月の王「では単刀直入に言おうか。かぐや、君はまた都へ降りて行ったね?それも護衛も付けずに一人きりで」
かぐや「はい、成すべき事がございましたので。護衛を連れなかった件については私の能力があれば必要ないと考えての事ですが…何か不都合でもございましたか?」
月の王「随分と堂々としているけれど、私は以前君にこう言いつけたはずだよ…『許可なく都へは向かわぬ事』と、忘れたわけでは無いね?」

611 :◆oBwZbn5S8kKC :2016/01/21(木)00:28:44 ID:czh
かぐや「はい、覚えております」
月の王「ならば何故君は都へ向かったんだい?私との約束を反故にしてまで」
かぐや「お言葉ですがお父様。私が都へ向かったのは決して興味本位や好奇心が理由ではございません」
かぐや「一見平和に見える都にも大小様々な悪意が蠢いております、そして善良な人々を食い物にする罪人から民を護る事こそが私の使命にございます」
月の王「またそれかい…。もういい加減に君とその役目が云々の話をするのは終わりにしたいのだけどね」
かぐや「それは容易い事にございます、お父様が快く私が使命の為に動く事を了承してくださればいいのです」
月の王「そういうわけにもいかないよ。私は君の行動を肯定するつもりは一切無いんだ、何度も言っているけれど今すぐにやめなさい」
かぐや「…私が自らの役目を全う出来ていないと仰るのですか?」
月の王「出来ているいない以前の問題なのだけどね…君はいつも私達に無断で都へ降りては悪党の根城を暴いたり、罪人を退治したり…苦しい生活を送っている者を援助しているようだけど…」
月の王「そもそも…悪人を捕えるのは兵達の仕事。民が幸福に暮らせるように治世を行うのは私の仕事だ。君の役目じゃない」
かぐや「民の幸せを願うのは、姫の役目ではないと?」
月の王「そうは言わないよ。だけど君のやり方は間違っている、少なくとも今の君がすべき仕事では無いよ」メガネクイッ
かぐや「失礼を承知で言わせていただきます。私がすべき仕事ではないと仰いましたが…ならばお父様は御自分の役目を全う出来ていますか?」
月の王「我が娘ながら本当に失礼だね君は…。しかし君がそう問いかけるのなら私は当然こう答える、私は王としての役目を果たせているとね」

612 :◆oBwZbn5S8kKC :2016/01/21(木)00:31:46 ID:czh
かぐや「私はそうは思いません。先ほど申し上げたように都にはいまだ多くの悪が潜んでおります、生活をする事すら苦しいと嘆く民までいる始末」
かぐや「王族の責務とは国民に安全で豊かな生活を保障する事です。悪は蔓延り民は苦しんでいるこんな状況で…どうして役目が果たせているなどと言えますでしょうか」
月の王「都の治安についても民の生活水準も私は把握しているよ。当然、それを改善する為の政策も計画している」
月の王「かぐや、君は確かに歴代の王家の中でも特に優れた能力を持っている…重力の操作、光を操る事も君の右に出る者はいない。この私でさえもだ」
月の王「そんな君の目に私は少々頼りなく映るかもしれないが、あまり父を見くびらないで欲しい。君が考えているような事は私はとうの昔には既に考えているんだよ」
かぐや「それならばなぜすぐに行動を起こさないのですか?改善の為の政策、計画があったとしてそれが成果を上げるのはいつになるのでしょう?十年後、百年後ですか?」
かぐや「民は今、この時を苦しんでいるのです。すぐさま成果を出す事の出来ない計画になど、なんの価値がありましょう」
月の王「君の主張はあまりにも現実を見ていない。ひとつ政策を立ち上げたとしてもその結果が表れるまでには時間がかかる、焦って進めるものではないんだ」
月の王「国というものは一朝一夕で理想の形になるものではないのだよかぐや」
かぐや「それは詭弁にございます。私達王族は国を作る事が責務ではありません、民が幸せに暮らせる国を作る事こそが責務なのです」
月の王「君の王族としての意識の高さや民への想いは素晴らしいものだと思うよ、しかしあまりに考えが未熟すぎる。君はもっと政治について学び知識をつけるべきだ」
かぐや「その様なものに時間を費やすのならば、悪党を一人でも多く成敗すべきでは?」
月の王「困った娘だ…かぐやよ、私が何故君に『都へ向かわないように』言いつけたかわかるかい?

613 :◆oBwZbn5S8kKC :2016/01/21(木)00:35:10 ID:czh
かぐや「私は姫という立場です、故にお父様は私に大人しくしているとようにと申されるのでしょう?」
月の王「君には民を愛する気持ちが備わっている。それだけでなくその想いを形に出来るだけの能力もある…時が来れば君が姫であろうがそんな事は関係なく、政治に参加してもらって構わないと私は思っている」
月の王「しかし、今の君は未熟。そしてその能力は一級品…これはとても危険な組み合わせだ。だから君が過ちを犯さぬよう、私は都へ向かわないように言いつけた」
かぐや「私が未熟だと仰るのですか…?それは私に対する侮辱だと受け取らせていただきますが…よろしいですか?」
月の王「どうぞ。実際、君は未熟だよ。目に見えるモノしか理解できない、罪人は全て悪だと思っている…しかし、そうではないよ」
かぐや「……何を仰っているのか、理解できません」
月の王「君は先日、不正に税を徴収して私腹を肥やしている役人の存在を突き止めた。民の不満に耳を傾け、国の癌を暴いてくれた君の功績は素晴らしいものだ」
月の王「しかし、君はその役人を殺してしまったね?一言の言い訳も許さずに…」
かぐや「ええ、民の幸せを願う事が本懐のはずの役人が私腹を肥やして民を苦しめるなど言語道断です。死を持って償うべきと判断いたしました」
月の王「彼は何故悪事に手を染める事になったのか、あるいは罪を償って今後はまっとうな役人として生きていけるかもしれないなどと…考えはしなかったのかな?」
かぐや「罪を…償う…?ふふっ、おやめ下さいお父様。私達は今、真面目な話をしているのです。唐突にそのような戯れを口にするなど…思わず笑ってしまいました」クスクスクス
月の王「私はいたって真面目だよ。彼が犯した罪は許せない物だ、だがどんな罪人にでも等しく償う権利は与えるべきだと思うよ、私はね」
かぐや「お父様、これ以上の戯れはおやめ下さい。どのような理由があろうと罪人は罪人…情けをかける必要などございません」

614 :◆oBwZbn5S8kKC :2016/01/21(木)00:37:28 ID:czh
月の王「…ひとつ問おうか。都の一人の男が盗みを働いたとしよう、盗んだものはほんの僅かな金銭だ。その場に居合わせたとしたらかぐやはどうする?」
かぐや「決まっております。私の重力の能力を使い、動きを封じ捕え…息の根を止めます。罪を犯せば罰を受ける事は当然です」
月の王「息の根を止める必要があるかい?人を殺したわけでも多くの人間を苦しめたわけでも無い、僅かな金銭を盗んだだけでそこまでするのかい?こんな軽い罪で」
かぐや「…信じられません、それが一国の王の言葉ですか?」ワナワナ
かぐや「それは僅かな盗みかもしれません、しかしその男は罪を犯しても許される事を覚えてしまいます。そうすればもう…どうしようもございません」
かぐや「小さな罪だからと見逃す事が、後の大きな犯罪につながると…何故わからないのです!?」
月の王「落ち着きなさい。君こそ何故わからない?彼にも何か事情があったのかもしれないよ、魔が刺すという事は誰にでもある」
月の王「何日も食べ物を口にしてなかったのかも知れないし、病気の家族の為に薬を買ってあげたかったのかもしれない」
かぐや「理由があれば罪を犯しても許されるというのですか?…私には、私には到底理解できません」
かぐや「どんな理由があろうとも、罪は罪です。償いの機会など与える必要などありません、ここでその男の息の根を止めなければ…この国は犯罪で溢れてしまいます」
月の王「…そうか、君の考えは理解したよ」
かぐや「…でしたら、私が都へ行く事を了承していただけますか?」
月の王「いや、逆だよ。君の考えは危険すぎる。君はしばらく都へは向かわないこと…これは言いつけでも約束でも無い。国王としての命令だ、いいね?」
かぐや「お父様…!私は…!」
月の王「もう一度言うよ、これは親子の約束でも父親としての言いつけでもない。国王として命令しているんだ。この意味がわかるね?
あまり君が言う事を聞かないようだとこの【かぐや姫】の存在まで危うくなってしまうそれは避けたいのだけど」
かぐや「……承知いたしました。しばらくの間、都へは向かいません」

615 :◆oBwZbn5S8kKC :2016/01/21(木)00:40:17 ID:czh
かぐや姫の世界 月の都 かぐやの部屋
かぐや「理解出来ませぬ。お父様は何をお考えなのやら……」
かぐや「都へ向かわないように…など馬鹿げています。この宮殿に籠りっきりでは民の為に何かを成す事などできない…!」
かぐや「私はただ、国の為、民の為…正義の為、悪を滅ぼしたいだけだというのに何故お父様は理解して下さらないの…」
かぐや「こうしている間にも悪党は悪事を働いているかもしれない。私にはこんなところにいる時間はないというのに…」
かぐや「……」
スッ
かぐや「そうだ…別のおとぎ話の世界」ボソッ
かぐや「そうです、この世界の都へ向かう事が出来ないのなら…別のおとぎ話の世界へ向かえば良いのです!」スッ
かぐや「世界を渡る方法は…確か書庫にそれに関連した書物があったはず…それさえ出来れば、世界さえ移動してしまえば…私は正義を貫く事が出来ます」
かぐや「世界移動の力さえ身につければ、私はなんだって出来る…重力操作さえできれば敵はいない、苦しんでいる登場人物を救って悪を挫く事が出来る…!結果を残していけばお父様もきっと理解して下さる…」
かぐや「決めました、早速書庫へ向かいましょう。私は、恵まれないおとぎ話の登場人物達を救済して見せます…!」