天使の涙
Part233:ベイリーズ:10/10/29 01:41 ID:XSRPAbUtNA
翌日、教えられた場所に行ってみた。
「こんにちは」
不意に声を掛けられ、そこへ向くと。
「失敗したわ。人間だったのね」
金糸のような髪。金に輝く翼。
咄嗟にその細い手首に枷を嵌める。
ガチャン
34:ベイリーズ:10/10/29 01:47 ID:YJhJEawJbM
「不用心だったな」
興奮で声が上擦る。
金色の天使はその美しい顔を俺に向け、その言葉を放った。
「天使と暮らしていて、天使を狩っているのね」
「その感じは愛玩用として飼ってるわけじゃないわ」
「きっと、その天使は」
「大切な人かしら」
35:ベイリーズ:10/10/29 01:55 ID:1BwxmZSI3I
俺の頭の中でその言葉が渦巻く。
「知らなかったのかしら」
知らないも何も
「思い当たるところは無い?」
『そういうようにしか生きれないんです』
『博愛主義もほどほどに…』
「天使は、人を疑えない。憎めない。
人間と違って」
36:ベイリーズ:10/10/29 02:04 ID:3NwqwWqaAs
カチリカチリと、女と天使が当てはまっていく。
「あいつが天使…?なんで、じゃあ、お前の情報…」
「天使に仲間意識なんて無いもの」
「翼なんて…」
「街に住んでいるなら、もがれたのかしら」
頼みの綱もあっさりと言い切られていく。
「認めてしまいなさいな」
ぐるりと天地をひっくり返されたような感覚を覚えた
37:ベイリーズ:10/10/29 02:10 ID:FMeTw0FeVU
半ば放心状態で引き渡しに行く。
周りはすごい騒ぎになったが、そんなことはどうでも良かった。
いつもより何倍もの書類を書かされ、ようやく全ての手続きが終わる。
何も、考えずに
取り敢えず今は
女に会いたかった。
38:ベイリーズ:10/10/29 02:22 ID:mhQo17lMrU
「ただいま…」
帰ると、女からの返事が無かった。
「…っ」
急いで部屋の中へ入ると
「…」
涙を流す女がいた。
39:ベイリーズ:10/10/29 02:28 ID:1BwxmZSI3I
「どうした?」
訊ねると、女は首を横に振り、弱々しく口を開いた。
「分からないんです。ただ、胸の辺りが苦しくて痛いんです」
涙を流しながら訴える彼女の肩をそっと抱いてみる。
「金の天使を引き渡してきた…ごめんな」
するりと口にした言葉は、禁句だったらしい。
彼女は嗚咽しながら、「ごめんなさい」と繰り返した。
40:ベイリーズ:10/10/29 02:32 ID:FMeTw0FeVU
それから翌日の朝までは、彼女の肩を抱いたまま過ごした。
その状態で、彼女は嗚咽しながら、俺に様々なことを伝えてくれた。
だが
「でも、辛いんです」
止まらない涙と嗚咽。
今までみたことの無い彼女の表情。
41:ベイリーズ:10/10/29 02:35 ID:mhQo17lMrU
ふと、昔むかしに読んだ童話を思い出した。
『もし、天使の涙を見れたなら、願い事が叶うよ』
どうかそれが本当なら、
全ての悲しみ、痛み、苦しみから
彼女が救われますように―――
42:ベイリーズ:10/10/29 02:37 ID:YJhJEawJbM
嗚咽が止まった。
涙も止まる。
肩を抱いたまま、すっかり冷えた彼女の頬を撫でて呟いた。
「おやすみ」
43:ベイリーズ:10/10/29 02:40 ID:mhQo17lMrU
――――――――
『あなたと会ってから、私は感情というものを知りました』
『嬉しいという感情』
『楽しいという感情』
『愛しいという感情』
『たくさんの感情を、あなたのお陰で知りました』
44:ベイリーズ:10/10/29 02:43 ID:mhQo17lMrU
is this happy end?
45:ベイリーズ:10/10/29 07:28 ID:XSRPAbUtNA
なんかちょっと思いついたから、投下してみる。
戦争テーマで
46:ベイリーズ:10/10/29 07:31 ID:1BwxmZSI3I
子「母さん、戦争に行ってきます」
母「何をしに?」
子「国を守るのです」
母「母は行って欲しくありません」
子「何故ですか?」
母「母は誰が守ってくれるでしょう」
子「…」
47:ベイリーズ:10/10/29 07:35 ID:YJhJEawJbM
子「母さん買い物行ってきます」
母「助かります」
子「任せて下さい」
母「気をつけて行ってらっしゃい」
子「行ってきます」
母(初めてだけれど大丈夫かしら)
子「…母さんのためなら怖くない…ぐすっ」
48:ベイリーズ:10/10/29 07:37 ID:1BwxmZSI3I
子「母さん学校行ってきます」
母「ええ。母も行きます」
子「僕1人で行けますよ」
母「いえ、今日は入学式…」
子「行けますよ」
母「人の話を聞きなさい」
子「ごめんなさい…」
49:ベイリーズ:10/10/29 07:40 ID:rsqpUoA4hU
子「母さん学校行ってきます」
母「行ってらっしゃい」
子「今日のお弁当はなんですか?」
母「子の好きなものです」
子「わあい」
母「ですが、今日のテスト結果で夕飯が変わります」
子「はあい…」
50:ベイリーズ:10/10/29 07:43 ID:mhQo17lMrU
子「母さん学校行ってきます」
母「母は後から行きましょう」
子「何故ですか?」
母「子が恥ずかしくないようにです」
子「卒業するこの姿、一番に見てもらいたい」
母「そんな立派な子の隣を歩くのは、照れくさいのです」
子「…」
51:ベイリーズ:10/10/29 07:45 ID:YJhJEawJbM
子「母さん会社行ってきます」
母「おやおやネクタイ曲がってます」
子「こうですか?」
母「やれやれやってあげましょう」
子「面目ない」
母「父にもよくやってあげたものです」
子「…ありがとう」
52:ベイリーズ:10/10/29 07:51 ID:XSRPAbUtNA
子「母さん、戦争に行ってきます」
母「子の小さい頃を思い出します」
子「でも行きたくありません」
母「何故ですか?」
子「誰が母さんを守ってくれますか」
母「子のその思いが」
母「子が母の子であるということが」
母「母を守ってくれています」
母「気をつけて」
子「…行ってきます」
53:ベイリーズ:10/10/29 07:52 ID:1BwxmZSI3I
おしまい
54:名無しさん:10/10/29 12:53 ID:BshHIOFOFM
乙!よかったよ!
55:ベイリーズ:10/10/29 17:25 ID:1BwxmZSI3I
出勤前だから明日までかかるかもだが
学校テーマ
56:ベイリーズ:10/10/29 17:27 ID:yIWUOGqTgY
「なあ、学校に行かなきゃいけない意味ってなんなの?」
彼は言った。
彼は学校に来なくなって2ヶ月経つ。
「意味なんてないよ」
私は紫煙を吐いてそう言った。
57:ベイリーズ:10/10/29 17:29 ID:XSRPAbUtNA
「ただ、勉強するとこ。協調性を学んだり」
そう言って、煙草に口を付ける。
「何それ。右倣え右を学ぶのかよ」
吐き捨てるように言った彼に頷いてやった。
58:ベイリーズ:10/10/29 17:32 ID:1BwxmZSI3I
「あとは、遊び方も知れる」
ちらと彼を見ると、彼は「はっ」と馬鹿にしたように笑った。
「あー。あー。友達とか彼女のいるリア充限定な」
馬鹿にしたように手をひらひらと振る。
59:ベイリーズ:10/10/29 17:38 ID:mhQo17lMrU
私は煙草をもみ消して、腕を組んだ。
「なんなんだよ」
彼は睨むように…いや、睨んできた。
「何が」
「何がじゃねえよ。学校全否定してどうしたいんだよ」
彼の目つきが鋭くなった。
60:ベイリーズ:10/10/30 05:02 ID:YJhJEawJbM
「お前は学校のせいにして、行かないのを正当化したいだけだろうが」
彼の視線を真っ直ぐ見つめ返して一息に言う。
これは、
起爆スイッチだ。
61:ベイリーズ:10/10/30 05:05 ID:WprRLa3zwc
「俺が悪いってのかよ!」
彼は私の胸ぐらを掴んで怒鳴る。
「学校行かない奴はみんな悪者か!?あ!?」
彼は私を殴れない。
代わりに言葉で殴るかのように言葉を叩きつける。
「お前は悪くない」
私は言ってやる。
62:ベイリーズ:10/10/30 05:09 ID:FMeTw0FeVU
「お前は悪くないよ」
もう一度、ゆっくりと繰り返して、彼の目を見た。
「何のせいにしなくたって、お前の行動は正当だ」
彼は胸ぐらを掴んだまま、私を引き寄せた。
「だから、お前は悪くない」
引き寄せられた私の胸に額を押し当てた彼から、すすり泣きの声を聞いた。
63:ベイリーズ:10/10/30 05:28 ID:3NwqwWqaAs
私は知っている。
彼が学校に行かないのでなく、行けないこと。
彼がそのことに後ろめたさを感じていること。
「お前は頑張ってるよ、十分」
64:ベイリーズ:10/10/30 05:32 ID:YJhJEawJbM
しばらくして落ち着いた彼は、私から手を離した。
「またな」
私はあっさりと帰る。
明日学校に彼が来るかどうかなんてどうでもいい。
明日もその先も学校はあるし、
明日もその先も彼はそこに行く権利がある。
私は振り向かずに彼の部屋を出た。
65:ベイリーズ:10/10/30 05:32 ID:YJhJEawJbM
おしまい
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