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天使の涙

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Part1

1:ベイリーズ:10/10/7 22:04 ID:FMeTw0FeVU
もう頑張るしか言えない感じですが頑張ります。

ファンタジカルな話です。

2:ベイリーズ:10/10/8 00:53 ID:yIWUOGqTgY
目が覚めたら知らない部屋にいた。

「気付きましたか」

ついでに知らない人もいた。黒髪の女。この人が俺を拾ったのか?

「どこか痛みますか?」

心配そうに訊いてきた彼女に俺は首を振った。

3:ベイリーズ:10/10/8 01:00 ID:3NwqwWqaAs
その時、俺の胃が空であることを主張して鳴く。
それを聞いて、女はくすりと微笑んだ。

「何か作ります。買い物に少しお時間頂きますが」

「いや、助かるよ。一昨日から何も食えてないんだ」

それを聞いた女は頷いて、部屋を出て行った。

4:ベイリーズ:10/10/8 01:06 ID:3NwqwWqaAs
一人残された部屋を見渡した。
質素な部屋だ。殆ど家具が置かれていない。

というか、あの女は何者だ?行き倒れを拾うなんて酔狂以外の何ものでもない。

まあ、その辺りは彼女が帰ってきてから訊けばいい。

5:ベイリーズ:10/10/8 01:30 ID:yP/F4NCETk
目が覚めたら知らない部屋に…いや、なんだ俺。また寝てたのか。

「気付きましたか」

寝てた間に女は帰ってきていた様だ。いい匂いが鼻をくすぐる。食事も既に作られていたらしい。

どれ位寝てたんだ俺。

6:ベイリーズ:10/10/8 01:38 ID:rsqpUoA4hU
「スープを作りましたが、食べれますか?」

女の言葉に胃が返事をする。呆れるほどの正直さ。
女は微笑んで「すぐに用意します」と、部屋の奥へ行った。

7:ベイリーズ:10/10/8 01:47 ID:FMeTw0FeVU
「美味い」

出されたスープは美味かった。一口大に切られた野菜と肉が柔らかく煮込まれている。

「この柔らかさは若い天使の肉だな」

「よく分かりましたね」

軽く驚いた様な女に、俺は苦笑した。

「俺はハンターなんだ」

8:ベイリーズ:10/10/8 01:55 ID:XSRPAbUtNA
「けど最近は、天使の売り値が安くてな」

苦笑いした俺に、女は頷く。

「金の天使の情報を掴んだんだけど、ガセだった」

「金…の天使…?」
首を傾げる女に、今度は俺が頷いた。

9:龍 ◆RYU....FU.:10/10/8 02:00 ID:/TQGV0xfis
なんかまだ序盤だけどこのファンタジーの設定好きかもw

支援

10:ベイリーズ:10/10/8 05:37 ID:XSRPAbUtNA
>>9

「支援ありがとう」

「天使は生態系ピラミッドでは人間の下に位置しているんですよ」

「俺たちハンターが捕まえて、そのままで愛玩用に、肉は食用に、臓器は移植用に、羽は布団や服に、魔力はエネルギーに…捨てるとこないからな」

「そちらの世界の天使とは似ていても、ポジションが違いますね」

「そちらの世界?」

「お気になさらず」ニコリ

11:ベイリーズ:10/10/8 05:56 ID:yIWUOGqTgY
「金の天使は1体、銀の天使は5体で、一生遊んで暮らせるほどの品と交換して貰えるらしい」

俺の説明に女は考える素振りを見せる。

「何か知ってんのか?」

「いえ…初めて聞きました」

ゆるゆると首を振る女に、つい俺は溜め息が洩れた。


12:ベイリーズ:10/10/8 06:05 ID:3NwqwWqaAs
「ごめんなさい。お力になれず」

申し訳なさそうに言う彼女に、慌てて首を横に振る。

「俺こそ悪かった。飯まで作ってもらったのに…」

と、既に空になった器を見る。本当に美味いスープだった。

13:ベイリーズ:10/10/8 06:10 ID:yIWUOGqTgY
「困った時はお互い様です」

女が笑った。今更だが、優しくて暖かい笑顔だ。
というか、負の感情とは無縁そうな雰囲気だな。

「まあ、ありがたかったけど、博愛主義もほどほどにしないと身を滅ぼしかねないぞ」

「はい。気をつけますね」

分かってんのかこいつ。

14:ベイリーズ:10/10/12 02:46 ID:yP/F4NCETk
「…まあ、いいや。この辺にホテルとか」
「泊まるお金があるのですか?」

…無い。
口を閉じるしかない俺に、女は言う。

「ここに泊まればいいですよ」

もうそれは、至極当然のように。

15:ベイリーズ:10/10/17 04:03 ID:WprRLa3zwc
――――――――

あれから、1週間が経った。
最初は断ったものの、無一文なこの状態ではどうすることも出来ず、結局女の家に居座らせてもらっている。

俺に何の縁も義理も無いのに、

この女は衣食住を提供している。

16:ベイリーズ:10/10/21 21:59 ID:FMeTw0FeVU
女に訊いたことがある。

「誰にでもこんなことしてんの?」

「こんなこと?」

女は首を傾げる。表情は柔らかなものだ。初めて会ってから、それ以外見たことが無い。

「行き倒れ拾ったり」

そういうと、「ああ」と彼女は納得した声を出した。

17:ベイリーズ:10/10/21 22:03 ID:mhQo17lMrU
「行き倒れの方を見たのは今回が初めてですよ」

声を抑えて笑う仕草に、俺は憮然とせざるを得ない。

「でも」

彼女はまたふわりと笑う。

「きっとそうすると思います」

呆れた。悪い奴だったらどうするんだ。
そんな心中が表情に出ていたのか、女は困ったように笑った。

「そういうようにしか生きれないんです」

その表情はそれでも柔らかかった。

18:ベイリーズ:10/10/21 22:07 ID:YJhJEawJbM
俺は日中外に出て、色々情報を集める。
天使の情報があれば狩りに行き、業者に売る。
金が入れば、そのうちの僅かな分ではあるが女に渡した。

19:ベイリーズ:10/10/21 22:10 ID:yIWUOGqTgY
ある日、俺が売った天使に高値がついた。
いつもよりだいぶ多い金を渡された俺は、心に余裕が出来たのか並ぶ店先を眺めてあるく。
と、目に止まったものがあった。

20:ベイリーズ:10/10/22 04:09 ID:FMeTw0FeVU
―――――――――

「お帰りなさ」
「これ」

女の言葉を遮って、目の前にそれを突き出す。

「…お花?」

「まあ…日頃の礼というか」

気恥ずかしくなって、目線を逸らす。

「プレゼント」

呟きは届いたのだろうか。


ただ、
目線を戻した先には


「…っ」


溢れんばかりの笑顔があった。

21:つねこ ◆MbmtstD.Mk:10/10/22 11:42 ID:1ZUSyWVMKA
うひぃ、なんかキュンキュンするww
しっえーん(・∀・)ノ

22:ベイリーズ:10/10/23 05:55 ID:FMeTw0FeVU
>>21

「支援ありがとうございます」

「キュンキュンって…」

「したこと無いですか?」

「ねえな」

「私はありますよ。
先日あなたが付け合わせのニンジン残していた時とか」

「うるせえな」

「そうやって照れているところとか」

「…」

「キュンキュン」ニコリ

「やめろ」

23:ベイリーズ:10/10/23 06:06 ID:WprRLa3zwc
「ありがとうございます」

女は花を受け取ると、表情はそのままに俺を真っ直ぐと見る。

「すごく…すっごく嬉しいです」

頬が熱い。理由なんて考えたくない。

「こんなに嬉しいのは、多分、生まれてはじめ」
「もう黙ってくれ」

思わず、言葉を遮ると、女は小さな笑い声を上げて、黙った。
ばつが悪くなった俺は、彼女の喜びを体現したその表情に更にばつが悪くなる。

24:ベイリーズ:10/10/23 06:16 ID:mhQo17lMrU
と、彼女は部屋の奥へ花を持ったまま向かう。

「如何ですか?」

戻ってきた彼女の手には花瓶に挿された黄色い花。

「この花ってなんて名前なんですか?」

「確か…マリー・ゴールドだったか?」

「金色の聖母…」

女はポツリと呟くと、花を見つめたまま言った。

「金色の天使、見つかるといいですね」

その表情は、柔らかかった

25:名無しさん:10/10/24 16:42 ID:zpxK//grCc
ごめん、オチがわかってしまった…

26:名無しさん:10/10/25 01:09 ID:3kjYrkBdSw
キョロちゃん…

27:ベイリーズ:10/10/25 04:11 ID:WprRLa3zwc
>>25

「それは困りましたね」

「言うなよ?」

>>26

「俺はピーナッツが好きだ」

「何のお話でしょうか?」

28:ベイリーズ:10/10/27 06:41 ID:mhQo17lMrU
俺たちの日常は静かなものだった。

昼間は天使を狩って、夕方には戻る。
女はそれを見送り、そして出迎える。

それは静かで、そしてささやかな日常。

29:ベイリーズ:10/10/27 06:46 ID:mhQo17lMrU
それからまた何日か経って、一緒に買い物に行くようにもなった。

「…あ」

女が声を挙げ、その視線の先を見ると

「行き倒れ、だな」

呟いて、彼女をちらと見る。
彼女は何か考えたあと、複雑そうな表情をして、視線をそれから外した。


とても。


とても複雑そうな表情だった。

30:ベイリーズ:10/10/27 06:50 ID:yIWUOGqTgY
「こんなこと、初めてなんです」

女はその後に言った。

「今の生活が崩れると思ったら」

俺は、その言葉を遮った。



無言で、遮った。

31:ベイリーズ:10/10/29 01:19 ID:FMeTw0FeVU
―――――――――

「金の天使についての情報があります」

ある日、夕食の席で女は言った。

「私はあなたに伝えるべきか悩んでいます」

金色の天使!?
俺は思わず大きな声を出す。

「どこだ!?どこにいる!?」

女は困ったように笑うと、ここからさほど遠くない場所を告げた。

32:ベイリーズ:10/10/29 01:27 ID:YJhJEawJbM
「ありがとう」

女に礼を言うと、彼女はゆるゆると首を振った。

「見つかると、いいですね」

「ああ。


見つかったら、



結婚して欲しい」





彼女は

「嬉しい…」

とだけ、呟いた。

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