淡々と兵食の話するわ
Part1
1 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2014/10/07(火) 20:24:10 TJ/dlcBg
-旧陸軍編-
男「・・・」ボケー
友「・・・いい天気だなぁ」
男「あぁ、こうやってたまにはのんびり外でビール飲みながら読書するのも悪くないな」
友「あ、次の巻ちょうだい」
男「はいよ」
2 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2014/10/07(火) 20:24:44 TJ/dlcBg
友「やっとのらくろ少尉になったわ。士官学校卒とか元が野良犬だったとは思えないほどの出世だな」
男「飯盒炊爨回ほんとすこ」
友「分かる。『おかずは牛の罐詰だ』とかあっこりゃたまらん、ヨダレずびっ!」
男「ぎうのくわんづめ」
友「牧歌的な絵なんだけど食事シーンが妙に美味そうに見えるんだよな」
3 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2014/10/07(火) 20:25:14 TJ/dlcBg
男「最近牛肉の大和煮高くなったよな」
友「うん。安くするために馬肉使用してたりとかな。でも、当時は牛肉なんてもっと高かったんだろうな」
男「それどころか缶詰自体が超高級品だからな」
友「へぇ」
男「巷じゃ見られない珍しい食べ物ってことで、軍隊の外じゃかなり珍重されてたらしい」
4 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2014/10/07(火) 20:25:55 TJ/dlcBg
友「へー・・・でも、この頃の軍隊のメシなんてほとんど缶詰ばっかじゃないのか?」
男「まさか。缶詰なんて戦闘の時かお祝いの時のパイナップル缶ぐらいしか配給されねえよ」
友「お前詳しいなお前」
男「普通、兵舎じゃちゃんと営内で調理した食事が配られてたんだよ」
友「へー・・・なんだか学校給食みたいだな」
5 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2014/10/07(火) 20:26:45 TJ/dlcBg
男「・・・よし、そうと決まれば早速実践だ」
友「えっ」
男「いや、当時のレシピは今でも文献として残ってるから割と簡単に再現できるんだよ」
友「へー、そうなんだ」
男「あぁ。ということで今から買い物行って再現してみよう」
"
"
6 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2014/10/07(火) 20:27:26 TJ/dlcBg
友「今から?・・・あぁでも、確かにぼちぼち昼飯の時間だなぁ」
男「よーし、そうと決まったら早速スーパーへれっつご!!」
友「あっ待ってお金ない」
男「心配するな。昨日実家からお米券送られてきた」
友「男さん素敵抱いて」
7 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2014/10/07(火) 20:27:56 TJ/dlcBg
・・・
男「ま、こんなもんだろ」
友「ずいぶん買ったなぁ」
男「えーと・・・あったあった」
友「なにその本?」
男「軍隊調理法。さっき言ってた当時の陸軍のレシピ集だよ」
8 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2014/10/07(火) 20:28:36 TJ/dlcBg
友「随分古いなぁ、レプリカか?」
男「いや、本物じゃないかな。死んだ爺ちゃんの遺品整理してたら出てきた」
友「マジかよ!?超プレミアついてそう」
男「うちの爺ちゃん、大戦中は陸軍にいてな。なんか他にも軍票とか色々出てきた」
友「すごい」(小並感)
9 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2014/10/07(火) 20:29:19 TJ/dlcBg
男「じゃ早速・・・本日のメニューですが」
友「はい」
男「主食、米麦飯」
友「麦飯ですか」
男「麦にはビタミンB1が豊富に含まれていて脚気の予防になるということから採用されたそうだ」
友「へぇ。そんな昔からビタミン補給なんて概念があったのか」
10 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2014/10/07(火) 20:30:15 TJ/dlcBg
男「ああ。大正年間には既に日本国内でもビタミンの存在が認識され、脚気予防対策としてビタミンB1の摂取が推奨され始めている」
友「へぇー」
男「それまでは森鴎外など著名な学者が脚気細菌説を支持したため、海軍が経験的に得ていた麦飯による脚気予防説が陸軍では行われなかったそうだ」
友「森鴎外って・・・あの作家の?」
男「ああ。そのため日露戦争では陸軍だけで25万人にも上る脚気患者が発生、うち3万人弱が死亡したという」
友「鴎外無能。森老害」
11 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2014/10/07(火) 20:31:34 TJ/dlcBg
男「一概に森を責められないけどな。当時の欧米じゃ脚気細菌説が主流だったし、脚気自体が未知の病だったわけだから。『よく分からんけどなんか効く』っていうレベルの話じゃ迷信と思われてもしかたがない」
友「だって、海軍では実績があったんだろ?」
男「鴎外は作家であると同時に医学者でもあったからな。現在の医薬品もそうであるように、効果には理由がセットになっていないとそれを認可することはできない。まぁ、陸海軍の仲があまり良くなかったことも背景にはあるだろうが」
友「えぇ・・・」
男「それに当時の日本国内では麦の生産量はそれほど多くなかったし、将兵ら自らが麦飯を拒否したのも理由に挙げられる。なんたって銀シャリが食えるって理由で軍隊に入った人も多かったくらいだからな」
12 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2014/10/07(火) 20:32:14 TJ/dlcBg
友「なるほどねぇ・・・」
男「次、汁物。鱈昆布汁」
友「鱈?鱈なんて買ったっけ?」
男「買ったぞ、ほらこれ」
友「棒鱈・・・生のやつ使うんじゃないんだ」
13 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2014/10/07(火) 20:33:10 TJ/dlcBg
男「副食、コロツケー&菜びたし」
友「コロツケー」
男「で、最後は漬物早漬け二号」
友「いきなり二号とかどういうことなの・・・」
男「よし、じゃあ調理を始めるぞ」
14 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2014/10/07(火) 20:33:43 TJ/dlcBg
・・・
男「まずは米を研ぎます」
友「はい」
男「炊きます」
友「はい」
男「以上だ!」
友「はい」
15 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2014/10/07(火) 20:34:20 TJ/dlcBg
男「ちなみに米麦の割合は7:3です」
友「なんか半分くらい麦に見えるんだけど」
男「7:3ってのは重量比だからな。実際米より押し麦のほうが軽いしでかいし」
友「なるほど」
男「今日は普通の白米を使ったが、旧陸軍では胚芽米を使用したらしい。これも有効なビタミン源だ」
16 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2014/10/07(火) 20:35:25 TJ/dlcBg
男「えー、では米麦に吸水させてるスキに早漬け二号を作ります」
友「技の一号、力の二号」
男「ちなみにこれ六号まであるから」
友「マジかよ漬物だけで戦隊組めるな」
男「レッドがしば漬けでイエローがたくわん、グリーンは野沢菜でピンクは桜漬けか・・・あ、ブルーはナス漬けでいけるな」
友「子供たちに人気が出るかは微妙なラインである」
17 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2014/10/07(火) 20:36:29 TJ/dlcBg
男「というわけで、まずは豆もやしを茹でます」
友「へぇー、漬物にもやしいれるとか斬新」
男「ざっと茹でたらざるで冷ましておきましょう・・・残りのお湯でコロツケーのためのジャガイモを茹でておきます」
友「コロツケー」
男「そしたらキャベツをくし切りにしてから小口に刻む。刻み終わったらさっきの豆もやしとミックスし袋にいれ、塩を入れて揉む」
18 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2014/10/07(火) 20:37:46 TJ/dlcBg
友「他の調味料は?」
男「まずはこのまま塩で漬け込んで置く。しばらくすると野菜の水分がでてくるから、その時残りの調味料を入れるとまんべんなく味が染み込むという寸法だ」
友「へい」
男「よし、今度は鱈昆布汁の棒鱈を戻すぞ」
友「いやあのこれ、カッチカチやぞ!!」
19 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2014/10/07(火) 20:38:35 TJ/dlcBg
男「本来なら一晩くらい水に浸しておくんだが、心配するな。早く戻す方法がある」
友「ほう?」
男「まずは耐熱容器に水と砂糖を少々」
友「砂糖?」
男「そこに棒鱈どーん」
20 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2014/10/07(火) 20:39:14 TJ/dlcBg
友「どうすんのそれ」
男「レンジで・・・チンします」
友「なに今の間」
男「こうすることでより早く乾物が戻る。棒鱈だけじゃなく昆布や干し貝柱でも使えるぞ、ちょっと砂糖を入れて・・・チンは」ピッ
友「だからなにその間」
21 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2014/10/07(火) 20:40:27 TJ/dlcBg
友「ていうか電子レンジってすごいよな。熱を出さずに電磁波で加熱させるとか初めて思いついたした人は何考えてたんだろ」
男「電子レンジは1945年にアメリカのレイセオン社の技術者がレーダー設置の際に胸ポケットに入れていたチョコが溶けてたことから着想したらしい」
友「その発想がすげぇよ。だって普通は体温で溶けたと思うだろ?」
男「まぁ、レーダー然り電磁波が物理的に何かしらの影響を物体に与えることは分かっていたわけだしな。ちなみに同時期に日本でも電磁波を用いた怪力光線の研究を行ってる」
友「怪力光線wwwwwwwもうちょっとネーミングどうにかならんのかwwwww」
22 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2014/10/07(火) 20:41:10 TJ/dlcBg
男「その初の照射実験では対象にサツマイモを使用し、見事焼き芋が出来上がったという」
友「怪力焼き芋」
男「ただ、最高でも5m先のウサギを殺す程度の威力しかなかったみたいだがな」
友「ウサギェ・・・」
男「※実験に使用したウサギはあとでスタッフがおいしくいただきました」
23 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2014/10/07(火) 20:41:53 TJ/dlcBg
<ピロリーピロリーピロリロリー♪
男「ん、できたかな」
友「そういや最近のレンジってチンって言わないよな」
男「まぁ実際チンっていうのは安物のオーブントースターくらいだな」
友「レンジでピロリーピロリーピロリロリー♪」
男「略してレンピロか・・・」ウーン
24 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2014/10/07(火) 20:43:24 TJ/dlcBg
友「・・・やっぱまだ固くない?」
男「まぁさすがに一晩つけたのに比べればな。とりあえず包丁で切れる程度なら問題ない」
友「はぁ」
男「はい。適度な大きさに鱈を切ったら鍋に水を入れ刻み昆布と共に煮立てます」
友「へい」
25 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2014/10/07(火) 20:44:00 TJ/dlcBg
男「よし、じゃあそろそろコロツケーの調理にかかるか」
友「コロツケー」
男「さっき茹でた芋を潰す。火が通ってるかどうかは串を刺して云々しゃらくせえ割ってしまえよ」ボグッ
友「男らしい」
男「アツゥイ!!」
友「おっ、大丈夫か大丈夫か」
26 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2014/10/07(火) 20:45:33 TJ/dlcBg
男「・・・はい。そしたら芋をつぶしてその中に汁を切った鮭缶をブチ込みます」
友「鮭缶?へーそんなの入れるんだ」
男「この辺、肉より魚を食べる機会が多かった昔の日本らしさを感じるな。まぁレシピじゃ他に獣肉も可となってるけど」
友「へー」
男「じゃ、その隙に玉ねぎ刻んで炒めて」
友「分かったナリ」
27 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2014/10/07(火) 20:46:28 TJ/dlcBg
友「さぁ勇気を出し微塵切りだ包丁・・・包丁を微塵切りってどういうことなの・・・」ガクガク
男「大百科超懐かしい」
友「玉ねぎ目にしみても・・・涙、ナミダ・・・そうなんだ・・・ビバナミダこぼれ落ちてゆけばいいじゃん無駄じゃない」トントントン
男「おいアニメ変わってるぞ」
友「あぁぁ目がぁ!目がぁぁ!!」
男「ちなみにその涙は玉ねぎの成分が鼻や目の粘膜について出るもんだから、切る前に鼻つっぺしとくといいぞ」
友「そういうおばあちゃんの知恵袋は切る前に教えてほしかったナリよ」
28 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2014/10/07(火) 20:48:09 TJ/dlcBg
男「はい、じゃあ炒めた玉ねぎをじゃがいもの入ったボールに投入して」
友「へい」
男「ここへ塩コショウ、パン粉、塩コショウ、塩コショウを投入します」
友「アカンしょっぱくなってまう」
男「材料を良く混ぜたら小判型に整形して小麦粉をまぶしておきます」
友「先生、さっきの鱈汁の鍋が吹いてます」グツグツ
29 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2014/10/07(火) 20:48:54 TJ/dlcBg
男「ん、そしたらそこに鰹節と刻んだ青菜をブチ込んで醤油でいい感じの味付けにしといてくれ」
友「わかった」
男「小松菜全部使うなよ。半分は菜びたしにするから」
友「最近菜ものが高くて辛いです・・・」
男「ほうれん草一束300円とかどんな高級食材だよ」(主婦並感)
30 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2014/10/07(火) 20:49:26 TJ/dlcBg
・・・
友「大体できたかな」
男「あ、あとはさっきの漬物に酢と砂糖と粉唐辛子入れて揉んどいて」
友「わかった超揉むわ」モミモミーン
男「あとはコロツケーが揚がれば完成だな」
友「コロツケー」
31 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2014/10/07(火) 20:50:36 TJ/dlcBg
・・・
男「できた」
友「うまそう。それにしても、思ったより早くできたな」
男「軍隊調理法は調理の簡便さにも重点を置いてレシピが作られてるからな」
友「なるほど」
男「さ、椀を出しなさい。まず食わねば」
32 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2014/10/07(火) 20:52:03 TJ/dlcBg
友「」コンモリ
男「当時の兵食では一食辺り2合の米麦飯がこれらの副食と共に配給されたという」
友「多すぎィ!!」
男「さぁ、冷めないうちに食べよう。いただきます」
友「い、いただきます・・・」
33 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2014/10/07(火) 20:53:47 TJ/dlcBg
友「・・・うーん、なんていうか、素朴な味だなぁ」モグモグ
男「化学調味料に慣れた舌にはそう感じるのもやむを得ない」
友「ていうか全体的にしょっぺぇ・・・」
男「まぁ兵隊という重労働者向けの食事だしな。塩分の補給も視野に入れた味付け量にはなってるよ」
友「こんだけ味が濃けりゃ飯も進むけどさ・・・」モグモグ
34 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2014/10/07(火) 20:55:21 TJ/dlcBg
男「ちなみに、これだけの量の飯をこなすために納豆が出る日は一人当たり現在の納豆4パック分が配色されたらしい」
友「アカン、納豆だけでお腹いっぱいになってまう」
男「よく薬味の有無や混ぜるタイミングで論争が起きるが、軍隊調理法では薬味は大根おろし、混ぜるのは醤油と大根おろしを入れてからとなっている」
友「へぇ、ネギじゃないんだ。ちょっと意外」
男「まぁでも4パック分もあったらネギよりは大根おろしのほうが食いやすいと思うよ僕は」
友「飯2合に納豆4パックのなっとうかけごはんとか考えただけでウッってなる」
35 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2014/10/07(火) 20:56:44 TJ/dlcBg
男「ごちそうさま」
友「ごちそうさまー・・・うー苦しい、こりゃ夕飯食わなくていいな」
男「どうだった?軍隊のメシは」
友「うん、なんていうか思ったよりちゃんと?してた」
男「そうだね、プロテインだね」
友「やっぱこう、戦時中の食事って言ったらもっと貧相なイメージだったんだけど」
36 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2014/10/07(火) 20:57:18 TJ/dlcBg
男「陸軍といえば兵站を軽視しすぎたことがとかく槍玉にあげられるけど、物資もなく補給も断たれた戦争末期はともかく、基本的に戦前の日本軍は総じて高いレベルの兵站能力を持ってたんだけどな」
友「まぁ週刊空母やるような国と同時に大陸相手にも戦うような無茶やらかしてたしなぁ・・・」
男「実際、当時から電気を使った野外調理用の車両なんかも開発してたしな」
友「話を聞くほどに当時の技術って思ったより進んでるんだよなぁ」
男「腐っても列強だし?昔から日本は開発力はあるけど生産力はないって言われてるしな」
友「技術があっても資源がないんじゃなあ・・・」
37 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2014/10/07(火) 20:58:28 TJ/dlcBg
男「だからもうマジ戦後日本はシーレーン防衛に文字通り命懸けてるマジで」
友「さもありなん」
男「潜水艦やべぇよ・・・やべぇよ・・・ってことが二次大戦でやっと分かったからな」
友「そういや昔からメシは海軍のほうが美味かったっていうよな」
男「陸軍と違って食糧の輸送を考えなくていいし、専門の調理員がいるからな」
友「へー」
-旧海軍編へつづく-
38 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2014/10/07(火) 21:04:47 TJ/dlcBg
ちなみに軍隊調理法はここに詳しいぞ!!
http://www.gokoku.gr.jp/cooking/index.html
39 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2014/10/07(火) 21:05:49 TJ/dlcBg
-旧海軍編-
男「はい。というわけで、ここに取り出したるは高橋猛先生著の『海の男の艦隊料理』です」
友「メシくったばっかなのにまたメシの話すんの」
男「旧軍は陸海セットでやっちまった方がいいだろうが!」プンスカ
友「えぇ・・・」
40 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2014/10/07(火) 21:07:39 TJ/dlcBg
男「で、さっきお前が言った通り昔から陸より海のほうが伝統的にメシは美味いといわれている」
友「肉じゃがとか、カレーとか有名だよな」
男「まぁ実際は、それらが民間に広がったのは海軍よりもむしろ陸軍の功績のほうがでかいんだけど」
友「あ、そうなの?」
男「海軍と違って陸軍は日本各地に基地があったし、兵の数も陸軍のほうが圧倒的に多かったからな。一応調理も持ち回りで全員が作り方を学ぶから、戦後軍隊で覚えた味が戦争の終了と同時に全国に広がって行ったわけだ」
友「なるほど」
41 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2014/10/07(火) 21:08:20 TJ/dlcBg
男「で、海軍は陸軍より人員が少ないわけだけど、大元の予算はどっちも同じ額なわけだよ」
友「ほほう」
男「となると、当然一人当たりの食費も余裕がでるし、そもそも海軍の場合は最前線の艦上に食料を積み、且つそこで調理するから輸送の手間を考慮する必要がない」
友「確かに」
男「だから、同じ食材でも陸軍は輸送コストがかかる分、前線での食材の単価が高いんだよ」
42 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2014/10/07(火) 21:09:34 TJ/dlcBg
友「北はロシア国境、南はジャングルの中まで届けなきゃいけないわけだもんなぁ・・・」
男「それでもまだ国力に余裕がある頃は、陸軍糧秣廠も正月におせち料理一式の入った『口取り缶』っていう缶詰を前線に送り届けてたらしいがな」
友「なるほどねぇ」
男「辻政信っていう陸軍の偉い人は、戦艦大和に呼ばれた時に振る舞われたご馳走みて『なんでこんな良いモン食ってんだよ!!』ってブチ切れたらしいけどな」
友「えぇ・・・」
43 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2014/10/07(火) 21:11:04 TJ/dlcBg
男「ま、というわけで使用する食材からして既に海軍に分がある訳だ」
友「そうだね、プロテインだね」
男「あと、海軍ってのは基本、戦闘だけでなく操艦などの専門技術を要することから組織自体が巨大な技術者集団だ。効率化のために各部門が専門化されてるから、調理もエキスパートが行うことになるしな」
友「それだけの素地があれば、海軍のメシのほうが美味くもならーな」
男「ただ、海軍には海軍の特殊事情もあるんだけどな」
44 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2014/10/07(火) 21:11:47 TJ/dlcBg
友「特殊事情?」
男「ああ。いくら当時から電気冷蔵庫はあったとはいえ、数百人以上いる乗組員の食料を数週間分積み込むわけだ。当然、その容量が足りるはずもない」
友「アカン、冷蔵庫爆発してまう」
男「だから、どうしても冷蔵庫に入らない分は缶詰や乾燥品等と言った保存性に優れる食品を積み込むことになる」
友「どう考えたって積み込む量はそっちのほうが多くなりそうだ・・・」
45 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2014/10/07(火) 21:12:22 TJ/dlcBg
男「実際、肉や魚、野菜などと言った生鮮食品・・・生糧品というが、これも出航後数日しか持たない」
友「その生糧品がなくなったら?」
男「たとえば野菜の水煮缶でつくった煮物や、水で戻した乾燥野菜の味噌汁・・・樽に漬けこんだ古漬け・・・」
友「悲しいメシだぜ・・・魚でも釣って食えばいいのに」
男「あ、当然『F作業』っていって、戦闘海域以外では艦上で釣った魚が食卓に並ぶこともあったみたいだな」
46 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2014/10/07(火) 21:16:16 TJ/dlcBg
友「まぁ周りは海な訳ですからねぇ」
男「そう言ったって、数百人分の魚が毎日釣れるわけでもないし、基本はそういった獲物は士官など階級が上の者の口に入っておしまいだったみたいだけど」
友「悲しいなぁ・・・」
男「まぁ、食えるだけマシよっていう感じかな。カレーなんかも、実際は古い食材の臭いを消すために生まれたってくらいだしな」
友「大航海時代にスパイスに命懸けてたのはそういうことだったのか・・・」
47 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2014/10/07(火) 21:16:53 TJ/dlcBg
男「あと海軍特有・・・でもないけど、有名な文化にギンバイってのがあるな」
友「つっぱりハイスクールかな?」 ※分からない人はオッサンに聞いてみよう
男「そう元は銀蠅よ。積み込まれてる食糧とかをこっそり盗み出すことなんだが、その様が食べ物に纏わりつく銀蠅に例えられてギンバイと呼ばれるようになったらしい」
友「なるほどー」
男「当時、海軍将兵たちの間で人気のあったギンバイ対象食品は生の玉ねぎだったという」
48 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2014/10/07(火) 21:17:37 TJ/dlcBg
友「なんでまた」
男「さっき言った通り、長期の航海では生野菜はすぐに底をつく。缶詰や乾燥野菜などと言った食事が続くと、乗組員達は自然と生野菜を欲したらしい」
友「でも、玉ねぎも一緒に腐っちゃうんじゃないの?」
男「いや、玉ねぎとジャガイモについては常温でも腐りにくいので大量に船に積み込まれたらしい。これはすなわちカレーにこれらの具が定番となっている理由でもある」
友「ほほう」
49 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2014/10/07(火) 21:19:23 TJ/dlcBg
男「特に、長期間野菜を摂取できなかった兵たちは刺激の強い野菜を求めたという。入港時の食料積み込みの際は、将兵たちが生の玉ねぎをまるでリンゴでも齧るかのようにほおばっていたという話もあるくらいだ」
友「くさそう」
男「まぁ男所帯だし・・・潜水艦に比べればマシよ」
友「潜水艦とかもっと大変だろうな。狭いし暗いし」
50 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2014/10/07(火) 21:19:54 TJ/dlcBg
男「ああ。さらに潜水艦の乗組員達は、その危険度も高かったため海軍の中でもパイロットに並び最高の食事が与えられていたという」
友「へー」
男「それでも相当辛かったはずだぞ。なんせ艦内に生ものはほとんど積めないし、日も当たらない艦内で缶詰缶詰アンド缶詰の毎日だからな」
友「聞いてるだけで元気なくなるわ・・・」ゲンナリ
男「唯一、艦内で育てている少量のモヤシだけが、時折味噌汁に浮かび乗組員達を喜ばせたという」
友「悲しいなぁ」
51 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2014/10/07(火) 21:21:29 TJ/dlcBg
男「で、さっきの本には、実際に海軍で主計兵・・・つまり調理要員の教育に使われた主計兵調理術教科書の内容が復刻されている」
友「さっきの軍隊調理法とは違うのか?」
男「ああ。前線での個人調理も視野に入れ、個々人での持ち回り調理を重視した陸軍とは違って、海軍では調理専門の主計兵のためにより専門的な調理技術に関する記載が為されている」
友「ほほう」
男「その中でも特徴的なのが、さっき言った海軍特有の潜水艦での調理や航空食、饗応料理などのレシピだな」
友「饗応?」
52 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2014/10/07(火) 21:22:18 TJ/dlcBg
男「来賓を招いて、食事を提供することだ」
友「ああ、お食事会ってことね」
男「実際、海軍は陸軍よりも海外各地に展開することが多いからな。こうした際のパーティ料理はもちろんのこと、下士官に至るまで洋食の食事マナーの教育があったほどだ」
友「ふーん・・・でも、戦争中はそんなこと言ってられないだろう」
男「いや、大戦末期になっても海軍では食事マナーの教育は続けられた。ただ、それまでは本物の料理を使ってたのが、水やタオルを料理に見立てるようになったらしいが」
友「悲しいなぁ」
53 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2014/10/07(火) 21:23:05 TJ/dlcBg
男「だけどそんな主計兵調理術教科書の中でもやっぱり異色を放つのが潜水艦航海食だな」
友「へぇ。普通の船での調理とそんなに違うもんなの?」
男「ああ。そもそも環境が特殊だからな」
友「食材が極端に少ないとか?」
男「それももちろんだが、もっと重要な違いがある」
54 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2014/10/07(火) 21:23:41 TJ/dlcBg
友「例えば?」
男「潜水艦はさ、海の中に潜るわけじゃん」
友「うん」
男「中の空気ってどうなってると思う?」
友「なんか、シュノーケル的なアレで海面から取ってるんじゃないの?」
55 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2014/10/07(火) 21:24:48 TJ/dlcBg
男「ああ、実際海中でディーゼルエンジン回すときはその通りだ。だけど、戦闘中だったり嵐の間はそうもいかないだろ?」
友「うーん・・・じゃあなんか酸素ボンベ的なものを積んでるとか?」
男「いや、実はな。基本潜水中は浮上時に溜め込んだ空気を大事に使って我慢する他ない」
友「マジかよ!?」
男「ああ。だから艦内では空気が汚濁するような行為は禁止されている。喫煙はもちろんの事、乗組員も非番中は呼気による二酸化炭素排出を抑制するため睡眠をとることが推奨された」
友「これはまた随分と原始的だなぁ」
56 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2014/10/07(火) 21:25:31 TJ/dlcBg
男「そうなると、当然艦内で火なんか使えないわけだ」
友「あっ、そうか・・・燃焼には酸素が必要だもんな。えっ、じゃあどうやって煮炊きすんの?」
男「そこで、潜水艦では電気釜を使用する。まあ、現在の炊飯器を大きくしたようなものだ」
友「なるほどー」
男「水上艦でも基本火は使わないけどな。ほとんどは機関から回ってくる蒸気の熱を使った蒸気釜が中心だ」
友「船上火災こわいからね、仕方ないね」
57 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2014/10/07(火) 21:26:23 TJ/dlcBg
男「さらに、水上艦でもさることながら潜水艦でより一層貴重となるのが『真水』だ」
友「真水かぁ」
男「当時の艦船では基本、出港地でタンクに詰め込んだ水の他に機関の熱を使った海水蒸留や、航行中のスコールなどから真水を得ていた。当時は膜を使った脱塩技術はまだ完成していなかったしな」
友「周りには水しかないのに水が足りないというのもなんだか皮肉な話だな」
男「潜水艦の場合、海中にいる間はモーターで航行するから海水の蒸留はできない。唯一、浮上中にディーゼルエンジンを使用しているときのみそれが可能になるわけだが、限りある燃料では得られる水の量も雀の涙といったところだ」
58 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2014/10/07(火) 21:27:06 TJ/dlcBg
友「そんなん・・・飲料水の他にも生活用水もいるだろうし、圧倒的に足りないだろう」
男「だから基本、潜水艦乗組員は歯も磨かないし身体も洗わない。もちろん、洗濯なんて夢のまた夢だ」
友「くさい」(確信)
男「事実、乗組員自身が『乞食のほうがまだ清潔だ』と手記に残しているくらいだからな。そういう事情から、潜水艦に乗り込む軍医は基本皮膚科の先生だったらしい」
友「たしかに皮膚病すごそう・・・」
男「それに潜水艦で攻撃を受けて怪我するような状況って、それもうほぼ死亡確定な状態だしな」
59 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2014/10/07(火) 21:28:20 TJ/dlcBg
男「まぁ・・・そんな環境の中でしかも出されるメシも缶詰ばかりだから、軍医は栄養補給のためにビタミン剤などを積極的に艦内に持ち込んだという」
友「もう聞いてるだけで食欲なくなるもの」ゲンナリ
男「さらに、歯も磨けないことから当時の潜水艦乗組員は例外的に常時ガムを噛むことを許されていた」
友「へぇ。戦後子供たちがギブミーチョコレートと一緒にGIたちにガムをせがんだ話は知ってるけど・・・当時の日本にもガムなんてあったんだな」
男「ガムが日本で初めて発売されたのは大正5年のことらしい。もっとも、当時は餅のような食感からウケは悪かったみたいだがな」
友「なんか普通に飲み込む人いそう」
60 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2014/10/07(火) 21:29:40 TJ/dlcBg
男「あと、原則米麦飯であった水上艦艇と違い、潜水艦では精白米が支給された。これは食欲の減退を予防するほか、湿度の高い艦内ではヌカのついた胚芽米や麦はすぐに悪くなってしまうという理由があったようだ」
友「本当にいいもん食ってたんだなぁ」
男「だが長期に渡る艦内生活では、当時高級品だったパインの缶詰さえ、缶特有の匂いが鼻について食欲を無くす者が続出したという」
友「うーん、勿体ないけど仕方ないね」
男「そんな状況を想定して、潜水艦航海食は火を使わず、調理が簡便で、酢や辛子などを用いて刺激のある、乗組員の食欲が増すようなレシピを中心に記載している」
61 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2014/10/07(火) 21:31:37 TJ/dlcBg
友「いろいろ制約があって大変だよなあ」
男「あぁ。だからこそ潜水艦調理はある意味海軍調理法の技術の集大成ともいえる訳だ。実際、潜水艦のために開発された食品も多いしな」
友「例えば?」
男「餅やうなぎの缶詰、粉末醤油、即席麺、粉末餅などなどなど・・・これらの技術が戦後インスタントラーメンや非常食で有名なアルファ米に受け継がれていくこととなる」
友「なるほどー」
62 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2014/10/07(火) 21:32:18 NCc7NNDw
うんちく面白い
支援
63 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2014/10/07(火) 21:33:53 TJ/dlcBg
男「まぁそんな風に軍需部や主計兵がどれだけ努力しても、将兵たちは『やっぱりご飯にパイン缶乗っけて紅茶をかけたのがナンバーワン!』みたいな感じだったらしいが」
友「これもうわかんねぇな」
男「そういえば、そういった用途で開発されて現在では味わうことのできない珍しい食品が存在する」
友「珍しい食品?」
男「ああ。それが自然を、おいしく、楽しくのカゴメが開発した固形ケチャップだ」
64 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2014/10/07(火) 21:35:16 TJ/dlcBg
友「マジかよ、カゴメそんなもん作ってたの・・・マジ日本のトマトエンペラーだわ」
男「当時のケチャップはビールのような瓶に詰めて出荷されていたんだが、それだと嵩張るし戦地での瓶の回収も難しいからな」
友「今みたいにプラスチックのケースもないだろうしね」
男「ただ、固形にするのは結構苦労したみたいだ。単に煮詰めるだけだと糖分が焦げて風味が変わってしまうし、含まれる酢酸も揮発性だから酸味が飛んでしまう」
友「くそっ・・・フリーズドライ技術さえあれば・・・」
男「フリーズドライ技術そのものは戦前からあったらしいけどな」
65 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2014/10/07(火) 21:35:59 TJ/dlcBg
友「あ、そうなの。また出たよこのオーパーツ感」
男「なんでもイタリアが『戦場でも美味いもの食べたイーノ』って開発したらしいが、如何せん設備も費用も掛かるからな。軍用糧食向けに本格的に研究・開発されるようになったのは1950年代に入ってからだ」
友「さすがイタリア、食に命懸けてるわ。砂漠でスパゲティ茹でてるだけのことはあるな」
男「戦場で米を炊く日本も大概だと思うぜ」
友「それで、カゴメは結局どうしたの?」
66 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2014/10/07(火) 21:36:54 TJ/dlcBg
>>62
ありがとう 私せいいっぱい頑張るわ
男「ああ。結局煮詰めるんではなくて、熱風による乾燥を用いたらしい。その際、酢酸の代わりに揮発しにくいクエン酸を添加したうえでな」
友「まさに必要は発明の母だなあ」
男「こうして作られた固形ケチャップはケチャップ羊羹とも呼ばれ、油紙とパラフィン紙に包まれて出荷されたらしい」
友「確かに、それなら軽いし嵩張らないね」
男「ああ。使うときも使う分だけ切って水に溶かすだけだしな」
67 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2014/10/07(火) 21:37:48 TJ/dlcBg
男「まぁ、それだけやっても将兵たちは『やっぱり溶かさずに切ったやつをご飯にのっけたのがナンバーワン!』みたいな感じだったらしいが」
友「日本人特有のとりあえずごはんに乗っけておく風潮」
男「色と言えば艦体の鈍色と海の青しか目にできず、野菜にも餓えた将兵たちにとってあのトマトの赤い色と酸味が大きな慰めになったのは事実のようだ」
友「ふーん・・・たしかに赤は食欲増す色だっていうしね」
男「そんな固形ケチャップだが、戦後は需要が落ち生産されなくなったため、現在では入手不可能となっている」
友「そう言われると食いたくなるのもまた人の性か」
68 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2014/10/07(火) 21:38:45 TJ/dlcBg
男「今じゃ技術が進歩して生糧品も長期保存ができるようになってきたし、昔よりは自由に水を使えるようになってきたみたいだしな」
友「うーん、なんだかんだで便利そうなんだけどな固形ケチャップ。復刻してくんないかな?」
男「他にも鰹節で味噌汁の出汁をとる陸軍に対して、海軍では前の晩からいりこを水に浸して出汁をとっていたように、同じ料理でも微妙に調理法が異なっている」
友「海軍のほうが仕事が丁寧な感」
男「最初に言った通り海軍には調理専門の主計兵がいるからな。調理技術といった意味では海軍のほうに一日の長があるだろう」
友「全員がある意味プロの調理人なわけだもんなぁ。元々料理人だった人とか向いてそう」
69 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2014/10/07(火) 21:39:43 TJ/dlcBg
男「いや、本物のコックや板前は主計兵とは別に艦に乗り込んでいた」
友「え、そうなの。なんでまた別々に?」
男「日本海軍は英海軍に倣ったから、兵と士官では食事が違う。兵の食事は主計兵が行うが、士官の食事は一流ホテルの料理人などを徴用して軍属として雇っていたらしい」
友「マジで?え、じゃあわざわざ兵用の料理人と士官用の料理人を乗せてたの?」
男「ああ。調理場も別だったし、調理器具にも差があったようだ。大量調理の必要がある主計科では、食材の裁断に牛刀を使ったり、前の晩から一度に出汁をとったりなど効率を重視している。一方で士官用の調理室では、柳刃や杓子など通常の料理店と同じ道具が揃えられ、味付けなども丁寧に行われていたらしい」
70 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2014/10/07(火) 21:41:15 TJ/dlcBg
友「へー・・・元のサイフは同じだろうに理不尽な話だなぁ」
男「いや、士官以上の食事については各員の持出しで食材が賄われたらしい」
友「自腹かよ・・・まぁお偉いさんだから金持ってたんだろうなぁ」
男「まぁ、形式上手当はついたらしいが、それでも若い士官になると相当辛かったみたいだけどな。特に艦長がグルメだった場合は」
友「俺絶対AランチBランチ選ぶ方が性に合ってるわ」
-旧海軍編 おわり-
71 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2014/10/07(火) 21:44:04 TJ/dlcBg
【口取り缶】
(前略)
お餅が出来れば、今度は正月料埋で一杯といふところであるが、正月料理といつても戦場では何も出来ない。
それで、やはり糧秣廠でつくりた小判形の大きい缶詰につめられて、小さいけれどもびんと尾頭を張つた鯛の焼ものや艶やかな黒豆や、うこん色の金とん、それに数の子、昆布巻、田作が一通り揃つてゐる。
これが一箇づゝ渡つた時の兵隊達の喜びやうは、大へんなものである。
平たい缶の衣面には、毎年銃後の気分を表象したレッテルを貼ることにしてゐるが、今年もレッテルが貼られて行つた。
(「野戦のお正月料理」陸軍糧秣本廠より)
72 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2014/10/07(火) 21:47:05 TJ/dlcBg
-番外編 海軍カレー-
友「でもやっぱり、さっきも言ったけど海軍といったらカレーだよなぁ」
男「今や海軍カレーは代表的な日本食の一つとなったからな」
友「インド人曰くもはやあれは別物らしいな」
男「日本のカレーはインド発イギリス経由日本行きだからね」
73 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2014/10/07(火) 21:48:01 Ys8xuhvg
とても面白いssに巡り合えました。続きが楽しみです
74 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2014/10/07(火) 21:48:05 TJ/dlcBg
友「あぁ、元々は古くなった食材の匂いを消すためだったんだっけ?確かに昔の船じゃ食べ物が持たないのはよく分かったし」
男「ああ。臭い消しもそうだが、スパイスには殺菌効果のあるものも多いしな。東南アジアなど高温多湿の地域の料理にスパイスが多用されるのは、このへんに理由があるらしい」
友「なるほど」
男「特に小麦粉によりとろみを加えているのが日本のカレーの特徴的な部分だ」
友「たしかにインドカレーとか結構サラサラしてるもんな」
男「あれにより色々な具を入れても米に絡みやすく、食べやすくなったわけだ。それに、揺れる船上でこぼれにくいってのもあるしな」
75 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2014/10/07(火) 21:49:17 R4Zo1mc6
腹減ってきた
期待
76 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2014/10/07(火) 21:49:24 TJ/dlcBg
友「今でも海上自衛隊では連綿と金曜カレーの文化が続いてるみたいじゃん?」
男「長い航海でしかも変則勤務だからな。曜日感覚を無くさないために金曜になったらしいが、元々は土曜日だったんだよあれ」
友「えっそうなの!?」
男「ああ。何だかんだ、調理や後片付けも楽だし、鍋に入れておけばあとは飯にかけるだけだからな。昔は給養員が土曜日に上陸するときに食事の手間を減らすために、土曜日にカレーということが多かったらしい」
友「旧海軍からの伝統じゃないのか・・・」
77 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2014/10/07(火) 21:50:36 TJ/dlcBg
男「そもそも旧海軍でも何曜日がカレーと決まってたもんでもないしな。それに、残った材料は効率よく使わなきゃならんし」
友「たしかに」
男「それに艦ごとにそこの主計課の得意料理というものがあったらしい。例えば空母の場合、赤城はお汁粉などの甘いもの、翔鶴の場合はカレーがそれぞれ得意料理だったみたいだ」
友「なるほど、おふくろの味ならぬお艦の味ってか・・・でも、さっきの主計兵調理術教科書でレシピは決まってるんじゃないの?」
男「いやまぁ飽くまで調理の基本技術と数種類のレシピ例が記載されているだけで、現場ではより臨機応変な対応がされていた」
友「へぇ」
78 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2014/10/07(火) 21:51:42 TJ/dlcBg
男「実際に、現在の海上自衛隊においても特に決まったカレーのレシピというものは存在しない。各艦の給養員が、自らのレシピを艦の味として受け継いでいるそうだ」
友「へー。なんかバーモンドカレーとか大量にぶち込んでるイメージだけど」
男「基本的には海自では小麦粉とバターを炒めてルウから作るそうだ。味付けはその艦の給養員の好みによるがな」
友「やっぱ海軍はそういうとこ、こだわってんだなぁ・・・」
男「それに、自衛隊に納入される食材は基本入札によって決まるからな。毎回同じ業者が同じ製品を納入するとはかぎらないんだよ」
友「へぇ~」
79 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2014/10/07(火) 21:52:15 TJ/dlcBg
男「で、金曜日はカレーといっても全ての艦が同じメニューになるわけではない」
友「ん?」
男「例えば、カレーの付け合せがコロッケだったり、メンチカツだったり。鶏のから揚げだったりそれは艦によって異なるらしい」
友「へー、副食までメニューが決められてるんじゃないんだ」
男「逆に米軍なんかはきっちりメニューまで決まってるみたいだけどな」
友「ふーん・・・」
80 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2014/10/07(火) 21:52:52 TJ/dlcBg
男「カレーに入る具も多種多様だな。ポークカレーの艦もあれば、ビーフカレーの艦もある」
友「それ絶対後者のほうがいいじゃん!」
男「ただ、一人当たりの食材費はどの艦も基本一緒だから、その分どこかでトレードオフになるわけだけど」
友「付け合せが一品減るとか、デザートがつかないとか?」
男「さあそこまでは・・・あ、付け合わせといえば、金曜カレーには大体サラダやフルーツとともにゆで卵がつく」
81 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2014/10/07(火) 21:54:16 TJ/dlcBg
友「これには坂東AGもニッコリ」
男「ふつうゆで卵はお湯が沸騰する前に卵を投入するんだが、海軍では沸騰したお湯に卵を投入する方法だったらしい」
友「へぇ、なんで?」
男「そのほうが殻が剥きやすいとされていたからだ。実際、高い温度に入れられた卵は表面にヒビが入って白身と殻の間に水が入り込んで剥き易くなる・・・気がする」
友「正直どっちもあんまり変わらないんじゃないですかね・・・」
男「養鶏家曰く、茹で卵にするときは古い卵のほうが殻が剥きやすいらしいぞ」 ※実話です
82 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2014/10/07(火) 21:54:48 TJ/dlcBg
友「でも、なんでまたカレーなんだろうな?」
友「WW2前までは日英は同盟関係だったしな。当時脚気に頭を悩ませていた海軍が、当時ほとんど脚気に悩まされることの無かった英国の食事を取りいれたことに起因しているらしい」
友「ふぅん・・・」
男「それに、基本的にカレーやシチューは食材を切って煮込むだけだしな。調理の効率も悪くない」
友「なるほどね・・・今じゃ定番の具は、当時から変わってないのか?」
83 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2014/10/07(火) 21:55:24 TJ/dlcBg
男「うーん、たしか日本に伝来してすぐに紹介されたカレーのレシピは肉に蛙を使ってたんじゃなかったか」
友「ゲテモノ料理じゃないですかやだー!」
男「フランス料理なんかじゃ普通の食材みたいだけど・・・当時はまだ豚や牛の肉も普及してなかったろうし」
友「えぇ・・・海に蛙なんていないじゃん・・・」
男「いや、海軍は最初から獣肉だったろうけど・・・」
84 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2014/10/07(火) 21:56:04 TJ/dlcBg
男「あと、実は海軍カレーにおいて重要な意味を持つ具材はジャガイモだったりする」
友「あぁ・・・さっき言ってた腐りにくい的な意味で?」
男「それももちろんだが、ジャガイモには船上で不足しがちな栄養素であるビタミンCが含まれている」
友「レモンの?」
男「ああ。100gあたりのビタミンC含有量がレモンは53.7mgに対して、じゃがいもは19.7mg」
友「少ねぇじゃねえか!!」
85 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2014/10/07(火) 21:56:47 TJ/dlcBg
男「だが、最も重要なのはビタミンCは加熱すると壊れるという点だ。さっきから言っている通り、艦船では生糧品は長持ちしない」
友「それはそうだけど・・・」
男「ジャガイモの場合は、加熱しても芋に含まれるでんぷんによってビタミンCの破壊が抑えられるそうだ」
友「へぇ~」
男「だから、長期航海においてジャガイモは重要なビタミンC供給源となったわけだな」
86 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2014/10/07(火) 21:57:22 TJ/dlcBg
友「ビタミンCか・・・それも脚気の原因?」
男「いや、ビタミンC欠乏は壊血病の原因だな」
友「壊血病・・・」
男「大航海時代の船乗りたちが苦しめられた病気だ。これもまた脚気と同じようにビタミン不足からくる病気と分かるまでに、随分時間がかかったがな」
友「へー」
87 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2014/10/07(火) 21:58:20 TJ/dlcBg
男「というわけで、ことさら海軍でカレーが取り上げられる要因はそういった事情が背景にあるからだろうな」
友「なるほどねぇ・・・でも、なんで日本だけなんだろ?元は日本軍の一部だったはずの韓国でも、海軍カレーくらいあってもよさそうなもんだが」
男「旧陸軍でもそうだったが、カレーはよく洗い残しが出たらしい。で、それをネタに階級が下の者に対して私的制裁を行うということで、今ひとつ韓国ではカレーが浸透していないらしい」
友「斜め上の理由だった」
男「まぁそれに基本的に韓国は地政学的に海洋国家とも言えないしな。歴史的に長期航海が必要となる海軍を持たなかったことも、もしかしたら理由の一つにあるかもしれん」
88 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2014/10/07(火) 21:58:56 TJ/dlcBg
友「はぁー、なるほど・・・」
男「それに、ビタミンCは唐辛子にも多く含まれている。これらをふんだんに使った韓国料理には、特にビタミンC対策は不要かもな」
友「まぁなんにでもキムチついてくるもんなぁ・・、にしても、やっぱりカレーは日本人の仏の胃袋やでぇ」
男「実は、こんだけ話しておいてなんだけど俺あんまりカレー好きじゃないんだよね」
友「ウッソ!?そんな人間いるのかよ!?」(驚愕)
89 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2014/10/07(火) 21:59:33 TJ/dlcBg
俺「いや、なんていうか味は嫌いじゃないし、給食とかでも割と問題なく食ってたけど・・・金払ってまで食うほどでもないかなぁ」
友「まぁー好みは人それぞれだからね・・・」
男「あ、でも高校の頃はよく100円ショップでレトルトカレー買って飲んでたなぁ、そういや」 ※筆者体験談
友「カレーは飲み物を地でいくのか・・・」(困惑)
男「なんというか、スナック菓子と違って肉や野菜が入ってて腹にたまるし、一番手軽にメシ食ってる感を味わってる気分になるから仕方なく」
友「この人おかしい・・・」
-番外編 海軍カレー おわり-
90 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2014/10/07(火) 22:01:09 TJ/dlcBg
とりあえず、この後は陸・海・空自衛隊、米軍、戦国時代、大航海時代くらいまでやる(小声)
91 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2014/10/07(火) 22:19:54 dR8A089U
かなり面白いです
支援
92 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2014/10/07(火) 22:30:55 8BD0tWi2
ひとまず乙!
戦国時代期待
カエルは旨いぞ?あっさりした鶏みたいで
93 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2014/10/07(火) 22:44:37 LiJlupTs
この感じ・・・間違いない、魚の人や!!(歓喜)
これは完結するまで期待せざるおえない
94 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2014/10/07(火) 23:04:30 9eauv8IQ
そうだね支援だね
95 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2014/10/07(火) 23:27:22 TJ/dlcBg
支援ありがとうございます
>>92
マムシは食ったことあるんだけどカエルはないんだよなぁ・・・多分
-旧陸軍編-
男「・・・」ボケー
友「・・・いい天気だなぁ」
男「あぁ、こうやってたまにはのんびり外でビール飲みながら読書するのも悪くないな」
友「あ、次の巻ちょうだい」
男「はいよ」
2 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2014/10/07(火) 20:24:44 TJ/dlcBg
友「やっとのらくろ少尉になったわ。士官学校卒とか元が野良犬だったとは思えないほどの出世だな」
男「飯盒炊爨回ほんとすこ」
友「分かる。『おかずは牛の罐詰だ』とかあっこりゃたまらん、ヨダレずびっ!」
男「ぎうのくわんづめ」
友「牧歌的な絵なんだけど食事シーンが妙に美味そうに見えるんだよな」
3 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2014/10/07(火) 20:25:14 TJ/dlcBg
男「最近牛肉の大和煮高くなったよな」
友「うん。安くするために馬肉使用してたりとかな。でも、当時は牛肉なんてもっと高かったんだろうな」
男「それどころか缶詰自体が超高級品だからな」
友「へぇ」
男「巷じゃ見られない珍しい食べ物ってことで、軍隊の外じゃかなり珍重されてたらしい」
4 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2014/10/07(火) 20:25:55 TJ/dlcBg
友「へー・・・でも、この頃の軍隊のメシなんてほとんど缶詰ばっかじゃないのか?」
男「まさか。缶詰なんて戦闘の時かお祝いの時のパイナップル缶ぐらいしか配給されねえよ」
友「お前詳しいなお前」
男「普通、兵舎じゃちゃんと営内で調理した食事が配られてたんだよ」
友「へー・・・なんだか学校給食みたいだな」
5 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2014/10/07(火) 20:26:45 TJ/dlcBg
男「・・・よし、そうと決まれば早速実践だ」
友「えっ」
男「いや、当時のレシピは今でも文献として残ってるから割と簡単に再現できるんだよ」
友「へー、そうなんだ」
男「あぁ。ということで今から買い物行って再現してみよう」
"
"
友「今から?・・・あぁでも、確かにぼちぼち昼飯の時間だなぁ」
男「よーし、そうと決まったら早速スーパーへれっつご!!」
友「あっ待ってお金ない」
男「心配するな。昨日実家からお米券送られてきた」
友「男さん素敵抱いて」
7 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2014/10/07(火) 20:27:56 TJ/dlcBg
・・・
男「ま、こんなもんだろ」
友「ずいぶん買ったなぁ」
男「えーと・・・あったあった」
友「なにその本?」
男「軍隊調理法。さっき言ってた当時の陸軍のレシピ集だよ」
8 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2014/10/07(火) 20:28:36 TJ/dlcBg
友「随分古いなぁ、レプリカか?」
男「いや、本物じゃないかな。死んだ爺ちゃんの遺品整理してたら出てきた」
友「マジかよ!?超プレミアついてそう」
男「うちの爺ちゃん、大戦中は陸軍にいてな。なんか他にも軍票とか色々出てきた」
友「すごい」(小並感)
9 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2014/10/07(火) 20:29:19 TJ/dlcBg
男「じゃ早速・・・本日のメニューですが」
友「はい」
男「主食、米麦飯」
友「麦飯ですか」
男「麦にはビタミンB1が豊富に含まれていて脚気の予防になるということから採用されたそうだ」
友「へぇ。そんな昔からビタミン補給なんて概念があったのか」
10 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2014/10/07(火) 20:30:15 TJ/dlcBg
男「ああ。大正年間には既に日本国内でもビタミンの存在が認識され、脚気予防対策としてビタミンB1の摂取が推奨され始めている」
友「へぇー」
男「それまでは森鴎外など著名な学者が脚気細菌説を支持したため、海軍が経験的に得ていた麦飯による脚気予防説が陸軍では行われなかったそうだ」
友「森鴎外って・・・あの作家の?」
男「ああ。そのため日露戦争では陸軍だけで25万人にも上る脚気患者が発生、うち3万人弱が死亡したという」
友「鴎外無能。森老害」
11 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2014/10/07(火) 20:31:34 TJ/dlcBg
男「一概に森を責められないけどな。当時の欧米じゃ脚気細菌説が主流だったし、脚気自体が未知の病だったわけだから。『よく分からんけどなんか効く』っていうレベルの話じゃ迷信と思われてもしかたがない」
友「だって、海軍では実績があったんだろ?」
男「鴎外は作家であると同時に医学者でもあったからな。現在の医薬品もそうであるように、効果には理由がセットになっていないとそれを認可することはできない。まぁ、陸海軍の仲があまり良くなかったことも背景にはあるだろうが」
友「えぇ・・・」
男「それに当時の日本国内では麦の生産量はそれほど多くなかったし、将兵ら自らが麦飯を拒否したのも理由に挙げられる。なんたって銀シャリが食えるって理由で軍隊に入った人も多かったくらいだからな」
12 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2014/10/07(火) 20:32:14 TJ/dlcBg
友「なるほどねぇ・・・」
男「次、汁物。鱈昆布汁」
友「鱈?鱈なんて買ったっけ?」
男「買ったぞ、ほらこれ」
友「棒鱈・・・生のやつ使うんじゃないんだ」
13 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2014/10/07(火) 20:33:10 TJ/dlcBg
男「副食、コロツケー&菜びたし」
友「コロツケー」
男「で、最後は漬物早漬け二号」
友「いきなり二号とかどういうことなの・・・」
男「よし、じゃあ調理を始めるぞ」
14 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2014/10/07(火) 20:33:43 TJ/dlcBg
・・・
男「まずは米を研ぎます」
友「はい」
男「炊きます」
友「はい」
男「以上だ!」
友「はい」
15 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2014/10/07(火) 20:34:20 TJ/dlcBg
男「ちなみに米麦の割合は7:3です」
友「なんか半分くらい麦に見えるんだけど」
男「7:3ってのは重量比だからな。実際米より押し麦のほうが軽いしでかいし」
友「なるほど」
男「今日は普通の白米を使ったが、旧陸軍では胚芽米を使用したらしい。これも有効なビタミン源だ」
16 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2014/10/07(火) 20:35:25 TJ/dlcBg
男「えー、では米麦に吸水させてるスキに早漬け二号を作ります」
友「技の一号、力の二号」
男「ちなみにこれ六号まであるから」
友「マジかよ漬物だけで戦隊組めるな」
男「レッドがしば漬けでイエローがたくわん、グリーンは野沢菜でピンクは桜漬けか・・・あ、ブルーはナス漬けでいけるな」
友「子供たちに人気が出るかは微妙なラインである」
17 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2014/10/07(火) 20:36:29 TJ/dlcBg
男「というわけで、まずは豆もやしを茹でます」
友「へぇー、漬物にもやしいれるとか斬新」
男「ざっと茹でたらざるで冷ましておきましょう・・・残りのお湯でコロツケーのためのジャガイモを茹でておきます」
友「コロツケー」
男「そしたらキャベツをくし切りにしてから小口に刻む。刻み終わったらさっきの豆もやしとミックスし袋にいれ、塩を入れて揉む」
18 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2014/10/07(火) 20:37:46 TJ/dlcBg
友「他の調味料は?」
男「まずはこのまま塩で漬け込んで置く。しばらくすると野菜の水分がでてくるから、その時残りの調味料を入れるとまんべんなく味が染み込むという寸法だ」
友「へい」
男「よし、今度は鱈昆布汁の棒鱈を戻すぞ」
友「いやあのこれ、カッチカチやぞ!!」
19 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2014/10/07(火) 20:38:35 TJ/dlcBg
男「本来なら一晩くらい水に浸しておくんだが、心配するな。早く戻す方法がある」
友「ほう?」
男「まずは耐熱容器に水と砂糖を少々」
友「砂糖?」
男「そこに棒鱈どーん」
20 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2014/10/07(火) 20:39:14 TJ/dlcBg
友「どうすんのそれ」
男「レンジで・・・チンします」
友「なに今の間」
男「こうすることでより早く乾物が戻る。棒鱈だけじゃなく昆布や干し貝柱でも使えるぞ、ちょっと砂糖を入れて・・・チンは」ピッ
友「だからなにその間」
友「ていうか電子レンジってすごいよな。熱を出さずに電磁波で加熱させるとか初めて思いついたした人は何考えてたんだろ」
男「電子レンジは1945年にアメリカのレイセオン社の技術者がレーダー設置の際に胸ポケットに入れていたチョコが溶けてたことから着想したらしい」
友「その発想がすげぇよ。だって普通は体温で溶けたと思うだろ?」
男「まぁ、レーダー然り電磁波が物理的に何かしらの影響を物体に与えることは分かっていたわけだしな。ちなみに同時期に日本でも電磁波を用いた怪力光線の研究を行ってる」
友「怪力光線wwwwwwwもうちょっとネーミングどうにかならんのかwwwww」
22 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2014/10/07(火) 20:41:10 TJ/dlcBg
男「その初の照射実験では対象にサツマイモを使用し、見事焼き芋が出来上がったという」
友「怪力焼き芋」
男「ただ、最高でも5m先のウサギを殺す程度の威力しかなかったみたいだがな」
友「ウサギェ・・・」
男「※実験に使用したウサギはあとでスタッフがおいしくいただきました」
23 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2014/10/07(火) 20:41:53 TJ/dlcBg
<ピロリーピロリーピロリロリー♪
男「ん、できたかな」
友「そういや最近のレンジってチンって言わないよな」
男「まぁ実際チンっていうのは安物のオーブントースターくらいだな」
友「レンジでピロリーピロリーピロリロリー♪」
男「略してレンピロか・・・」ウーン
24 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2014/10/07(火) 20:43:24 TJ/dlcBg
友「・・・やっぱまだ固くない?」
男「まぁさすがに一晩つけたのに比べればな。とりあえず包丁で切れる程度なら問題ない」
友「はぁ」
男「はい。適度な大きさに鱈を切ったら鍋に水を入れ刻み昆布と共に煮立てます」
友「へい」
25 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2014/10/07(火) 20:44:00 TJ/dlcBg
男「よし、じゃあそろそろコロツケーの調理にかかるか」
友「コロツケー」
男「さっき茹でた芋を潰す。火が通ってるかどうかは串を刺して云々しゃらくせえ割ってしまえよ」ボグッ
友「男らしい」
男「アツゥイ!!」
友「おっ、大丈夫か大丈夫か」
26 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2014/10/07(火) 20:45:33 TJ/dlcBg
男「・・・はい。そしたら芋をつぶしてその中に汁を切った鮭缶をブチ込みます」
友「鮭缶?へーそんなの入れるんだ」
男「この辺、肉より魚を食べる機会が多かった昔の日本らしさを感じるな。まぁレシピじゃ他に獣肉も可となってるけど」
友「へー」
男「じゃ、その隙に玉ねぎ刻んで炒めて」
友「分かったナリ」
27 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2014/10/07(火) 20:46:28 TJ/dlcBg
友「さぁ勇気を出し微塵切りだ包丁・・・包丁を微塵切りってどういうことなの・・・」ガクガク
男「大百科超懐かしい」
友「玉ねぎ目にしみても・・・涙、ナミダ・・・そうなんだ・・・ビバナミダこぼれ落ちてゆけばいいじゃん無駄じゃない」トントントン
男「おいアニメ変わってるぞ」
友「あぁぁ目がぁ!目がぁぁ!!」
男「ちなみにその涙は玉ねぎの成分が鼻や目の粘膜について出るもんだから、切る前に鼻つっぺしとくといいぞ」
友「そういうおばあちゃんの知恵袋は切る前に教えてほしかったナリよ」
28 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2014/10/07(火) 20:48:09 TJ/dlcBg
男「はい、じゃあ炒めた玉ねぎをじゃがいもの入ったボールに投入して」
友「へい」
男「ここへ塩コショウ、パン粉、塩コショウ、塩コショウを投入します」
友「アカンしょっぱくなってまう」
男「材料を良く混ぜたら小判型に整形して小麦粉をまぶしておきます」
友「先生、さっきの鱈汁の鍋が吹いてます」グツグツ
29 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2014/10/07(火) 20:48:54 TJ/dlcBg
男「ん、そしたらそこに鰹節と刻んだ青菜をブチ込んで醤油でいい感じの味付けにしといてくれ」
友「わかった」
男「小松菜全部使うなよ。半分は菜びたしにするから」
友「最近菜ものが高くて辛いです・・・」
男「ほうれん草一束300円とかどんな高級食材だよ」(主婦並感)
30 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2014/10/07(火) 20:49:26 TJ/dlcBg
・・・
友「大体できたかな」
男「あ、あとはさっきの漬物に酢と砂糖と粉唐辛子入れて揉んどいて」
友「わかった超揉むわ」モミモミーン
男「あとはコロツケーが揚がれば完成だな」
友「コロツケー」
31 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2014/10/07(火) 20:50:36 TJ/dlcBg
・・・
男「できた」
友「うまそう。それにしても、思ったより早くできたな」
男「軍隊調理法は調理の簡便さにも重点を置いてレシピが作られてるからな」
友「なるほど」
男「さ、椀を出しなさい。まず食わねば」
32 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2014/10/07(火) 20:52:03 TJ/dlcBg
友「」コンモリ
男「当時の兵食では一食辺り2合の米麦飯がこれらの副食と共に配給されたという」
友「多すぎィ!!」
男「さぁ、冷めないうちに食べよう。いただきます」
友「い、いただきます・・・」
33 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2014/10/07(火) 20:53:47 TJ/dlcBg
友「・・・うーん、なんていうか、素朴な味だなぁ」モグモグ
男「化学調味料に慣れた舌にはそう感じるのもやむを得ない」
友「ていうか全体的にしょっぺぇ・・・」
男「まぁ兵隊という重労働者向けの食事だしな。塩分の補給も視野に入れた味付け量にはなってるよ」
友「こんだけ味が濃けりゃ飯も進むけどさ・・・」モグモグ
34 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2014/10/07(火) 20:55:21 TJ/dlcBg
男「ちなみに、これだけの量の飯をこなすために納豆が出る日は一人当たり現在の納豆4パック分が配色されたらしい」
友「アカン、納豆だけでお腹いっぱいになってまう」
男「よく薬味の有無や混ぜるタイミングで論争が起きるが、軍隊調理法では薬味は大根おろし、混ぜるのは醤油と大根おろしを入れてからとなっている」
友「へぇ、ネギじゃないんだ。ちょっと意外」
男「まぁでも4パック分もあったらネギよりは大根おろしのほうが食いやすいと思うよ僕は」
友「飯2合に納豆4パックのなっとうかけごはんとか考えただけでウッってなる」
35 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2014/10/07(火) 20:56:44 TJ/dlcBg
男「ごちそうさま」
友「ごちそうさまー・・・うー苦しい、こりゃ夕飯食わなくていいな」
男「どうだった?軍隊のメシは」
友「うん、なんていうか思ったよりちゃんと?してた」
男「そうだね、プロテインだね」
友「やっぱこう、戦時中の食事って言ったらもっと貧相なイメージだったんだけど」
36 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2014/10/07(火) 20:57:18 TJ/dlcBg
男「陸軍といえば兵站を軽視しすぎたことがとかく槍玉にあげられるけど、物資もなく補給も断たれた戦争末期はともかく、基本的に戦前の日本軍は総じて高いレベルの兵站能力を持ってたんだけどな」
友「まぁ週刊空母やるような国と同時に大陸相手にも戦うような無茶やらかしてたしなぁ・・・」
男「実際、当時から電気を使った野外調理用の車両なんかも開発してたしな」
友「話を聞くほどに当時の技術って思ったより進んでるんだよなぁ」
男「腐っても列強だし?昔から日本は開発力はあるけど生産力はないって言われてるしな」
友「技術があっても資源がないんじゃなあ・・・」
37 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2014/10/07(火) 20:58:28 TJ/dlcBg
男「だからもうマジ戦後日本はシーレーン防衛に文字通り命懸けてるマジで」
友「さもありなん」
男「潜水艦やべぇよ・・・やべぇよ・・・ってことが二次大戦でやっと分かったからな」
友「そういや昔からメシは海軍のほうが美味かったっていうよな」
男「陸軍と違って食糧の輸送を考えなくていいし、専門の調理員がいるからな」
友「へー」
-旧海軍編へつづく-
38 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2014/10/07(火) 21:04:47 TJ/dlcBg
ちなみに軍隊調理法はここに詳しいぞ!!
http://www.gokoku.gr.jp/cooking/index.html
39 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2014/10/07(火) 21:05:49 TJ/dlcBg
-旧海軍編-
男「はい。というわけで、ここに取り出したるは高橋猛先生著の『海の男の艦隊料理』です」
友「メシくったばっかなのにまたメシの話すんの」
男「旧軍は陸海セットでやっちまった方がいいだろうが!」プンスカ
友「えぇ・・・」
40 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2014/10/07(火) 21:07:39 TJ/dlcBg
男「で、さっきお前が言った通り昔から陸より海のほうが伝統的にメシは美味いといわれている」
友「肉じゃがとか、カレーとか有名だよな」
男「まぁ実際は、それらが民間に広がったのは海軍よりもむしろ陸軍の功績のほうがでかいんだけど」
友「あ、そうなの?」
男「海軍と違って陸軍は日本各地に基地があったし、兵の数も陸軍のほうが圧倒的に多かったからな。一応調理も持ち回りで全員が作り方を学ぶから、戦後軍隊で覚えた味が戦争の終了と同時に全国に広がって行ったわけだ」
友「なるほど」
41 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2014/10/07(火) 21:08:20 TJ/dlcBg
男「で、海軍は陸軍より人員が少ないわけだけど、大元の予算はどっちも同じ額なわけだよ」
友「ほほう」
男「となると、当然一人当たりの食費も余裕がでるし、そもそも海軍の場合は最前線の艦上に食料を積み、且つそこで調理するから輸送の手間を考慮する必要がない」
友「確かに」
男「だから、同じ食材でも陸軍は輸送コストがかかる分、前線での食材の単価が高いんだよ」
42 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2014/10/07(火) 21:09:34 TJ/dlcBg
友「北はロシア国境、南はジャングルの中まで届けなきゃいけないわけだもんなぁ・・・」
男「それでもまだ国力に余裕がある頃は、陸軍糧秣廠も正月におせち料理一式の入った『口取り缶』っていう缶詰を前線に送り届けてたらしいがな」
友「なるほどねぇ」
男「辻政信っていう陸軍の偉い人は、戦艦大和に呼ばれた時に振る舞われたご馳走みて『なんでこんな良いモン食ってんだよ!!』ってブチ切れたらしいけどな」
友「えぇ・・・」
43 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2014/10/07(火) 21:11:04 TJ/dlcBg
男「ま、というわけで使用する食材からして既に海軍に分がある訳だ」
友「そうだね、プロテインだね」
男「あと、海軍ってのは基本、戦闘だけでなく操艦などの専門技術を要することから組織自体が巨大な技術者集団だ。効率化のために各部門が専門化されてるから、調理もエキスパートが行うことになるしな」
友「それだけの素地があれば、海軍のメシのほうが美味くもならーな」
男「ただ、海軍には海軍の特殊事情もあるんだけどな」
44 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2014/10/07(火) 21:11:47 TJ/dlcBg
友「特殊事情?」
男「ああ。いくら当時から電気冷蔵庫はあったとはいえ、数百人以上いる乗組員の食料を数週間分積み込むわけだ。当然、その容量が足りるはずもない」
友「アカン、冷蔵庫爆発してまう」
男「だから、どうしても冷蔵庫に入らない分は缶詰や乾燥品等と言った保存性に優れる食品を積み込むことになる」
友「どう考えたって積み込む量はそっちのほうが多くなりそうだ・・・」
45 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2014/10/07(火) 21:12:22 TJ/dlcBg
男「実際、肉や魚、野菜などと言った生鮮食品・・・生糧品というが、これも出航後数日しか持たない」
友「その生糧品がなくなったら?」
男「たとえば野菜の水煮缶でつくった煮物や、水で戻した乾燥野菜の味噌汁・・・樽に漬けこんだ古漬け・・・」
友「悲しいメシだぜ・・・魚でも釣って食えばいいのに」
男「あ、当然『F作業』っていって、戦闘海域以外では艦上で釣った魚が食卓に並ぶこともあったみたいだな」
46 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2014/10/07(火) 21:16:16 TJ/dlcBg
友「まぁ周りは海な訳ですからねぇ」
男「そう言ったって、数百人分の魚が毎日釣れるわけでもないし、基本はそういった獲物は士官など階級が上の者の口に入っておしまいだったみたいだけど」
友「悲しいなぁ・・・」
男「まぁ、食えるだけマシよっていう感じかな。カレーなんかも、実際は古い食材の臭いを消すために生まれたってくらいだしな」
友「大航海時代にスパイスに命懸けてたのはそういうことだったのか・・・」
47 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2014/10/07(火) 21:16:53 TJ/dlcBg
男「あと海軍特有・・・でもないけど、有名な文化にギンバイってのがあるな」
友「つっぱりハイスクールかな?」 ※分からない人はオッサンに聞いてみよう
男「そう元は銀蠅よ。積み込まれてる食糧とかをこっそり盗み出すことなんだが、その様が食べ物に纏わりつく銀蠅に例えられてギンバイと呼ばれるようになったらしい」
友「なるほどー」
男「当時、海軍将兵たちの間で人気のあったギンバイ対象食品は生の玉ねぎだったという」
48 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2014/10/07(火) 21:17:37 TJ/dlcBg
友「なんでまた」
男「さっき言った通り、長期の航海では生野菜はすぐに底をつく。缶詰や乾燥野菜などと言った食事が続くと、乗組員達は自然と生野菜を欲したらしい」
友「でも、玉ねぎも一緒に腐っちゃうんじゃないの?」
男「いや、玉ねぎとジャガイモについては常温でも腐りにくいので大量に船に積み込まれたらしい。これはすなわちカレーにこれらの具が定番となっている理由でもある」
友「ほほう」
49 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2014/10/07(火) 21:19:23 TJ/dlcBg
男「特に、長期間野菜を摂取できなかった兵たちは刺激の強い野菜を求めたという。入港時の食料積み込みの際は、将兵たちが生の玉ねぎをまるでリンゴでも齧るかのようにほおばっていたという話もあるくらいだ」
友「くさそう」
男「まぁ男所帯だし・・・潜水艦に比べればマシよ」
友「潜水艦とかもっと大変だろうな。狭いし暗いし」
50 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2014/10/07(火) 21:19:54 TJ/dlcBg
男「ああ。さらに潜水艦の乗組員達は、その危険度も高かったため海軍の中でもパイロットに並び最高の食事が与えられていたという」
友「へー」
男「それでも相当辛かったはずだぞ。なんせ艦内に生ものはほとんど積めないし、日も当たらない艦内で缶詰缶詰アンド缶詰の毎日だからな」
友「聞いてるだけで元気なくなるわ・・・」ゲンナリ
男「唯一、艦内で育てている少量のモヤシだけが、時折味噌汁に浮かび乗組員達を喜ばせたという」
友「悲しいなぁ」
51 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2014/10/07(火) 21:21:29 TJ/dlcBg
男「で、さっきの本には、実際に海軍で主計兵・・・つまり調理要員の教育に使われた主計兵調理術教科書の内容が復刻されている」
友「さっきの軍隊調理法とは違うのか?」
男「ああ。前線での個人調理も視野に入れ、個々人での持ち回り調理を重視した陸軍とは違って、海軍では調理専門の主計兵のためにより専門的な調理技術に関する記載が為されている」
友「ほほう」
男「その中でも特徴的なのが、さっき言った海軍特有の潜水艦での調理や航空食、饗応料理などのレシピだな」
友「饗応?」
52 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2014/10/07(火) 21:22:18 TJ/dlcBg
男「来賓を招いて、食事を提供することだ」
友「ああ、お食事会ってことね」
男「実際、海軍は陸軍よりも海外各地に展開することが多いからな。こうした際のパーティ料理はもちろんのこと、下士官に至るまで洋食の食事マナーの教育があったほどだ」
友「ふーん・・・でも、戦争中はそんなこと言ってられないだろう」
男「いや、大戦末期になっても海軍では食事マナーの教育は続けられた。ただ、それまでは本物の料理を使ってたのが、水やタオルを料理に見立てるようになったらしいが」
友「悲しいなぁ」
53 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2014/10/07(火) 21:23:05 TJ/dlcBg
男「だけどそんな主計兵調理術教科書の中でもやっぱり異色を放つのが潜水艦航海食だな」
友「へぇ。普通の船での調理とそんなに違うもんなの?」
男「ああ。そもそも環境が特殊だからな」
友「食材が極端に少ないとか?」
男「それももちろんだが、もっと重要な違いがある」
54 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2014/10/07(火) 21:23:41 TJ/dlcBg
友「例えば?」
男「潜水艦はさ、海の中に潜るわけじゃん」
友「うん」
男「中の空気ってどうなってると思う?」
友「なんか、シュノーケル的なアレで海面から取ってるんじゃないの?」
55 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2014/10/07(火) 21:24:48 TJ/dlcBg
男「ああ、実際海中でディーゼルエンジン回すときはその通りだ。だけど、戦闘中だったり嵐の間はそうもいかないだろ?」
友「うーん・・・じゃあなんか酸素ボンベ的なものを積んでるとか?」
男「いや、実はな。基本潜水中は浮上時に溜め込んだ空気を大事に使って我慢する他ない」
友「マジかよ!?」
男「ああ。だから艦内では空気が汚濁するような行為は禁止されている。喫煙はもちろんの事、乗組員も非番中は呼気による二酸化炭素排出を抑制するため睡眠をとることが推奨された」
友「これはまた随分と原始的だなぁ」
56 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2014/10/07(火) 21:25:31 TJ/dlcBg
男「そうなると、当然艦内で火なんか使えないわけだ」
友「あっ、そうか・・・燃焼には酸素が必要だもんな。えっ、じゃあどうやって煮炊きすんの?」
男「そこで、潜水艦では電気釜を使用する。まあ、現在の炊飯器を大きくしたようなものだ」
友「なるほどー」
男「水上艦でも基本火は使わないけどな。ほとんどは機関から回ってくる蒸気の熱を使った蒸気釜が中心だ」
友「船上火災こわいからね、仕方ないね」
57 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2014/10/07(火) 21:26:23 TJ/dlcBg
男「さらに、水上艦でもさることながら潜水艦でより一層貴重となるのが『真水』だ」
友「真水かぁ」
男「当時の艦船では基本、出港地でタンクに詰め込んだ水の他に機関の熱を使った海水蒸留や、航行中のスコールなどから真水を得ていた。当時は膜を使った脱塩技術はまだ完成していなかったしな」
友「周りには水しかないのに水が足りないというのもなんだか皮肉な話だな」
男「潜水艦の場合、海中にいる間はモーターで航行するから海水の蒸留はできない。唯一、浮上中にディーゼルエンジンを使用しているときのみそれが可能になるわけだが、限りある燃料では得られる水の量も雀の涙といったところだ」
58 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2014/10/07(火) 21:27:06 TJ/dlcBg
友「そんなん・・・飲料水の他にも生活用水もいるだろうし、圧倒的に足りないだろう」
男「だから基本、潜水艦乗組員は歯も磨かないし身体も洗わない。もちろん、洗濯なんて夢のまた夢だ」
友「くさい」(確信)
男「事実、乗組員自身が『乞食のほうがまだ清潔だ』と手記に残しているくらいだからな。そういう事情から、潜水艦に乗り込む軍医は基本皮膚科の先生だったらしい」
友「たしかに皮膚病すごそう・・・」
男「それに潜水艦で攻撃を受けて怪我するような状況って、それもうほぼ死亡確定な状態だしな」
59 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2014/10/07(火) 21:28:20 TJ/dlcBg
男「まぁ・・・そんな環境の中でしかも出されるメシも缶詰ばかりだから、軍医は栄養補給のためにビタミン剤などを積極的に艦内に持ち込んだという」
友「もう聞いてるだけで食欲なくなるもの」ゲンナリ
男「さらに、歯も磨けないことから当時の潜水艦乗組員は例外的に常時ガムを噛むことを許されていた」
友「へぇ。戦後子供たちがギブミーチョコレートと一緒にGIたちにガムをせがんだ話は知ってるけど・・・当時の日本にもガムなんてあったんだな」
男「ガムが日本で初めて発売されたのは大正5年のことらしい。もっとも、当時は餅のような食感からウケは悪かったみたいだがな」
友「なんか普通に飲み込む人いそう」
60 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2014/10/07(火) 21:29:40 TJ/dlcBg
男「あと、原則米麦飯であった水上艦艇と違い、潜水艦では精白米が支給された。これは食欲の減退を予防するほか、湿度の高い艦内ではヌカのついた胚芽米や麦はすぐに悪くなってしまうという理由があったようだ」
友「本当にいいもん食ってたんだなぁ」
男「だが長期に渡る艦内生活では、当時高級品だったパインの缶詰さえ、缶特有の匂いが鼻について食欲を無くす者が続出したという」
友「うーん、勿体ないけど仕方ないね」
男「そんな状況を想定して、潜水艦航海食は火を使わず、調理が簡便で、酢や辛子などを用いて刺激のある、乗組員の食欲が増すようなレシピを中心に記載している」
61 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2014/10/07(火) 21:31:37 TJ/dlcBg
友「いろいろ制約があって大変だよなあ」
男「あぁ。だからこそ潜水艦調理はある意味海軍調理法の技術の集大成ともいえる訳だ。実際、潜水艦のために開発された食品も多いしな」
友「例えば?」
男「餅やうなぎの缶詰、粉末醤油、即席麺、粉末餅などなどなど・・・これらの技術が戦後インスタントラーメンや非常食で有名なアルファ米に受け継がれていくこととなる」
友「なるほどー」
62 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2014/10/07(火) 21:32:18 NCc7NNDw
うんちく面白い
支援
63 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2014/10/07(火) 21:33:53 TJ/dlcBg
男「まぁそんな風に軍需部や主計兵がどれだけ努力しても、将兵たちは『やっぱりご飯にパイン缶乗っけて紅茶をかけたのがナンバーワン!』みたいな感じだったらしいが」
友「これもうわかんねぇな」
男「そういえば、そういった用途で開発されて現在では味わうことのできない珍しい食品が存在する」
友「珍しい食品?」
男「ああ。それが自然を、おいしく、楽しくのカゴメが開発した固形ケチャップだ」
64 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2014/10/07(火) 21:35:16 TJ/dlcBg
友「マジかよ、カゴメそんなもん作ってたの・・・マジ日本のトマトエンペラーだわ」
男「当時のケチャップはビールのような瓶に詰めて出荷されていたんだが、それだと嵩張るし戦地での瓶の回収も難しいからな」
友「今みたいにプラスチックのケースもないだろうしね」
男「ただ、固形にするのは結構苦労したみたいだ。単に煮詰めるだけだと糖分が焦げて風味が変わってしまうし、含まれる酢酸も揮発性だから酸味が飛んでしまう」
友「くそっ・・・フリーズドライ技術さえあれば・・・」
男「フリーズドライ技術そのものは戦前からあったらしいけどな」
65 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2014/10/07(火) 21:35:59 TJ/dlcBg
友「あ、そうなの。また出たよこのオーパーツ感」
男「なんでもイタリアが『戦場でも美味いもの食べたイーノ』って開発したらしいが、如何せん設備も費用も掛かるからな。軍用糧食向けに本格的に研究・開発されるようになったのは1950年代に入ってからだ」
友「さすがイタリア、食に命懸けてるわ。砂漠でスパゲティ茹でてるだけのことはあるな」
男「戦場で米を炊く日本も大概だと思うぜ」
友「それで、カゴメは結局どうしたの?」
66 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2014/10/07(火) 21:36:54 TJ/dlcBg
>>62
ありがとう 私せいいっぱい頑張るわ
男「ああ。結局煮詰めるんではなくて、熱風による乾燥を用いたらしい。その際、酢酸の代わりに揮発しにくいクエン酸を添加したうえでな」
友「まさに必要は発明の母だなあ」
男「こうして作られた固形ケチャップはケチャップ羊羹とも呼ばれ、油紙とパラフィン紙に包まれて出荷されたらしい」
友「確かに、それなら軽いし嵩張らないね」
男「ああ。使うときも使う分だけ切って水に溶かすだけだしな」
67 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2014/10/07(火) 21:37:48 TJ/dlcBg
男「まぁ、それだけやっても将兵たちは『やっぱり溶かさずに切ったやつをご飯にのっけたのがナンバーワン!』みたいな感じだったらしいが」
友「日本人特有のとりあえずごはんに乗っけておく風潮」
男「色と言えば艦体の鈍色と海の青しか目にできず、野菜にも餓えた将兵たちにとってあのトマトの赤い色と酸味が大きな慰めになったのは事実のようだ」
友「ふーん・・・たしかに赤は食欲増す色だっていうしね」
男「そんな固形ケチャップだが、戦後は需要が落ち生産されなくなったため、現在では入手不可能となっている」
友「そう言われると食いたくなるのもまた人の性か」
68 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2014/10/07(火) 21:38:45 TJ/dlcBg
男「今じゃ技術が進歩して生糧品も長期保存ができるようになってきたし、昔よりは自由に水を使えるようになってきたみたいだしな」
友「うーん、なんだかんだで便利そうなんだけどな固形ケチャップ。復刻してくんないかな?」
男「他にも鰹節で味噌汁の出汁をとる陸軍に対して、海軍では前の晩からいりこを水に浸して出汁をとっていたように、同じ料理でも微妙に調理法が異なっている」
友「海軍のほうが仕事が丁寧な感」
男「最初に言った通り海軍には調理専門の主計兵がいるからな。調理技術といった意味では海軍のほうに一日の長があるだろう」
友「全員がある意味プロの調理人なわけだもんなぁ。元々料理人だった人とか向いてそう」
69 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2014/10/07(火) 21:39:43 TJ/dlcBg
男「いや、本物のコックや板前は主計兵とは別に艦に乗り込んでいた」
友「え、そうなの。なんでまた別々に?」
男「日本海軍は英海軍に倣ったから、兵と士官では食事が違う。兵の食事は主計兵が行うが、士官の食事は一流ホテルの料理人などを徴用して軍属として雇っていたらしい」
友「マジで?え、じゃあわざわざ兵用の料理人と士官用の料理人を乗せてたの?」
男「ああ。調理場も別だったし、調理器具にも差があったようだ。大量調理の必要がある主計科では、食材の裁断に牛刀を使ったり、前の晩から一度に出汁をとったりなど効率を重視している。一方で士官用の調理室では、柳刃や杓子など通常の料理店と同じ道具が揃えられ、味付けなども丁寧に行われていたらしい」
70 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2014/10/07(火) 21:41:15 TJ/dlcBg
友「へー・・・元のサイフは同じだろうに理不尽な話だなぁ」
男「いや、士官以上の食事については各員の持出しで食材が賄われたらしい」
友「自腹かよ・・・まぁお偉いさんだから金持ってたんだろうなぁ」
男「まぁ、形式上手当はついたらしいが、それでも若い士官になると相当辛かったみたいだけどな。特に艦長がグルメだった場合は」
友「俺絶対AランチBランチ選ぶ方が性に合ってるわ」
-旧海軍編 おわり-
71 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2014/10/07(火) 21:44:04 TJ/dlcBg
【口取り缶】
(前略)
お餅が出来れば、今度は正月料埋で一杯といふところであるが、正月料理といつても戦場では何も出来ない。
それで、やはり糧秣廠でつくりた小判形の大きい缶詰につめられて、小さいけれどもびんと尾頭を張つた鯛の焼ものや艶やかな黒豆や、うこん色の金とん、それに数の子、昆布巻、田作が一通り揃つてゐる。
これが一箇づゝ渡つた時の兵隊達の喜びやうは、大へんなものである。
平たい缶の衣面には、毎年銃後の気分を表象したレッテルを貼ることにしてゐるが、今年もレッテルが貼られて行つた。
(「野戦のお正月料理」陸軍糧秣本廠より)
72 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2014/10/07(火) 21:47:05 TJ/dlcBg
-番外編 海軍カレー-
友「でもやっぱり、さっきも言ったけど海軍といったらカレーだよなぁ」
男「今や海軍カレーは代表的な日本食の一つとなったからな」
友「インド人曰くもはやあれは別物らしいな」
男「日本のカレーはインド発イギリス経由日本行きだからね」
73 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2014/10/07(火) 21:48:01 Ys8xuhvg
とても面白いssに巡り合えました。続きが楽しみです
74 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2014/10/07(火) 21:48:05 TJ/dlcBg
友「あぁ、元々は古くなった食材の匂いを消すためだったんだっけ?確かに昔の船じゃ食べ物が持たないのはよく分かったし」
男「ああ。臭い消しもそうだが、スパイスには殺菌効果のあるものも多いしな。東南アジアなど高温多湿の地域の料理にスパイスが多用されるのは、このへんに理由があるらしい」
友「なるほど」
男「特に小麦粉によりとろみを加えているのが日本のカレーの特徴的な部分だ」
友「たしかにインドカレーとか結構サラサラしてるもんな」
男「あれにより色々な具を入れても米に絡みやすく、食べやすくなったわけだ。それに、揺れる船上でこぼれにくいってのもあるしな」
75 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2014/10/07(火) 21:49:17 R4Zo1mc6
腹減ってきた
期待
76 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2014/10/07(火) 21:49:24 TJ/dlcBg
友「今でも海上自衛隊では連綿と金曜カレーの文化が続いてるみたいじゃん?」
男「長い航海でしかも変則勤務だからな。曜日感覚を無くさないために金曜になったらしいが、元々は土曜日だったんだよあれ」
友「えっそうなの!?」
男「ああ。何だかんだ、調理や後片付けも楽だし、鍋に入れておけばあとは飯にかけるだけだからな。昔は給養員が土曜日に上陸するときに食事の手間を減らすために、土曜日にカレーということが多かったらしい」
友「旧海軍からの伝統じゃないのか・・・」
77 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2014/10/07(火) 21:50:36 TJ/dlcBg
男「そもそも旧海軍でも何曜日がカレーと決まってたもんでもないしな。それに、残った材料は効率よく使わなきゃならんし」
友「たしかに」
男「それに艦ごとにそこの主計課の得意料理というものがあったらしい。例えば空母の場合、赤城はお汁粉などの甘いもの、翔鶴の場合はカレーがそれぞれ得意料理だったみたいだ」
友「なるほど、おふくろの味ならぬお艦の味ってか・・・でも、さっきの主計兵調理術教科書でレシピは決まってるんじゃないの?」
男「いやまぁ飽くまで調理の基本技術と数種類のレシピ例が記載されているだけで、現場ではより臨機応変な対応がされていた」
友「へぇ」
78 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2014/10/07(火) 21:51:42 TJ/dlcBg
男「実際に、現在の海上自衛隊においても特に決まったカレーのレシピというものは存在しない。各艦の給養員が、自らのレシピを艦の味として受け継いでいるそうだ」
友「へー。なんかバーモンドカレーとか大量にぶち込んでるイメージだけど」
男「基本的には海自では小麦粉とバターを炒めてルウから作るそうだ。味付けはその艦の給養員の好みによるがな」
友「やっぱ海軍はそういうとこ、こだわってんだなぁ・・・」
男「それに、自衛隊に納入される食材は基本入札によって決まるからな。毎回同じ業者が同じ製品を納入するとはかぎらないんだよ」
友「へぇ~」
79 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2014/10/07(火) 21:52:15 TJ/dlcBg
男「で、金曜日はカレーといっても全ての艦が同じメニューになるわけではない」
友「ん?」
男「例えば、カレーの付け合せがコロッケだったり、メンチカツだったり。鶏のから揚げだったりそれは艦によって異なるらしい」
友「へー、副食までメニューが決められてるんじゃないんだ」
男「逆に米軍なんかはきっちりメニューまで決まってるみたいだけどな」
友「ふーん・・・」
80 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2014/10/07(火) 21:52:52 TJ/dlcBg
男「カレーに入る具も多種多様だな。ポークカレーの艦もあれば、ビーフカレーの艦もある」
友「それ絶対後者のほうがいいじゃん!」
男「ただ、一人当たりの食材費はどの艦も基本一緒だから、その分どこかでトレードオフになるわけだけど」
友「付け合せが一品減るとか、デザートがつかないとか?」
男「さあそこまでは・・・あ、付け合わせといえば、金曜カレーには大体サラダやフルーツとともにゆで卵がつく」
81 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2014/10/07(火) 21:54:16 TJ/dlcBg
友「これには坂東AGもニッコリ」
男「ふつうゆで卵はお湯が沸騰する前に卵を投入するんだが、海軍では沸騰したお湯に卵を投入する方法だったらしい」
友「へぇ、なんで?」
男「そのほうが殻が剥きやすいとされていたからだ。実際、高い温度に入れられた卵は表面にヒビが入って白身と殻の間に水が入り込んで剥き易くなる・・・気がする」
友「正直どっちもあんまり変わらないんじゃないですかね・・・」
男「養鶏家曰く、茹で卵にするときは古い卵のほうが殻が剥きやすいらしいぞ」 ※実話です
82 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2014/10/07(火) 21:54:48 TJ/dlcBg
友「でも、なんでまたカレーなんだろうな?」
友「WW2前までは日英は同盟関係だったしな。当時脚気に頭を悩ませていた海軍が、当時ほとんど脚気に悩まされることの無かった英国の食事を取りいれたことに起因しているらしい」
友「ふぅん・・・」
男「それに、基本的にカレーやシチューは食材を切って煮込むだけだしな。調理の効率も悪くない」
友「なるほどね・・・今じゃ定番の具は、当時から変わってないのか?」
83 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2014/10/07(火) 21:55:24 TJ/dlcBg
男「うーん、たしか日本に伝来してすぐに紹介されたカレーのレシピは肉に蛙を使ってたんじゃなかったか」
友「ゲテモノ料理じゃないですかやだー!」
男「フランス料理なんかじゃ普通の食材みたいだけど・・・当時はまだ豚や牛の肉も普及してなかったろうし」
友「えぇ・・・海に蛙なんていないじゃん・・・」
男「いや、海軍は最初から獣肉だったろうけど・・・」
84 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2014/10/07(火) 21:56:04 TJ/dlcBg
男「あと、実は海軍カレーにおいて重要な意味を持つ具材はジャガイモだったりする」
友「あぁ・・・さっき言ってた腐りにくい的な意味で?」
男「それももちろんだが、ジャガイモには船上で不足しがちな栄養素であるビタミンCが含まれている」
友「レモンの?」
男「ああ。100gあたりのビタミンC含有量がレモンは53.7mgに対して、じゃがいもは19.7mg」
友「少ねぇじゃねえか!!」
85 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2014/10/07(火) 21:56:47 TJ/dlcBg
男「だが、最も重要なのはビタミンCは加熱すると壊れるという点だ。さっきから言っている通り、艦船では生糧品は長持ちしない」
友「それはそうだけど・・・」
男「ジャガイモの場合は、加熱しても芋に含まれるでんぷんによってビタミンCの破壊が抑えられるそうだ」
友「へぇ~」
男「だから、長期航海においてジャガイモは重要なビタミンC供給源となったわけだな」
86 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2014/10/07(火) 21:57:22 TJ/dlcBg
友「ビタミンCか・・・それも脚気の原因?」
男「いや、ビタミンC欠乏は壊血病の原因だな」
友「壊血病・・・」
男「大航海時代の船乗りたちが苦しめられた病気だ。これもまた脚気と同じようにビタミン不足からくる病気と分かるまでに、随分時間がかかったがな」
友「へー」
87 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2014/10/07(火) 21:58:20 TJ/dlcBg
男「というわけで、ことさら海軍でカレーが取り上げられる要因はそういった事情が背景にあるからだろうな」
友「なるほどねぇ・・・でも、なんで日本だけなんだろ?元は日本軍の一部だったはずの韓国でも、海軍カレーくらいあってもよさそうなもんだが」
男「旧陸軍でもそうだったが、カレーはよく洗い残しが出たらしい。で、それをネタに階級が下の者に対して私的制裁を行うということで、今ひとつ韓国ではカレーが浸透していないらしい」
友「斜め上の理由だった」
男「まぁそれに基本的に韓国は地政学的に海洋国家とも言えないしな。歴史的に長期航海が必要となる海軍を持たなかったことも、もしかしたら理由の一つにあるかもしれん」
88 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2014/10/07(火) 21:58:56 TJ/dlcBg
友「はぁー、なるほど・・・」
男「それに、ビタミンCは唐辛子にも多く含まれている。これらをふんだんに使った韓国料理には、特にビタミンC対策は不要かもな」
友「まぁなんにでもキムチついてくるもんなぁ・・、にしても、やっぱりカレーは日本人の仏の胃袋やでぇ」
男「実は、こんだけ話しておいてなんだけど俺あんまりカレー好きじゃないんだよね」
友「ウッソ!?そんな人間いるのかよ!?」(驚愕)
89 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2014/10/07(火) 21:59:33 TJ/dlcBg
俺「いや、なんていうか味は嫌いじゃないし、給食とかでも割と問題なく食ってたけど・・・金払ってまで食うほどでもないかなぁ」
友「まぁー好みは人それぞれだからね・・・」
男「あ、でも高校の頃はよく100円ショップでレトルトカレー買って飲んでたなぁ、そういや」 ※筆者体験談
友「カレーは飲み物を地でいくのか・・・」(困惑)
男「なんというか、スナック菓子と違って肉や野菜が入ってて腹にたまるし、一番手軽にメシ食ってる感を味わってる気分になるから仕方なく」
友「この人おかしい・・・」
-番外編 海軍カレー おわり-
90 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2014/10/07(火) 22:01:09 TJ/dlcBg
とりあえず、この後は陸・海・空自衛隊、米軍、戦国時代、大航海時代くらいまでやる(小声)
91 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2014/10/07(火) 22:19:54 dR8A089U
かなり面白いです
支援
92 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2014/10/07(火) 22:30:55 8BD0tWi2
ひとまず乙!
戦国時代期待
カエルは旨いぞ?あっさりした鶏みたいで
93 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2014/10/07(火) 22:44:37 LiJlupTs
この感じ・・・間違いない、魚の人や!!(歓喜)
これは完結するまで期待せざるおえない
94 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2014/10/07(火) 23:04:30 9eauv8IQ
そうだね支援だね
95 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2014/10/07(火) 23:27:22 TJ/dlcBg
支援ありがとうございます
>>92
マムシは食ったことあるんだけどカエルはないんだよなぁ・・・多分
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