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幼馴染「……童貞、なの?」 男「」.

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Part1
1 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/07/23(土) 22:33:15.21 ID:yBf3Hcveo
 目覚まし時計のアラームは融通がきかない。
 日によって気を利かせて鳴らなかったりするならもっと仲良くなれると思うのだが、今のところそんなことは一度きりしかなかった。
 ちなみに原因は電池切れ。彼との付き合いの短さが露呈する回数だ。
 
 あんまりにも融通がきかないので、最近では一度殴ることで沈黙させている。
 暴力はあまり好ましくないが、言うだけで分からない奴には殴ってきかせるしかない。ときにはそういう場合もある。
 
 女を殴ったと考えるのは寝覚めが悪いので、目覚まし時計を脳内で擬人化するときは男だということにしている。
「なおと」という名前もつけた。たまに話しかける。
「よう、なおと。俺、また女子に笑われちゃったよ……」
 思い出すだけでせつない過去だった。
「元気出せよ相棒、らしくないぜ。あんたはいつも笑ってるべきさ。あんたが悲しい顔をしてると、どこかで誰かが悲しくなるだろう?」
 彼はその神経質な性格が垣間見える説教で俺を励ました。
 最近では何か嫌なことがあれば彼に愚痴を言う。最初の頃は頭がどうかしたのかと心配そうにしていた妹も、今ではかまってくれなくなった。
「ああ、またおかしくなったのか」とあっさり認めてくれる。理解のある家族で非常に助かる。

2 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/07/23(土) 22:35:23.42 ID:yBf3Hcveo
 この頃はあまりに擬人化妄想がリアルになり、人間だったらどんな顔をしているか、どんな姿をしているかまで具体的に想像するようになってしまった。
 おかげで、部屋に女子を連れ込んだとき、なおとがいるせいで上手くアンナコトができないのではないかといらぬ心配までするようになる始末。
 もしも女子の前でなおとに話しかけでもしたなら目も当てられない。
「あいつ目覚ましに話かけてたんだけどー」
「えーなにそれまじうけるー」
「ありえねー。やべー」
「ひくわー。あいつマジないわー。ないわー」
「ていうかあいつ童貞でしょー?」
「だよねー。目覚ましに話しかけるなんて絶対童貞だよねー」
「童貞マジうけるわー」
 となること請け合い。
 脳内でエコーのかかった幻聴が響き終わると、全身にぞくぞくと寒気が走った。
 脳内教室にクラスメイトたちの童貞コールがこだまする。超怖い。
 なので近頃は、本格的になおとと決別するべきか、真剣に悩んでいた。
 ぶっちゃけ俺が部屋に女子を連れ込むなんて天地が逆さになってもありえないのだが。
 なおとのことを考えているうちに、さっきまで見ていた夢の内容を忘れてしまった。
 忘れてしまったのだが、なぜかえろい夢だったことは思い出せる。

3 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/07/23(土) 22:36:10.77 ID:yBf3Hcveo
 なんかすごくえろい夢だった。
 具体的に言うなら……。
 武道場の女子更衣室で剣道部女子が着替えをしているところを覗いていたら、あっさり見つかって、
 女子が脱いだばかりの服で全身を縛られたうえ仰向けに押し倒され、
 顔見知りの剣道部員三名(容姿ランクB+,A,B)に全身を嘗め回されながら罵倒され、
 あられもない姿の三人に男としての尊厳をこれでもかというほどに踏みにじられ、
 最終的にはその三名に学生生活の影でこっそりとえっちなことをしてもらうセフレ的な地位になるような夢だったはずなのだがーー
 ーーぶっちゃけ細かいことは覚えてない。
 
 なんか感覚とかすごくリアルだった。
 童貞なので、本番の想像をしようとしたら夢が覚めた……のかも知れない。覚えてない。
 えろい夢に関しては覚えてないのが悔しい。覚えてたら何かに使えるかもしれないのに。
 
 とはいえ、今重要なのはいろいろ持て余してしまって屹立している下半身であり。
 さらにいえば、目覚ましが鳴る時間を過ぎても起きてこない兄の様子を見に来た健気な妹のことでもあった。
 季節は夏。
 寝相が悪いと、タオルはすぐ落ちる。
 薄着だから、いろいろ見られる。
 察される。
 お約束だった。

4 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/07/23(土) 22:36:51.38 ID:yBf3Hcveo
「待て、なんだそのさめた顔は」
 反応はない。
「もっとこう、あるだろ。恥じらいとか」
 返事はない。
「なんとかいえよ」
 妹の視線は品定めするように冷静だった。
「おい……?」
 まさかはじめてみたので驚いて失神したというつまらないギャグではあるまい。
 と、くだらないことを考えた瞬間ーー
「……フッ」
 ーー鼻で笑われた。
 身長百五十センチ(自己申告)の子供っぽい妹さまに。
 あどけなさを残した中学生女子の顔が高慢に歪んだ。
 女王の貫禄。
 思わず死にたくなる。
 
「……え、そんな、笑われるようなアレですか、俺のは」
「それセクハラだから」
 ごもっともな意見だ。

5 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/07/23(土) 22:37:21.67 ID:yBf3Hcveo
「いいから起きて。時間なくなる」
「起きようにも起きれないと申しますか……」
 言い訳する俺を尻目に(尻目って言葉はなんだかすごく卑猥だ。尻目遣いって言葉もあるらしい)、妹は扉を閉じて去っていってしまう。
 残るのはむなしさだけだった。
 妹がいなくなってから例のアレはすぐに鎮まった。人体の不思議。
「妄想だと罵倒されても平気なのに……」
 妹さまの罵倒はどうにも耳に痛い。……よく思い返せば罵倒なんてされてなかったが。
 妹がなぜ俺につらく当たるようになったのか(厳密にはつらくあたるというより舐め腐っているという感じだが)。
 心当たりはあまりない。思春期だからかも知れない。
 でもまぁ、話しもできないというほどではないし、こうして朝起こしにくるだけでも常軌を逸した妹ぶりと言える。
 もし嫌われた心当たりがあるとするなら、
 ネットで見た情報に興味を引かれ、フリーの催眠音声(セルフあり)をダウンロードし実践していたところを目撃されたこととか、
 妹の読んでいた小説を追うように読んで「主人公って絶対ロリコンだよな」と発言したこととか、
 妹が買ってきたアイス(箱)を一日で食い尽くしたこととか、
 せいぜいそんなもので、どれも瑣末に思えた。
 難しい年頃なのだろう。
 大人の寛容さで認めてあげることにした。
 あと何年かすればもうちょっと距離感がつかめるに違いない。なんだかんだいって兄が大好きな妹様だし。
 根拠はない。
「うむ」
 ひとつ頷いてからベッドを這い出て着替えをはじめた。
 月曜の朝はつらい。


6 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/07/23(土) 22:38:05.60 ID:yBf3Hcveo
 家を出ると夏の太陽が俺を苛んだ。
 ちょっといい感じの言い方をしてみても、暑いものには変わりない。
 
「コンクリートジャングル!」
 
 テンションをあげようとして思わず叫んだ。
 どちらかというと気が沈んだ。
「ヒートアイランド現象……」
 一学生には重過ぎる言葉だ。
「何やってるの?」
 声に振り返ると妹が呆れながらこちらを見ていた。なんだかすさまじく冷たい視線。
「夏だなぁって思ったら生きてるのがつらくなってきた」
「毎年大変だね」
 大変なのだ。
「最近、馬鹿さが加速度的にあがってきてるよね」
「マジで?」
「このままいくと世界一も夢じゃないかもね」
「まじでか!」
 世界一。素敵な響きだった。思わず言葉に酔いしれて白昼夢を見た。
 
 表彰台の上で「THE BAKA」と刻まれたトロフィーを抱え、首に金色のメダルをかけられる。
 美女に月桂冠をつけてもらう。そのとき頭を前のめりになる。でっかいおっぱいが目の前で揺れた。
 童貞には強すぎる刺激だが目をそらせない。馬鹿の証明とも言えた。
 涙ながらに「うれしいです!」とインタビューに答え、ぱしゃぱしゃというフラッシュの音を一身に浴びる。
 良かった。努力してきた甲斐があった。ようやく俺は世界一になれたんだ……。
 ーーそんなわけがなかった。ギャグにしても寒い。

7 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/07/23(土) 22:39:00.48 ID:yBf3Hcveo
「ちょっと前はもう少しマシだったのに」
 妹さまは不服そうだった。
「お姉ちゃんがきてた頃はマシだったのに」
 お姉ちゃん。
 妹がいう「お姉ちゃん」は俺から見ると同い年だ。
 俺と妹には幼馴染がいた。
 美少女だ。料理も上手い。朝起こしにきたりもした。「将来は結婚しようね」と砂場で約束した仲だ。たまに弁当を作ってくれる。
 家事が趣味でほんわりとした穏やかな性格が持ち味。からかわれると「むぅ~」と言いながらぷっくりと頬を膨らませる。
 クラスメイトに「夫婦喧嘩か?」とか「夫婦漫才か?」とかからかわれるたびに、「ち、ちがうよっ!」と真っ赤になって否定していた。
 サッカー部のマネージャーをしている。犬好きで、暇な休日はペットショップを覗きに行き、「かわいい……」とか言ってる。
 そんな好みが分かれそうなハイスペック幼馴染なのだが、つい先日サッカー部の先輩と交際を始めた。
 そのことから照れ隠しかと思われた「ち、ちがうよっ!」という発言が本当だったことが判明し、クラスメイトは今でも俺に哀れみの視線を寄せる。

8 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/07/23(土) 22:39:27.28 ID:yBf3Hcveo
 ぶっちゃけ一番ショックを受けたのは俺だった。クリティカルダメージ。オーバーキル。
 昔からの知り合いに恋人ができるというのは、なぜだかひどく寂しかった。
 数日生と死の狭間をさまよった。
 嘘だ。
 嘘だが、寝取られという言葉がなぜか頭を過ぎった。
 付き合ってなかったからショックを受ける理由なんてないはずなのだが、なんかすごいショックだった。
 なんかすごいショック。技名みたいで少しかっこいい。
 ちょっと前から幼馴染は俺に話しかけたり朝起こしにきたりしなくなった。
 もう弁当を作ってくれることもないだろう。恋は人を盲目にさせる。
 勝手に傷ついた友人(しかも男)の心境など、あの美少女が気にかけるわけもなかった。
「死にたい……」
「悪かったわよ……」
 妹もなんとなく俺の気持ちを察してくれているらしい。
 が、察されるのもなんだか悲しいところだ。
「もう学校に行こう」
「……ごめんなさい」
 素直に謝れるのが妹のいいところだが、あと一年もすればこいつも彼氏をつくってきゃっきゃうふふとしゃれ込むのだろう。
 
 暗澹とした気持ちのまま妹と別れて学校に向かった。

9 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/07/23(土) 22:40:10.63 ID:yBf3Hcveo
 教室につくと、目の前にサラマンダーが現れた。
 当然、人で、あだ名だった。
 名前の由来を語ると長くなる。
 ある休日、友人たちで家に集まっていたときのこと。
 彼は昼食に「激辛キムチ鍋! ~辛さ億倍~」という名前のカップラーメンを買ってきて食べた(鍋なのにラーメン)。
 グロテスクですらある見た目に警戒した俺たちはサラマンダーに忠告した。
「やめとけ、それは魔の食い物だ。人の食うものじゃない」
 でも奴は食った。向こう見ずだった。青春っぽい。当然、あまりの辛さに顔を真っ赤にして噴き出した。
 案外、由来を語っても短かった。それ以来彼はサラマンダーと呼ばれている。
 サラマンダーは長いし、ドラゴンでよくね? という俺の意見は却下された。面白くないかららしい。
 みんなサラマンダーと呼ぶ。いつのまにかクラス中に移った。正直呼びづらい。長いし。
 
 余談になるが「激辛キムチ鍋! ~辛さ億倍~」は生産中止になった。ありふれた話だ。
 サラマンダーは俺を見て不愉快そうに眉を寄せた。
 別に嫌われているわけではない。こういう顔をしているときは、サラマンダーが何かを話し始めるときだ。
「聞いてくれよ」
 始まった。と同時に騒がしいはずの教室が鎮まりかえる。彼は期待を一身に受けて口を開いた。
「俺は今日、なんかすげーえろい夢をみたんだ」
「……あ、そう」
 どこかで何かがリンクしているようだった。静寂が途切れて、教室にざわつきが戻る。いつも通りか、と誰かが呟いた。

10 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/07/23(土) 22:40:44.52 ID:yBf3Hcveo
「テニス部のプレハブに忍び込んで持ち物をあさってると、あっさり女子に見つかって罵倒されまくるような夢だった」
「……」
 なぜだか背筋が寒くなった。そんな夢を見た気がするが、覚えてないので仕方ない。
「さいてー」
「いやー」
「きもちわるーい」
 女子から声があがった。でもこういうときに積極的に声をあげるのは、あまり容姿がよろしくない人たちだ。
 ごくまれに美少女もいた。歯に衣着せぬ物言いでちょっとした人気があるが、とにかく近寄りがたい。
「すげーえろい夢だったんだが、内容を思い出せない。この気持ち、分かるか?」
「悪いが分からない」
 名誉のためにそういうしかなかった。
 サラマンダーは肩を落として「そうか」と呟き、教室から出て行った。廊下を覗くと、幽鬼のようにふらふらと歩く後姿が見える。 
 くだらないことで落ち込む奴だ。が、実際俺も似たようなものだった。

11 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/07/23(土) 22:41:48.71 ID:yBf3Hcveo
 自分の席まで行くと今度はマエストロが我が物顔で座っていた。
 
 体格のいい大男だが、運動部には所属していない。
 先輩の女子率が一番高いということでワープロ部に入った(キーボードをかちゃかちゃ鳴らす速度を競う部活動。大会がある)のだが、
 かっこいい先輩が部長をやっているため女子の熱のこもった視線はそちらへ向き、部内ではいじられキャラらしい。
 憐れな奴。ちなみに指が太い割りにキーボードさばきは的確で精確だ。
 マエストロのあだ名の由来にもいろいろある。
 簡単に言えばエロ関連の芸術家なのだった(ノートにえろ絵描いてる。女の子の目がでかい。うまい。えろい)。
 最近は男子全体の指揮者という意味も含んでいる。マエストロの信奉者がいる(ただのエロ絵乞食でもある)。
 
 とはいえ、クラスの男子全員が、女性の土踏まずにフェティッシュな愛着を持っているのは、彼の布教の賜物だった。

12 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/07/23(土) 22:42:19.45 ID:yBf3Hcveo
 マエストロは俺の席に座って何かを読んでいた。
 何かというより薄い本だ。
 R-18だった。
 俺たちには過ぎたるものだった(年齢的に)。
 そんなこと言ったらフリーの催眠音声(セルフあり)も俺たちには過ぎたるものだが、そんなことは今は関係ない。
「何やってんのマエストロ、人の机で」
「お、ああ。おまえの机に入ってたこれ、ちょっと借りてるぜ」
「あたかも俺のものみたいな言い方してんじゃねえよぶっ飛ばすぞ」
 思わず口調が荒くなった。マエストロの冗談は俺の心臓と評判に悪い影響を与える。
 エロ本も買ったことのない少年にはあまりに残酷な噂が立ちかねない。
 エロに興味があるのは当然だが、実際に手を出したことはなかった。
 さらにいえば、道端にエロ本が落ちてたとしても拾えない。
 チキンだから。
 コンビニでチキンを買えば共食いだ。
 ……馬鹿なことを考えた。
 ちなみにエロに関することはすべてネットで済ませる。便利な世の中。科学技術の進歩は常に人を孤独にする。情緒がない。

13 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/07/23(土) 22:42:53.07 ID:yBf3Hcveo
「マエストロ、その薄い本しまって。隣席の女子の目が鋭いから」
「女子の目を気にしてるようではまだ若いな」
 おまえも十代だろ、というツッコミはかろうじて飲み込む。
 隣の席の真面目系女子がこちらを睨んでいる気がする。
 たまに宿題を見せてもらうので、悪い印象を与えることは可能な限り避けたい。
 それでなくても、
「私、アンタみたいな不真面目な人って嫌いだから」
 とか
「アンタ、『宿題見せて』以外に私に言うことないわけ?」
 とか、挙句の果てに、
「ヘンタイ! 死ね!」
 とか言われてるのに。
 妄想の中だったら歓迎したいところだったが、普通に現実だった。
 しかも、今も睨まれている。
 なぜかマエストロではなく俺が。
 明らかに巻き込まれていた。

14 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/07/23(土) 22:43:19.57 ID:yBf3Hcveo
「マエストロ! 頼むから、俺の名誉のために!」
 必死に懇願する。俺はチキンだった。
 マエストロがぎらりと細い目を動かす。ガタイがいい割に、菩薩のような穏やかな顔をしている彼が、俺を威圧している。
 彼は謎の地雷を持っていて、そこを踏むとたまに暴走する。
 ちょうど今だ。
 
「名誉のため? 違うだろ、はっきりいえよ。女子から冷たい目で見られるのが嫌だって! 俺はええかっこしいですって言えよ!
 ほら、大声で言ってみせろよ! そして自分がどれだけエゴとナルシズムに満ちた存在かをさらけだすがいい!」
 一瞬圧倒された。周囲が沈黙した。
「……いや、おまえの行動と言動の方がエゴに満ちてるから」
 一瞬だけだった。でもナルシズムはちょっと図星かも知れない。ぶっちゃけよく見られたい。思春期だし。
 マエストロの信奉者が心配そうにこちらを眺めている。なぜ男にそんな目を向ける? 一種のホラーだ。
 俺が周囲に目を走らせていると、マエストロは表情をより険しくさせた。
「黙れこのムッツリスケベがッ!」
 教室中に轟く大声で彼は叫んだ。
 注目されている。なぜかマエストロが激昂していた。
 クラス中の視線の中に「おまえが言うな」という心の声が含まれていたのは言うまでもないことだった。
 よくよく考えると彼はオープンな方なのだけれど、でもスケベには変わりない。
「おまえのエロに対する執着心を数値化してクラス中の女子に見せてやりたい気分だ! 死ね!」
 なぜか死ねと仰られる。どうやら今日は虫の居所が悪いらしい。

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