彡(゚)(゚)「これ……誰の結婚式やったっけ?」
1 :名無しさん@おーぷん:18/07/15(日)13:25:05 ID:s8f
彡(^)(^)「いやあ結婚式の料理はおいしいなあ、キャビアにフォアグラもあるで」
彡(^)(^)「ワインも上等っぽいし、余興のピアノ演奏も見事やったわ」
彡(^)(^)「新郎新婦も幸せそうで…」
彡(゚)(゚)「…………」
彡(゚)(゚)「新郎新婦って、誰やったっけ…?」
2: 名無しさん@おーぷん:18/07/15(日)13:26:05 ID:s8f
彡(゚)(゚)「ワイは新郎側やったっけ、新婦側やったっけ」
彡(゚)(゚)「それとも両方と知り合いやったかな」
彡(゚)(゚)「おかしいな、全然思い出されへん……」
彡(゚)(゚)「あ、ワインおかわり」
3: 名無しさん@おーぷん:18/07/15(日)13:27:25 ID:s8f
彡(゚)(゚)「おっと、次の余興が始まったわ」
彡(゚)(゚)「西遊記やな、上映時間は3時間か」
彡(゚)(゚)「そうそう、まずは岩の下敷きになった悟空のところへ、三蔵法師が……」
彡(゚)(゚)「……」
彡(゚)(゚)「結婚式の余興って、こんな本格的なセット組むもんやったっけ……」
彡(゚)(゚)「あかんわ、なんか妙な違和感があるわ、飲みすぎたかな」
彡(゚)(゚)「新郎新婦の名前ぐらい確認せないかんわ、受付に行くか」
彡(゚)(゚)「受付は誰もおらんな……そういえばご祝儀とか渡してない気が」
彡(゚)(゚)「でも、いつもご祝儀なんか渡してないな、記帳もしてない……」
彡(゚)(゚)「……いつも?」
4: 名無しさん@おーぷん:18/07/15(日)13:28:31 ID:s8f
彡(゚)(゚)「えーと新郎新婦の名前は…ウエルカムボードはどこかな、外かな」
彡(゚)(゚)「そこの扉から外に出るか」
彡(゚)(゚)「……」ガチャガチャ
彡(゚)(゚)「カギがかかってる……?」
係員「お客様、どうされましたか」
彡(゚)(゚)「えっ」
5: 名無しさん@おーぷん:18/07/15(日)13:29:25 ID:R4q
こわヨ
6: 名無しさん@おーぷん:18/07/15(日)13:29:45 ID:4Tf
面白くなりそうなヨカーン
7: 名無しさん@おーぷん:18/07/15(日)13:31:11 ID:s8f
彡(゚)(゚)「いや、ちょっと外へ出ようかなと」
係員「外へ? なぜですか?」
彡(゚)(゚)「なぜって、いや新郎新婦の名前を…その…」
係員「……」
係員「お客様、なにか混乱されてるようですが」
係員「いかがです、別室でリセットなされますか」
彡(゚)(゚)「えっ」
8: 名無しさん@おーぷん:18/07/15(日)13:32:16 ID:s8f
彡(゚)(゚)「い、いえ、大丈夫です、戻ります」
係員「……そうですか」
彡(゚)(゚)「(ドキドキ)な、なんやリセットって、何のことや」
彡(゚)(゚)「う、まだこっち見とるで」
彡(゚)(゚)「とりあえず席に戻ったろ…」
9: 名無しさん@おーぷん:18/07/15(日)13:34:13 ID:s8f
司会者「本日はお越しいただきありがとうございました」
司会者「列席者のみなさまは左手出口より退場し、お部屋にておくつろぎ下さい」
彡(゚)(゚)「終わったか、とりあえず部屋に戻るか……」
彡(゚)(゚)「左手の出口から廊下をずっと行って、810号室がワイの部屋や」
彡(゚)(゚)「中はバスルームとベッドだけの部屋やな」
彡(゚)(゚)「さて、まず礼服を脱いでカゴに入れて、ドアの外に出す」
彡(゚)(゚)「そして入浴して、ベッドに横になると」
彡(゚)(゚)「どこかからプシュッって音がして、数秒で」
彡(-)(-)「Z z z……」
10: 名無しさん@おーぷん:18/07/15(日)13:36:05 ID:s8f
ピリリリリリ
彡(゚)(゚)「ん」
彡(゚)(゚)「おっと朝か、スッキリした目覚めやで」
彡(゚)(゚)「さてドアの外には…来てるわ、クリーニングされた礼服や」
彡(゚)(゚)「身だしなみをして、礼服をきっちり着て、さて今日も結婚式に出るか」
彡(゚)(゚)「…………」
彡(゚)(゚)「いや、おかしいやろ、こんな生活…」
11: 名無しさん@おーぷん:18/07/15(日)13:37:26 ID:s8f
彡(゚)(゚)「なんでワイは毎日結婚式に出てるんや?」
彡(゚)(゚)「新郎新婦は毎日違う人やけど、いったいどこの誰なんや?」
彡(゚)(゚)「それ以前にワイはいったい誰や?」
彡(゚)(゚)「部屋の窓には……」
彡(゚)(゚)「深い森の中みたいやな、ロビーの窓も森しか見えへんかった…」
彡(゚)(゚)「この式場はどこに建ってるんや、ワイはなんでこの中でだけ生活を……」
彡(゚)(゚)「あかん、ワイ一人で考えられることやない」
彡(゚)(゚)「あいつに相談するか」
12: 名無しさん@おーぷん:18/07/15(日)13:37:52 ID:kXz
面白い
13: 名無しさん@おーぷん:18/07/15(日)13:38:16 ID:hSi
期待
15: 名無しさん@おーぷん:18/07/15(日)13:38:38 ID:s8f
(´・ω・`)「今日の料理もおいしいねえ、本格中華だね」
(´・ω・`)「この北京ダック、サクサクと崩れるような食感が最高だね、北京ダックには吊るしてローストする方法とオーブンで蒸し焼きにする方法があるけど」
(´・ω・`)「これは一時間以上ゆっくりローストしてるね、皮下脂肪の層がほとんど無くなって、皮の旨味と食感が」
彡(゚)(゚)「こいつはいつもワイの近くに座ってるやつや」
彡(゚)(゚)「色んなこと知ってるやつで、いつも料理の薀蓄を話してくれる」
彡(゚)(゚)「オムレツなら一時間、寿司なら三時間は喋り続けるほどで」
(´・ω・`)「何ブツブツ言ってるの?」
19: 名無しさん@おーぷん:18/07/15(日)13:39:54 ID:s8f
彡(゚)(゚)「なあ、この結婚式って誰の式やったっけ?」
(´・ω・`)「え?」
(´・ω・`)「誰の式って、新郎も新婦も毎日違う人じゃない」
彡(゚)(゚)「せやから、何でワイらが出席してるのかって話や、ワイらとどういう関係のある人なんや」
(´・ω・`)「結婚式ってそういうもんじゃないの? 例えば村で誰かが結婚するときは、村の人は、だれでも好きに出席して祝え、る……」
(´・ω・`)「…………あれ?」
(´・ω・`)「いや、おかしい……、なんで僕たちが出席しているの…」
(´・ω・`)「そもそも、僕たちは、この生活に入る前まで何をしてたの…?」
(´・ω・`)「それになんで結婚式で中華…?」
彡(゚)(゚)「お前もか…」
25: 名無しさん@おーぷん:18/07/15(日)13:40:54 ID:s8f
(´・ω・`)「ええと、そう言えば僕たち、互いの名前も知らないね」
彡(゚)(゚)「ワイの名前…確か、やきうや」
(´・ω・`)「僕は原住民…だった気がする」
彡(゚)(゚)「会話することはあるけど、料理のこととか、余興についての話だけやからなあ」
(´・ω・`)「朝から晩まで結婚式に出てるからね」
(´・ω・`)「何が起こってるんだろう? スタッフの人とかに聞いてみる?」
彡(゚)(゚)「……いや、あまり目立ちたくない」
彡(゚)(゚)「実は昨日の式で…」
(´・ω・`)「……リセット?」
26: 名無しさん@おーぷん:18/07/15(日)13:42:16 ID:s8f
司会者「続きましての余興は中庭で行われます、どうぞご移動ください」
彡(゚)(゚)「とりあえず移動しよか」
(´・ω・`)「そうだね」
彡(゚)(゚)「中庭もホンマに立派やなあ」
彡(゚)(゚)「かなりの広さがあるし、噴水や彫刻もある、花壇も立派や」
彡(゚)(゚)「余興もほんとに色々ある、こないだは手持ち花火ってやつやったし」
(´・ω・`)「ジャグリングや水芸もあったね、音楽なら弦楽四重奏からヘビメタまであるし」
彡(゚)(゚)「今日は何やろ、何人か出てきたけど」
(´・ω・`)「組体操みたいだね」
(´・ω・`)「とりあえずケーキバイキングがあるから何個か取ってくるよ」
彡(゚)(゚)「せやな、ワイの分も頼む……」
彡(゚)(゚)「……いや、それどころやないんやった」
彡(゚)(゚)「興味がすぐ式の方に行ってまうなあ、なんでやろ…」
27: 名無しさん@おーぷん:18/07/15(日)13:43:51 ID:s8f
彡(゚)(゚)「すごい技やな、五人が肩車でタワーになってるで」
(´・ω・`)「カステイだね、スペインのバレンシア地方で見られる伝統的な組体操だよ」
彡(゚)(゚)「せやけど、さすがにちょっと高すぎるで……」
彡(゚)(゚)「あっ!」
彡(゚)(゚)「てっぺんの奴が落ちたで!!」
ボキィッッ
28: 名無しさん@おーぷん:18/07/15(日)13:44:12 ID:R4q
ヤバそう
29: 名無しさん@おーぷん:18/07/15(日)13:44:52 ID:s8f
彡()()「あああああああ!! く、首が!! 首が折れてる!!」
司会者「おっと、ちょっとしたトラブルのようです」
司会者「大丈夫です、すぐに別の余興を用意いたしますので、しばしご歓談ください」
彡(゚)(゚)「べ、別の余興て……」
彡(゚)(゚)「……なんや、組体操してた他のメンバーも、何事もなかったように落ちたやつを運んで……」
彡(゚)(゚)「ほんまに次のが来たで、ピエロが三人や」
彡(゚)(゚)「ジャグリングが始まったけど、いや、さっきの人どうなったんや……」
(´・ω・`)「……」
(´・ω・`)「やきう君、見た?」
彡(゚)(゚)「見てもうたわ、首がポッキリと……」
(´・ω・`)「そうじゃない、頭から落ちたでしょ、頭部に大きな裂傷ができてたのに、血が一滴も出てなかった」
彡(゚)(゚)「そうなんか?」
(´・ω・`)「あれはロボットだ、人間じゃない」
彡(゚)(゚)「!!」
30: 名無しさん@おーぷん:18/07/15(日)13:44:58 ID:hSi
こういう不思議な話をよく投稿してくれてるニキなんか?
32: 名無しさん@おーぷん:18/07/15(日)13:48:27 ID:s8f
彡(゚)(゚)「な、なんでロボットが余興を!?」
(´・ω・`)「わからない……」
(´・ω・`)「それに、あんなに人間そっくりなロボットは見たことがない」
(´・ω・`)「というか、今はいったい何年……?」
彡(゚)(゚)「……そうか、分かったで」
(´・ω・`)「うん?」
彡(゚)(゚)「ワイらも……ロボットなんや」
彡(゚)(゚)「ワイらはこの結婚式場のスタッフなんや」
彡(゚)(゚)「列席者という役割のロボットなんや!」
(´・ω・`)「……」
33: 名無しさん@おーぷん:18/07/15(日)13:48:59 ID:s8f
(´・ω・`)「…確かに、式に出てくれる友人が少なかったり、新郎と新婦で来客数に大きな差がある場合、サクラで式に出るアルバイトがある、という話は聞くね」
彡(゚)(゚)「ワイらはこの式場が用意してるロボットなんや……」
(´・ω・`)「いや、それは違うと思うよ」
彡(゚)(゚)「なんでや?」
(´・ω・`)「だって僕たちは飲み食いしてるし、トイレも行くし」
(´・ω・`)「顔にうぶ毛も生えてるし、唾液や涙も出る、ロボットでここまで再現するとは思えない」
(´・ω・`)「さっきのロボットは血が出てなかったけど、僕たちは血管も見えるし、脈も打ってるから」
彡(゚)(゚)「せやけど…」
35: 名無しさん@おーぷん:18/07/15(日)13:49:45 ID:s8f
(´・ω・`)「じゃあ何か、目に見える証拠を探そう」
(´・ω・`)「やきう君、そこのスプーンを頬の内側に当ててみて」
彡(゚)(゚)「へ? こうか?(モゴモゴ)」
(´・ω・`)「ミネラルウォーターのペットボトルを用意して、首の少し下で切る、漏斗の形だね」
(´・ω・`)「そしてフタにアイスピックで穴を開ける」
(´・ω・`)「ここに丸いガラス玉かビーズをはめ込めば、手作りの顕微鏡になるんだよ」
(´・ω・`)「プレパラートもペットボトルの切片で作れる」
彡(゚)(゚)「ビーズなんてどこにあるんや?」
(´・ω・`)「結婚式場ならあちこちにあるよ、そのコサージュされてる造花にもついてる」
36: 名無しさん@おーぷん:18/07/15(日)13:50:20 ID:s8f
(´・ω・`)「見える見える、これが頬の内側の細胞だね」
彡(゚)(゚)「おお、ほんまや」
(´・ω・`)「これで証明できたね、さすがに細胞レベルからロボットを作るとは思えないし」
(´・ω・`)「僕らは人間だよ」
彡(゚)(゚)「ワイらって人間なんかな」
(´・ω・`)「それは今はおいておこう」
39: 名無しさん@おーぷん:18/07/15(日)13:51:19 ID:s8f
彡(゚)(゚)「ワイらがロボットでないのはわかったけど、何が起ってるのかは謎のままやな」
(´・ω・`)「そうだね、情報が欲しいけど、うかつに人には聞けないし、外にも出られない……」
(´・ω・`)「無電源ラジオを作るには材料のハードルが高いなあ」
(´・ω・`)「バス停や蛇口がラジオになったなんて例もあるけど、あれは送信所の近くの話だし…」
彡(゚)(゚)「話についていけへん……」
司会「さあ新婦によるブーケトスです、ご希望の方は列の前にお並びください」
(´・ω・`)「!!」
(´・ω・`)「やきう君! あのブーケ取ってきて!」
彡(゚)(゚)「へ?」
40: 名無しさん@おーぷん:18/07/15(日)13:52:16 ID:s8f
(´・ω・`)「いいから早く!」
彡(゚)(゚)「わ、わかった」
司会者「さあブーケをお投げください」
彡()()「うおおおおぉぉっっ!!!」
ゴロゴロ
彡(゚)(゚)「はあはあ……と、取ってきたで、礼服に土がついてもうたわ」
(´・ω・`)「ありがとう、ちょっとトイレに行こう」
彡(゚)(゚)「?」
41: 名無しさん@おーぷん:18/07/15(日)13:53:31 ID:s8f
彡(゚)(゚)「トイレに来たけど、どうしたんや?」
(´・ω・`)「よく見て、このブーケ、生花じゃなくて造花だ」
彡(゚)(゚)「せやな」
(´・ω・`)「その中に、英字新聞で作った手裏剣みたいな花が混ざってる
彡(゚)(゚)「ふむふむ、ほんで?」
(´・ω・`)「英字新聞だよ、立派な外の情報だ」
彡(゚)(゚)「あっ! そうか!」
(´・ω・`)「読んでみるよ、えーと、ん……」
(´・ω・`)「『休刊のお知らせ』」
(´・ω・`)「『617年に渡りご愛顧いただきましたデイリー・テレグラフ紙は、その歴史的な役割を終え、休刊となりました』」
(´・ω・`)「『もはや報道されるべき犯罪もなく、抱くべき不安も耐えて久しく、新聞がその役割を終えることは大いなる歓びであります』」
(´・ω・`)「『以後は気象情報、年中行事その他につきましては電子版にて配信を行います』」
彡(゚)(゚)「ほーん、休刊するんか…」
(´・ω・`)「…………」
(´・ω・`)「そ……そんな、バカな……」
42: 名無しさん@おーぷん:18/07/15(日)13:55:01 ID:s8f
彡(゚)(゚)「ど、どうしたんや? 新聞が休刊になるのは珍しいかも知れんけど、別に……」
(´・ω・`)「そうじゃない…デイリー・テレグラフ紙はイギリスの新聞だけど」
(´・ω・`)「その創刊はえーと……クリミア戦争の頃…そう、たしか1855年だよ」
彡(゚)(゚)「?」
(´・ω・`)「それが617年間のご愛顧って…」
(´・ω・`)「つまり今は、少なくとも西暦2472年以降だよ!」
彡(゚)(゚)「なんやて!?」
43: 名無しさん@おーぷん:18/07/15(日)13:56:05 ID:Vlc
期待期待
44: 名無しさん@おーぷん:18/07/15(日)13:56:09 ID:s8f
彡(゚)(゚)「も、もう驚くのも疲れたけど、どういうこっちゃ」
(´・ω・`)「……僕たちの記憶は21世紀初頭のものなのに」
(´・ω・`)「僕たちはここで400年近くも…?」
彡(゚)(゚)「せやけど新聞が役割を終えたってのも変な書き方やな、犯罪がないとか、不安がないとか」
(´・ω・`)「……」
(´・ω・`)「いろいろ、可能性は考えられるけど、これ以上は考えても仕方ないね」
(´・ω・`)「ここを出よう、外は森だったし、少なくとも冬じゃなかった、出てしまえば何とかなる」
彡(゚)(゚)「せやけど、ドアには鍵が…窓から逃げるんか?」
(´・ω・`)「こっそり逃げるとは言ってないよ」
(´・ω・`)「火事を起こせば、お客は外に出さざるを得ないでしょ?」
彡(゚)(゚)「えぇ…(ドン引き)」
46: 名無しさん@おーぷん:18/07/15(日)13:57:45 ID:s8f
-数日後-
(´・ω・`)「準備完了だ、今夜の0時ちょうどに自動発火装置が作動する」
彡(゚)(゚)「お前すごいな、ありあわせの材料でよくそんなもん……」
(´・ω・`)「原始的なものだよ、でも設置した部屋のスプリンクラーは壊してるし、紙も置いてるから、それなりの大火事になるはず」
(´・ω・`)「今日はベッドに横にならず、床に座っててね」
彡(゚)(゚)「床に座っとけばプシュッてならへんのは確認済みやからな」
(´・ω・`)「そう、火災のベルが鳴るはずだから、そうしたら式場の前まで走ってきてね」
(´・ω・`)「服は着てたほうがいいな、礼服はカゴに置かずに着たままでいて」
彡(゚)(゚)「わかった」
47: 名無しさん@おーぷん:18/07/15(日)13:58:42 ID:s8f
彡(゚)(゚)「さて、そろそろ夜の0時かな?」
彡(゚)(゚)「あいつはああ言ってたけど、ホンマに自動発火装置なんて……」
ジリリリリリリリ!!!
彡(゚)(゚)「おお! ホンマに鳴ったで! 漫画みたいや!」
彡(゚)(゚)「よっしゃ式場まで行くか!」
48: 名無しさん@おーぷん:18/07/15(日)13:59:44 ID:s8f
彡(゚)(゚)「ホールには非常灯だけやな、薄暗いわ」
(´・ω・`)「やきう君、上手く行ったね」
彡(゚)(゚)「おお、お前か」
彡(゚)(゚)「ちょっと煙も出てるな、大したことはないけど」
彡(゚)(゚)「お、ホールにスタッフの人がいるわ」
係員「……」
(´・ω・`)「すいません! 火事です! いったん外に出してください!」
彡(゚)(゚)「あのベルの音が聞こえるやろ!! 煙も出てる! 出してくれ!!」
係員「……」
彡(゚)(゚)「と…止まってるで」
(´・ω・`)「顔にうぶ毛がない…。この人もロボットみたい」
49: 名無しさん@おーぷん:18/07/15(日)14:00:35 ID:s8f
(´・ω・`)「でも電源が落ちてる…のかな? 動かないな」
司会者「どないしはりましたか?」
彡(゚)(゚)「あ、司会者のおっさん」
彡(゚)(゚)「火事なんや! 外に出してくれ!!」
(´・ω・`)「煙も出てます、吸い込むと一酸化炭素中毒の恐れも……」
司会者「……」
司会者「ははあ、あんたたち、暗示が解けてますなあ」
彡(゚)(゚)「は?」
司会者「こちらへどうぞ」
50: 名無しさん@おーぷん:18/07/15(日)14:02:03 ID:s8f
彡(゚)(゚)「なんか長い廊下に入ったで、なんやここ」
司会者「ここは複数の施設が隣接してましてな、その中を通る見学用通路ですわ」
司会者「お二人とも、新郎新婦とスタッフがすべてロボットなのはご存知ですか」
彡(゚)(゚)「せやな、こないだ首が折れた奴がいたし」
司会者「最近メンテ不足ですな、今度オーバーホールせんとあきまへんわ」
(´・ω・`)「あなたは人間なの?」
司会者「私はただ一人の人間の職員ですな、といっても持ち回りですんで、5年で別の参列者が司会者に変わりますわ」
彡(゚)(゚)「どういうこっちゃ」
51: 名無しさん@おーぷん:18/07/15(日)14:03:00 ID:s8f
彡(゚)(゚)「おや、ずっと歩いてたら窓のある廊下に来たわ」
彡(゚)(゚)「窓の外は体育館ぐらいの部屋やな、カプセルみたいなもんがズラッと並んでるわ」
彡(゚)(゚)「中に誰かいるような…」
司会者「お二人とも、記憶はどこらへんまでありますか」
(´・ω・`)「21世紀初頭ぐらいまでです、自分のことはあまり覚えてないけど」
彡(゚)(゚)「ワイもそんなもんやな」
司会者「では最初からですな」
司会者「驚かんで聞いてほしいんですが、今はそれから数百年後の世界です」
司会者「私も日付とか興味ないんで覚えてませんが」
彡(゚)(゚)「……」
52: 名無しさん@おーぷん:18/07/15(日)14:04:00 ID:s8f
司会者「人間もだいぶ進歩しましてな」
司会者「もう欲しいものは何でも作れるし、病気や老化もないし、必要な労働もロボットがやってくれますんや」
(´・ω・`)「ということは、完全な核融合炉の完成とか、水と空気から有機物を作れるとか、そういう技術が?」
司会者「……えーと、そうです、そんな感じです」
彡(゚)(゚)「このおっさん意外と頼りないで……」
彡(゚)(゚)「おや、廊下の外、今度は黒い板みたいなんがズラッと並んでる」
彡(゚)(゚)「一つ一つに名前が書いてあるな、お墓みたいや」
彡(゚)(゚)「おや、表面にニコニコ動画みたいに文字が走ってる…歓喜、幸福、感動、不安、充足、性的興奮」
彡(゚)(゚)「なんのこっちゃ」
53: 名無しさん@おーぷん:18/07/15(日)14:05:42 ID:s8f
(´・ω・`)「でも病気や老いもないって、不老不死ってこと?」
司会者「それに近いもんらしいですわ」
司会者「火事の騒ぎで一酸化炭素中毒がどうとか言うてましたやろ、それで気づきましたんや、暗示が解ける時、記憶喪失みたいになる方がいますよってな、この人ら不老不死のこと忘れてるな、と」
彡(゚)(゚)「ほーん、なるほど」
彡(゚)(゚)「せやけど話が見えてこんで、なんでワイらは結婚式に出てるんや」
司会者「誰かが考えはったんですわ」
司会者「美味しいものを食べて、面白い余興を見るだけの日々だと、すぐに飽きてしまう」
司会者「かといって毎日仕事するのも辛い、そもそもお金を稼ぐ意味もほぼ無くなってる」
司会者「娯楽と仕事の中間でないと駄目なんやそうです。楽しいながらも、義務感と緊張感があることで退屈せず長続きするそうですわ」
彡(゚)(゚)「ほーん…じゃあ何や、すっごい大掛かりな暇つぶしなんか」
彡(゚)(゚)「あの豪華な料理とか、余興をやるロボットまで用意して…」
司会者「今の世の中、そういうのもタダ同然ですからなあ」
54: 名無しさん@おーぷん:18/07/15(日)14:06:39 ID:s8f
彡(゚)(゚)「おや…廊下の外、今度はでっかいプールや、水が緑色やな」
彡(゚)(゚)「なんか人型のもんがたくさん浮いてる、ロボットには見えへんけど…」
司会者「あまり見んほうがよろしいで」
(´・ω・`)「質問なんですが、暗示がどうとか言うのは?」
司会者「この生活は長続きしますけど、それでも何十年もやってれば流石に飽きてきます」
司会者「なので定期的に記憶を消して、この生活は義務や、何も疑問を持たずにいるべきや、という暗示をかけるんですわ」
司会者「まれに、自然に暗示が解ける人もいまして、そういう場合は2010年代ぐらいからごっそり記憶が消えるようですな」
彡(゚)(゚)「今のワイらの状態やな」
司会者「ちゃんと処置を受ければ思い出せますわ」
彡(゚)(゚)「……」
55: 名無しさん@おーぷん:18/07/15(日)14:08:41 ID:s8f
司会者「つきましたわ、ここの医務室に記憶のなんや…難しい名前の機械があります」
司会者「せやけど、この廊下を真っすぐ行くと、スタッフ用の出口から外に出れます」
彡(゚)(゚)「選ばせてくれるんか?」
司会者「記憶の処置は本人の意思がないとあかんのです、外に出るのも自由です。外を見てから戻ってきてもよろしいで」
(´・ω・`)「……外の世界に、普通に生きてる人はいるの?」
司会者「いますで、でっかいロケットで太陽系から出ようとしてる人とか」
司会者「不老不死を拒否して畑とか作ってる人もおりますわ」
司会者「ただ、そういう人らは全部集めても1万人ってとこですな」
彡(゚)(゚)「……」
(´・ω・`)「……」
外に出る? 出ない?
56: 名無しさん@おーぷん:18/07/15(日)14:09:43 ID:bPK
出る
57: 名無しさん@おーぷん:18/07/15(日)14:09:44 ID:bX2
出る
59: 名無しさん@おーぷん:18/07/15(日)14:10:12 ID:s8f
出る、了解 これから書くので少し待ってね
64: 名無しさん@おーぷん:18/07/15(日)14:26:00 ID:s8f
彡(゚)(゚)「外に出るわ」
(´・ω・`)「僕もそうするよ」
司会者「そうですか、ではこれ、保存食と水ですわ、リュックもありますで」
司会者「外には車もあります、半自動運転ですんで、口で命令するだけで走ってくれますわ」
彡(゚)(゚)「なんや、えらい準備がええなあ」
(´・ω・`)「まるで、外に出るって言うと分かってたみたい…」
司会者「まれに暗示が解ける人がいるって言いましたやろ」
司会者「前任者からの引き継ぎですが、暗示の解けた方は、ほぼ間違いなく外に出たがるそうですわ」
彡(゚)(゚)「…………」
司会者「不思議なもんですな、自分たちでここまでのもんを作り上げたはずやのに」
司会者「なぜか、いきなり目の当たりにすると拒否感があるそうですわ」
司会者「まあ、いつでもお待ちしてますよって、世界旅行の気分で行ってくるとよろしで」
(´・ω・`)「……わかりました、じゃあ、お元気で」
彡(゚)(゚)「……ほな」
司会者「はい、ではまた」
66: 名無しさん@おーぷん:18/07/15(日)14:27:09 ID:s8f
彡(゚)(゚)「おっと夜が明けてきたわ」
(´・ω・`)「この車すごいね、暗い森の中でもすいすい走ってたよ」
彡(゚)(゚)「さすが数百年後の技術やなあ」
彡(゚)(゚)「……」
彡(゚)(゚)「こんなに凄いもんが作れるのに、なんであんな施設に引きこもったんやろ」
(´・ω・`)「そうだねえ、あの生活はあれで楽しかったけど」
(´・ω・`)「何百年もあの生活の繰り返しってのはちょっと……」
彡(゚)(゚)「まあ生き残ってる人ってのに期待しようか」
(´・ω・`)「そうだね、ケープカナベラルにはまだNASAがあるらしい」
(´・ω・`)「核融合エンジンのロケットが見られるそうだよ、楽しみだなあ」
彡(゚)(゚)「それはよう分からんけど、ワイも世界を回って色々見ようと思うわ」
(´・ω・`)「うん、せっかく外に出たんだし、今は楽しく過ごそう」
彡(゚)(゚)「せやな」
67: 名無しさん@おーぷん:18/07/15(日)14:28:39 ID:s8f
彡(゚)(゚)「……」
彡(゚)(゚)(いま、ワイ、「生き残ってる人」って自然に言うてもうたな)
彡(゚)(゚)(そういえば施設はまだ見られるやろか、振り返ってみたろ)
彡(゚)(゚)「うおっ……なんや、あの巨大なビルは」
(´・ω・`)「大きいねえ、地上500メートルはありそうだ、あの中に式場とかが入ってたんだね」
(´・ω・`)「もしかして、式場と宿泊施設のセットが、他にも何十とあったのかな」
(´・ω・`)「でも凄いよ、人間の技術力はほんとに進歩したんだね」
彡(゚)(゚)「進歩……」
彡(゚)(゚)(ワイにはあの建物は、黒い立方体は、ビルと言うより……)
彡(゚)(゚)(……ま、ええか、暗いことは考えんでおこう)
彡(゚)(゚)(せっかくワイらも、生き残ったんやしな……)
(おしまい)
68: 名無しさん@おーぷん:18/07/15(日)14:30:26 ID:Kj5
は?
70: 名無しさん@おーぷん:18/07/15(日)14:31:21 ID:liB
後で戻れるやろとか思ってたら終わってもうたやんけ!
73: 名無しさん@おーぷん:18/07/15(日)14:33:44 ID:s8f
読んでくれてありがとうございます
最後ちょっとありがちになってしまった・・・またいつか
76: 名無しさん@おーぷん:18/07/15(日)14:34:40 ID:liB
あかんモヤモヤする
もし残ってたらどうなったんや?
92: 名無しさん@おーぷん:18/10/14(日)13:30:36 ID:cG5
ショートショートってことやね
面白かったわ
彡(^)(^)「いやあ結婚式の料理はおいしいなあ、キャビアにフォアグラもあるで」
彡(^)(^)「ワインも上等っぽいし、余興のピアノ演奏も見事やったわ」
彡(^)(^)「新郎新婦も幸せそうで…」
彡(゚)(゚)「…………」
彡(゚)(゚)「新郎新婦って、誰やったっけ…?」
2: 名無しさん@おーぷん:18/07/15(日)13:26:05 ID:s8f
彡(゚)(゚)「ワイは新郎側やったっけ、新婦側やったっけ」
彡(゚)(゚)「それとも両方と知り合いやったかな」
彡(゚)(゚)「おかしいな、全然思い出されへん……」
彡(゚)(゚)「あ、ワインおかわり」
3: 名無しさん@おーぷん:18/07/15(日)13:27:25 ID:s8f
彡(゚)(゚)「おっと、次の余興が始まったわ」
彡(゚)(゚)「西遊記やな、上映時間は3時間か」
彡(゚)(゚)「そうそう、まずは岩の下敷きになった悟空のところへ、三蔵法師が……」
彡(゚)(゚)「……」
彡(゚)(゚)「結婚式の余興って、こんな本格的なセット組むもんやったっけ……」
彡(゚)(゚)「あかんわ、なんか妙な違和感があるわ、飲みすぎたかな」
彡(゚)(゚)「新郎新婦の名前ぐらい確認せないかんわ、受付に行くか」
彡(゚)(゚)「受付は誰もおらんな……そういえばご祝儀とか渡してない気が」
彡(゚)(゚)「でも、いつもご祝儀なんか渡してないな、記帳もしてない……」
彡(゚)(゚)「……いつも?」
4: 名無しさん@おーぷん:18/07/15(日)13:28:31 ID:s8f
彡(゚)(゚)「えーと新郎新婦の名前は…ウエルカムボードはどこかな、外かな」
彡(゚)(゚)「そこの扉から外に出るか」
彡(゚)(゚)「……」ガチャガチャ
彡(゚)(゚)「カギがかかってる……?」
係員「お客様、どうされましたか」
彡(゚)(゚)「えっ」
5: 名無しさん@おーぷん:18/07/15(日)13:29:25 ID:R4q
こわヨ
面白くなりそうなヨカーン
7: 名無しさん@おーぷん:18/07/15(日)13:31:11 ID:s8f
彡(゚)(゚)「いや、ちょっと外へ出ようかなと」
係員「外へ? なぜですか?」
彡(゚)(゚)「なぜって、いや新郎新婦の名前を…その…」
係員「……」
係員「お客様、なにか混乱されてるようですが」
係員「いかがです、別室でリセットなされますか」
彡(゚)(゚)「えっ」
8: 名無しさん@おーぷん:18/07/15(日)13:32:16 ID:s8f
彡(゚)(゚)「い、いえ、大丈夫です、戻ります」
係員「……そうですか」
彡(゚)(゚)「(ドキドキ)な、なんやリセットって、何のことや」
彡(゚)(゚)「う、まだこっち見とるで」
彡(゚)(゚)「とりあえず席に戻ったろ…」
9: 名無しさん@おーぷん:18/07/15(日)13:34:13 ID:s8f
司会者「本日はお越しいただきありがとうございました」
司会者「列席者のみなさまは左手出口より退場し、お部屋にておくつろぎ下さい」
彡(゚)(゚)「終わったか、とりあえず部屋に戻るか……」
彡(゚)(゚)「左手の出口から廊下をずっと行って、810号室がワイの部屋や」
彡(゚)(゚)「中はバスルームとベッドだけの部屋やな」
彡(゚)(゚)「さて、まず礼服を脱いでカゴに入れて、ドアの外に出す」
彡(゚)(゚)「そして入浴して、ベッドに横になると」
彡(゚)(゚)「どこかからプシュッって音がして、数秒で」
彡(-)(-)「Z z z……」
10: 名無しさん@おーぷん:18/07/15(日)13:36:05 ID:s8f
ピリリリリリ
彡(゚)(゚)「ん」
彡(゚)(゚)「おっと朝か、スッキリした目覚めやで」
彡(゚)(゚)「さてドアの外には…来てるわ、クリーニングされた礼服や」
彡(゚)(゚)「身だしなみをして、礼服をきっちり着て、さて今日も結婚式に出るか」
彡(゚)(゚)「…………」
彡(゚)(゚)「いや、おかしいやろ、こんな生活…」
11: 名無しさん@おーぷん:18/07/15(日)13:37:26 ID:s8f
彡(゚)(゚)「なんでワイは毎日結婚式に出てるんや?」
彡(゚)(゚)「新郎新婦は毎日違う人やけど、いったいどこの誰なんや?」
彡(゚)(゚)「それ以前にワイはいったい誰や?」
彡(゚)(゚)「部屋の窓には……」
彡(゚)(゚)「深い森の中みたいやな、ロビーの窓も森しか見えへんかった…」
彡(゚)(゚)「この式場はどこに建ってるんや、ワイはなんでこの中でだけ生活を……」
彡(゚)(゚)「あかん、ワイ一人で考えられることやない」
彡(゚)(゚)「あいつに相談するか」
12: 名無しさん@おーぷん:18/07/15(日)13:37:52 ID:kXz
面白い
13: 名無しさん@おーぷん:18/07/15(日)13:38:16 ID:hSi
期待
15: 名無しさん@おーぷん:18/07/15(日)13:38:38 ID:s8f
(´・ω・`)「今日の料理もおいしいねえ、本格中華だね」
(´・ω・`)「この北京ダック、サクサクと崩れるような食感が最高だね、北京ダックには吊るしてローストする方法とオーブンで蒸し焼きにする方法があるけど」
(´・ω・`)「これは一時間以上ゆっくりローストしてるね、皮下脂肪の層がほとんど無くなって、皮の旨味と食感が」
彡(゚)(゚)「こいつはいつもワイの近くに座ってるやつや」
彡(゚)(゚)「色んなこと知ってるやつで、いつも料理の薀蓄を話してくれる」
彡(゚)(゚)「オムレツなら一時間、寿司なら三時間は喋り続けるほどで」
(´・ω・`)「何ブツブツ言ってるの?」
19: 名無しさん@おーぷん:18/07/15(日)13:39:54 ID:s8f
彡(゚)(゚)「なあ、この結婚式って誰の式やったっけ?」
(´・ω・`)「え?」
(´・ω・`)「誰の式って、新郎も新婦も毎日違う人じゃない」
彡(゚)(゚)「せやから、何でワイらが出席してるのかって話や、ワイらとどういう関係のある人なんや」
(´・ω・`)「結婚式ってそういうもんじゃないの? 例えば村で誰かが結婚するときは、村の人は、だれでも好きに出席して祝え、る……」
(´・ω・`)「…………あれ?」
(´・ω・`)「いや、おかしい……、なんで僕たちが出席しているの…」
(´・ω・`)「そもそも、僕たちは、この生活に入る前まで何をしてたの…?」
(´・ω・`)「それになんで結婚式で中華…?」
彡(゚)(゚)「お前もか…」
25: 名無しさん@おーぷん:18/07/15(日)13:40:54 ID:s8f
(´・ω・`)「ええと、そう言えば僕たち、互いの名前も知らないね」
彡(゚)(゚)「ワイの名前…確か、やきうや」
(´・ω・`)「僕は原住民…だった気がする」
彡(゚)(゚)「会話することはあるけど、料理のこととか、余興についての話だけやからなあ」
(´・ω・`)「朝から晩まで結婚式に出てるからね」
(´・ω・`)「何が起こってるんだろう? スタッフの人とかに聞いてみる?」
彡(゚)(゚)「……いや、あまり目立ちたくない」
彡(゚)(゚)「実は昨日の式で…」
(´・ω・`)「……リセット?」
26: 名無しさん@おーぷん:18/07/15(日)13:42:16 ID:s8f
司会者「続きましての余興は中庭で行われます、どうぞご移動ください」
彡(゚)(゚)「とりあえず移動しよか」
(´・ω・`)「そうだね」
彡(゚)(゚)「中庭もホンマに立派やなあ」
彡(゚)(゚)「かなりの広さがあるし、噴水や彫刻もある、花壇も立派や」
彡(゚)(゚)「余興もほんとに色々ある、こないだは手持ち花火ってやつやったし」
(´・ω・`)「ジャグリングや水芸もあったね、音楽なら弦楽四重奏からヘビメタまであるし」
彡(゚)(゚)「今日は何やろ、何人か出てきたけど」
(´・ω・`)「組体操みたいだね」
(´・ω・`)「とりあえずケーキバイキングがあるから何個か取ってくるよ」
彡(゚)(゚)「せやな、ワイの分も頼む……」
彡(゚)(゚)「……いや、それどころやないんやった」
彡(゚)(゚)「興味がすぐ式の方に行ってまうなあ、なんでやろ…」
27: 名無しさん@おーぷん:18/07/15(日)13:43:51 ID:s8f
彡(゚)(゚)「すごい技やな、五人が肩車でタワーになってるで」
(´・ω・`)「カステイだね、スペインのバレンシア地方で見られる伝統的な組体操だよ」
彡(゚)(゚)「せやけど、さすがにちょっと高すぎるで……」
彡(゚)(゚)「あっ!」
彡(゚)(゚)「てっぺんの奴が落ちたで!!」
ボキィッッ
28: 名無しさん@おーぷん:18/07/15(日)13:44:12 ID:R4q
ヤバそう
29: 名無しさん@おーぷん:18/07/15(日)13:44:52 ID:s8f
彡()()「あああああああ!! く、首が!! 首が折れてる!!」
司会者「おっと、ちょっとしたトラブルのようです」
司会者「大丈夫です、すぐに別の余興を用意いたしますので、しばしご歓談ください」
彡(゚)(゚)「べ、別の余興て……」
彡(゚)(゚)「……なんや、組体操してた他のメンバーも、何事もなかったように落ちたやつを運んで……」
彡(゚)(゚)「ほんまに次のが来たで、ピエロが三人や」
彡(゚)(゚)「ジャグリングが始まったけど、いや、さっきの人どうなったんや……」
(´・ω・`)「……」
(´・ω・`)「やきう君、見た?」
彡(゚)(゚)「見てもうたわ、首がポッキリと……」
(´・ω・`)「そうじゃない、頭から落ちたでしょ、頭部に大きな裂傷ができてたのに、血が一滴も出てなかった」
彡(゚)(゚)「そうなんか?」
(´・ω・`)「あれはロボットだ、人間じゃない」
彡(゚)(゚)「!!」
こういう不思議な話をよく投稿してくれてるニキなんか?
32: 名無しさん@おーぷん:18/07/15(日)13:48:27 ID:s8f
彡(゚)(゚)「な、なんでロボットが余興を!?」
(´・ω・`)「わからない……」
(´・ω・`)「それに、あんなに人間そっくりなロボットは見たことがない」
(´・ω・`)「というか、今はいったい何年……?」
彡(゚)(゚)「……そうか、分かったで」
(´・ω・`)「うん?」
彡(゚)(゚)「ワイらも……ロボットなんや」
彡(゚)(゚)「ワイらはこの結婚式場のスタッフなんや」
彡(゚)(゚)「列席者という役割のロボットなんや!」
(´・ω・`)「……」
33: 名無しさん@おーぷん:18/07/15(日)13:48:59 ID:s8f
(´・ω・`)「…確かに、式に出てくれる友人が少なかったり、新郎と新婦で来客数に大きな差がある場合、サクラで式に出るアルバイトがある、という話は聞くね」
彡(゚)(゚)「ワイらはこの式場が用意してるロボットなんや……」
(´・ω・`)「いや、それは違うと思うよ」
彡(゚)(゚)「なんでや?」
(´・ω・`)「だって僕たちは飲み食いしてるし、トイレも行くし」
(´・ω・`)「顔にうぶ毛も生えてるし、唾液や涙も出る、ロボットでここまで再現するとは思えない」
(´・ω・`)「さっきのロボットは血が出てなかったけど、僕たちは血管も見えるし、脈も打ってるから」
彡(゚)(゚)「せやけど…」
35: 名無しさん@おーぷん:18/07/15(日)13:49:45 ID:s8f
(´・ω・`)「じゃあ何か、目に見える証拠を探そう」
(´・ω・`)「やきう君、そこのスプーンを頬の内側に当ててみて」
彡(゚)(゚)「へ? こうか?(モゴモゴ)」
(´・ω・`)「ミネラルウォーターのペットボトルを用意して、首の少し下で切る、漏斗の形だね」
(´・ω・`)「そしてフタにアイスピックで穴を開ける」
(´・ω・`)「ここに丸いガラス玉かビーズをはめ込めば、手作りの顕微鏡になるんだよ」
(´・ω・`)「プレパラートもペットボトルの切片で作れる」
彡(゚)(゚)「ビーズなんてどこにあるんや?」
(´・ω・`)「結婚式場ならあちこちにあるよ、そのコサージュされてる造花にもついてる」
36: 名無しさん@おーぷん:18/07/15(日)13:50:20 ID:s8f
(´・ω・`)「見える見える、これが頬の内側の細胞だね」
彡(゚)(゚)「おお、ほんまや」
(´・ω・`)「これで証明できたね、さすがに細胞レベルからロボットを作るとは思えないし」
(´・ω・`)「僕らは人間だよ」
彡(゚)(゚)「ワイらって人間なんかな」
(´・ω・`)「それは今はおいておこう」
39: 名無しさん@おーぷん:18/07/15(日)13:51:19 ID:s8f
彡(゚)(゚)「ワイらがロボットでないのはわかったけど、何が起ってるのかは謎のままやな」
(´・ω・`)「そうだね、情報が欲しいけど、うかつに人には聞けないし、外にも出られない……」
(´・ω・`)「無電源ラジオを作るには材料のハードルが高いなあ」
(´・ω・`)「バス停や蛇口がラジオになったなんて例もあるけど、あれは送信所の近くの話だし…」
彡(゚)(゚)「話についていけへん……」
司会「さあ新婦によるブーケトスです、ご希望の方は列の前にお並びください」
(´・ω・`)「!!」
(´・ω・`)「やきう君! あのブーケ取ってきて!」
彡(゚)(゚)「へ?」
40: 名無しさん@おーぷん:18/07/15(日)13:52:16 ID:s8f
(´・ω・`)「いいから早く!」
彡(゚)(゚)「わ、わかった」
司会者「さあブーケをお投げください」
彡()()「うおおおおぉぉっっ!!!」
ゴロゴロ
彡(゚)(゚)「はあはあ……と、取ってきたで、礼服に土がついてもうたわ」
(´・ω・`)「ありがとう、ちょっとトイレに行こう」
彡(゚)(゚)「?」
41: 名無しさん@おーぷん:18/07/15(日)13:53:31 ID:s8f
彡(゚)(゚)「トイレに来たけど、どうしたんや?」
(´・ω・`)「よく見て、このブーケ、生花じゃなくて造花だ」
彡(゚)(゚)「せやな」
(´・ω・`)「その中に、英字新聞で作った手裏剣みたいな花が混ざってる
彡(゚)(゚)「ふむふむ、ほんで?」
(´・ω・`)「英字新聞だよ、立派な外の情報だ」
彡(゚)(゚)「あっ! そうか!」
(´・ω・`)「読んでみるよ、えーと、ん……」
(´・ω・`)「『休刊のお知らせ』」
(´・ω・`)「『617年に渡りご愛顧いただきましたデイリー・テレグラフ紙は、その歴史的な役割を終え、休刊となりました』」
(´・ω・`)「『もはや報道されるべき犯罪もなく、抱くべき不安も耐えて久しく、新聞がその役割を終えることは大いなる歓びであります』」
(´・ω・`)「『以後は気象情報、年中行事その他につきましては電子版にて配信を行います』」
彡(゚)(゚)「ほーん、休刊するんか…」
(´・ω・`)「…………」
(´・ω・`)「そ……そんな、バカな……」
42: 名無しさん@おーぷん:18/07/15(日)13:55:01 ID:s8f
彡(゚)(゚)「ど、どうしたんや? 新聞が休刊になるのは珍しいかも知れんけど、別に……」
(´・ω・`)「そうじゃない…デイリー・テレグラフ紙はイギリスの新聞だけど」
(´・ω・`)「その創刊はえーと……クリミア戦争の頃…そう、たしか1855年だよ」
彡(゚)(゚)「?」
(´・ω・`)「それが617年間のご愛顧って…」
(´・ω・`)「つまり今は、少なくとも西暦2472年以降だよ!」
彡(゚)(゚)「なんやて!?」
43: 名無しさん@おーぷん:18/07/15(日)13:56:05 ID:Vlc
期待期待
44: 名無しさん@おーぷん:18/07/15(日)13:56:09 ID:s8f
彡(゚)(゚)「も、もう驚くのも疲れたけど、どういうこっちゃ」
(´・ω・`)「……僕たちの記憶は21世紀初頭のものなのに」
(´・ω・`)「僕たちはここで400年近くも…?」
彡(゚)(゚)「せやけど新聞が役割を終えたってのも変な書き方やな、犯罪がないとか、不安がないとか」
(´・ω・`)「……」
(´・ω・`)「いろいろ、可能性は考えられるけど、これ以上は考えても仕方ないね」
(´・ω・`)「ここを出よう、外は森だったし、少なくとも冬じゃなかった、出てしまえば何とかなる」
彡(゚)(゚)「せやけど、ドアには鍵が…窓から逃げるんか?」
(´・ω・`)「こっそり逃げるとは言ってないよ」
(´・ω・`)「火事を起こせば、お客は外に出さざるを得ないでしょ?」
彡(゚)(゚)「えぇ…(ドン引き)」
46: 名無しさん@おーぷん:18/07/15(日)13:57:45 ID:s8f
-数日後-
(´・ω・`)「準備完了だ、今夜の0時ちょうどに自動発火装置が作動する」
彡(゚)(゚)「お前すごいな、ありあわせの材料でよくそんなもん……」
(´・ω・`)「原始的なものだよ、でも設置した部屋のスプリンクラーは壊してるし、紙も置いてるから、それなりの大火事になるはず」
(´・ω・`)「今日はベッドに横にならず、床に座っててね」
彡(゚)(゚)「床に座っとけばプシュッてならへんのは確認済みやからな」
(´・ω・`)「そう、火災のベルが鳴るはずだから、そうしたら式場の前まで走ってきてね」
(´・ω・`)「服は着てたほうがいいな、礼服はカゴに置かずに着たままでいて」
彡(゚)(゚)「わかった」
47: 名無しさん@おーぷん:18/07/15(日)13:58:42 ID:s8f
彡(゚)(゚)「さて、そろそろ夜の0時かな?」
彡(゚)(゚)「あいつはああ言ってたけど、ホンマに自動発火装置なんて……」
ジリリリリリリリ!!!
彡(゚)(゚)「おお! ホンマに鳴ったで! 漫画みたいや!」
彡(゚)(゚)「よっしゃ式場まで行くか!」
48: 名無しさん@おーぷん:18/07/15(日)13:59:44 ID:s8f
彡(゚)(゚)「ホールには非常灯だけやな、薄暗いわ」
(´・ω・`)「やきう君、上手く行ったね」
彡(゚)(゚)「おお、お前か」
彡(゚)(゚)「ちょっと煙も出てるな、大したことはないけど」
彡(゚)(゚)「お、ホールにスタッフの人がいるわ」
係員「……」
(´・ω・`)「すいません! 火事です! いったん外に出してください!」
彡(゚)(゚)「あのベルの音が聞こえるやろ!! 煙も出てる! 出してくれ!!」
係員「……」
彡(゚)(゚)「と…止まってるで」
(´・ω・`)「顔にうぶ毛がない…。この人もロボットみたい」
49: 名無しさん@おーぷん:18/07/15(日)14:00:35 ID:s8f
(´・ω・`)「でも電源が落ちてる…のかな? 動かないな」
司会者「どないしはりましたか?」
彡(゚)(゚)「あ、司会者のおっさん」
彡(゚)(゚)「火事なんや! 外に出してくれ!!」
(´・ω・`)「煙も出てます、吸い込むと一酸化炭素中毒の恐れも……」
司会者「……」
司会者「ははあ、あんたたち、暗示が解けてますなあ」
彡(゚)(゚)「は?」
司会者「こちらへどうぞ」
50: 名無しさん@おーぷん:18/07/15(日)14:02:03 ID:s8f
彡(゚)(゚)「なんか長い廊下に入ったで、なんやここ」
司会者「ここは複数の施設が隣接してましてな、その中を通る見学用通路ですわ」
司会者「お二人とも、新郎新婦とスタッフがすべてロボットなのはご存知ですか」
彡(゚)(゚)「せやな、こないだ首が折れた奴がいたし」
司会者「最近メンテ不足ですな、今度オーバーホールせんとあきまへんわ」
(´・ω・`)「あなたは人間なの?」
司会者「私はただ一人の人間の職員ですな、といっても持ち回りですんで、5年で別の参列者が司会者に変わりますわ」
彡(゚)(゚)「どういうこっちゃ」
51: 名無しさん@おーぷん:18/07/15(日)14:03:00 ID:s8f
彡(゚)(゚)「おや、ずっと歩いてたら窓のある廊下に来たわ」
彡(゚)(゚)「窓の外は体育館ぐらいの部屋やな、カプセルみたいなもんがズラッと並んでるわ」
彡(゚)(゚)「中に誰かいるような…」
司会者「お二人とも、記憶はどこらへんまでありますか」
(´・ω・`)「21世紀初頭ぐらいまでです、自分のことはあまり覚えてないけど」
彡(゚)(゚)「ワイもそんなもんやな」
司会者「では最初からですな」
司会者「驚かんで聞いてほしいんですが、今はそれから数百年後の世界です」
司会者「私も日付とか興味ないんで覚えてませんが」
彡(゚)(゚)「……」
52: 名無しさん@おーぷん:18/07/15(日)14:04:00 ID:s8f
司会者「人間もだいぶ進歩しましてな」
司会者「もう欲しいものは何でも作れるし、病気や老化もないし、必要な労働もロボットがやってくれますんや」
(´・ω・`)「ということは、完全な核融合炉の完成とか、水と空気から有機物を作れるとか、そういう技術が?」
司会者「……えーと、そうです、そんな感じです」
彡(゚)(゚)「このおっさん意外と頼りないで……」
彡(゚)(゚)「おや、廊下の外、今度は黒い板みたいなんがズラッと並んでる」
彡(゚)(゚)「一つ一つに名前が書いてあるな、お墓みたいや」
彡(゚)(゚)「おや、表面にニコニコ動画みたいに文字が走ってる…歓喜、幸福、感動、不安、充足、性的興奮」
彡(゚)(゚)「なんのこっちゃ」
53: 名無しさん@おーぷん:18/07/15(日)14:05:42 ID:s8f
(´・ω・`)「でも病気や老いもないって、不老不死ってこと?」
司会者「それに近いもんらしいですわ」
司会者「火事の騒ぎで一酸化炭素中毒がどうとか言うてましたやろ、それで気づきましたんや、暗示が解ける時、記憶喪失みたいになる方がいますよってな、この人ら不老不死のこと忘れてるな、と」
彡(゚)(゚)「ほーん、なるほど」
彡(゚)(゚)「せやけど話が見えてこんで、なんでワイらは結婚式に出てるんや」
司会者「誰かが考えはったんですわ」
司会者「美味しいものを食べて、面白い余興を見るだけの日々だと、すぐに飽きてしまう」
司会者「かといって毎日仕事するのも辛い、そもそもお金を稼ぐ意味もほぼ無くなってる」
司会者「娯楽と仕事の中間でないと駄目なんやそうです。楽しいながらも、義務感と緊張感があることで退屈せず長続きするそうですわ」
彡(゚)(゚)「ほーん…じゃあ何や、すっごい大掛かりな暇つぶしなんか」
彡(゚)(゚)「あの豪華な料理とか、余興をやるロボットまで用意して…」
司会者「今の世の中、そういうのもタダ同然ですからなあ」
54: 名無しさん@おーぷん:18/07/15(日)14:06:39 ID:s8f
彡(゚)(゚)「おや…廊下の外、今度はでっかいプールや、水が緑色やな」
彡(゚)(゚)「なんか人型のもんがたくさん浮いてる、ロボットには見えへんけど…」
司会者「あまり見んほうがよろしいで」
(´・ω・`)「質問なんですが、暗示がどうとか言うのは?」
司会者「この生活は長続きしますけど、それでも何十年もやってれば流石に飽きてきます」
司会者「なので定期的に記憶を消して、この生活は義務や、何も疑問を持たずにいるべきや、という暗示をかけるんですわ」
司会者「まれに、自然に暗示が解ける人もいまして、そういう場合は2010年代ぐらいからごっそり記憶が消えるようですな」
彡(゚)(゚)「今のワイらの状態やな」
司会者「ちゃんと処置を受ければ思い出せますわ」
彡(゚)(゚)「……」
55: 名無しさん@おーぷん:18/07/15(日)14:08:41 ID:s8f
司会者「つきましたわ、ここの医務室に記憶のなんや…難しい名前の機械があります」
司会者「せやけど、この廊下を真っすぐ行くと、スタッフ用の出口から外に出れます」
彡(゚)(゚)「選ばせてくれるんか?」
司会者「記憶の処置は本人の意思がないとあかんのです、外に出るのも自由です。外を見てから戻ってきてもよろしいで」
(´・ω・`)「……外の世界に、普通に生きてる人はいるの?」
司会者「いますで、でっかいロケットで太陽系から出ようとしてる人とか」
司会者「不老不死を拒否して畑とか作ってる人もおりますわ」
司会者「ただ、そういう人らは全部集めても1万人ってとこですな」
彡(゚)(゚)「……」
(´・ω・`)「……」
外に出る? 出ない?
56: 名無しさん@おーぷん:18/07/15(日)14:09:43 ID:bPK
出る
57: 名無しさん@おーぷん:18/07/15(日)14:09:44 ID:bX2
出る
59: 名無しさん@おーぷん:18/07/15(日)14:10:12 ID:s8f
出る、了解 これから書くので少し待ってね
64: 名無しさん@おーぷん:18/07/15(日)14:26:00 ID:s8f
彡(゚)(゚)「外に出るわ」
(´・ω・`)「僕もそうするよ」
司会者「そうですか、ではこれ、保存食と水ですわ、リュックもありますで」
司会者「外には車もあります、半自動運転ですんで、口で命令するだけで走ってくれますわ」
彡(゚)(゚)「なんや、えらい準備がええなあ」
(´・ω・`)「まるで、外に出るって言うと分かってたみたい…」
司会者「まれに暗示が解ける人がいるって言いましたやろ」
司会者「前任者からの引き継ぎですが、暗示の解けた方は、ほぼ間違いなく外に出たがるそうですわ」
彡(゚)(゚)「…………」
司会者「不思議なもんですな、自分たちでここまでのもんを作り上げたはずやのに」
司会者「なぜか、いきなり目の当たりにすると拒否感があるそうですわ」
司会者「まあ、いつでもお待ちしてますよって、世界旅行の気分で行ってくるとよろしで」
(´・ω・`)「……わかりました、じゃあ、お元気で」
彡(゚)(゚)「……ほな」
司会者「はい、ではまた」
66: 名無しさん@おーぷん:18/07/15(日)14:27:09 ID:s8f
彡(゚)(゚)「おっと夜が明けてきたわ」
(´・ω・`)「この車すごいね、暗い森の中でもすいすい走ってたよ」
彡(゚)(゚)「さすが数百年後の技術やなあ」
彡(゚)(゚)「……」
彡(゚)(゚)「こんなに凄いもんが作れるのに、なんであんな施設に引きこもったんやろ」
(´・ω・`)「そうだねえ、あの生活はあれで楽しかったけど」
(´・ω・`)「何百年もあの生活の繰り返しってのはちょっと……」
彡(゚)(゚)「まあ生き残ってる人ってのに期待しようか」
(´・ω・`)「そうだね、ケープカナベラルにはまだNASAがあるらしい」
(´・ω・`)「核融合エンジンのロケットが見られるそうだよ、楽しみだなあ」
彡(゚)(゚)「それはよう分からんけど、ワイも世界を回って色々見ようと思うわ」
(´・ω・`)「うん、せっかく外に出たんだし、今は楽しく過ごそう」
彡(゚)(゚)「せやな」
67: 名無しさん@おーぷん:18/07/15(日)14:28:39 ID:s8f
彡(゚)(゚)「……」
彡(゚)(゚)(いま、ワイ、「生き残ってる人」って自然に言うてもうたな)
彡(゚)(゚)(そういえば施設はまだ見られるやろか、振り返ってみたろ)
彡(゚)(゚)「うおっ……なんや、あの巨大なビルは」
(´・ω・`)「大きいねえ、地上500メートルはありそうだ、あの中に式場とかが入ってたんだね」
(´・ω・`)「もしかして、式場と宿泊施設のセットが、他にも何十とあったのかな」
(´・ω・`)「でも凄いよ、人間の技術力はほんとに進歩したんだね」
彡(゚)(゚)「進歩……」
彡(゚)(゚)(ワイにはあの建物は、黒い立方体は、ビルと言うより……)
彡(゚)(゚)(……ま、ええか、暗いことは考えんでおこう)
彡(゚)(゚)(せっかくワイらも、生き残ったんやしな……)
(おしまい)
68: 名無しさん@おーぷん:18/07/15(日)14:30:26 ID:Kj5
は?
70: 名無しさん@おーぷん:18/07/15(日)14:31:21 ID:liB
後で戻れるやろとか思ってたら終わってもうたやんけ!
73: 名無しさん@おーぷん:18/07/15(日)14:33:44 ID:s8f
読んでくれてありがとうございます
最後ちょっとありがちになってしまった・・・またいつか
76: 名無しさん@おーぷん:18/07/15(日)14:34:40 ID:liB
あかんモヤモヤする
もし残ってたらどうなったんや?
92: 名無しさん@おーぷん:18/10/14(日)13:30:36 ID:cG5
ショートショートってことやね
面白かったわ
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