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少年「あなたが塔の魔女?」

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Part1
1 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/05/24(木) 19:11:20 ID:ggDORvRk
魔女「いかにも……僕が悪名高い塔の魔女だよ」
 村の近くにある古びた塔。
 そこのてっぺんには怖い怖い魔女が住んでいるという噂でした。
少年「本当に居たんだ」
 魔女は居ました。
 絵本に出てくるような格好は、まさに魔女だと思います。
 魔女は夕闇のような濃い紫の瞳を細めて、僕を見定めているようでした。

2 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/05/24(木) 19:12:32 ID:ggDORvRk
魔女「まさかそれを確かめるだけにわざわざ僕の家まできたのかい?」
 魔女の声は何というか、ひんやりと冷たいような、井戸の水のような透明な声で、ゾクッとします。
少年「魔女に会いに来たんだ」
魔女「なぜ僕に会いに? 食べられたりするかもしれないんだよ?」
 魔女が、安楽椅子から降りて近づいてきます。
 身長はお姉ちゃんよりも小さくて、僕より頭ひとつ違うくらい。
 僕は、魔女って案外小さいんだなぁと思いました。

3 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/05/24(木) 19:16:02 ID:ggDORvRk
 魔女は、僕の肩に手をかけると小さな鼻をひくひくと動かしながら、全身の臭いを嗅いできました。
 腐ってないか、おいしいか、臭いで判断する人なんでしょうか?
 お母さんもたまにお肉の臭いを嗅いで、『まだイケるわ』なんて言ってたのを思い出しました。
少年「僕は腐ってないよ? 美味しいかは分かんないけど」
 魔女は答えません。まだ臭いを嗅いでます。
 もしかしたら、知らない間に僕は腐っちゃってたのかなぁ。
 腐ってたら、嫌だなぁ。

4 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/05/24(木) 19:17:22 ID:ggDORvRk
魔女「怖がらないね、このまま食べられちゃうかもしれないのに」
 魔女が僕の首筋に爪を立てて言いました。魔女の爪は魔女の瞳と同じような深い紫色に塗られてました。
 血が滲む所をみると、僕はまだ腐ってはいないようです。
少年「とんでもない。 死ぬのも痛いのも怖いよ」
 うん、死んじゃったら何にも残んないし、痛いと涙も出ちゃうしね。 それってとっても怖いよね。 怖いこと、なんだよね?
魔女「その割には冷静だよ、普通は君くらいの少年がこんな風にされたら泣き叫んで命乞いをしてもおかしくないんだけど」
少年「怖ければそうしなきゃいけない?」
 それってなんだか面倒だよ。 どうにもならない時はどうにもならないものでしょ?

7 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/05/24(木) 19:19:58 ID:ggDORvRk
魔女「……」
 魔女は両手で僕の頬を挟むと、じっと僕の瞳を覗き込んできました。
 なんだか僕の中身を観ようとしてるみたいだ。 嫌だなぁ。
 普段から見えない物は見ない方がいいよ、人間の中身なんて気持ち悪いだけだよ。 ねぇ、そうでしょう、お父さん。
魔女「別に君を特別どうこうする理由は僕にはないな。まず、僕は人を食べたりしないし」
少年「そうなの? 村のみんなは魔女のことを人喰いの魔物の生き残りだって言ってたけど」
 魔女は手を離すと、さっきまで座っていた安楽椅子に戻りました。
 どうやら僕のことを食べるつもりはないみたいだ。 良かった良かった。


8 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/05/24(木) 19:21:20 ID:ggDORvRk
魔女「魔物なんてもうこの世にはいないよ。いたら僕はこんな所で引き籠もっちゃいないさ」
少年「じゃあ、魔女は人間なの?」
 魔女は人間だったらなんでこんな所に居るんでしょうか?
魔女「人間ではないな、もちろん魔物でもないけど」
 良かった。 魔女が人間じゃなくて少しうれしくなりました。
少年「じゃあ、魔女はなんなの?」
魔女「僕は僕さ」
少年「よくわかんない」
魔女「わかりやすいようには言ってないからね」
 ひとつわかった事があります。 魔女は意地悪が好きみたいです。

9 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/05/24(木) 19:45:33 ID:ggDORvRk
少年「いつからいるの?」
 魔女はもう僕に興味がないみたいで、安楽椅子をゆっくりと揺らしながらなにやら難しそうな本を読んでいます。
魔女「昔から。 いつまで居る気なの?」
 昔から居る割にはそんな年寄りには見えないんだけどなぁ。
少年「昔って? 魔女は何歳なの?」
魔女「……ハァ」
 魔女は小さくため息をついて、本を閉じました。
 なんだか不機嫌そうに見えます。 何でだろう?
魔女「僕は質問には答えたよ? 君は僕の質問には答えずに、質問を続けるつもりなのかな?」
 魔女が不機嫌な理由がわかって良かった。 うん、質問を質問で返すのは良くないって、お兄ちゃんも言ってたし。

11 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/05/24(木) 20:09:22 ID:ggDORvRk
少年「ごめんなさい。 質問って?」
魔女「招かれたわけでもないのに勝手に上がり込んだ僕の家に君はいつまで居座って居るつもりなのかって聞いたんだけど」
 確かにそうだった。 僕まさか帰れるなんて思ってなかったから。
少年「居ていいまで。 帰った方がいいよね、やっぱり」
魔女「変わり者だね。 怖い魔女の隠れ家に長居したいなんて」
少年「変わり者だなんて言われたことないよ」
 あんまり嬉しくない事を言われちゃったな。
魔女「……」
 魔女は僕の方を見て何か考えているみたいだ。
 僕も魔女をじっくりみてみた。 やっぱり僕より少し年上くらいにしか見えないんだけどなぁ。

12 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/05/24(木) 20:22:41 ID:ggDORvRk
魔女「帰りたければ帰れば良いし、帰りたくなければ帰らなくても良いし。 僕に干渉しない限りは好きにすればいいよ」
 魔女はそう言うとそっぽを向いて、奥の部屋に消えてしまいました。
 でも、もう少しお喋りしたかったので少し残念です。
少年「ねぇ、魔女。 僕まだ質問に全部答えてもらってないよ」
 干渉しないなら居てもいいと言われたけど、それじゃあここに来た意味がないので、話しかけてみます。
 追い出されたら、お家に帰ってまた明日来ればいいか。
魔女「……なに?」
 良かった。 一応話はしてくれるみたいだ。
少年「魔女が何歳なのか答えてもらってないよ?」
魔女「君のお祖父さんのお祖父さんくらいだと思う」
 冗談かな? でも魔女って嘘つくのかな?

15 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/05/24(木) 21:58:57 ID:ggDORvRk
少年「そんなに昔から居たの? その間ずっとここに?」
魔女「……。 僕に干渉しないならっていったよね」
少年「干渉しないならいてもいいって言われたよ?」
魔女「出口はわかるよね。 暗くなったから松明くらいなら貸してあげる」
 もう帰らなきゃ駄目なんだ。
 すこし残念だな。
少年「うん、大丈夫。 お邪魔しました」
 魔女さんはなんだか悲しそうな、怒ってるような、不思議な顔をしていました。
 『女の子には笑顔で居てもらえるような男になりなさい』て言うお姉ちゃんの言葉を実行するのは難しいことなんだなぁ。

16 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/05/24(木) 22:01:58 ID:ggDORvRk
「ただいま」
「今日は塔の魔女に会いに行ってみたよ」
「大丈夫だよ。危ないことなんてしてないから」
「ごめんなさい、心配かけて」
「今日の夜は少し冷えるね」
「一緒に寝る? お姉ちゃんの部屋寒いから嫌だなぁ」
「わがままっていうの、これ?」
「わがままなのはお姉ちゃんだよね、お母さん」
少年「ん、朝になった」
少年「じゃあいってきます」

17 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/05/24(木) 22:02:56 ID:ggDORvRk
 魔女はまだ僕のこと怒ってるかなぁ?
 塔の方に歩いて行くとなんだか不安になってきました。
 人に嫌われるのは悲しいことだと思います。
青年「おぉ、少年じゃないか。 朝早くからどこに行くんだ?」
 塔のある森で青年さんと会いました。 手に持っているのは綺麗な、それはそれは綺麗な花です。
少年「ちょっとね。 青年さんはお花を摘みに?」
青年「あぁ、狩りのついでにな。 獲物が穫れなかったからせめて嫁に花でも渡してご機嫌とりしなきゃならん」
 確かに綺麗な花を貰えたら嬉しいかもと思いました。

18 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/05/24(木) 22:06:22 ID:ggDORvRk
少年「僕もそのお花、摘んでいこうかな」
青年「母ちゃんか、姉ちゃんにでもあげるのかい? 良い心がけだな」
 やっぱりお花を渡すのは正解のようです。
少年「いや、お母さんでもお姉ちゃんでもないよ」
青年「ん? 違うのか……」
少年「?」
 青年さんは少し嬉しそうな、それで居て悲しそうな顔で黙ってしまいました。

19 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/05/24(木) 22:07:23 ID:ggDORvRk
青年「これはやる、お前が家族以外の人間に花を渡すようになるのは嬉しいことだからな」
 青年さんは、ゴツゴツとした手のひらで僕の頭を撫でました。
 人に頭を撫でられるのは久しぶりです。 悪い気はしません。
少年「ありがとう」
青年「んじゃな。 なんかあったらいつでも相談にのるからな」
 青年さんはにっこり笑って去っていきました。
 なんだか胸のあたりがムズムズします。
 少し、不愉快な感じです。
 なんとなく、昨日の魔女さんの気持ちが分かったような、そんな気がしました。

20 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/05/24(木) 22:08:18 ID:ggDORvRk
魔女「君、また来たの?」
 魔女は安楽椅子に腰掛けたまま不愉快そうに目線だけをこちらに向けて言いました。
 魔女にこういう態度をとられると、少しだけ悲しい気持ちになります。
少年「昨日はごめんなさい」
 悪いと思ったらすぐに謝らなきゃ駄目なんです。 相手が女の人だったら尚更。 お兄ちゃんのよく言ってた言葉です。
 でも、謝ってばっかりだったお兄ちゃんをみると、謝るような事ばかりしなきゃいいのに。 とも思います。
魔女「別に……、僕は謝罪を求めてるわけではないよ」
少年「……」
 魔女は許してくれたわけではなさそうです。
 やっぱりこの人に嫌われるのはなんだか寂しいような悲しいような気持ちになります。

21 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/05/24(木) 22:09:12 ID:ggDORvRk
魔女「……ハァ」
魔女「だからそんな顔で僕を見ないでくれないかな? 原因のない罪悪感に苛まれそうだから」
 魔女がため息をついて言いました。 許してくれたみたいです。
 お腹から胸の辺りがどことなくポカポカします。
少年「ありがとう」
 自然と頬が緩みました。
魔女「綺麗な花を持って来てくれた男性を邪険にするのは淑女としてはいただけない行動だしね」
 青年さんがくれた花も喜んでくれたみたいです。
少年「えへへ」
魔女「~~~~」
 魔女が何か聞き取れないような言葉を口にした後、指を鳴らしました。

22 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/05/24(木) 22:09:57 ID:ggDORvRk
少年「わぁっ」
 すると僕の手から花が浮いて、魔女の方にふわふわと飛んでいきます。
魔女「~~~~」
 もう一度同じようなことをすると、今度は部屋の片隅にあった花瓶がふわふわと魔女の前に飛んでいきました。
魔女「綺麗なお花のお礼に、僕の少しだけ魔法を見せてあげよう」
 ふわふわと浮いている花瓶を手に取ると、魔女はまた小さく何かを喋りました。 なんだか鼻歌のようにも聞こえます。
 すると、魔女の前に林檎くらいの大きさの水の玉がどこからともなくできました。
少年「すごいなぁ……、魔法みたいだ」
 水の玉は毛糸の玉が解けるように幾つもの筋になって花瓶の中に入っていきます。
魔女「魔法みたい、じゃなくて、魔法だよ? 正真正銘の魔女だからできる」
少年「やっぱり魔女はすごいなぁ」
 驚いている内に、水が注がれた花瓶には花が生けられて、窓のそばに飾られました。
 一歩も動かずにこんな事ができるなんて羨ましいなぁ。

24 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/05/24(木) 23:25:13 ID:ggDORvRk
少年「やっぱり魔女は魔法が使えるんだね」
魔女「魔法を使えるから魔女なんだ。 魔法を使えないのに魔女とは呼ばれないさ」
 魔女は少しだけ上機嫌になったようで、安心しました。 
少年「ねぇ、魔女。 魔女に聞きたいことが沢山あるんだ。 でも魔女は干渉されたくないんだよね」
魔女「うん、僕は干渉されるのは好きじゃないな。 だからこうしてこの塔に住んでいる」
少年「聞いちゃ駄目なこと、聞いても良いこと、して良いこと、しちゃ駄目なこと、教えてほしいな」
 魔女は、窓辺に飾られた花瓶の花を見つめて考え出しました。

25 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/05/24(木) 23:25:53 ID:ggDORvRk
 何かを難しそうに考えている姿がよく似合うなぁ、なんて思っている内に魔女が答えてくれました。
 もう少しだけ、考え事をしている魔女を見ていたかった気もします。
魔女「まず、僕の生い立ちに関する事は聞かないでほしい。 次に、僕の趣味をとやかく言わない事。 後は、僕の家の物を勝手に触らない事。 この三つを守ってくれるなら、君がどれだけここにいようと僕はかまわない」
 魔女は、安楽椅子に腰掛けたままそう言うと、昨日とは違う本を読み始めました。
 なんにせよ、これさえ守れば居ても良いと言われたことが嬉しいと思います。

26 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/05/24(木) 23:48:34 ID:ggDORvRk
少年「魔女、質問があるんだけど」
魔女「なんだい?」
 魔女はこっちを見ずに返事をします。
 少し、寂しいです。
少年「何で自分の事を僕って呼ぶの? 魔女は女の人だよね」
魔女「僕って言うのは確かに男性の一人称だね」
少年「うん」
魔女「だけど、僕が僕って言うのには訳があるんだ」
 魔女は少しだけ唇を歪めたような笑い方をしています。
 にっこりと笑った方が可愛いのになぁ。 なんて思ったりします。


27 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/05/24(木) 23:51:30 ID:ggDORvRk
 魔女は安楽椅子から立ち上がり、こちらに歩いてきます。
魔女「僕はね、従僕なんだ。 敬虔なる魔術と知的探求心の従僕さ。 大気中の至る所に居る精霊たちの、夕闇に潜む禍々しき者達の、彼岸と此岸を行き来する亡霊達の、魔術という禁忌をそれを知り得る為に人である事を辞めたのだからね」
 魔女は薄い唇を更に歪めて話してくれました。
 そんな魔女を見てうなじの辺りがぞわぞわとします。
 
少年「よくわからないや」
 でも、言っている事はいまいちわかりませんでした。
 きっと僕が馬鹿だからなんでしょう。
 少し、悲しくなりました。

28 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/05/25(金) 00:09:26 ID:IchVhHA6
 朝早くから魔女の家に来てから数刻が経ちました。
 少しお腹が減ってきたことで、もうお昼なんだとわかりました。
少年「ねぇ魔女、君はおなか空かない?」
魔女「……うーん、食事か。 そういえば数年くらい口にしてないかな」
 驚きの事実が発覚しました。
 魔女は食事をしなくても大丈夫なようです。
少年「食べなくても平気なの?」
魔女「平気と言えば平気さ。 食事はうーん、そうだな。 魔女にとってタバコや珈琲と同じ嗜好品のようなものと考えてくれて良い」
 魔女はそう言うと、やっぱり安楽椅子に身体を預けて本を読んでいます。
 魔女は本を読んでなくてはいけないものなのでしょうか?

29 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/05/25(金) 00:18:23 ID:IchVhHA6
少年「食べれない訳じゃないんだね」
魔女「まぁ、そうなるね」
 魔女は心底どうでも良い、とでも言うような態度で返事をします。
 きっと僕にあまり興味が無いんだと思います。
 僕が魔女の立場だったらやっぱり、僕には興味が湧かないだろうなと思うとすんなりと納得できました。
魔女「昨日も思ったんだが」
 魔女は顔の前にふわふわと本を浮かべて僕の方に視線を向けました。
魔女「君もあまり満足に食事をとっているようには見えないんだが?」
 魔女はなんでもお見通しのようです。
 確かに最近はしっかりとした食事をとっていません。
 とりたいとは思っています。 でも、とっていません。

30 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/05/25(金) 00:33:54 ID:IchVhHA6
魔女「君は何故食事をとらないのかは分からないけど」
 魔女の瞳は綺麗です。 なんだか全部お見通しにされているような気がするのに、あまり嫌な感じはしないんです。 不思議です。
魔女「このままだと色々とまずいんじゃないかな? 既に身体のあちこちに影響は出てると思うんだけど」
 その通りです。最近の僕の身体は言うことをきいてくれない事がよくあります。
少年「うん、でも大丈夫なんじゃないかな」
 正直大丈夫な要素は殆どないと思います。難しい言い方をすると皆無って奴です。
魔女「君が大丈夫だと言うのならばこの話はここで止めよう、何事も無理強いは好きじゃない」
少年「ありがとう、魔女は優しいんだ」
魔女「優しいのなら君の口に無理矢理でも食物を詰め込むよ」
 違う、そうしないから魔女は優しいんだと思うんだ。
 青年さんみたいに無理矢理にでも食事させようとしてこなくて良かった。

31 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/05/25(金) 00:53:36 ID:IchVhHA6
 数刻の間、無言が続きます。 魔女が本の頁を捲る音だけが時折、部屋に響きます。
 とても、居心地が良いです。
魔女「なぁ、君。 君を見ていたらなんだか久々に空腹という感覚が僕にも蘇ったよ」
 珍しく、魔女の方から話しかけてきました。
少年「そっか、君でもお腹は空くんだね」
魔女「だが、生憎のところ我が家には食物を貯蔵するような習慣もなければ、それをする為の場所もない」
少年「それは大変だね、魔法でなんとかできないの?」
魔女「……」
 魔女が今までで一番真面目な顔をしました。

32 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/05/25(金) 00:58:15 ID:IchVhHA6
魔女「いいかい、良く聞いてくれ少年よ。 魔法は万能ではないんだ。 事象の原理を深く理解した上で、それを成す為に力を借りるのが魔法なんだ」
 また魔女は難しい話を始めました。
魔女「つまり、だ」
魔女「……料理を作れない奴には料理を作り出すような魔法は出来ないんだ」
 少しばつの悪そうな顔をして頬をかく魔女。 可愛らしい女の子みたいです。
少年「つまり、魔女は料理ができないんだ」
魔女「真実を言うだけで時折言葉というのは酷く心を傷つけるものだ」
 魔女は節目がちに僕を睨んで、唇を尖らせて呟きました。
 魔女にもできない事ってあるんだと思うと親しみを感じます。

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