憧れの1人暮らしで隣人に恋した
Part2俺と油田はマンションの入り口に到着した。
気が重い・・・。
2人でエレベーターを待ちながら考える。
なんでこんなことになったんだ?
どこにミスがあったんだ?
すると到着したエレベーターから女の子が降りてきた。
新田さんだ!
今は髪をゴムで束ねている。やっぱり可愛い。
両手にゴミ袋を持っていた。
そうか今日はゴミの日だ。
俺はカレーのお礼を言わねばと「さっきはどうも・・・」と言いかけた瞬間
意外な言葉を聞いた。
「やぁ!ゴミ出し?」
爽やかに新田さんに話掛けた人物。
油田だった。
89 名前:二宮[] 投稿日:2008/06/17(火) 08:39:31.14 ID:FgtT13KQ0
俺はお礼の言葉を飲み込んだ。
このオタク・・・新田さんとやけに慣れ慣れしくないか?
「こんばんわー。ゴミ回収明日だよ。油田くんも今晩中に出したほうがいいよ」
新田さんも笑顔で返す。
えええーーーーーーっ!!!???
この2人はどうやら相当親しい様子だ。
普通ならお互い「こんばんわ」で終わりじゃないか?
しかも「油田くん」と読んでいる。
これは2人の新密度を如実に物語っていた。
俺と油田はエレベーターに乗り込んだ。
俺は新田さんに頭をペコリと下げる程度しか出来なかった。
隣のオタクは「ばいばーい」等とほざいていた。
新田さんも俺に頭を下げた後
油田に手を振って「またね」と言っている。
90 名前:愛のVIP戦士@全板人気トナメ開催中[] 投稿日:2008/06/17(火) 08:41:39.00 ID:mF9NUv0v0
>>1の文才に惚れた
これってフィクションだっけ?
>>90
完全実話だよ
93 名前:二宮[] 投稿日:2008/06/17(火) 08:47:57.26 ID:FgtT13KQ0
俺はエレベーターの壁にもたれ掛かり
オタクの後ろ姿を眺めながら
フリーズしていた。
エレベーターが3階に到着する。
すぐ前が油田の部屋だ。
油田がガチャガチャとカギを開ける。
この後この中でこの男と数分を共にするのか。
考えただけで気が滅入った。
油田の「どうぞ」という言葉に促され室内に入る。
俺は目を疑った。
こんな部屋が現実にあるのだ。
壁一面に張られたアニメポスター。
なにやらピンクの髪をした女が
短いセーラー服のスカートから太ももを出している。
またあるポスターは黄色い髪をツインテールに束ねた
女の子がピースをしている。
そんなポスターが壁一面に張られていた。
そうだ。油田は外見だけでなく
正真正銘のオタクだったのだ。
99 名前:二宮[] 投稿日:2008/06/17(火) 08:57:49.90 ID:FgtT13KQ0
アニメといえばサザエさんくらいしか観ない俺には
1人として名前の分かるキャラクターはいない。
棚に目をやる。
例外になく美少女?のフィギアが所狭しと並んでいる。
本棚には同人誌?と思われる雑誌が丁寧に並んでいる。
借りたい本などこの中にあるワケが無い。
「その辺適当に座って下さい」
油田に促されてとりあえず腰を下ろした。
俺は小刻みに震えていたかもしれない。
中・高と散々ケンカをしてきた俺だが
この恐怖心はそれらとまた違ったものがあった。
なにをされるのだろう?
単純に湧いてくる恐怖心を拭い去ることが出来ない。
当の油田は、こんな部屋に住んでいるのに
俺に見られても恥ずかしい様子は全くないようだ。
その心理がまた新たな恐怖を生み出す。
「コーヒーでも入れてきますね」台所に消えていく油田。
コーヒーなど入れられた日には帰るに帰れない。
「あ・・・。どうぞお構いなく!」つい敬語になってしまう。
しかしそんな俺の言葉はお構いなしに
油田はカップを2つ持って出てきた。
「どうぞ」と言ってその1つを俺の前に置いた。
飲む気になれない。
何を盛られていても不思議はない。
話題が見つからない。
しかし油田はそんなこともお構いなしにコーヒーを啜っている。
そうだ!新田さんについて聞いてみよう。
なぜこのオタクが新田さんと親しげな関係なのか?
それはおおいに気になるところであった。
「そ・・・そうだ。油田くん。さっきすれ違った新田さん。
隣の部屋の。親しいの?」
油田は上目遣いに俺を見るとニヤリと不気味に笑い。
「ああ・・・。まりあちゃんですね。同じ学校なんですよ」
ま・・・まりあちゃん!!??
104 名前:二宮[] 投稿日:2008/06/17(火) 09:15:39.07 ID:FgtT13KQ0
この小デブ。言うに事欠いて「まりあちゃん」だと!!
油田は続けて「そんなことより・・・」
そ・・・そんなことより・・・なんだ??
「こっち系は興味あります?」
そういって右手に持っていたのは
なにやら美少女?のアニメのDVDだった。
「いや。ごめん。全く無い」
俺は即座に答えた。
なにそれ?とでも言おうもんなら
どんな説明を受けるか容易に想像できる。
「二宮さんは・・・。そうでしょうね。フヒヒ」
フヒヒの意味がよく分からない。
そういうと油田は収納の奥をゴソゴソと探り
1つのダンボール箱を出してきた。
「これ貸しますよ。」そういってダンボール一杯に入った
「はじめの1歩」を俺に渡した。
「50巻くらいまでありますよ」
そんなことより新田さんの話は??
105 名前:二宮[] 投稿日:2008/06/17(火) 09:15:58.85 ID:FgtT13KQ0
「返すのはいつでもいいんで」
そういって油田はニヤリと笑った。
これ以上ここにいても新田さんの話は聞けそうにない。
それならばサッサと本を借りて退散したほうが得策だ。
「ありがとう。それじゃ。お邪魔しました。」
俺はダンボールを抱えてそそくさと油田の部屋を後にした。
この日を境に俺と油田の距離が急速に接近していく。
しかし、この時の俺にそんなことを知る由も無かった。
106 名前:二宮[] 投稿日:2008/06/17(火) 09:17:12.73 ID:FgtT13KQ0
VIPにありえない程の反応の無さww
読者も少ない様子なので少し休憩します。
スレがあったらまた書きますね。
107 名前:愛のVIP戦士@全板人気トナメ開催中[age] 投稿日:2008/06/17(火) 09:19:19.38 ID:+gvhygIvO
>>106
頑張れよーww
108 名前:愛のVIP戦士@全板人気トナメ開催中[] 投稿日:2008/06/17(火) 09:20:16.97 ID:IPVD0Hdf0
続き気になる
しかもバッドENDなんだろ
誰が悟なんだよ
あと新田はヲタなんかよ
112 名前:愛のVIP戦士@全板人気トナメ開催中[] 投稿日:2008/06/17(火) 09:23:03.92 ID:1H03JITKO
油田はカイジの眼鏡の裏切り豚でおk?名前忘れた
119 名前:二宮[] 投稿日:2008/06/17(火) 09:54:21.54 ID:FgtT13KQ0
第4章 社会という厳しさ
その日から2〜3日は新田さんにも油田にも会うことは無かった。
マンションにおいて隣近所の付き合いといえば
案外そんなものかもしれない。
生活パターンが違えば数ヶ月顔を合わせなくても不思議はない。
それだけに引越し初日。
油田の部屋まで行ったことが
非現実的なこととすら思えてきた。
その油田に本を返すのは憂鬱の種であった。
しかし油田のお陰でヒマ潰しが出来たのも事実であった。
借りた「はじめの一歩」は意外に楽しかった。
実は俺もボクシング経験者なのだ。
121 名前:愛のVIP戦士@全板人気トナメ開催中[] 投稿日:2008/06/17(火) 09:55:06.91 ID:yDzP+1KTO
二宮待ってたww
122 名前:二宮[] 投稿日:2008/06/17(火) 09:56:03.69 ID:FgtT13KQ0
そうこうしているうちに入社の日を迎えた。
俺はこのために実家におふくろを残し
1人暮らしを始めたのだ。
その朝、俺はスーツを着てネクタイを締めた。
玄関を出るとき「おふくろ頑張ってくるね!」心の中でそう呟いた。
会社へは3駅。俺は少し早めに家を出た。
電車に揺られる。
俺はこれから毎日毎日通勤電車に乗って
年をとっていくのか・・・。
そう思うと無性に不安な気持ちになった。
おふくろの顔が浮かんでは消えた。
俺が就職したのは中堅の映像制作会社だった。
同期は7人いた。皆新卒入社だ。
最初の1時間は先輩による会社案内だった。
専門用語がバンバン出てくる。
同期の皆も全く理解出来ていない様子だ。
先輩は「そのうち分かる言葉だから今は考えなくていい」と言った。
簡単な会社案内が終わると新入社員はそれぞれの部署に配属された。
俺は制作1部という部署に配属された。
7人のうち俺と同じ制作系は4人いた。
あとの3人は技術系の部署だった。
128 名前:二宮[] 投稿日:2008/06/17(火) 10:08:21.43 ID:FgtT13KQ0
俺は自分に割り当てられたデスクに腰を下ろした。
5分ほどデスクの引き出しなどを開けて時間を潰す。
しかし誰も何も声を掛けてこない。
なにをすればいいのだ?
妙に落ち着かない。不安な気持ちが襲ってくる。
みんなが俺の一挙手一投足を監視している気がする。
これが会社という場所なのか。
ふと同期に目をやる。
他の同期は先輩と話をしながら早くも仕事を始めている様子。
焦りが出てきた。
その時。
陰気臭いオッサンが「二宮くん・・・」と声を掛けてきた。
50過ぎの背の低い男。
スーツがクタクタで貧乏臭い印象だ。
しかし眼光は鋭い。
仕事が出来るといった感じの眼光ではない。
なんというか「人の気持ちを全て見透かしたような眼光」とでもいえばいいのか。
その男は赤松と名乗った。
133 名前:二宮[] 投稿日:2008/06/17(火) 10:13:47.51 ID:FgtT13KQ0
俺の直属の上司になるという。
このオッサンの下で働かないといけないのか。
さらに気持ちは沈んだ。
赤松は俺を会議室に呼ぶと一冊のパンフレットを差し出してきた。
「このVPを創る。ロケは2週間後。ディレクターはフリーの志村という男だ。」
VPって何??
「詳しい話は志村から聞いてくれ。志村の指示通り動くように」
そういうと赤松は会議室から消えていった。
混乱した。
VPってなんだ?
フリーのディレクターってことはこの会社にいないのか?
志村という人物はどんな人間なのだ?
赤松に付いていけるか?
不安が波のように押し寄せる。
俺は自分の席に戻って赤松に貰ったパンフレットを見た。
そこには怪しげな機械を
太ももにあてがっている女性の写真があった。
ドライヤーの先端部分に丸い金属が付いているような機械だ。
美容器具らしい。
その金属を当てた部分はなんとスリムになるというのだ。
かなり怪しいぞ。
136 名前:二宮[] 投稿日:2008/06/17(火) 10:18:42.75 ID:FgtT13KQ0
昼休憩の時間がきたので赤松の許可を貰い昼食に出た。
妙に開放された気分だ。
会社の1階で同期の女の子に出会った。
渡辺とかいう子だったと思う。
渡辺はなにやらオロオロしていた。
「どうしたの?」
俺が話掛けると渡辺はこっちを振り向いた。
目には涙を溜めている。
「昼ごはんを食べるところを・・・」
俺は昼食に渡辺を誘った。
彼女は短大を出た20歳だった。
彼女は女の子でありながら技術系の部署に配属された。
カメラや三脚。その他の荷物を担いで動くのは
男でも大変な部署だ。
俺は昼食を食べながら渡辺に聞いた。
「さっき泣きそうな顔をしてたよな?」
渡辺は不安気な表情を浮かべてこう話した。
「配属のあと先輩に機材の説明を受けたんだけど
全くなにがなんだか理解できなかった。
技術部は電気系統のことも理解しなきゃいけないし・・・。
やっていけるか不安で・・・」
137 名前:二宮[] 投稿日:2008/06/17(火) 10:20:05.36 ID:FgtT13KQ0
みんな不安は同じなんだな。
俺の制作部も理解出来ない言葉は飛び交うが
技術部よりマシだろう。
ラーペ
フォーペ
NP1
トライ
プロミスト
ハツハツ
こんな意味不明な言葉を平気で使うのが技術部だ。
またこれらの言葉を理解しなければ技術部の資格はない。
初日に・・・矢継ぎ早にこんな専門用語を聞かされた
渡辺の不安は計り知れない。
しかしこの渡辺は数年後立派なカメラマンになる。
まだまだ男性社会が色濃くのこるこの業界で
男性には絶対的に劣る体力面をカバーし
渡辺はカメラマンになったのだ。
素晴らしい努力家といえる。
俺と渡辺は昼食をしまし会社に戻った。
渡辺の部署は1階だ。
エレベーターに乗り込む俺に不安げな表情を見せた渡辺。
俺も不安なんだよ。
心の中でそう呟いた。
139 名前:二宮[] 投稿日:2008/06/17(火) 10:24:43.13 ID:FgtT13KQ0
昼食後、赤松に連れられ例の会議室へ。
そこには30歳前後の小太りの男がいた。
「志村です。君が二宮くん?」
気さくに話しかけてくる志村に好感を持った。
「僕も2年前はこの会社にいたんだ。
今回は僕のADについてくれるんだね。よろしく」
俺はホッとした。この人となら・・・この人なら
付いていけそうだ。
しかし世の中はそんな甘いものでは無かった。
赤松が「志村あとはヨロシク!」と言って会議室を出て行った。
さて、なにをお手伝いすればいいのだろう?
俺は志村に
「すみませんVPってなんでしょうか?」と尋ねた。
その瞬間、志村の顔色が変わった。
「VPぃぃぃ??そんなことも分からんのか君は?」
さっきまでの気さくな志村はどこにもいなかった。
何か汚いものでも見るような目つきで俺を見下ろし。
「ビデオパッケージ」とだけ言った。
そのビデオパッケージも意味不明だ。
俺は正直ビビった。
世の新入社員は皆こんな感じなのか?
だって新入社員だ。
全ての言葉が理解できるわけがない。
それとも俺が勉強不足なのか?
俺は急に志村に話掛けにくくなった。
142 名前:愛のVIP戦士@全板人気トナメ開催中[sage] 投稿日:2008/06/17(火) 10:34:13.52 ID:8ldC6yxD0
なかなかリアルな描写だな
こんな奴いるわ
143 名前:愛のVIP戦士@全板人気トナメ開催中[] 投稿日:2008/06/17(火) 10:34:18.98 ID:iaBuitLYO
嫌なやつだなぁ
144 名前:愛のVIP戦士@全板人気トナメ開催中[] 投稿日:2008/06/17(火) 10:34:44.69 ID:IPVD0Hdf0
ちょっと待ってくれ
隣人のまりあたんからからだいぶ離れていってるんだが
この流れだとVPのモデルがまりあたんとしか思えない
146 名前:愛のVIP戦士@全板人気トナメ開催中[] 投稿日:2008/06/17(火) 10:42:07.12 ID:GdKxzC0+O
ちょっと待て、渡辺はかわいいのか?
147 名前:愛のVIP戦士@全板人気トナメ開催中[] 投稿日:2008/06/17(火) 10:43:12.23 ID:0vuNNNn0O
>>146
渡辺は俺の嫁
149 名前:二宮[] 投稿日:2008/06/17(火) 10:43:51.19 ID:FgtT13KQ0
それでも勇気を振り絞って声を掛ける。
「あの・・・志村さん。僕は何をすれば・・・」
完全にビビっていた。
どんな言葉が飛んでくるのか?
それが恐怖になっていた。
学生時代なら一瞬でボコボコにしていたような
小デブが社会で怖いのだ。
「これ。今回の台本。読んで」
ドサッと置かれたのはA4のコピー用紙をクリップで束ねたものだった。
これが台本というものか。
俺はそれに目を通した。
日本語なので理解は出来るが
本当の意味での、業界的な意味での理解はモチロン出来ない。
俺は一通り目を通してから
「読みました」と志村に声を掛けた。
「そう。それじゃ明日までに香盤表よろしく」と志村は言った。
香盤表・・・なにそれ??
志村は席を立つと
「んじゃ俺帰るから。お疲れ〜」と言葉を残し
部屋を出ようとした。
151 名前:二宮[] 投稿日:2008/06/17(火) 10:49:39.11 ID:FgtT13KQ0
「ちょ・・・待って下さい」
俺は志村を引き止めた。
ここは曖昧に出来ない。
言葉の意味すら分からないものなんて
引き受けられるわけがない。
志村はまたあの視線を投げかけてきた。
そう。汚いものを見るようなあの目。
「香盤表ってなんですか?」
やれやれといった様子で志村は答えた。
「撮影の順番だよ。それをスタッフが見て
次はこれを撮影すのか。って確認する表だよ」
それだけ言い残して志村は部屋を出た。
フリーなのでいつ帰っても誰も文句を言わない。
志村の声が聞こえる。
「赤松さん。それじゃ〜また〜」
おいおい。マジかよ。
マジで帰ったのかよ?
俺は途方に暮れた。
155 名前:二宮[] 投稿日:2008/06/17(火) 10:57:25.77 ID:FgtT13KQ0
実はいま考えても志村のこの行動は暴挙であった
香盤表というものは1つの撮影において
かなり重要なものである。
40人程度の全てのスタッフがそれを元に動く。
この香盤表が適当に作られたものだと
撮影終了時間が大幅にズレ込んでくる。
すると外部スタッフの費用や
スタジオ費用が大幅にUPしてしまうのだ。
かといってタイトにスケジュールを組んでも
あまりに無茶な香盤表だとスタッフに反感を買う。
ひどい場合には技術スタッフに殴られかねない。
香盤表を作成する作業は撮影を熟知し
なおかつ技術的に必要な時間まで理解しないと
到底作れるものではないのだ。
156 名前:愛のVIP戦士@全板人気トナメ開催中[] 投稿日:2008/06/17(火) 11:04:10.94 ID:k581fk12O
オモシロスwww
157 名前:愛のVIP戦士@全板人気トナメ開催中[] 投稿日:2008/06/17(火) 11:05:10.88 ID:iaBuitLYO
かなりリアルな話だ
こんな理不尽な上司終わってる
160 名前:愛のVIP戦士@全板人気トナメ開催中[sage] 投稿日:2008/06/17(火) 11:10:45.79 ID:uC4N2s3U0
ブラック会社に入社したんですね、わかります。
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