転校生に恋をした一年間
Part5なおちゃんが言うには、俺を初めて見た時から気になっていたらしい。
そこで話してみて気が合ったからそこで好きになったんだと。
誰からでも告白されるとやっぱり嬉しいものだ。
俺はテンションが上がった。
でも答えは決まっている。
俺「ごめん」
なおちゃん「・・・だよね・・・たった四日間遊んだだけだし・・・」
俺「また遊ぼうよ。俺なおちゃんと遊ぶの好きだから」
なおちゃん「・・・うん!」
その後なおちゃんとメアドを交換して別れた。
161 :名無しさん@おーぷん :2014/11/20(木)12:43:23 ID:jCMhcynqF
一人で帰路に着いている中、俺はずっと考えていた。
長井と付き合えば、もっと近くで支えてあげられるんじゃないかと。
そして家に着くなりさっそく長井に電話した。
なおちゃんの告白に感化されちゃったんだよな。
昔の俺はアホみたいに単純で恥ずかしくなる。
162 :名無しさん@おーぷん :2014/11/20(木)12:46:06 ID:jCMhcynqF
長井「・・・ごめん。付き合えない」
だよね。
告白した直後に思い出した。
長井は誰とも付き合いたくはなかったんだ。
だから全然悲しくなかった。
長井「安藤君のことは嫌いじゃないよ」
俺「いやいいって、俺の方こそ急にごめん。なんか焦ってたww」
すっげえ勇気出したからむしろスッキリした。
163 :名無しさん@おーぷん :2014/11/20(木)12:48:24 ID:jCMhcynqF
12月31日(163日目)
午後8時ごろ、一緒に近所の神社に初詣へ行くためにハマーがうちに来た。
俺「お前、早すぎるだろ。約束の時間は11時だぞ」
ハマー「家にいても暇なんだよ」
俺「まあいいや。ゲームでもして時間つぶそうぜ」
ハマー「スマブラスマブラ」
俺「よし」
今思えばこのころの俺たちはスマブラにハマりすぎてた。
164 :名無しさん@おーぷん :2014/11/20(木)12:50:08 ID:jCMhcynqF
ハマー「お前スマブラ弱すぎ」
俺「マルスばっか使うな」
ハマー「それはそうと、長井とは進んだか?」
俺「えっ!?・・・いや特には・・・」
長井に告白をしたことも、なおちゃんの存在も黙っておいた。
ハマー「リアルラブも雑魚だな」
俺「意味わかんねえよww」
たぶんハマーは現実の恋愛って言いたかったのだと思う。
ハマー「おっと忘れてた!クラトゥのCD貸してくれ」
俺「ああ、そうだった」
クラトゥというのは俺が長井と出会ったころくらいから聴きはじめて大好きになったカナダのバンドだ。もう解散してるけど。
俺はずっとハマーにクラトゥを薦めてて、この日CDをとりあえず一枚貸すことになっていた。
俺「俺たちは音楽の趣味が合うからな。聴いたら絶対好きになるぜ」
俺は机の上のCD置き場でクラトゥのCDを探した。
俺「あれっ、ない」
ハマー「机の中だろ。お前何でもこの中に入れる癖あるし」
そう言ってハマーは立ち上がり、机の引き出しを開けた。
俺「そこはダメ!」
ハマー「ほらあった。ん?なんだこれ・・・」
ハマーは血が入ったビンを取り出した。
166 :名無しさん@おーぷん :2014/11/20(木)12:54:54 ID:jCMhcynqF
ハマー「お前これ・・・血じゃねえか」
俺「・・・」
俺はハマーと目が合わせられなかった。
ハマー「説明してくれ」
俺「・・・ああ」
167 :名無しさん@おーぷん :2014/11/20(木)12:57:25 ID:jCMhcynqF
俺「これは長井の血だ」
ハマー「それはだいたい分かる。分かんないのはなんでそんなものがここにあるのかってこと」
俺「・・・あいつ本人から貰った」
ハマー「じゃあ、長井はリスカしてんのか?」
頭がキレるやつだ。
俺「手首だけじゃなく首もね。これはその首の血」
ハマー「・・・」
あきらかにハマーの顔は引きつっていた。
168 :名無しさん@おーぷん :2014/11/20(木)12:58:03 ID:aBzurA7Pt
支援
169 :名無しさん@おーぷん :2014/11/20(木)13:02:06 ID:jCMhcynqF
ハマー「お前もう・・・長井とは関わらない方がいいぞ」
ハマーが唐突に言った。
俺「おっ?僕にやきもちを焼いているのかな?お前やっぱ男が好きだったのかww」
ハマー「おい安藤、今はおふざけなしだ」
俺「・・・わかってるよ」
ハマー「もう一度言うぞ。もう長井と関わらない方がいい」
俺「・・・できるわけねえだろそんなこと」
ハマー「お前が長井のことを好きなことはわかる。でもな、これから受験などがある大事な時期なんだぞ。
長井のせいで精神がぶっ壊されたらどうすんだよ!」
俺「それでも、俺は長井と約束したんだよ。あいつのそばにずっといるって」
ハマー「あーあ、約束しちゃったか・・・」
俺「ああ」
その瞬間ハマーが顔をぐいっと近づけてきた。
ハマー「お前も本当は思ってるんじゃないのか?これは普通じゃないって」
俺「・・・」
ハマー「やっぱりな」
俺「なんで確信するんだよ!」
ハマー「お前は嘘つけないからな。本当のこと言われると黙るんだ」
俺「・・・」
ハマー「ほらそれだ」
俺「あっ」
ハマー「ちょっとトイレ」
ハマーは部屋から出て行った。
170 :名無しさん@おーぷん :2014/11/20(木)13:04:11 ID:jCMhcynqF
ハマーはトイレから戻ってくるなり言った。
ハマー「このままいけばお前はどんどん泥沼にはまっていく。だけど関わらないなんてことできないだろ?」
俺「うん」
ハマー「じゃあ少し距離を置いてみたらどうだ?」
俺「・・・考えとく」
そんなことしたくなかったけどな。
ハマーが言っていることも一理ある。
ハマー「11時になったぞ。そろそろ行くか」
俺「・・・うん」
長井のことでさらに頭がいっぱいになって
もう初詣なんてどうでもよかった。
171 :名無しさん@おーぷん :2014/11/20(木)13:06:40 ID:jCMhcynqF
1月1日(164日目)
年が明ける瞬間はお参りの列に並んでいる時だった。
電波の頃合いを見計らって、俺は0時15分くらいに長井に電話を掛けた。
俺「明けましておめでとう」
長井「おめでとう」
俺「えっと、長井・・・」
長井「何?」
俺「俺、もう長井にモーニングコールするのやめるよ」
長井「・・・そう」
俺「・・・じゃあ、電話切る」
長井「・・・うん」
距離を置かなきゃ俺はダメになる。
そう自分に言い聞かせた。
172 :名無しさん@おーぷん :2014/11/20(木)13:08:05 ID:jCMhcynqF
1月2日(165日目)
長井からメールが来た。
長井『ゼルダいつ返せばいい?』
俺『いつでもいい』
そっけなく返事をした。
長井『わかった』
俺はそれ以上メールを続けなかった。
173 :名無しさん@おーぷん :2014/11/20(木)13:10:46 ID:jCMhcynqF
1月3日(166日目)
ここ2ヵ月、毎日長井からメールなり電話なり来ていたが、この日は何もなかった。
だから俺も何もしなかった。
ただ、これが辛かった。
たとえ死にたいなんて言われようと、俺は長井と話すのが好きだったし、
それが毎日の楽しみになっていたから。
174 :名無しさん@おーぷん :2014/11/20(木)13:11:22 ID:jCMhcynqF
1月4日(167日目)
この日も長井とは何もなかった。
電話をして話したかったが我慢した。
175 :名無しさん@おーぷん :2014/11/20(木)13:14:28 ID:jCMhcynqF
1月5日(168日目)
変に距離を置くほど、俺の長井に対する気持ちはどんどん大きくなっていった。
悩んで悩んで悩みつくして、俺は決めた。
長井とは今後一切関わらないことを。
そして夕方ごろ、長井に最後の電話を掛けた。
176 :波平 :2014/11/20(木)13:15:17 ID:JPPAi5q7v
これってどれくらい前?
178 :名無しさん@おーぷん :2014/11/20(木)13:17:31 ID:jCMhcynqF
>>176
俺が今20代前半だから7,8年前かな
177 :名無しさん@おーぷん :2014/11/20(木)13:15:17 ID:jCMhcynqF
俺「もしもし」
長井「うん」
俺「あのさ、俺・・・もう、長井とは関わらない」
長井「あっそ、じゃあね」
一瞬だった。
電話が切れたあと、俺は風呂に入った。
これでいいんだ。
これで俺は、長井のことなんて考えないで楽に暮らせる。
なんて風呂につかりながら考えたんですけどね。体は正直なんですよ。
また自然に涙が出てきたの。長井との楽しい思い出とともに。
179 :名無しさん@おーぷん :2014/11/20(木)13:19:06 ID:jCMhcynqF
一緒にゲームをしたり、ご飯を食べたり、神社で話したり、
そういう当たり前のことさえも楽しい思い出として頭の中に湧き上がってくる。
なんでこんな時に限って・・・。
そして涙を流しながら俺の考えは変わった。
「たとえ将来どうなろうと、長井のそばにいたい!それが俺の望むことだ!」と。
風呂から上がり、長井に電話した。
出ないかと思ったが長井は出てくれた。
長井「何?」
俺「長井、ごめん。俺やっぱり無理だ。お前と関わらないなんて」
長井ならきっと許してくれるだろうと信じていた。
181 :波平 :2014/11/20(木)13:21:04 ID:JPPAi5q7v
>>178
ありがとう教えてくれて
ちょうど7 8年前の年頃なので…つい聞いてしまいました
182 :名無しさん@おーぷん :2014/11/20(木)13:22:48 ID:jCMhcynqF
>>181
きみもいろいろあったんだな
183 :名無しさん@おーぷん :2014/11/20(木)13:24:08 ID:jCMhcynqF
長井「もういいよ、今さら」
俺「えっ?」
予想外の答えだった。
長井「安藤君私と約束したよね?ずっとそばにいるって」
今まで聞いたことのない冷たくて早い口調だった。
俺「だから、こうやって戻ってきたんだよ。長井のことが好きだから」
長井「好きならなんであんなこと言ったの?」
俺「・・・」
言えるわけがない。
「これから先もずっと大切な人が自分自身を傷つけるところを見るのに耐えられそうになかったから」
なんて長ったらしい自分勝手な理由が。
185 :名無しさん@おーぷん :2014/11/20(木)13:28:05 ID:jCMhcynqF
長井「はあ、もう安藤君のことが信じられない。これから学校では行事で話さなきゃいけない時だけが話そうね」
俺「なんだよそれ・・・」
長井「いやなの?私はこういうのに慣れてるから何とも思わないよ。
それに今回は付き合うことを提案された時点で少々気持ちが沈んでいたから過去のような気持ちにならないで済んだんだけどね。ありがとう」
長井が俺のことをどう見てたか少しわかった気がした。
俺「・・・じゃあ俺は今まで通り長井に都合よく使われればよかったのか?」
長井「ねえ、その都合よくって何?」
俺「長井が言ってほしいことを言って、してほしいことをするってこと」
長井「それに応えるのは私が決めることじゃないよね。
だいたい都合よく相手するのが嫌で後からこんな風に言うなら最初から相手しなければよかったのでは?」
確かにそうだ。
ただ断ればいいのに、俺は長井を喜ばせたり安心させたりしたくて、自分を殺していた。
187 :名無しさん@おーぷん :2014/11/20(木)13:32:40 ID:jCMhcynqF
長井「つまり安藤君は見返りがほしかったんだよね」
リスカにしてもその通りだ。
長井が自傷行為をやめるという見返りがほしいだけで、俺は散々説得してきた。
まあ長井はリスカをやめたいとは思ってなかったから、これは俺の勘違いだけど。
俺「そうだよ。俺は・・・」
と言ったところで思いとどまった。「長井のため」なんて言っても信じないだろう。
俺が黙っていると長井が言った。
長井「結局あなたも今までの中の一人になるだけ」
俺「・・・!!」
ショックだった。
この言葉が一番傷ついた。
俺は長井にとってなんでもなかったんだ。
すると目に涙がにじんだ。
やはり俺の涙腺はゆるい。
このままじゃ涙声になって泣いているのがばれてしまう。
焦りや悲しみやらで頭がごちゃごちゃになり、つい言ってしまった。
俺「自分を客観的に見ろよ!!!」
長井にこんなに大きな声を出したのは初めて会ったとき以来だった。
長井「・・・お前にそんなこと言われたくない!!!」
長井が言い終わると同時に電話が切れた。
俺は机の中にしまっていたクリスマスプレゼントをゴミ箱の中へ思い切り投げ込んだ。
189 :名無しさん@おーぷん :2014/11/20(木)13:34:25 ID:jCMhcynqF
やばいww
思い出してちょっと辛くなってきたwww
190 :名無しさん@おーぷん :2014/11/20(木)13:35:07 ID:jCMhcynqF
1月6日(169日目)
1日中ベッドから出られなかった。
夜、長井に電話を掛けたが着信拒否にされていた。
メールも同じだった。
191 :名無しさん@おーぷん :2014/11/20(木)13:38:24 ID:jCMhcynqF
1月7日(170日目)
今日から学校が始まる。
休もうとベッドにこもったのに母に叩き起こされた。
学校に行くと、長井がすでに来ていた。
朝のホームルームが始まる前、長井が俺の机の上に小さな袋を置いた。
中を見るとゼルダのソフトが入っていた。
俺が確認すると長井は何も言わず自分の机に戻っていった。
俺は謝ろうと立ち上がり、長井の背に向けて声を出そうとした。
でも、出なかった。
まさにこの時の
俺の心の弱さを象徴する出来事だな。
193 :名無しさん@おーぷん :2014/11/20(木)13:41:38 ID:jCMhcynqF
1月13日(176日目)
約束していた野郎共でまた街に集まってカラオケに行った。
楽しい雰囲気を壊さないために常に明るくふるまった。
今だけでも長井のことを忘れようと夢中になって歌った。
しかし無理だった。
辛くてまともに歌えない。
音痴の俺がさらに音痴になる。
唯一70点を超えるくるりの『ばらの花』でさえ60点そこらだった。
194 :名無しさん@おーぷん :2014/11/20(木)13:43:55 ID:jCMhcynqF
カラオケが終わって、夜も遅かったからそのまま解散した。
今日は本屋へ行く必要はない。
俺は真っ直ぐにバス停へ向かった。
途中雪が降ってきた。
まさにあの日みたいだったけど、あの時とは気持ちが真逆だ。
あんなにきれいに見えた雪が今はうっとおしく思える。
まわりではたくさんのカップルが空を見上げていた。
普通にカップル以外の人もいるはずなのに、
なぜか俺の目にはカップルしか入らなかった。
それらを見ないために下を向いてバス停まで急ぐ。
気持ちを切り替えようと耳にイヤホンを差し、適当にiPodで音楽を再生した。
しかしiPodまで俺を追い込みたいのか、
流れてきたのはクラトゥの『December Dream』という今の俺にピッタリの悲しい曲だった。
この胸の苦しさは一生続くのか?
それならいっそ死んだ方がましだ・・・。
生まれて初めて死にたいと思った。
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