サシャ「この味は、ウソをついてる味ですね」
Part1
1 : ◆H4iwFNXQsw:2013/06/28(金) 19:44:45 ID:LAy1mCRg
・前作『サシャ「キスの味、私に教えてください」』の続編です
・キャラ崩壊というか展開に注意
・ネタバレほんわかとあり
2 : ◆H4iwFNXQsw:2013/06/28(金) 19:45:17 ID:LAy1mCRg
ライナー(あれから何度か、サシャがキスをねだってくるようになった)
ライナー(誰もいない場所と時間帯を、よくもまああんなに狙い打てるもんだと感心する)
ライナー(ただ、十七センチという身長差は、キスをするには少し遠い距離だ)
ライナー(だから、最近は俺が何かに腰掛けて、膝の上にサシャが乗るという体勢に自然になっていた)
ライナー(ぎくしゃくした動きで「……失礼します」と顔を耳まで真っ赤にして座るくせに)
ライナー(いざキスをするとなると、貪りつくように舌を絡めてくる)
ライナー(そんな態度に振り回されていた、ある日のことだった)
3 : ◆H4iwFNXQsw:2013/06/28(金) 19:46:18 ID:LAy1mCRg
ーー夜、とある物陰
ライナー「……おい、そろそろ離れろ。人が来るぞ」
サシャ「まだ大丈夫ですよ」
ライナー「お前なあ……あーもういい。好きにしろ」
サシャ「やったー……」
サシャ(あ、鎖骨に汗が……)
サシャ(そっか、まだお風呂入ってないですもんね)
サシャ(サラサラした汗ですね……お肉の脂とは違った滴り方です)
サシャ(……お肉…………骨付き肉……?)
サシャ(おいしそうーー)
ぱくっ
4 : ◆H4iwFNXQsw:2013/06/28(金) 19:46:57 ID:LAy1mCRg
ライナー「ーー!?」 ドンッ!
サシャ「いたっ!」ドサッ
ライナー「! ーーわっ、悪い、突き飛ばしちまったが大丈夫か? 手は捻ってないか?」
サシャ「いえ、私こそすみません……変なことしてしまいました」
ライナー「いや、俺のほうが悪い。突然で手加減できなかった。本当に大丈夫か?」
サシャ「大丈夫ですから。本当に。大丈夫です。すみません」
ライナー「サシャ、」
サシャ「今日はここまでにしましょう。ね?」ニコッ
ライナー「……ああ」
5 : ◆H4iwFNXQsw:2013/06/28(金) 19:47:44 ID:LAy1mCRg
ーー夜、女子寮
サシャ「……」
クリスタ「んにゃ……さしゃー? あかりけしてからねてねー……zzz」
サシャ「あっ、はい……わかりました」フッ
サシャ「……」モゾモゾ
サシャ「……」
サシャ(突き飛ばされたところが、痛い……)ズキッ
サシャ(あれ、全力でしたよね……)
サシャ(やっぱり、嫌だったんでしょうか)
サシャ(……当然ですよね。今まで付き合ってもらえたことのほうが奇跡です)
サシャ(そもそも、最初の私の動機からして不純でしたし)
サシャ(……そうでした、最初は誰でもよかったんです。そうでした)
サシャ(それで、ライナーは、いい人ですから……それに甘えさせてもらっていただけです)
6 : ◆H4iwFNXQsw:2013/06/28(金) 19:48:41 ID:LAy1mCRg
サシャ(いつも、自分の怪我より他人の怪我の心配をして)
サシャ(……そうですそうです、ライナーは優しい人なんです)
サシャ(女の子扱いされて、ちょっと浮かれていただけです。それだけです)
サシャ(そうですよ、なんともありませんよこんなの)
サシャ(ライナーなんて……)ズキッ
サシャ(…………違いますよ、これは)ズキズキ
サシャ(胸が痛いんじゃありません、おなかが痛いんですよ)ズキズキ
サシャ(明日ご飯を食べたら治るに決まってるんです。きっとそうです)ズキズキ
サシャ(だから全然痛くないんです。大丈夫です。大丈夫……)ズキズキ
7 : ◆H4iwFNXQsw:2013/06/28(金) 19:49:29 ID:LAy1mCRg
サシャ(その夜は、泣かないようにと強く噛んでいた下唇がずっと痛くて)
サシャ(寝返りを打つ度に、全力で拒否されたことを思い出して)
サシャ(突き飛ばされた胸が、まだ痛いような気がして)
サシャ(これは空腹の痛みだと、自分を誤魔化すことに必死で)
サシャ(そういうことを繰り返しているうちに、いつの間にか夜が明けていてーー)
8 : ◆H4iwFNXQsw:2013/06/28(金) 19:50:11 ID:LAy1mCRg
ーー朝、女子寮
サシャ(……)
サシャ(……ああ、最悪です)
サシャ(結局、眠れませんでした……)ギュッ
クリスタ「さしゃー? ごはんだよー?」ウツラウツラ
サシャ「……起きたくありません」
ユミル「寝かせておけよ、芋女なんてさー」アクビ
クリスタ「さしゃってばー? ごはんはー?」ウツラウツラ
サシャ「……いりません」
クリスタ「そっかー、じゃあさきにいってるねぇー?」ウツラウツラ
ユミル「だよなー、今日休みだしなー」アクビ
サシャ(……)ズキズキ
サシャ(……なんで、まだ痛いんでしょう……)ズキズキ
9 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/06/28(金) 19:50:58 ID:znMhuJkY
サシャがジッパー使って食料をあれこれするのかと思いきやあの人か
期待ィッ!
10 : ◆H4iwFNXQsw:2013/06/28(金) 19:51:30 ID:LAy1mCRg
ーー朝、食堂
エレン「おはようクリスタ、ユミル。結構遅かったなー」
クリスタ「うん、おはようえれん……」ウツラウツラ
ユミル「ミカサとアルミンは?」アクビ
エレン「それが、朝から二人とも見ないんだよな。ところでサシャはまだ寝てるのか?」
クリスタ「うん、ごはんたべたくないんだってー」ウツラウツラ
ユミル「ああ、まあ今日休みだしなー」アクビ
エレン「へー、サシャがメシ抜きでいいなんて珍しいな」
クリスタ「……?」
ユミル「……?」
クリスタ・ユミル「……!?」ガタッ
11 : ◆H4iwFNXQsw:2013/06/28(金) 19:52:04 ID:LAy1mCRg
クリスタ「そうだよ……サシャがご飯抜きでいいだなんて……! どうしよう病気かも! 伝染病かも! 死んだらどうしよう!!」ガタガタガタガタ
ユミル「おおおおおお落ち着けクリスタ、まずは深呼吸三回だ、それで世界は平和になる!」アタフタアタフタ
エレン「……お前らちょっと落ち着けよ」
クリスタ「エレンはサシャのことなんかどうでもいいって言うの!?」クワッ!
ユミル「お前最低だな!」クワッ!
エレン「あーあーわかった。わかったから目を覚ませ」
12 : ◆H4iwFNXQsw:2013/06/28(金) 19:52:47 ID:LAy1mCRg
ーー 十分後
ユミル「よく考えたらメシ持って行ってやればいいんだよなー」モグモグ
クリスタ「だよねー」モグモグ
エレン(なんだこいつらのテンション……)
エレン「あ、そうだ。俺ライナーに頼まれてたんだった」
クリスタ「お使い?」
エレン「ああ。サシャを見かけたら教えてくれって言われてたんだよ」
ユミル「……へーえ?」ニヤリ
エレン「というわけでちょっと行ってくる」ガタッ
ユミル「……待ちなエレン。ついでに私からの伝言も言付かってくれよ」
エレン「俺はメッセンジャーじゃないんだが……まあいいや。なんて伝えればいいんだ?」
ユミル「『面会したいなら十二時まで』、だ。ライナーならそれでわかるだろ」
エレン「? わかったよ」スタスタ
13 : ◆H4iwFNXQsw:2013/06/28(金) 19:53:30 ID:LAy1mCRg
クリスタ「……どういうこと?」キョトン
ユミル「今日は午後から出かけるんだろ? 午後は女子寮に入る手引きしてやれないからな」モグモグ
ユミル「さーて、ライナーはどんな顔で頼みに来るかな」ククク...
クリスタ「ねえユミル。一生懸命悪い顔しようとしてるのはわかるけど」
クリスタ「なんだか楽しそうだよ?」
ユミル「そりゃあこんなに楽しいイベントはそうそうないからねぇ」ニヤニヤ
クリスタ(……なんだかんだ言って、ユミルもサシャのこと考えてるんだよね)クスッ
ユミル「ん? 今笑わなかったか? クリスタ」
クリスタ「んーん。全然」フルフル
14 : ◆H4iwFNXQsw:2013/06/28(金) 19:54:32 ID:LAy1mCRg
ーー昼、女子寮
ユミル「無事に入れてよかったねえ王子様。女の花園へようこそ」ニヤニヤ
ライナー「手引きには感謝しているが……このトレイはなんだ?」
ユミル「芋女の朝メシと昼メシだよ。それを持ってきたって言えば体裁つくだろ?」ニヤニヤ
ユミル「トレイはその辺の机の上に置いておけばいい。因みに一番散らかってる机が芋女のだからな?」ニヤニヤ
ユミル「まっ、私はクリスタと食堂にいるからさ。終わったら声かけてくれ」ニヤニヤ
ユミル「それと、誰もいないからっておっぱじめたりすんなよ?」ニヤニヤ
ライナー「それはない。あいつは味にしか興味がないらしいからな」
ユミル「…………はぁ? 味ぃ? あんた干物だったのか?」
ライナー「どうやら肉らしいぞ。サシャによれば」
15 : ◆H4iwFNXQsw:2013/06/28(金) 19:55:16 ID:LAy1mCRg
ユミル「……あんたも大変だなライナー」
ライナー「いや、これくらいの関係でいいんだ。あまり深入りしすぎても、な」
ユミル(……ディープキスは深くねーのか? ってツッコミはしないほうがいいんだろうな)
ユミル「あっそ。……じゃ、ごゆっくり」ヒラヒラ
クリスタ「どうしたのユミル? 変な顔して」
ユミル「……あいつらの行動原理が、私にはわからん」
クリスタ「?」
16 : ◆H4iwFNXQsw:2013/06/28(金) 19:55:56 ID:LAy1mCRg
サシャ(今、何時でしょう……)グー
サシャ(おなか空きました……)クスン
サシャ(外の光も眩しくなってきましたし……)ゴロン
サシャ(でも……)モゾモゾ
...バタンッ コツコツコツ...
サシャ(……? ユミルでしょうか)
サシャ(それにしては、歩幅が広いような……というか、ちょっと重いような……?)
サシャ(あれ……この足音、どこかで聞いた覚えがーー)
ギシッ...
17 : ◆H4iwFNXQsw:2013/06/28(金) 19:57:25 ID:LAy1mCRg
サシャ(!?)
サシャ(ベッドの上に、誰か座ってる……?)
サシャ(え? え?? 誰ですか??)
「ーーサシャ、起きてるか?」
サシャ(~~~!!)
サシャ(み、耳の上……!? く、くすぐったい……)
サシャ(というか、この声って……)
「ーー午後は立体機動の訓練場にいる」
「ーーじゃあな」
...ギシッ コツコツコツ...
...バタンッ
18 : ◆H4iwFNXQsw:2013/06/28(金) 19:58:05 ID:LAy1mCRg
サシャ「……」
サシャ「……」
サシャ「……」
19 : ◆H4iwFNXQsw:2013/06/28(金) 19:58:41 ID:LAy1mCRg
サシャ「……」ムクリ
サシャ「……」
サシャ「…………いま…………」
...ガチャッ
サシャ「!!」ビクッ!!
20 : ◆H4iwFNXQsw:2013/06/28(金) 19:59:19 ID:LAy1mCRg
クリスタ「あー! サシャ起きたの? おはよう!」
ユミル「やーっと起きたか。もう昼だぞ?」
サシャ「あ……あの、おはようございます」
サシャ「えっと……いま……」
サシャ「今、誰か……来ませんでしたか……?」
クリスタ「? ライナーとお話ししたんじゃないの?」キョトン
サシャ「……!!」
サシャ「ライナーがいたんですか? なんで?」
クリスタ「ご飯持ってきてくれたんだよ、ほら」ユビサシ
サシャ「…………じゃあ、さっきのは」
サシャ(夢じゃなかったんですね……)
21 : ◆H4iwFNXQsw:2013/06/28(金) 20:00:02 ID:LAy1mCRg
ユミル「どうしたー? 変な顔してるな?」ニヤニヤ
サシャ「あ、いえ……そんなことは……」
サシャ「……」
ユミル「ーーていうかいつの話してんだよ? あいつが来たのもう一時間も前だぞ?」
サシャ「……え?」
サシャ(ということは、あの後私寝ちゃったんですか……?)
サシャ(……)
クリスタ「サシャ? どうしたの?」
サシャ「ちょっと出かけてきます!」バサッ
ユミル「着替えくらいしてけよー。あと顔も洗えー」
サシャ「わかってますよぅ!」ヌギヌギ
22 : ◆H4iwFNXQsw:2013/06/28(金) 20:00:48 ID:LAy1mCRg
サシャ「えーっと……えーっと! そうだ髪、髪直さなきゃ……!」バタバタ テキパキ
サシャ「服着て……髪結って……顔は行きがけに洗うとして……よしっ!」
サシャ「じゃあ行ってきます!」バッ!!
ユミル「敬礼してないで早く行けよ」ニヤニヤ
サシャ「あっ……そ、そうですね……」カアアアアア
サシャ(……そうだ)
サシャ「えっと……これをこうして……」シュッシュッ
サシャ「よしっ、じゃあ行ってきます!」
クリスタ「いってらっしゃーい」フリフリ
ユミル「狼に気をつけろよー」ニヤニヤ
23 : ◆H4iwFNXQsw:2013/06/28(金) 20:01:24 ID:LAy1mCRg
ユミル「あー面白かった。飽きないなーああいうの見てると」マンゾク
クリスタ「……ふふっ、ユミルも意外と優しいところあるよね」ニコニコ
ユミル「はあ? 私が? なんで?」
クリスタ「だって、サシャが起きるまで待とうって提案したのはユミルだよ?」
ユミル「いやいや、そりゃ買いかぶりだよクリスタ。私はあいつが慌てふためく様を見たかっただけだって」
クリスタ「……じゃあ、そういうことにしといてあげる」クスッ
24 : ◆H4iwFNXQsw:2013/06/28(金) 20:02:10 ID:LAy1mCRg
ユミル「ったく……ところで芋女、香水なんて持ってたのか? 確かかなりの高級品だろ?」ヒョイッ
クリスタ「はじめて一緒に町に行ったとき、一番最初に買ってたよ。ご飯抜きの時に匂い嗅ぐんだって」
ユミル「……理由が芋女らしいな。色気が全くねえ」キュッ クンカクンカ
ユミル「ってか甘ったるっ! なんだぁこの匂い?」
クリスタ「ハチミツの匂いなんだって」
ユミル「……あいつは熊でも狩りに行く気なのか?」
クリスタ「? どうして熊なの? ユミル」
ユミル「いや、童話であっただろ? くまの……くまのナンタラさん」
クリスタ「ナンタラー?」キョトン
ユミル「……まあいいや。遅くなったけど私たちも出るぞ」
クリスタ「はーい。じゃあ準備するねー」トテトテ
25 : ◆H4iwFNXQsw:2013/06/28(金) 20:02:51 ID:LAy1mCRg
ーー昼、教官室
サシャ「すみません! 立体機動の練習したいので許可ください! 許可!!」バンッ
モブ教官「おっ、ブラウス熱心だなー、上位者たちは休日返上で偉いな。うんうん」
サシャ「た、たち? たちってことは、私以外にもいるんですよね!?」
モブ教官「ああ。ライナー・ブラウンが結構前に来たな。他にもーー」
サシャ「ありがとうございます! それじゃっ!」ダダダダダ
モブ教官「お、おお……? やる気満々だな……」
モブ教官「それにしても、今期の訓練生は自主練習する奴が多くていいなぁ。感心感心」ハッハッハ
26 : ◆H4iwFNXQsw:2013/06/28(金) 20:03:27 ID:LAy1mCRg
ーー昼、立体機動訓練場
サシャ(勢いでここまで来てしまいましたが……)キョロキョロ
サシャ(私、何しにここまで来たんでしょう)
サシャ(まずは謝って……それで、許してもらえなかったら……)
サシャ(……)
サシャ(……いえ、悩んでるのは性に合いません)グッ
サシャ(取り敢えずライナーを探しましょう)タタタタタ....
27 : ◆H4iwFNXQsw:2013/06/28(金) 20:04:21 ID:LAy1mCRg
サシャ「つ、疲れた……」フラフラ
サシャ「そういえば、お昼も朝も抜きでしたぁ……」フラフラ
サシャ(でも、これ以上ライナーを待たせるわけには……あっ)ガッ
サシャ「あいたぁっ!」 ベチャッ
サシャ「うう……転んじゃいました……泥だらけぇ……」ウツブセ
サシャ(……)
サシャ(……帰りましょう、か……)
サシャ(そもそも、合わせる顔がないですよね……)グスッ
サシャ(でも、起き上がるのが億劫です……)
「ーーサシャ?」
サシャ「……」
・前作『サシャ「キスの味、私に教えてください」』の続編です
・キャラ崩壊というか展開に注意
・ネタバレほんわかとあり
2 : ◆H4iwFNXQsw:2013/06/28(金) 19:45:17 ID:LAy1mCRg
ライナー(あれから何度か、サシャがキスをねだってくるようになった)
ライナー(誰もいない場所と時間帯を、よくもまああんなに狙い打てるもんだと感心する)
ライナー(ただ、十七センチという身長差は、キスをするには少し遠い距離だ)
ライナー(だから、最近は俺が何かに腰掛けて、膝の上にサシャが乗るという体勢に自然になっていた)
ライナー(ぎくしゃくした動きで「……失礼します」と顔を耳まで真っ赤にして座るくせに)
ライナー(いざキスをするとなると、貪りつくように舌を絡めてくる)
ライナー(そんな態度に振り回されていた、ある日のことだった)
3 : ◆H4iwFNXQsw:2013/06/28(金) 19:46:18 ID:LAy1mCRg
ーー夜、とある物陰
ライナー「……おい、そろそろ離れろ。人が来るぞ」
サシャ「まだ大丈夫ですよ」
ライナー「お前なあ……あーもういい。好きにしろ」
サシャ「やったー……」
サシャ(あ、鎖骨に汗が……)
サシャ(そっか、まだお風呂入ってないですもんね)
サシャ(サラサラした汗ですね……お肉の脂とは違った滴り方です)
サシャ(……お肉…………骨付き肉……?)
サシャ(おいしそうーー)
ぱくっ
4 : ◆H4iwFNXQsw:2013/06/28(金) 19:46:57 ID:LAy1mCRg
ライナー「ーー!?」 ドンッ!
サシャ「いたっ!」ドサッ
ライナー「! ーーわっ、悪い、突き飛ばしちまったが大丈夫か? 手は捻ってないか?」
サシャ「いえ、私こそすみません……変なことしてしまいました」
ライナー「いや、俺のほうが悪い。突然で手加減できなかった。本当に大丈夫か?」
サシャ「大丈夫ですから。本当に。大丈夫です。すみません」
ライナー「サシャ、」
サシャ「今日はここまでにしましょう。ね?」ニコッ
ライナー「……ああ」
5 : ◆H4iwFNXQsw:2013/06/28(金) 19:47:44 ID:LAy1mCRg
ーー夜、女子寮
サシャ「……」
クリスタ「んにゃ……さしゃー? あかりけしてからねてねー……zzz」
サシャ「あっ、はい……わかりました」フッ
サシャ「……」モゾモゾ
サシャ「……」
サシャ(突き飛ばされたところが、痛い……)ズキッ
サシャ(あれ、全力でしたよね……)
サシャ(やっぱり、嫌だったんでしょうか)
サシャ(……当然ですよね。今まで付き合ってもらえたことのほうが奇跡です)
サシャ(そもそも、最初の私の動機からして不純でしたし)
サシャ(……そうでした、最初は誰でもよかったんです。そうでした)
サシャ(それで、ライナーは、いい人ですから……それに甘えさせてもらっていただけです)
サシャ(いつも、自分の怪我より他人の怪我の心配をして)
サシャ(……そうですそうです、ライナーは優しい人なんです)
サシャ(女の子扱いされて、ちょっと浮かれていただけです。それだけです)
サシャ(そうですよ、なんともありませんよこんなの)
サシャ(ライナーなんて……)ズキッ
サシャ(…………違いますよ、これは)ズキズキ
サシャ(胸が痛いんじゃありません、おなかが痛いんですよ)ズキズキ
サシャ(明日ご飯を食べたら治るに決まってるんです。きっとそうです)ズキズキ
サシャ(だから全然痛くないんです。大丈夫です。大丈夫……)ズキズキ
7 : ◆H4iwFNXQsw:2013/06/28(金) 19:49:29 ID:LAy1mCRg
サシャ(その夜は、泣かないようにと強く噛んでいた下唇がずっと痛くて)
サシャ(寝返りを打つ度に、全力で拒否されたことを思い出して)
サシャ(突き飛ばされた胸が、まだ痛いような気がして)
サシャ(これは空腹の痛みだと、自分を誤魔化すことに必死で)
サシャ(そういうことを繰り返しているうちに、いつの間にか夜が明けていてーー)
8 : ◆H4iwFNXQsw:2013/06/28(金) 19:50:11 ID:LAy1mCRg
ーー朝、女子寮
サシャ(……)
サシャ(……ああ、最悪です)
サシャ(結局、眠れませんでした……)ギュッ
クリスタ「さしゃー? ごはんだよー?」ウツラウツラ
サシャ「……起きたくありません」
ユミル「寝かせておけよ、芋女なんてさー」アクビ
クリスタ「さしゃってばー? ごはんはー?」ウツラウツラ
サシャ「……いりません」
クリスタ「そっかー、じゃあさきにいってるねぇー?」ウツラウツラ
ユミル「だよなー、今日休みだしなー」アクビ
サシャ(……)ズキズキ
サシャ(……なんで、まだ痛いんでしょう……)ズキズキ
9 :以下、名無しが深夜にお送りします:2013/06/28(金) 19:50:58 ID:znMhuJkY
サシャがジッパー使って食料をあれこれするのかと思いきやあの人か
期待ィッ!
10 : ◆H4iwFNXQsw:2013/06/28(金) 19:51:30 ID:LAy1mCRg
ーー朝、食堂
エレン「おはようクリスタ、ユミル。結構遅かったなー」
クリスタ「うん、おはようえれん……」ウツラウツラ
ユミル「ミカサとアルミンは?」アクビ
エレン「それが、朝から二人とも見ないんだよな。ところでサシャはまだ寝てるのか?」
クリスタ「うん、ごはんたべたくないんだってー」ウツラウツラ
ユミル「ああ、まあ今日休みだしなー」アクビ
エレン「へー、サシャがメシ抜きでいいなんて珍しいな」
クリスタ「……?」
ユミル「……?」
クリスタ・ユミル「……!?」ガタッ
11 : ◆H4iwFNXQsw:2013/06/28(金) 19:52:04 ID:LAy1mCRg
クリスタ「そうだよ……サシャがご飯抜きでいいだなんて……! どうしよう病気かも! 伝染病かも! 死んだらどうしよう!!」ガタガタガタガタ
ユミル「おおおおおお落ち着けクリスタ、まずは深呼吸三回だ、それで世界は平和になる!」アタフタアタフタ
エレン「……お前らちょっと落ち着けよ」
クリスタ「エレンはサシャのことなんかどうでもいいって言うの!?」クワッ!
ユミル「お前最低だな!」クワッ!
エレン「あーあーわかった。わかったから目を覚ませ」
12 : ◆H4iwFNXQsw:2013/06/28(金) 19:52:47 ID:LAy1mCRg
ーー 十分後
ユミル「よく考えたらメシ持って行ってやればいいんだよなー」モグモグ
クリスタ「だよねー」モグモグ
エレン(なんだこいつらのテンション……)
エレン「あ、そうだ。俺ライナーに頼まれてたんだった」
クリスタ「お使い?」
エレン「ああ。サシャを見かけたら教えてくれって言われてたんだよ」
ユミル「……へーえ?」ニヤリ
エレン「というわけでちょっと行ってくる」ガタッ
ユミル「……待ちなエレン。ついでに私からの伝言も言付かってくれよ」
エレン「俺はメッセンジャーじゃないんだが……まあいいや。なんて伝えればいいんだ?」
ユミル「『面会したいなら十二時まで』、だ。ライナーならそれでわかるだろ」
エレン「? わかったよ」スタスタ
13 : ◆H4iwFNXQsw:2013/06/28(金) 19:53:30 ID:LAy1mCRg
クリスタ「……どういうこと?」キョトン
ユミル「今日は午後から出かけるんだろ? 午後は女子寮に入る手引きしてやれないからな」モグモグ
ユミル「さーて、ライナーはどんな顔で頼みに来るかな」ククク...
クリスタ「ねえユミル。一生懸命悪い顔しようとしてるのはわかるけど」
クリスタ「なんだか楽しそうだよ?」
ユミル「そりゃあこんなに楽しいイベントはそうそうないからねぇ」ニヤニヤ
クリスタ(……なんだかんだ言って、ユミルもサシャのこと考えてるんだよね)クスッ
ユミル「ん? 今笑わなかったか? クリスタ」
クリスタ「んーん。全然」フルフル
14 : ◆H4iwFNXQsw:2013/06/28(金) 19:54:32 ID:LAy1mCRg
ーー昼、女子寮
ユミル「無事に入れてよかったねえ王子様。女の花園へようこそ」ニヤニヤ
ライナー「手引きには感謝しているが……このトレイはなんだ?」
ユミル「芋女の朝メシと昼メシだよ。それを持ってきたって言えば体裁つくだろ?」ニヤニヤ
ユミル「トレイはその辺の机の上に置いておけばいい。因みに一番散らかってる机が芋女のだからな?」ニヤニヤ
ユミル「まっ、私はクリスタと食堂にいるからさ。終わったら声かけてくれ」ニヤニヤ
ユミル「それと、誰もいないからっておっぱじめたりすんなよ?」ニヤニヤ
ライナー「それはない。あいつは味にしか興味がないらしいからな」
ユミル「…………はぁ? 味ぃ? あんた干物だったのか?」
ライナー「どうやら肉らしいぞ。サシャによれば」
15 : ◆H4iwFNXQsw:2013/06/28(金) 19:55:16 ID:LAy1mCRg
ユミル「……あんたも大変だなライナー」
ライナー「いや、これくらいの関係でいいんだ。あまり深入りしすぎても、な」
ユミル(……ディープキスは深くねーのか? ってツッコミはしないほうがいいんだろうな)
ユミル「あっそ。……じゃ、ごゆっくり」ヒラヒラ
クリスタ「どうしたのユミル? 変な顔して」
ユミル「……あいつらの行動原理が、私にはわからん」
クリスタ「?」
16 : ◆H4iwFNXQsw:2013/06/28(金) 19:55:56 ID:LAy1mCRg
サシャ(今、何時でしょう……)グー
サシャ(おなか空きました……)クスン
サシャ(外の光も眩しくなってきましたし……)ゴロン
サシャ(でも……)モゾモゾ
...バタンッ コツコツコツ...
サシャ(……? ユミルでしょうか)
サシャ(それにしては、歩幅が広いような……というか、ちょっと重いような……?)
サシャ(あれ……この足音、どこかで聞いた覚えがーー)
ギシッ...
17 : ◆H4iwFNXQsw:2013/06/28(金) 19:57:25 ID:LAy1mCRg
サシャ(!?)
サシャ(ベッドの上に、誰か座ってる……?)
サシャ(え? え?? 誰ですか??)
「ーーサシャ、起きてるか?」
サシャ(~~~!!)
サシャ(み、耳の上……!? く、くすぐったい……)
サシャ(というか、この声って……)
「ーー午後は立体機動の訓練場にいる」
「ーーじゃあな」
...ギシッ コツコツコツ...
...バタンッ
18 : ◆H4iwFNXQsw:2013/06/28(金) 19:58:05 ID:LAy1mCRg
サシャ「……」
サシャ「……」
サシャ「……」
19 : ◆H4iwFNXQsw:2013/06/28(金) 19:58:41 ID:LAy1mCRg
サシャ「……」ムクリ
サシャ「……」
サシャ「…………いま…………」
...ガチャッ
サシャ「!!」ビクッ!!
20 : ◆H4iwFNXQsw:2013/06/28(金) 19:59:19 ID:LAy1mCRg
クリスタ「あー! サシャ起きたの? おはよう!」
ユミル「やーっと起きたか。もう昼だぞ?」
サシャ「あ……あの、おはようございます」
サシャ「えっと……いま……」
サシャ「今、誰か……来ませんでしたか……?」
クリスタ「? ライナーとお話ししたんじゃないの?」キョトン
サシャ「……!!」
サシャ「ライナーがいたんですか? なんで?」
クリスタ「ご飯持ってきてくれたんだよ、ほら」ユビサシ
サシャ「…………じゃあ、さっきのは」
サシャ(夢じゃなかったんですね……)
ユミル「どうしたー? 変な顔してるな?」ニヤニヤ
サシャ「あ、いえ……そんなことは……」
サシャ「……」
ユミル「ーーていうかいつの話してんだよ? あいつが来たのもう一時間も前だぞ?」
サシャ「……え?」
サシャ(ということは、あの後私寝ちゃったんですか……?)
サシャ(……)
クリスタ「サシャ? どうしたの?」
サシャ「ちょっと出かけてきます!」バサッ
ユミル「着替えくらいしてけよー。あと顔も洗えー」
サシャ「わかってますよぅ!」ヌギヌギ
22 : ◆H4iwFNXQsw:2013/06/28(金) 20:00:48 ID:LAy1mCRg
サシャ「えーっと……えーっと! そうだ髪、髪直さなきゃ……!」バタバタ テキパキ
サシャ「服着て……髪結って……顔は行きがけに洗うとして……よしっ!」
サシャ「じゃあ行ってきます!」バッ!!
ユミル「敬礼してないで早く行けよ」ニヤニヤ
サシャ「あっ……そ、そうですね……」カアアアアア
サシャ(……そうだ)
サシャ「えっと……これをこうして……」シュッシュッ
サシャ「よしっ、じゃあ行ってきます!」
クリスタ「いってらっしゃーい」フリフリ
ユミル「狼に気をつけろよー」ニヤニヤ
23 : ◆H4iwFNXQsw:2013/06/28(金) 20:01:24 ID:LAy1mCRg
ユミル「あー面白かった。飽きないなーああいうの見てると」マンゾク
クリスタ「……ふふっ、ユミルも意外と優しいところあるよね」ニコニコ
ユミル「はあ? 私が? なんで?」
クリスタ「だって、サシャが起きるまで待とうって提案したのはユミルだよ?」
ユミル「いやいや、そりゃ買いかぶりだよクリスタ。私はあいつが慌てふためく様を見たかっただけだって」
クリスタ「……じゃあ、そういうことにしといてあげる」クスッ
24 : ◆H4iwFNXQsw:2013/06/28(金) 20:02:10 ID:LAy1mCRg
ユミル「ったく……ところで芋女、香水なんて持ってたのか? 確かかなりの高級品だろ?」ヒョイッ
クリスタ「はじめて一緒に町に行ったとき、一番最初に買ってたよ。ご飯抜きの時に匂い嗅ぐんだって」
ユミル「……理由が芋女らしいな。色気が全くねえ」キュッ クンカクンカ
ユミル「ってか甘ったるっ! なんだぁこの匂い?」
クリスタ「ハチミツの匂いなんだって」
ユミル「……あいつは熊でも狩りに行く気なのか?」
クリスタ「? どうして熊なの? ユミル」
ユミル「いや、童話であっただろ? くまの……くまのナンタラさん」
クリスタ「ナンタラー?」キョトン
ユミル「……まあいいや。遅くなったけど私たちも出るぞ」
クリスタ「はーい。じゃあ準備するねー」トテトテ
25 : ◆H4iwFNXQsw:2013/06/28(金) 20:02:51 ID:LAy1mCRg
ーー昼、教官室
サシャ「すみません! 立体機動の練習したいので許可ください! 許可!!」バンッ
モブ教官「おっ、ブラウス熱心だなー、上位者たちは休日返上で偉いな。うんうん」
サシャ「た、たち? たちってことは、私以外にもいるんですよね!?」
モブ教官「ああ。ライナー・ブラウンが結構前に来たな。他にもーー」
サシャ「ありがとうございます! それじゃっ!」ダダダダダ
モブ教官「お、おお……? やる気満々だな……」
モブ教官「それにしても、今期の訓練生は自主練習する奴が多くていいなぁ。感心感心」ハッハッハ
26 : ◆H4iwFNXQsw:2013/06/28(金) 20:03:27 ID:LAy1mCRg
ーー昼、立体機動訓練場
サシャ(勢いでここまで来てしまいましたが……)キョロキョロ
サシャ(私、何しにここまで来たんでしょう)
サシャ(まずは謝って……それで、許してもらえなかったら……)
サシャ(……)
サシャ(……いえ、悩んでるのは性に合いません)グッ
サシャ(取り敢えずライナーを探しましょう)タタタタタ....
27 : ◆H4iwFNXQsw:2013/06/28(金) 20:04:21 ID:LAy1mCRg
サシャ「つ、疲れた……」フラフラ
サシャ「そういえば、お昼も朝も抜きでしたぁ……」フラフラ
サシャ(でも、これ以上ライナーを待たせるわけには……あっ)ガッ
サシャ「あいたぁっ!」 ベチャッ
サシャ「うう……転んじゃいました……泥だらけぇ……」ウツブセ
サシャ(……)
サシャ(……帰りましょう、か……)
サシャ(そもそも、合わせる顔がないですよね……)グスッ
サシャ(でも、起き上がるのが億劫です……)
「ーーサシャ?」
サシャ「……」
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